(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
エラストマー組成物を製造する方法であって、少なくとも1種類のハロゲン化されたイソブチレンベースのエラストマーを100℃において10〜6000cStの範囲の粘度を有する加工助剤に接触させる工程を備え、
前記加工助剤が、C4からC10のイソオレフィン誘導単位および少なくとも1種類の無水基から成る少なくとも1種類の官能化されたポリマーと少なくとも1種類のポリアミンとを接触させた反応生成物から成り、前記少なくとも1種類のポリアミンが少なくとも1種類の1級アミンから成る方法。
前記少なくとも1種類の無水基が、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水プロペニルコハク酸、無水2−ペンテネジオ酸、およびこれらの混合物、からなる群から誘導される請求項1に記載の方法。
前記少なくとも1種類の無水基が、前記少なくとも1種類の官能化されたポリマーのモノマー単位100モル%当たり、無水官能基として0.5モル%から2.0モル%含まれる請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
前記少なくとも1種類のポリアミンが、前記反応生成物を構成する前記少なくとも1種類の官能化されたポリマーのモノマー単位と前記少なくとも1種類のポリアミンの分子単位との合計100モル%当たり、窒素を0.10モル%から10.00モル%含む請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
前記少なくとも1種類のエラストマーが、星状に分岐したハロゲン化されたブチルゴムを包含するハロゲン化されたブチルゴム、またはハロゲン化されたイソブチレンとメチルスチレンとのランダム共重合体、のいずれかである請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
前記エラストマー組成物がさらに、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム(IBR)、 スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム(SIBR)、エチレン−プロピレンゴム(EP)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、およびこれらの混合物、のいずれかを含む、請求項9から請求項11のいずれか1項に記載のエラストマー組成物。
ASTM D−3985フィルム試験法に準拠する MOCON OxTran Model 2/61測定器により60℃で測定した酸素透過率が56.0(cc×mm)/(m2×日×mmHg)未満である、請求項14に記載の物品。
前記物品が、タイヤインナーライナー、タイヤ加硫用ブラダー、タイヤインナーチューブ、またはエアサスペンション用エアスリーブである、請求項14から請求項18のいずれか1項に記載の物品。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<発明の詳細な説明>
この発明の種々の実施形態、変形例と実施例を、請求項に係る発明の理解を容易にする目的で、ここで用いられる用語の定義を含め以下に開示する。
【0013】
本願で周期律表の「族」というときは、HAWLEY’S CONDENSED CHEMICAL DICTIONARY(13版、1997年)の852ページに記載された、周期律表の新しい番号のつけ方を用いる。
【0014】
スラリーとは、希釈液中に、希釈液、モノマー、ルイス酸、開始剤から沈殿したポリマーを含む容積体(a volume)をいう。スラリー濃度とは、一部または全部が沈殿したポリマーの、スラリー全体の容積に対する容積パーセントを意味する。
【0015】
ポリマーというときは、ホモポリマー、共重合体、中間体ポリマー、ターポリマーなどを意味する。同様に、共重合体というときは、少なくとも2種のモノマーからなり、任意に他のモノマーを含有するポリマーの意味で用いる。
【0016】
ポリマーがモノマーを含むというときは、モノマーがポリマー中にそのモノマーが重合された状態で存在するか、あるいは、そのモノマーの誘導体の状態でポリマー中に重合された状態で存在することを意味する。しかし、分かりやすくするために、(各)モノマーを含むなどの、簡略化した言い方をすることがある。
同様に、触媒化合物がその化合物の中立で安定な状態を含むというときは、当業者であれば理解できることであるが、その化合物がイオン化された状態のとき、モノマーと反応してポリマーを生じる。
【0017】
ゴムというときは、ASTM D1566の定義(大変形からに回復可能な材料で、本質的に沸騰溶媒に不溶(しかし膨潤可能)な状態に改質されているか、または改質可能な材料・・・)に従うポリマーまたはポリマーの組成物の意味で用いる。この用語はエラストマーと同義で用いられる。
【0018】
エラストマー組成物というときは、前記定義のエラストマーを少なくとも1つ含む組成物をいう。
【0019】
ASTM D1566に定義される加硫ゴム組成物は、「エラストマーから得られる架橋された弾性材料であって、小さな力で大きく変形し、変形させる力を取り除いたとき、ほぼ最初の寸法と形状に急速に力強く回復する」というものである。硬化されたエラストマー組成物というときは、硬化工程を経たエラストマー組成物、および/または有効量の硬化剤または硬化剤パッケージを含有するか、または有効量の硬化剤または硬化剤パッケージで製造されたエラストマー組成物を意味し、加硫ゴム組成物と同義で用いられる。
【0020】
ASTM D1566に定義される熱可塑性エラストマーとは、ゴム状の物質であって「そのポリマー固有の温度範囲内で、加熱による軟化と冷却による固化を繰り返し可能で、軟化した状態のとき物品に成型可能のもの」をいう。熱可塑性エラストマーは、少なくとも2種のポリマーが微細な相に分離した系である。1つの相は室温では流動しないが、加熱されたとき流動する硬いポリマーであり、熱可塑性エラストマーに強度を付与する。他の層は、熱可塑性エラストマーに弾性を付与する柔らかいゴム状のポリマーである。一般に、固い相は連続相または主な相である。
【0021】
ASTM D1566に定義される熱可塑性加硫物は、「化学的に架橋されたゴム状の相を有する熱可塑性エラストマーであり、動的加硫により製造される」というものである。動的加硫は、「熱可塑性ポリマーと適切な反応性ゴムを溶融混練し、化学的に架橋されたゴム状の相を有する熱可塑性エラストマーを生成させるプロセス・・・」である。ゴム状の相は、架橋の有無によらず、一般に分散相または主ではない相である。
【0022】
「phr」という用語は、ゴム100に対する比率または「部」を意味し、この技術分野で一般的な割合であり、組成物中の各成分はエラストマー成分の全量に対する割合で表される。全ゴム成分のトータルphrまたは部は、処方中に1,2,3またはそれ以上の異なる種類のゴム成分が含まれていても、常に100phrと定義される。
主要なエラストマー成分またはゴム成分の100重量部を基準に表される。他の全ての非ゴム成分はゴム100部に対する比で表され、phrで表記される。これにより、例えば、異なる組成物の硬化剤や充填剤の投入量等の比較を、同一相対比のゴムに基づき、ただ1つか、それ以上の成分の量を調整した後、各成分のパーセントを再計算することなく容易に行うことができる。
【0023】
イソオレフィンというときは、少なくとも1つの炭素が、その炭素上に2つの置換基を有するオレフィンモノマーの意味で用いる。
【0024】
「マルチオレフィン」というときは、2つ以上の二重結合を有するモノマーを意味する。一つの好ましい実施形態では、マルチオレフィンは、共役した2つの二重結合を有するモノマーであり、イソプレンなどのように共役したジエンを言う。
【0025】
イソブチレンベースのエラストマーまたはポリマーというときは、イソブチレンの繰り返し単位が少なくとも70モル%含まれるエラストマーまたはポリマーを意味する。
【0026】
炭化水素というときは、主に水素と炭素原子を含む、分子または分子の一部をいう。ある実施形態では、炭化水素には、ハロゲン化された炭化水素、および、以下詳しく説明するヘテロ原子を有する炭化水素が含まれる。
【0027】
アルキルというときは、アルカンの示性式から1以上の水素を除いて導かれる脂肪族炭化水素基の意味であり、例えば、メチル基(CH
3)、あるいはエチル基(CH
3CH
2)などである。
【0028】
アリールというときは、例えばベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、アントラセンなどの環状構造となる芳香族化合物の炭化水素基であり、一般に、その構造中に二重結合(不飽和)を交互に有する。したがって、アリール基は、芳香族の示性式から1以上の水素を除いて導かれる基であり、例えば、フェニル基(C
6H
5)などがある。
【0029】
置換されたというときは、少なくとも1つの水素基が、少なくとも1つの置換基で置き換えられたことを意味し、置換基は、例えば、ハロゲン(塩素、臭素、フッ素、またはヨウ素)、アミノ、ニトロ、スルホキシ(スルホネートまたはアルキルスルホネート)、チオール、アルキルチオール、水酸基;例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ノルマルブチル、イソブチル、セカンダリーブチル、ターシャリーブチルなどが含まれる直鎖または分岐した炭素原子数が1から20のアルキル;例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、セカンダリーブトキシ、ターシャリーブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、へプチルオキシ、オクチルオキシ、ノニルオキシ、およびデシルオキシなどが含まれる直鎖または分岐した炭素原子数が1から20のアルコキシ;例えばクロロメチル、ブロモメチル、フルオロメチル、ヨードメチル、2−クロロエチル、2−ブロモエチル、2−フルオロエチル、3−クロロプロピル、3−ブロモプロピル、3−フルオロプロピル、4−クロロブチル、4−ブロモブチル、4−フルオロブチル、ジクロロメチル、ジブロモメチル、ジフルオロメチル、ジヨードメチル、2,2−ジクロロエチル、2,2−ジブロモエチル、2,2−ジフルオロエチル、3,3−ジクロロプロピル、3,3−ジブロモプロピル、3,3−ジフルオロプロピル、4,4−ジクロロブチル、4,4−ジブロモブチル、4,4−ジフルオロブチル、トリクロロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、2,3,3−トリフルオロプロピル、1,1,2,2−テトラフルオロエチル、および2,2,3,3−テトラフルオロプロピルなどが含まれる少なくとも1つのハロゲンで置換された直鎖または分岐した炭素原子数が1から20のアルキルであるハロアルキルから選択される。
したがって、例えば「置換されたスチレン単位」には、p−メチルスチレン、p−エチルスチレンなどが含まれる。
【0030】
<ブチルゴム>
この発明を実施する上で有用な好ましいエラストマーには、イソブチレンベースのホモポリマーまたは共重合体が含まれる。上述のように、イソブチレンベースのエラストマーまたはポリマーとは、少なくとも70モル%のイソブチレン繰り返し単位を有するエラストマーまたはポリマーである。このようなポリマーは、イソブチレンから誘導される単位などの、C
4からC
7のイソモノオレフィンから誘導される単位と、少なくとも1つの重合可能な単位とのランダム共重合体と言える。イソブチレンベースの共重合体は、ハロゲン化されていないであろう。
【0031】
この発明のひとつの実施形態では、エラストマーはブチルタイプのゴム、あるいは分岐したブチルタイプのゴム、特に、ハロゲン化されたこれらのエラストマーを用いることができる。有用なエラストマーは、オレフィンまたはイソオレフィンと、マルチオレフィンとの共重合体、あるいはマルチオレフィンのホモポリマーなどの不飽和のブチルゴムである。
これらの、または他のタイプの、この発明に有用なエラストマーは公知のものであり、RUBBER TECHNOLOGYの209−581ページ(Morton著、Chapman & Hall社、1995年),THE VANDERBILT RUBBER HANDBOOKの105―122ページ(Ohm著、R.T. Vanderbilt社、1990年)、およびKresgeとWangらの8 KIRK−OTHMER ENCYCLOPEDIA OF CHEMICAL TECHNOLOGYの934−955ページ(John Wiley & Sons社、第4版、1993年)に記載されている。
この発明の製造方法と組成物に有用な不飽和エラストマーの比限定的例示として、イソブチレン−イソプレン共重合体、ポリイソプレン、ポリブタジエン、ポリイソブチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、天然ゴム、星状に分岐したブチルゴム、およびこれらの混合物が挙げられる。この発明に有用なエラストマーは公知の適切な方法で製造され、この発明は、エラストマーの製造方法によって限定されるものではない。
【0032】
エラストマー組成物は、少なくとも1種類のブチルゴムを含む。ブチルゴムは、少なくとも(1)イソブチレンなどのC
4からC
7のイソオレフィンモノマー成分と(2)マルチオレフィンモノマー成分とを含む、モノマーの混合物を反応させて作られる。ひとつの実施形態では、イソオレフィンは全モノマー混合物に対し30から0.5wt%含まれ、別の実施形態では85から99.5wt%含まれる。
マルチオレフィンは全モノマー混合物に対し30から0.5wt%含まれ、別の実施形態では15から0.5wt%含まれる。また別の実施形態では、マルチオレフィンは全モノマー混合物に対し8から0.5wt%含まれ、別の実施形態では85から99.5wt%含まれる。
【0033】
イソオレフィンはC
4からC
7の化合物であり、非限定的例示として、イソブチレン、イソブテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、2−メチル−2−ブテン、1−ブテン、2−ブテン、メチルビニルエーテル、インデン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサン、および4−メチル−1−ペンテンなどが挙げられる。
マルチオレフィンはC
4からC
14のマルチオレフィンであり、イソプレン、ブタジエン、2,3,−ジメチル−1,3−ブタジエン、ミルセン、6,6、−ジメチル−フルベン、ヘキサジエン、シクロペンタジエン、ピペリレン、その他EP0279456、米国特許第5506316号、米国特許第5162425号に開示されたモノマーである。
その他、スチレン、あるいはジクロルスチレンもまた、ブチルゴムの重合または共重合に好適に用いることができる。この発明のひとつの実施形態では、95から99.5wt%のイソブチレンと、0.5から8wt%のイソプレンを反応させて得られ、別の実施形態では、0.5から5wt%のイソプレンを反応させて得られる。ブチルゴムとその製造方法は、例えば米国特許第2356128号、米国特許第3968076号、米国特許第4474924号、米国特許第4068051号、および米国特許第5532312号に詳細に記載されている。また、国際公開パンフレットWO2004/058828、WO2004/058827、WO2004/058835、WO2004/058836、WO2004/058825、WO2004/067577、およびWO2004/058829が参照される。
【0034】
好ましいブチルゴムの市販品の例として、ポリイソブチレン−イソプレン共重合体である、ムーニー粘度30から56(ML1+8、125℃)(ExxonMobil Chemical Company社、ヒューストン、テキサス州)のEXXON(登録商標)BUTYLグレードである。好ましいブチルゴムの市販品の別の例は、分子量粘度平均(molecular weight viscosity average)が0.75×10
6から2.34×10
6のVISTANEX(登録商標)(ExxonMobil Chemical Company社、ヒューストン、テキサス州)である。
【0035】
<星状に分岐したブチルゴム>
この発明に有用なブチルゴムの別の実施形態は、分岐、または「星状に分岐した」ブチルゴムである。これらのゴムは、例えば、EP0678529Bl、米国特許第5182333号、米国特許第5071913号に開示されている。ひとつの実施形態では、星状に分岐したブチルゴム(SBB)は、ハロゲン化された、またはハロゲン化されていないブチルゴムと、ハロゲン化された、またはハロゲン化されていないポリジエンまたはブロック共重合体の組成物である。この発明はSBBの形成方法によって限定されるものではない。
ポリジエン/ブロック共重合体、または分岐剤(以後「ポリジエン」という)は、典型的には、カチオン反応性であり、ブチルゴムまたはハロゲン化されたブチルゴムの重合の間に共存するか、ブチルゴムとブレンドされてSBBを形成する。
分岐剤あるいはポリジエンは分岐剤に適したものであればよく、この発明はSBBを作るために用いられるポリジエンの種類によって限定されるものではない。
【0036】
ひとつの実施形態では、SBBは典型的には、上記のブチルゴムまたはハロゲン化されたブチルゴムと、スチレン、ポリブタジエン、ポリジエン、ポリイソプレン、ポリピペリレン、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム(EPDM)、エチレン‐プロピレンゴム(EPR)、スチレン‐ブタジエン‐スチレン共重合体、およびスチレン‐イソプレン‐スチレン共重合体からなる群から選択される、一部ハロゲン化されたポリジエンとの共重合体の組成物である。
これらのポリジエンは、モノマーの重量%で表すと、ひとつの実施形態では0.3wt%以上、別の実施形態では0.3から3wt%、また別の実施形態では0.4から2.7wt%である。
【0037】
この発明のSBBの市販品の例は、ムーニー粘度(ML1+8、125℃、ASTM D1646)が34から44のSB Butyl 4266(ExxonMobil Chemical Company社、ヒューストン、テキサス州)である。さらに、SB Butyl 4266の硬化特性は次の通りである。MHが69±6dNm、MLが11.5±4.5dNm(ASTM D2084)。
【0038】
<ハロゲン化されたブチルゴム>
この発明の好ましい実施態様におけるエラストマーかハロゲン化されている。ハロゲン化ブチルゴムは上記のように、ブチルゴムのハロゲン化により製造される。ハロゲン化はいかなる方法で行ってもよく、この発明はハロゲン化方法によって制限されるものではない。
ブチルポリマーなどのポリマーのハロゲン化方法は、米国特許第2631984号、米国特許第3099644号、米国特許第4554326号、米国特許第4681921号、米国特許第4650831号、米国特許第4384072号、米国特許第4513116号、および米国特許第5681901号に開示されている。
ひとつの実施形態では、ブチルゴムは、臭素(Br
2)または塩素(Cl
2)をハロゲン化剤に用いて、ヘキサン溶媒中で4から60℃においてハロゲン化される。ハロゲン化ブチルゴムのムーニー粘度(ML1+8、125℃)は、ひとつの実施形態では20から70、別の実施形態では25から55である。ハロゲン化ブチルゴムの重量に基づくハロゲンのwt%は、ひとつの実施形態では0.1から10wt%、別の実施形態では0.5から5wt%である。また別の実施形態では、ハロゲン化ブチルゴム中のハロゲンのwt%は、1から2.5wt%である。
【0039】
この発明の好ましいハロゲン化ブチルゴムの市販品の例は、Bromobutyl 2222(ExxonMobil Chemical Company社、ヒューストン、テキサス州)である。そのムーニー粘度(ML1+8,125℃、ASTM D 1646、修正)は27から37であり、臭素含有量はBromobutyl 2222に対し1.8から2.2wt%である。さらに、Bromobutyl 2222の硬化特性は以下の通りである。MHが28から40dNm、MLが7から18dNm(ASTM D2084)。
ハロゲン化ブチルゴムの他の市販品の例は、Bromobutyl 2255(ExxonMobil Chemical Company社、ヒューストン、テキサス州)である。そのムーニー粘度(ML1+8,125℃、ASTM D 1646)は41から51であり、臭素含有量は1.8から2.2wt%である。さらに、Bromobutyl 2255の硬化特性は以下の通りである。MHが34から48dNm、MLが11から21dNm(ASTM D2084)。
【0040】
<星状に分岐したハロゲン化ブチルゴム>
この発明の別の実施形態では、分岐した、あるいは「星状に分岐した」ハロゲン化ブチルゴムが用いられる。ひとつの実施形態では、ハロゲン化された星状に分岐したブチルゴムは、ハロゲン化された、あるいはハロゲン化されていないブチルゴムと、ハロゲン化された、あるいはハロゲン化されていないポリジエン、あるいはブロック共重合体との組成物である。
ハロゲン化方法は、米国特許第4074035号、米国特許第5071913号、米国特許第5286804号、米国特許第5182333号、米国特許第6228978号に詳細に開示されている。この発明は、ハロゲン化された星状に分岐したブチルゴムの形成方法によって制限されるものではない。
ポリジエン/ブロック共重合体、または分岐剤(以後「ポリジエン」という)は、典型的には、カチオン反応性であり、ブチルゴムまたはハロゲン化されたブチルゴムの重合の間に共存するか、ブチルゴムまたはハロゲン化ブチルゴムとブレンドされて星状に分岐したブチルゴムを形成する。
分岐剤あるいはポリジエンは分岐剤に適したものであればよく、この発明は星状に分岐したブチルゴムを作るために用いられるポリジエンの種類によって限定されるものではない。
【0041】
ひとつの実施形態では、SBBは典型的には、上記のブチルゴムまたはハロゲン化されたブチルゴムと、スチレン、ポリブタジエン、ポリジエン、ポリイソプレン、ポリピペリレン、天然ゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エチレン−プロピレンゴム(EPR)、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、およびスチレン−イソプレン−スチレン共重合体からなる群から選択される一部ハロゲン化されたポリジエンとの共重合体の組成物である。
これらのポリジエンは、モノマーの重量%で表すと、ひとつの実施形態では0.3wt%以上、別の実施形態では0.3から3wt%、また別の実施形態では0.4から2.7wt%である。
【0042】
この発明のSBBの市販品の例は、ムーニー粘度(ML1+8、125℃、ASTM D 1646)が27から37、ハロゲン化された星状に分岐したブチルゴムに対する臭素含有量が2.2から2.6wt%のBromobutyl6222(ExxonMobil Chemical Company社、ヒューストン、テキサス州)である。さらに、Bromobutyl6222の硬化特性は次の通りである。MHが24から38dNm、MLが6から16dNm(ASTM D2084)。
【0043】
<ハロゲン化されたイソブチレンパラ−メチルスチレンゴム>
この発明のエラストマー組成物は、イソブチレンなどのC
4からC
7のイソモノオレフィンと、パラ−メチルスチレンなどのアルキルスチレンコモノマーとを含み、パラ異性体を重量で少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%を含有する少なくとも1つのランダム共重合体を含み、任意にスチレンモノマー単位中の少なくとも1以上のアルキル置換基がベンジルハロゲンまたは他の官能基を有する官能化された中間体ポリマーを含む。
別の実施形態では、ポリマーは、エチレンまたはC
3からC
6のα−オレフィンと、パラ−メチルスチレンなどのアルキルスチレンコモノマーとを含み、パラ異性体を重量で少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%を含有する少なくとも1つのランダムな弾性共重合体を含み、任意にスチレンモノマー単位中の少なくとも1以上のアルキル置換基がベンジルハロゲンまたは他の官能基を有する官能化された中間体ポリマーを含む。
この一例は、次に示すモノマー単位が主鎖に沿ってランダムに間隔をおいて並ぶポリマーである。
【化1】
ここで、RとR
1はそれぞれ独立に水素、C
1からC
7の低級アルキル、および1級または2級ハロゲン化アルキルであり、Xはハロゲンなどの官能基である。
ひとつの実施形態では、RとR
1は水素である。ランダムポリマーの構造中に存在する最大60モル%のパラ位が置換されたスチレンが、前記ひとつの実施形態において官能化構造(2)であり、別の実施形態では0.1から5モル%である。また別の実施形態では、官能化構造(2)は0.2から3モル%である。
【0044】
官能基Xはハロゲン、またはベンジルハロゲンの求核反応により導入された、カルボン酸基、カルボン酸塩基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸イミド基、水酸基、アルコキシド基、フェノキシド基、チオール基、チオエステル基、キサントゲン酸塩基、シアン基、ニトリル基、アミノ基、およびこれらの組合せ、などの他の官能基である。
これらの官能化されたイソオレフィン共重合体の製造方法、官能化方法、硬化方法は、米国特許第5162445号に開示されている。
【0045】
ひとつの実施形態では、エラストマーは0.5から20モル%のパラ−メチルスチレンを含むイソブチレンとパラ−メチルスチレンのランダム共重合体からなり、ベンジル環上のメチル置換基の最大60モル%が、パラ−臭素化メチルスチレンのように臭素または塩素原子を有し、あるいは、酸またはエステルで官能化されていてもよい。
【0046】
別の実施形態では、官能性は、母材ポリマーと高温で混合されたとき、母材ポリマー中の、例えば酸、アミノ基、水酸基などの官能基と反応、または極性結合することができるように選択される。
【0047】
ある実施形態では、共重合体は、実質的に均一な組成分布を有し、少なくとも95wt%のポリマー中のパラ−アルキルスチレン含有量が、平均アルキルスチレン含有量値の10%以内に収まる。ポリマーの一例では、狭い分子量分布(Mw/Mn)を有し、Mw/Mnが5未満、より好ましくは2.5未満であり、ゲル浸透クロマトグラフィーで求めた粘度平均分子量が20万から200万の範囲、好ましい数平均分子量は25000から750000である。
【0048】
ひとつの実施形態では、臭素化されたポリ(イソブチレン−パラ−メチルスチレン)共重合体は一般に、共重合体中の全モノマー単位に対し、0.1から5モルパーセントの臭素化メチルスチレン基を含有する。別の実施形態では、臭素化メチル基の含有量は0.2から3.0モルパーセント、また別の実施形態では0.3から2.8モルパーセント、また別の実施形態では0.4から2.5モルパーセント、また別の実施形態では0.3から2.0モルパーセントであり、望ましい範囲はこれらの上限値と下限値の組み合わせである。
別言すれば、好ましい共重合体は、全ポリマーの重量に対し0.2から10wt%の臭素を含み、別の実施形態では0.4から6wt%の臭素を含み、別の実施形態では0.6から5.6wt%の臭素を含み、実質的に環状ハロゲン、またはポリマー主鎖中のハロゲンは存在しない。
この発明のひとつの実施形態では、ランダム共重合体はC
4からC
7のイソオレフィン誘導体(またはイソモノオレフィン)、パラ−メチルスチレン誘導体単位、パラ−(ハロメチルスチレン)誘導体単位の共重合体である。
ひとつの実施形態では、中間体ポリマー中に、パラ−(ハロメチルスチレン)単位は、全パラ−メチルスチレンに対し0.4から3.0モル%存在し、パラ−メチルスチレン誘導体単位は、全ポリマーの重量に対し3重量パーセントから15重量パーセント存在し、別の実施形態では4重量パーセントから10重量パーセント存在する。
別の実施形態では、パラ−(ハロメチルスチレン)はパラ−(臭素化メチルスチレン)である。
【0049】
この発明のハロゲン化イソブチレン−パラ−メチルスチレンゴムの市販品の例は、ムーニー粘度(ML1+8、125℃、ASTM D1646)が30から50、ハロゲン化イソブチレン−パラ−メチルスチレンゴムに対するパラ−メチルスチレン含有量が4から8.5wt%、臭素含有量が0.7から2.2wt%のEXXPRO(登録商標)(ExxonMobil Chemical Company社、ヒューストン、テキサス州)エラストマーである。
【0050】
上記のようなエラストマーは、一般に、塩素化された炭化水素、および/またはフッ素化された炭化水素、およびこれらの混合物などのハロゲン化された炭化水素を含む溶媒中でスラリー重合によって製造される。
(例えば、国際公開パンフレットWO2004/058828、WO2004/058827、WO2004/058835、WO2004/058836、WO2004/058825、WO2004/067577、およびWO2004/058829を参照)
【0051】
ブレンド物の実施形態では、上記のエラストマーは少なくとも以下の1つの成分と組み合わされる。
【0052】
<汎用ゴム>
汎用ゴム、あるいは一般のゴムは、高強度、良好な耐摩耗性とともに、高弾性と低ヒステリシスを有するゴムである。これらのエラストマーは、熱と酸素、特にオゾンに対する抵抗性が低いため、コンパウンドに劣化防止剤を混合する必要がある。
RUBBER TECHNOLOGY COMPOUNDING AND TESTING FOR PERFORMANCE(Dick著、Hanser社、2001年)の125ページに記載されているように、その消費量が多く、特殊ゴムに比べて低価格であることから、市場で容易に見出すことができる。
【0053】
汎用ゴムの例として、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム(IBR)、 スチレン−イソプレン−ブタジエンゴム(SIBR)、およびこれらの混合物が挙げられる。エチレン−プロピレンゴム(EPM)、 エチレン−プロピレンゴム−ジエンゴム(EPDM)、およびこれらの混合物も、しばしば汎用ゴムといわれる。
【0054】
別の実施形態では、この発明の組成物には天然ゴムが含まれる。天然ゴムについてSubramaniamによってRUBBER TECHNOLOGYの179−208ページ(Maurice Morton編, Chapman & Hall社、1995年)に詳しく説明されている。
この発明の望ましい実施形態の天然ゴムは、SMR CV, SMR5, SMR10, SMR20, SMR50,およびこれらの混合物などのマレーシア産の天然ゴムから選択される。天然ゴムのムーニー粘度100℃(ML1+4)が30から120の範囲、好ましくは40から65の範囲である。ムーニー粘度の測定方法は、ASTM D−1646に従う。
【0055】
別の実施形態では、この発明の組成物にはポリブタジエンゴム(BR)が含まれる。ポリブタジエンゴムのムーニー粘度100℃(ML1+4)は35から70の範囲、別の実施形態では40から65、また別の実施形態では45から60の範囲である。
この発明に有用な市販の合成ゴムの例は、BUDENETM(登録商標)(Goodyear Chemical Company社、アクロン、オハイオ)、BUNA(登録商標)(Lanxess Inc社、サニア、オンタリオ、カナダ)、Diene(登録商標)(Firestone Polymers社、アクロン、オハイオ)である。
一例は、高シス−ポリブタジエン(cis−BR)である。「シス−ポリブタジエン」「高シス−ポリブタジエン」というときは、1,4−シスポリブタジエンが用いられ、シス成分の含有量が少なくとも95%のものをいう。高シス−ポリブタジエンの商業製品の一例は、BUDENE(登録商標)1207組成物、またはBUNA CB23(登録商標)に用いられたものである。
【0056】
別の実施形態では、この発明の組成物にはポリイソプレンゴム(IR)が含まれる。ポリイソプレンゴムのムーニー粘度100℃(ML1+4)は35から70の範囲、別の実施形態では40から65、また別の実施形態では45から60の範囲である。
この発明で有用なこれらの合成ゴムの市販品の一例は、NATSYN(登録商標)2200(Goodyear Chemical Company社、アクロン、オハイオ)である。
【0057】
別の実施形態では、この発明の組成物には、適切な追加のゴムとして、EPMやEPDMなどの、エチレンとプロピレンから誘導されたゴムが含まれる。EPDMの製造に適したコモノマーは、エチリデンノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、その他である。これらのゴムは、RUBBER TECHNOLOGY(1995年)の260−283ページに開示されている。
好ましいエチレン−プロピレンゴムは商業的に、VISTALON(登録商標) (ExxonMobil Chemical Company社、ヒューストン、テキサス)が入手可能である。
【0058】
別の実施形態では、エラストマー組成物には、エチレン−α−オレフィン−ジエンターポリマーが含まれる。α−オレフィンは、プロピレン、ブテン、およびオクテンなどのC
3からC
20のα−オレフィンからなる群から選択され、オクテンが好ましく、プロピレンが最も好ましい。
ジエン成分は、C
4からC
20のジエンからなる群から選択される。好ましいジエンの例として、直鎖炭化水素のジオレフィン、あるいは炭素数6から15の、環状アルケニルで置換されたアルケンが挙げられる。
具体例として(a)1,4ヘキサジエンや1,6オクタジエンなどの直鎖ジエン、(b)5−メチル−1,4−ヘキサジエンや、3,7−ジメチル−1,6オクタジエン、3,7−ジメチル−1,7オクタジエンなどの分岐したジエン、および、ジヒドロミリセン(dihydromyricene)とジヒドロオシネン(dihydroocinene)の異性体の混合物、(c)1,3シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、1,5−シクロオクタジエン、1,5−シクロドデカジエンなどの単環の脂環ジエン、(d)テトラヒドロジエン、メチル−テトラヒドロジエン、ジシクロペンタジエン(DCPD)、ビシクロ−(2.2.1)−ヘプタ−2,5−ジエンなどの環状ジエンが融合し架橋した多脂環ジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン(MNB)、5−プロピル−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン(ENB)、5−(4−シクロペンチル)−2−ノルボルネン、5−シクロヘキシリデン−2−ノルボルネン、および5−ビニル−2−ノルボルネン(VNB)などのアルケニル、あるキルジエン、シクロアルケニルおよびシクロアルキルジエンノルボルネン、(e)アリルシクロヘキセン、ビニルシクロオクテン、アリルシクロデセン、ビニルシクロドデセンなどのシクロアルケニル置換アルケンが挙げられる。具体例にはまた、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、5−メチレン−2−ノルボルネン、および5−エチリデン−2−ノルボルネンが含まれる。
ジオレフィンの例には、5−エチリデン−2−ノルボルネン、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、および、5−ビニル−2−ノルボルネンがある。より詳細な情報と、これらのターポリマーを用いた例は、例えば米国特許第6245856号に開示されている。
【0059】
<特殊ゴム>
ひとつの実施形態では、第2エラストマーは、2−プロペンニトリルと1,3-ブタジエンの共重合体であるブタジエン−アクリルニトリルゴム(NBR,またはニトリルゴム)などの、極性の官能基を含む特殊ゴムである。ニトリルゴムは、ひとつの実施形態ではアクリロニトリル含量が10から50wt%であり、別の実施形態では15から40wt%であり、別の実施形態では18から35wt%である。
ムーニー粘度(1+4、100℃、ASTM Dl646)、は、ひとつの実施形態では30から90、別の実施形態では30から75である。これらのゴムはこの技術分野で周知であり、例えば、HANDBOOK OF PLASTICS, ELASTOMERS, AND COMPOSITES 1.41−1.49 (Harper著、McGraw−Hill社、1992年)に開示されている。
この発明に有用なこれらの合成ゴムの市販品の例として、BREON(登録商標)、NIPOL(登録商標)、SIVIC(登録商標)、ZETPOL(登録商標)(Zeon Chemical社、ルイスビル、ケンタッキー)、EUROPRENE(登録商標)N(Polimeri Europa Americas社、ヒューストン、テキサス)、KRYNAC(登録商標)、PERBUNAN(登録商標)と、THERBAN(登録商標)(Lanxess Corporation社、オークラン、オハイオ)が挙げられる。
【0060】
別の実施形態では、第2エラストマーは、NBRの誘導体であり、例えば水素化、カルボキシル化、スチレン化されたニトリルゴムである。ブタジエン−アクリロニトリル−スチレンゴム(SNBR、または“ABS”ゴム)は、2−プロペンニトリル、1,3−ブタジエンとスチレンの共重合体であり、ひとつの実施形態ではアクリロニトリル含量が10から40wt%、別の実施形態では15から30wt%、別の実施形態では18から30wt%である。
SNBR共重合体のスチレン含量は、ひとつの実施形態では15から40wt%、別の実施形態では18から30wt%、また別の実施形態では20から25wt%である。ムーニー粘度(1+、100℃、ASTM Dl646)は、ひとつの実施形態では30から60、別の実施形態30から55である。これらのゴムはこの技術分野で周知であり、例えば、HANDBOOK OF PLASTICS, ELASTOMERS, AND COMPOSITES 1.41−1.49 (Harper著、McGraw−Hill社、1992年)に開示されている。
この発明に有用なこれらの合成ゴムの市販品の例として、KRYNAC(登録商標)(Lanxess Corporation社、アクロン、オハイオ)がある。
【0061】
また別の実施形態では、第2エラストマーは、2−クロロ−1,3ブタジエンであるポリクロロプレン(CR,またはクロロプレンゴム)のように、ハロゲン基を有する特殊ゴムである。ムーニー粘度(1+、100℃、ASTM Dl646)は、ひとつの実施形態では30から110、別の実施形態35から75である。
これらのゴムはこの技術分野で周知であり、例えば、HANDBOOK OF PLASTICS, ELASTOMERS, AND COMPOSITES 1.41−1.49 (Harper著、McGraw−Hill社、1992年)に開示されている。
この発明に有用なこれらの合成ゴムの市販品の例として、NEOPRENE(登録商標) (DuPont Dow Elastomers社、ウィルミントン、デラウエア)、BUTACLOR(登録商標)(Polimeri Europa Americas社、ヒューストン、テキサス) 、およびBAYPREN(登録商標)(Lanxess Corporation社、アクロン、オハイオ)が挙げられる。
【0062】
<半結晶性ポリマー>
ひとつの実施形態では、エラストマー組成物は少なくとも1つの半結晶性ポリマーを含み、半結晶性ポリマーとは、プロピレン連鎖の立体規則性により中間レベルの結晶性を有する弾性ポリマーである。半結晶性ポリマーは、(A)立体規則性が位置反転(regio−inversions)により乱れたポリプロピレンホモポリマー、(B)プロピレンの立体規則性の少なくも一部がコモノマーによって乱れたプロピレンランダム共重合体、(C)(A)と(B)の組合せ、である。
【0063】
別の実施形態では、半結晶性ポリマーは、ブレンド組成物の加硫と他の化学修飾を助けるための、非共役ジエンモノマーを有する。ポリマー中のジエンの含量は、好ましくは10wt%未満、より好ましくは5wt%未満である。
ジエンは、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、およびジシクロペンタジエンなどのエチレン−プロピレンゴムの加硫に一般に用いられる非共役のジエンであるが、これらの例に限定されるものではない。
【0064】
ひとつの実施形態では、半結晶性ポリマーポリマーはプロピレンのランダム共重合体であり、少なくとも1つのコモノマーが、エチレン、C
4からC
12のα−オレフィン、およびこれらの組合せから選択される。
この発明の一側面では、共重合体はエチレン誘導体単位を、下限値が2wt%、5wt%、6wt、8wt%、10wt、上限値が20wt%、25wt%,28wt%の範囲で含有する。
ひとつの実施形態では、共重合体中にプロピレン誘導体単位を、下限値が72wt%、75wt%、80wt%、上限値が98wt%、95wt%,94wt%、92wt%、90wt%の範囲で含有する。これらの重量%は、プロピレン誘導体とエチレン誘導体の全重量に対する割合であり、すなわち、プロピレン誘導体の重量%とエチレン誘導体の重量%の合計は100%になる。
【0065】
ポリマー中のエチレン組成は次のようにして測定することができる。約150℃以上の温度で薄くて均一なフィルムを圧縮成型し、次にPerkin Elmer社のPE1760赤外分光分析計に取り付ける。サンプルの600cm
−1から4000cm
−1までのフルスペクトルを記録し、エチレンモノマーの重量%を次の式により計算する。
エチレンwt%=82.585−111.987X+30.045X
2
ここで、Xは1155cm
−1におけるピーク高さと、722cm
−1または732cm
−1のいずれか高いほうのピーク高さとの比である。ポリマー中の他のモノマー含有量も、この方法で測定することができる。
【0066】
GPCで回収されたサンプルを用いることにより、別々の分子量範囲のコモノマー含有量を、フーリエ変換赤外分光分析(FTIR)で測定することができる。このような方法は、WheelerとWillisによる Applied Spectroscopy、vol 47(1993年)の1128−1130ページに開示されている 。これと異なるが類似の方法もこの目的に役立ち、当業者の間で周知である。
【0067】
ポリマー中のコモノマー含量とシーケンス分布を
13C核磁気共鳴スペクトル(
13CNMR)で測定することができ、このような方法は当業者の間で周知である。
【0068】
ひとつの実施形態では、半結晶性ポリマーは組成分布の狭いプロピレンランダム共重合体からなる。
別の実施形態では、半結晶性ポリマーは、組成分布が狭く、DSCで求めた融点が25℃から110℃の範囲の、プロピレンランダム共重合体である。このプロピレンランダム共重合体は、ポリマーがプロピレン、コモノマー、任意にジエンを含むことからランダムであると記述され、コモノマー残基の数と分布は、モノマーの重合時の統計的ランダム性に従う。
ステレオブロック構造では、1つの種類の互いに隣り合うブロックモノマー残基の数は、同様の組成のランダム共重合体中の統計的分布から予想される数よりも多い。従来のステレオブロック構造を有するエチレン−プロピレン共重合体中のエチレン残基の分布は、ポリマー中のモノマー残基のランダムな統計的分布よりも、むしろこのようなブロック構造に従う。
共重合体のポリマー内部の組成分布(すなわちランダム性)は、隣接するプロピレン残基に対するコモノマー残基の位置を測定する
13CNMRで求めることができる。共重合体中の分子間の組成分布は、溶媒中での熱分別によって求めることができる。一般的な溶媒は、ヘキサン、ヘプタンなどの飽和炭化水素である。熱分別法は以下のようなものである。
典型的には、約75wt%、好ましくは85wt%の共重合体が、1または2の隣接する溶解画分として、残余の共重合体が直前または直後の溶解画分として分離する。これらの各画分の組成(エチレン、または他のα‐オレフィンなどのコモノマーのwt%)の差は、共重合体のコモノマーの平均重量%に対し20%(相対比)を超えない、好ましくは10%(相対比)を超えない範囲にある。上記の熱分別テストにかなう場合、その共重合体の組成分布は狭い。
所望のランダム性と狭い組成分布を有する共重合体を製造するため、(1)第1と第2モノマーシーケンスを単一の統計モードで付加するシングルサイトのメタロセン触媒が使用され、(2)実質的に共重合体の全てのポリマー鎖に単一の重合環境のみを与える連続流撹拌槽重合反応器内で共重合体を十分混合されることが好ましい。
【0069】
ポリマーの結晶化度は、融解熱で表される。この発明の実施形態には、DSCで求めた融解熱の下限値が1.0J/gまたは3.0J/gで、上限値が50J/gまたは10J/gのポリマーが含まれる。理論にこだわるものでは無いが、この発明のポリマーは、一般にアイソタクチックな結晶性のプロピレンシーケンスを有し、上記の融解熱は、この結晶性セグメントの融解によると考えられる。
【0070】
ポリマーの結晶化度はまた、結晶化パーセントで表される。ポリプロピレンの熱エネルギーは最大189J/gと見積もられる。すなわち、結晶化度100%は89J/gに等しい。従って、前記の融解熱に従えば、ポリマーは、上限値が65%、40%、30%、25%、 または20%、下限値が1%、3%、5%、7%、または8%のポリプロピレン結晶化度を有する。
【0071】
結晶化度は融点にも影響する。「融点」とは、上記のDSCで求められる第1、第2融解ピークの内最も高いピークのことを言う。この発明のひとつの実施形態では、ポリマーは単一の融点を有する。一般に、プロピレン共重合体のサンプルは第1ピークの隣に第2ピークを示す。両者をまとめて、1つの融点と考える。これらのピークの最大のものを、融点と考える。ポリマーは、DSCで求めた融点の上限値が、100℃、90℃、80℃、70℃であり、下限値が0℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃である。
一般に、α−オレフィン共重合体成分は、第1ピークの隣に第2ピークを示す。両者をまとめて、1つの融点と考える。これらのピークの最大のものを、融点と考える。
【0072】
半結晶性ポリマーは、上限値が5,000,000g/モル、1,000,000g/モル、あるいは500,000g/モル、下限値が10,000g/モル、20,000g/モル、あるいは80,000g/モルの重量平均分子量(Mw)を有する。また、「多分散性指数(PDI)」とも言われる分子量分布Mw/Mn(MWD)の下限値が1.5、1.8、または 2.0で、上限値が40、20、10、5.0、または4.5である。
ここに言うMwとMWDは、参照として引用する米国特許第4540753号、あるいはアメリカのプラクティスのため援用するVerstrateらの、Macromolecules、vol 21(1988年)の3360ページに記載された方法など種々の方法で測定される。
【0073】
ひとつの実施形態では、半結晶性ポリマーは、125℃のムーニー粘度ML(1+4)が100未満、75未満、60未満、30未満である。ムーニー粘度は、ASTM Dl646により、ML(1+4)、125℃で測定される。
【0074】
この発明の実施形態に用いられる半結晶性ポリマーは、下限値が4または6、上限値が8,10または12のタクシティシ指数(m/r)を有する。m/rで表されるタクシティシ指数は、
13C核磁気共鳴(
13CNMR)で求められ、ChengのMacromolecules、vol.17(1984年)の1950ページの方法で計算される。符号「m」または「r」は、隣接する一組のプロピレングループの立体化学を表し、「m」はメソを、「r」はラセミの意味である。m/rの値が1.0のときはシンジオタクチックポリマーを表し、m/rの値が2.0のときはアタクチックであることを表す。アイソタクチックのときは、この値は理論的には無限大に近づく。副生成物であるアタクチックポリマーは、この値が50を超えるのに十分な量のアイソタクチック成分を含んでいる。
【0075】
ひとつの実施形態では、半結晶性ポリマーは、アイソタクチックな立体規則性プロピレンの結晶化度を有する。「立体規則性」とは、ポリプロピレン、または、エチレンなどの他のモノマーを含まない耐衝撃性共重合体のようなブレンドのポリプロピレン連続相におけるプロピレン残基の大多数、すなわち80%以上が、同様に1,2結合しており、側鎖のメチル基の立体化学的方向が同一で、メソまたはラセミのいずれかであることを言う。
【0076】
この発明の実施形態に係るプロピレン単位のタクシティシを表す補助的方法は、トライアッドタクシティシを用いる表記である。ポリマーのトライアッドタクシティシは、ヘッド−テイル結合からなる主鎖中の3つの隣接するプロピレン単位相互のタクシティシであり、mまたはrシーケンスの2要素の結合で表記される。
この発明の共重合体のトライアッドタクシティシは通常、共重合体中の全プロピレントライアッドに対する、特定のタクシティシの単位数の比で表記される。
【0077】
プロピレン共重合体のトライアッドタクシティシ(mm成分)は、そのプロピレン共重合体の
13CNMRスペクトルから、次の式により求められる。
【数1】
ここで、PPP(mm)、PPP(mr)、およびPPP(rr)で表されるピーク部は、以下に示すヘッド−テイル結合の3つのプロピレン単位から成る鎖における2番目の単位中のメチル基により生じる。
【化2】
【0078】
プロピレン共重合体の
13CNMRスペクトルは、米国特許第5504172号の記載に従い測定される。スペクトルのメチルカーボンに相当する部分(19−23ppm)は、第1領域(21.2−21.9ppm)、第2領域(20.3−21.0ppm)、第3領域(19.5−20.3ppm)に分けられる。スペクトル中の各ピークは、Polymer、vol 30(1989年)の1350ページの記事を参照して同定される。
第1領域では、3つのプロピレン単位から成る鎖における2番目の単位中のメチル基が、PPP(mm)共鳴として表れる。
第2領域では、3つのプロピレン単位から成る鎖における2番目の単位中のメチル基がPPP(mr)共鳴として表れ、また、隣接する単位がプロピレン単位とエチレン単位であるプロピレン単位のメチル基(PPE−メチル基)の共鳴(20.7ppm付近)が表れる。
第3領域では、3つのプロピレン単位から成る鎖における2番目の単位中のメチル基がPPP(rr)共鳴として表れ、また、隣接する単位が2つのエチレン単位であるプロピレン単位のメチル基(EPE−メチル基)の共鳴(19.8ppm付近)が表れる。
【0079】
トライアッドタクシティシの計算方法は、米国特許第5504172号に開示された方法に概説されている。プロピレン挿入のエラー(2,1および1,3)によるピーク部分を第2領域と第3領域から差し引くことにより、ヘッド−テイル結合からなり、3つのプロピレン単位から成る鎖(PPP(mr)とPPP(rr))に基づくのピーク部分を求めることができる。従って、PPP(mm)、PPP(mr)とPPP(rr)のピークを求めることができ、ヘッド−テイル結合からなるプロピレン単位鎖のトライアッドタクシティシを決めることができる。
【0080】
半結晶性ポリマーの、
13CNMRで測定した3つのプロピレン単位のトライアッドタクシティシは、75%以上、80%以上、82%以上、85%以上、または90%以上である。
【0081】
この発明の実施形態では、半結晶性ポリマーのメルトフローレート(MFR)は5000dg/分未満、好ましくは300dg/分未満、好ましくは200dg/分未満、好ましくは100dg/分未満、好ましくは50dg/分未満、好ましくは20dg/分未満、好ましくは10dg/分未満、好ましくは2dg/分未満である。ポリマーのMFRの測定はASTM D1238(230℃、荷重2.16kg)に従う。
【0082】
ある実施形態では、この発明の半結晶性ポリマーはブレンド組成物中に、組成物の全重量に対する含有量が、下限値が50wt%、70wt%、75wt%、80wt%、82wt%、または85wt%、上限値が99wt%、95wt%、90wt%の範囲で含まれる。
【0083】
ある実施形態では、この発明の半結晶性ポリマーは、例えば国際公開パンフレットWO00/69963、WO00/01766、WO99/07788、WO02/083753に開示されたものであり、WO00/01745に「Propylene Olefin Copolymer」として、より詳しく開示されている。
半結晶性ポリマーは商業的に、VISTAMAXX(登録商標)特殊エラストマー(ExxonMobil Chemical Company社、ヒューストン、テキサス)、あるいは、VERSIFY(登録商標)エラストマー(Dow Chemical Company社、ミッドランド、ミシガン)(ここに説明する方法で製造されたものではない)が入手可能である。
【0084】
<熱可塑性樹脂>
別の実施形態では、エラストマー組成物は少なくとも1種類の熱可塑性樹脂を含有する。この発明に適した熱可塑性樹脂は、単独または組み合わせて用いられる。この熱可塑性樹脂は、窒素、酸素、ハロゲン、硫黄、あるいはその他の官能基を有し、この官能基は、ハロゲンや酸性基などの芳香族官能基と反応可能なものである。
熱可塑性樹脂は、ひとつの実施形態ではナノ複合材中に30から90wt%存在し、別の実施形態では40から80wt%存在し、また別の実施形態では50から70wt%存在する。
また別の実施形態では、熱可塑性樹脂はナノ複合材中に40wt%以上存在し、別の実施形態では69wt%以上存在する。
【0085】
好ましい熱可塑性樹脂には、ポリアミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリサルホン、ポリアクトン、ポリアセタール、ポリアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、ポリフェニレノキサイド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル樹脂(SAN)、スチレン−無水マレイン酸樹脂(SMA)、芳香族ポリケトン(PEEK,PED,およびPEKK)、およびこれらの組合せが含まれる。
【0086】
好ましい熱可塑性ポリアミド(ナイロン)には、結晶性または樹脂性で、高分子量固体ポリマーの、ポリマー鎖に再硬化性のアミド単位を有する共重合体またはターポリマーが含まれる。ポリアミドは、1以上のカプロラクタム、ピロリジン、ラウリルラクタム、およびアミノウンデカンラクタムなどのイプシロンラクタム、あるいはアミノ酸を重合して製造され、あるいは二官能性の酸とジアミンを縮合反応させて製造される。
繊維用および成型用グレードのナイロンのどちらも適している。このようなポリアミドの例として、ポリカプロラクタム(ナイロン−6)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンアゼルアミド(ナイロン−6,9)、ポリヘキサメチレンセバアミド(ナイロン−6,10)、ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ナイロン−6,IP)、および11−アミノーウンデカン酸の縮合反応生成物(ナイロン−11)が挙げられる。
さらなる好ましいポリアミドの例として(特に軟化点が275℃のもの)、16 ENCYCLOPEDIA OF CHEMICAL TECHNOLOGY(John Wiley & Sons社、1968年)、の1−105ページ、CONCISE ENCYCLOPEDIA OF POLYMER SCIENCE AND Technology(John Wiley & Sons社、1990年)の748−761ページ、10 ENCYCLOPEDIA OF POLYMER SCIENCE AND TECHNOLOGYJohn Wiley & Sons社、1969年)の392−414ページに記載されたものが挙げられる。
この発明に適した熱可塑性ポリアミドの市販品は、直鎖の結晶性ポリアミドで、軟化点または融点が160℃から260℃の範囲のものが好ましい。
【0087】
好ましい熱可塑性ポリエステルは、1以上の無水の脂肪族または芳香族ポリカルボン酸エステルと、1以上のジオールの高分子反応生成物である。
好ましいポリエステルには、ポリ(トランス−1,4−シクロヘキシレンサクシネート)、および、ポリ(トランス−1,4−シクロヘキシレンアジペート)などのポリ(トランス−1,4−シクロヘキシレンC
2−6アルカンジカルボキシレート);ポリ(シス−1,4−シクロヘキサンジメチシレン)オギザレート、および、ポリ(シス−1,4−シクロヘキサンジメチシレン)サクシネートなどの、ポリ(シスまたはトランス−1,4−シクロヘキサンジメチシレン)アルカンジカルボキシレート、ポリエチレンテレフタレート、および、ポリテトラメチレン−テレフタレート、などのポリ(C
2−4アルキレンテレフタレート)、ポリエチレンイソフタレート、および、ポリテトラメチレン−イソフタレートなどのポリ(C
2−4アルキレンイソフタレート)、などが含まれる。好ましいポリエステルは、ナフタル酸やフタル酸などの芳香族ジカルボン酸と、C
2からC
4のジオールから誘導される、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートである。
好ましいポリエステルは、融点が160℃から260℃の範囲のものである。
【0088】
この発明に用いることができるポリ(フェニレンエーテル)(PPE)は公知の材料であり、アルキル置換されたフェノール酸化カップリング重合により製造された市販品を入手可能である。この樹脂は一般に、直鎖状で非晶質のポリマーで、カラス転移温度が190℃から235℃の範囲である。この樹脂、その製造方法、およびポリスチレンとの組成物が、米国特許第3383435号に開示されている。
【0089】
この他の使用できる樹脂として、上記のポリエステルに類似するセグメント化ポリエーテルフタレート共重合体などのポリカーボネートや、ポリカプロラクトンポリマー、あるいはスチレンと50モル%未満のアクリロニトリルとの共重合体(SAN)や樹脂状スチレン共重合体などのスチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエン共重合体(ABS)、ポリフェニルスルホンなどのスルホン樹脂、エチレンとC
2からC
8のα−オレフィンの共重合体またはホモポリマーが挙げられ、ひとつの実施形態では、プロピレン誘導体単位から成るホモポリマーであり、別の実施形態では、エチレン誘導体単位とプロピレン誘導体単位のランダム共重合体またはブロック共重合体などの、この分野で公知の熱可塑性樹脂である。
【0090】
またこの発明の別の実施形態の組成物は、前記の熱可塑性樹脂(熱可塑物または熱可塑性ポリマーとも呼ぶ)が、動的加硫組成物中に含有される。
【0091】
ここで、「動的加硫」という用語は、エンジニアリングプラスチックと、加硫可能なエラストマーが、高剪断条件下で加硫される意味で用いられる。
【0092】
動的加硫は、エラストマーの硬化温度以上の温度で、原料をロールミル、バンバリー(登録商標)ミキサー、連続混練機、ニーダー、例えば2軸押出機などの混練押出機などの装置で混練して行う。動的に硬化された組成物の特徴は、エラストマー成分が完全に硬化されているにもかかわらず、押出、射出成型、圧縮成型などの公知のゴムの加工方法で加工または再加工できることである。スクラップは、回収され再加工される。
【0093】
この発明のDVAに特に好ましい熱可塑性ポリマーは、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリアクトン、ポリアセタール、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS)、ポリフェニレノキサイド(PPO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、スチレン−アクリロニトリル樹脂(SAN)、ポリイミド、スチレン−無水マレイン酸樹脂(SMA)、芳香族ポリケトン(PEEK,PEK,およびPEKK)、およびこれらの組合せ、からなる群から選択される、エンジニアリングプラスチックである。
好ましいエンジニアリングプラスチックは、ポリアミドである。より好ましいポリアミドは、ナイロン6とナイロン11である。好ましくは、ポリマーブレンド中にエンジニアリングプラスチックが約10から98wt%、好ましくは約20から95wt%存在し、エラストマーは約2から90wt%、好ましくは5から80wt%存在する。好ましくは、組成物中のエラストマーは、エンジニアリングプラスチック中に分散した粒子として存在する。
【0094】
好ましい実施形態では、エラストマーは、イソブチレン−アルキルスチレン共重合体、好ましくはイソブチレン−パラ−メチルスチレン共重合体、ハロゲン化されたイソブチレン−アルキルスチレン共重合体、好ましくはハロゲン化されたイソブチレン−パラ−メチルスチレン共重合体、星状に分岐したブチルゴム、好ましくはハロゲン化され星状に分岐したブチルゴム、ブチルゴム、ハロゲン化されたブチルゴム、およびこれらの組合せ、からなる群から選択される。別の好ましい実施形態では、エラストマーは臭素化ブチルゴムおよび/または塩素化ブチルゴムからなる。
【0095】
この発明のエラストマー組成物中に、エラストマーは、ひとつの実施形態では最大90phr、別の実施形態では最大50phr、別の実施形態では最大40phr、さらに別の実施形態では最大30phr存在する。また別の実施形態では、エラストマーは少なくとも2phr存在し、別の実施形態では少なくともphr、別の実施形態では少なくとも5phr、また別の実施形態では少なくとも10phr存在する。望ましい実施形態では、phr値のいずれかの上限と下限との組合せが含まれる。
【0096】
別の実施形態では、エラストマーは組成物中に、ひとつの実施形態では5から90phr、別の実施形態では10から80phr、別の実施形態では30から70phr、別の実施形態では40から60phr、また別の実施形態では5から50phr、別の実施形態では5から40phr、別の実施形態では20から60phr、別の実施形態では20から50phr存在する。ここで、エラストマーは、個別またはブレンド(すなわち、反応器ブレンド、メルトブレンドなどの物理的ブレンド)されたエラストマーである。また、いずれの実施形態を選択するかは、組成物の最終用途による。
【0097】
エラストマー組成物は、また、少なくとも1または2以上の他のエラストマーを含有する。エラストマーは、他の材料またはポリマーと組み合わされる。
【0098】
ある実施形態では、この発明のエラストマーは、直鎖、実質的に直鎖、ブロック、あるいは分岐している。
【0099】
エラストマー組成物はまた、以下に詳しく説明する他の成分を含有し、任意に硬化されて、硬化されたエラストマー組成物となる。この硬化されたエラストマー組成物は最終的に、以下に詳しく説明する最終製品になる。
【0100】
<プラストマー>
この発明に有用なプラストマーは、密度が0.85から0.915g/cm
3でメルトインデックス(MI)が0.10から30dg/分のポリオレフィン共重合体である。ひとつの実施形態では、有用なプラストマーはエチレン単位と、少なくともC
3からC
10のα−オレフィン単位の1種との共重合体であり、密度が915g/cm
3未満である。プラストマー中のコモノマー(C
3からC
10のα−オレフィン単位)の含量は、ひとつの実施形態では2から35wt%、別の実施形態では5から30wt%、また別の実施形態では15から25wt%、また別の実施形態では20から30wt%である。
【0101】
この発明で有用なプラストマーのメルトインデックス(MI)は、ひとつの実施形態では0.10から20dg/分(ASTM D1238、190℃、荷重2.1kg)であり、別の実施形態では0.2から10dg/分、また別の実施形態では0.3から8dg/分である。
有用なプラストマーの平均分子量は、ひとつの実施形態では10000から800000、別の実施形態では20000から700000である。有用なプラストマーの1%割線曲げ弾性率(ASTM D790)は、ひとつの実施形態では10Mpaから150Mpa、別の実施形態では20Mpaから100Mpaである。さらにこの発明の組成物で有用なプラストマーの融点(Tm)は、ひとつの実施形態では50℃から62℃(第1溶融ピーク)および65℃から85℃(第2溶融ピーク)であり、別の実施形態では52℃から60℃(第1溶融ピーク)および70℃から80℃(第2溶融ピーク)である。
【0102】
この発明に有用なプラストマーは、エチレン単位と、プロピレン1−ブテン、1−ヘキセン、および1−オクテンなどの高級α−オレフィン単位のコモノマーとからなるメタロセン触媒による共重合体であり、ひとつの実施形態では、プラストマーの密度が0.860から0.900g/cm
3となる量の、1以上のコモノマーが含まれる。
好ましいプラストマーの分子量分布(Mw/Mn)は、ひとつの実施形態では2から5であり、別の実施形態では2.2から4である。プラストマーの市販品の例は、EXACT(登録商標)4150(ExxonMobil Chemical Company社、ヒューストン、テキサス州)であり、このプラストマーはエチレンと1−ヘキセンの共重合体で、1−ヘキセンが18から22wt%含まれ、密度が0.895g/cm
3Iが3.5dg/分である。また、べつの市販品の例は、エチレンと1−オクテンの共重合体であり、1−オクテンが26から30wt%含まれ、密度が0.882g/cm
3、MIが1.0dg/分のEXACT(登録商標)8201(ExxonMobil Chemical Company社、ヒューストン、テキサス州)である。
【0103】
<加工助剤>
<ポリアミンと、酸無水基を有する官能化されたポリマーとの反応生成物>
この発明はエラストマー組成物の製造方法を提供し、この製造方法は、少なくとも1種類のエラストマーを加工助剤と接触させる工程を含み、この加工助剤は、少なくとも1種類のポリアミンと、少なくとも1種類の無水基を有する少なくとも1種類の官能化されたポリマーとの反応生成物からなる。
【0104】
ひとつの実施形態では、例えば、反応生成物は以下説明する官能化されたポリマーと、少なくとも1種類の1級アミンを含む少なくとも1種類のポリアミンとの反応生成物である。このようなアミンは、以下詳しく説明するように、アミン単独、または種々のアミン含量または官能性を有するアミンの混合物である。
一般に、実施形態に係る反応生成物は、反応開始時の官能化されたポリマーの分子量と、反応生成物中のアミンまたは窒素含有量の平均値で特定される。例えば、反応生成物中の窒素含有量は0.50モル%から最大5.00モル%の範囲である。
【0105】
<官能化されたポリマー>
少なくとも1種類の官能化されたポリマーは、少なくとも1種類のポリマーを少なくとも1種類の無水物で官能化して作られる。例えば、少なくとも1種類の官能化されたポリマーを製造する方法には、ポリマーを溶媒中で、塩素の存在下または熱ENE反応により、無水物で官能化する方法が含まれる。
【0106】
ある実施形態では、少なくとも1種類のポリマーは1種類以上のオレフィン、α−オレフィン、脱置換されたオレフィンイソオレフィン、共役ジエン、非共役ジエン、スチレン、および/または、置換されたスチレンとビニルエーテルを含むモノマーを重合して得られるポリマーである。例えば、モノマーは2から20、または2から12、または4から10の炭素原子を含む。
【0107】
ひとつの実施形態では、官能化されたポリマーはC
2からC
12のα−オレフィンを含む。
【0108】
別の実施形態では、官能化されたポリマーはC
4からC
10のイソオレフィンを含む。
【0109】
また別の実施形態では、官能化されたポリマーはイソブチレン単位を含む。
【0110】
少なくとも1種類の無水物は、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、無水プロペニルコハク酸、無水物2−ペンテネジオ酸、およびこれらの混合物からなる群から選択される。これらは、以下の式で表される。
【化3】
【0111】
このような官能化されたポリマーは、潤滑油の添加剤として用いられており、容易に入手できる。このような製品の供給者の例は、Infineum International Ltd.社、リンデン、ニュージャージ州、Chevron Oronite, Company社、ヒューストン,テキサス州などである。
【0112】
ひとつの実施形態では、少なくとも1種類の官能化されたポリマーは無水コハク酸で官能化されたポリイソブチレン(PIBSA)である。PIBSAの製造方法には、ポリイソブチレンまたはポリブテン(PIB)の溶媒中での官能化、例えば低分子量のPIBを熱ENE反応により無水マレイン酸で官能化する方法(熱PIBSA)、あるいは塩素の存在下で、無水マレイン酸で官能化する方法(塩素−PIBSA)が含まれる。また、官能化されるポリマーの出発物質のPIBは、純粋なイソブチレンモノマー、あるいはブテン異性体との混合物から製造される。
【0113】
ある実施形態では、少なくとも1種類の官能化されたポリマー中の無水物の含有量は、約0.5モル%から約2.0モル%、あるいは、約0.8モル%から約1.7モル%、あるいは、約1.0モル%から約1.5モル%である。
【0114】
ある実施形態では、PIBSAなどの出発ポリマーの数平均分子量は、約400から約5000以上、あるいは、約500から約2500、あるいは、約800から約2500、あるいは、約800から約1500である。
【0115】
市販品の例として、上記のInfmeumから供給される、Mn2200のPIBから誘導され無水官能基の量が約1.2モル%のPIBSA48官能化ポリマー、Mn2200のPIBから誘導され無水官能基の量が約1.4モル%のPIBSA55官能化ポリマーが挙げられる。
他の市販品の例は、上記のChevron Oroniteから供給される、Mn1000のPIBから誘導されたOLOA 15500 PIBSA、Mn1300のPIBから誘導されたOLOA 15667 PIBSAである。
【0116】
<b)ポリアミン>
一般に、反応生成物は、上記の官能化されたポリマーと、少なくとも1種類の1級アミンを有する少なくとも1種類のポリアミンとの反応生成物である。
【0117】
ひとつの実施形態では、例えば、PIBSA−PAMは少なくとも1種類のポリアミンとPIBSAとの反応生成物であり、少なくとも1種類のポリアミンは、少なくとも1種類の1級アミンから成る。
一般に、実施形態に係るPIBSA−PAMは、反応開始時の官能化されたPIBの分子量と、PIBSA−PAM中のアミンまたは窒素含有量の平均値で特定される。例えば、PIBSA−PAM中の窒素含有量は約0.5モル%から約5.0モル%の範囲である。
【0118】
別の実施形態では、窒素含有量は約0.10モル%から約10.00モル%、あるいは、約0.25モル%から約7.50モル%、あるいは、約0.25モル%から約5.00モル%、あるいは約0.5モル%から5.00モル%、あるいは、約1.00モル%から約7.50モル%、あるいは、約1.25モル%から約5.00モル%、あるいは、約1.50モル%から約5.00モル%である。
【0119】
上記のInfmeumとChevron Oroniteから入手できる市販品の例は、無灰分分散剤として販売され、100℃の粘度(ASTM D445)が80の、OLOA371、100℃の粘度(ASTM D445)が270のOLOA411無灰分分散剤、100℃の粘度(ASTM D445)が64のOLOA無灰分分散剤である。
【0120】
ある実施形態では、ポリアミンは2以上、すなわち、少なくとも2つの反応性アミン基を有し、アミン基は1級アミン、2級アミン、およびこれらの混合物からなる群から選択され、好ましいものは1級アミン基である。
このようなポリアミンは公知であり、米国特許第4234435号、米国特許第3804763号、および米国特許第3948800号に開示されている。
【0121】
ポリアミンの例には飽和脂肪族アミンが含まれ、以下の式で表されるものが含まれる。
【化4】
および
【化5】
ここで、R
7,R
5,R
6,およびR
8はそれぞれ独立して、水素、C
1からC
25の直鎖または分岐アルキル基、C
1からC
12のアルコキシ基、C
2からC
6のアルキレン基、C
2からC
12のヒドロキシアミノアルキル基からなる群から選択され、R
6,およびR
8はさらに、次式の部位を備える。
【化6】
ここで、R
5は前記の通りであり、各sとs´は2から6、好ましくは2から4の同一または異なる数であり;tとt´は0から10、好ましくは2から7の同一または異なる数であり、ただし、t+t´は10より大きくない。
容易に反応するように、R
7,R
5,R
6,R
8,s,s´,t,およびt´を、式(Ia)の化合物に少なくとも2つの1級アミン基が含まれるように選択することが好ましい。これは、R
6,R
7,あるいはR
8基の少なくとも1つに水素を選択することで達成できる。あるいは、R
8が水素のとき、または、(Ib)の部位が1級アミノ基を有するとき、式(Ia)のtを少なくとも1にすることで達成できる。
【0122】
他の例には、1,2−ジアミノエタン、1,3−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,2−プロピレンジアミン、ジエチレントリアミンなどのポリエチレンアミン、メチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、1,2−プロピレンジアミンなどのプロピレンアミン、ジ−(1,2−プロピレン)トリアミン、ジ−(1,3−プロピレン)トリアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジ−(2−アミノエチル)エチレンジアミン、N,N−ジ−(2−ヒドロキシエチル)−1,3−プロピレンジアミン、N−ドデシル−1,3−プロパンジアミン、およびこれらの混合物、が挙げられる。
【0123】
また別のアミン化合物には、1,4−ジ(アミノエチル)シクロヘキサン、次式で表されるN−アミノアルキルピペラジンなどの脂環ジアミンが含まれる。
【化7】
ここでp´とp″は1から4の同一または異なる整数であり、n,n
2,n
3は1から3の同一または異なる整数である。
【0124】
市販のアミン化合物の混合物を用いることもできる。例えば、アルキレンアミンの製造方法の1つは、ジハロゲン化アルキレン(二塩化エチレン、または二塩化プロピレンなど)とアンモニアを反応させアルキレンアミンの混合物を得るものであり、この混合物では、一組の窒素がアルキレン基で結合され、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、および相当するピペラジンなどの化合物が形成されている。商品名が“Polyamine H”、“Polyamine 400”、“Dow Polyamine E−100”などの、1分子あたり平均5から7個の窒素原子を含む安価なポリ(エチレンアミン)化合物を商業的に入手できる。
【0125】
有用なアミンには、次式で表すポリオキシアルキレンポリアミドが含まれる。
【化8】
ここで、mは約3から70、好ましくは10から35の数である。また、
【化9】
ここでnは約1から40で、ただし、全てのnの値の合計は約3から約70、好ましくは約6から約35である。R
9は、炭素数が最大10の置換された炭化水素基であり、R
9の置換基の数は3から6である。“a”は3から6の数で、R
9上の置換基の数を表す。式(III)または(IV)のアルキレン基は、直鎖または分岐しており、約2から7、好ましくは約2から4の炭素原子を有する。
【0126】
この例には、式IIIとIVのポリオキシアルキレンポリアミンが含まれ、また、次式で表されるアルキレンポリアミンが含まれる。
【化10】
ここでxは約1から10、好ましくは約2から7の整数であり、アルキレン基は直鎖、または分岐した鎖状アルキレン基であり、炭素数が2から7、好ましくは約2から4である。
【0127】
式(V)のアルキレンポリアミンの例として、メチレンアミン、エチレンアミン、ブチレンアミン、プロピレンアミン、ペンチレンアミン、へキシレンアミン、へプチレンアミン、オクチレンアミン、そのたのポリメチレンアミン、および例えばピペラジン、アミノ−アルキル−置換ピペラジンなどの環状および高級相同アミンが挙げられる。
これらのアミンには、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、プロピレンジアミン、ジ(ヘプタメチレン)トリアミン、トリプロピレンテトラアミン、テトラエチレンペンタアミン、トリメチレンジアミン、ペンタエチレンヘキサアミン、ジ(トリメチレン)トリアミン、2−ヘプチル3−(2−アミノプロピル)イミダゾリン、4−メチルイミダゾリン、1,3−ビス−(2−アミノプロピル)イミダゾリン、ピリミジン、1−(2−アミノプロピル)ピペラジン、1,4−ビス(2−アミノエチル)ピペラジン、N,N´−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N´−ジオクチルエチルアミン、N−オクチル−N´−メチルエチレンジアミン、2−メチル−1−(2アミノブチル)ピペラジンなどが含まれる。これらのアミンには、例えば、上記のアルキレンアミンの2以上を公知の方法で縮合して得られる高級相同物が含まれる。
【0128】
特に有用なエチレンアミン類は、例えば、Encyclopedia of Chemical Technology(Interscience Publishers、New York(1950年))、の第5巻、898―905ページに、“Ethylene Amines” (Kirk and Othmer著)の項に記載されている。
これらの化合物は、アルキレンクロリドをアンモニアと反応させて作られる。これにより、環化縮合したピペラジン類などを含む、種々のアルキレンアミンの混合物が生成する。これらのアミンの混合物はこの発明に有用であるが、単一のアルキレンアミンであっても問題なく用いることができることはいうまでもない。
【0129】
式IIIと式IVのポリオキシアルキレンポリアミン、好ましくはポリオキシアルキレンジアミンと、ポリオキシアルキレントリアミンは、平均分子量が約200から約4000、好ましくは約400から約2000であることが好ましい。
好ましいポリオキシアルキレンポリアミンには、平均分子量が約200から約2000のポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレンジアミン、およびポリオキシプロピレントリアミンが含まれる。ポリオキシアルキレン市販品のポリアミンとして、Jefferson Chemical Company, Inc.社の商品名“Jeffamines D−230、D−400、D−1000、D−2000、T−403”などを入手できる。
【0130】
ポリアミンという用語には、ヒドロキシアルキルポリアミン、特に窒素原子に結合した1以上のヒドロキシアルキル置換基を有するヒドロキシアルキルアルケンポリアミンが含まれる。好ましいヒドロキシアルキル置換基を有するアルケンポリアミンは低級ヒドロキシアルキル基、すなわち炭素数8以下のヒドロキシアルキル基である。
このようなヒドロキシアルキル置換基を有するポリアミンの例として、N−(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)エチレンジアミン、1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン、モノヒドロキシ−プロピル−置換ジエチレントリアミン、ジヒドロキシプロピル−置換テトラエチレンペントアミン、N−(3−ヒドロキシブチル)テトラメチレンジアミンなどが挙げられる。
上記のヒドロキシアルキレンポリアミンを、アミノ基または水酸基を縮合して得られる高級相同物も同様に用いることができる。アミノ基を縮合させた場合はアンモニアが脱離して高級アミンが生じ、水酸基を縮合させた場合は水が脱離してエーテル結合が生じる。
【0131】
別の実施形態では、反応生成物は、ポリアミンとの接触で生じた窒素含有共重合体の代わりに、ポリオールとの接触で生じたエステル含有共重合体を含む。
【0132】
c)ポリオール
このようなポリオールは公知であり、例えば米国特許第4234435号に開示されている。好ましいポリオール化合物には、最大100個の炭素原子を有し、約2から10の水酸基を有する多水酸基の脂肪族アルコールが含まれる。これらのアルコールは構造および化学構造に多様性があり、例えば、置換または非置換、ヒンダードまたは非ヒンダード、分岐鎖または直鎖であってよい。
【0133】
典型的なアルコールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、ブチレングリコールなどのアルキレングリコール、および、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジイソプロピレングリコール、トリイソプロピレングリコール、ジブチレングリコール、トリブチレングリコール、およびその他のアルキレングリコールとポリアルキレングリコールが含まれ、アルキレン基は2から約8の炭素原子を有する。
別の有用な多水酸基アルコールには、グリセロール、グリセロールのモノメチルエーテル、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、9,10−ジヒドロキシステアリン酸、9,10−ジヒドロキシステアリン酸のエチルエステル、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ヘキサンジオール、ピナコール、テトラヒドロキシペンタン、エリスリトール、アラビトール、ソルビトール、マニトール、1,2−シクロヘキサン、1,4−ジヒドロキシ−2−ニトロブタン、1,4−ジ−(2−ヒドロキシエチル)−ベンゼン、およびグルコース、マンノース、グリセルアルデヒド、ガラクトースなどの炭水化物が含まれる。
【0134】
その他の例には、最大20個の炭素原子、特に3から15個の炭素原子を有する脂肪族アルコールが含まれる。このクラスのアルコールには、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、グルコン酸、グリセルアルデヒド、グルコース、アラビノース、1,7−ヘプタンジオール、2,4−ヘプタンジオール、1,2,3−ヘキサントリオール、1,2,4−ヘキサントリオール、1,2,5−ヘキサントリオール、2,3,4−ヘキサントリオール、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、2,2,6,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、1,10−デカンジオールなどが含まれる。
【0135】
別の多水酸基のアルコールの例には、3から15、特に3から6の炭素原子を含み、少なくとも水酸基を3つ有する多水酸基のアルカノールが含まれる。このようなアルカノールは上記に具体的に例示されたアルコールであり、グリセロール、エリスリトール、ペンタエリスリトール、マニトール、ソルビトール、1,2,4−ヘキサントリオール、およびテトラヒドロキシペンタンなどに代表される。
【0136】
ひとつの実施形態では、上記の加工助剤は、ゲル透過クロマトグラフィーで測定した数平均分子量(Mn)が10000未満であり、別の実施形態では8000未満、また別の実施形態では6000未満である。ひとつの実施形態では、加工助剤は、数平均分子量が400より大きく、別の実施形態では700より大きく、また別の実施形態では900より大きい。
好ましい実施形態では、いずれかの分子量の上限値と、分子量の下限値の組み合わせである。例えば、ひとつの実施形態では、加工助剤の数平均分子量は400から10000、別の実施形態では700から8000、また別の実施形態では900から3000である。
【0137】
また別の実施形態では、加工助剤の数平均分子量は450から5000、あるいは、500から2500、あるいは900から2500、あるいは約1000、あるいは約1300、あるいは約2300である。
【0138】
加工助剤のASTM D445による100℃における粘度の例は、ひとつの実施形態では範囲が約10から約6000cSt(センチストークス)、あるいは約35から約1000cSt、あるいは約75から約500cSt、あるいは約100から約300cSt、あるいは約100から約200cStであり、別の実施形態では35cStより大きく、また別の実施形態では100cStより大きい。
【0139】
ひとつの実施形態では、100℃における粘度は約80(ASTM D445)、100℃における粘度は約270(ASTM D445)、100℃における粘度は約64(ASTM D445)である。
【0140】
ひとつの実施形態では、エラストマー組成物は上記の加工助剤を含有し、あるいは加工助剤とともに調製される。エラストマー組成物中の加工助剤の量は1から60phr、別の実施形態では2から40phr、別の実施形態では3から35phr、別の実施形態では2から20phrの範囲であり、加工助剤の望ましい範囲はいずれかの上限値と下限値の組み合わせである。
【0141】
ひとつの実施形態では、加工助剤またはエラストマー組成物は、芳香族、あるいは不飽和化合物を含有しない。
【0142】
別の実施形態では、加工助剤またはエラストマー組成物は、芳香族、ナフテン、パラフィンオイル、またはこれらの混合物を含まないか、実質的に含まないか、混入レベルしか含まない。ここで、「実質的に含まない」とは1000ppm未満、あるいは800ppm未満、あるいは500ppm未満、あるいは250ppm未満、あるいは100ppm未満、あるいは75ppm未満、あるいは50ppm未満、あるいは20ppm未満、あるいは15ppm未満、あるいは10ppm未満、あるいは5ppm未満を意味する。
【0143】
別の実施形態では、加工助剤またはエラストマー組成物は、以下のような他の成分を含む。
【0144】
<ポリブテン>
この発明の一側面では、空気遮断組成物中にポリブテンプロセスオイルが含まれる。この発明のひとつの実施形態では、ポリブテンプロセスオイルは低分子量(15000Mn未満)の、オレフィン単位を有するホモポリマーまたは共重合体であり、オレフィン単位はひとつの実施形態では炭素数が3から8、別の実施形態では好ましくは炭素数が4から6である。
また別の実施形態では、ポリブテンはC
4残留分(raffmate)のホモポリマーまたは共重合体である。
このような低分子量の「ポリブテン」と呼ばれるポリマーは、例えばSYNTHETIC LUBRICANTS AND HIGH−PERFORMANCE FUNCTIONAL FLUIDS(Rudnick & Shubkin著、Marcel Dekker社、1999年)の357−392ページに記載されている(以下、「ポリブテンプロセスオイル」または「ポリブテン」という)。
【0145】
この発明のひとつの実施形態では、ポリブテンプロセスオイルは少なくともイソブチレン単位、1−ブテン単位と、2−ブテン単位の共重合体である。ひとつの実施形態では、ポリブテンは、ホモポリマー、共重合体、または3成分のターポリマーであり、イソブチレン単位は共重合体中に40から100wt%含まれ、1−ブテン単位は共重合体中に0から40wt%含まれ、2−ブテン単位は共重合体中に0から40wt%含まれる。
別の実施形態では、ポリブテンは、共重合体または3成分のターポリマーであり、イソブチレン単位は共重合体中に40から99wt%含まれ、1−ブテン単位は共重合体中に2から40wt%含まれ、2−ブテン単位は共重合体中に0から30wt%含まれる。
別の実施形態では、ポリブテンは3成分のターポリマーであり、イソブチレン単位は共重合体中に40から96wt%含まれ、1−ブテン単位は共重合体中に2から40wt%含まれ、2−ブテン単位は共重合体中に2から20wt%含まれる。また別の実施形態では、ポリブテンはイソブチレンと1−ブテンのホモポリマーまたは共重合体であり、イソブチレン単位は共重合体中に65から100wt%含まれ、1−ブテン単位は共重合体中に0から35wt%含まれる。
【0146】
この発明で有用なポリブテンプロセスオイルは一般に、数平均分子量(Mn)がひとつの実施形態では10000未満、別の実施形態では8000未満、また別の実施形態では6000未満である。ひとつの実施形態では、ポリブテンプロセスオイルの数平均分子量は400より大きく、別の実施形態では700より大きく、また別の実施形態では900より大きい。望ましい範囲はいずれかの分子量の下限値と上限値の組み合わせである。例えば、この発明のポリブテンのひとつの実施形態では、ポリブテンの数平均分子量は400から10000、別の実施形態では700から8000、また別の実施形態では900から3000である。
有用なポリブテンプロセスオイルの100℃の粘度は、ひとつの実施形態では10から6000cSt(センチストークス)、別の実施形態では35cStより大きく、また別の実施形態では100cStより大きい。
【0147】
このようなプロセスオイルの市販品の例として、PARAPOL(登録商標)450,700,950, 1300,2400および2500などのPARAPOL(登録商標)シリーズのプロセスオイル(ExxonMobil Chemical Company社、ヒューストン、テキサス州);ORONITE(登録商標)(ChevronTexaco社、ニューオリンズ、ルイジアナ州);DAELIM POLYBUTENE(登録商標)(Daelim Industrial Co., Ltd.社、韓国);INDOPOL(登録商標)(Innovene USA LLC社、リスル、イリノイ州);TPC PIB (Texas Petrochemicals社、ヒューストン、テキサス州)などが挙げられる。
市販品のPARAPOL(登録商標)シリーズのポリブテンプロセスオイルは合成ポリブテンの液体であり、各成分は特定の分子量を有し、このオイルの全成分をこの発明の組成物に用いることができる。PARAPOL(登録商標)オイルの、ゲル透過クロマトグラフィーにより求められ分子量は420Mn(PARAPOL(登録商標)450)から2700(PARAPOL(登録商標)2500)である。PARAPOL(登録商標)のMWDは、ひとつの実施形態では1.8から3、別の実施形態では2から2.8である。
【0148】
以下の表に、この発明に有用なPARAPOL(登録商標)の物性を示す。粘度はASTM D445によって測定し、分子量はゲル透過クロマトグラフィーにより求めた。
【表1】
【0149】
PARAPOL(登録商標)プロセスオイルのその他の物性は以下の通りである。PARAPOL(登録商標)の密度(g/mL)は約0.85(PARAPOL(登録商標)450)から0.91(PARAPOL(登録商標)2500)の範囲である。PARAPOL(登録商標)の臭素指数(CG/G)の範囲は、Mn450のプロセスオイルに関し40から、Mn2700のプロセスオイルに関する8である。
【0150】
この発明のエラストマー組成物には、1種類以上の混合物としてのポリブテンが、エラストマーに添加される前にブレンドされているか、エラストマーにブレンドされている。ポリブテンプロセスオイル混合物の量と特性(すなわち、粘度、Mnなど)は、次のように変更する。
すなわち、PARAPOL(登録商標)450は、この発明の組成物において低粘度が好ましいとき用いられ、PARAPOL(登録商標)2500は高粘度が好ましいとき用いられ、あるいは、これらを混合し、別の粘度または分子量にして用いられる。これにより、組成物の物性を制御することができる。
「ポリブテンプロセスオイル」あるいは「ポリブテンプロセスオイル」という用語には、単独のオイル、または2以上のオイルを混合し、本願に開示する所望の粘度あるいは分子量(あるいは他の物性)としたオイルが含まれる。
【0151】
ポリブテンプロセスオイルまたはオイルは、この発明のエラストマー組成物中に、ひとつの実施形態では1から60phr存在し、別の実施形態では2から40phr存在し、別の実施形態では4から35phr存在し、また別の実施形態では5から30phr存在し、また別の実施形態では2から10phr存在し、また別の実施形態では5から25phr存在し、別の実施形態では2から20phr存在し、望ましいポリブテンの範囲は、いずれかの上限値と下限値の組み合わせである。好ましくは、ポリブテンプロセスオイルは、芳香族または不飽和化合物を含有しない。
【0152】
この発明のポリオレフィン組成物には、非官能化可塑剤(「NFP」)が含まれる。この発明のNFPは、炭素と水素からなる化合物であり、感知できる量の官能基を含有しない。この官能基は、水酸基、アリールおよび置換されたアリール基、ハロゲン基、アルコキシ基、カルボン酸塩基、エステル基、不飽和炭素基、アクリル基、酸素、窒素、およびカルボキシル基からなる群から選択されるものである。「感知できる量」とは、これらの基およびこれらの基を含有する化合物は、NFPに誘導体として導入されたものではなく、仮に存在する場合は、ひとつの実施形態ではNFPの重量に対し5wt%未満存在し、別の実施形態では1wt%未満存在し、また別の実施形態では0.5wt%未満存在することを意味する。
【0153】
ひとつの実施形態では、NFPはC
6からC
200のパラフィンであり、別の実施形態では、C
8からC
100のパラフィンである。別の実施形態では、NFPは実質的にC
6からC
200のパラフィンであり、別の実施形態では、実質的にC
8からC
100のパラフィンである。
この発明と詳細な説明において、「パラフィン」には、n−パラフィン、分岐したパラフィン、イソパラフィン、環状脂肪族のもの、およびこれらの混合物などの全ての異性体を含み、公知の方法で合成されたものであり、または、本願に開示する所望のNFPに関する要求を満たすように原料油から精製されたものである。本願に開示した有用なNFPは、所望の物性を得るために、単独、または混合して用いられることは明らかであろう。
【0154】
NFPはこの発明のポリオレフィン組成物中に、ひとつの実施形態では0.1から60wt%、別の実施形態では0.5から40wt%、また別の実施形態では1から20wt%、また別の実施形態では2から10wt%存在し、望ましい範囲はいずれかの上限値と下限値の組み合わせである。
【0155】
NFPはまた、以下に記載する種々の物性値、あるいはその組合せで表される。
ひとつの実施形態では、この発明のNFPは流動点が0℃未満であり、別の実施形態では−5℃未満であり、別の実施形態では−10℃未満であり、別の実施形態では−20℃未満であり、別の実施形態では−40℃未満であり、別の実施形態では−50℃未満であり、また別の実施形態では−60℃未満であり、また別の実施形態では、−120℃より高く、別の実施形態では−200℃より高く、望ましい流動点の範囲はいずれかの上限値と下限値の組み合わせである。
ひとつの実施形態では、NFPは流動点が−30℃未満であり、別の実施形態では、−30℃から−90℃の間であり、40℃における粘度(ASTM D445)が0.5から200cStの範囲内にある。大部分のミネラルオイルは一般に、芳香族部位とその他の官能基とを含み、同じ粘度範囲での流動点は10℃から−20℃である。
【0156】
NFPは20℃における誘電率が、ひとつの実施形態では3.0未満であり、別の実施形態では2.8未満、別の実施形態では2.5未満、別の実施形態では2.3未満、また別の実施形態では2.1未満である。ポリエチレンとポリプロピレンはそれぞれ、誘電率(1kHz,23℃)が少なくとも2.3以上である(CRC HANDBOOK OF CHEMISTRY AND PHYSICS (Lide著、CRC Press社、82版、2001年)。
【0157】
NFPは100℃における粘度(ASTM D445)が、ひとつの実施形態では0.1から3000cSt、別の実施形態では0.5から1000cSt、別の実施形態では1から250cSt、別の実施形態では1から200cSt、また別の実施形態では10から500cStであり、望ましい粘度の範囲はいずれかの上限値と下限値の組み合わせである。
【0158】
NFPの比重(ASTM D4052、15.6/15.6℃)は、ひとつの実施形態では0.920g/cm
3未満、別の実施形態では0.910g/cm
3未満、別の実施形態では0.650から0.900g/cm
3、別の実施形態では0.700から0.860g/cm
3、別の実施形態では0.750から0.855g/cm
3、別の実施形態では0.790から0.850g/cm
3、別の実施形態では0.800から0.840g/cm
3、別の実施形態では0.700から0.860g/cm
3であり、望ましい比重の範囲はいずれかの上限値と下限値の組み合わせである。
NFPの沸点は、ひとつの実施形態では100℃から800℃であり、別の実施形態では200℃から600℃、別の実施形態では250℃から500℃である。
さらに、NFPの重量平均分子量(GPCまたはGC)は、ひとつの実施形態では20000g/モル未満、別の実施形態では10000g/モル未満、また別の実施形態では5000g/モル未満、別の実施形態では4000g/モル未満、別の実施形態では2000g/モル未満、別の実施形態では500g/モル未満であり、別の実施形態では100g/モルより大きく、望ましい重量平均分子量の範囲はいずれかの上限値と下限値の組み合わせである。
【0159】
この発明のポリオレフィン用のNFPに適した組成物は、いわゆる「イソパラフィン」、「ポリアルファオレフィン(PAO)」および「ポリブテン(PAOの内の1グループ)と呼ばれる市販品の中から選択することができる。これらの3種の組成物はパラフィン類とよばれ、分岐、環状、通常の構造、およびこれらの混合物のパラフィンが含まれる。NFPは、ひとつの実施形態ではC
6からC
200のパラフィン類から成り、別の実施形態では、C
8からC
100のパラフィン類から成る。
【0160】
<イソパラフィン>
いわゆる「イソパラフィン」は、以下のようなものである。
これらのパラフィンは望ましくはイソパラフィンであり、すなわち、各パラフィンの連鎖が、少なくともその連鎖の一部に、C
1からC
10の分岐を有するものである。ひとつの実施形態ではC
6からC
200のパラフィンはC
6からC
25のイソパラフィンを含み、別の実施形態ではC
8からC
20のイソパラフィンを含む。
【0161】
より詳しくは、イソパラフィンは飽和脂肪族炭化水素であり、その分子では、少なくとも1つの炭素原子に、少なくとも他の3つの炭素原子が結合しているか、あるいは、少なくとも1つの側鎖が結合している(すなわち、1以上の3級または4級炭素原子を有する分子である)。
また、好ましくは、1分子あたりの炭素原子の総数が6から50の範囲にあり、別の実施形態では10から24の範囲にあり、また別の実施形態では10から15の範囲にある。一般に、各炭素数毎に多数の異性体が存在する。また、イソパラフィンには、側鎖分岐を有する環状パラフィンが、一般には少量含まれる。
これらのイソパラフィンの密度(ASTM D4052、 15.6/15.6℃)は、0.70から0.83g/cm
3であり、ひとつの実施形態では、流動点は−40℃未満、別の実施形態では−50℃未満であり、粘度(ASTM 445、25℃)は0.5から20cStであり、平均分子量は100から300g/モルである。
イソパラフィンの市販品として、商品名ISOPAR(ExxonMobil Chemical Company社、ヒューストン、テキサス)が入手可能であり、また、例えば米国特許第6197285号、米国特許第3818105号、米国特許第3439088号に開示されており、イソパラフィンのISOPAR(登録商標)シリーズとして市販されている。
【表2】
【0162】
別の実施形態では、イソパラフィンは1分子中の炭素数が6から50の、通常のパラフィンと分岐したパラフィンとの混合物であり、別の実施形態では炭素数が10から24である。イソパラフィン組成物は、分岐パラフィン:n−パラフィンの比が、ひとつの実施形態では0.5:1から9:1の範囲であり、別の実施形態では1:1から4:1の範囲である。
この実施形態のイソパラフィンの混合物は、(イソパラフィン組成物の全重量に対し)50wt%を超える量のモノ−メチル種、例えば2−メチル、3−メチル、4−メチル、5−メチル等を含有する。
また、炭素数が1を超える置換基、例えばエチル、プロピル、ブチルなどの置換基による分岐の形成が、混合物中のイソパラフィンの全重量に対し、最小限に留まっている。ひとつの実施形態では、イソパラフィン混合物は、混合物中のイソパラフィンの全重量に対し70wt%より多い量のモノ−メチル種を含有する。
イソパラフィン混合物の沸点は、ひとつの実施形態では100℃から350℃の範囲であり、別の実施形態では110℃から320℃の範囲である。
異なるグレードを製造するとき、パラフィン混合物はより狭い沸点幅、例えば35℃となるように区画して分留される。このような分岐パラフィン/n−パラフィンブレンド物は、米国特許第5906727号に開示されている。
【0163】
この他、商品名SHELLSOL(登録商標)(Royal Dutch/Shell Group of Companies)、SOLTROL(登録商標)(Chevron Phillips Chemical Co.LP)、SASOL(登録商標)(Sasol Limited社、ヨハネスブルグ、南アフリカ)などの適切なイソパラフィンが市販されている。市販品の例として、SHELLSOL(登録商標)(沸点=215−260℃)、SOLTROL 220(沸点=233−280℃)および、SASOL LPA−210とSASOL−47(沸点=238−274℃)が挙げられる。
【0164】
<ポリアルファオレフィン>
この発明のNFPに適したパラフィンには、いわゆるポリアルファオレフィン(PAO)が含まれる。これは以下説明するようなものである。
この発明に適したPAOはC
6からC
200のパラフィンから成り、別の実施形態では、C
10からC
100のn−パラフィンから成る。PAOは、ひとつの実施形態ではC
4からC
12のα−オレフィン、別の実施形態では、C
5からC
12のα−オレフィンの二量体、三量体、四量体、五量体などである。適切なオレフィンには、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンドデセン、1−ドデセンが含まれる。
ひとつの実施形態では、オレフィンは1−デセンであり、NFPは1−デセンの二量体、三量体、四量体、五量体(およびこれ以上)の混合物である。POAは、例えば米国特許第5171908号、米国特許第5783531号と、SYNTHETIC LUBRICANTS AND HIGH−PERFORMANCE FUNCTIONAL FLUIDS(Rudnick & Shubkin著、Marcel Dekker,Inc.社、1999年)の1−52ページに詳しく記載されている。
【0165】
この発明のPOAは、ひとつの実施形態では重量平均分子量が100から20000であり、別の実施形態では200から10000、別の実施形態では200から7000、また別の実施形態では200から2000、また別の実施形態では200から500である。
一般に、POAの100℃における粘度(ASTM D445)は0.1から150cStであり、別の実施形態では、0.1から3000cStである。この発明で有用なPOAの流動点は、ひとつの実施形態では0℃未満、別の実施形態では、−10℃未満、また別の実施形態では−20℃未満、また別の実施形態では−40℃未満である。好ましいPOAの市販品は、SHFおよびSuperSyn PAOs(ExxonMobil Chemical Company社、ヒューストン、テキサス)である。
【表3】
【0166】
<エステル、ポリエステル、ポリアルキレングリコールなどの他の加工助剤>
【0167】
この発明のエラストマー組成物の製造には、他の加工助剤を用いることができる。加工助剤には可塑剤、粘着剤、油展オイル、化学薬品、均一化剤、およびメルカプタン、石油および加硫された植物油、ミネラルオイル、パラフィンオイル、ポリブテン助剤、ナフテン系オイル、芳香族系オイル、ワックス、樹脂、ロジンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0168】
ある種のミネラルオイルは粘度指数や、飽和度と硫黄の含有量によって区別され、American Petroleum Institute(API)によって、Hydrocarbon Basestock Group I、IIまたはIIIに分類されている。Group Iの原料油は溶剤精製ミネラルオイルであり、不飽和度が高く、硫黄の含有量が多く、粘度指数が最も低い。
【0169】
GroupIIおよびIIIは、高粘度指数、および超高粘度指数のミネラルオイルである。これらは還元処理されたミネラルオイルである。GroupIIIのオイルは、GroupIのオイルより少ない量の不飽和成分と硫黄を含み、GroupIIのオイルより高い粘度指数を有する。
RudnickとShubkinらの「Synthetic Lubricants and High-Performance Functional Fluids(第2版、 Rudnick, Shubkin著、Marcel Dekker,Inc社、New York、1999年)」には、ミネラルオイルに関し次のように記載されている。
【0170】
GroupI − 芳香族の溶剤精製、溶剤脱ロウ化、硫黄含量を下げるためにハイドロファイニング(hydrofining)により生成されたミネラルオイルで、硫黄含量が0.03wt%より多く、飽和度が60から80%であり、粘度指数が約90である。
【0171】
GroupII − 中程度に水素化分解されたミネラルオイルであり、従来の芳香族の溶剤精製、溶剤脱ロウ化、および、より強力に硫黄含量を下げるためにハイドロファイニング処理がされたミネラルオイルであって、硫黄含量が0.03wt%以下で、またオレフィンおよび芳香族由来の二重結合が除かれ、飽和度が95から98%を超え、粘度指数が約80から120である。
【0172】
GroupIII − 高度に水素化分解されたミネラルオイルであり、飽和度が100%達するものがあり、硫黄含量が0.03wt%以下(好ましくは0.001から0.01%)で、粘度指数は120を超える。
【0173】
一般に、加工助剤は製造工程において、ひとつの実施形態では1から70phr、別の実施形態では3から60phr、また別の実施形態では5から50phr用いられる。
【0174】
ひとつの実施形態では、パラフィン系、ナフテン系、および/または芳香族系オイルは実質的に存在しない。すなわち、これらのオイルを組成物に添加する操作を行なわないか、あるいは仮に存在しても、空気バリアを製造するための組成物中に最大0.2wt%しか存在しない。
【0175】
<フィラー>
エラストマー組成物は、例えば炭酸カルシウム、シリカ、クレイ、あるいは他の剥離されたか、あるいは剥離されていない珪酸塩、マイカ、タルク二酸化チタン、カーボンブラックなどのフィラーを少なくとも1種類以上含む。
【0176】
この発明のフィラーはいかなるサイズでもよいが、一般に、例えば約0.0001μmから約100μmである。本願でシリカというときは、あらゆる種類またはサイズのシリカ、または他のケイ酸誘導物、またはケイ酸を言い、火成または溶液法などで作られ、表面積を有し、未処理のシリカ、沈降シリカ、結晶性シリカ、コロイドシリカ、アルミニウムまたはカルシウムケイ酸塩、焼成シリカなどが含まれる。
【0177】
ひとつの実施形態では、フィラーはカーボンブラックまたは改質カーボンブラック、またはこれらの組み合わせである。別の実施形態では、フィラーはカーボンブラックとシリカの混合物である。
タイヤのトレッド部や側壁部に適したフィラーはカーボンブラックの補強グレードであり、ブレンド物中に10から100phr、別の実施形態ではより好ましくは30から80phr、また別の実施形態では50から80phr存在する。
カーボンブラックの有用なグレードは、RUBBER TECHNOLOGY(1995)の59−85ページに開示されたN110からN990の範囲のものである。より好ましくは、例えばタイヤのトレッド用に有用なカーボンブラックは、ASTM(D3037、D1510とD3765)に規定されたN229、N351,N339,N220,N234およびN110である。また、タイヤの側壁用に有用なカーボンブラックの例は、N330,N351,N550,N650N660と、N762である。タイヤのインナーライナー用や他のエアーバリアー用に有用なカーボンブラックの例は、N550,N650,N660,N762,N990およびRegal85である。
【0178】
層状のフィラーには層状のクレイが含まれ、任意に有機化合物などで処理、または前処理される。エラストマー組成物はクレイを含有し、クレイは任意に改質剤で処理、または前処理されており、ナノ複合材またはナノ複合材組成物を形成する。
【0179】
ナノ複合材は、少なくとも1種類の上記のエラストマーと、少なくとも1種類の改質された層状フィラーとを含む。改質された層状フィラーは、少なくとも1種類の層状クレイなどの層状フィラーと、少なくとも1種類の改質剤とを接触させて製造される。
【0180】
改質された層状フィラーは、公知の方法と装置を用いて製造することができる。例えば、米国特許第4569923号、米国特許第5663111号、米国特許第6036765号、米国特許第6787592号が参照される。このような方法については、実施例において説明するが、これに限定されるものではない。
【0181】
別の実施形態では、層状フィラーは少なくとも1種類のケイ酸を含む層状クレイである。
【0182】
ひとつの実施形態では、ケイ酸は少なくとも1種類の、膨張結晶格子の一般的種類のクレイである、「スメクタイト」あるいは「スメクタイト型クレイ」を含む。例えば、このようなクレイには、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイトが含まれる2八面体スメクタイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトが含まれる3八面体スメクタイト、などが含まれる。
また、水熱反応などにより合成されたスメクタイト型クレイも含まれる。水熱反応に関しては、米国特許第3252757号、米国特許第3586468号、米国特許第3666407号、米国特許第3671190号、米国特許第3844978号、米国特許第3844979号、米国特許第3852405号、米国特許第3855147号に開示されている。
【0183】
また別の実施形態では、少なくとも1種類のケイ酸がモンモリロナイト, ノントロナイト、バイデライト、ベントナイト、ボルコンスコアイト、ラポナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、マガダイト、ケニヤアイト、ステベンサイトなど、またバーミキュライト、ハロイサイト、アルミニウム系酸化物、ハイドロタルサイトなどの天然または合成ポリケイ酸から成る。これらを組み合わせて用いることもできる。
【0184】
上記のような層状クレイなどの層状フィラーは、少なくとも1種類の改質剤、または膨潤剤、または剥離剤、または層状フィラーの内層表面のカチオンとイオン交換反応可能な添加剤で処理されて、層間挿入あるいは層剥離などの改質処理がされている。
【0185】
改質剤はまた、膨潤剤、あるいは剥離剤としても知られている。一般に、これらは層状フィラーの内層表面のカチオンとイオン交換反応可能な添加剤である。適切な剥離剤は、アンモニウム、アルキルアミン、アルキルアンモニウム(1級、2級、3級、および4級)、脂肪族、芳香族、アリール脂肪族アミンのホスホニウムまたはスルホニウム誘導体、ホスフィン、サルファイドなどの、カチオン性の界面活性剤である。
【0186】
例えば、アミン化合物(または相当するアンモニウムイオン)の構造は、R
2R
3R
4Nで表され、R
2R
3、R
4は、ひとつの実施形態ではC
1からC
30の同一または異なるアルキルまたはアルケンであり、別の実施形態ではC
1からC
20の同一または異なるアルキルまたはアルケンである。ひとつの実施形態では、剥離剤はいわゆる長鎖3級アミンであり、R
2はC
14からC
20のアルキルまたはアルケンである。
【0187】
別の実施形態では、剥離剤には、層状フィラーの内層表面に共有結合可能なものが含まれる。これらには、構造がSi(R
5)2R
6で表されるポリシランが含まれ、R
5は同一または異なっており、アルキル、アルコキシ、珪酸化物(oxysilane)から選択され、R
6は有機化合物の基でありエラストマー組成物の母材ポリマーと混和可能である。
【0188】
この他の適切な剥離剤にはプロトン化されたアミノ酸、およびその塩が含まれる。これらは炭素数が2から30であり、12−アミノドデカン酸、イプシロンカプロラクタムなどの物質が含まれる。
適切な膨潤剤と、層状ケイ酸の層間挿入方法は、米国特許第4472538号、米国特許第4810734号、米国特許第4889885号、およびWO92/02582に開示されている。
【0189】
ひとつの実施形態では、剥離剤または添加剤はハロゲン化エラストマーのハロゲン部と反応してコンプレックスを形成可能で、これによりクレイの剥離を助勢する。ひとつの実施形態では、添加剤にはすべての1級、2級、3級および4級アミンと、ホスフィン;アルキル硫化物、アリール硫化物、チオール、およびこれらの多官能性誘導体が含まれる。
望ましい添加剤には、N,N−ジメチルオクタデシルアミン、N,N−ジオクタデシル−メチルアミン、いわゆる二水素化タローアルキル−メチルアミンなど;および、末端がアミンのポリテトラヒドロフラン;および/または、ヘキサメチレンチオ硫酸ナトリウムを含む、長鎖チオールおよび/またはチオ硫酸塩化合物などの長鎖三級アミンが含まれる。
【0190】
また別の実施形態では、改質剤には、C
25からC
500の炭素鎖からなる少なくとも1種類のポリマー鎖が含まれ、ポリマー鎖はポリマー鎖Eにぶら下がっており、以下に表すアンモニウムで官能化された基が含まれる。
【化11】
ここで、R、R
1、R
2は、同一、または異なり、それぞれ独立して水素、C
1からC
26のアルキル、アルケン、アリール、置換されたC
1からC
26のアルキル、アルケン、アリール、C
1からC
26の脂肪族アルコールまたはエーテル、C
1からC
26のカルボン酸、ニトリル、エトキシ化アミン、アクリル、およびエステルから選択され、XはBr
−、Cl
−、またはPF
6−などのアンモニウムのカウンターイオンである。
【0191】
ここに開示する改質剤は、後に説明する空気透過性試験で測定したとき、十分な空気保持性が得られる量だけ組成物中に存在する。例えば、ひとつの実施形態では添加剤は0.1から40phr用いられ、別の実施形態では0.2から20phr、別の実施形態では0.3から10phr用いられる。
【0192】
剥離剤は、組成物に工程のどの段階で添加してもよい。例えば、剥離剤を先ずエラストマーに添加し、次に層状フィラーを添加してもよい。あるいは、剥離剤を少なくとも1種類のエラストマーと、少なくとも1種類の層状フィラーの混合物に添加する。あるいは、別の実施形態では、剥離剤を先ず層状フィラーとブレンドし、次いでエラストマーに添加する。
【0193】
クレイの市販品の例は、Southern Clay Products,Inc.社(ガンサラス、テキサス州)のCloisiteである。一例を挙げると、Cloisite Na
+,Cloisite 30B,Cloisite 25A,Cloisite 20A,Cloisite 15A,およびCloisite 6Aなどである。
クレイは、CO-OP Chemical Co.社(東京、日本)のSOMASIFとLUCENTITEクレイを用いることもできる。一例を挙げると、SOMASIF(登録商標)MAE、SOMASIF(登録商標)MEE、SOMASIF(登録商標)MPE、SOMASIF(登録商標)MTE、SOMASIF(登録商標)ME−100、LUCENTITE(登録商標)SPN5、およびLUCENTITE(登録商標)SWNである。
【0194】
この発明の実施形態では、引っ張り強さや酸素透過性などの、ナノ複合材の機械的強度または空気バリア性を改良するために必要な量のクレイ、または剥離クレイがナノ複合材に添加される。この量は一般に、ひとつの実施形態では、ナノ複合材中のポリマーに対し0.5から10wt%であり、別の実施形態では1から5wt%である。
【0195】
<架橋剤、硬化剤、硬化剤パッケージ、および硬化プロセス>
ひとつの実施形態では、エラストマー組成物と、この組成物から製造される物品は、少なくとも1種類の硬化剤パッケージ、少なくとも1種類の硬化剤、少なくとも1種類の架橋剤を含有するか、あるいはこれらを用いて製造され、および/または、エラストマー組成物を硬化させる工程に送られる。本願で少なくとも1種類の硬化剤パッケージというときは、この技術分野で周知のゴム的性質をゴムに付与できる物質あるいは方法を意味する。少なくとも1種類の硬化剤パッケージは、以下の少なくともいずれか1つを含む。
【0196】
好ましくは、この発明のエラストマー組成物には、特にシリカが主なフィラーの場合、あるいはシリカが他のフィラーと組み合わされている場合に、1種類以上の架橋剤が用いられる。架橋剤と硬化剤には硫黄、酸化亜鉛、および脂肪酸が含まれる。
より好ましくは、カップリング剤は二官能性の有機シラン架橋剤である。「有機シラン架橋剤」はシランが結合したフィラー、および/または架橋活性化剤、および/またはシラン補強剤として当業者に知られているものであるが、これに限定されない。一例として、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ−(ベータ−メトキシエトキシ)シラン、メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン、ガンマ−アミノ−プロピルトリエトキシシラン(Witco社からAI 100として市販されている)、ガンマ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(Witco社のAI 89)など、およびこれらの混合物が挙げられる。ひとつの実施形態では、ビス−(3−トリエトキシシルプロピル)テトラサルファイド(Degussa社からSi69として市販されている)が用いられる。
【0197】
パーオキサイド架橋系、あるいは樹脂硬化系もまた用いられる。
【0198】
熱または放射線によるポリマーの架橋も用いられる。
【0199】
一般に、例えばタイヤの製造に用いられるポリマーブレンドは、ポリマーの機械的物性を改良するために架橋される。加硫されたゴム組成物の物性、性能特性、および耐久性は加硫反応において生成した架橋の数(架橋密度)と種類に密接に関係していることが知られている。(例えば、RUBBER WORLD(1991年)18−23ページのHeItらによるThe Post Vulcanization Stabilization for NRが参照される。)
【0200】
硫黄は、ジエンを含むエラストマー用の最も一般的な加硫剤である。硫黄はひし形の8員環、あるいは無定形ポリマー状で存在する。硫黄による加硫系も、硫黄を活性化するための促進剤、活性化剤、加硫速度を制御するための遅延剤からなる。促進剤は、加硫の開始と速度、および生成する硫黄架橋の数と種類を制御する役割を有する。これらの要因は、加硫物の性能特性に重要な影響を及ぼす。
【0201】
活性化剤は、先ず促進剤と反応してゴムに可溶なコンプレックスを形成し、次に硫黄と反応して硫黄化剤を形成することにより、加硫反応の速度を高める化合物である。一般的な促進剤には、アミン、ジアミン、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、サルファミド、サルフィミド、チオカーバメート、キサントゲン、などがある。
【0202】
遅延剤は、硬化の開始を遅らせ、非加硫のゴムを加工するための時間を十分取れるようにするために用いられる。
【0203】
ハロゲン化された星状に分岐したブチルゴム、臭化ブチルゴム、塩化ブチルゴム、星状に分岐した臭素化ブチル (ポリイソブチレン/イソプレン共重合体) ゴム、ハロゲン化されたポリ(イソブチレン−p−メチルスチレン)共重合体、ポリクロロプレン、およびクロルスルホネート化されたポリエチレンなどのハロゲンを含有するエラストマーは、金属酸化物との反応により架橋される。
金属酸化物は、ポリマー中のハロゲン基と反応して、活性な中間体を形成し、さらに反応して炭素−炭素結合が生じると考えられる。塩化亜鉛が副生成物として生じ、この反応の触媒として作用する。
【0204】
一般に、ポリマーブレンドは、例えば硫黄、金属酸化物、有機金属化合物、ラジカル開始剤などの硬化剤成分が添加され、次に過熱されることにより架橋される。特に、ZnO,CaO,MgO,Al
2O
3,CrO
3,FeO,Fe
2O
3,およびNiOなどの金属酸化物は、この発明で有用な硬化剤である。
これらの金属酸化物は、単独で、あるいは対応する脂肪酸金属塩(例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなど)とともに、あるいはステアリン酸などの有機脂肪酸とともに用いられる。また、任意に、硫黄または硫黄化合物、アルキルパーオキサイド、ジアミンおよびその誘導体(例えばDu Pontが販売しているDIAK)などの、他の硬化剤を用いることができる。(RUBBER WORLD(1993年)の25−30ページの「Formulation Design and Curing Characteristics of NBR Mixes for Seals」も参照される。)このエラストマーの硬化方法は促進され、エラストマーの加硫によく用いられる。
【0205】
この発明の硬化プロセスの促進は、組成物に、通常は有機化合物の促進剤を所定量添加して行なう。天然ゴムの加硫反応の促進機構には、硬化剤、促進剤、活性化剤、およびポリマー間の複雑な反応が関与している。
理想的には、全ての架橋剤成分が2本のポリマー鎖を結合する架橋の形成に費やされ、ポリマー母材の強度の増加に寄与する。多くの促進剤が知られており、ステアリン酸、ジフェニルグアニジン(DPG)、 テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、4,4´−ヂチオジモルフォリン(DTDM)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、ベンゾチアゾールジスルフィド(MBTS)、ヘキサメチレン−1,6−ビスチオサルフェートナトリウム塩二水和物(Flexsys社からDURALINK(登録商標)HTSとして市販されている)、ヘキサメチレン−2−モルフォリノチオベンゾチアゾール(MBS、またはMOR)、MOR90%とMBTS(MOR90)10%のブレンド、N−ターシャリブチル−2−ベンゾチアゾールスルファミド(TBBS)、およびN−オキシジエチレンチオカーボアミル−N−オキシジエチレンサルホアミド(OTOS),2−エチルヘキサノン亜鉛(ZEH)、および「チオ尿素」などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0206】
<他の成分>
この発明の組成物は、有効量の加工助剤、含量、酸化防止剤、および/またはオゾン劣化防止剤などの、ゴム組成物に一般的に用いられている他の成分や添加剤を含有することができる。
【0207】
エラストマーのブレンド物は、反応器ブレンド、および/または溶融混合によるものである。
各成分の混合は、ポリマー成分と、フィラーと、層間挿入されたクレイとを、適切な混合装置、例えばロール2本を備える開放型ミル、ブラベンダー(登録商標)ミキサー、タンジェンシャル(tangential)ロータを備えたバンバリー(登録商標)ミキサー、噛合い型ロータを備えたKruppミキサー、好ましくはミキサー/押出機などの公知の混合装置を用いて混練することにより行なう。
混練は、ひとつの実施形態では、使用するエラストマーおよび/または第2ゴム成分の融点より高い温度で行ない、別の実施形態では、40℃から250℃の温度範囲で行ない、また別の実施形態では、100℃から200℃の温度範囲で行なう。また混練は、層間挿入されたクレイが剥離して、ポリマー中に均一に分散してナノ複合材が形成されるのに十分なせん断下で行う。
【0208】
一般に、先ずエラストマーの70から100%を20から90秒、あるいは、温度が40℃から75℃になるまで混練する。次に、フィラーの3/4と、残余のゴムがある場合はその全量をミキサーに投入し、温度が90℃から150℃になるまで混練を続ける。次に、残余のフィラーと加工助剤を投入し、温度が140℃から190℃になるまで混練を続ける。これにより得られたマスターバッチ混合物を、開放型ミルでシート状に加工し、例えば硬化剤が添加されている場合は60℃から100℃まで放冷する。
【0209】
クレイとの混合は公知の方法で行われる。すなわち、ひとつの実施形態では、同時にポリマーに添加される。一般に、カーボンブラックとクレイがエラストマー混合物中に均一に分散した後、混練サイクルの後半に、加工助剤を添加する。
【0210】
この発明の架橋された組成物は、種々のエラストマー、フィラーとともに加工助剤を含有する。この発明の組成物は典型的には、ひとつの実施形態では、イソブチレンベースのエラストマーと、3から30phrの加工助剤を含有し、イソブチレンベースのエラストマーは、ハロゲン化されたイソブチレン−パラ−メチルスチレン共重合体、ブチルゴム、ハロゲン化され星状に分岐したブチルゴム(HSBB)、およびこれらの組合せである。
【0211】
ひとつの実施形態では、組成物中のハロゲン化されたブチルゴム成分の量が70から97phrであり、汎用ゴムの量が3から30phr、加工助剤の量が3から30phr、カーボンブラックなどのフィラーの量が20から100phrであり、剥離クレイの量が0.5から20phrである。別の実施形態では、剥離クレイの量が2から15phrである。フェノール樹脂、硫黄、ステアリン酸、酸化亜鉛などの硬化剤の量は0.1から10phrである。
【0212】
別の実施形態では、ハロゲン化されたブチルゴム成分は75から97phrであり、別の実施形態では80から97phrである。ひとつの実施形態では、加工助剤の量は3から30phr、カーボンブラックなどのフィラーの量は20から100phr、剥離クレイの量は0.5から20phrである。別の実施形態では、剥離クレイの量が2から15phrである。フェノール樹脂、硫黄、ステアリン酸、酸化亜鉛などの硬化剤の量は0.1から10phrである。
【0213】
また別の実施形態では、ハロゲン化されたブチルゴム成分は85から97phrであり、別の実施形態では90から97phrである。ひとつの実施形態では、加工助剤の量は3から30phr、カーボンブラックなどのフィラーの量は20から100phr、剥離クレイの量は0.5から20phrである。別の実施形態では、剥離クレイの量が2から15phrである。フェノール樹脂、硫黄、ステアリン酸、酸化亜鉛などの硬化剤の量は0.1から10phrである。
【0214】
この発明で有用なイソブチレンベースのエラストマーは、本願に開示した種々の他のゴムや樹脂とブレンドされ、特にナイロンや、ポリプロピレン、ポリプロピレン共重合体などのポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂とブレンドされる。
これらの組成物は、袋状容器(bladders)、内筒(envelopes)、タイヤのインナーチューブ、タイヤのインナーライナー、エアースリーブ(エアーバッグなど)、ダイヤフラムなどの空気バリア材、またその他の高い空気または酸素保持性が要求される用途に適している。
ひとつの実施形態では、硬化された組成物が製品に加工されたとき60℃におけるMOCON酸素透過率が約40.0(mm×cc)/(m
2×日
×mmHg)未満、あるいは約45.0(mm×cc)/(m
2×日
×mmHg)未満、あるいは約50.0(mm×cc)/(m
2×日
×mmHg)未満、あるいは別の実施形態では、約75.0(mm×cc)/(m
2×日
×mmHg)未満である。
【0215】
ひとつの実施形態では、空気バリア材は、少なくとも1種類のC
4からC
7のイソモノオレフィン誘導体単位と、少なくとも1種類のフィラーと、数平均分子量が400より大きい官能化された加工助剤と、少なくとも1種類の硬化剤とを組み合わせ、上記のようにして硬化させることで製造することができる。
【0216】
ひとつの実施形態では、エラストマー組成物は任意に、以下を含む。
a)例えば、炭酸カルシウム、クレイ、マイカ、シリカ、ケイ酸、タルク、二酸化チタン、澱粉、木粉、カーボンブラック、およびこれらの組合せ、などの少なくとも1種類のフィラー;
b)例えば、モンモリロナイト、ノントロナイト、バイデライト、ボルコンスコアイト、ラポナイト、ヘクトライト、サポナイト、ソーコナイト、マガダイト、ケニヤアイト、ステベンサイト、バーミキュライト、ハロイサイト、酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、およびこれらの組合せなどのクレイ、および任意に改質剤で処理されたこれらのクレイ;
c)例えば、芳香族系オイル、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、およびこれらの組合せなどの、少なくとも1種類のプロセスオイル;
d)例えば、プラストマー、ポリブテン、ポリアルファオレフィンオイル、およびこれらの組合せなどの加工助剤;
e)少なくとも1種類の硬化剤パッケージまたは硬化剤、あるいは、エラストマー組成物に施される、硬化された組成物を生じる少なくとも1の工程;
f)上記のa)からe)のいずれかの組合せ。
【0217】
上記のエラストマー組成物は、タイヤの生産に用いられるインナーライナーやインナーチューブの空気遮断膜の製造に用いられる。インナーライナーとタイヤの製造に用いられる方法および装置は周知である。(例えば、米国特許第6834695号、米国特許第6832637号、米国特許第6830722号、米国特許第6822027号、米国特許第6814116号、米国特許第6805176号、米国特許第6802922号、米国特許第6802351号、米国特許第6799618号、米国特許第6796348号、米国特許第6796347号、米国特許第6617383号、米国特許第6564625号、および米国特許第6538066号を参照。)
この発明は、インナーライナーやタイヤの製造方法によって限定されるものではない。
【0218】
<工業上の利用>
この発明の組成物は、押出加工、圧縮成形、ブロー成形、射出成形、積層により、繊維、積層体、フィルム、自動車部品、電気製品のハウジング、日用品、包装資材などの、いろいろな形状の物品に成形することができる。
【0219】
特に、この発明のエラストマー組成物はトラックのタイヤ、バスのタイヤ、自動車のタイヤ、オートバイのタイヤ、オフロード用のタイヤ、航空機のタイヤなどの、種々のタイヤ用途に有用である。エラストマー組成物は、最終製品に加工してもよく、あるいはタイヤのインナーライナーなどの最終製品の部品に加工してもよい。
加工される物品は空気バリア、空気遮断膜、フィルム、層(マイクロ層(microlayer)および/または多層)インナーライナー、インナーチューブ、側壁、トレッド、袋状容器(bladder)、内筒(envelope)などから選択される。
【0220】
別の用途では、エラストマー組成物は、エアークッション、空気バネ、空気ベローズ、ホース、アキュームレータバッグ、コンベア用ベルトや自動車用ベルトなどのベルトに用いることができる。
【0221】
エラストマー組成物はゴムの成型部品としても有用で、自動車のバンパー、排気管吊具、車体取付部品などに広く用いることができる。
【0222】
さらに、エラストマー組成物は接着剤、コーキング剤、シーラント、艶出し剤に用いることもできる。エラストマー組成物は、ゴムの配合の可塑剤、ストレッチ包装用フィルム組成物用の添加物、潤滑油の分散剤、電線ケーブル用の添加物としても有用である。
【0223】
また別の用途では、この発明のエラストマーまたはエラストマー組成物は、チューイングガムや薬品用の栓や蓋などの医薬用途、医療装置のコーティング、塗装用ローラーにも有用である。
【0224】
本願で言及した全ての先行技術文献、特許、刊行物、特許出願、試験方法(ASTMなど)、その他の文献は、それが許される法域において本願に参照として組み込まれる。
【0225】
数値の下限と上限が記載されている場合、いずれかの下限といずれかの上限の範囲が考慮される。
【0226】
この発明について実施形態により説明したが、本発明の範囲と精神を逸脱しない範囲で、当業者が容易に各種変更、置き換え、及び代替が可能であることは理解されよう。したがって、特許請求の範囲は、実施例に限定されず、各請求項の記載に基づき定められる。
【0227】
<実施例>
<測定方法>
測定方法を表1に示す。
硬化特性は、記載した温度において、MDR2000を用い振動角0.5°、またはODR2000を用い振動角3°で測定した。
試験片は記載した温度において硬化させた。この温度は典型的には150℃から160℃である。硬化時間は、t90+成形遅延に見合う時間である。「MH」と「ML」値は、それぞれ「最大トルク」と「最小トルク」の意味で用いている。「MS」は、ムーニースコーチ時間であり、「ML(1+4)」はムーニー粘度である。後者の測定誤差(2σ)は、±0.65ムーニー粘度単位である。「t」は分で表す硬化時間であり、「ts」は分で表すスコーチ時間である。
【0228】
硬化された組成物の物性は、ASTMに決められた標準試験方法に従って測定した(表1参照)。
引張り試験(引張り強さ、破断点伸び、モジュラス、破断エネルギー)は、室温でInstron4202またはInstron Series IX Automated Materials Testing System 6.03.08を用いて測定した。
引張り測定は、室温でダンベル型の試験片上の幅0.25インチ(0.62cm)、長さ1.0インチ(2.5cm)(2本の標線間)で測定した。試験片の厚みはシステムコンピュータに接続されたMitutoyo Digimatic Indicatorを用いて、手で測定した。
試験片を、クロスヘッドスピード20インチ/分(51cm/分)で引張り、応力/変形データを記録した。少なくとも3つの試験片の応力/変形値の平均値を記録した。引張り強さの誤差(2σ)は、±0.47MPaである。100%モジュラスの誤差(2σ)は、±0.11MPaである。破断点伸びの誤差(2σ)は、±13%である。表面硬度ショアAはZwick Duromaticを用いて測定した。
【0229】
酸素透過率は、R.A.PasternakらがVol.8 JOURNAL OF POLYMER SCIENCE:PART A−2(1970年)467ページに開示した、酸素のフィルム透過の動的測定方法の原理に基づいて動作するMOCON OxTran Model2/61を用いて測定した。
測定値の単位は(cc×mm)/(m
2×日×mmHg)である。一般に、測定方法は次の通りである。平らなフィルムまたはゴムのサンプルを、酸素を含まないキャリヤガスで内部の酸素をパージできる拡散セルの間に挟む。キャリヤガスをセンサまで導き、酸素濃度がゼロで安定するまで流通させる。次に、純酸素、または空気を、拡散セルのチャンバーの外側に導入する。フィルムを透過してチャンバーの内側に拡散した酸素を、酸素の拡散速度を測定するセンサに導く。
【0230】
空気透過率は、以下の方法で試験した。組成物のサンプルから得た、加硫され、薄い試験片(0.4mm±0.05mm)を拡散セルの中に取り付け、オイルバス中、65℃で状態調整した。空気が所与の試験片を透過するのに要した時間を測定して、空気透過性を評価した。試験片は、直径12.7cm、厚み0.38mmの円盤状であった。空気透過性の測定誤差(2σ)は、±0.245(×10
8)単位であった。
【0231】
ひとつの実施形態では、MOCONにより60℃で測定した組成物の
酸素透過率は56.
0(cc×mm)/(m
2×日×mmHg)未満である。
【0232】
ひとつの実施形態では、MOCONにより60℃で測定した組成物の
酸素透過率は50.
0(cc×mm)/(m
2×日×mmHg)未満である。
【0233】
ひとつの実施形態では、MOCONにより60℃で測定した組成物の
酸素透過率は45.
0(cc×mm)/(m
2×日×mmHg)未満である。
【0234】
ひとつの実施形態では、MOCONにより60℃で測定した組成物の
酸素透過率は37.
5(cc×mm)/(m
2×日×mmHg)未満である。
【0235】
この発明の組成物は、種々の物品の製造に使用できる。ひとつの実施形態では、物品は、タイヤ用の硬化可能なブラダー、タイヤ用の硬化可能な内筒、タイヤ用インナーライナー、タイヤ用インナーチューブ、およびエアースリーブからなる群から選択される。この発明の組成物で製造可能な他の有用な品物は、ホース、シール、成形加工品、ケーブルハウジングなどのTHE VANDERBILT RUBBER HANDBOOK(Ohm著、R.T. Vanderbilt Company, Inc. 社、1990年)の637−772ページに記載された品物である。
【表4】
【表5】
【0236】
<官能化されたポリマーの試験>
官能化されたアミン化ポリイソブチレン(PIBSA−PAM、実施例3)と、他のゴム加工用原料(表2参照)とを含む、臭素化ブチルゴムのタイヤインナーライナー処方を、噛合い型ロータを備えるKrupp内部ミキサーで二段階のプロセスで混練して調製した。
各混練段階では、1バッチの量を1200グラムとした。第1段階では、ロータの回転速度を60rpmで一定に保ち、全てのポリマーを投入し30秒混練した。次に、カーボンブラックの75%を投入し、引き続き30秒混練した。黒くないフィラー(クレイなど)と、加工助剤(プロセスオイル、NFP、この発明の官能化されたポリブテン)とを投入し、この混合物をさらに30秒混練した。残余のカーボンブラックと樹脂(表2のStruktol 40MSと、SP−1068)を投入し、この混合物を、合計240秒が経過するか、混合物の温度が華氏300度に達するかの、いずれかになるまで混練した。
第2段階は、噛合い型ロータを備えるKrupp内部ミキサーで、ロータの回転速度45rpmで混練(1バッチ1200グラム)した。冷却を最大にして内部ミキサーの温度を制御した。マスターバッチと、全ての硬化剤(ステアリン酸、酸化亜鉛、硫黄、促進剤)を投入し、この混合物を、合計150秒が経過するか、混合物の温度が華氏220度に達するかの、いずれかになるまで混練した。
Kruppによる各混練工程の後、ロール2本を備える開放型ロールミルを用いて生成物をシートにした。
同様にして、ナフテン系プロセスオイルを有する組成物である比較例1と、NFPポリイソブチレン加工助剤を有する比較例2を調製した。処方を表3に示す。
【表6】
【0237】
表4に示す硬化と、硬化後の物性試験の結果から、官能化されたアミン化ポリマーPIBSA−PAM(実施例3)を用いた場合、ナフテン系プロセスオイル(比較例1)に代えてPIB NFP加工助剤(比較例2)を用いたときと同様に、低いMACON空気透過性が維持されることが分かる。
実施例3は、ナフテン系プロセスオイルを有する組成物(比較例1)と比較して、高いムーニースコーチ時間、およびts2硬化時間を示す。これによりタイヤ製造工程の下流側での加工が容易になる。
実施例3は、表面硬度ショアAの値が、PIB NFP加工助剤(比較例2)を用いた場合よりも、ナフテン系プロセスオイルを用いた場合(比較例1)に近い。実施例3はまた、表4に示すように、引張り強さと破断エネルギーが、比較例1,2より大きい。他の硬化と硬化後の物性は同等である。
【表7】
【0238】
官能化されたアミン化ポリイソブチレン(PIBSA−PAM、実施例6)と、他のゴム加工用原料(表2参照)とを含む、星状に分岐した臭素化ブチルゴムのタイヤインナーライナー処方を調製した。これは、比較例1,2および実施例3と同様に、噛合い型ロータを備えるKrupp内部ミキサーで二段階のプロセスで混練して行なった。
また同様にして、ナフテン系プロセスオイルを有する組成物である比較例4と、NFPポリイソブチレン加工助剤を有する比較例5を調製した。表5に処方を示す。
【表8】
【0239】
表6に示す硬化と、硬化後の物性試験の結果から、PIBSA−PAM(実施例6)を用いた場合、ナフテン系プロセスオイル(比較例4)の場合と比較して、PIB NFP加工助剤(比較例5)を用いたときと同様の低いMACON空気透過性が得られることが分かる。
実施例6は、ナフテン系プロセスオイルを有する組成物(比較例4)と比較して、高いムーニースコーチ時間、およびts2硬化時間を示す。これによりタイヤ製造工程の下流側での加工が容易になる。
実施例6は、表面硬度ショアAの値が、PIB NFP加工助剤(比較例5)を用いた場合の高い値よりも、ナフテン系プロセスオイルを用いた場合(比較例4)に近い。他の硬化と硬化後の物性は同等である。
【表9】
【0240】
官能化されたアミン化ポリイソブチレン(PIBSA−PAM、実施例9)と、他のゴム加工用原料(表2参照)とを含む、臭素化イソブチレン−パラ−メチルスチレン共重合体ゴムのタイヤインナーライナー処方を調製した。これは、比較例1,2および実施例3と同様に、噛合い型ロータを備えるKrupp内部ミキサーで二段階のプロセスで混練して行なった。
また同様にして、ナフテン系プロセスオイルを有する組成物である比較例7と、NFPポリイソブチレン加工助剤を有する比較例8を調製した。表7に処方を示す。
【表10】
【0241】
表8に示す硬化と、硬化後の物性試験の結果から、PIBSA−PAM(実施例9)を用いた場合、ナフテン系プロセスオイル(比較例7)の場合と比較して、PIB NFP加工助剤(比較例8)を用いたときと同様の低いMACON空気透過性が得られることが分かる。
実施例9は破断エネルギーが比較例7,8より大きい。また表8に示すように、他の硬化と硬化後の物性、例えば100%と300%モジュラスや破断時伸びは、比較例8と比べて同等である。
【表11】
【0242】
官能化されたアミン化ポリイソブチレン(PIBSA−PAM、実施例13)と、他のゴム加工用原料(表2参照)とを含む、臭素化イソブチレン−パラ−メチルスチレン共重合体ゴムのタイヤインナーライナー処方を調製した。これは、比較例1,2および実施例3と同様に、噛合い型ロータを備えるKrupp内部ミキサーで二段階のプロセスで混練して行なった。
また同様にして、ナフテン系プロセスオイルを有する組成物である比較例10,11と、NFPポリイソブチレン加工助剤を有する比較例12を調製した。表9に処方を示す。
【表12】
【0243】
表10に示す硬化と、硬化後の物性試験の結果から、PIBSA−PAM(実施例13)を用いた場合、ナフテン系プロセスオイル(比較例10,11)の場合と比較して、PIB NFP加工助剤(比較例12)を用いたときと同様の低いMACON空気透過性が得られることが分かる。
実施例13は破断エネルギーが比較例10−12より大きい。また表10に示すように、他の硬化と硬化後の物性、例えばモジュラス、引張り強さや破断時伸びは、比較例12と比べて同等である。
【表13】