特許第5690488号(P5690488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5690488制御された剪断力を使用してスポロシストをオーシストから放出させる方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690488
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】制御された剪断力を使用してスポロシストをオーシストから放出させる方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/10 20060101AFI20150305BHJP
   A61K 39/012 20060101ALN20150305BHJP
   A61P 33/02 20060101ALN20150305BHJP
【FI】
   C12N1/10
   !A61K39/012
   !A61P33/02 173
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2009-549077(P2009-549077)
(86)(22)【出願日】2008年1月29日
(65)【公表番号】特表2010-517569(P2010-517569A)
(43)【公表日】2010年5月27日
(86)【国際出願番号】US2008001142
(87)【国際公開番号】WO2008118255
(87)【国際公開日】20081002
【審査請求日】2011年1月11日
(31)【優先権主張番号】60/900,233
(32)【優先日】2007年2月8日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/020,955
(32)【優先日】2008年1月28日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509173649
【氏名又は名称】エンブレックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ・アール・ハッチンス
(72)【発明者】
【氏名】ケリアン・ウィルソン
(72)【発明者】
【氏名】アンジェラ・ハートマン
(72)【発明者】
【氏名】ケリー・ミシェル・ハリス
【審査官】 名和 大輔
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−190634(JP,A)
【文献】 特開昭61−018724(JP,A)
【文献】 特表2006−510671(JP,A)
【文献】 特表平10−506920(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/113594(WO,A1)
【文献】 特開平10−182483(JP,A)
【文献】 特表2002−509941(JP,A)
【文献】 特表2007−531531(JP,A)
【文献】 特表2004−533814(JP,A)
【文献】 特表2004−535387(JP,A)
【文献】 特開2007−082552(JP,A)
【文献】 特表2003−518380(JP,A)
【文献】 特開平10−117794(JP,A)
【文献】 特開平05−017796(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/010040(WO,A1)
【文献】 特開昭57−159719(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00−5/28
MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
剪断力を適用することによりアイメリアオーシストから生存可能なスポロシストを放出させこれを回収する方法であって、その方法が:
(a)懸濁したオーシストを含有する溶液を調製すること;
(b)オーシストの直径に等しいか又はそれよりも大きい直径を有するチャンバーを有する細胞破壊装置を提供すること;
(c)剪断力が1分当り3.00×105sec-1から1分当り3.00×106sec-1の間の1分当りの剪断速度を生じるよう、連続する溶液の流れを細胞破壊装置のチャンバーに通し、オーシストから無傷の生存可能なスポロシストを放出させること;
(d)無傷の生存可能なスポロシストを溶液から回収すること;
を含み、チャンバーの直径が、75μmから400μmの間であり、(c)が2000から4000psiの間で行われる、方法。
【請求項2】
オーシストが装置のチャンバー内の非直線的な流路に沿って移動し、非直線的な流路の直径がオーシストの直径に等しい又はそれよりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
非直線的な流路が、Y形またはZ形のいずれかである、請求項に記載の方法。
【請求項4】
オーシストが、連続する流れを細胞破壊装置に供する前に、それらの壁を脆弱化するための前処理に供され、前処理が:(a)化学的にオーシストを処理してその壁を脆弱化すること、(b)熱的にオーシストを処理してその壁を脆弱化すること、(c)酵素的にオーシストを処理してその壁を脆弱化すること、及び(d)(a)〜(c)の任意の組み合わせ、から成るグループから選択される、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
オーシストが、アイメリアマキシマ、アイメリアミティス、アイメリアテネラ、アイメリアアセルブリナ、アイメリアブルネッティ、アイメリアネカトリックス、アイメリアプレコックス、アイメリアミバティ、アイメリアメレアグリミティス、アイメリアアデノイデス、アイメリアガロパボニス、アイメリアディスパーサ、アイメリアイノキュア、アイメリアスブロツンダ、アイメリアアーサーター、アイメリアバクエンシス、アイメリアクランダリス、アイメリアファウレイ、アイメリアグラヌロサ、アイメリアイントリカータ、アイメリアマルシカ、アイメリアオビノイダリス、アイメリアパリダ、アイメリアパルバ、アイメリアウェイブリッジエンシス、アイメリアインテスティナリス、アイメリアベイドフスキィ、アイメリアピリフォルミス、アイメリアコエキコラ、アイメリアイレシデュア、アイメリアフラベセンス、アイメリアエキシグア、アイメリアマグナ、アイメリアパーフォランス、アイメリアメディア、アイメリアスティダイ、及びその任意の組み合わせから成るグループから選択されるアイメリアオーシストである、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
連続するオーシスト溶液の流れを細胞破壊装置内で剪断力に供することが、生存可能なスポロゾイトも放出させる、請求項1〜のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は2007年2月8日に提出された米国仮出願第60/900233号の利益及び優先権を請求するものであって、その開示内容は、参照により、その全体が記述されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は一般的にオーシストに関係し、更に詳しくは、スポロシストをオーシストから放出させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
家禽鶏のコクシジウム症は、アイメリア(Eimeria)属の寄生原虫によって引き起こされる疾患である。アイメリア(Eimeria)種のオーシストは環境の至るところに存在し、家禽敷料中に何ケ月間も生き残る。オーシストを摂取すると、種特異的な様式で腸管の様々な部位への感染をもたらす。その生物は、数日間かけて腸管内で増殖し、次世代のオーシストが糞便排泄されることになる。複数サイクルの感染で免疫が誘導され、そして感染が群に対して早期に、かつ群間で一様な用量で提示される場合には、数サイクルの曝露で発達した免疫は、極めて強固になる可能性がある。
【0004】
対照的に、感染がトリに一様な様式で提示されないと、未感染のトリが突然大量感染し、飼料転換及び体重増加に関する成績不振につながり、併せて二次感染のリスクが高まるという状況が生じる可能性がある。現在、家禽産業においてコクシジウム症の抑制に用いられる最も一般的な方法は、予防接種ではなく、むしろ飼料に入れた抗コクシジウム薬の投与である。ワクチンの使用割合の低さは、しばしば従来の投与経路及び投与時期である飼育施設での飼料若しくは水を経由した投与、又は孵化場でのスプレーキャビネットワクチン接種による投与が、投与の一様性において不確実であることに因る。孵化場での投与中のワクチン送達の一様性を改善し、それによって群内により一様防御を提供することに関心が高まっている。
【0005】
近年、卵内ワクチン接種技術が、生きたオーシストに基づくコクシジウム症ワクチンの投与に適用できることが見出されている(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3を参照)。卵内投与経路は、胚がまだ卵内にあるうちに、ワクチンの均一な投与量をそれぞれの胚に送達する便利な方法を提供する。鳥類ワクチンの卵内送達は、現在、米国で毎年生産される90億羽のブロイラーの約85%に実施されており、米国外で毎年生産される210億羽中でのパーセントも増加している(特許文献4を参照)。従って、生きた卵内送達コクシジウム症ワクチンの潜在的な市場は、孵化後送達コクシジウム症ワクチンの市場よりもかなり大きい。
【0006】
アイメリア(Eimeria)属のオーシストは、オーシストの保護壁内に4個のスポロシストを含む。スポロシストは、ワクチン、生死判別試験、スポロゾイト生産など、様々な目的に使うことができる。従来のオーシスト破壊及びスポロシスト放出の方法には、ガラスビーズを使用する。オーシストをガラスビーズと共に振盪すると、オーシスト壁にひび割れを起こし、その中に保持されたスポロシストを放出する。しかし、オーシストを高いパーセントで破壊するためには一般にかなりの振盪が必要であり、継続的な振盪作用は先に放出されたスポロシストを劣化させる可能性がある。同様の問題は、スポロシスト放出のための組織粉砕器の使用のような、従来の他のスポロシスト放出の方法にも存在する。処理の早期に放出されたスポロシストは、粉砕処理を継続することによって壊される可能性がある。
【0007】
スポロシストをオーシストから放出させる従来の他の方法は、スポロシストをオーシストから化学的に放出させることを含む。典型的には、オーシストを、例えば炭酸ガスを含む緩衝液に懸濁する。またシステイン塩酸塩も含有させる。この方法は、オーシストの卵門領域におけるジスルフィド結合を還元する。最終的に、スポロシストは、緩められた卵門キャップを通って放出され得る。残念ながら、化学的放出単独では、必ずしもスポロシスト放出のための効率的な方法とは限らない。
【0008】
斯くの如く、スポロシストを胞子形成オーシストから放出させる従来の方法は非効率的であり、生存能力のある一部の利用可能なスポロシストしか産生するに過ぎない。従って、スポロシストをオーシストから放出させる方法で、従来の方法に関連する問題を克服する改善された方法の必要性が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第6,500,438号(Pfizer, Inc.)
【特許文献2】米国特許第6,495,146号(Pfizer, Inc.)
【特許文献3】米国特許第6,627,205号(Pfizer, Inc.)
【特許文献4】米国特許第4,458,630号(米国政府)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の議論に鑑み、オーシストの溶液に、オーシスト壁を破壊して生存可能なスポロシストを放出させるのに十分な制御された剪断力を加え、そこから生存可能なスポロシストを放出させる、オーシストからスポロシストを放出させる方法が提供される。本発明の幾つかの実施態様によれば、オーシストの水溶液は、1つ又はそれ以上のMicrofluidizer(登録商標)プロセッサチャンバーユニットを、所定のチャンバー径、チャンバー形状及び圧力の条件下で通される。オーシストはチャンバー壁に衝突して制御された高い剪断力を受け、オーシスト壁が開裂して無傷の(intact)スポロシストを放出する。この方法は、オーシスト壁を高いパーセントで割ることができ、高い割合でスポロシストの回収を可能にするため、特にスポロシストの放出に有効である。更に、放出されたスポロシストへのダメージは殆んど無く、回収されたスポロシストを高いパーセントで生存したまま残すことを可能にする。
【0011】
いくつかの実施態様では、オーシストは、制御された剪断力が溶液に加えられる前に、その壁を脆弱化するために処理される。例えば、オーシストを熱的処理、化学的処理、酵素的処理してもよく、又は熱的、化学的及び酵素的処理の様々な組み合わせで処理してもよい。
【0012】
幾つかの実施態様では、回収されたスポロシストは、保存のために凍結保存される。幾つかの実施態様において、回収されたスポロシストは、ワクチン及び/又は診断アッセイに使用される。
【0013】
幾つかの実施態様において、スポロゾイトを回収されたスポロシストから脱嚢させる。これらのスポロゾイトは、ワクチン及び/又は診断アッセイの製造に使用される。
【0014】
本発明の実施態様に従って、スポロシストを回収できる例示的なオーシストは、アイメリアマキシマ(Eimeria.maxima)オーシスト、アイメリアミティス(E.mitis)オーシスト、アイメリアテネラ(E.tenella)オーシスト、アイメリアアセルブリナ(E.acervulina)オーシスト、アイメリアブルネッティ(E.brunetti)オーシスト、アイメリアネカトリックス(E.necatrix)オーシスト、アイメリアプレコックス(E.praecox)オーシスト、アイメリアミバティ(E.mivati)オーシスト、及びそれらの任意の組合せを含むグループから選択されるアイメリア(Eimeria)属オーシスト; アイメリアメレアグリミティス(E.meleagrimitis)オーシスト、アイメリアアデノイデス(E.adenoeides)オーシスト、アイメリアガロパボニス(E.gallopavonis)オーシスト、アイメリアディスパーサ(E.dispersa)オーシスト、アイメリアイノキュア(E.innocua)オーシスト、及びアイメリアスブロツンダ(E.subrotunda)オーシスト、並びにそれらの任意の組合せを含むグループから選択されるアイメリア(Eimeria)属オーシスト;アイメリアツェルニィ(E.zuernii)オーシスト、アイメリアボビス(E.bovis)オーシスト、及びそれらの任意の組合せを含むグループから選択されるアイメリア(Eimeria)属オーシスト;アイメリアアーサーター(E.ahsata)オーシスト、アイメリアバクエンシス(E.bakuensis)オーシスト、アイメリアクランダリス(E.crandallis)オーシスト、アイメリアファウレイ(E.faurei)オーシスト、アイメリアグラヌロサ(E.granulosa)オーシスト、アイメリアイントカタ(E.inthcata)オーシスト、アイメリアマルシカ(E.marsica)オーシスト、アイメリアオビノイダリス(E.ovinoidalis)オーシスト、アイメリアパリダ(E.pallida)オーシスト、アイメリアパルバ(E.parva)オーシスト、アイメリアウェイブリッジエンシス(E.weybridgensis)オーシスト、及びそれらの任意の組合せを含むグループから選択されるアイメリア(Eimeria)属オーシスト;そして、アイメリアインテスティナリス(E.intestinalis)オーシスト、アイメリアベイドフスキイ(E.vejdovskyi)オーシスト、アイメリアピリフォルミス(E.piriformis)オーシスト、アイメリアコエキコラ(E.coecicola)オーシスト、アイメリアイレシデュア(E.irresidua)オーシスト、アイメリアフラベセンス(E.flavescens)オーシスト、アイメリアエキシグア(E.exigua)オーシスト、アイメリアマグナ(E.magna)オーシスト、アイメリアパーフォランス(E.perforans)オーシスト、アイメリアメディア(E.media)オーシスト、アイメリアスティダイ(E.stiedai)オーシスト、及びそれらの任意の組合せを含むグループから選択されるアイメリア(Eimeria)属オーシストである。
【0015】
幾つかの実施態様において、オーシストの溶液に、オーシスト壁を破壊してオーシストからスポロゾイトを放出させるのに十分な制御された剪断力を加え、オーシストからスポロゾイトを放出させる方法が提供される。本発明の幾つかの実施態様によれば、オーシストの水溶液は、1つ又はそれ以上のMicrofluidizer(登録商標)プロセッサチャンバーユニットを、所定のチャンバー径、チャンバー形状及び圧力の条件下で通過させる。オーシストはチャンバー壁に衝突しそして制御された高い剪断力を受け、オーシスト壁が開裂して無傷のスポロゾイトを放出する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の実施態様は、従来の方法よりも有利である。例えば、本発明の実施態様は再現性があり、一定した収率でスポロシストを産生する。対照的に、従来のガラスビーズ及び組織粉砕の方法は、それらを作業者が実施するという点で変動し易く、一貫性のないスポロシスト収率になる可能性がある。また、本発明の実施態様は、規模拡大が可能であり、ラージスケールでのスポロシストの経済的生産を可能にする。対照的に、従来のガラスビーズ及び組織粉砕の方法は、大量生産に適応させることは容易ではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の幾つかの実施態様に従って、スポロシストをオーシストから放出させる操作のフローチャートである。
図2】本発明の幾つかの実施態様に従って、スポロシストをオーシストから放出させる操作のフローチャートである。
図3】Microfluidizer(登録商標)プロセッサのブロック図である。
図4】本発明の幾つかの実施態様に従って、放出されたスポロシストを処理する操作のフローチャートである。
図5】本発明の幾つかの実施態様に従って、放出されたスポロシストを処理し、放出されたスポロシストからスポロゾイトを脱嚢させる操作のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の好ましい実施態様を示した添付の図面を参照して、本発明をさらに十分に説明する。しかし、本発明は、多くの異なる形態で具体化される可能性があり、本明細書で説明した実施態様に限定されると解釈すべきではない;むしろ、これらの実施態様は本開示を徹底的に完全なものにし、そして本発明の範囲を当業者に十分に伝えるものとなるように提供される。
【0019】
類似の数字は、本明細書の全体を通じて類似の要素を指す。図面において、明瞭化のために特定のライン、層、成分、要素、又は外観の太さを、強調する場合がある。本明細書で言及する全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0020】
本明細書で用いる用語は、特定の実施態様を説明することだけの目的のためであり、本発明を限定することを意図するものではない。本明細書で用いるように、文脈がそれ以外を明確に指示しない限り、単数形の「1つの(a, an)」及び「その(the)」には、複数形も同様に含まれるものとする。更に、当然のことながら、用語の「含む(comprises)」及び/又は「含んでいる(comprising)」は、本明細書で使われる場合、記載された特徴、工程、操作、要素、及び/又は成分の存在を特定するが、1つ又はそれ以上の他の特徴、工程、操作、要素、成分、及び/又はそれらのグループの存在又は付加を除外しない。本明細書で用いるように、用語の「及び/又は」は、関連して挙げられた項目の1つ又はそれ以上のいずれかおよびあらゆる組み合わせを含む。本明細書で用いるように、「XとYの間」及び「約XとYの間」のような語句は、X及びYを含むと解釈されるべきである。本明細書で用いるように、「約XとYの間」のような語句は、「約Xと約Yの間」を意味する。本明細書で用いるように、「約XからYまで」のような語句は、「約Xから約Yまで」を意味する。
【0021】
他のことを定義していない限り、本明細書で用いるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じような意味を有する。更に、当然のことながら、一般に使用される辞書に定義されているような用語は、本明細書及び関連技術の文脈における意味に合致する意味を有すると解釈すべきであり、本明細書に明示的に定義していない限り、理想的な又は過度に形式的な意味で解釈すべきではない。よく知られた機能又は構造については、簡潔及び/又は明瞭にするために、詳細に説明しない場合がある。特に具体的に指示しない限り、操作(又は工程)の順序は、請求項又は図面に示される順序に限定されない。
【0022】
本発明の実施態様は、医学的及び獣医学的使用のため、並びに診断及び/又は研究目的のため、スポロシストをオーシストから放出させることに適している。オーシストは、哺乳類及び鳥類の対象(subject)を含んで、任意の動物対象に感染する原生動物由来のものであればよい。用語の「動物」及び「動物対象」は哺乳類及び/又は鳥類の対象を含むが、これらに限定されない。好適な哺乳類の対象としては、霊長類の対象(例えば、ヒト対象及びサルの様なヒト以外の霊長類対象)、ブタ、ウシ(例えば、畜牛)、ヤギ、ウマ
、ネコ、ヒツジ、イヌ、ネズミ(例えば、マウス、ラット)及びウサギ目動物の対象が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書に用いられる用語の「鳥類」及び「鳥類対象」(即ち、「トリ」及び「トリ対象」)には任意の鳥類の種の雄及び雌が含まれるが、主として卵、食肉又は愛玩動物として商業的に飼育される家禽を包含することを意図している。従って、用語の「鳥類」及び「鳥類対象」は、特に、ニワトリ、シチメンチョウ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、キジ、インコ、オウム、コッカトゥー(cockatoo)、オカメインコ、ダチョウ、エミューなどを包含するものとするが、これらに限定されない。特定の実施態様では、鳥類対象は、ニワトリ又はシチメンチョウの対象である。本明細書で用いるように、「鳥類」及び「鳥類対象」は、卵内の鳥類胚又は孵化後の鳥類を指してもよい。
【0024】
用語の「凍結保存する」及び「凍結保存(すること)」とは、本発明の当業者にはよく理解されており、細胞及び他の材料を凍結し非常に定温で保存することを言う。
【0025】
本発明は、一般的にスポロシストを原生動物のオーシストから放出させる方法に関する。そのような方法の用途としては、例えば、ワクチンの製造方法がある。原生動物の多くは、「オーシスト」として呼ばれるライフステージを形成する。本発明を実施して、アイメリア属、シクロスポラ(Cyclospora)属、トキソプラズマ(Toxoplasma)属、ネオスポラ(Neospora)属及びイソスポラ(Isospora)属を含むがこれらに限定されない、原生動物の任意の種のスポロシストを含有するオーシストから、スポロシストを放出させることができる。
【0026】
本発明は、また、原生動物のオーシストからスポロゾイトを放出させる方法に関する。幾つかの原生動物は、「オーシスト」と呼ばれるが、オーシストの中にスポロゾイトを含有し、スポロシストを産生しない、ライフステージを形成する。そのような方法の用途としては、例えば細胞株感染、感染性アッセイ、ワクチン製造、又は診断アッセイを含むがこれらに限定されない、オーシストからスポロゾイトを放出させる方法がある。本発明を実施して、オーシスト内にスポロゾイトを含有する、クリプトスポリジウム(Cryptosporidium)属及びプラスモジウム(Plasmodium)属を含むがこれらに限定されない任意の種の寄生虫のオーシストからスポロゾイトを放出させることができる。
【0027】
用語の「原生動物」、「オーシスト」、「スポロシスト」、「スポロゾイト」及び「メロゾイト」は、業界で認められた意味を有する。当業者には当然ながら、殺処理した原生動物、オーシスト、スポロシスト、スポロゾイト及びメロゾイトを使ってワクチンを製剤化できるが、特に指示がない限り、これらの用語は、弱毒化した形態を含んで、生きた(即ち、生存可能な)原生動物、オーシスト、スポロシスト、スポロゾイト及びメロゾイトを呼ぶものとする。当業者には当然ながら、通常死菌ワクチンは、最初に生存可能な生物を精製することによって製造される。同様に、遺伝子的に改変した原生動物、オーシスト、スポロシスト、スポロゾイト及びメロゾイトも本発明に包含される。
【0028】
「アイメリア属」という用語は、アイメリア属の1つ又はそれ以上の種を指す。「アイメリア属」と言う用語は、鳥類(例えば、ニワトリ、シチメンチョウ)又は哺乳類(例えば、ウシ、ヒツジ又はウサギ)の種に感染するアイメリア属の株又は種を含むが、これらに限定されない。そのようなアイメリア属の種としては、ニワトリに見出される、アイメリアテネラ、アイメリアアセルブリナ、アイメリアマキシマ、アイメリアネカトリックス、アイメリアミティス、アイメリアプレコックス、アイメリアミバティ及びアイメリアブルネッティを含むがこれらに限定されないアイメリア属;シチメンチョウに見出される、アイメリアメレアグリミティス、アイメリアアデノイデス、アイメリアガロパボニス、アイメリアディスパーサ、アイメリアイノキュア及びアイメリアスブロツンダを含むがこれに限定されないアイメリア属;及びウシに感染する、アイメリアボビス及びアイメリアツェルニィを含むがこれに限定されないアイメリア属;アイメリアアーサーター、アイメリアバクエンシス、アイメリアクランダリス、アイメリアファウレイ、アイメリアグラヌロサ、アイメリアイントリカータ(E.intricata)、アイメリアマルシカ、アイメリアオビノイダリス、アイメリアパリダ、アイメリアパルバ、アイメリアウェイブリッジエンシスなどの、しかしこれらに限定されないヒツジに感染するアイメリア属の種;及び、アイメリアインテスティナリス、アイメリアベイドフスキィ、アイメリアピリフォルミス、アイメリアコエキコラ、アイメリアイレシデュア、アイメリアフラベセンス、アイメリアエキシグア、アイメリアマグナ、アイメリアパーフォランス、アイメリアメディア及びアイメリアスティダイを含むがこれらに限定されないウサギに感染するアイメリア属の種が挙げられる。また、「アイメリア属」という用語には、野生型株、早熟で又は別の方法で選択された株、弱毒化株、及び例えば照射、化学処理などによって弱毒化されているオーシストを含むがこれらに限定されない上記のすべてのアイメリア属の種が含まれる。更に、用語の「アイメリア属」は、また、新たに発見されるアイメリア属の株又は種を含む。最後に、用語の「アイメリア属」は、特に断らない限り生存可能なアイメリア属を対象とするが、生存可能な及び殺処理されたアイメリア属を包含する。
【0029】
アイメリアのオーシストを含む組成物の用途としては、コクシジウム症に対してトリを免疫にする方法がある。コクシジウム症に対してトリを免疫にする方法は業界に公知であり、卵内ワクチン接種法(例えば、Pfizer Inc.の米国特許第6,500,438号;米国特許第6,495,146号;及び米国特許第6,627,205号;)及び孵化後ワクチン接種法(例えば、Auburn Research Foundation の 米国特許第3,147,186号;National Research Development Corporation の米国特許第5,055,292号及び米国特許第4,438,097号)が挙げられる。
【0030】
「原生動物」という用語には、野生型株、早熟で又は別の方法で選択された株、弱毒化株、及び例えば照射、化学処理などによって弱毒化されたオーシストが含まれる。更に、「原生動物」という用語はまた、新たに発見される原生動物の株又は種を含む。最後に、用語の「原生動物」は、他に断らない限り生存可能な原生動物を対象とするが、生存可能な及び殺処理された原生動物を包含する。オーシストなどの「生産する」、「生産すること」又は「生産」という用語は、一般的に、動物からオーシストを採取する過程及び糞便物質からオーシストを精製する過程を指す。
【0031】
アイメリア(Eimeria)属オーシストのようなオーシストを生産する方法は、業界で周知されている(例えば、Auburn Research Foundation の 米国特許第3,147,186号;Internationale Octrooi Maatschappij“Octropa”B.V. の米国特許第4,544,548号;Unilever Patent Holdingsの米国特許第4,863,731号;Pfizer, Inc.
の国際公開第00/50072号;Embrex, Inc.の国際公開第03/020917号;及びNovus International, Inc.の国際公開第02/37961号;Hammond et al., (1944) Amer. J. Vet. Res. 5:70;Hill et al., (1961) J. Parasit. 47:357;Jackson, (1964) Parasitology 54:87;Lotze et al., (1961) J. Parasit. 47:588;Schmatz et al., (1984) J. Protozool. 31:181;Whitlock, (1959) Aust. Vet. J. 35:310;Kowalik et al., (1999) Parasitol. Res. 85:496-499 を参照)。
【0032】
本発明の幾つかの実施態様に従って胞子形成オーシストからスポロシストを放出させる方法を、図1〜2を参照して今から説明する。最初に、胞子形成オーシストを熱的に、及び/又は化学的に、及び/又は酵素的に前処理してオーシストの壁を脆弱化する(ブロック100)。熱的、化学的及び/又は酵素的処理によって引き起こされる脆弱化は、オーシスト壁をその後に加えられる剪断力による破壊を受け易くする。典型的な熱処理は、オーシストを37℃と41℃の間で0.5時間から2時間の加熱が含まれるが、これに限定されない。典型的な化学的処理は、次亜塩素酸塩溶液、又は溶存二酸化炭素及びシステイン塩酸塩、同様にタウロデオキシコール酸を含有する水溶液が含まれるが、これに限定されない。典型的な酵素的処理は、例えばペプシン及び種々のホスホリパーゼを含むが、これに限定されない。胞子形成オーシストの熱的、化学的及び/又は酵素的な前処理は任意であり、本発明の実施態様において必須ではない。更に、特定のタイプの胞子形成オーシストは、その壁を脆弱化する前処理を必要としない場合がある。熱、化学、及び/又は酵素処理の様々な組み合わせを使用することができる。
【0033】
懸濁した胞子形成オーシストを含む水溶液を調製する(ブロック110)。典型的な水溶液としては、ハンクスの平衡塩類溶液(HBSS)、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、RPMI培地、DMEM培地、又はカゼインなどのタンパク質、若しくはカゼイン加水分解物若しくは大豆タンパク質加水分解物のようなタンパク質の加水分解物と組み合わせた上記の溶液が挙げられるが、これらに限定されない。次いで、水溶液には、オーシストの壁を破り、スポロシストをそれから放出させるのに十分な剪断力が加えられる(ブロック120)。放出されたスポロシストは、水溶液から回収される(ブロック130)。回収されたスポロシストは、次の処理に進めてもよく(ブロック140)、及び/又は凍結保存してもよい (ブロック150)。
【0034】
図2を参照するに、本発明の幾つかの実施態様によれば、オーシストの水溶液に、オーシスト壁を破りそこからスポロシストを放出させるのに十分な剪断力を加える(ブロック120)ことは、その水溶液を加圧下(例えば、約2000psiと約6000psiの間)でMicrofluidizer(登録商標)プロセスチャンバーを通過させること(ブロック122)によって行われる。Microfluidizer(登録商標)プロセッサは、Microfluidics Corporation, 30 Ossipee Road, Newton, MA から入手可能である。Microfluidizer(登録商標)プロセッサは、精密に規定されたマイクロチャネル又はチャンバー中、溶液の高圧液流を超高速で衝突させることを可能にする[Constant Systems Ltd., Daventry, Northants, NN114SD、England, UKによって製造されたConstant Cell Disruption System を含め(しかしこれに限定されない)、その他の細胞破壊装置を使用することができる]。本発明の実施態様は、Microfluidizer(登録商標)プロセスチャンバーの使用に限定されない。
【0035】
Microfluidizer(登録商標)プロセスチャンバーは、そこを通って流れる溶液に剪断と衝突を併せた力を加える。各チャンバーは固定形状で設計され、生成物の流れを高速度に加速するように構成される。固定した形状の構造によって、加えられる剪断力を精密に制御し、そしてモニターすることができる。
【0036】
剪断力の制御は、チャンバー形状、チャンバー直径及び加える圧力の規定された組み合わせを使って達成される。制御されるプロセスの他の側面としては、粘性、比重、化学組成、浸透圧、pH及び温度などのパラメータを含み、使用する溶液の特性及び処方を挙げることができる。最適化された条件は、当業者の日常的な手法によって決定することができる。方法のコンシステンシーは、規定した条件下で緩衝液単独を用いて試験走行を行い、流速を測定することによって確保できる。そのような試験によって経時的に流量を追跡することにより、機器の磨耗又はシステム上の他の不良の兆候が得られ、システムを標準動作条件に戻すために、是正措置をとることができる。
【0037】
本発明の幾つかの実施態様に従って使用される典型的なMicrofluidizer(登録商標)プロセッサチャンバーは、「Y形」及び「Z形」の構造を備えたチャンバーを含む。Y形チャンバーは、1点に集まる2つの流入経路及び単一流路としての出口を含む。Z形チャンバーは、Z形の進路を備えた単一流路を有する。スポロシストの最適回収のためのチャンバー構造は、種によって変動する可能性がある。従って、種々の種類のオーシスト用に、種々のチャンバー構造が選択される。また、Microfluidizer(登録商標)プロセッサチャンバーを直列に配置してもよい。
【0038】
また、Microfluidizer(登録商標)プロセッサチャンバーは、種々の直径を有してもよい。例えば、約75μmと約500μmの間の直径を使うことができる。また、異なる直径のMicrofluidizer(登録商標)プロセッサチャンバーを、直列に配置してもよい。
【0039】
本発明者らは、溶液中のオーシストの直径と実質的に等しいか又はそれより大きい直径を有するチャンバーが、特に効果的であることを見出した。例えば、一般的に直径が約20μmから40μmであるアイメリアマキシマオーシストに対しては、直径が約300μmの反応チャンバーが好ましい。しかし、約75μmから約400μmの範囲の直径もまた使用できる。典型的には、使用される流路はZ形構造であるが、Y形構造又は他の構造を使用することもできる。流量は、通常、圧力が1000〜5000psiの範囲では、1分当たり約500mLから約2000mLの範囲である。典型的に、アイメリアマキシマオーシストからスポロシストを放出させるために必要な剪断力の量(amount)は、1分当り約3.00×105sec-1から1分当り約1.50×106sec-1の範囲である。
【0040】
一般的に直径が約15μmから25μmであるアイメリアテネラオーシスト及び一般的に直径が約10μmから15μmであるアイメリアアセルブリナオーシストに対しては、直径が100μmのMicrofluidizer(登録商標)プロセッサ反応チャンバーが好ましい。しかし、約75μmから約400μmの範囲の直径も、また、使用することができる。使用される流路は、一般的にZ形構造であるが、Y形構造又は他の構造を使用してもよい。流量は、通常、圧力が1000〜4000psiの範囲では、1分当たり約100mLから約250mLの範囲である。典型的に、アイメリアテネラ又はアイメリアアセルブリナオーシストからスポロシストを放出させるために必要な剪断力の量は、1分当り約1.00×106sec-1から1分当り約3.00×106sec-1の範囲である。
【0041】
何れの種のアイメリア属オーシストに対しても、特に、オーシストが熱的に、化学的に又は酵素的に前処理されている場合、スポロシストをオーシストから放出させるのにより低い剪断力を生じる条件を使うことができる。チャンバーの複数回通過を用いてもよいが、1回通過が好ましい。
【0042】
本発明の実施態様は、特定のオーシストに対する特定のチャンバー直径に限定されない。本発明の実施態様は、すべてのタイプの構造及び直径を有するチャンバーを利用することができる。
【0043】
図3を参照すると、Microfluidizer(登録商標)プロセッサ(200)が図解されている。図解されたMicrofluidizer(登録商標)プロセッサ(200)には、胞子形成オーシストの水溶液が入った注入口リザーバ(202)が含まれる。水溶液はポンプ(例えば、定圧増圧ポンプなど)(204)を介して加圧され、くみ上げられ、チャンバー(例えば、Y形、Z形チャンバーなど、)(206)に通される。加圧水溶液中のオーシストは、チャンバー(206)内で剪断及び衝突力が加えられ、オーシスト壁からスポロシストを放出させる。放出されたスポロシストを含む水溶液は、排出口リザーバ(208)に集められる。
【0044】
図1に戻って参照するに、本発明の幾つかの実施態様によれば、オーシストから放出され回収されるスポロシストのパーセント(即ち、スポロシスト収率)を測定することができる(ブロック160)。スポロシスト収率は、例えば顕微鏡検査を介して評価してもよい。顕微鏡検査で回収されたとされるスポロシストは、その生存、非生存又はその混合のいずれかである可能性がある。しかし、生存可能な状態は、顕微鏡検査単独では判定できない可能性がある。従って、放出された生存可能なスポロシストのパーセント(即ち、生存能収率)の測定も行われる。生存能収率の測定には、インビボ手法を必要とする場合がある。適切なインビボ手法には、スポロシスト製剤を強制経口投与で鳥類対象に投与し、生じるオーシストの排出量を、同数の無傷のオーシストの投与で得られる排出量と比較することが含まれる。
【0045】
図4を参照すると、回収されたスポロシストは、様々な方法で、そして様々な目的のために処理することができる。例えば、ワクチンは、回収されたスポロシストから製造され(ブロック141)、保管のために凍結保存することができる(ブロック142)。図5を参照すると、本発明の幾つかの実施態様によれば、回収されたスポロシストを処理して、そこからスポロゾイトを放出させる(即ち、脱嚢させる)ことができる(ブロック143)。放出されたスポロゾイトは、ワクチンの製造のために(ブロック144)、又は何か他の目的のために使用することができる。脱嚢したスポロゾイトから製造されたワクチンは、保管のために凍結保存できる(ブロック145)。
【0046】
いかなる種類のオーシストでも、本発明の実施態様に従って処理することができる。特に好適なオーシストは、アイメリアマキシマオーシスト、アイメリアミティスオーシスト、アイメリアテネラオーシスト、アイメリアアセルブリナオーシスト、アイメリアブルネッティオーシスト、アイメリアネカトリックスオーシスト、アイメリアプレコックスオーシスト、アイメリアミバティオーシスト、及びそれらの任意の組合せ;アイメリアメレアグリミティスオーシスト、アイメリアアデノイデスオーシスト、アイメリアガロパボニスオーシスト、アイメリアディスパーサオーシスト、アイメリアイノキュアオーシスト、アイメリアスブロツンダオーシスト、及びにそれらの任意の組合せ;アイメリアツェルニィオーシスト、アイメリアボビスオーシスト、及びそれらの任意の組合せ;アイメリアアーサーターオーシスト、アイメリアバクエンシスオーシスト、アイメリアクランダリスオーシスト、アイメリアファウレイオーシスト、アイメリアグラヌロサオーシスト、アイメリアイントカタオーシスト、アイメリアマルシカオーシスト、アイメリアオビノイダリスオーシスト、アイメリアパリダオーシスト、アイメリアパルバオーシスト、アイメリアウェイブリッジエンシスオーシスト、及びそれらの任意の組合せ;アイメリアインテスティナリスオーシスト、アイメリアベイドフスキイオーシスト、アイメリアピリフォルミスオーシスト、アイメリアコエキコラオーシスト、アイメリアイレシデュアオーシスト、アイメリアフラベセンスオーシスト、アイメリアエキシグアオーシスト、アイメリアマグナオーシスト、アイメリアパーフォランスオーシスト、アイメリアメディアオーシスト、アイメリアスティダイオーシスト、及びそれらの任意の組合せを含むが、これらに限定されないアイメリア属オーシストである。
【0047】
本発明を説明してきたが、単に例示目的でのみ本明細書に含められ、且つ本発明を制限することを意図しない以下の実施例により、本発明をより詳細に説明する。
【0048】
〔実施例1〕
広範囲のパラメータ値にわたって、スポロシスト回収及びオーシスト破壊を描くために一連の実験を行った。各実験は、500mLのHBSS中合計約2×108個の胞子形成オーシスト(mL当たり4×105胞子形成オーシスト)を使用した。サブサンプルを、Microfluidizer(登録商標)プロセッサ処理前に、計数のために取った。試験しようとするチャンバーの直径は、種によって、1)アイメリアマキシマ:200、300、400μm直径のチャンバー;2)アイメリアテネラ:200、300μm直径のチャンバー;3)アイメリアアセルブリナ:125μm直径のチャンバー、に変えた。単回通過様式を使用した。圧力は、試験によって、2000psigから6000psigの範囲の圧力を使用した。Microfluidizer(登録商標)プロセッサを通過させた後、全量をHBSSで1Lに調整し、サンプルを混合し、そして計数用のサブサンプルを取った。典型的には、3つの複製の操作を各設定条件を使用して作った。
【0049】
回収されたスポロシストの割合及び破壊されたオーシストの割合は、実験ごとに血球計カウントを使って測定した。理想的には、回収されたスポロシストの割合及び破壊されたオーシストの両割合は、100%の筈である。
【0050】
【表1】
【0051】
アイメリアアセルブリナ1のMicrofluidizer(登録商標)実験の結論:
1) アイメリアアセルブリナのオーシストが破壊される割合は、125μmチャンバーを使って、圧力が高まるに従って増加することが観察された。
2)スポロシスト回収の最も良い結果は、125μmチャンバーを使って5000psigで得られた(54%回収)。
【0052】
【表2】
【0053】
アイメリアマキシマ1のMicrofluidizer(登録商標)実験の結論:
1)スポロシスト放出方法は、チャンバー直径及び試験圧力の試験したほぼ全ての組み合わせにおいて、かなり良く稼動した。
2)300μmチャンバーと3000psigの圧力の組み合わせは、Microfluidizer(登録商標)プロセッサを使用したアイメリアマキシマ1スポロシスト生産にとって適切な初期標準条件を与えた。
【0054】
【表3】
【0055】
アイメリアマキシマ2のMicrofluidizer(登録商標)プロセッサ実験の結論:
1)スポロシストの放出方法は、チャンバー直径及び試験圧力のほぼ全ての組み合わせにおいて、かなり良く稼動した。
2)300μmチャンバーと3000psigの圧力の組み合わせが、最適であると考えられた。
【0056】
【表4】
【0057】
アイメリアテネラ1のMicrofluidizer(登録商標)プロセッサ実験の結論:
1)アイメリアテネラスポロシストの回収及びオーシストの破壊の割合は、予想通り、試験した両チャンバー共に、圧力の上昇に従って増加することが観察された。
2)最良の結果は、125μmチャンバーを用いた4000psigで得られた。
【0058】
本発明の実施態様は、スポロシストの回収について、組織粉砕機、ガラスビーズ及び薬剤によって放出させる従来の方法よりも再現性があり、規模拡大可能な代替法を提供する。アイメリアマキシマ1及びアイメリアマキシマ2からのスポロシストの本質的に定量的な回収が提供される。ほぼ定量的なアイメリアテネラスポロシストの回収が観察される。アイメリアアセルブリナオーシストの回収率は、約40〜50%である。
【0059】
〔実施例2〕
スポロシストを放出させるために細胞破壊装置を使用する場合、放出されたスポロシストの生存率を確保するため、放出条件の最適化が必要である。生存能力は、スポロシストの用量をトリに投与し、感染から生じる関連のオーシストの排出量を計数することによって評価することができる。細胞破砕装置のチャンバー形状及び圧力が変わる条件下では、生存可能でない条件でスポロシストをオーシストから効率的に放出させ得る。即ち、そのスポロシストの投与でトリに起こさせる感染は、ガラスビーズのような従来の方法によって放出されたスポロシストを使用して行った場合と比較して、減少する可能性がある。生存能力のあるスポロシストの生産を確実にするためには、チャンバーの形状及び圧力の条件は、慎重に評価されなければならない。
【0060】
スポロシストを、ガラスビーズ又は2000psi若しくは5000psiでの100Zチャンバーで構成されたMicrofluidizer(登録商標)プロセッサのいずれかを用いて、アイメリアアセルブリナオーシストから放出させた。次にそれぞれの方法によって放出されたスポロシストを、1用量当たり1000、3000及び5000個のスポロシストを用いる用量反応モデルでニワトリに投与した。それぞれの処理につき3つの複製の檻(pens)を1複製当り9羽のトリで使った。スポロシスト5000個に相当する、1用量当たり1250個の胞子形成オーシストのオーシストコントロールも、試験に含めた。オーシストは、強制投与後4日から7日まで、クエン酸(10%)、過酸化水素(0.75%)及びプロピオン酸(0.25%)の水溶液に集めた。オーシストを含む糞便は、水を使って一様な容量にし、混合し、サブサンプルを取った。オーシストは、McMasterの方法を使って計数した。結果を下表に示す。
【表5】
【0061】
結果は、Microfluidizer(登録商標)プロセッサを用いて2000psiで生産されたスポロシストは、それぞれの用量で、従来のガラスビーズを使って生産されたスポロシストと同様の生存能力であったが、一方Microfluidizer(登録商標)プロセッサを用いて5000psiで生産されたスポロシストは、それぞれの用量で、ガラスビーズを使って生産されたスポロシストよりも著しく低い生存能であったことを示す。生存可能なスポロシストを与える圧力の範囲は、それ故、実験的に決定されなければならない。
【0062】
〔実施例3〕
アイメリアアセルブリナ(長さ:約12μm)及びアイメリアテネラ(長さ約20μm)を含む、より小さいアイメリア属は、より大きいアイメリアマキシマ種(長さ:約40μm)より、剪断を受けにくいことが観察される。Microfluidizer(登録商標)システムにおいて圧力を高めることによってより高いレベルの剪断を生じさせると、どの種についてもオーシストからのスポロシストの顕微鏡的収率の改善が可能であるが、特により小さい種の効率的な放出に必要である;しかし、圧力の上昇は、また、生存率を低下させる可能性がある。生存率を改善するために圧力を下げることは、本質的に収率を犠牲にする。顕微鏡的収率と生存率の両者の改善を提供するために、オーシストの壁のコンディションを調整する前処理が開発されている。
【0063】
胆汁塩(タウロデオキシコール酸(TDCA))、嫌気性環境(炭酸ガス気泡)及び温かい温度(37℃で1時間)の組み合わせを使用して、オーシストの前処理の効果を調べるための検討を行った。本検討の目的は、放出されたスポロシストのインビトロ回収率(顕微鏡検査を介した)及びインビボ生存能力(オーシストの排出を介した)を測定することである。
【0064】
以下の処理群を確立した:(1) アイメリアアセルブリナ胞子形成オーシストコントロール;用量当たり1000個の胞子形成オーシスト;(2)ガラスビーズで生産のスポロシストコントロール;用量当たり4000個のスポロシスト;(3)前処理無しで、Microfluidizer(登録商標)で生産のスポロシストコントロール;100μmチャンバー;2000psi;用量当たり4000個のスポロシスト;(4)タウロデオキシコール酸(TDCA)(0.75%)及び炭酸ガス気泡を含む37℃で1時間の前処理をして、Microfluidizer(登録商標)で生産したスポロシスト;100μmチャンバー;2000psi;用量当たり4000個のスポロシスト;(5)TDCA(0.75%)及び炭酸ガス気泡を含む37℃で1時間の前処理をして、Microfluidizer(登録商標)で生産したスポロシスト;100μmチャンバー;3000psi;用量当たり4000個のスポロシスト;(6)TDCA(0.75%)及び炭酸ガス気泡を含む37℃で1時間の前処理をして、Microfluidizer(登録商標)で生産したスポロシスト;100μmチャンバー;4000psi;用量当たり4000個のスポロシスト。残留する無傷のオーシスト及びオーシスト殻体は、パーコール(Percoll)を用いてスポロシスト調製物から除去した。用量コントロール当り1000個のオーシストに相当する用量にするために、各オーシストは4個のスポロシストを含むものとして、用量当り4000個のスポロシストでスポロシスト用量をトリに送達した。
【0065】
オーシストからのスポロシストの解放は顕微鏡的に評価した。Microfluidizer(登録商標)で生産した材料を、下表に要約する。
【表6】
【0066】
前処理は、2000psiでのスポロシストの回収を約6倍改善し、高い圧力では、顕微鏡的回収の更なる改善が観察された。
【0067】
インビボ評価のため、それぞれの処理に、檻当り9羽の鳥の入った5つの複製檻を使用した。処理物は強制経口投与により素嚢(crop)に投与した。糞便は、強制投与後4日から7日まで、クエン酸(10%)、過酸化水素(0.75%)及びプロピオン酸(0.25%)の水溶液に集めた。オーシストを含む糞便は、水を使って一様な容量にし、混合し、サブサンプルを取った。オーシストは、McMasterの方法を使用して計数した。
【0068】
前述の放出方法を用いて生産されたスポロシストの生存能力は、1羽当たりのオーシストの排出量を、ガラスビーズで生産したスポロシストコントロールと比較することによって評価した。結果を下表に要約する。
【表7】
【0069】
トリ1羽当りの平均オーシスト排出では、処理間に有意差は無かった(p>0.05)。前処理は、広範囲の圧力にわたって、放出されたスポロシストの生存能力を改善した。いくつかのケースでは、Microfluidizer(登録商標)法によって前処理されたオーシストから放出されたスポロシストの生存能力は、ガラスビーズ放出スポロシストのそれより数値的に高かった。全般的な前処理の効果は、放出工程におけるオーシストからの回収及び生存能力の両者を改善し、従って2重の効果があった。
【0070】
前記は、本発明を例証するためのものであり、それを限定するものと解釈すべきではない。本発明の2、3の典型的な実施態様を開示しているが、当業者は、本発明の新しい教示及び利点から実質的に逸脱することなく、典型的な実施態様に多くの改変が可能であることを当然ながら容易に理解する。従って、その様なすべての改変は、請求項に定義される通り、本発明の範囲内に含まれるものとする。本発明は、その中に含むべき請求項の均等物を伴う添付の特許請求の範囲によって定義される。
図1
図2
図3
図4
図5