(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明プラスチックフィルムの表面に、(A)活性エネルギー線感応型組成物、(B)球状有機微粒子、及び四級アンモニウム塩基含有化合物を含有するハードコート層形成材料を用いて形成されたハードコート層を有し、かつ該ハードコート層の全ヘーズ値を4.31〜20%とし、前記ハードコート層の表面抵抗率を1012Ω/□以下とし、「全ヘーズ値−内部ヘーズ値」の値を−10〜+1%の範囲とし、60°鏡面光沢度を100〜150とすることを特徴とする防眩性ハードコートフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいては、透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に設けられるハードコート層の形成に、下記の組成を有するハードコート層形成材料が用いられる。
[ハードコート層形成材料]
本発明におけるハードコート層形成材料は、(A)活性エネルギー線感応型組成物、及び(B)球状有機微粒子を含有する。
((A)活性エネルギー線感応型組成物)
前記ハードコート層形成材料において、(A)成分として用いられる活性エネルギー線感応型組成物としては、(a)多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマーと、所望により(b)シリカ系微粒子を含むものを好ましく用いることができる。
なお、本発明において、活性エネルギー線とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するもの、すなわち、紫外線や電子線などを指す。
【0014】
<(a)多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマー>
本発明においては、(A)活性エネルギー線感応型組成物として、多官能性(メタ)アクリレート系モノマー及び/又は(メタ)アクリレート系プレポリマー(以下、活性エネルギー線硬化性化合物と称することがある。)が用いられる。
前記多官能性(メタ)アクリレート系モノマーとしては、例えば1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどの多官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのモノマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0015】
一方、前記(メタ)アクリレート系プレポリマーとしては、例えばポリエステルアクリレート系、エポキシアクリレート系、ウレタンアクリレート系、ポリオールアクリレート系などが挙げられる。ここで、ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、例えば多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより、あるいは、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。
エポキシアクリレート系プレポリマーは、例えば、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂のオキシラン環に、(メタ)アクリル酸を反応しエステル化することにより得ることができる。ウレタンアクリレート系プレポリマーは、例えば、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。さらに、ポリオールアクリレート系プレポリマーは、ポリエーテルポリオールの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる。これらのプレポリマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、前記多官能性(メタ)アクリレート系モノマーと併用してもよい。
【0016】
<(b)シリカ系微粒子>
本発明においては、所望により用いられる(b)シリカ系微粒子として、コロイド状シリカ微粒子及び/又は表面官能基を有するシリカ微粒子を用いることができる。
コロイド状シリカ微粒子は、平均粒子径が1〜400nm程度のものであり、また、表面官能基を有するシリカ微粒子としては、例えば表面官能基として(メタ)アクリロイル基を含む基を有するシリカ微粒子(以下、反応性シリカ微粒子と称することがある。)を挙げることができる。
上記反応性シリカ微粒子は、例えば、平均粒子径0.005〜1μm程度のシリカ微粒子表面のシラノール基に、該シラノール基と反応し得る官能基を有する重合性不飽和基含有有機化合物を反応させることにより、得ることができる。重合性不飽和基としては、例えばラジカル重合性の(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。
前記シラノール基と反応し得る官能基を有する重合性不飽和基含有有機化合物としては、例えばアクリル酸、アクリル酸クロリド、アクリル酸2−イソシアナートエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2,3−イミノプロピル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランなど及びこれらのアクリル酸誘導体に対応するメタクリル酸誘導体を好ましく用いることができる。これらのアクリル酸誘導体やメタクリル酸誘導体は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
このようにして得られた重合性不飽和基含有有機化合物が結合したシリカ微粒子は、活性エネルギー線硬化性化合物として、活性エネルギー線の照射により架橋、硬化する。
この反応性シリカ微粒子は、得られるハードコートフィルムの耐擦傷性を向上させる効果を有している。
このようなシリカ微粒子に重合性不飽和基を有する有機化合物を結合させてなる化合物を含む活性エネルギー線感応型組成物(A)として、例えばJSR(株)製、商品名「オプスターZ7530」、「オプスターZ7524」、「オプスターTU4086」などが上市されている。
本発明においては、この(b)成分のシリカ系微粒子の含有量は、(A)成分の活性エネルギー線感応型組成物の固形分中に、通常5〜90質量%程度、好ましくは10〜70質量%である。
なお、この(b)成分のシリカ系微粒子におけるシリカ粒子の平均粒子径は、レーザ回折・散乱法で測定することができる。この方法では、粒子を分散した液にレーザ光を当てた際に回折・散乱する光の強度変化により、平均粒子径を測定する。
【0017】
((B)球状有機微粒子)
本発明におけるハードコート層形成材料において、(B)成分として用いられる球状有機微粒子としては、例えばシリコーン系微粒子、メラミン系樹脂微粒子、アクリル系樹脂微粒子(例えば、ポリメチルメタクリレート系微粒子(以下、PMMA系微粒子と称することがある)などが挙げられる)、アクリル−スチレン系共重合体微粒子、ポリカーボネート系微粒子、ポリエチレン系微粒子、ポリスチレン系微粒子、ベンゾグアナミン系樹脂微粒子などが挙げられる。
本発明においては、有機微粒子が用いられるが、防眩性能の品質安定性の観点から、球状のものが光の散乱状態を均質化するために用いられる。この球状有機微粒子の平均粒子径は、1〜10μmであることが好ましい。平均粒子径が1μm未満であれば白茶け等が生じる場合があり、10μmを超えると防眩性が不十分となる場合があるからである。このような観点から、平均粒子径は、2〜8μmであることが特に好ましい。
本発明においては、この(B)成分の球状有機微粒子は1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その配合量は、防眩性能の観点から、前述した(A)成分である活性エネルギー線感応型組成物の固形分100質量部に対して、好ましくは0.1〜30質量部、より好ましくは1〜20質量部である。
また、前記活性エネルギー線感応型組成物の硬化物の屈折率と球状有機微粒子の屈折率との差は、後述の全ヘーズ値を20%以下、「全ヘーズ値−内部ヘーズ値」の値を−10〜+1%の範囲にするには、絶対値で0.01〜0.05であることが好ましい。これにより、十分な防眩性能を有しながら、白茶け等がなく、透過鮮明度の高い防眩性ハードコートフィルムを得ることができる。
【0018】
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいて、ハードコート層に帯電防止性能が要求される場合には、前記の(A)活性エネルギー線感応型組成物中に、四級アンモニウム塩基含有化合物を添加することが好ましい。該四級アンモニウム塩基含有化合物としては、(1)活性エネルギー線の印加により、該組成物中の活性エネルギー線硬化性化合物と共重合し得る活性エネルギー線硬化性化合物である四級アンモニウム塩基含有モノマー、又は(2)四級アンモニウム塩基含有ポリマーを含有させることができる。
前記(1)の四級アンモニウム塩基含有モノマーとしては、例えば一般式(1)
【化1】
(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
で表される化合物などを挙げることができる。
本発明においては、この四級アンモニウム塩基含有モノマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
この四級アンモニウム塩基含有モノマーを、(A)成分の活性エネルギー線感応型組成物に含有させることにより、活性エネルギー線の印加によって、該組成物中に存在する活性エネルギー線硬化性化合物と、前記四級アンモニウム塩基含有モノマーとが共重合し、得られた硬化樹脂中に四級アンモニウム塩基が導入される。
【0019】
一方、前記(2)の四級アンモニウム塩基含有ポリマーとしては、例えば、分子内に、一般式(2)
【化2】
(式中、R
1及びR
2は、それぞれ同一又は異なる炭素数1〜10のアルキル基、R
3は炭素数1〜10のアルキル基又は炭素数7〜10のアラルキル基、X
n-はn価の陰イオン、nは1〜4の整数を示す。)
で表される四級アンモニウム塩基を有する高分子重合体を好ましく挙げることができる。
上記一般式(2)において、R
1及びR
2で示されるアルキル基並びにR
3のうちのアルキル基としては、炭素数1〜6のアルキル基、特に炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、また、R
3のうちのアラルキル基としては、ベンジル基が好ましい。炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0020】
一方、X
n-は無機陰イオン、有機陰イオンのいずれであってもよく、その例としてはF
-、Cl
-、Br
-、I
-のハロゲンイオン、NO
3-、ClO
4-、BF
4-、CO
32-、SO
42-などの無機陰イオン、CH
3OSO
3-、C
2H
5OSO
3-、さらには酢酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸などの有機酸の残基からなる有機陰イオンが挙げられる。
このような四級アンモニウム塩基含有ポリマーとしては、例えば以下に示す化合物、すなわち、ポリビニルベンジル型[(a)]、ポリ(メタ)アクリレート型[(b)]、スチレン−(メタ)アクリレート共重合体型[(c)]、スチレン−マレイミド共重合体型[(d)]、メタクリレート−メタクリルイミド共重合体型[(e)]などを挙げることができる。なお、(c)、(d)及び(e)の共重合体型においては、ランダム共重合体型及びブロック共重合体型のいずれであってもよい。
【化3】
本発明においては、この四級アンモニウム塩基含有ポリマーは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0021】
ハードコート層中の四級アンモニウム塩基の含有量に特に制限はなく、ハードコート層の表面抵抗率が所望の値になるように、適宜選べばよい。
ハードコート層形成材料に、前記のアンモニウム塩基を有するモノマーやポリマー(四級アンモニウム塩基含有化合物)が含まれることにより、該モノマーやポリマーがカチオン系界面活性剤に類似した働きをし、このハードコート層形成材料を、透明プラスチック表面に塗工し、ウエット塗膜を形成した際に、該ウエット塗膜中において、球状有機微粒子の分散性を向上させるものと推定され、これにより、得られる防眩性ハードコートフィルムは良好な防眩性を発現すると共に像鮮明度の高いものとなる。
【0022】
(光重合開始剤)
本発明におけるハードコート層形成材料には、所望により光重合開始剤を含有させることができる。この光重合開始剤としては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−プロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−2(ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p−フェニルベンゾフェノン、4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリ−ブチルアントラキノン、2−アミノアントラキノン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p−ジメチルアミノ安息香酸エステルなどが挙げられる。
これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、その配合量は、全活性エネルギー線硬化性化合物100質量部に対して、通常0.2〜10質量部の範囲で選ばれる。
【0023】
(ハードコート層形成材料の調製)
本発明で用いるハードコート層形成材料は、必要に応じ、適当な溶媒中に、前述した(A)成分の活性エネルギー線感応型組成物、(B)成分の有機微粒子、及び所望により用いられる光重合開始剤や各種添加成分、例えば酸化防止剤、紫外線吸収剤、シラン系カップリング剤、光安定剤、レベリング剤、消泡剤などを、それぞれ所定の割合で加え、溶解又は分散させることにより、調製することができる。
この際用いる溶媒としては、例えばヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレンなどのハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノンなどのケトン、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル、エチルセロソルブなどのセロソルブ系溶剤などが挙げられる。
このようにして調製されたハードコート層形成材料の濃度、粘度としては、コーティング可能なものであればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。
【0024】
[透明プラスチックフィルム]
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいては、透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、前述のようにして調製したハードコート層形成材料を用いて、ハードコート層を形成する。
前記の透明プラスチックフィルムについては特に制限はなく、従来光学用ハードコートフィルムの基材として公知のプラスチックフィルムの中から適宜選択して用いることができる。このようなプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム(以下、「TACフィルム」と称する場合がある。)、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリスルホンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ノルボルネン系樹脂フィルム、シクロオレフィン樹脂フィルム等のプラスチックフィルムを挙げることができる。
【0025】
これらのプラスチックフィルムは、透明のものであることが好ましい。
これらのプラスチックフィルムの厚さは特に制限はなく、状況に応じて適宜選定されるが、通常15〜300μm、好ましくは30〜200μmの範囲である。また、このプラスチックフィルムは、防眩性ハードコート層との密着性を向上させる目的で、所望により片面又は両面に、酸化法や凹凸化法などにより表面処理を施すことができる。上記酸化法としては、例えばコロナ放電処理、プラズマ処理、クロム酸処理(湿式)、火炎処理、熱風処理、オゾン・紫外線照射処理などが挙げられ、また、凹凸化法としては、例えばサンドブラスト法、溶剤処理法などが挙げられる。これらの表面処理法はプラスチックフィルムの種類に応じて適宜選ばれるが、一般にはコロナ放電処理法が効果及び操作性などの面から、好ましく用いられる。また、プライマー層を設けることもできる。
【0026】
[ハードコート層の形成]
前記透明プラスチックフィルムの少なくとも片面に、前記ハードコート層形成材料を、従来公知の方法、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて、コーティングして塗膜を形成させ、乾燥後、これに活性エネルギー線を照射して該塗膜を硬化させることにより、ハードコート層が形成される。
活性エネルギー線としては、例えば紫外線や電子線などが挙げられる。上記紫外線は、高圧水銀ランプ、無電極ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプなどで得られ、照射量は、通常100〜500mJ/cm
2であり、一方電子線は、電子線加速器などによって得られ、照射量は、通常150〜350kVである。この活性エネルギー線の中では、特に紫外線が好適である。なお、電子線を使用する場合は、光重合開始剤を添加することなく、硬化膜を得ることができる。
このようにして形成されたハードコート層の厚さは、球状有機微粒子の粒径及びカール防止などの観点から、通常3〜15μm程度、好ましくは3〜10μmである。
【0027】
[防眩性ハードコートフィルム]
このようにして得られた本発明の防眩性ハードコートフィルムは、下記の光学特性を有している。
(ヘーズ値)
ハードコート層の全ヘーズ値は20%以下であって、「全ヘーズ値−内部ヘーズ値」(すなわち、外部ヘーズ値)の値が−10〜+1%であり、好ましくは−5〜+1%である。全ヘーズ値及び「全ヘーズ値−内部ヘーズ値」の値が上記範囲にあれば、白茶けやコントラストの低下が低減されると共に、高い像鮮明度と適度の防眩性を兼ね備えている。
なお、ヘーズ値は、JIS K 7136に準拠して測定し、内部ヘーズ値及び全ヘーズ値は、下記の方法により測定した値である。
【0028】
<内部ヘーズ値及び全ヘーズ値の測定>
JIS K 7136に準拠して、防眩性ハードコートフィルムのヘーズ値及びその透明プラスチックフィルム単独のヘーズ値を測定する。
前記防眩性ハードコートフィルムのヘーズ値から前記透明プラスチックフィルム単独のヘーズ値を差し引いた値を全ヘーズ値とする。
次に、厚さ50μmの透明フィルム上に厚さ20μmの粘着層が設けられた透明粘着シートを、防眩性ハードコートフィルムのハードコート層側に貼付して内部ヘーズ値算出用試料とする。該透明粘着シートのヘーズ値、及び内部ヘーズ値算出用試料のヘーズ値をJIS K 7136に準拠して測定する。
そして、内部ヘーズ値算出用試料のヘーズ値から前記透明粘着シートのヘーズ値及び透明プラスチックフィルム単独のヘーズ値を差し引いた値を防眩性ハードコートフィルムのハードコート層の内部ヘーズ値とする。
なお、前記透明粘着シートのヘーズ値は、前述のとおり計算の過程で差し引きされるため、内部ヘーズ値及び全ヘーズ値に直接の影響を与えないので、特に制限されないが、測定精度を高める観点から15%未満のヘーズ値のものを用いることが好ましい。また、同様の観点から前記透明粘着シートの全光線透過率は85%以上であることが好ましい。
(60°鏡面光沢度)
グロスメーターを使用し、JIS K 7105に準拠して測定した60°鏡面光沢度は、通常150以下であり、好ましくは80〜150、より好ましくは100〜150である。
【0029】
また、本発明の防眩性ハードコートフィルムは、ハードコート層の表面平均粗さRaが、JIS B 0601−1994に準拠した測定において、通常0.02〜0.30μm程度、好ましくは0.04〜0.20μmである。
さらに、ハードコート層の表面抵抗率を好ましくは10
13Ω/□以下、より好ましくは10
12Ω/□以下とし、帯電防止性能を付与することができる。
【0030】
(その他機能層)
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいては、必要により、最上層に、反射防止性を付与させるなどの目的で反射防止層、例えばシロキサン系被膜、フッ素系被膜などを設けることができる。この場合、該反射防止層の厚さは、0.05〜1μm程度が適当である。この反射防止層を設けることにより、太陽光、蛍光灯などによる反射から生じる画面の映り込みが解消され、また、表面の反射率を抑えることで、全光線透過率が上がり、透明性が向上する。なお、反射防止層の種類によっては、帯電防止性の向上を図ることができる。
【0031】
(粘着剤層)
本発明の防眩性ハードコートフィルムにおいては、プラスチックフィルムのハードコート層とは反対側の面に、液晶表示体などの被着体に貼着させるための粘着剤層を形成させることができる。この粘着剤層を構成する粘着剤としては、光学用途に適した、例えばアクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤が好ましく用いられる。この粘着剤層の厚さは、通常5〜100μm、好ましくは10〜60μmの範囲である。
さらに、この粘着剤層の上に、必要に応じて剥離シートを設けることができる。この剥離シートとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンなどの各種プラスチックフィルムに、シリコーン樹脂などの剥離剤を塗付したものなどが挙げられる。この剥離シートの厚さについては特に制限はないが、通常20〜150μm程度である。
【0032】
このような粘着剤層を形成した防眩性ハードコートフィルムは、CRT、LCD、PDPなどのディスプレイに対して、防眩性能や耐擦傷性能などを付与する部材として好適に用いられ、特にLCDなどにおける偏光板貼付用として好適である。
[偏光板]
本発明はまた、前述した本発明の防眩性ハードコートフィルムを偏光子に貼合してなる偏光板をも提供する。
LCDにおける液晶セルは一般に配向層を形成した2枚の透明電極基板を、その配向層を内側にして、スペーサにより所定の間隙になるように配置し、その周辺をシールして該間隙に液晶材料を挟持させると共に、上記2枚の透明電極基板の外側表面に、それぞれ粘着剤層を介して偏光板が配設された構造を有している。
図1は、上記偏光板の1例の構成を示す斜視図である。この図で示されるように、該偏光板10は、一般的には、ポリビニルアルコール系偏光子1の両面に、トリアセチルセルロース(TAC)フィルム2及び2'を貼り合わせた3層構造の基材を有しており、そして、その片面には液晶セルなどの光学部品に貼着するための粘着剤層3が形成され、さらに、この粘着剤層3には、剥離シート4が貼着されている。また、この偏光板の該粘着剤層3と反対側の面には、通常表面保護フィルム5が設けられている。
本発明の偏光板は、偏光子1の両面に設けられたTACフィルム2、2'のうち、一方のTACフィルムに上述した本発明に係わるハードコート層が設けられたものである。偏光板に粘着剤層3、剥離シート4及び表面保護フィルム5が設けられている場合は、特に表面保護フィルム5側のTACフィルム2'側に本発明に係わるハードコート層が設けられる。
【0033】
本発明の偏光板を製造する方法としては、例えば以下に示す操作を行うことでできる。
なお、
図2は、本発明の偏光板の1例の構成を示す断面模式図である。
まず、基材の透明プラスチックフィルムとしてTACフィルムのような光学異方性のないフィルム12'を用い、その一方の面に本発明に係わるハードコート層13を形成し、防眩性ハードコートフィルム14とする。次に、偏光子11の片面にハードコート層13の形成されていないTACフィルム12を、反対面に前記防眩性ハードコートフィルム14を接着剤層15、15'を用いて積層する。透明プラスチックフィルムにTACフィルムを使用する場合、接着剤による積層で密着性を向上させるには、前述した表面処理の他けん化処理なども行うことができる。
これにより、防眩性能と耐擦傷性能に優れる偏光板20が得られる。偏光板20も必要に応じて、ハードコート層13の設けられる面に、前記
図1に示す剥離可能な表面保護フィルム5や、その反対面に液晶セル等の光学部品に貼付するための粘着剤層16や剥離シート17が設けられてもよい。
本発明の偏光板は、LCDにおける液晶セル用を始め、光量調整用、偏光干渉応用装置用、光学的欠陥検出器用などとして用いることができる。
【実施例】
【0034】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例により、なんら限定されるものではない。
なお、球状有機微粒子の平均粒子径及び屈折率、活性エネルギー線感応型組成物の硬化物の屈折率並びにハードコートフィルムの性能は、下記の方法に従って求めた。
<球状有機微粒子>
(1)屈折率
スライドガラス上に測定対象の球状有機微粒子を載せ、屈折率標準液を微粒子上に滴下したのち、カバーガラスを被せ、試料を作製した。該試料をJIS K 7142のB法に基づき、顕微鏡で観察し、微粒子の輪郭が最も見づらくなった屈折率標準液の屈折率を、該微粒子の屈折率とした。
【0035】
<活性エネルギー線感応型組成物>
(2)硬化物の屈折率
各調製例において、活性エネルギー線感応型組成物(A)、光重合開始剤と希釈溶剤からなるコート剤を作製する。これを実施例と同様にしてTACフィルム[富士フィルム(株)製、商品名「TAC80TD80ULH」]に塗工し、紫外線照射により硬化させ、該硬化物の屈折率測定用のハードコートフィルムとした。これをJIS K 7142のA法に基づき(株)アタゴ製アッベ屈折計を用いてハードコート層の屈折率を求め、これを活性エネルギー線感応型組成物の硬化物の屈折率とした。
【0036】
<ハードコートフィルム>
(3)全光線透過率
日本電色工業(株)製ヘーズメーター「NDH−2000」を用い、JIS K 7361−1に準拠して、実施例及び比較例で作成した防眩性ハードコートフィルムについて全光線透過率を測定する。
(4)ハードコート層の内部ヘーズ値、全ヘーズ値、及び「全ヘーズ値−内部ヘーズ値」
日本電色工業(株)製ヘーズメーター「NDH−2000」を用い、JIS K 7136に準拠して、実施例及び比較例で作製した防眩性ハードコートフィルム、及び該フィルムの構成部材である透明プラスチックフィルム単独のヘーズ値を測定する。
前記測定により得られた防眩性ハードコートフィルムのヘーズ値から透明プラスチックフィルムのヘーズ値を差し引くことにより防眩性ハードコートフィルムのハードコート層の全ヘーズ値を算出する。
次に、アクリル系粘着剤[日本カーバイト社製、商品名「PE−121」]100質量部に、イソシアナート架橋剤[東洋インキ社製、商品名「BHS−8515」]2質量部、及びトルエン100質量部を加えて粘着剤溶液を作製した。
次に、厚さ50μmの透明フィルムとしてのポリエチレンテレフタレートフィルム[東洋紡績社製、商品名「A4300」]に、乾燥後の粘着層の厚さが20μmになるように粘着剤溶液を塗布し、100℃で3分間乾燥して透明粘着シートを作製した。
作製した透明粘着シートを防眩性ハードコートフィルムのハードコート層側に貼付して、内部ヘーズ値算出用試料とした。該透明粘着シートと内部ヘーズ値算出用試料の夫々のヘーズ値を前記同様にJIS K 7136に準拠して測定する。
そして、内部ヘーズ値算出用試料のヘーズ値から、透明粘着シートのヘーズ値及び透明プラスチックフィルムのヘーズ値を差し引くことにより防眩性ハードコートフィルムのハードコート層の内部ヘーズ値を算出する。
最後に、前記全ヘーズ値から内部ヘーズ値を差し引くことにより防眩性ハードコートフィルムのハードコート層の「全ヘーズ値−内部ヘーズ値」を算出する。
(5)防眩性の評価
ハードコートフィルムをアクリル樹脂黒板[三菱レイヨン社製]にアクリル系粘着剤を介して貼り付けたサンプルを蛍光灯下にて目視にて観察し、下記の判定基準で防眩性を評価する。
○:蛍光灯の映り込み防止性が十分であり、かつ白茶けがない
×:蛍光灯の映り込み防止性が不十分である、又は蛍光灯の映り込み防止性は十分であるが、白茶けが大きく視認性に劣るもの
(6)60°鏡面光沢度
日本電色工業(株)製グロスメーター「VG2000」を使用し、JIS K 7105に準拠して測定する。
(7)像鮮明度
スガ試験機(株)製写像性測定器「ICM−10P」を使用し、JIS K 7374に準拠して測定する。5種類のスリット(スリット幅:0.125mm、0.25mm、0.5mm、1mm及び2mm)の合計値を像鮮明度と表す。
(8)ハードコート層の厚さ
実施例及び比較例で作製した防眩性ハードコートフィルム、該防眩性ハードコートフィルムの作製に使用する透明プラスチックフィルムであるTAC(トリアセチルセルロース)フィルム及びPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムの夫々について、定圧厚さ計[ニコン社製、商品名「MH−15M」]にて厚さを測定し、その差を取ることによりハードコート層の厚さを算出する。
【0037】
調製例1 ハードコート層用コート剤1
(A)活性エネルギー線感応型組成物として、帯電防止剤(四級アンモニウム塩基含有化合物)を含むハードコート剤[日本化成(株)製、商品名「L80313」、固形分濃度70質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル30質量%]50質量部及び帯電防止剤を含まないハードコート剤[大日精化工業(株)製、商品名「セイカビームEXF−01L(NS)」、固形分濃度100質量%、反応性モノマーと多官能アクリレートを含有する活性エネルギー線硬化性化合物95質量%、光重合開始剤5質量%]35質量部、(B)球状有機微粒子として、ポリスチレン−ポリメチルメタクリレート(PSt−PMMA)微粒子[積水化成品工業(株)製、平均粒子径2.5μm、屈折率1.555]4質量部、希釈溶剤としてトルエン90質量部を均一に混合し、固形分約41質量%であるハードコート層用コート剤1を作製した。なお、活性エネルギー線感応型組成物の硬化物の屈折率は1.525であった。
【0038】
調製例2 ハードコート層用コート剤2
(B)球状有機微粒子として、ポリメチルメタクリレート(PMMA)微粒子[綜研化学(株)製、平均粒子径3μm、屈折率1.49]4質量部、希釈溶剤としてプロピレングリコールモノメチルエーテル90質量部加えた以外は調整例1と同様にして、固形分約41質量%であるハードコート層用コート剤2を作製した。
【0039】
調製例3 ハードコート層用コート剤3
(B)球状有機微粒子として、PMMA微粒子[積水化成品工業(株)製、平均粒子径5μm、屈折率1.49]4質量部加えた以外は、調製例1と同様にして、固形分約41質量%であるハードコート層用コート剤3を作製した。
【0040】
調製例4 ハードコート層用コート剤4
(B)球状有機微粒子として、ポリスチレン(PSt)微粒子[綜研化学(株)製、平均粒子径1.3μm、屈折率1.59]4質量部、希釈溶剤としてメチルエチルケトン36質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル54質量部加えた以外は、調製例1と同様にして、固形分約41質量%であるハードコート層用コート剤4を作製した。
【0041】
調製例5 ハードコート層用コート剤5
(B)球状有機微粒子として、PSt−PMMA微粒子[積水化成品工業(株)製、平均粒子径2μm、屈折率1.555]4質量部加えた以外は、調製例2と同様にして、固形分約41質量%であるハードコート層用コート剤5を作製した。
【0042】
調製例6 ハードコート層用コート剤6
(A)活性エネルギー線感応型組成物として、帯電防止剤(四級アンモニウム塩基含有化合物)を含むハードコート剤[日本化成(株)製、商品名「L80313」、固形分濃度70質量%、プロピレングリコールモノメチルエーテル30質量%]100質量部、希釈溶剤としてメチルエチルケトン35質量部及びプロピレングリコールモノメチルエーテル35質量部を均一に混合し、固形分約41質量%であるハードコート層用コート剤6を作製した。
【0043】
実施例1
厚さ80μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム[富士フィルム(株)製]の表面に、調製例1で得たコート剤1を硬化膜厚が約5μmになるようにマイヤーバーで塗工した。70℃のオーブンで1分間乾燥させた後、高圧水銀ランプで300mJ/cm
2の紫外線を照射し防眩性ハードコートフィルムを作製した。
このハードコートフィルムの性能を第1表に示す。
【0044】
実施例2
調製例2で得たコート剤2を硬化膜厚が約5μmになるようにマイヤーバーで塗工した以外は、実施例1と同様の操作を行い防眩性ハードコートフィルムを作製した。
このハードコートフィルムの性能を第1表に示す。
【0045】
実施例3
調製例3で得たコート剤3を硬化膜厚が約5μmになるようにマイヤーバーで塗工した以外は、実施例1と同様の操作を行い防眩性ハードコートフィルムを作製した。
このハードコートフィルムの性能を第1表に示す。
【0046】
実施例4
厚さ188μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム[東洋紡(株)製]の表面に、調製例3で得たコート剤3を硬化膜厚が約5μmになるようにマイヤーバーで塗工した以外は、実施例1と同様の操作を行い防眩性ハードコートフィルムを作製した。
このハードコートフィルムの性能を第1表に示す。
【0047】
比較例1
調製例4で得たコート剤4を硬化膜厚が約4μmになるようにマイヤーバーで塗工した以外は、実施例1と同様の操作を行い、防眩性ハードコートフィルムを作製した。
このハードコートフィルムの性能を第1表に示す。
【0048】
比較例2
調製例4で得たコート剤4を硬化膜厚が約4μmになるようにマイヤーバーで塗工した以外は、実施例4と同様の操作を行い、防眩性ハードコートフィルムを作製した。
このハードコートフィルムの性能を第1表に示す。
【0049】
比較例3
調製例5で得たコート剤5を硬化膜厚が約5μmになるようにマイヤーバーで塗工した以外は、実施例1と同様の操作を行い、防眩性ハードコートフィルムを作製した。
このハードコートフィルムの性能を第1表に示す。
【0050】
比較例4
調製例6で得たコート剤6を硬化膜厚が約5μmになるようにマイヤーバーで塗工した以外は、実施例1と同様の操作を行い、防眩性ハードコートフィルムを作製した。
このハードコートフィルムの性能を第1表に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
[注]
PSt−PMMA:ポリスチレン−ポリメチルメタクリレート微粒子
PMMA:ポリメチルメタクリレート微粒子
PSt:ポリスチレン微粒子
PGM:プロピレングリコールモノメチルエーテル
MEK:メチルエチルケトン
TAC:トリアセチルセルロースフィルム
PET:ポリエチレンテレフタレートフィルム
【0053】
【表2】