(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)気化されるべき前駆体化合物を収容するチャンバーを含みガス入口およびガス出口を有する気化容器、ガス入口と流体連絡しているキャリアガス供給ライン、当該ガス供給ライン中のガス制御バルブ、並びにガス出口と複数の蒸着反応器との間を流体連絡しているガス出口ラインを提供し、ガス出口ラインは圧力トランスデューサーおよび濃度トランスデューサーを有し、ガス制御バルブ、圧力トランスデューサーおよび濃度トランスデューサーのそれぞれは制御装置と電気的に接続している工程;
(B)気化前駆体化合物およびキャリアガスを含む気体状混合物を複数の蒸着反応器に運ぶ工程;
(C)
(1)ガス出口ラインにおける気体状混合物中の気化前駆体化合物の濃度を検出し;
検出された濃度(c)と参照濃度(c0)とを比較して濃度差(c−c0)を提供し;
当該濃度差を利用して制御装置において信号を発生させ;
当該信号をガス制御バルブに伝達して、ガス出口ラインにおける気体状混合物中での気化前駆体化合物の実質的に一定の濃度を維持するために、当該信号がガス制御バルブを調節し、気化容器内の全圧力を調節する工程;
(2)温度検出手段を備えた気化容器を提供し、温度検出手段は前駆体化合物の温度を検出するように配置され;
前駆体化合物の温度を検出し;
検出された温度(T)と参照温度(T0)とを比較して温度差(T−T0)を提供し;
当該温度差を利用して制御装置において信号を発生させ;
当該信号をガス制御バルブに伝達して、ガス出口ラインにおける気体状混合物中での気化前駆体化合物の実質的に一定の濃度を維持するために、当該信号がガス制御バルブを調節し、気化容器内の全圧力を調節する工程;および
(3)工程(1)および(2)の組み合わせ:
からなる群から選択される工程によって、気体状混合物中の前駆体化合物の実質的に一定の濃度を維持する工程;並びに
(D)気体状混合物を、膜堆積に充分な複数の堆積反応器における条件にかける工程:
を含む、基体上に膜を堆積する方法。
前駆体化合物がトリメチルガリウム、トリエチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウム、ジメチル亜鉛、シラン、ジクロロシラン、三塩化ホウ素、イソブチルゲルマン、四塩化ゲルマニウムから選択される、請求項1に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
化学蒸着(CVD)プロセスは物質の層を堆積させるために、電子産業、特に半導体産業において使用されている。固体または液体であり得る前駆体は典型的にはシリンダー内に提供される。使用の際に、キャリアガスがそのシリンダーに入り、前駆体を通過し、前駆体で飽和され、次いでキャリアガス/前駆体気体混合物はシリンダーを出て、堆積反応チャンバーに向かう。堆積チャンバーにおいては、前駆体の層または膜が基体上で成長する。
【0003】
典型的には、シリンダー(バブラーまたはより一般的には気化容器とも称される)はステンレス鋼で造られており、前駆体の表面より下で前駆体内に伸びるガス入口を有する。このガス入口は一般的に「ディップチューブ」と称される。高純度のキャリアガスはディップチューブを通過し、液体前駆体を通って泡となって上昇し、前駆体気体を堆積反応器に輸送する。
【0004】
ほとんどのCVDプロセスについては、正確に測定された量の前駆体気体(通常、mmol/分または他の何らかの適当な単位で測定される)を反応チャンバーに分配することが必須である。正確な量の前駆体気体を送達するための一般的な方法は、前駆体の温度および気化容器(シリンダー)内の全圧力の厳密な制御に頼っている。
図1は、CVDプロセスのための従来の高性能前駆体気化装置を示し、この装置はキャリアガス供給ライン1、キャリアガス供給ラインにおける流量制御装置2、温度調節チャンバー4内に収容されている前駆体シリンダー3を有しており、前駆体シリンダー3は前駆体6を収容しており、およびこの装置はキャリアガスを前駆体シリンダー3内の前駆体6の液面より下に向かわせるためのディップチューブ5、キャリアガス/前駆体気体混合物を前駆体シリンダー3から反応チャンバー9へ向かわせるためのガス出口ライン7を有しており、ガス出口ライン7は任意の濃度トランスデューサー8を有しており、この濃度濃度トランスデューサー8は電子制御装置10に信号を伝達し、電子制御装置10は次いで流量制御装置2を調節する(較正定数Aを使用する式
【数1】
に従う)。流量制御装置2は流量トランスデューサーおよびガスフローバルブから構成される。前駆体温度は温度調節チャンバー内にシリンダーを維持することにより制御される。シリンダー内で液体前駆体を気化させることは、液体の温度をわずかに下げる場合があり、従って、気相におけるキャリアガスに対する前駆体の濃度を低減させる場合がある。単一の反応チャンバーに前駆体化合物を供給するのに小さなサイズのシリンダーを使用するほとんどのCVDシステムについては、このようなわずかな温度低下は、気相における前駆体の濃度に検知できるほどに影響を及ぼさない。濃度の何らかの変化は、バブラーへのキャリアガスの流量を増加させることにより調節されうるが、大部分の装置については、この変化は、濃度トランスデューサー8が省略されるほどにきわめて小さい。このアプローチは、かなりの大部分のCVDプロセスについて許容されうる設定値の±0.5%(例えば、10モル%の前駆体濃度設定値については、気相濃度は9.95%〜10.05%の範囲である)よりも良好な、気相中での前駆体濃度の一定性を提供する。
【0005】
シリンダーが交換される頻度が少ないことにより装置の停止時間を低減させる、より大きなサイズのシリンダーに移行する傾向が産業界において存在する。このような、より大きなサイズのシリンダーは、1以上の堆積反応器に前駆体を供給するためにも次第に使用されてきている。また、特別なCVDプロセスは、前駆体の不均一な気化(シリンダー内の前駆体液体の気化冷却に起因する)を補うために、気体濃度のより活発な制御を必要とする。シリンダーが前駆体を複数の反応器に供給する場合には、ガス混合物の流量を増大させることにより、キャリアガスに対して低減した気化前駆体濃度を補うことは、低減した前駆体濃度の問題を解決しない。例えば、各反応器は異なる堆積プロセスを行っている場合があるし、異なる濃度要求を有する場合がある。また、濃度トランスデューサーが使用されない限りは、流量の適切な調節のための情報は利用可能でありえない。
【0006】
単一の前駆体源シリンダーを用いて気化前駆体を複数の堆積反応器に送達するための装置が知られている。例えば、国際公開第2001/42539号(Ravetzら)は気化前駆体を複数のエピタキシャル反応器に送達するための方法および装置を開示し、この装置は従来の流量制御装置を使用して各エピタキシャル反応器への流量を調節する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このRavetzのアプローチは流量の調節に頼っており、気相前駆体濃度変化を補う何らかの手段を有していないという点で従来のものである。このアプローチは、進歩した蒸着方法論によって必要とされる気化前駆体濃度制御を提供できない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従来のプロセスの欠点に取り組む本発明は、(A)気化されるべき前駆体化合物を収容するチャンバーを含み、ガス入口およびガス出口を有する気化容器、ガス入口と流体連絡しているキャリアガス供給ライン、ガス制御バルブ、並びにガス出口と1以上の蒸着反応器との間を流体連絡しているガス出口ラインを提供し、ガス出口ラインは圧力トランスデューサーおよび濃度トランスデューサーを有し、ガス制御バルブ、圧力トランスデューサーおよび濃度トランスデューサーのそれぞれは制御装置と電気的に接続している工程;(B)気化前駆体化合物およびキャリアガスを含む気体状混合物を1以上の蒸着反応器に運ぶ工程;(C)(1)ガス出口ラインにおける気体状混合物中の気化前駆体化合物の濃度を検出し;検出された濃度(c)と参照濃度(c
0)とを比較して濃度差(c−c
0)を提供し;当該濃度差を利用して制御装置において信号を発生させ;当該信号をガス制御バルブに伝達して、ガス出口ラインにおける気体状混合物中での気化前駆体化合物の実質的に一定の濃度を維持するために、当該信号がガス制御バルブを調節し、気化容器内の全圧力を調節する工程;(2)温度検出手段を備えた気化容器を提供し、温度検出手段は前駆体化合物の温度を検出するように配置され;前駆体化合物の温度を検出し;検出された温度(T)と参照温度(T
0)とを比較して温度差(T−T
0)を提供し;当該温度差を利用して制御装置において信号を発生させ;当該信号をガス制御バルブに伝達して、ガス出口ラインにおける気体状混合物中での気化前駆体化合物の実質的に一定の濃度を維持するために、当該信号がガス制御バルブを調節し、気化容器内の全圧力を調節する工程;および(3)工程(1)および(2)の組み合わせ:からなる群から選択される工程によって、気体状混合物中の前駆体化合物の実質的に一定の濃度を維持する工程;並びに(d)気体状混合物を、膜堆積に充分な1以上の堆積反応器における条件にかける工程:を含む、基体上に膜を堆積する方法を提供する。
【0010】
本発明はさらに、気化されるべき前駆体化合物を収容するチャンバーを含みガス入口およびガス出口を有する気化容器、ガス入口と流体連絡しているキャリアガス供給ライン、並びにガス出口と1以上の蒸着反応器との間を流体連絡しているガス出口ライン;ガス制御手段;ガス出口ラインにおける気体状混合物中の気化前駆体化合物の濃度を検出するための、ガス出口ラインにおける検出手段;検出された濃度(c)と参照濃度(c
0)とを比較して、濃度差(c−c
0)を提供するための手段;当該濃度差を利用する濃度制御装置において信号を発生させるための信号発生手段;および当該信号をガス制御バルブに伝達して、ガス出口ラインにおける気体状混合物中での気化前駆体化合物の実質的に一定の濃度を維持するために、当該信号がガス制御バルブを調節し、気化容器内の全圧力を調節するための手段;を含む、キャリアガス中で実質的に一定の濃度の気化前駆体化合物を送達するためのシステムを提供する。
【0011】
本発明は、気化されるべき前駆体化合物を収容するチャンバーを含みガス入口およびガス出口を有する気化容器、ガス入口と流体連絡しているキャリアガス供給ライン、ガス出口と1以上の蒸着反応器との間を流体連絡しているガス出口ライン、並びに前駆体化合物の温度を検出するように気化容器内に配置されている温度検出手段;検出された温度(T)と参照温度(T
0)とを比較して温度差(T−T
0)を提供するための手段;ガス制御手段;当該温度差を利用して制御装置において信号を発生させるための手段;および当該信号をガス制御バルブに伝達して、ガス出口ラインにおける気体状混合物中での気化前駆体化合物の実質的に一定の濃度を維持するために、当該信号がガス制御バルブを調節し、気化容器内の全圧力を調節するための手段;を含む、キャリアガス中で実質的に一定の濃度の気化前駆体化合物を送達するためのシステムも提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面において、同じ参照番号は同等の構成要素を示す。
本発明は、前駆体化合物とキャリアガスとの気体状混合物であって、実質的に一定の濃度の気化前駆体化合物を有する気体状混合物を、1以上の蒸着チャンバー(または反応器)に、好ましくは、複数の反応器に供給する方法を提供する。「実質的に一定の濃度」とは、参照濃度の±1%の気相濃度、好ましくは参照濃度の±0.5%の気相濃度、より好ましくは参照濃度の±0.3%の気相濃度、さらにより好ましくは参照濃度の±0.25%の気相濃度(例えば、10モル%の前駆体濃度設定値については、気相濃度は好ましくは9.975モル%〜10.025モル%の範囲である)を意味する。反応性であってよくまたは非反応性であってよいあらゆる好適なキャリアガスが本発明において使用されうる。キャリアガスの具体的な選択は様々な要因、例えば、使用される前駆体化合物および使用される具体的な化学蒸着システムに依存する。キャリアガスの例としては、限定されないが、水素、ヘリウム、窒素、アルゴンおよびこれらの混合物が挙げられる。水素および窒素が好ましい。
【0014】
本明細書において使用される場合、用語「前駆体化合物」とは、気相中の膜形成性成分を蒸着反応器、特に化学蒸着のための反応器に供給するために使用されるあらゆる化合物をいう。代表的な膜形成性成分には、限定されないが、金属、メタロイドおよび炭素が挙げられる。本発明において有用な前駆体化合物は、使用される気化条件下で液体または固体であることができる。例えば、低い融点を有する固体前駆体化合物はシリンダーを加熱することにより液体状態に維持されうる。好ましくは、前駆体化合物は気化条件下で液体である。好適な前駆体化合物には、金属有機化合物が挙げられる。本明細書において使用される場合、用語「金属有機化合物」は、メタロイド元素、例えば、ケイ素、ゲルマニウム、リン、ビスマスおよびアンチモンなどを含む有機化合物であるメタロイド有機化合物も含む。代表的な前駆体化合物には、限定されないが、トリメチルガリウム、トリエチルガリウム、トリメチルアルミニウム、トリメチルインジウム、ジメチル亜鉛、シラン、ジクロロシラン、三塩化ホウ素、イソブチルゲルマンおよび四塩化ゲルマニウムが挙げられる。
【0015】
典型的な操作においては、前駆体化合物は気化容器内に配置され、気化容器は次いで蒸気送達装置内に配置される。気化容器は、その中に収容される前駆体化合物に対して不活性な物質である限りは、ガラス、ポリテトラフルオロエチレンまたは金属のような任意の好適な物質で構築されうる。金属が好ましく、特にニッケル合金およびステンレス鋼が好ましい。好適なステンレス鋼には、これに限定されないが、304、304L、316、316L、321、347および430が挙げられる。好適なニッケル合金には、これに限定されないが、インコネル(INCONEL)、モネル(MONEL)およびハステロイ(HASTELLOY)が挙げられる。物質の混合物がこのような気化容器の製造に使用されうることが当業者に認識されている。
【0016】
キャリアガスはガス入口開口部を通って気化容器に入り、ガス入口開口部は気化容器の頂部または底部にあることができる。液体前駆体の場合には、キャリアガスは典型的には、前駆体の液面の下側で前駆体中まで伸びるディップチューブを通って入る。キャリアガスがディップチューブを出るとき、キャリアガスは泡になって前駆体化合物中を通って上昇し、前駆体化合物気体で飽和される。キャリアガス/前駆体化合物気体混合物はガス出口を通って気化容器を出て、堆積反応器に運ばれる。ディップチューブを有する代表的な気化容器には、米国特許第4,506,815号および第5,755,885号に開示されるものが挙げられる。
【0017】
固体前駆体の場合には、気化容器は1以上のチャンバーおよび多孔質エレメントを収容することができる。固体前駆体は典型的には多孔質エレメント上に配置され、この多孔質エレメントは典型的には前駆体化合物を収容しているチャンバーの床または床の一部分である。キャリアガスは多孔質エレメントを通って上昇し、次いで固体前駆体化合物を通過することができる。あるいは、キャリアガスは最初に前駆体化合物を通過し、次いで多孔質プレートを通過することができる。キャリアガスが前駆体化合物を通過するとき、キャリアガスは気化した前駆体を取り込んで、キャリアガスと混合された気化前駆体を含むガス流れを形成する。キャリアガスによって取り込まれる気化前駆体の量は制御されうる。キャリアガスが気化前駆体で飽和されるのが好ましい。キャリアガスは前駆体化合物を収容するチャンバーを出て、出口開口部を通って気化容器を出る前に、入口チャンバーと流体接触している出口チャンバーに場合によっては入る。固体前駆体化合物のための代表的な気化容器には、米国特許第4,704,988号(Mellet);第5,603,169号(Kim);および第6,607,785号(Timmonsら)に開示されているものが挙げられる。
【0018】
キャリアガスは広範囲の流速で使用されうる。このような流速は、気化容器横断面寸法、圧力およびシステム要求の関数である。より大きな横断面寸法は、所定の圧力で、より高いキャリアガス流量、すなわち線速度を可能にする。気化容器に入る、気化容器を出る、またはこの容器に入りかつ出る双方のキャリアガス流量は制御手段によって制御されうる。手動で駆動される制御バルブまたはコンピューター駆動の制御バルブのような、あらゆる好適な制御手段が使用されうる。
【0019】
使用において、気化容器は様々な温度で使用されうる。正確な温度は使用される具体的な前駆体化合物および所望の用途に依存して変化しうる。温度は前駆体化合物の蒸気圧を制御し、これが具体的な成長速度または合金組成に必要とされる物質の流れを制御する。このような温度選択は充分に当業者の能力の範囲内にある。例えば、前駆体化合物がトリメチルインジウムである場合には、気化容器の温度は10℃〜60℃であることができる。他の好適な温度範囲には、35℃〜55℃、および35℃〜50℃が挙げられる。気化容器は様々な加熱手段によって、例えば、容器を恒温浴内に配置することによって、容器を加熱油浴中に直接沈めることによって、または容器を取り囲む金属管、例えば銅管を通って流れるハロカーボン油の使用によって加熱されうる。
【0020】
気化容器を出た後、前駆体化合物蒸気/キャリアガス混合物は堆積チャンバー(反応器)に運ばれる。堆積チャンバーは、典型的には、少なくとも1種、場合によって多くの物質がその中で堆積される加熱容器である。堆積チャンバーは出口を有し、この出口は典型的には、副生成物をチャンバー外に抜き出し、かつ好適な減圧を提供するために真空ポンプに接続されている。大気圧もしくは減圧で化学蒸着が行われうる。堆積チャンバーは前駆体化合物の分解を誘起するのに充分高い温度に維持される。堆積チャンバー温度は典型的には200℃〜1200℃であり、選択される正確な温度は効果的な堆積を提供するように最適化される。基体が高温に維持される場合には、またはRF源によってラジオ周波数(RF)エネルギーのような他のエネルギーが発生させられる場合には、場合によっては、堆積チャンバー内の温度は全体として低減されうる。電子素子製造の場合には、堆積のために好適な基体としては、これらに限定されないが、ケイ素、ゲルマニウム、ガリウムヒ素、リン化インジウムおよびサファイアが挙げられる。このような基体は様々な電子および光起電力素子の製造に特に有用である。
【0021】
本明細書において使用される場合、用語「トランスデューサー」とは、物理量を電気信号に変換するセンサーをいう。好ましい濃度トランスデューサーは、キャリアガス中の気化前駆体化合物である二成分ガス混合物の濃度を直接測定するアコースティック(acoustic)濃度センサーである。「制御装置」とはトランスデューサーの入力を参照値と組み合わせて利用して、所定の方法でアクチュエーター(または、バルブ)を調節する回路またはソフトウェアをいう。トランスデューサーおよび制御装置はそれぞれのユニットとして、または一体化したユニットとして提供されうる。一体化したトランスデューサーおよび制御装置ユニットは、アイクストロン(Aixtron)AG(ドイツ、アーケン)から入手可能なエピソン(EPISON
商標)4濃度モニター、またはロレックスインダストリーズインコーポレーテッド(Lorex Industries,Inc.)(ニューヨーク州、ポーキープシー(Poughkeepsie))からのピエゾコン(PIEZOCON
商標)制御装置のように、概して商業的に入手可能である。
【0022】
コストおよびインフラの観点から、複数の反応器のための1つの集中気体送達システム、並びに装置全体のための1つの濃度トランスデューサーおよび1つの制御装置を使用するのが望ましい。
図2は前駆体化合物気体−キャリアガス混合物を送達するためのこのような装置を示し、この装置は、トリメチルガリウムのような液体前駆体化合物16を収容する気化容器15を有し、かつこの装置はキャリアガス入口17、ガス出口18、ディップチューブ19およびガス出口チューブ20を有し、気化容器15は温度調節チャンバー21内に収容されている。キャリアガスは供給ライン22を通って気化容器に供給され、供給ライン22はガス制御手段(バルブ)23を有し、ガス制御手段23はキャリアガス入口17に接続されており、かつ制御装置29と電気的に接続されている。使用の際には、キャリアガスは制御バルブ23を通過し、キャリアガス入口17を通って気化容器15に入り、そしてディップチューブ19から出て、前駆体化合物16中を通って泡となって上昇し、前駆体化合物気体とキャリアガスとの混合物のガス流れを形成する。このガス流れは、次いで、出口チューブ20を通って気化容器を出て、ガス出口18を通って、ガス出口ライン24を通って、25a、25bおよび25cとして示される複数の反応チャンバーへ向うが、3つより少ないもしくは3つより多い反応チャンバーが存在してもよい。ガス出口ライン24は圧力トランスデューサー26、濃度トランスデューサー28および圧力開放バルブ32を有し、そのそれぞれは制御装置29と電気的に接続されている。システム内に過剰な圧力が生じると、制御装置29から圧力開放バルブ32に信号が伝達され、そして圧力開放バルブ32はガス流れの一部分を放出する(またはベントする)ことにより全圧力を調節する。
【0023】
ディップチューブ19は気化容器15の底から上方に伸び、前駆体化合物16の液面上に伸び、u字曲がりを形成し、そして前駆体化合物16の液面より下方に伸びるように示されている。気化容器の頂部から容器の底に向かって下方に伸びるような、または気化容器の側面から内側に伸びて容器の底に向かって下方に曲がるような、様々なディップチューブ形状が可能であることが当業者に認識されうる。操作においては、ディップチューブのガス出口末端は前駆体化合物の液面より下方でなければならない。
【0024】
濃度トランスデューサー28は典型的には、ガス流れにおける前駆体化合物気体の濃度を検出し、信号を発生させ、そしてこの信号を制御装置29に送るアコースティック濃度センサーである。この制御装置は、次いで、検出された濃度(c)を参照濃度(c
0)と比較して、濃度差(c−c
0)を提供し、この濃度差を利用して信号を発生させ、この信号をガス制御バルブ23に伝達し、そこでガス出口ライン24における気体状混合物中の気化前駆体化合物の実質的に一定の濃度を維持するために、その信号がガス制御バルブ23を調節し、気化容器15内の全圧力を調節する。前駆体化合物気体参照濃度は制御装置29にプログラムされる。このような参照濃度は、使用される具体的な前駆体化合物、使用される堆積反応器の種類および数、並びに堆積反応器において堆積される具体的な膜に応じて変動しうる。具体的な参照濃度入力は充分に当業者の能力の範囲内にある。
【0025】
濃度トランスデューサー28が濃度の変化を検出する場合に、それに応じて制御装置29は、ガス制御手段(バルブ)23に作用することによって全圧力を調節し、そしてガス流れ中の気化前駆体化合物濃度を参照濃度値に戻す。市販のPID(比例積分微分)制御装置の「積分」能力を使用して、圧力を調節するのに好適な等式は:
【数2】
であり、
式中、p
0は参照圧力であり、c
0は参照濃度であり、Bは較正定数である。p
0およびc
0のそれぞれは制御装置29にプログラムされる。参照濃度c
0はガス流れ中の気化前駆体化合物の所望の濃度である。ガス流れ中で実質的に一定の気化前駆体化合物濃度を維持するために、検出された濃度cは、参照濃度c
0と実質的に等しいように維持される。
【0026】
気化容器へのキャリアガス流量に影響する従来のアプローチとは異なり、ガス出口ラインにおける前駆体化合物濃度変動を修正するために、制御装置29はシステムの全圧力に作用する。この方法は集中送達システムにおける小さな圧力変動を導く。制御システムによって導入されるこれら小さな圧力変動は反応器における流量制御装置の性能に悪影響を有しない。ガス出口ラインにおける全圧力が調節されるが、全圧力が、CVDシステムの内側の流量制御装置が適切に作動するように充分に高いままであることが重要である。
【0027】
濃度トランスデューサーはかなり高価な場合があるので、ガス流れ中で実質的に一定の濃度の前駆体化合物気体を維持するための別の装置も本発明によって意図される。
図3は、前駆体化合物気体−キャリアガス混合物を送達するための別の装置を示し、当該装置は、トリメチルアルミニウムのような液体前駆体化合物16を収容する気化容器15を有し、かつキャリアガス入口17、ガス出口18、ディップチューブ19、ガス出口チューブ20、および温度センサー31を有し、気化容器15は温度調節チャンバー21内に収容されている。キャリアガスは、ガス制御バルブ23を有する供給ライン22を通って気化容器に供給され、ガス制御バルブ23はキャリアガス入口17と接続されており、かつ制御装置29と電気的に接続されている。使用の際に、キャリアガスは制御バルブ23を通過し、キャリアガス入口17を通って気化容器15に入り、ディップチューブ19を出て前駆体化合物16中を通って泡となって上昇し、前駆体化合物気体とキャリアガスとの混合物のガス流れを形成する。このガス流れは、次いで、出口チューブ20を通って気化容器を出て、ガス出口18を通過し、そしてガス出口ライン24を通って、25a、25bおよび25cとして示される複数の反応チャンバーへ向うが、3つより少ないもしくは3つより多い反応チャンバーが存在してもよい。ガス出口ライン24は圧力トランスデューサー26、濃度トランスデューサー28および圧力開放バルブ32を有し、そのそれぞれは制御装置29と電気的に接続されている。
【0028】
温度検出手段(またはセンサー)31は、前駆体化合物の温度を検出するように気化容器15内に位置する。温度検出手段31は任意の好適なセンサー、例えば、熱電対であることができる。温度検出手段は、前駆体化合物と非反応性のあらゆる好適な物質で構築されうる。
【0029】
濃度トランスデューサー28は典型的には、ガス流れにおける前駆体化合物気体の濃度を検出し、信号を発生させ、そしてこの信号を制御装置29に送るアコースティック濃度センサーである。温度検出手段31は気化容器15中の前駆体化合物の温度を検出し、信号を発生させ、そしてこの信号を制御装置29に送る。この制御装置は、次いで、検出された温度(T)を参照温度(T
0)と比較して、温度差(T−T
0)を提供し、この濃度差を利用して信号を発生させ、信号をガス制御バルブ23に伝達し、そこでガス出口ライン24における気体状混合物中の気化前駆体化合物の実質的に一定の濃度を維持するために、その信号がガス制御バルブ23を調節し、気化容器15内の全圧力を調節する。
【0030】
この実施形態においては、全圧力は、気化している液体前駆体化合物の実際の測定温度を用いて調節される。温度による蒸気圧の変化は周知である。温度測定を使用して、蒸気圧と同じ割合で全圧力が変化し、その結果濃度は一定のままでありうる。参照温度T
0および参照圧力p
0は制御装置29に入力される。これらの入力はガス流れ中の所望の前駆体化合物濃度を決定するために使用される。前駆体化合物気化速度が変化する(濃度トランスデューサー28または温度センサー31で検出される)場合には、補うように全圧力が調節される。全圧力のこの変化は、わずか数秒しか必要としないように比較的速い。入力として参照温度を用いると、市販のPID制御装置の「比例」能力を使用する圧力制御装置に好適な制御式は、
【数3】
であり、式中、p
0は参照圧力であり、pは圧力であり、Dは較正定数であり、Tは検出された温度であり、T
0は参照温度である。通常、蒸気圧の温度依存は参照温度に対して線形化されている。デジタル制御装置の使用に関して、蒸気圧の温度依存は任意の参照温度についてプログラムされ、使用されることができ、再較正は必要ではない。
【0031】
図4は前駆体化合物気体−キャリアガス混合物を送達するための装置を示し、この装置は、キャリアガス入口35およびガス出口36を有する気化容器34を有し、気化容器34は入口チャンバー38を有し、入口チャンバー38は多孔質エレメント39を有する床を有し、多孔質エレメント39は出口チャンバー37と流体連絡しており、トリメチルインジウムのような固体前駆体化合物41が入口チャンバー38内に収容されている。気化容器34は温度調節チャンバー42内に収容されている。
図4は任意的な温度検出手段40を有する気化容器34を示し、温度検出手段40は制御装置29と電気的に接続されている。上述の温度検出手段のいずれも、固体前駆体化合物を用いた使用に好適である。
【0032】
多孔質エレメント39は典型的には制御された多孔度を有するフリットである。様々な多孔度を有する多孔質エレメントが使用されうる。具体的な多孔度は充分に当業者の能力の範囲内の様々な要因に依存する。典型的には、多孔質エレメントは約1〜約100ミクロン、好ましくは約1〜約10ミクロンの孔サイズを有する。しかし、100ミクロンを超える多孔度を有する多孔質エレメントは特定の用途に好適でありうる。使用される有機金属化合物に対して不活性であり、所望の多孔度が制御されうる限りは、あらゆる物質がフリットを構築するために使用されうる。好適な物質には、これらに限定されないが、ガラス、ポリテトラフルオロエチレンまたは金属、例えば、ステンレス鋼もしくはニッケル合金などが挙げられる。多孔質エレメントが焼結金属であるのが好ましく、より好ましくはステンレス鋼である。多孔質エレメントを製造するのに好適なステンレス鋼およびニッケル合金は、シリンダーの製造に関して上述したものである。
【0033】
キャリアガスは、ガス制御手段(バルブ)23を有する供給ライン22を通って気化容器に供給され、ガス制御手段23はキャリアガス入口35に接続され、かつ制御装置29と電気的に接続されている。使用においては、キャリアガスは制御バルブ23を通過し、キャリアガス入口35を通って気化容器34に入り、そして入口チャンバー38に入る。キャリアガスは、次いで、固体前駆体化合物41に浸透し、前駆体化合物気体を同伴しまたは取り込んで、気化前駆体化合物とキャリアガスとの混合物のガス流れを形成する。このガス流れは、次いで、多孔質エレメント39を通過し、出口チャンバー37に入り、そして出口36を通って気化容器を出る。次いで、ガス流れはガス出口ライン24を通って、25a、25bおよび25cとして示される複数の反応チャンバーへ向うが、3つより少ないもしくは3つより多い反応チャンバーが存在してもよい。ガス出口ライン24は圧力トランスデューサー26、濃度トランスデューサー28および圧力開放バルブ32を有し、そのそれぞれは制御装置29と電気的に接続されている。過剰な圧力がシステム内で生じる場合には、制御装置29から圧力開放バルブ32に信号が伝達されて、圧力開放バルブ32は、次いでガス流れの一部分を放出(または、ベントする)ことによって全圧力を調節する。
【0034】
制御装置23はアナログもしくはプログラム可能なデジタル比例積分微分制御装置でありうる。その経済性、柔軟性および利用可能性を与えるために、デジタル制御装置が好ましい。
【0035】
あらゆる好適なガス制御手段が本発明において使用されうる。典型的には、ガス制御手段23はコントロールバルブである。
図2および3においては、ガスコントロール手段23はガス供給ライン22に示されている。あるいは、ガスコントロール手段はガス出口ライン24に存在していてもよい。さらなる別法として、2つのガス制御手段が使用されてもよく、一方はガス供給ラインに、もう一方はガス出口ラインに使用されてよい。好ましくは、ガス制御手段はガス供給ラインにある。2つのガス制御手段が使用される場合には、そのような手段の一方は固定(すなわち、特定の値に設定される)であり、他方のガス制御手段はガス混合物中で気化前駆体化合物の実質的に一定の濃度を維持するために、全圧力を調節するために使用され、好ましくは、ガス出口ラインにおける制御手段が固定である。
【0036】
あるいは、上記方法の組み合わせによって、すなわち、前駆体化合物温度を検出し、検出された温度を参照温度と比較して温度差を提供し、前駆体化合物濃度を検出し、検出された濃度を参照濃度と比較して濃度差を提供し、この温度差および濃度差を用いて制御装置において信号を生じさせ、この信号をガス制御バルブに伝達し、そこでガス出口ラインにおいてガス状混合物中の前駆体化合物気体の実質的に一定の濃度を維持するために、そのシグナルがガス制御バルブを調節し、気化容器内の全圧力を調節することによって、ガス流れ中で実質的に一定の濃度の前駆体化合物濃度が維持されうる。
【0037】
図2または
図3のいずれかの装置は場合によっては、前駆体化合物注入口を含むことが当業者によって認識されうる。このような注入口は、別の前駆体化合物リザーバーからのような、追加の前駆体化合物の周期的な添加を可能にする。この方法において、気化容器は、からの気化容器が満たされた容器と置き換えられる場合に生じるであろうシステム停止時間をより少なくしつつ連続使用を維持することができる。このような注入口は典型的には、液体前駆体化合物を気相に送達するために使用される気化容器において使用される。
【0038】
本明細書に記載された方法および装置の1つの利点は、気化容器への一定流量のキャリアガスを維持することよりもむしろ、ガス流れ中で実質的に一定濃度の気化前駆体化合物が維持されることである。前駆体化合物濃度の制御は、より直接的であり、かつ流量を変化させる必要性をなくする。本装置において、ガス供給ラインにおける流量トランスデューサーについての必要性はなく、好ましくはガス供給ラインにおいてこのような流量トランスデューサーは存在しない。本発明のさらなる利点は、前駆体化合物気体の発生および気化前駆体化合物濃度の制御がこの気体送達装置に含まれうることである。制御が集中送達システムおよびいくつかのCVD反応器にわたって分散しているのではなく、制御が気体送達装置に集中しているので、これは非常に望ましい。