特許第5690505号(P5690505)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5690505光学ガラスならびに、モールドプレス成形用プリフォームおよび光学素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690505
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】光学ガラスならびに、モールドプレス成形用プリフォームおよび光学素子
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/16 20060101AFI20150305BHJP
   C03C 3/17 20060101ALI20150305BHJP
   C03C 3/19 20060101ALI20150305BHJP
   C03C 3/21 20060101ALI20150305BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   C03C3/16
   C03C3/17
   C03C3/19
   C03C3/21
   G02B1/00
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2010-116647(P2010-116647)
(22)【出願日】2010年5月20日
(65)【公開番号】特開2011-241128(P2011-241128A)
(43)【公開日】2011年12月1日
【審査請求日】2013年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】391009936
【氏名又は名称】株式会社住田光学ガラス
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100098914
【弁理士】
【氏名又は名称】岡島 伸行
(74)【代理人】
【識別番号】100144266
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一寿
(72)【発明者】
【氏名】手塚 達也
【審査官】 大工原 大二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−139845(JP,A)
【文献】 特開平10−152341(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/099230(WO,A1)
【文献】 特開2002−211949(JP,A)
【文献】 特開昭60−122749(JP,A)
【文献】 特開2005−082458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00−14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
25:38〜56質量%および
23:0〜10質量%を、
(P25+B23):38〜56質量%の範囲で含有し、
Li2O:3超〜8質量%、
Na2O:0〜3質量%および
2O:0〜3質量%を、
(Li2O+Na2O+K2O):3超〜8質量%の範囲で含有し、
MgO:0〜4質量%、
CaO:0〜4質量%、
SrO:0〜17質量%および
BaO:21〜42質量%を、
(MgO+CaO):0〜4質量%の範囲でかつ、
(MgO+CaO+SrO+BaO):35〜53質量%の範囲で含有し、
さらに、
Al23:0〜6質量%、
Gd23:0.5〜5質量%を含有する組成からなり、
ガラス転移温度(Tg)が480℃以下で、かつ、屈伏点(At)が525℃以下、さらに屈折率(nd)が1.57〜1.62の範囲で、アッベ数(νd)が59〜68の範囲であることを特徴とする光学ガラス。
【請求項2】
TiO2:0〜5質量%、
23:0〜5質量%、
ZrO2:0〜5質量%、
Nb25:0〜5質量%、
Ta25:0〜5質量%および
Bi23:0〜5質量%のうちから選んだ一種または二種以上を5質量%以下で含有する請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光学ガラスを素材としてなるモールドプレス成形用プリフォーム。
【請求項4】
請求項1〜のいずれかに記載の光学ガラスを素材としてなる光学素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学ガラスに関し、特にガラス転移温度(Tg)および屈伏点(At)を低下しさらに、低分散性を実現しようとするものである。
また、本発明は、上記の光学ガラスを素材とするモールドプレス成形用プリフォームおよび光学素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル光学機器の普及、発展に伴い、光学レンズの高性能化及び小型化が要求されている。これらの要求に応えるには、精密プレス成形による非球面レンズを使用した光学設計が必要不可欠となっている。この非球面レンズを製造するには、ガラスを再加熱し金型で加圧成形するモールドプレス成形法の使用が一般的であり、使用される金型の長寿命化によるコストダウンおよび大量生産を図るために、低い温度で成形できるガラス、つまりガラス転移温度(Tg)および屈伏点(At)の低いガラスの開発が進められてきた。
また、光学機器の発展のため光学恒数、特にアッベ数(νd)が60.0付近と低分散で、屈折率(nd)が1.6程度と中屈折率のモールド用光学ガラスの要望が高まっている。
【0003】
これらの要求される光学恒数を満たす従来例のガラスとして、例えば、特許文献1,2にはP、BaOおよびZnOを含み、かつ、LiOまたはMgOを含有するものが、特許文献3にはP、B、LiOを含み、さらにMgO+CaO4%を超えて含有するものが、特許文献4にはMgO、BaO、Pを必須成分とするものが、特許文献5にはP、B、BaO、Al、Laを必須成分とするものが、それぞれ提案されている。
【0004】
しかるに、特許文献1〜5に記載の光学ガラスはいずれも、ガラス転移温度(Tg)や屈伏点(At)の低下および、耐候性や成形性の点で、未だ十分とは言い難かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4162532号公報
【特許文献2】特開2004−168593号公報
【特許文献3】特開2007−119329号公報
【特許文献4】特許第2528419号公報
【特許文献5】特開2009−40663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、低分散性の光学ガラスにおいて、ガラス転移温度(Tg)や屈伏点(At)を低下および、耐候性や成形性が向上した光学ガラスを、かかる光学ガラスを素材としたモールドプレス成形用プリフォームおよび光学素子と共に提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
さて、発明者は、上掲した特許文献1〜5において、十分に低いガラス転移温度(Tg)や屈伏点(At)および、高い耐候性や成形性が何故得られなかったのか、その原因について調査した。
その結果、以下に述べる知見を得た。
(1)特許文献1,2に開示の光学ガラスはいずれも、ZnOを含むため、溶融時の揮発分増加や耐失透性、耐候性、成形性の低下およびソラリゼーションを生じることがわかった。したがって、ガラス転移温度(Tg)や屈伏点(At)の低下を目的としたZnOの含有は望ましくないと考えられる。
(2)特許文献3に記載の光学ガラスは、MgOおよびCaOの含有量が4%を超えるため、ガラス転移温度(Tg)および屈伏点(At)を低下させることができず、また耐候性や溶融時の揮発の面でも問題が残ることが判明した。したがって、ガラス転移温度(Tg)および屈伏点(At)の低下の観点からMgOおよびCaOの含有量を4質量%以下に抑える必要があると考えられる。
(3)特許文献4に記載の光学ガラスは、LiOの含有量が少なく、MgO、CaO、SrO、BaO等の酸化物を多く含有するため、ガラス転移温度(Tg)および屈伏点(At)を低下させることが困難であることが見出された。したがって、ガラス転移温度(Tg)および屈伏点(At)の低下の観点からは一定量以上のLiOを含有させる必要があると考えられる。
(4)特許文献5に記載の光学ガラスは、LiOの含有量が少なくLaを含有しているため、特許文献4同様ガラス転移温度(Tg)および屈伏点(At)を低下させることが困難であることが見出された。したがって、ガラス転移温度(Tg)および屈伏点(At)の低下の観点からはLaを含有させず一定量以上のLiOを含有させることが望ましいと考えられる。
【0008】
本発明は、上記の知見に基づき、従来の諸問題を解決すべくさらに研究を重ねた結果、開発されたものである。すなわち、MgOおよびCaOの含有量を低減し、かつLiOを多く含有させることにより、所期した目的が達成されるという、新規知見に立脚するものである。
【0009】
本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.P25:38〜56質量%およびB23:0〜10質量%を、(P25+B23):38〜56質量%の範囲で含有し、Li2O:3超〜8質量%、Na2O:0〜3質量%およびK2O:0〜3質量%を、(Li2O+Na2O+K2O):3超〜8質量%の範囲で含有し、MgO:0〜4質量%、CaO:0〜4質量%、SrO:0〜17質量%およびBaO:21〜42質量%を、(MgO+CaO):0〜4質量%の範囲でかつ、(MgO+CaO+SrO+BaO):35〜53質量%の範囲で含有し、さらに、Al23:0〜6質量%、Gd23:0.5〜5質量%を含有する組成からなり、
ガラス転移温度(Tg)が480℃以下で、かつ、屈伏点(At)が525℃以下、さらに屈折率(nd)が1.57〜1.62の範囲で、アッベ数(νd)が59〜68の範囲であることを特徴とする光学ガラス。
2.TiO2:0〜5質量%、Y23:0〜5質量%、ZrO2:0〜5質量%、Nb25:0〜5質量%、Ta25:0〜5質量%およびBi23:0〜5質量%のうちから選んだ一種または二種以上を5質量%以下で含有する1に記載の光学ガラス。
1または2に記載の光学ガラスを素材としてなるモールドプレス成形用プリフォーム。
.1〜のいずれかに記載の光学ガラスを素材としてなる光学素子。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低分散性の光学ガラスにおいて、ガラス転移温度(Tg)および屈伏点(At)を低下することができ、さらには耐失透性や耐候性、透過率に優れ、低温でプレス成形可能な光学ガラスを得ることができる。
また、本発明によれば、かかる光学ガラスを素材とすることにより、ガラスの耐失透性に優れたモールドプレス成形用プリフォームおよび光学素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例光学ガラス24に紫外線を照射し、その照射前後の分光透過率変化(ソラリゼーション)を測定した図である。
図2】比較例光学ガラス1に紫外線を照射し、その照射前後の分光透過率変化(ソラリゼーション)を測定した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明について具体的に説明する。
まず、本発明において、ガラス組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。
【0013】
[P:38〜56質量%]
本発明において、Pは特に重要な成分である。このPは、ガラスの網目構造を形成する主成分として、ガラスに製造可能な耐失透性を持たせることができる。
しかしながら、その含有量が56質量%を超えると、屈折率(nd)の低下や耐候性の悪化、さらにガラスの揮発による品質悪化を生じるおそれがあり、一方、38質量%未満では、耐失透性が悪化しガラス化が困難になるので、Pは38〜56質量%の範囲とする。好ましくは40〜56質量%、より好ましくは40〜54.5質量%の範囲とする。
【0014】
[B:0〜10質量%]
は、Pと同様、本発明における光学ガラスの網目を形成し、ガラスの耐失透性や耐候性の向上および屈折率(nd)を高める上で有効な成分である。また、ガラスの溶融性を高めて、溶融温度を低く抑えることができ、その結果、ガラスの着色を抑えて、可視光領域での透過率を向上させることができる。
しかしながら、その含有量が10質量%を超えると、ガラス転移温度(Tg)や屈伏点(At)の上昇、耐失透性の悪化、低分散性の損失、さらには揮発の増加による品質悪化を生じるおそれがあるので、Bの含有量を好ましくは0〜10質量%とする。より好ましく0〜8.5質量%、さらに好ましくは0〜7質量%の範囲とする。なお、上記の効果を十分に得るためには、Bは0.5質量%以上含有させることが好ましい。
【0015】
なお、PとBの合計量が、56質量%を超えると、屈折率(nd)の低下や耐候性の悪化、さらにガラスの揮発による品質悪化を生じるおそれがあり、一方、38質量%未満では、耐失透性が悪化しガラス化が困難になるので、その合計量は38〜56質量%の範囲とする。好ましくは40〜56質量%、より好ましくは40〜54.5質量%の範囲とする。
【0016】
[LiO:3超〜8質量%]
本発明において、LiOは特に重要な成分である。このLiOは、ガラス転移温度(Tg)や屈伏点(At)を低下させ、さらに低分散化に有効な成分である。
しかしながら、その含有量が8質量%を超えると、耐候性、化学的耐久性の悪化や耐失透性が悪化しガラス化が困難となるおそれがあり、一方、3質量%以下では、ガラス転移温度(Tg)や屈伏点(At)が高くなり、特にモールド用に適さないガラスとなるおそれや、低分散性を損なうおそれがあるので、LiOの含有量を3超〜8質量%とする。好ましくは3超〜6.5質量%、より好ましくは3超〜5.5質量%の範囲とする。
【0017】
[NaO:0〜3質量%]
NaOも、LiOと同様、ガラス転移温度(Tg)や屈伏点(At)を低下させる成分として用いることができる。
しかしながら、その含有量が3質量%を超えると、耐候性や化学的耐久性および成形性が著しく悪化してしまい、特にモールド用に適さないガラスとなるおそれがあるので、NaOの含有量を好ましくは0〜3質量%とする。より好ましくは0〜2.5質量%、さらに好ましくは0〜2質量%である。
【0018】
[KO:0〜3質量%]
Oも、LiOやNaOと同様、ガラス転移温度(Tg)や屈伏点(At)を低下させるのに有用な成分であり、さらに少量であれば屈折率(nd)を高める成分として用いることができる。
しかしながら、その含有量が3質量%を超えると、耐候性、化学的耐久性の悪化や耐失透性が悪化しガラス化が困難になるおそれがあるので、KOの含有量を好ましくは0〜3質量%とする。より好ましくは0〜2.5質量%、さらに好ましい範囲は0〜2質量%である。
【0019】
なお、アルカリ金属酸化物であるLiO、NaO、KOの合計量が、8質量%を超えると、耐候性や化学的耐久性が悪化するおそれがあり、一方、3質量%以下では、ガラス転移温度(Tg)や屈伏点(At)が上昇したり、低分散性も損なうおそれがあるので、その合計量を3超〜8質量%とする。好ましくは3超〜6.5質量%、より好ましくは3超〜5.5質量%の範囲とする。
【0020】
[MgO:0〜4質量%]
MgOは、ガラスの耐候性や耐失透性の向上に有効な成分として用いることができる。
しかしながら、その含有量が4質量%を超えると、ガラス転移温度(Tg)や屈伏点(At)が高くなり、特にモールド用に適さないガラスとなるおそれがあるので、MgOの含有量は好ましくは0〜4質量%とする。より好ましくは0〜3.8質量%、さらに好ましくは0〜3.6質量%である。なお、上記の効果を十分に得るためには、MgOは0.5質量%以上含有させることが好ましい。
【0021】
[CaO:0〜4質量%]
CaOも、MgOと同様、ガラスの耐候性や耐失透性の向上に有効な成分として用いることができる。
しかしながら、その含有量が4質量%を超えると、耐失透性の悪化やガラス転移温度(Tg)および屈伏点(At)が高くなり、例えばモールド用に適さないガラスとなるおそれがあるので、CaOの含有量は好ましくは0〜4質量%とする。より好ましくは0〜3.8質量%、さらに好ましくは0〜3.6質量%の範囲とする。なお、上記の効果を十分に得るためには、CaOは0.5質量%以上含有させることが好ましい。
【0022】
[SrO:0〜17質量%]
SrOは、ガラスの耐候性の向上や高屈折率化に有効な成分として用いることができる。
しかしながら、その含有量が17質量%を超えると、耐失透性の悪化や低分散性が損なわれるので、SrOの含有量を0〜17質量%とする。好ましくは0〜15質量%、より好ましくは0〜13.5質量%の範囲とする。なお、上記の効果を十分に得るためには、SrOは1質量%以上含有させることが好ましい。
【0023】
[BaO:21〜42質量%]
本発明において、BaOは特に重要な成分である。このBaOは、ガラスの耐候性や耐失透性の向上および高屈折率化に非常に有効な成分である。
しかしながら、その含有量が42質量%を超えると、耐失透性の悪化や特に低分散性が損なわれるおそれがあり、一方21質量%未満になると、所望の屈折率(nd)が得られず、さらに耐候性および耐失透性が悪化しガラス化が困難になるので、BaOの含有量を21〜42質量%とする。好ましくは24〜42質量%、より好ましくは24〜39質量%の範囲とする。
【0024】
なお、MgOとCaOの合計量(MgO+CaO)が、4質量%を超えると、ガラス転移温度(Tg)および屈伏点(At)が高くなり、例えばモールド用に適さないガラスとなってしまうおそれがある。そのため、本発明では、これらの合計量を0〜4質量%の範囲に制限する。好ましくは0〜3.8質量%、より好ましくは0〜3.6質量%の範囲とする。
【0025】
また、アルカリ土類金属酸化物であるMgO、CaO、SrO、BaOの合計量が、53質量%を超えると、耐失透性の悪化やガラス転移温度(Tg)および屈伏点(At)が高くなり、特にモールド用に適さないガラスとなってしまう。一方35質量%未満では所望の屈折率(nd)が得られずまた耐候性および耐失透性の悪化のおそれがあるので、その合計量は35〜53質量%とする。好ましくは36〜52質量%、より好ましくは37〜51質量%の範囲とする。
【0026】
[Al:0〜6質量%]
Alは、光学ガラスの網目を形成するとともに、修飾酸化物としてもガラスの耐失透性および耐候性を向上させるために有効な成分である。
しかしながら、その含有量が6質量%を超えると、ガラス転移温度(Tg)や屈伏点(At)の上昇、耐失透性の悪化および屈折率(nd)の低下を生じるおそれがあるので、Al含有量を好ましくは0〜6質量%とする。より好ましくは0〜4質量%、さらに好ましくは0〜3.5質量%の範囲とする。なお、上記の効果を十分に得るためには、Alは0.3質量%以上含有させることが好ましい。
【0027】
[Gd0.5〜5質量%]
Gdは、ガラスの耐候性や化学的耐久性の向上や、少量であれば低分散性を損なわずに屈折率(nd)を高める有効な成分として用いることができる。
しかしながら、その含有量が5質量%を超えると、耐失透性の悪化や低分散性が損なわれるので、Gdの含有量は5質量%以下とする。好ましくは4.5質量%以下、より好ましくは4質量%以下とする。また、上記の効果を十分に得るためには、Gdは0.5質量%以上含有させる。
【0028】
以上、基本成分について説明したが、本発明ではその他にも以下に述べる成分を適宜含有させることができる。
【0029】
[TiO:0〜5質量%]
TiOは、ガラスの耐候性の向上および屈折率(nd)を高める成分として用いることができる。
しかしながら、その含有量が5質量%を超えると、耐失透性や成形性の悪化、さらに低分散性が著しく損なわれるので、TiOの含有量を0〜5質量%とする。好ましくは0〜4質量%、より好ましくは0〜3質量%の範囲とする。
【0030】
[Y:0〜5質量%]
は、ガラスの耐失透性および耐候性を向上させるために有効な成分として用いることができる。
しかしながら、その含有量が5質量%を超えると、耐失透性の悪化やガラス転移温度(Tg)、屈伏点(At)が高くなり、特にモールド用に適さないガラスとなってしまうおそれがあるので、Yの含有量を好ましくは0〜5質量%とする。より好ましくは0〜4質量%、さらに好ましくは0〜3質量%の範囲とする。
【0031】
[ZrO:0〜5質量%]
ZrOは、ガラスの耐候性や化学的耐久性の向上および屈折率(nd)を高める成分として用いることができる。
しかしながら、その含有量が5質量%を超えると、耐失透性の悪化やガラス転移温度(Tg)、屈伏点(At)が高くなり、特にモールド用に適さないガラスとなってしまうおそれがあるので、ZrOの含有量を好ましくは0〜5質量%とする。より好ましくは0〜4質量%、さらに好ましくは0〜3質量%とする。
【0032】
[Nb:0〜5質量%]
Nbは、ガラスの耐候性の向上および屈折率(nd)を高める成分として用いることができる。
しかしながら、その含有量が5質量%を超えると、耐失透性の悪化やガラス転移温度(Tg)、屈伏点(At)の上昇および、低分散性が損なわれるおそれがあるので、Nbの含有量を好ましくは0〜5質量%とする。より好ましくは0〜4質量%、さらに好ましくは0〜3質量%の範囲とする。
【0033】
[Ta:0〜5質量%]
Taは、ガラスの耐候性の向上および、低分散性をあまり損なわずに屈折率(nd)を高める成分として用いることができる。
しかしながら、その含有量が5質量%を超えると、耐失透性の悪化やガラス転移温度(Tg)、屈伏点(At)の上昇、また低分散性が損なわれるので、Taの含有量を好ましくは0〜5質量%とする。より好ましくは0〜4質量%、さらに好ましくは0〜3質量%の範囲とする。
【0034】
[Bi:0〜5質量%]
Biは、ガラス転移温度(Tg)や屈伏点(At)を低下させ屈折率(nd)や耐失透性を高めることのできる成分として用いることができる。
しかしながら、その含有量が5質量%を超えると、耐候性、成形性の悪化や低分散性が著しく損なわれるので、Biの含有量を好ましくは0〜5質量%とする。より好ましくは0〜4質量%、さらに好ましくは0〜3質量%の範囲とする。
【0035】
また、TiO、Y、ZrO、Nb、TaおよびBiの合計量は、5質量%を超えると耐失透性の悪化やガラス転移温度(Tg)、屈伏点(At)の上昇および低分散性が損なわれるおそれがあるため、その合計量は5質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは0〜4質量%、さらに好ましくは0〜3質量%である。
【0036】
なお、本発明の光学ガラスでは、ZnOは、溶融時の揮発増加や耐失透性、耐候性の悪化、およびソラリゼーションを生じるおそれがあり、Laは、耐失透性の悪化やガラス転移温度(Tg)、屈伏点(At)を上昇させるおそれがあり、フッ素は揮発による品質悪化や成形性に悪影響を及ぼすおそれがあることが判明した。そこで本発明では、かかるZnO、Laおよびフッ素は含有させないものとした。
【0037】
上記した本発明の成分組成になる光学ガラスにおいて、ガラス転移点は480℃以下とすることが好ましい。より好ましくは475℃以下である。また、屈伏点(At)は525℃以下とすることが好ましい。より好ましくは520℃以下である。
また、本発明の光学ガラスは、屈折率(nd)が1.57〜1.62の範囲、好ましくは1.575〜1.615の範囲、より好ましくは1.58〜1.61の範囲の中屈折率であり、かつ、アッベ数(νd)が59〜68の範囲、好ましくは60〜67.5の範囲、より好ましくは61〜67の範囲の低分散での光学恒数を得ることができる。
【0038】
上記のように、屈折率(nd)が1.6程度の中屈折率の光学ガラスにおいて、低分散の下480℃以下のガラス転移点および525℃以下の屈伏点(At)を有し、耐候性や成形性に優れたものは従来得られてなく、本発明ではじめて達成されたものである。
【0039】
したがって、本発明の光学ガラス組成とすることにより、屈折率(nd)が良好で低分散性の優れた光学素子を得ることができる。
かかる光学素子としては、例えば、研磨加工することにより、研磨プリフォームや、レンズ、プリズム、ミラー等を挙げることができる。また、本発明の光学ガラスは、融液状態にあるものを直接適下させ、ゴブプリフォームを作製することができる。
ここでプリフォームとは、モールド成形前のレンズ母材のことで、鏡面状態になったガラスのことである。そして、研磨プリフォームやゴブプリフォームを鏡面加工された金型に入れ、加熱して軟化させた後、プレスすること(精密モールド)で、様々な形状の光学素子を製造することができる。
【0040】
次に本発明の光学ガラスの好適な製造方法について説明する。
本発明では、光学ガラスの成分組成さえ上記の好適範囲を満足すればよく、製造方法については、特に限定されることなく、従来の製造方法に従えば良い。
すなわち、各成分の原料としてそれぞれに相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩などを所定の割合で秤量し、十分混合したものをガラス調合原料とする。このガラス調合原料を、ガラス原料等と反応性のない例えば白金坩堝に投入して、電気炉にて1000〜1200℃に加熱して溶融しながら適時撹拌した後、電気炉で清澄、均質化してから、適当な温度に予熱した金型に鋳込んだ後、電気炉内で徐冷して、本発明の光学ガラスを製造することができる。
なお、ガラスの着色改善や脱泡のためにごく少量(0.1質量%以下)のSbなど、工業上周知である脱泡成分を加えることができる。
【実施例】
【0041】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明の光学ガラスを具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0042】
表1〜3に記載の各成分の原料としてそれぞれに相当する酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩などをガラス化した後に100gとなるように秤量し、十分混合して、白金坩堝に投入し、電気炉にて1000〜1200℃で1〜2時間溶融した後、適時撹拌して均質化を図り、清澄してから適当な温度に予熱した金型内に鋳込んだ後、電気炉内で徐冷することで、実施例光学ガラス1〜25および比較例光学ガラス1〜6を得た。
それぞれの光学ガラスについて、ガラス転移温度(Tg)、屈伏点(At)、屈折率(nd)およびアッベ数(νd)の測定を行った。
【0043】
ガラス転移温度(Tg)、屈伏点(At)、屈折率(nd)およびアッベ数(νd)の測定は、日本光学硝子工業会規格に準じた「JOGIS 08−2003光学ガラスの熱膨張の測定方法」および「JOGIS 01−2003光学ガラスの屈折率の測定方法」に記載された方法に従って行った。
よって測定結果を、表1〜3に併記する。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
表1,2に示されたとおり、実施例光学ガラスは全て、光学設計上非常に有用である光学恒数を有していて、ガラス転移温度(Tg)が480℃以下、屈伏点(At)が525℃以下と低く、特にモールド用の光学ガラスとして適しており、さらに溶融中の揮発が少ないため脈理、屈折率(nd)変動などの品質が良好であった。
また、得られたガラスから所定量のガラス塊を切り出して研磨プリフォームを作製し、モールドで数種類のレンズを作製したところ、いずれのレンズも良好な転写性を示し、金型へのガラス付着、揮発物の付着など成形性に問題がある現象は認められなかった。この点でもモールド用光学ガラスとして優れていることが確認された。
【0048】
一方、表3の比較例1〜6の光学ガラスに関して説明する。
比較例光学ガラス1はZnOを含んでいるため、溶融時の揮発増加や耐失透性、耐候性の低下、およびソラリゼーションが発生した。
比較例光学ガラス2はMgO+CaOの含有量が多いため、ガラス転移温度(Tg)および屈伏点(At)が高く、特にモールド用光学ガラスに適していなかった。
比較例光学ガラス3はアルカリ土類酸化物を多く含有しLiOを含有しないため、ガラス転移温度(Tg)および屈伏点(At)が非常に高く、特にモールド用光学ガラスに適していなかった。
比較例光学ガラス4は比較例光学ガラス2と同様にMgO+CaOの含有量が多いため、ガラス転移温度(Tg)および屈伏点(At)が高く、特にモールド用光学ガラスに適していなかった。
比較例光学ガラス5はLiOの含有量が少ないため、ガラス転移温度(Tg)および屈伏点(At)が高く、特にモールド用光学ガラスに適していなかった。
比較例光学ガラス6は比較例光学ガラス1と同様にZnOを含んでいるため、溶融時の揮発増加や耐失透性、耐候性の低下、およびソラリゼーションが発生し、またLaを含んでいるため、ガラス転移温度(Tg)および屈伏点(At)が高く、特にモールド用光学ガラスに適していなかった。
【0049】
そして、図1,2は、実施例光学ガラス24および比較例光学ガラス1のソラリゼーションについて測定した結果をそれぞれ示すものである。なお、ソラリゼーション測定は日本光学硝子工業会規格JOGIS 04−2005に従い行った。
【0050】
JOGIS 04−2005における80%を示す波長での分光透過率低下は実施例光学ガラス24では0.1%であったのに対し、比較例光学ガラス1では1.9%と大きなものであった。
【0051】
図1,2から明らかなように、ZnOを含む比較例光学ガラス1では、特に光学ガラスとして重要な、可視光域での透過率の低下が著しい。よって比較例光学ガラス1は、レンズなどの一般的な光学素子に適していなかった。
図1
図2