特許第5690506号(P5690506)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690506
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】X線CT装置及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20150305BHJP
【FI】
   A61B6/03 330Z
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2010-123525(P2010-123525)
(22)【出願日】2010年5月28日
(65)【公開番号】特開2011-245159(P2011-245159A)
(43)【公開日】2011年12月8日
【審査請求日】2013年5月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】東芝メディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149803
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 康高
(72)【発明者】
【氏名】竹井 浩二
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−113715(JP,A)
【文献】 特開2008−148917(JP,A)
【文献】 特開2001−212127(JP,A)
【文献】 特開2001−190536(JP,A)
【文献】 特開2002−177255(JP,A)
【文献】 特開平05−269122(JP,A)
【文献】 特開2009−056108(JP,A)
【文献】 特開2000−175900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を照射するX線管と、前記X線管に対して対向配置されたX線検出器とを備え、X線CT像の撮影を行うX線CT装置において、 体軸方向において異なる位置にある、離間した複数の撮影位置を設定する撮影位置設定手段と、 前記複数の撮影位置におけるX線CT像を撮影する第1のスキャンを行う第1の撮影手段と、 所定の撮影範囲のX線CT像を撮影する第2のスキャンを行う第2の撮影手段と、 前記第1のスキャンにより撮影された、前記複数の撮影位置におけるX線CT像の各々含まれるCT値に基づいて、各CT値が閾値を超えたことを契機に、前記第2のスキャンを開始する制御手段とを有するX線CT装置。
【請求項2】
前記複数の撮影位置に基づいて前記X線の一部を遮り、前記X線の照射領域を離間した複数の領域に分割するコリメータを備える請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記コリメータは、前記X線の照射範囲の端を遮る第1コリメータと、 前記X線の照射範囲を分断する第2コリメータとから構成される請求項に記載のX線CT装置。
【請求項4】
前記複数の撮影位置を入力するための入力手段を更に備え、 前記第1の撮影手段は、前記複数の撮影位置におけるX線CT像の撮影中に、前記入力手段の入力に基づいて前記撮影位置を変更する請求項1乃至3のいずれか1項に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記X線検出器が検出したX線に基づいてX線像を生成する第3の撮影手段と、 前記第3の撮影手段が生成したX線像上に、前記複数の撮影位置を示した操作画面を表示する表示手段とを更に備え、 前記入力手段による前記撮影位置の入力は前記操作画面に基づいて行われる請求項に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記第1の撮影手段によって撮影されたX線CT像ごとに関連付けられる比較条件に基づいて、前記第1の撮影手段によって撮影されたX線CT像と前記比較条件を比較する比較手段を更に備え、 前記制御手段は前記比較手段の比較結果に基づいて前記第2のスキャンを開始するものであって、 前記第1の撮影手段は、前記撮影位置の変更されたX線CT像に対して、変更前のX線CT像の比較条件を関連付ける請求項1乃至のいずれか1項に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記閾値は、前記複数の撮影位置ごとに設定される請求項1乃至6のいずれか1項に記載のX線CT装置。
【請求項8】
X線を照射するX線管と、前記X線管に対して対向配置されたX線検出器とを備え、X線CT像の撮影を行うX線CT装置が備えるコンピュータを、 体軸方向において異なる位置にある、離間した複数の撮影位置を設定する撮影位置設定手段、 前記複数の撮影位置におけるX線CT像を撮影する第1のスキャンを行う第1の撮影手段、 所定の撮影範囲のX線CT像を撮影する第2のスキャンを行う第2の撮影手段、 前記第1のスキャンにより撮影された、前記複数の撮影位置におけるX線CT像の各々含まれるCT値に基づいて、各CT値が閾値を超えたことを契機に、前記第2のスキャンを開始する制御手段 として機能させる制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、X線を用いて医用画像を撮影するX線CT装置及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
X線CT(Computed Tomography)装置は、被検体に対して種々の角度からX線を照射し、被検体を透過したX線を検出して被検体のX線CT像を生成するものである。このX線CT装置による断層像または3次元ボリューム像の生成は、ガントリと呼ばれる装置の内側に取り付けたX線管とX線検出器とを回転させながら、ガントリの開口部に載置した被検体へX線を照射することで行われる。
【0003】
こうしたスキャンを行う際に、造影剤を被検体に注入し、被検体内の対象部位を強調表示する技術が実用化されている。設定された範囲内の3次元ボリューム像の生成(以下、単に本スキャンと記載する)を行って対象部位に到達した造影剤を撮影するためには、対象部位に造影剤が到達するタイミングと本スキャンの開始タイミングとを合わせる必要がある。そこで、X線CT装置はプリスキャンと呼ばれるスキャンを行い本スキャンの開始タイミングを制御する。プリスキャンの一例として、対象部位近傍のアキシャル画像を1スライス分撮影して画像内に写りこむ造影剤を検出し、一定量以上の造影剤が写りこむと対象部位へ造影剤が到達したと判断して対象部位の3次元画像を撮影するX線CT装置が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−310597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先述した特許文献1ではプリスキャンとして、造影剤注入後に1スライス分のアキシャル画像の撮影を行う。そして、このアキシャル画像内の注目部位(以下、単にROI:Region Of Interestと記載する)に一定量以上の造影剤が写りこんだことを基に、対象部位へ造影剤が到達したと判定する。しかし、被検体内の造影剤移動速度は一定とは限らず、アキシャル画像の撮影位置における造影剤の移動速度が対象部位周辺と大きく異なる場合も考えられる。このような場合、対象部位全体に造影剤が到達しているか否かを単一のアキシャル画像から判断することは難しい。
【0006】
この課題を解決するため従来のX線CT装置においては、造影剤の注入量を増加させる方法や、アキシャル画像内で造影剤到達が特に遅いと予想される部位にROIを設定しなおし、このROIを用いて造影剤の到達を判定する方法などを用いていた。しかし、造影剤注入量の増加は被検体への身体的負担を増加させ、またROIの位置変更は操作者の経験や予測によるためスキャン開始タイミングが不確定になるという問題がある。
【0007】
そこで本開示のX線CT装置においては、複数のアキシャル画像を用いて造影剤を検知することにより、スキャン開始タイミングをより簡便に制御することが可能なX線CT装置及び制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために実施態様のX線CT装置は、X線を照射するX線管と、前記X線管に対して対向配置されたX線検出器とを備え、X線CT像の撮影を行うX線CT装置において、実施態様のX線CT装置は、体軸方向において異なる位置にある、離間した複数の撮影位置を設定する撮影位置設定手段と、前記複数の撮影位置におけるX線CT像を撮影する第1のスキャンを行う第1の撮影手段と、所定の撮影範囲のX線CT像を撮影する第2のスキャンを行う第2の撮影手段と、前記第1のスキャンにより撮影された、前記複数の撮影位置におけるX線CT像の各々含まれるCT値に基づいて、各CT値が閾値を超えたことを契機に、前記第2のスキャンを開始する制御手段とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の実施態様に係るX線CT装置の構成を示すブロック図。
図2】本開示の実施態様に係るコリメータの構成を示す図。
図3】本開示の実施態様に係るコリメータの移動に伴いX線照射範囲が変化する様子を示す図。
図4】本開示の実施態様に係るコリメータの別の移動に伴いX線照射範囲が変化する様子を示す図。
図5】本開示の実施態様に係るスキャノ像撮影時のコリメータの位置関係を示す図。
図6】本開示の実施態様に係る本スキャン時のコリメータの位置関係を示す図。
図7】本開示の実施態様に係るコリメータの別の構成を示す図。
図8】本開示の実施態様に係る回転体の構成を示す断面図。
図9】本開示の実施態様に係るスキャノ像撮影のためコリメータが移動する様子を示す図。
図10】本開示の実施態様に係る撮影されたスキャノ像を示す図。
図11】本開示の実施態様に係る本スキャンのためコリメータが移動する様子を示す図。
図12】本開示の実施態様に係る撮影されたプリスキャン画像を示す図。
図13】本開示の実施態様に係るROIの設定画面を示す図。
図14】本開示の実施態様に係るプリスキャンのためコリメータが移動する様子を示す図。
図15】本開示の実施態様に係るスキャン開始タイミングの制御画面を示す図。
図16】本開示の実施態様に係るプリスキャン画像撮影位置の指示に基づいてコリメータが移動する様子を示す図。
図17】本開示の実施態様に係る別のプリスキャン画像撮影位置の指示に基づいてコリメータが移動する様子を示す図。
図18】本開示の実施態様に係るスキャン開始タイミング制御処理を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して説明する。図1は、本発明に係るX線CT装置1の内部構成を示したブロック図である。
【0011】
なお後述する実施態様においては、所定の範囲の3次元ボリューム像を撮影する動作を単に本スキャンと記載する。また、本スキャンの開始タイミングの制御に用いるアキシャル画像(図1中のxy平面方向に向けて撮影された画像)を単にプリスキャン画像と記載する。また、造影剤を被検体へ注入した状態で行うプリスキャン画像の撮影であって、本スキャン開始タイミングを制御するために行うスキャンを単にプリスキャンと記載する。また、被検体とX線管301及びX線検出器302との位置合わせに用いるX線像(図1中のyz平面方向に向けて撮影された画像)を単にスキャノ像と記載する。
【0012】
(X線CT装置1の構成)
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)から構成される。制御部100は、スキャン制御部102、再構成処理部103、画像処理部104、表示部106、記憶部107、及び入力部108から構成される。制御部100は、各部から供給される信号を処理し、また種々の制御信号を生成して各部に供給することで、X線CT装置1を統括的に制御する。
【0013】
スキャン制御部102は、X線撮影を行う際に入力部108から入力されあるいは記憶部107から読み出したスキャンパラメータを読み出す。スキャン制御部102はこのスキャンパラメータに基づいてX線をX線管301に照射させるためのX線ビーム照射信号をX線管制御部201へ出力する。また、スキャン制御部102はスキャンパラメータに基づいて、第1コリメータ401(a)(b)、第2コリメータ402(a)(b)、及び第3コリメータ430を移動させる架台駆動信号を架台駆動制御部202へ出力する。また、スキャン制御部102は後述する本スキャンやプリスキャンなどを行い被検体PのX線CT像を撮影する際には、回転体300を回転させる架台駆動信号を架台駆動制御部202へ出力する。また、スキャン制御部103はスキャンパラメータに基づいて、天板500を移動させる天板駆動信号を天板駆動制御部203へと出力する。
【0014】
再構成処理部103は、X線検出器302がX線を検出した際に出力するX線検出信号に基づいて、被検体Pの断層画像を生成する。本スキャンやプリスキャンなどを行い被検体PのX線CT像を撮影する際には、再構成処理部103は逆投影方式に基づいてX線管301とX線検出器302の回転角度毎に得られたX線検出信号それぞれについて逆投影処理を施して、断層画像データを生成する。そして、再構成処理部103は断層画像データを生成すると、これを画像処理部104へと出力する。なお、後述するX線検出器302は、入射したX線を検出するX線検出素子をチャネル方向(図1中のy方向)に沿って複数列並べることで構成される。本スキャンやプリスキャンの際には、後述する第1コリメータ401(a)(b)及び第2コリメータ402(a)(b)の動作に基づいて、X線は複数のX線検出素子列へと入射することとなる。再構成処理部103はX線検出素子の各列から出力されたX線検出信号を受けて、各列毎に断層画像データの生成を行う。
【0015】
画像処理部104は、入力部108から入力された指示に基づいて、再構成処理部103から出力された断層画像データを公知の方法により、任意断面の断層画像データ、またはレンダリング処理の施された3次元画像データなどの画像データを生成する。また、画像処理部104は、X線検出器302から出力されたX線検出信号に基づいて、被検体Pのスキャノ像の画像データを生成する。画像処理部104はこれらの画像データの変換を行うと、これを表示部106あるいは記憶部107へと出力する。
【0016】
表示部106は例えば液晶ディスプレイなどによって構成され、画像処理部104から出力された画像データ、X線CT装置1を操作するための操作画面、及び入力部108によって入力されたスキャンパラメータなどを表示する。また、表示部106は後述するプリスキャン画像の撮影位置を設定する操作画面を表示する。
【0017】
記憶部107は、例えばROM、RAMや電気的に書き換えや消去が可能な不揮発性メモリであるフラッシュメモリ、およびHDD(Hard Disc Drive)などの記憶媒体を組み合わせて構成される。記憶部107は画像処理部104から出力された画像データを記憶し、また制御部100のCPUにより実行される種々のアプリケーションを記憶する。
【0018】
入力部108は例えばタッチパネルディスプレイや機械的なボタン、マウスなどの入力デバイスなどから構成され、X線CT装置1の使用者が入力部108へ行った入力を受け付ける。入力部108は使用者が行ったスキャンパラメータ指示やスキャン開始/停止指示、寝台移動指示などの入力を受け付けると、使用者が行った指示に応じた入力信号を出力する。制御部100は入力部108が出力した入力信号に応じて種々の処理を実行する。
【0019】
回転体300は、ガントリ3内に内蔵される円筒形の装置である。回転体300はX線管301、第1コリメータ401(a)(b)、第2コリメータ402(a)(b)、第3コリメータ430、及びX線検出器302などを保持する。回転体300には回転モータが取り付けられ、架台駆動制御部202から出力される架台駆動指示信号を受けて回転モータを駆動する。回転体は回転モータの駆動に従って、被検体Pの体軸を中心とする回転運動を行う。回転体300が回転することによって、回転体300が保持するX線管301、第1コリメータ401(a)(b)、第2コリメータ402(a)(b)、第3コリメータ430、及びX線検出器302も被検体Pの体軸を中心とする回転運動を行う。
【0020】
X線管制御部201は、スキャン制御部102から出力されたX線ビーム照射信号を受けて、X線管301にX線を照射させるための電圧を印加する。この電圧の印加はX線ビーム照射信号が指定する管電圧、管電流、及びX線パルス幅などのパラメータに基づいて行われる。
【0021】
X線管301は、X線管制御部201から印加された電圧を受けて、X線検出器302に向けてX線を照射する。このとき、複数列を持つように構成されたX線検出器302の各列へX線が入射するように、X線管301は列方向に向かって扇状に広がる形状のX線を照射する。
【0022】
X線検出器302は、X線管301から照射されたX線を検知して、これをX線検出信号として再構成処理部103へと出力する。このX線検出器302は、入射したX線量を検出して電気信号を生成するX線検出素子をチャネル方向(図1中のy方向)に沿って複数列に並べることで、X線検出素子を2次元状に配列して構成される。より詳しくは、X線検出器302は被検体Pのチャネル方向(図1中のy方向)に沿って、あるいは体軸方向(図1中のz軸方向)に対し垂直な方向に沿ってX線検出素子を並べることで列を構成し、更にこのX線検出素子の列を列方向(図1中のz軸方向)に沿って並べることで、X線検出素子を2次元に並べて構成される。なお、以降X線検出素子の列が並べられる方向(図1中のz軸方向)を、単に列方向と記載する。
【0023】
架台駆動制御部202は、スキャン制御部102から出力された架台駆動信号を受けて、第1コリメータ401(a)(b)、第2コリメータ402(a)(b)、及び後述する第3コリメータ430を移動させ、また回転体300を回転させる。これらの移動及び回転は入力部108が指定する回転速度やスキャン範囲などのスキャンパラメータに基づいて制御される。
【0024】
第1コリメータ401(a)(b)、第2コリメータ402(a)(b)、及び第3コリメータ430は、鉛やタングステンなどのX線を遮蔽する物質によって構成された部材である。各コリメータはX線管301が照射するX線の照射領域を塞ぐように設けられる。架台駆動制御部202は各コリメータを移動させてX線の一部を遮ることにより、被検体上のX線照射領域を制御する。
【0025】
第1コリメータ401(a)(b)及び第2コリメータ402(a)(b)は、照射されたX線のうち体軸方向(図1のz軸方向)の照射領域を制御するように設けられる。図2に第1コリメータ401(a)(b)及び第2コリメータ402(a)(b)の構成を示す。第1コリメータ401(a)(b)は板状の部材として構成され、X線管301と天板500との間に設けられる。第1コリメータ401(a)(b)には図示せぬモータが取り付けられ、モータは架台駆動制御部202から出力される指示信号に応じて第1コリメータ401(a)(b)を体軸方向(図2中のz軸方向)に沿って前後に移動させる。第1コリメータ401(a)(b)が移動することによりX線の遮られる領域が変化し、結果として体軸方向(図2中のz軸方向)における被検体上のX線の照射領域が変化することとなる。
【0026】
一方第2コリメータ402(a)(b)は、例えば細かい板状の部材を継ぎ合わせることにより構成される。板状部材の連結部には、それぞれ図示せぬモータが設けられる。モータは駆動することにより板状部材を体軸方向(図2中のz軸方向)に対して移動させる。これにより、第2コリメータ402(a)(b)を構成する各板状部材は体軸方向(図2中のz軸方向)に対して伸びた状態と、折りたたまれた状態との間を遷移することとなる。第2コリメータ402(a)(b)は各板状部材の伸縮状態を変化させて、X線を遮る領域を変化させる。また、第2コリメータ402(a)(b)のX線管301から遠い側の端には、第2コリメータ402(a)(b)全体を体軸方向(図2中のz軸方向)に対して移動させるモータが接続される。第2コリメータ402(a)(b)全体が移動することにより、第2コリメータ402(a)(b)はX線の遮られる領域を変化させる。即ち、第2コリメータ402(a)(b)は各板状部材を相対的に伸縮させる機構と、第2コリメータ402(a)(b)全体を移動させる機構との2つを駆動することで、体軸方向(図2中のz軸方向)における被検体上のX線照射領域を、例えば広げ、あるいは狭める制御を行い、また2つ以上の離間したX線照射領域に分断し、あるいは1つのX線照射領域に統合する制御を行う。
【0027】
架台駆動制御部202は第1コリメータ401(a)(b)と第2コリメータ402(a)(b)とを組み合わせてX線を遮る領域を変化させることにより、複数のプリスキャン画像を同時に撮影するためのX線照射領域を形成する。図3は3つのプリスキャン画像を同時に撮影する際の第1コリメータ401(a)(b)と第2コリメータ402(a)(b)との位置関係を示した図である。第2コリメータ402(a)(b)が体軸方向(図3中のz軸方向)に対して折りたたまれた状態でX線照射領域の内部へと移動することにより、第2コリメータ402(a)(b)はX線照射領域を分断する。更に第1コリメータ401(a)(b)はX線照射領域の端を遮るように移動して、分断されたX線照射領域を更に狭める。第1コリメータ401(a)(b)と第2コリメータ402(a)(b)とが例えば図3に示した位置関係をとることにより、X線管301から照射されたX線は体軸方向(図3中のz軸方向)に対して幅の狭いビーム3001、3002、3003となって被検体Pへと入射することとなる。ビーム3001、3002、3003は被検体Pを透過するとX線検出器302へと入射し、再構成処理部103は各ビームの透過量に基づいてそれぞれ1スライス分のアキシャル画像、すなわちプリスキャン画像を生成する。
【0028】
図4は、プリスキャン画像の撮影位置が変化した際の第1コリメータ401(a)(b)と第2コリメータ402(a)(b)との位置関係を示した図である。例えば図4では、ビーム3001及びビーム3003の照射位置が図4中の+z方向に移動するように第1コリメータ401(a)(b)と第2コリメータ402(a)(b)とを位置させている。ビームの照射位置を変化させるためには、架台駆動制御部202が第1コリメータ401(a)(b)及び第2コリメータ402(a)(b)の体軸方向(図4中のz軸方向)に対する位置を変化させ、更に第2コリメータ402(a)(b)の伸縮状態を変化させる。具体的には、ビーム3001を図4中の+z方向に移動させるため、架台駆動制御部202は第1コリメータ401(a)を図4中の+z方向へと移動させる。これに伴い、架台駆動制御部202は第2コリメータ402(a)を図4中の+z方向へと移動させる。これにより、第1コリメータ401(a)と第2コリメータ402(a)との開口部から照射されるビーム3001は、図4中の+z方向へと移動することとなる。また、架台駆動制御部202はビーム3002を図4中の+z方向に移動させるため、架台駆動制御部202は第2コリメータ402(a)を展開し、図4中の+z方向へ向けてX線を遮る領域を伸ばす。これに伴い架台駆動制御部202は第2コリメータ402(b)を折りたたみ、図4中の+z方向へ向けてX線を遮る領域を縮める。これにより、第2コリメータ402(a)と第2コリメータ402(b)との開口部から照射されるビーム3002は、図4中の+z方向へと移動することとなる。
【0029】
図5は、スキャノ像撮影を行う際の第1コリメータ401(a)(b)と第2コリメータ402(a)(b)との位置関係を示した図である。スキャノ像撮影を行う際、課題制御部202はX線検出器302の所定の一列に入射する幅の細いビーム3004を形成するように、第1コリメータ401(a)(b)及び第2コリメータ402(a)(b)を移動させる。具体的には、架台制御部202はビーム3004が透過するための開口部のみを残してX線を遮蔽するように、第1コリメータ401(a)(b)を近接させる。これにより、第1コリメータ401(a)(b)の開口部から照射されるビーム3004は、X線検出器302の所定の一列へと入射することとなる。ビーム3004が照射された状態で天板駆動制御部203は天板500を体軸方向(図5中のz軸方向)に沿って移動させることで被検体Pを移動させる。画像処理部104はX線検出器302から出力されたビーム3004の透過量の変化に基づいてスキャノ像を生成する。なお、本実施態様においては第2コリメータ402(a)(b)をX線照射範囲の外へ対比させる例を示すが、第1コリメータ401(a)(b)に替えて第2コリメータ402(a)(b)を伸長させて、開口部のみを残すようにX線を遮蔽しても構わない。
【0030】
図6は、本スキャンを行う際の第1コリメータ401(a)(b)と第2コリメータ402(a)(b)との位置関係を示した図である。本スキャンを行う際、架台制御部202は体軸方向(図6中のz軸方向)に対して扇状に広がるビーム3000を形成するように第1コリメータ401(a)(b)及び第2コリメータ402(a)(b)を移動させる。具体的には、架台制御部202は第1コリメータ401(a)(b)をX線照射領域の端を遮るように移動させる。これに伴い、架台駆動制御部202は第2コリメータ402(a)(b)をX線照射領域の外部へと移動させる。これにより、第1コリメータ(a)(b)の開口部から照射されるビーム3000は、体軸方向(図6中のz軸方向)に対して扇状に広がってX線検出器302へと入射し、再構成処理部103はビーム3000の透過量に基づいて3次元画像を生成する。
【0031】
以上の動作によって、第1コリメータ401(a)(b)及び第2コリメータ402(a)(b)を駆動して、複数のプリスキャン画像を同時に撮影するためのX線照射領域を形成する。なお、第2コリメータ402(a)(b)は板状の部材を伸縮可能に継ぎ合わせることで構成されると述べた。しかし本実施態様はこの構成に限定されるものではなく、例えば伸縮機構を省略して、図7に示すような板状の部材により第2コリメータ402(a)(b)を構成しても構わない。伸縮機構を省略することにより、第2コリメータ402(a)(b)をより簡便に構成することができ、また第2コリメータ402(a)(b)を移動させるモータをより小型に構成することができる。
【0032】
第3コリメータ430は、照射されたX線のうちのチャネル方向(図8中に示す矢印方向)に対する広がりを制御するように設けられる。チャネル方向とは、X線検出器302のX線検出素子が並べられる方向、あるいは回転体300が回転する方向である。図8に、回転体300をxy平面から見た断面図及び第3コリメータ430の構成を示す。第3コリメータ430によって遮られたX線は、図8に示すようにチャネル方向に対し扇状に広がってX線検出器302へと入射する。第3コリメータ430には図示せぬ駆動モータが取り付けられ、第3コリメータ430はチャネル方向へ移動してX線を遮る領域を変化させることで、被検体上のX線照射領域を制御する。
【0033】
天板500は、被検体Pを横たえて載置することが可能な板状の部材である。天板500は天板駆動部501に支持されており、後述する天板駆動部501が天板500の長手方向、あるいは体軸方向(図1中のz軸方向)に沿って前後に移動させる。
【0034】
天板駆動部501は、図示せぬモータなどによって構成された、天板500を移動させるための装置である。天板駆動部501は、例えばモータと連結したベルトを天板500に取り付けることで構成される。天板駆動部501のモータが回転することによって、連動して天板500の位置が移動することとなる。天板駆動部501は、スキャン制御部102から出力された天板駆動信号を受けて、天板500を移動させる。例えばX線CT装置1が本スキャンやプリスキャン画像、スキャノ像の撮影を行う際には、天板駆動部501は被検体Pの撮影位置とX線の照射範囲とを一致させるために天板500をガントリ3の開口部内へと移動させ、また回転体300の回転中心と被検体Pの体軸とを一致させるために天板500の高さを変化させる。
【0035】
上述の構成によって、X線CT装置1は被検体Pに対するスキャノ像、プリスキャン画像の撮影、プリスキャン及び本スキャンといった種々の動作を行う。以下、X線CT装置1により行われる被検体Pの撮影の流れについて述べる。
【0036】
(スキャン処理の流れ)
被検体P内にある腫瘍などの特定部位を撮影する場合、被検体Pには特定部位をX線画像上で強調表示する造影剤が注入される。X線CT装置1は、造影剤が特定部位に到達したタイミングに合わせて本スキャンを行い、特定部位の3次元画像を撮影する。
【0037】
この造影剤は被検体Pの血管を通って体内を移動するため、造影剤の移動速度は血流速度や、血管の分布などによって大きく変化する。そこで本開示のX線CT装置1においては、ROIの設定やプリスキャンなどの処理を組み合わせて造影剤の移動を検出し、本スキャンの開始タイミングを制御する。具体的には、本開示のX線CT装置1においては下記の順で処理を行うことで本スキャンを開始し、被検体Pの特定部位の3次元画像を撮影する。
【0038】
(1)スキャノ像の撮影
(2)非造影のX線CT像撮影
(3)本スキャン開始条件設定
(4)プリスキャン
(5)本スキャン
以下、被検体Pに対して撮影を行う際の、X線CT装置1の処理の流れについて述べる。
【0039】
(1)スキャノ像の撮影
造影剤を用いた撮影の前段として、被検体Pの所定部位がどの位置にあるかを本スキャンの前に確認する必要がある。本開示のX線CT装置1においては被検体Pのスキャノ像を撮影して所定部位の位置を確認し、このスキャノ像を用いてプリスキャン画像の撮影位置や本スキャンの位置を調節する。本実施態様においてスキャノ像は、被検体Pの所定部位を収めるように図9中のyz平面に向けて撮影された2次元画像である。
【0040】
図9は、スキャノ像を撮影する際のX線管301、X線検出器302、第1コリメータ401、及び第2コリメータ402の位置関係を示した図である。スキャノ像を撮影する際には架台駆動制御部202が第1コリメータ401を近接させ、X線管301から照射されたビーム3004がX線検出器302の所定の列へと入射するよう制御する。天板駆動制御部203は、ビーム3004がX線検出器302へ入射した状態で天板500を体軸方向(図9のz軸方向)に沿って移動させる。画像処理部104はX線検出器302から出力されたX線検出信号を受けて、図10に示すスキャノ像(以降、ビーム3004によって撮影されたスキャノ像をスキャノ像600と記載する)を生成する。
【0041】
(2)非造影のX線CT像撮影
X線CT装置1がスキャノ像600を撮影すると、操作者は例えば撮影されたスキャノ像600を基にして本スキャンの大まかな位置を設定する。本スキャンの位置が設定されると、X線CT装置1は被検体PのX線CT像撮影を行う。本実施態様においてプリスキャン画像は、後述する「(4)プリスキャン」の処理中に被検体P内を移動する造影剤を検出するために、造影剤が移動する領域を収めるように撮影されたアキシャル画像(図12中のxy平面に向けて撮影された2次元画像)である。
【0042】
X線CT像撮影は、スキャノ像600から想定されるプリスキャン画像撮影位置を収めるようにX線を照射し、被検体Pの3次元画像を生成することで行われる。なお、本実施態様においてはスキャノ像600を用いてプリスキャン画像撮影位置を指定する例について説明するが、スキャノ像600に替えて任意の時刻で撮影した被検体Pの3次元画像から抽出した、被検体Pのコロナル画像を用いて後述するプリスキャン画像撮影位置を指定するものであっても構わない。X線CT像撮影を行う際のX線管301、X線検出器302、第1コリメータ401、及び第2コリメータ402の位置関係を図12に示す。但し、撮影領域の大きさに合わせて、適宣第1コリメータ401を駆動してX線照射領域を狭めても構わない。X線CT像撮影を行う際には架台駆動制御部202が第1コリメータ401を近接させてX線照射領域を狭めると共に、第2コリメータ402をX線照射領域の外へと移動させる。架台駆動制御部202は回転体300を回転させて扇状に広がるビーム300を被検体Pに対して様々な角度から入射させる。再構成処理部103はX線検出器103が出力したX線検出信号に基づいて被検体Pの3次元画像を生成する。架台駆動制御部202はビーム3000の照射を終えると回転体300の回転を停止しX線CT像撮影を終了する。
【0043】
被検体Pの3次元画像が撮影されると、操作者は3次元画像を基にしてプリスキャン画像の撮影位置を設定する。プリスキャン画像の撮影位置は、例えば撮影された3次元画像の中からプリスキャン画像として採用する、体軸(図12のz軸)上で異なる位置に対応する、複数のアキシャル画像を選択することにより行われる。図12に3次元画像から選択されたプリスキャン画像601、602、603を示す。図12の例においては3つのアキシャル画像がプリスキャン画像として選択され、プリスキャン画像は後述する「(3)本スキャン開始条件設定」の処理に用いられる。なお、このX線CT像の撮影方法はここに述べた方法に限られず、例えばヘリカルスキャンなどの種々の方法によって撮影されるものであっても構わない。
【0044】
(3)本スキャン開始条件設定
X線CT装置1がプリスキャン画像600、601、602を撮影すると、操作者は撮影されたプリスキャン画像600、601、602を用いて本スキャン開始条件を設定する。本スキャンの開始は、各プリスキャン画像に設定された所定領域内のCT値が、予め設定された閾値を超過したことを契機に行われる。そのため本スキャン開始条件の設定は、まず各プリスキャン画像内にROI(Region Of Interest)と呼ばれるCT値の変化を検出する領域を設定し、スキャンを開始するための閾値をROI毎に設定することで行われる。また、本スキャンを開始するための閾値を設定すると共に、被検体Pに対して呼吸止めや挙手などを指示する音声信号を再生開始するための閾値や、本スキャンへの移行を停止するための閾値などを設定しても構わない。
【0045】
図13は、撮影された各プリスキャン画像に対してROIや閾値を設定する設定画面の表示例である。設定画面は表示部106に表示され、操作者は入力部108を用いて設定画面に表示された各ボタンや入力項目を操作することで、ROIや閾値の設定を行う。なお、図13では例として、制御部100がROI1、ROI2、ROI3の3つのROIを用いて本スキャン開始タイミングを制御し、音声ROIを用いて音声の再生タイミングを制御し、更に後述する固定ROIを用いて本スキャンへの移行を停止する制御を行うものとする。
【0046】
以下、設定画面に表示された各項目について述べる。
【0047】
ROI703はCT値の変化を検出する領域である。例えばROI703はプリスキャン画像603上に設定され、入力部108の入力に従って制御部100はROIの領域の大きさや位置を変化させる。
【0048】
ボタン811はROIの設定対象となるプリスキャン画像を変更するためのボタンである。例えば図13ではプリスキャン画像603が表示されているが、ボタン811を操作することにより制御部100は表示部106に表示されるプリスキャン画像がプリスキャン画像601、プリスキャン画像602と切り替える。
【0049】
ボタン812は領域や大きさを変化させる対象となるROIを変更するためのボタンである。例えば図13ではROI3がプリスキャン画像603上に表示され、編集可能な状態として表示されているが、ボタン812を操作することにより制御部100は表示部106へ表示するROIをROI1、ROI2、音声ROI、及び固定ROIなどへ切り替える。
【0050】
ボタン800は本スキャン開始タイミングの制御に用いるROIの数を指定するボタンである。例えば図13のように「3ROI」が選択された場合には、制御部100は各プリスキャン画像中に設定された3つのROIを用いて本スキャン開始タイミングの制御を行う。
【0051】
項目801は「(2)プリスキャン画像の撮影」で撮影されたプリスキャン画像における、ROI内のCT値が表示される項目である。
【0052】
項目802は「(2)プリスキャン画像の撮影」で撮影されたプリスキャン画像における、ROI中のSD(Standard Division:標準偏差)値が表示される項目である。SD値は画素値のばらつき度合いを示す値であり、画素に含まれるノイズ量の指標として用いられる。
【0053】
ボタン803は設定されたROI中のCT値及びSD値の再計算を制御部100に指示するボタンである。
【0054】
ボタン821は後述する「(4)プリスキャン」の処理において、制御部100に時間間隔を指定したプリスキャンを行わせるためのボタンである。
【0055】
項目822はプリスキャンの時間間隔を入力する項目である。
【0056】
項目823はプリスキャンを間欠から連続へ切り替える際の閾値を設定する項目である。例えば図13のようにボタン821によってプリスキャンの時間間隔が指定されている場合、後述する「(4)プリスキャン」の処理ではプリスキャンが3.0秒の時間間隔を置いて行われる。例えば造影剤がROI1中に写りこむなどの原因でROI1中のCT値が項目823に設定された50.00HUを超えると、プリスキャンは時間間隔を空けずに連続して行われるように動作が変化する。
【0057】
ボタン824は後述する「(4)プリスキャン」の処理において、音声ROI中のCT値が閾値を超えたことを契機に制御部100に音声の再生を行わせるためのボタンである。
【0058】
項目825は後述する「(4)プリスキャン」の処理において、音声の再生を行わせるための閾値を入力する項目である。
【0059】
項目831は後述する「(4)プリスキャン」の処理において、本スキャンへ移行する際の閾値を入力する項目である。
【0060】
ボタン832は、後述する「(4)プリスキャン」の処理から本スキャンへ移行する際の条件を設定するためのボタンである。例えば図13のようにボタン832によってROI1とROI2に「AND」が指定されている場合には、後述する「(4)プリスキャン」の処理においてROI1内のCT値が90.00HUを超え、且つROI2内のCT値が130.00HUを超えた場合に制御部100は本スキャンへ移行する。一方ROI3に「OR」が指定されている場合には、ROI1とROI2が先述の条件を満たすか、あるいはROI3内のCT値が170.00HUを超えた場合に制御部100は本スキャンへ移行する。
【0061】
項目833は後述する「(4)プリスキャン」の処理において、本スキャンへの移行を停止するための閾値を入力する項目である。例えば図13のように固定ROIの閾値が250.00±20HUと指定されている場合、固定ROI内のCT値がこの閾値の範囲外であると、先述したROI1、ROI2、ROI3に指定された本スキャンへの移行条件を満たしていても、制御部100は本スキャンへの移行を行わない。
【0062】
以上に述べた設定画面中のボタンや項目に対して操作を行うことにより、操作者はROIや閾値などの、プリスキャンから本スキャンへ移行する際の条件を入力する。X線CT装置1は本スキャン開始条件を設定すると、被検体Pに対してプリスキャンを開始する。
【0063】
(4)プリスキャン
X線CT装置1が本スキャン開始条件を設定すると、X線CT装置1は被検体Pへ造影剤を注入してプリスキャンを開始する。プリスキャンは、「(2)X線CT像撮影」の処理で撮影位置の設定されたプリスキャン画像を連続して撮影し、各プリスキャン画像中に写り込む造影剤を検出することにより行われる。図14は、プリスキャン画像を撮影する際のX線管301、X線検出器302、第1コリメータ401、及び第2コリメータ402の位置関係を示した図である。プリスキャンを行う際には架台駆動制御部202が第1コリメータ401を近接させてX線照射領域を狭めると共に、第2コリメータ402を移動させてX線照射領域を分断する。その結果、X線管301から照射されるX線は第1コリメータ401及び第2コリメータ402によって遮られて、1スライス分のアキシャル画像を撮影するための幅の狭いビーム3001、3002、3003となって被検体Pへと入射する。架台駆動制御部202は回転体300を回転させてビーム3001、3002、3003を被検体Pに対し様々な角度から入射させる。再構成処理部103はX線検出器103が出力したX線検出信号に基づいて各プリスキャン画像を生成する。制御部100はX線管301によるX線の照射や回転体300の回転、及び再構成処理部103による各プリスキャン画像の生成を継続して行ってプリスキャン画像を動画として表示することで、各プリスキャン画像内に写り込む造影剤をリアルタイムに検出する。
【0064】
各プリスキャン画像内に写り込む造影剤は、先述したようにROI内のCT値の変化によって検出される。図15はプリスキャン時に表示部106へ表示される、造影剤を検出するための検出画面の表示例である。操作者は入力部108を用いて検出画面に表示された各ボタンや入力項目を操作して、ROIの領域設定やプリスキャン画像の撮影位置設定、あるいは閾値の変更といった操作を行う。
【0065】
以下、検出画面に表示された各項目について述べる。
【0066】
ROI701、702、703はCT値の変化を検出する領域である。各ROIは例えばプリスキャン画像601、602、603上に表示される。
【0067】
項目901は「(3)本スキャン開始条件設定」の処理で設定された、CT値の閾値を表示する項目である。制御部100は入力部108の入力に従って閾値を変化させる。
【0068】
項目902は撮影されたプリスキャン画像中のCT値を表示する項目である。先述したようにプリスキャン画像の撮影は連続的に行われるため、項目901内の値は造影剤の移動や被検体Pの移動に伴って変動することとなる。また、項目902に表示された値が項目901に表示された閾値の範囲を超えた場合は、それぞれ対応する処理が制御部100によって行われる。対応する処理とは具体的には、ROI1、ROI2、ROI3に対して設定された閾値を超えた場合には本スキャンの開始が、音声ROIに対して設定された閾値を超えた場合には音声の再生が、固定ROIに対して設定された閾値を超えた場合には本スキャンへの以降を停止する処理が制御部100によって行われる。
【0069】
ボタン905は、本スキャンへの移行を制御部100へ指示するボタンである。このボタンを操作した場合、ROI1、ROI2、ROI3や固定ROIなどを用いた閾値処理に関わらず、制御部100は本スキャンへと移行することとなる。
【0070】
ボタン911は、後述するボタン912やボタン913による制御対象のROIを指定するボタンである。例えば図15ではROI3が選択されているため、後述のボタン912やボタン913による制御はROI3に対して行われる。
【0071】
ボタン912は、ROIの位置を移動させるためのボタンである。ボタン912を操作することにより制御部100はROIの位置を入力されたボタンが指示する方向へと移動させる。
【0072】
ボタン913は、プリスキャン画像の撮影位置を移動させるためのボタンである。ボタン913はプリスキャン画像の撮影位置を示すスキャノ像600に一部重畳して表示される。また、現在プリスキャン画像の撮影が行われている箇所については、ボタンの明暗を反転するなどの方法でボタンが強調表示される。ボタン913を操作することにより、架台駆動制御部202は第1コリメータ401及び第2コリメータ402を移動させて、プリスキャン画像の撮影位置を移動させる。
【0073】
図16(a)(b)及び図17(a)(b)は、ボタン913の操作状態及びビーム3001、3002、3003の位置関係を示す図である。図16(a)(b)においては例として、プリスキャン画像601がスキャノ像600中の「Slice2」に対応する位置で撮影され、プリスキャン画像601内にROI1が設定されるものとする。同様にプリスキャン画像602がスキャノ像600中の「Slice5」に対応する位置で撮影され、プリスキャン画像602内にROI2が設定され、プリスキャン画像603がスキャノ像600中の「Slice7」に対応する位置で撮影され、プリスキャン画像603中にROI3が設定されるものとする。また、ボタン911はROI3を表示し、ボタン913によるプリスキャン画像の撮影位置の移動はROI3の表示されたプリスキャン画像603に対して行われるものとする。
【0074】
なお図16及び図17においては、図面の都合上第1コリメータ及び第2コリメータの構成を簡略化して記載する。また、図16及び図17では図面の都合上X線検出器302のX線検出素子が体軸方向(図16(b)のz軸方向)に対して10個並べられ、10の位置についてプリスキャン画像が取得可能なように記載されている。しかし、X線検出素子の数及びプリスキャン画像の撮影位置はこれに限られるものではなく、適宣加減して構わない。図16(b)においてビーム3001、3002、3003は、図16(b)の+z方向から見て2番目、5番目、及び7番目のX線検出素子へ入射し、プリスキャン画像を生成する。表示部106はこれに対応して、図16(a)のボタン913の「Slice2」「Slice5」「Slice7」を反転させることでプリスキャン画像の撮影位置を示す。ここで、操作者がカーソル999などを操作して「Slice8」と表示されたボタン913を操作した場合について述べる。「Slice8」と表示されたボタン913が操作されると、表示部106の表示は図17(a)に示す状態へと変化し、「Slice7」の替わりに「Slice8」の表示されたボタンを強調表示させる。これと同時に架台駆動制御部202は第1コリメータ401及び第2コリメータ402を駆動して、図17(b)に示すようにビーム3001の照射位置を図17(b)中の−z方向へと移動させる。
【0075】
なお、プリスキャン画像603の撮影位置が移動した場合にはROI3やROI3に対応する閾値を新たに設定しなおす必要があるが、この設定を簡便に行うため、制御部100は撮影位置を変更した時点で「Slice7」に対して設定されたROIの位置や閾値を「Slice8」へ引継ぐ動作を行う。
【0076】
以上の検出画面を用いて、操作者は各プリスキャン画像中に映り込む造影剤を検出し、予め設定したROI及び閾値に基づいて本スキャンへの移行を制御する。被検体上で離れた位置にあるプリスキャン画像を複数用いて造影剤を検出することにより、単一のプリスキャン画像を用いて造影剤を検出する場合に比べ、造影剤の移動の様子を捉えることが容易となる。従って、所定部位に造影剤が到達したことをより確実に検知して、適切に本スキャンの開始タイミングの制御を行うことができる。
【0077】
また検出画面を用いることで、ROIの位置や閾値、プリスキャン画像の撮影位置を変更することができる。プリスキャン中にこれらの条件を変更することで、操作者はプリスキャン画像中に写り込む造影剤の様子を見ながら、より造影剤の移動を検知するのに適した条件へ変更することができる。
【0078】
またプリスキャン画像の撮影に用いるビーム3001、3002、3003は、第1コリメータ401及び第2コリメータ402によって幅の狭いビームになるよう制御される。各ビームが幅の狭いビームになるよう制御されることで、プリスキャン中の被検体Pへの不要な被曝を避けることができる。
【0079】
(5)本スキャン
先述したプリスキャン中に本スキャン開始条件が満たされるかあるいはボタン905が操作されると、制御部100は本スキャンへと移行する。本スキャンは、被検体Pの所定部位を収めるようにX線を照射し、所定部位を含む3次元画像を生成することで行われる。本スキャンを行う際のX線管301、X線検出器302、第1コリメータ401、及び第2コリメータ402の位置関係は、図9に示すものと同様である。但し、撮影を行う所定部位の大きさに合わせて、適宣第1コリメータ401を駆動してX線照射領域を狭めても構わない。本スキャンを行う際には架台駆動制御部202が第1コリメータ401を近接させてX線照射領域を狭めると共に、第2コリメータ402をX線照射領域の外へと移動させる。架台駆動制御部202は回転体300を回転させて扇状に広がるビーム300を被検体Pに対して様々な角度から入射させる。再構成処理部103はX線検出器103が出力したX線検出信号に基づいて所定部位の3次元画像を生成する。
【0080】
なお、各プリスキャン画像の撮影位置と所定部位の位置とが離れている場合などは、本スキャンの開始に伴って天板駆動制御部203が天板500を移動させ、所定部位を本スキャンの撮影位置へと移動する制御を行っても構わない。
【0081】
(スキャン処理のフローチャート)
図18は、先の(1)〜(5)に述べた各処理の流れを示すフローチャートである。以下、図18を用いてスキャン処理の流れについて述べる。
【0082】
まず、制御部100がスキャン処理を開始する(ステップ1000)と、制御部100は架台駆動部202を駆動して第1コリメータ401及び第2コリメータを離間させる。更に制御部100はX線管制御部201を駆動してX線管301からX線を照射させ、天板500に載置された被検体Pのスキャノ像を撮影する(ステップ1001)。
【0083】
被検体Pのスキャノ像を撮影すると、制御部100は架台駆動部202を駆動して回転体300を回転させると共に、X線管制御部201を駆動してX線管301からX線を照射させ、被検体PのX線CT像を撮影する(ステップ1002)。
【0084】
被検体PのX線CT像が撮影されると、操作者にプリスキャン画像の撮影位置設定を促す(ステップ1003)。
【0085】
プリスキャン画像の撮影位置が設定されると、制御部100は撮影位置に対応したアキシャル画像及び設定画面を表示部106に表示して、操作者に本スキャン開始条件の設定を促す(ステップ1004)。本スキャン開始条件はプリスキャン画像中のROIの位置や本スキャンを開始するCT値の閾値などが含まれる。
【0086】
本スキャン開始条件が設定されると、被検体Pに造影剤が注入される(ステップ1005)。
【0087】
被検体Pに造影剤が注入されると、制御部100はX線管制御部201を駆動してX線管301からX線を照射させると共に回転体300を回転させ、被検体Pに対してプリスキャンを行う(ステップ1006)。
【0088】
プリスキャンを開始すると、制御部100は入力部108から行われるプリスキャン画像撮影位置の変更指示を待ち受ける(ステップ1007)。プリスキャン画像撮影位置の変更指示があった場合には(ステップ1007の「Yes」)、制御部100は架台駆動制御部202を駆動して第1コリメータ401、第2コリメータ402を移動させ、プリスキャン画像の撮影位置を変化させる(ステップ1008)。制御部100はプリスキャン画像の撮影位置を変化させると、再びステップ1005へ戻ってプリスキャンを継続する。
【0089】
制御部100がプリスキャン画像撮影位置の変更指示を受けなかった場合には(ステップ1007の「No」)、制御部100は各プリスキャン画像に設定されたROI内のCT値を参照して、このCT値が本スキャン開始条件を満たしているか否かを判断する(ステップ1009)。
【0090】
制御部100は本スキャン開始条件を満たしていないと判断すると(ステップ1009の「No」)、再びステップ1006へ戻ってプリスキャンを継続し、CT値が変動するのを待つ。一方制御部100が本スキャン開始条件を満たしたと判断するか、あるいはボタン905による本スキャンの開始指示を受けたと判断すると(ステップ1009の「Yes」)、制御部100は架台駆動制御部202を駆動して第1コリメータ401を離間させると共に、第2コリメータ402をX線照射範囲の外へ移動させて、本スキャンを行う(ステップ1010)。制御部100は本スキャンを終えると処理を終了する(ステップ1011)。
【0091】
以上の処理により、本開示のX線CT装置1は複数のプリスキャン画像を用いて造影剤の移動を検出し、本スキャン開始タイミングを制御する。被検体P上で離れた位置にある複数のプリスキャン画像を用いて造影剤を検出することで移動する造影剤の様子を確実に検出することができ、より適切なタイミングで本スキャンを開始することができる。
【0092】
また、以上の処理により、本開示のX線CT装置1はプリスキャン撮影時に、1スライス分のプリスキャン画像が得られるような幅の狭いビーム3000、3001、3002が得られるよう第1コリメータ401及び第2コリメータ402を移動させる。これにより、プリスキャン時にプリスキャン画像の撮影範囲外へ照射されるX線をコリメータが遮蔽する。従って、プリスキャン時の被検体Pへの不要な被曝を防ぐことができる。
【0093】
また、以上の処理により、本開示のX線CT装置1はプリスキャンの途中にプリスキャン画像の撮影位置を変更する。プリスキャン中にプリスキャン画像の撮影位置を変更することにより、プリスキャン中の造影剤の移動に応じて、造影剤の移動を捉えるのにより適した位置へ撮影位置を移動させることができる。
【0094】
また、以上の処理により、本開示のX線CT装置1はスキャノ像上にボタン913を表示し、ボタン913を用いてプリスキャン画像の撮影位置を変更する。スキャノ像を用いてプリスキャン画像の撮影位置を指示することにより、被検体P上のどの位置にプリスキャン画像の撮影位置があるかをより容易に把握することができる。
【0095】
なお、本発明は上記実施態様に開示されたものに限定されず、上記実施態様に開示されている複数の構成要素の適宣な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、本実施態様において図18のステップ1001に述べたように、X線CT像撮影の前にスキャノ像撮影を行うと述べた。しかし本開示の構成はこれに限られるものではなく、例えばスキャノ像の撮影を省略しても構わない。
【0096】
また、本実施態様において3つのプリスキャン画像を用いてプリスキャンを行う例について述べた。しかしプリスキャン画像の数はこれに限られるものではなく、第2コリメータ402を複数追加してプリスキャン画像の数を増やしても構わない。
【0097】
また例えば、実施態様に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除しても構わないし、異なる実施態様にわたる構成要素を適宣組み合わせても構わない。
【符号の説明】
【0098】
1 X線CT装置
3 ガントリ
100 制御部
102 スキャン制御部
103 再構成処理部
104 画像処理部
106 表示部
107 記憶部
108 入力部
201 X線管制御部
202 架台駆動制御部
203 天板駆動制御部
300 回転体
301 X線管
302 X線検出器
401 第1コリメータ
402 第2コリメータ
430 第3コリメータ
500 天板
501 天板駆動制御部
図1
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