(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
山留工法の一例として、本体機(3点支持式杭打ち機等)に、アースオーガーを接続したSMW専用機を用い、このSMW専用機のアースオーガーにより原地盤を削孔しながらセメントミルクを吐出することにより1エレメントの削孔混練を行い、このような作業を連続して行うことによりソイルセメント連続壁を造成するSMW工法が知られている(非特許文献1参照。)。
【0003】
このようなSMW工法にあっては、アースオーガーを支持する本体機のポストの重量が重く、本体機に鉛直に3点で支持されているため、転倒を回避するために鉛直状態から傾斜させた状態で使用することができない。このため、鉛直方向に対して所定の角度傾斜したソイルセメント連続壁の造成には適用することができない。また、SMW専用機は、非常に大型であるため、都市部の狭い敷地等には適用することができない。さらに、設備費が高いため、施工費用が高価となる。
【0004】
また、山留工法の他の例として、SMW専用機の本体機よりも小型の本体機(ラフタークレーン)にスクリューを吊り下げ、スクリューにより原地盤を削孔しながらセメントミルクを注入することにより1エレメントの削孔混練を行い、このような作業を連続して行うことによりソイルセメント連続壁を造成するモンロー工法が知られている(特許文献1参照。)。
【0005】
このようなモンロー工法にあっては、SMW工法のような大型の本体機を用いる必要がないので、都市部の狭い敷地等にも適用できる。また、鉛直方向に対して所定の角度傾斜させたソイルセメント連続壁を造成することもできる。しかし、スクリューを所定の傾斜角度に案内する案内装置が別途必要になるため、設備費が高いため、施工費用が高価となる。
【0006】
さらに、山留工法の他の例として、本体機にチェーンソー型のカッターポストを接続し、カッターポストを横方向に移動させて地盤を掘削しながら、セメントミルクを注入することにより、ソイルセメント連続壁を造成するTRD工法が知られている(特許文献2参照。)。
【0007】
このようなTRD工法にあっては、SMW専用機のようなポストを使用する必要がないので、都市部の狭い敷地等にも適用できる。また、カッターポストを鉛直状態から傾斜させることにより、鉛直方向に対して所定の角度傾斜させたソイルセメント連続壁の造成にも適用することができる。しかし、カッターポストの構造上、コーナー部を有するソイルセメント壁等の場合には、一方向のソイルセメント壁を造成した後に、カッターポストを地盤から一旦引き抜き、セット替えした後に他方向のソイルセメント壁を構築しなければならず、非常に効率の悪い作業となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、鉛直方向に対して所定の角度傾斜したソイルセメント柱列又はソイルセメント壁の造成を容易に行うことができるとともに、異なる2方向のソイルセメント柱列又はソイルセメント壁を連続して造成することができる、削孔攪拌機及び山留工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような課題を解決するために、本発明は、以下のような手段を採用している。
すなわち、本発明は、地盤改良するための削孔攪拌機であって、先端に掘削ビットが接続されたロッドと、該ロッドをその軸方向に移動可能に支持する案内手段と、ロッドを回転させる回転手段と、ロッドを介して掘削ビットに起振力を付与する起振手段と、ロッドの内部にセメントミルクを供給するセメントミルク供給手段とを備え、
前記回転手段は、前記ロッドの前進時及び後退時の何れにおいても、前記ロッドを同じ所定方向に回転させ、前記ロッドは複数の鋼管を接続してなり、隣接する前記鋼管の接続部は、前記ロッドが前記所定方向に回転した際に締め付けられるように、該隣接する鋼管の端部にそれぞれ形成された雄ねじ及び雌ねじを螺合することにより構成され、前記掘削ビットは、前記ロッドから側方に突出するように固定された攪拌翼にビットが設けられて構成され、
前記攪拌翼は、前記掘削ビットが前記ロッドの前進方向前方側に設けられた攪拌翼と、該攪拌翼よりも前記ロッドの前進方向後方側に配置され、前記掘削ビットが前記ロッドの前進方向後方側に設けられた攪拌翼とを含み、前記案内手段を、傾斜角度調整可能に構成したことを特徴とする。
【0012】
本発明の削孔攪拌機によれば、案内手段により、ロッド及び掘削ビットをロッドの軸方向に移動させ、回転手段により、ロッド及び掘削ビットを回転させ、起振手段により、ロッドを介して掘削ビットに起振力を付与することにより、地盤を削孔攪拌することができる。
また、この際に、セメントミルク供給手段からロッドの内部にセメントミルクを供給し、このセメントミルクをロッドの内部を通じて掘削ビットに導き、掘削ビットの先端から地盤に向けて吐出させることにより、削孔した孔内にソイルセメント柱を造成することができる。
この場合、案内手段は、傾斜角度の調整が可能に構成されているので、案内手段の傾斜角度を調整することにより、ロッド及び掘削ビットを地盤に対して所定の角度で押し込むことができ、地盤に所定の角度に傾斜させたソイルセメント柱を造成することができる。
また、ロッドの隣接する鋼管は、ねじ同士を互いに締め付けることにより接続され
、回転手段の回転方向は、ロッドの隣接する鋼管の接続
部を締め付ける方向に設定されているので、ロッドの隣接する鋼管の接続
部に緩みが生じるようなことはない。
【0013】
また、本発明において、前記案内手段は、傾斜角度調整可能に設けられる案内部材と、該案内部材を起倒させるアクチュエータと、該案内部材に沿ってスライド可能なスライド部材とを備え、該スライド部材に前記起振手段及び前記回転手段が取り付けられ、該回転手段に前記ロッドが接続されていることとしてもよい。
【0014】
本発明の削孔攪拌機によれば、アクチュエータの駆動によって案内部材を起倒させ、案内部材の傾斜角度を調整することにより、案内部材にスライド部材、起振手段、及び回転手段を介してスライド可能に案内されたロッド及び掘削ビットの地盤に対する押し込み角度を調整することができる。
【0015】
さらに、本発明において
、先端の
前記鋼管に前記掘削ビットがねじによって接続され
、前記ロッドの先端の鋼管と前記掘削ビットとの接続部を締め付ける方向に前記ロッド及び前記掘削ビットが回転するように、前記回転手段の回転方向が設定されていることとしてもよい。
【0016】
本発明の削孔攪拌機によれば
、ロッドの先端の鋼管と掘削ビットとは、ねじ同士を互いに締め付けることにより接続され
、ロッドの先端の鋼管と掘削ビットとの接続部を締め付ける方向に設定されているので
、ロッドの先端の鋼管と掘削ビットとの接続部に緩みが生じるようなことはない。
【0017】
さらに、本発明は、請求項1〜3の何れか1項に記載の削孔攪拌機により地盤にソイルセメント柱列又はソイルセメント壁を造成する山留工法であって、案内手段を所定の角度に傾斜させ、この状態でロッド及び掘削ビットを案内手段に沿ってスライドさせるとともに、回転手段によってロッド及び掘削ビットを回転させながら、起振手段によってロッドを介して掘削ビットに起振力を付与し、この状態でロッド及び掘削ビットを地盤に押し込んで地盤を削孔攪拌するとともに、ロッドの内部を通じて掘削ビットの先端から地盤に向けてソイルセメントを吐出させることにより、削孔した孔内にソイルセメント柱を造成し、このようなソイルセメント柱を連続して造成することにより、複数のソイルセメント柱からなるソイルセメント柱列又はソイルセメント壁を造成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上、説明したように、本発明の削孔攪拌機及び山留工法によれば、案内手段を傾斜角度調整可能に設け、この案内手段によってロッドをその軸方向に移動可能に案内したので、案内手段の傾斜角度を調整することにより、ロッド及び掘削ビットの地盤に対する押し込み角度を調整することができ、地盤を所定の傾斜角度で削孔攪拌することができ、所定の傾斜角度の山留を構築することができる。
また、傾斜角度調整可能な案内手段と、案内手段によって移動可能に案内されたロッドと、ロッドに接続された掘削ビットとからなる簡単な構成のものであるので、全体を小型化することができ、都市部の狭い敷地等にも適用することができる。
さらに、一軸のロッド及び掘削ビットにより、地盤を削孔攪拌し、削孔した孔内にソイルセメント柱を造成し、このようなソイルセメント柱を連続して造成することにより、一連のソイルセメント壁を造成することになるので、異なる2方向のソイルセメント壁の造成にも適用すること可能となり、汎用性を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
図1〜
図5には、本発明による削孔攪拌機の一実施の形態が示されている。本実施の形態の削孔攪拌機1は、地盤改良を用いて山留を構築するのに有効なものであって、本体機2と、本体機2に角度調整可能に支持される案内手段7と、案内手段7によって上下方向にスライド可能に案内される起振手段12及び回転手段13と、回転手段12に接続される一軸のロッド15と、ロッド15の先端に接続される掘削ビット20と、ロッド15の内部にセメントミルクを供給するセメントミルク供給手段(図示せず)とを備えている。
【0021】
本体機2は、車両本体3と、車両本体3を走行可能に支持する無限軌道5とからなる装軌車両であって、車両本体3の上部に運転席4が設けられ、下部に軌道輪、転輪、遊動輪、履板等からなる無限軌道5が設けられ、先端部に案内手段7が設けられ、先後端部の両側に一対のアウトリガー6がそれぞれ設けられている。
【0022】
本体機3は、無限軌道5の駆動によって所望の方向に移動可能に構成されるとともに、地盤30に山留40を構築する際には、先後端部の一対のアウトリガー6により、地盤30上の所定の位置に水平にかつ安定した状態に支持される。
【0023】
案内手段7は、車両本体3の先端部に傾斜角度の調整が可能に設けられる案内部材8と、案内部材8を起倒させる第1アクチュエータ10と、案内部材8に沿って上下方向にスライド可能に案内されるスライド部材9と、スライド部材9を案内部材8に沿ってスライドさせる第2アクチュエータ11とを備えている。
【0024】
第1アクチュエータ10及び第2アクチュエータ11は、例えば、油圧シリンダであって、油圧供給装置(図示せず)から第1アクチュエータ10及び第2アクチュエータ11に油圧を供給し、第1アクチュエータ10及び第2アクチュエータ11を伸縮させることにより、第1アクチュエータ10を介して案内部材8を所定の範囲内で起倒させることができ、第2アクチュエータ11を介してスライド部材9を案内部材8に沿って所定の範囲内でスライドさせることができる。
なお、本実施の形態においては、
図1〜
図4に示すように、案内部材8は、7°〜90°の範囲内で起倒可能に構成されている。
【0025】
起振手段12は、例えば、偏芯重錘を回転させることによって起振力を生じさせるものであって、スライド部材9に取り付けられて、スライド部材9と一体に案内部材8に沿ってスライド可能に構成されている。
【0026】
回転手段13は、例えば、油圧モータ等から構成されるものであって、スライド部材9に取り付けられて、スライド部材9と一体に案内部材8に沿ってスライド可能に構成されている。回転手段13は、起振手段12の下部に接続され、起動手段12による起振力が回転手段13に伝達されるとともに、回転手段13を介してロッド15及び掘削ビット20に伝達される。
【0027】
第2アクチュエータ11の駆動により、スライド部材9を介して起振手段12と回転手段13とが一体に案内部材8に沿ってスライドすることにより、回転手段13に接続されるロッド15及び掘削ビット20が回転手段13と一体に案内部材8に沿って上下方向にスライドすることになる。
【0028】
ロッド15は、
図9及び
図10に示すように、複数本の鋼管16を一連に接続して構成したものであって、各鋼管16の先端部の外周面には雄ねじ17が螺設され、後端部の内周面には雌ねじ18が螺設されている。ロッド15は、先端側の鋼管16の後端側の雌ねじ18に次の鋼管16の先端側の雄ねじ17を螺合させて締め付け、その鋼管16の後端側の雌ねじ18に次の鋼管16の先端側の雄ねじ17を螺合させて締め付け、このように、複数の鋼管16を順次接続することにより所定の長さに形成される。
【0029】
ロッド15は、
図5に示すように、後端側の鋼管16の後端がスイベル継手14を介して回転手段13に接続されるとともに、先端側の鋼管16の先端に掘削ビット20が取り付けられ、回転手段13の作動により、スイベル継手14を介してロッド15及び掘削ビット20が一体に回転するように構成されている。
【0030】
ロッド15の内部には、セメントミルク供給装置(図示せず)からスイベル継手14を介してセメントミルクが供給され、このセメントミルクは、ロッド15の内部を通じてロッド15の先端の掘削ビッド20の先端からロッド15の外部に吐出される。
【0031】
ロッド15及び掘削ビット20は、ロッド15の先端の鋼管16と掘削ビット20との接続部、及び隣接する鋼管16〜16の接続部に緩みが生じないようにするため、ロッド15の各鋼管16の両端の雄ねじ17、雌ねじ18、及び後述する掘削ビット20のビット軸21の雌ねじ22の締め付け方向とロッド15の回転方向とが同一となるように、回転手段13の回転方向を設定している。例えば、回転手段13の回転方向を
図11、12中の矢印方向(以下、正回転という。)に設定した場合には、ロッド15の各鋼管16の両端の雄ねじ17、雌ねじ18、及び掘削ビット20のビット軸21の雌ねじ22を左ねじとし、ロッド15及び掘削ビット20の回転方向を各雄ねじ17、及び雌ねじ18、22を締め付ける方向に合わせている。
【0032】
なお、回転手段13の回転方向を
図11、
図12中の矢印と反対方向に回転(逆回転)させる場合には、ロッド15の各鋼管16の両端の雄ねじ17、雌ねじ18、及び掘削ビット20のビット軸21の雌ねじ22を右ねじとし、ロッド15及び掘削ビット20の回転方向を各雄ねじ17、及び雌ねじ18、22の締め付ける方向に合わせればよい。
【0033】
掘削ビット20は、
図6〜
図8に示すように、ロッド15の先端側の鋼管16の先端に接続されるビット軸21と、ビット軸21の外周面に、ビット軸21と直交するように複数段(本実施の形態では4段)に設けられる攪拌翼23〜26(第1攪拌翼23〜第4攪拌翼26)と、ビット軸21の先端に設けられる第1ビット27と、第1攪拌翼22に設けられる複数の第2ビット28と、第4攪拌翼26に設けられる複数の第3のビット29とを備えている。
【0034】
ビット軸21は、後端側に左ねじの雌ねじ22が設けられ、この雌ねじ22にロッド15の先端側の鋼管16の先端の左ねじの雄ねじ17を螺合させて締め付けることにより、ロッド15の先端側の鋼管16の先端に一体に取り付けられる。
【0035】
なお、本実施の形態においては、掘削ビット20のビット軸21の雌ねじ22にロッド15の先端側の鋼管16の雄ねじ17を螺合させて締め付けることにより、ロッド15の先端側の鋼管15の先端に掘削ビット20を取り付けているが、その他の公知の手段によってロッド15の先端側の鋼管16の先端に掘削ビット20を取り付けるようにしてもよい。
【0036】
第1攪拌翼23〜第4攪拌翼16は、略角柱状をなすものであって、第1攪拌翼23及び第3攪拌翼25と第2攪拌翼24及び第4攪拌翼26とが、ビット軸21を中心として互いに直交するように、第1攪拌翼23〜第4攪拌翼26がビット軸21の外周面に一体に設けられている。また、第1攪拌翼23〜第4攪拌翼26は、上下面がビット軸21の軸線に対して所定の角度で傾斜するように(上下面の回転方向の先方が後方よりも下方に位置するように)、ビット軸21の外周面に一体に設けられている。
【0037】
第1ビット27は、先端部が尖った略三角形板状をなすものであって、ビット軸21の先端に板面がビット軸21の軸線と平行となるように、かつ、先端部の尖った部分の頂点がビット軸21の軸線上に位置するように、ビット軸21の先端の中央部に一体に設けられている。
【0038】
各第2ビット28は、先端が尖った角柱状をなすものであって、第1攪拌翼23の下面側に、ビット軸21の軸線に対して所定の角度で傾斜し、かつ、尖った先端が回転方向の前方側に位置するように、一体に設けられている。
【0039】
上記のように各第2ビット28を構成することにより、ロッド15及び攪拌ビット20を回転させながら下降させて地盤30を削孔攪拌する際に、各第2ビット28に作用する抵抗力により、掘削ビット20のビット軸21とロッド15の先端側の鋼管16との接続部、及びロッド15の隣接する鋼管16〜16の接続部に、それらを締め付ける方向への回転力を付与することができ、それらの接続部に緩みが生じるのを防止できる。
【0040】
各第3ビット29は、先端が尖った角柱状をなすものであって、第4攪拌翼26の上面側に、ビット軸21の軸線に対して所定の角度で傾斜し、かつ、尖った先端が回転方向の先方側に位置するように、一体に設けられている。
【0041】
上記のように各第3ビット29を構成することにより、ロッド15及び掘削ビット20を回転させながら上昇させる際に、掘削ビット20の上方に造成されたソイルセメント33を切削することができ、ロッド15及び掘削ビット20を地盤20から容易に引き抜くことができる。
【0042】
次に、上記のように構成した削孔攪拌機1による山留工法の一実施の形態について説明する。
まず、
図5に示すように、削孔攪拌機1の本体機2を地盤30上の所定の位置に位置決めし、その位置において、本体機2の先後端部の一対のアウトリガー6を駆動させて、本体機2を地盤30上に水平かつ安定した状態に支持する。
【0043】
そして、油圧供給装置から第1アクチュエータ10に油圧を供給して第1アクチュエータ10を駆動させ、第1アクチュエータ10を介して案内部材8を所定の角度(例えば、45°)に傾斜させる。そして、この状態で、回転手段13にスイベル継手14を介してロッド15を接続し、ロッド15の先端の鋼管16の先端の雄ねじ17に掘削ビット20のビット軸21の雌ねじ22を螺合させて締め付けることにより、ロッド15の先端に掘削ビット20を接続する。
【0044】
そして、回転手段13を駆動させて、ロッド15及び掘削ビット20を例えば毎分20〜60回転の速度で回転させるとともに、第2アクチュエータ11を駆動させて、ロッド15及び掘削ビット20を案内部材8に沿って下方にスライドさせ、ロッド15及び掘削ビット20を45°の傾斜角度で地盤30に押し込み、掘削ビット20で地盤30を削孔攪拌する。
【0045】
この際に、起振手段12を駆動させることにより、回転手段13及びロッド15を介して掘削ビット20に例えば20〜50Hzの起振力を付与する。これにより、掘削ビット20を振動させながら地盤30を削孔攪拌することができるので、地盤30の削孔攪拌効率を高めることができる。また、地盤30中に大きな礫や岩が存在する場合であっても、それらを掘削ビット20の振動により、それらを破壊したり、移動させたりすることができるので、それらの存在に影響されることなく、地盤30を削孔攪拌することができる。
【0046】
また、起振手段12によってロッド15を介して掘削ビット20に起振力を付与する場合、ロッド15の先端の鋼管16と掘削ビット20との接続部、及びロッド15の隣接する鋼管16〜16の接続部は、雄ねじ17と雌ねじ18、22とを螺合させて締め付けることにより接続され、しかも、回転手段13の回転方向は、ロッド15の先端の鋼管16と掘削ビット20との接続部、及びロッド15の隣接する鋼管16〜16の接続部を締め付ける方向に設定されているので、ロッド15の先端の鋼管16と掘削ビット20との接続部、及びロッド15の隣接する鋼管16〜16の接続部に緩みが生じ、それらの接続部にガタが生じるようなことはなく、起振手段12からの起振力を掘削ビット20に確実に伝達させることができる。
【0047】
さらに、起振手段12に回転手段13を接続し、回転手段13にスイベル継手14を介してロッド15を接続し、ロッド15の先端の鋼管16に掘削ビット20を接続し、しかも、起振手段12、回転手段13、スイベル継手14、ロッド15、及び掘削ビット20を一体として、案内部材8に沿って地盤30の方向にスライドさせるため、第2アクチュエータ11の押付力だけでなく、それらの自重によっても掘削ビット20を地盤30に押し込むことができ、地盤30に対する削孔効率を高めることができ、硬質の地盤30であっても容易に削孔することができる。
【0048】
また、上記の掘削作業として平行して、セメントミルク供給装置からスイベル継手14を介してロッド15の内部にセメントミルクを供給し、このセメントミルクをロッド15の内部を通じて掘削ビット20に導き、掘削ビット20の先端から地盤30に向けて吐出させる。これにより、掘削ビット20の下方の地盤30の部分にセメントミルクを注入することができるので、その部分をセメントミルクを含んだ状態で振動させることにより液状化させて軟化させることができ、掘削ビット20による地盤30に対する削孔作業を容易に行うことができる。
【0049】
そして、掘削ビット20によって地盤30を削孔することによって産出された土砂と掘削ビット20の先端から吐出されたセメントミルクとが、第1〜第4の攪拌翼23〜26によって攪拌されるとともに、第2ビット28によっても攪拌されることにより、地盤30に削孔した孔内にソイルセメント33を効率よく形成することができる。
【0050】
なお、起振手段12及び回転手段13が案内部材8の下端部まで達した場合には、スイベル継手14とロッド15の後端側の鋼管16との接続状態を解除し、第2アクチュエータ11の駆動により、スライド部材9を介して起振手段12及び回転手段13を案内部材8に沿って上方にスライドさせ、後端の鋼管16とスイベル継手14との間に新たな鋼管16を配置し、この新たな鋼管16の後端をスイベル継手14に接続し、先端をロッド15の後端の鋼管16の後端に接続し、再度、第2アクチュエータ11を駆動させて、スライド部材8を介して起振手段12及び回転手段13を案内部材8に沿って下方にスライドさせ、ロッド15及び掘削ビット20を再度地盤に押し込んで行く。このようにして、複数の鋼管16を順次継ぎ足しながら、地盤30を削孔攪拌することにより、地盤30に所定の深さに達するソイルセメント柱34を造成することができる。
【0051】
そして、地盤30に所定の深さに達するソイルセメント柱34を造成した後に、第2アクチュエータ11の駆動によってロッド15及び掘削ビット20を上昇させることにより、削孔した孔内に造成されたソイルセメント柱34中から引き抜く。
【0052】
この際、削孔した孔13内に造成されたソイルセメント柱34は、時間の経過によって上方に行くほど硬化した状態となっているが、本実施の形態の削孔攪拌機1は、ロッド15及び攪拌ビット20を正回転させて上昇させるため、掘削ビット20の第4攪拌翼26の上面に設けられた第3ビット29により、硬化が開始しているソイルセメント33の部分を切削することができ、容易にロッド15及び掘削ビット20を削孔した孔内に造成されたソイルセメント柱34中から引き抜くことができ、ロッド15及び掘削ビット20の撤去作業を容易に行うことができる。
【0053】
また、ロッド15及び掘削ビット20を正回転させて上昇させても、ロッド15の隣接する鋼管16〜16の接続部、及びロッド15の先端の鋼管16と掘削ビット20の接続部は、ロッド15及び掘削ビット20の回転方向と同一方向に締め付けられ、しかも、第4攪拌翼26の上面側の第3ビット29に作用する抵抗力により、ロッド15の隣接する鋼管16〜16の接続部、及びロッド15の先端の鋼管16と掘削ビット20の接続部に締め付ける方向への回転力を付与することができるので、それらの接続部に緩みが生じてガタが生じるようことはない。
【0054】
そして、
図13に示すように、地盤30に第1のソイルセメント柱34−1を造成した後に、第1のソイルセメント柱34−1の横方向に所定の間隔をおいて、同様の手順により第2のソイルセメント柱34−2を造成し、第1のソイルセメント柱34−1と第2のソイルセメント柱34−2との間に、第3のソイルセメント柱34−3を両端を重合させた状態で造成し、同様に、第4のソイルセメント柱34−4、第5のソイルセメント柱34−5、第6のソイルセメント柱34−6、第7のソイルセメント柱34−7を順次造成することにより、地盤30中に第1のソイルセメント柱34−1〜第7のソイルセメント柱34−7からなる、所定の長さの一連のソイルセメント壁35を造成することができる。
【0055】
そして、ソイルセメント壁35の各ソイルセメント柱34−1〜34−7中に芯材を挿入することにより、ソイルセメント柱34−1〜34−7と芯材とを一体化した、鉛直方向に対して所定の角度(本実施の形態では45°)に傾斜した山留40を構築することができる。
【0056】
なお、異なる2方向のソイルセメント壁35、35を造成する場合には、
図14に示すように、第7のソイルセメント柱34−7に隣接して第8のソイルセメント柱34−8、第9のソイルセメント柱34−9、……、を連続して造成することにより、異なる2方向の一連のソイルセメント壁35、35を構築することができる。
【0057】
山留の傾斜角度と土圧との関係を、
図15(a)〜(c)に示す。鉛直に山留40を構築した場合には、主働崩壊線(45°−φ/2、φ:土質定数(内部摩擦角))と山留40との間のハッチングの部分の土塊重量(土圧)が山留40に作用する。また、山留40を主働崩壊線と一致する傾斜角度で構築した場合には、山留40に作用する土圧は0となる。さらに、山留40を主働崩壊線と鉛直線との中間の傾斜角度で構築した場合には、主働崩壊線と山留40との間のハッチングの部分の土塊重量(土圧)が山留に作用することになる。
【0058】
そこで、本実施の形態においては、山留40を主働崩壊線(45°−φ)に近づけることにより、切梁をなくすとともに、山留40を小型化し、かつ、山留40の地盤30への貫入深さを小さくし、経済性を高めている。
【0059】
上記のように構成した本実施の形態の削孔攪拌機1にあっては、本体機2に、案内手段7を傾斜角度を調整可能に設け、この案内手段7によって起振手段12、回転手段13、ロッド15、及び掘削ビット20をスライド可能に案内したので、案内手段7の傾斜角度を調整することにより、鉛直方向に対して所定の角度で傾斜するソイルセメント壁35による山留40を構築することができる。
【0060】
また、本体機2に、案内手段7を傾斜角度を調整可能に設け、この案内手段7によって起振手段12、回転手段13、ロッド15、及び掘削ビット20をスライド可能に案内した簡単な構成のものであるので、全体を小型化することができ、都市部の狭い敷地等であっても適用することができる。
【0061】
さらに、異なる2方向のソイルセメント壁35、35を一連に造成する場合にも対応することが可能となり、汎用性を高めることができる。
【0062】
さらに、ロッド15の隣接する鋼管16〜16の接続部、及びロッド15の先端の鋼管16と掘削ビット20の接続部を、雄ねじ17と雌ねじ18、22との組合せによって構成するとともに、ロッド15及び掘削ビット20の回転方向がそれらの接続部を締め付ける方向となるように、回転手段13の回転方向を設定したので、それらの接続部に緩みが生じてガタが生じるようなことはなく、地盤30の削孔攪拌を効率よく行うことができる。
【0063】
さらに、ロッド15及び掘削ビット20を地盤30から引き抜く際に、ロッド15及び掘削ビット20を正回転させるように構成したので、ロッド15の隣接する鋼管16、16の接続部、ロッド15の先端の鋼管16と掘削ビット20の接続部に緩みガ生じてガタが生じるようことはない。さらに、第4攪拌翼26の上面側に第3ビット29を設けたことにより、ロッド15及び掘削ビット20を地盤30に削孔した孔から引き抜く際に、第3ビット39によって削孔した孔内に造成された硬化し始めているソイルセメント柱34の部分を容易に切削してロッド15及び掘削ビット20を地盤30に削孔した孔内に造成されたソイルセメント柱34中から引き抜くことができるので、ソイルセメント壁35の造成の効率を大幅に高めることができる。
【0064】
さらに、起振手段12によって掘削ビット20に起振力を付与するように構成したので、地盤30の削孔効率を高めることができる。さらに、起振手段12、回転手段13をスライド部材9に取り付け、回転手段13にスイベル継手14を介してロッド15及び掘削ビット20を取り付け、起振手段12、回転手段13、スイベル継手14、ロッド15、及び掘削ビット20を案内部材8に沿って一体にスライド可能としたことにより、第2アクチュエータ11による押圧力の他に、それらの自重によってもロッド15及び掘削ビット20を地盤30に押し込むことができるので、地盤30に対する削孔効率を高めることができる。従って、硬質の地盤30であっても、地盤30を削孔攪拌してソイルセメント壁35を容易に構築することができる。
【0065】
さらに、掘削ビット20の第1ビット27及び第2ビット28によって地盤30に削孔した孔の内壁面に、掘削ビットの第1攪拌翼23〜第4攪拌翼26の先端を当接させた状態で削孔攪拌を行うことになるので、地盤30を削孔攪拌する際に、ロッド15及び掘削ビット20に振れが生じるのを防止でき、地盤30を高精度で削孔攪拌することができる。
【0066】
さらに、掘削ビット20の第1攪拌翼23〜第4攪拌翼26の先端を、地盤30に掘削した孔31の内面に当接させることができるので、ロッド15及び掘削ビット20を地盤30に押し込む際に、ロッド15及び掘削ビット20に振れが生じるのを防止でき、高精度で所定の傾斜角度の山留40を構築することができる。
【0067】
なお、本実施の形態においては、6.5mの深さの孔31を削孔した場合、削孔方向に対する振れを数ミリに抑えることができ、高精度で所定の傾斜角度の山留40を構築できることが実証された。
【0068】
なお、前記の説明においては、ソイルセメント柱34を連続して造成することによって構成したソイルセメント壁35による山留40に本発明を適用したが、ソイルセメント柱34を所定の間隔ごとに造成することによって構成したソイルセメント柱列による山留に本発明を適用してもよいものであり、その場合にも同様の作用効果を奏する。