(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の非接触型データ受送信体の実施の形態について説明する。
なお、この実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0014】
(1)第一の実施形態
「非接触型データ受送信体」
図1は、本発明の非接触型データ受送信体の第一の実施形態を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A線に沿う断面図である。なお、
図1(b)では、説明を簡単にするために、後述する屈曲部や起伏部を省略した。
この実施形態の非接触型データ受送信体10は、平面視略長方形状のインレット11と、インレット11の一方の面11aを被覆する被覆材12と、外縁部において、インレット11の長手方向に沿って、部分的に複数設けられた屈曲部20,21、および、起伏部22,23,24,25とから概略構成されている。
【0015】
すなわち、非接触型データ受送信体10は、インレット11の一方の面11aが、被覆材12で直接、被覆されて、被覆材12およびインレット11が積層された構造をなしている。これにより、非接触型データ受送信体10は、平面視略長方形状をなしている。
【0016】
インレット11は、基材13と、基材13の一方の面13aに設けられ、互いに電気的に接続されたICチップ14およびアンテナ15とから概略構成されている。
アンテナ15は、各種導電体からなり、互いに対向し、その対向する側にそれぞれ給電点(ICチップ14と接続している部分)を有する一対の面状の放射素子16,17からなるダイポールアンテナである。
アンテナ15の長手方向における長さは、非接触ICカードなどの非接触ICモジュールに利用できる極超短波帯〈UHF〉やマイクロ波帯の電波帯の周波数(300MHz〜30GHz)の1/2波長に相当する長さとなっている。すなわち、放射素子16,17の長手方向における長さは、1/4波長に相当する長さとなっている。
【0017】
なお、インレット11の一方の面11aは、基材13の一方の面13aに相当する。
ゆえに、インレット11の一方の面11aでは、ICチップ14およびアンテナ15が被覆材12によって被覆されている。
【0018】
そして、非接触型データ受送信体10の4つの側面にて、被覆材12の端面と、基材13の端面が同一面をなしている。より詳細には、例えば、非接触型データ受送信体10の側面10aにて、被覆材12の端面12aと、基材13の端面13cとが同一面をなしている。同様に、非接触型データ受送信体10の側面10bにて、被覆材12の端面12bと、基材13の端面13dとが同一面をなしている。
【0019】
被覆材12の厚さは、特に限定されないが、少なくともインレット11のICチップ14およびアンテナ15に起因する凹凸が、非接触型データ受送信体10の一方の面(外面)10cに現れない程度、かつ、インレット11が外部からの衝撃により破損しない程度であり、例えば、10μm〜2000mmの範囲内である。
【0020】
また、非接触型データ受送信体10における屈曲部20,21とは、被覆材12およびインレット11からなる積層体(以下、この積層体を単に「積層体A1」と言う。)が比較的小さな曲率で、インレット11の長手方向、すなわち、非接触型データ受送信体10の外縁部において、その長手方向に沿って湾曲している部分である。
この屈曲部20,21では、後述する被覆材12をなす2液混合型ウレタン樹脂の硬度が、その他の部分(非接触型データ受送信体10における屈曲部または起伏部以外の部分)の硬度よりも高くなっている。この屈曲部20,21は、後述するように、一旦、シート状(平面的)に作製した積層体A1を、さらに、高温、高湿の環境に、所定時間曝すことにより、積層体A1が部分的に、その長手方向に沿って収縮するとともに、その積層体A1の収縮した部分にて、被覆材12をなす2液混合型ウレタン樹脂の硬化反応がさらに促進し、部分的に硬度が高くなった部分である。ここで、硬化反応がさらに促進する現象は、被覆材12に含まれる微量の2液混合型ウレタン樹脂の未反応成分が、反応することに起因する。したがって、屈曲部20,21は外力が加えられても、容易に変形して、平らな状態に戻ってしまうことがなく、恒久的にその形状が保持される。また、屈曲部20,21は、積層体A1を、高温、高湿の環境に曝した際に、最も熱の影響を受けやすい外縁部にて、顕著に形成されている。
【0021】
屈曲部20,21の曲率は特に限定されるものではなく、例えば、非接触型データ受送信体10を目視した場合、顕著に湾曲している部分を屈曲部という。
【0022】
一方、非接触型データ受送信体10における起伏部22,23,24,25とは、積層体A1が比較的大きな曲率で、インレット11の長手方向、すなわち、非接触型データ受送信体10の外縁部において、その長手方向に沿って湾曲している部分である。
この起伏部22,23,24,25でも、後述する被覆材12をなす2液混合型ウレタン樹脂の硬度が、その他の部分(非接触型データ受送信体10における屈曲部または起伏部以外の部分)の硬度よりも高くなっている。この起伏部22,23,24,25は、後述するように、一旦、シート状(平面的)に作製した積層体A1を、さらに、高温、高湿の環境に、所定時間曝すことにより、積層体A1が部分的に、その長手方向に沿って収縮するとともに、その積層体A1の収縮した部分にて、被覆材12をなす2液混合型ウレタン樹脂の硬化反応がさらに促進し、部分的に硬度が高くなった部分である。ここで、硬化反応がさらに促進する現象は、被覆材12に含まれる微量の2液混合型ウレタン樹脂の未反応成分が、反応することに起因する。したがって、起伏部22,23,24,25は外力が加えられても、容易に変形して、平らな状態に戻ってしまうことがなく、恒久的にその形状が保持される。また、起伏部22,23,24,25は、積層体A1を、高温、高湿の環境に曝した際に、最も熱の影響を受けやすい外縁部にて、顕著に形成されている。
【0023】
起伏部22,23,24,25の曲率は特に限定されるものではなく、例えば、非接触型データ受送信体10を目視した場合、僅かに湾曲している部分、あるいは、丘状に湾曲している部分を起伏部という。
【0024】
また、上述のように、屈曲部20,21、および、起伏部22,23,24,25は、主に、非接触型データ受送信体10の外縁部に形成されているので、アンテナ15が極端に湾曲することがないから、アンテナ15の共振周波数などの通信特性は劣化することがない。
【0025】
被覆材12は、使用前は液状であり、加熱、紫外線照射、電子線照射などの外的条件を加えなくても、主剤と硬化剤の反応によって硬化する2液混合型ウレタン系接着剤からなるものである。
【0026】
2液混合型ウレタン系接着剤としては、第一液としてのイソシアネートと、第二液としての水酸基が1級水酸基であるポリオールとを含む混合液に、さらに、エポキシ基を有するシランカップリング剤を添加したものが用いられる。
この2液混合型ウレタン系接着剤では、イソシアネートのイソシアネート基と、ポリオールの水酸基とのモル比(−NCO/−OH)が0.8以上、1.1以下となる配合比で、イソシアネートとポリオールが混合されている。また、この2液混合型ウレタン系接着剤の全量に対するエポキシ基を有するシランカップリング剤の配合量は、0.1質量%以上、2.0質量%以下である。
【0027】
また、2液混合型ウレタン系接着剤としては、第一液としてのイソシアネートと、第二液としての水酸基が1級水酸基であるポリオールとを含む混合液に、さらに、アスペクト比が10以上、100以下の無機微粒子を添加したものが用いられる。
この2液混合型ウレタン系接着剤では、イソシアネートのイソシアネート基と、ポリオールの水酸基とのモル比(−NCO/−OH)が0.8以上、1.1以下となる配合比で、イソシアネートとポリオールが混合されている。また、この2液混合型ウレタン系接着剤の全量に対するアスペクト比が10以上、100以下の無機微粒子の配合量は、5質量%以上、40質量%以下である。
【0028】
このような2液硬化型ウレタン系接着剤の具体例としては、主剤(商品名:MLT2900、イーテック社製)と硬化剤(商品名:G3021−B174、イーテック社製)からなる接着剤が挙げられる。
【0029】
また、被覆材12を形成する接着剤には、必要に応じて、公知の無機顔料、有機顔料、染料などの着色剤が含まれていてもよい。この着色剤により、被覆材12は任意の色に着色される。
【0030】
基材13としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PET−G)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)などのポリエステル樹脂からなる基材;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン樹脂からなる基材;ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレンなどのポリフッ化エチレン系樹脂からなる基材;ナイロン6、ナイロン6,6などのポリアミド樹脂からなる基材;ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール、ビニロンなどのビニル重合体からなる基材;ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチルなどのアクリル系樹脂からなる基材;ポリスチレンからなる基材;ポリカーボネート(PC)からなる基材;ポリアリレートからなる基材;ポリイミドからなる基材;上質紙、薄葉紙、グラシン紙、硫酸紙などの紙からなる基材などが用いられる。
【0031】
ICチップ14としては、特に限定されず、アンテナ15を介して非接触状態にて情報の書き込みおよび読み出しが可能であり、非接触型ICタグや非接触型ICラベル、あるいは、非接触型ICカードなどのRFIDメディアに適用可能なものであればいかなるものでも用いられる。
【0032】
アンテナ15は、基材13の一方の面13aに、ポリマー型導電インクを用いて所定のパターンにスクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷法により形成されてなるものか、もしくは、導電性箔をエッチングしてなるもの、金属メッキしてなるものである。
【0033】
ポリマー型導電インクとしては、例えば、銀粉末、金粉末、白金粉末、アルミニウム粉末、パラジウム粉末、ロジウム粉末、カーボン粉末(カーボンブラック、カーボンナノチューブなど)などの導電微粒子が樹脂組成物に配合されたものが挙げられる。
【0034】
樹脂組成物として熱硬化型樹脂を用いれば、ポリマー型導電インクは、200℃以下、例えば、100〜150℃程度でアンテナ15をなす塗膜を形成することができる熱硬化型となる。アンテナ15をなす塗膜の電気の流れる経路は、塗膜を構成する導電微粒子が互いに接触することにより形成され、この塗膜の抵抗値は10
-5Ω・cmオーダーである。
また、本発明におけるポリマー型導電インクとしては、熱硬化型の他にも、光硬化型、浸透乾燥型、溶剤揮発型といった公知のものが用いられる。
【0035】
光硬化型のポリマー型導電インクは、光硬化性樹脂を樹脂組成物に含むものであり、硬化時間が短いので、製造効率を向上させることができる。光硬化型のポリマー型導電インクとしては、例えば、熱可塑性樹脂のみ、あるいは、熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特に、ポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、導電微粒子が60質量%以上配合され、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、溶剤揮発型あるいは架橋/熱可塑併用型(ただし、熱可塑型が50質量%以上である)のものや、熱可塑性樹脂のみ、あるいは、熱可塑性樹脂と架橋性樹脂(特に、ポリエステルとイソシアネートによる架橋系樹脂など)とのブレンド樹脂組成物に、ポリエステル樹脂が10質量%以上配合されたもの、すなわち、架橋型あるいは架橋/熱可塑併用型のものなどが好適に用いられる。
【0036】
また、アンテナ15をなす導電性箔としては、銅箔、銀箔、金箔、白金箔、アルミニウム箔などが挙げられる。
さらに、アンテナ15をなす金属メッキとしては、銅メッキ、銀メッキ、金メッキ、白金メッキなどが挙げられる。
【0037】
この非接触型データ受送信体10は、その外縁部において、長手方向に沿って、部分的に複数の屈曲部20,21、および、起伏部22,23,24,25が設けられているので、他のシート状のICタグと重ね合わせても、互いに密着することがないから、取り扱いが容易である。したがって、多数の非接触型データ受送信体10を一纏めにしても、互いに密着することがなく、取り扱いが容易である。
特に、非接触型データ受送信体10は、その一方の面10cが、2液混合型ウレタン樹脂からなる被覆材12によるタック性(仮留め可能な性質)を有しているため、屈曲部20,21、および、起伏部22,23,24,25の存在により、同種のICタグと重ね合わせても、互いに密着することがない。
【0038】
また、インレット11の一方の面11aが、2液混合型ウレタン樹脂からなる被覆材12で直接、被覆されているので、被覆材12がインレット11を構成するICチップ14やアンテナ15に基因する凹凸形状に追従して形成されているから、インレット11と被覆材12の密着性に優れ、インレット11と被覆材12の界面において剥離するのを防止することができる。したがって、非接触型データ受送信体10は、インレット11に耐熱性および耐候性を付与しながら、薄型で柔軟性に優れている。
【0039】
さらに、非接触型データ受送信体10は、インレット11の一方の面11aが、被覆材12で直接、被覆された単純な構成をなしているので、容易に製造することができる。
【0040】
なお、この実施形態では、屈曲部20,21と、起伏部22,23,24,25とを、その曲率によって区別した場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、屈曲部と起伏部の差異が厳密に規定されるものではない。
【0041】
また、この実施形態では、屈曲部20,21と、起伏部22,23,24,25とが設けられた非接触型データ受送信体10を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、屈曲部または起伏部のいずれか一方、あるいは、屈曲部および起伏部の両方が設けられていてもよく、その数も限定されない。非接触型データ受送信体に設けられる屈曲部および/または起伏部の数は、非接触型データ受送信体の大きさ、被覆材のタック性などに応じて適宜調整される。
また、この実施形態では、非接触型データ受送信体10の外縁部において、その長手方向に沿って、屈曲部20,21と、起伏部22,23,24,25とが設けられた場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、非接触型データ受送信体の外縁部において、その短手方向に沿って、屈曲部および/または起伏部が設けられていてもよい。
【0042】
また、この実施形態では、非接触型データ受送信体10が平面視略長方形状をなしている場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、非接触型データ受送信体は、平面視した場合、任意のカード形状、タグ形状をなしていてもよい。
【0043】
また、この実施形態では、一対の面状の放射素子16,17から構成されるダイポールアンテナからなるアンテナ15を有するインレット11を備えた場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、アンテナは一対の枠状の放射素子から構成されるダイポールアンテナ、メアンダ状のダイポールアンテナ、モノポールアンテナなどであってもよい。
【0044】
「非接触型データ受送信体の製造方法」
次に、
図1〜
図7を参照して、この実施形態の非接触型データ受送信体の製造方法を説明する。
ここでは、
図3に示すような、基材13Aと、その一方の面13aに、RFID用のアンテナ15と、このアンテナ15を通じて通信するICチップ14とが等間隔に多数設けられた、長尺のインレットシート32を用いて、連続的に、上述の非接触型データ受送信体10を製造する場合を例示する。
【0045】
まず、
図2に示すように、図中の矢印方向に搬送されている長尺の剥離基材31の一方の面31aの中央部に、剥離基材31の搬送方向に沿って、接着剤塗布装置のノズル41から吐出される接着剤12Aを線状に塗布する(工程A)。
【0046】
接着剤12Aとしては、上記の被覆材12を形成する接着剤と同様のものが用いられる。
また、剥離基材31の一方の面31aに接着剤12Aを塗布する幅、すなわち、剥離基材31の一方の面31aに対する接着剤12Aの塗布量は、特に限定されないが、この接着剤12Aによって被覆される、インレットシート32に設けられたICチップ14およびアンテナ15の大きさや数、接着剤12Aを硬化することにより形成される被覆材12に必要とされる厚さなどに応じて、適宜調整される。
【0047】
剥離基材31としては、剥離フィルムまたは剥離紙が用いられる。
剥離フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのプラスチックからなる厚さ30μm〜160μmの基材フィルムの一方の面および/または他方に面に、シリコンからなる厚さ1μm〜50μmの剥離層が設けられたものが用いられる。すなわち、剥離基材31の一方の面31aは、シリコンからなる剥離層から構成されている。
このような剥離フィルムの具体例としては、例えば、東セロ株式会社製のトーセロセパレータSP−PET−01−BU(商品名)などが挙げられる。
【0048】
剥離紙としては、グラシン紙や上質紙からなる厚さ30μm〜160μmの基材の一方の面および/または他方に面に、目止め剤が塗布され、その目止め剤からなる層の上に、シリコンからなる厚さ1μm〜50μmの剥離層が設けられたものが用いられる。すなわち、剥離基材31の一方の面31aは、シリコンからなる剥離層から構成されている。
このような剥離紙の具体例としては、例えば、王子タック株式会社製のL11C(商品名)などが挙げられる。
【0049】
この剥離基材31の剥離力は、0.05〜1.0N/50mmである。
【0050】
このように、工程Aでは、剥離基材31として、上記の剥離フィルムまたは剥離紙を用いているので、剥離基材31の一方の面31aをなす剥離層(図示略)の上に、接着剤12Aを塗布する。
【0051】
次いで、
図3に示すように、図中の矢印方向に搬送されているインレットシート32を、図中の矢印方向に回転する一対のローラー42,43の対向する部分にて、剥離基材31の一方の面31aに塗布した接着剤12Aを介して、図中の矢印方向に搬送されている剥離基材31の一方の面31a上に重ね合わせるとともに、剥離基材31とインレットシート32をローラー42,43で挟み込むことにより、
図4に示すように、剥離基材31とインレットシート32の間のほぼ全域にわたって、剥離基材31の一方の面31aに塗布した接着剤12Aを展開させる(工程B)。
【0052】
この工程Bでは、剥離基材31の一方の面31aに、基材13Aの一方の面13a、すなわち、インレットシート32におけるICチップ14およびアンテナ15が設けられた面(以下、「一方の面」という。)32aが対向するように、剥離基材31の一方の面31a上にインレットシート32を重ね合わせる。
【0053】
また、工程Bでは、上記のように、外的条件を加えなくても主剤と硬化剤の反応によって硬化する2液混合型ウレタン樹脂からなる接着剤12Aを用いる。したがって、接着剤12Aは、剥離基材31とインレットシート32の間に展開させるまでの間、流動性を有しているが、反応の進行に伴って、次第に流動性がなくなり、最終的には硬化する。これにより、インレットシート32の一方の面32a、並びに、その一方の面32aに設けられたICチップ14およびアンテナ15が接着剤12Aによって被覆されるとともに、剥離基材31の一方の面31a上に、インレットシート32が仮留めされる。なお、接着剤12Aは硬化すると、上記の第一の被覆材12となる。
【0054】
また、工程Bでは、剥離基材31とインレットシート32の間に展開させた後の接着剤12Aの厚さを、少なくともインレットシート32のICチップ14およびアンテナ15に起因する凹凸が、接着剤12Aのインレットシート32に接している面とは反対側の面12cに現れない程度、かつ、ICチップ14およびアンテナ15が外部からの衝撃により破損しない程度とし、例えば、10μm〜2000mmの範囲内とする。
【0055】
また、工程Bにおいて、剥離基材31とインレットシート32を一対のローラー42,43で挟み込む力、すなわち、剥離基材31に対してインレットシート32を厚さ方向に押圧する力(圧力)は、特に限定されず、剥離基材31およびインレットシート32の厚さや大きさ、接着剤12Aの塗布量などに応じて、適宜調整されるが、1kg/cm
2〜20kg/cm
2であることが好ましく、より好ましくは5kg/cm
2〜10kg/cm
2である。
【0056】
この工程Bにより、接着剤12Aによって、ICチップ14およびアンテナ15が完全に被覆され、剥離基材31とインレットシート32の間に、ほぼ隙間無く接着剤12Aが充填される。
【0057】
次いで、
図5に示すように、裁断装置の切断刃(図示略)により、剥離基材31、接着剤12Aおよびインレットシート32からなる積層体を、その厚さ方向に(
図5の一点鎖線に沿って)、アンテナ15の形状に応じて裁断し、
図6に示すように、積層体を個片化する(工程C)。
ここで、積層体をアンテナ15の形状に応じて裁断するとは、アンテナ15を損傷することなく、かつ、目的とする非接触型データ受送信体10の形状に合わせて裁断することを言う。
【0058】
次いで、接着剤12Aが完全に硬化して被覆材12となった後、
図7に示すように、上記の積層体から、剥離基材31を剥離して(工程D)、被覆材12およびインレットシート32(インレット11)からなる積層体B1を得る。
【0059】
次いで、積層体B1を、温度80〜90℃、湿度75〜95%RHの環境下に、168時間(24時間×7日)以上曝露することにより、
図1に示す非接触型データ受送信体10を得る。
【0060】
すなわち、積層体B1を、温度80〜90℃、湿度75〜95%RHの環境下に、168時間(24時間×7日)以上曝露すると、積層体B1が部分的に、その長手方向に沿って収縮するとともに、その積層体B1の収縮した部分にて、被覆材12をなす接着剤12Aの硬化反応がさらに促進し、部分的に硬度が高くなった屈曲部20,21および起伏部22,23,24,25が形成された非接触型データ受送信体10を得る。
【0061】
積層体B1を、曝す高温、高湿の環境の条件(温度、湿度)は特に限定されるものではなく、非接触型データ受送信体10に形成される屈曲部20,21と起伏部22,23,24,25の曲率、接着剤12Aの材質、インレットシート32の材質などに応じて、適宜調整される。
【0062】
なお、この実施形態では、長尺の剥離基材31およびインレットシート32を用いて、連続的に、上述の非接触型データ受送信体10を製造する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、予め個片化されたインレットを用いて、個別に非接触型データ受送信体を製造してもよい。
【0063】
また、この実施形態では、工程Bの後に、工程Cを行う場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、予め個片化されたインレットを用いた場合などには、工程Bに次いで、工程Dを行い、工程Cを行わなくてもよい。
【0064】
また、この実施形態では、工程Bの後に、剥離基材31、接着剤12Aおよびインレットシート32からなる積層体を、アンテナ15の形状に応じて裁断する工程Cと、この裁断した積層体から、剥離基材31を剥離する工程Dとを、この順に行う場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、工程Bの後に、工程Cと工程Dを順不同に行ってよい。すなわち、本発明にあっては、工程Dにて、剥離基材、接着剤およびインレットシートからなる積層体から、剥離基材を剥離した後、工程Cにて、接着剤およびインレットシートからなる積層体を、アンテナの形状に応じて裁断してもよい。
【0065】
(2)第二の実施形態
「非接触型データ受送信体」
図8は、本発明の非接触型データ受送信体の第二の実施形態を示す概略図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のC−C線に沿う断面図である。なお、
図8(b)では、説明を簡単にするために、後述する屈曲部や起伏部を省略した。
この実施形態の非接触型データ受送信体50は、平面視略長方形状のインレット51と、インレット51の一方の面51aを被覆する第一の被覆材53と、インレット51の他方の面51bを被覆する第二の被覆材54と、外縁部において、インレット51の長手方向に沿って、部分的に複数設けられた屈曲部60,61、および、起伏部62,63,64,65とから概略構成されている。
【0066】
なお、第一の被覆材53と第二の被覆材54を総称して、被覆材52ということもある。
すなわち、非接触型データ受送信体50は、インレット51の両面(一方の面51aおよび他方の面51b)が、被覆材52で直接、被覆されて、第一の被覆材53、インレット51および第二の被覆材54が、その厚さ方向において、この順に積層された構造をなしている。これにより、非接触型データ受送信体50は、平面視略長方形状をなしている。
【0067】
インレット51は、基材55と、基材55の一方の面55aに設けられ、互いに電気的に接続されたICチップ56およびアンテナ57とから概略構成されている。
アンテナ57は、各種導電体からなり、互いに対向し、その対向する側にそれぞれ給電点(ICチップ56と接続している部分)を有する一対の面状の放射素子58,59からなるダイポールアンテナである。
アンテナ57の長手方向における長さは、非接触ICカードなどの非接触ICモジュールに利用できる極超短波帯〈UHF〉やマイクロ波帯の電波帯の周波数(300MHz〜30GHz)の1/2波長に相当する長さとなっている。すなわち、放射素子58,59の長手方向における長さは、1/4波長に相当する長さとなっている。
【0068】
なお、インレット51の一方の面51aは、基材55の一方の面55aに相当し、インレット51の他方の面51bは、基材55の他方の面55bに相当する。
ゆえに、インレット51の一方の面51aでは、ICチップ56およびアンテナ57が第一の被覆材53によって被覆されている。
【0069】
そして、非接触型データ受送信体50の4つの側面にて、第一の被覆材53の端面、基材55の端面および第二の被覆材54の端面が同一面をなしている。より詳細には、例えば、非接触型データ受送信体50の側面50aにて、第一の被覆材53の端面53a、基材55の端面55cおよび第二の被覆材54の端面54aが同一面をなしている。同様に、非接触型データ受送信体50の側面50bにて、第一の被覆材53の端面53b、基材55の端面55dおよび第二の被覆材54の端面54bが同一面をなしている。
【0070】
第一の被覆材53の厚さは、特に限定されないが、少なくともインレット51のICチップ56およびアンテナ57に起因する凹凸が、非接触型データ受送信体50の一方の面(外面)50cに現れない程度、かつ、インレット51が外部からの衝撃により破損しない程度であり、例えば、10μm〜2000mmの範囲内である。
また、第二の被覆材54の厚さは、特に限定されないが、インレット51が外部からの衝撃により破損しない程度であり、例えば、10μm〜2000mmの範囲内である。
【0071】
さらに、非接触型データ受送信体50の柔軟性(可撓性)を十分なものとし、非接触型データ受送信体50を曲げた場合に、インレット51に対して、第一の被覆材53と第二の被覆材54の厚さの差に起因する応力が生じないようにするためには、第一の被覆材53の厚さと第二の被覆材54の厚さは等しいことが好ましい。
【0072】
また、非接触型データ受送信体50における屈曲部60,61とは、第一の被覆材53、インレット51および第二の被覆材54からなる積層体(以下、この積層体を単に「積層体A2」と言う。)が比較的小さな曲率で、インレット51の長手方向、すなわち、非接触型データ受送信体50の外縁部において、その長手方向に沿って湾曲している部分である。
この屈曲部60,61では、後述する第一の被覆材53および第二の被覆材54をなす2液混合型ウレタン樹脂の硬度が、その他の部分(非接触型データ受送信体50における屈曲部または起伏部以外の部分)の硬度よりも高くなっている。この屈曲部60,61は、後述するように、一旦、シート状(平面的)に作製した積層体A2を、さらに、高温、高湿の環境に、所定時間曝すことにより、積層体A2が部分的に、その長手方向に沿って収縮するとともに、その積層体A2の収縮した部分にて、第一の被覆材53および第二の被覆材54をなす2液混合型ウレタン樹脂の硬化反応がさらに促進し、部分的に硬度が高くなった部分である。ここで、硬化反応がさらに促進する現象は、第一の被覆材53および第二の被覆材54に含まれる微量の2液混合型ウレタン樹脂の未反応成分が、反応することに起因する。したがって、屈曲部60,61は外力が加えられても、容易に変形して、平らな状態に戻ってしまうことがなく、恒久的にその形状が保持される。また、屈曲部60,61は、積層体A2を、高温、高湿の環境に曝した際に、最も熱の影響を受けやすい外縁部にて、顕著に形成されている。
【0073】
屈曲部60,61の曲率は特に限定されるものではなく、例えば、非接触型データ受送信体50を目視した場合、顕著に湾曲している部分を屈曲部という。
【0074】
一方、非接触型データ受送信体50における起伏部62,63,64,65とは、積層体A2が比較的大きな曲率で、インレット51の長手方向、すなわち、非接触型データ受送信体50の外縁部において、その長手方向に沿って湾曲している部分である。
この起伏部62,63,64,65でも、後述する第一の被覆材53および第二の被覆材54をなす2液混合型ウレタン樹脂の硬度が、その他の部分(非接触型データ受送信体50における屈曲部または起伏部以外の部分)の硬度よりも高くなっている。この起伏部62,63,64,65は、後述するように、一旦、シート状(平面的)に作製した積層体A2を、さらに、高温、高湿の環境に、所定時間曝すことにより、積層体A2が部分的に、その長手方向に沿って収縮するとともに、その積層体A2の収縮した部分にて、第一の被覆材53および第二の被覆材54をなす2液混合型ウレタン樹脂の硬化反応がさらに促進し、部分的に硬度が高くなった部分である。ここで、硬化反応がさらに促進する現象は、第一の被覆材53および第二の被覆材54に含まれる微量の2液混合型ウレタン樹脂の未反応成分が、反応することに起因する。したがって、起伏部62,63,64,65は外力が加えられても、容易に変形して、平らな状態に戻ってしまうことがなく、恒久的にその形状が保持される。また、起伏部62,63,64,65は、積層体A2を、高温、高湿の環境に曝した際に、最も熱の影響を受けやすい外縁部にて、顕著に形成されている。
【0075】
起伏部62,63,64,65の曲率は特に限定されるものではなく、例えば、非接触型データ受送信体50を目視した場合、僅かに湾曲している部分、あるいは、丘状に湾曲している部分を起伏部という。
【0076】
また、上述のように、屈曲部60,61、および、起伏部62,63,64,65は、主に、非接触型データ受送信体50の外縁部に形成されているので、アンテナ57が極端に湾曲することがないから、アンテナ57の共振周波数などの通信特性は劣化することがない。
【0077】
被覆材52(第一の被覆材53と第二の被覆材54)は、使用前は液状であり、加熱、紫外線照射、電子線照射などの外的条件を加えなくても主剤と硬化剤の反応によって硬化する2液硬化型ウレタン系接着剤からなるものである。
【0078】
2液硬化型ウレタン系接着剤としては、上述の第一の実施形態と同様のものが用いられる。
【0079】
基材55、ICチップ56、アンテナ57としては、上述の第一の実施形態と同様のものが用いられる。
【0080】
この非接触型データ受送信体50は、その外縁部において、長手方向に沿って、部分的に複数の屈曲部60,61、および、起伏部62,63,64,65が設けられているので、他のシート状のICタグと重ね合わせても、互いに密着することがないから、取り扱いが容易である。したがって、多数の非接触型データ受送信体50を一纏めにしても、互いに密着することがなく、取り扱いが容易である。
特に、非接触型データ受送信体50は、その一方の面50cおよび他方の面50dが、2液混合型ウレタン樹脂からなる被覆材52によるタック性(仮留め可能な性質)を有しているため、屈曲部60,61、および、起伏部62,63,64,65の存在により、同種のICタグと重ね合わせても、互いに密着することがない。
【0081】
また、インレット51の一方の面51aおよび他方の面51bが、2液混合型ウレタン樹脂からなる被覆材52で直接、被覆されているので、被覆材52がインレット51を構成するICチップ56やアンテナ57に基因する凹凸形状に追従して形成されているから、インレット51と被覆材52の密着性に優れ、インレット51と被覆材52の界面において剥離するのを防止することができる。したがって、非接触型データ受送信体50は、インレット51に耐熱性および耐候性を付与しながら、薄型で柔軟性に優れている。
【0082】
さらに、非接触型データ受送信体50は、インレット51の一方の面51aおよび他方の面51bが、被覆材52で直接、被覆された単純な構成をなしているので、容易に製造することができる。
【0083】
なお、この実施形態では、屈曲部60,61と、起伏部62,63,64,65とを、その曲率によって区別した場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、屈曲部と起伏部の差異が厳密に規定されるものではない。
【0084】
また、この実施形態では、屈曲部60,61と、起伏部62,63,64,65とが設けられた非接触型データ受送信体50を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、屈曲部または起伏部のいずれか一方、あるいは、屈曲部および起伏部の両方が設けられていてもよく、その数も限定されない。非接触型データ受送信体に設けられる屈曲部および/または起伏部の数は、非接触型データ受送信体の大きさ、被覆材のタック性などに応じて適宜調整される。
また、この実施形態では、非接触型データ受送信体50の外縁部において、その長手方向に沿って、屈曲部60,61と、起伏部62,63,64,65とが設けられた場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明の非接触型データ受送信体にあっては、非接触型データ受送信体の外縁部において、その短手方向に沿って、屈曲部および/または起伏部が設けられていてもよい。
【0085】
また、この実施形態では、非接触型データ受送信体50が平面視略長方形状をなしている場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、非接触型データ受送信体は、平面視した場合、任意のカード形状、タグ形状をなしていてもよい。
【0086】
また、この実施形態では、一対の面状の放射素子58,59から構成されるダイポールアンテナからなるアンテナ57を有するインレット51を備えた場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、アンテナは一対の枠状の放射素子から構成されるダイポールアンテナ、メアンダ状のダイポールアンテナ、モノポールアンテナなどであってもよい。
【0087】
「非接触型データ受送信体の製造方法」
次に、
図9〜
図16を参照して、この実施形態の非接触型データ受送信体の製造方法を説明する。
ここでは、
図10に示すような、基材55Aと、その一方の面55aに、RFID用のアンテナ57と、このアンテナ57を通じて通信するICチップ56とが等間隔に多数設けられた、長尺のインレットシート72を用いて、連続的に、上述の非接触型データ受送信体50を製造する場合を例示する。
【0088】
まず、
図9に示すように、図中の矢印方向に搬送されている長尺の第一の剥離基材71の一方の面71aの中央部に、第一の剥離基材71の搬送方向に沿って、接着剤塗布装置のノズル81から吐出される第一の接着剤53Aを線状に塗布する(工程A)。
【0089】
第一の接着剤53Aとしては、上記の被覆材52を形成する接着剤と同様のものが用いられる。
また、第一の剥離基材71の一方の面71aに第一の接着剤53Aを塗布する幅、すなわち、第一の剥離基材71の一方の面71aに対する第一の接着剤53Aの塗布量は、特に限定されないが、この第一の接着剤53Aによって被覆される、インレットシート72に設けられたICチップ56およびアンテナ57の大きさや数、第一の接着剤53Aを硬化することにより形成される第一の被覆材53に必要とされる厚さなどに応じて、適宜調整される。
【0090】
第一の剥離基材71としては、上述の第一の実施形態の剥離基材と同様のものが用いられる。
この第一の剥離基材71の剥離力は、0.05〜1.0N/50mmである。
【0091】
このように、工程Aでは、第一の剥離基材71として、上記の剥離フィルムまたは剥離紙を用いているので、第一の剥離基材71の一方の面71aをなす剥離層(図示略)の上に、第一の接着剤73Aを塗布する。
【0092】
次いで、
図10に示すように、図中の矢印方向に搬送されているインレットシート72を、図中の矢印方向に回転する一対のローラー82,83の対向する部分にて、第一の剥離基材71の一方の面71aに塗布した第一の接着剤53Aを介して、図中の矢印方向に搬送されている第一の剥離基材71の一方の面71a上に重ね合わせるとともに、第一の剥離基材71とインレットシート72をローラー82,83で挟み込むことにより、
図11に示すように、第一の剥離基材71とインレットシート72の間のほぼ全域にわたって、第一の剥離基材71の一方の面71aに塗布した第一の接着剤53Aを展開させる(工程B)。
【0093】
この工程Bでは、第一の剥離基材71の一方の面71aに、基材55Aの一方の面55a、すなわち、インレットシート72におけるICチップ56およびアンテナ57が設けられた面(以下、「一方の面」という。)72aが対向するように、第一の剥離基材71の一方の面71a上にインレットシート72を重ね合わせる。
【0094】
また、工程Bでは、上記のように、外的条件を加えなくても主剤と硬化剤の反応によって硬化する2液混合型ウレタン樹脂からなる第一の接着剤53Aを用いる。したがって、第一の接着剤53Aは、第一の剥離基材71とインレットシート72の間に展開させるまでの間、流動性を有しているが、反応の進行に伴って、次第に流動性がなくなり、最終的には硬化する。これにより、インレットシート72の一方の面72a、並びに、その一方の面72aに設けられたICチップ56およびアンテナ57が第一の接着剤53Aによって被覆されるとともに、第一の剥離基材71の一方の面71a上に、インレットシート72が仮留めされる。なお、第一の接着剤53Aは硬化すると、上記の第一の被覆材53となる。
【0095】
また、工程Bでは、第一の剥離基材71とインレットシート72の間に展開させた後の第一の接着剤53Aの厚さを、少なくともインレットシート72のICチップ56およびアンテナ57に起因する凹凸が、第一の接着剤53Aのインレットシート72に接している面とは反対側の面53cに現れない程度、かつ、ICチップ56およびアンテナ57が外部からの衝撃により破損しない程度とし、例えば、10μm〜2000mmの範囲内とする。
【0096】
また、工程Bにおいて、第一の剥離基材71とインレットシート72を一対のローラー82,83で挟み込む力、すなわち、第一の剥離基材71に対してインレットシート72を厚さ方向に押圧する力(圧力)は、特に限定されず、第一の剥離基材71およびインレットシート72の厚さや大きさ、第一の接着剤53Aの塗布量などに応じて、適宜調整されるが、1kg/cm
2〜20kg/cm
2であることが好ましく、より好ましくは5kg/cm
2〜10kg/cm
2である。
【0097】
この工程Bにより、第一の接着剤53Aによって、ICチップ56およびアンテナ57が完全に被覆され、第一の剥離基材71とインレットシート72の間に、ほぼ隙間無く第一の接着剤53Aが充填される。
【0098】
次いで、
図12に示すように、図中の矢印方向に、第一の剥離基材71とインレットシート72からなる積層体α2を搬送しながら、インレットシート72の一方の面72aとは反対側の面(以下、「他方の面」という。)72b、すなわち、基材55Aの他方の面55bの中央部に、積層体α2の搬送方向に沿って、接着剤塗布装置のノズル84から吐出される第二の接着剤54Aを線状に塗布する(工程E)。
【0099】
第二の接着剤54Aとしては、上記の被覆材52を形成する接着剤と同様のものが用いられる。
また、インレットシート72の他方の面72bに第二の接着剤54Aを塗布する幅、すなわち、基材55Aの他方の面55bに対する第二の接着剤54Aの塗布量は、特に限定されないが、第二の接着剤54Aを硬化することにより形成される第二の被覆材54に必要とされる厚さなどに応じて、適宜調整される。
【0100】
次いで、
図12に示すように、図中の矢印方向に搬送されている第二の剥離基材73を、図中の矢印方向に回転する一対のローラー85,86の対向する部分にて、インレットシート72の他方の面72bに塗布した第二の接着剤54Aを介して、図中の矢印方向に搬送されている積層体α2を構成するインレットシート72の他方の面72b上に重ね合わせるとともに、積層体α2と第二の剥離基材73をローラー85,86で挟み込むことにより、
図13に示すように、積層体α2と第二の剥離基材73の間のほぼ全域にわたって、インレットシート72の他方の面72bに塗布した第二の接着剤54Aを展開させて(工程F)、第一の剥離基材71と第二の剥離基材73の間に、第一の接着剤53A、インレットシート72および第二の接着剤54Aが、この順に積層、一体化された積層体β2を形成する。
【0101】
第二の剥離基材73としては、上記の第一の剥離基材71と同様のものが用いられる。すなわち、第二の剥離基材73の一方の面73aは、シリコンからなる剥離層から構成されている。
【0102】
この工程Fでは、第二の剥離基材73として、上記の剥離フィルムまたは剥離紙を用いているので、インレットシート72の他方の面72bに、第二の剥離基材73の一方の面73aをなす剥離層(図示略)が対向するように、インレットシート72の他方の面72b上に第二の剥離基材73を重ね合わせる。
【0103】
また、工程Fでは、上記のように、外的条件を加えなくても主剤と硬化剤の反応によって硬化する2液混合型ウレタン樹脂からなる第二の接着剤54Aを用いる。したがって、第二の接着剤54Aは、積層体α2と第二の剥離基材73の間に展開させるまでの間、流動性を有しているが、反応の進行に伴って、次第に流動性がなくなり、最終的には硬化する。これにより、インレットシート72の他方の面72bが第二の接着剤54Aによって被覆されるとともに、積層体α2の上に、第二の剥離基材73が仮留めされる。なお、第二の接着剤54Aは硬化すると、上記の第二の被覆材54となる。
【0104】
また、工程Fでは、積層体α2と第二の剥離基材73の間に展開させた後の第二の接着剤54Aの厚さを、上述の工程Bにおいて、第一の剥離基材71とインレットシート72の間に展開させた後の第一の接着剤53Aの厚さと同程度とし、例えば、10μm〜1000mmの範囲内とする。
【0105】
また、工程Fにおいて、積層体α2と第二の剥離基材73を一対のローラー85,86で挟み込む力、すなわち、インレットシート72に対して第二の剥離基材73を厚さ方向に押圧する力(圧力)は、特に限定されず、積層体α2および第二の剥離基材73の厚さや大きさ、第二の接着剤54Aの塗布量などに応じて、適宜調整されるが、1kg/cm
2〜20kg/cm
2であることが好ましく、より好ましくは5kg/cm
2〜10kg/cm
2である。
【0106】
この工程Fにより、積層体α2と第二の剥離基材73の間に、ほぼ隙間無く第二の接着剤54Aが充填される。
【0107】
次いで、
図14に示すように、裁断装置の切断刃(図示略)により、第一の剥離基材71、第一の接着剤53A、インレットシート72、第二の接着剤54Aおよび第二の剥離基材73からなる積層体γ2を、その厚さ方向に(
図14の一点鎖線に沿って)、アンテナ57の形状に応じて裁断し、
図15に示すように、積層体γ2を個片化する(工程C)。
ここで、積層体をアンテナ57の形状に応じて裁断するとは、アンテナ57を損傷することなく、かつ、目的とする非接触型データ受送信体50の形状に合わせて裁断することを言う。
【0108】
次いで、第一の接着剤53Aが完全に硬化して第一の被覆材53となり、かつ、第二の接着剤54Aが完全に硬化して第二の被覆材54となった後、
図16に示すように、積層体γ2から、第一の剥離基材71と第二の剥離基材73を剥離して(工程D)、第一の被覆材53、インレットシート72および第二の被覆材54からなる積層体B2を得る。
【0109】
次いで、積層体B2を、温度80〜90℃、湿度75〜95%RHの環境下に、168時間(24時間×7日)以上曝露することにより、
図8に示す非接触型データ受送信体50を得る。
【0110】
すなわち、積層体B2を、温度80〜90℃、湿度75〜95%RHの環境下に、168時間(24時間×7日)以上曝露すると、積層体B2が部分的に、その長手方向に沿って収縮するとともに、その積層体B2の収縮した部分にて、第一の被覆材53をなす第一の接着剤53Aおよび第二の被覆材54をなす第二の接着剤54Aの硬化反応がさらに促進し、部分的に硬度が高くなった屈曲部60,61および起伏部62,63,64,65が形成された非接触型データ受送信体50を得る。
【0111】
積層体B2を、曝す高温、高湿の環境の条件(温度、湿度)は特に限定されるものではなく、非接触型データ受送信体50に形成される屈曲部60,61と起伏部62,63,64,65の曲率、第一の接着剤53Aの材質、第二の接着剤54Aの材質、インレットシート72の材質などに応じて、適宜調整される。
【0112】
なお、この実施形態では、長尺の第一の剥離基材71、インレットシート72および第二の剥離基材73を用いて、連続的に、上述の非接触型データ受送信体50を製造する場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、予め個片化されたインレットを用いて、個別に非接触型データ受送信体を製造してもよい。
【0113】
また、この実施形態では、工程Fの後に、工程Cを行う場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、予め個片化されたインレットを用いた場合などには、工程Fに次いで、工程Dを行い、工程Cを行わなくてもよい。
【0114】
また、この実施形態では、工程Fの後に、第一の剥離基材71、第一の接着剤53A、インレットシート72、第二の接着剤54Aおよび第二の剥離基材73からなる積層体γ2を、アンテナ57の形状に応じて裁断する工程Cと、この裁断した積層体γ2から、第一の剥離基材71と第二の剥離基材73を剥離する工程Dとを、この順に行う場合を例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明にあっては、工程Fの後に、工程Cと工程Dを順不同に行ってよい。すなわち、本発明にあっては、工程Dにて、第一の剥離基材、第一の接着剤、インレットシート、第二の接着剤および第二の剥離基材からなる積層体から、第一の剥離基材と第二の剥離基材を剥離した後、工程Cにて、第一の接着剤、インレットシートおよび第二の接着剤からなる積層体を、アンテナの形状に応じて裁断してもよい。
【実施例】
【0115】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0116】
「実施例1」
インレットの一方の面に、2液混合型ウレタン樹脂を塗布した後、この2液混合型ウレタン樹脂を硬化して、インレットのICチップが設けられた面が被覆材で被覆されてなる積層体を作製した。
次いで、この積層体を、温度85±5℃、湿度85±10%RHの環境下に、168時間(24時間×7日)以上曝露して、
図1に示すように、外縁部において、その長手方向に沿って、屈曲部および起伏部が設けられた非接触型データ受送信体を得た。
得られた非接触型データ受送信体の厚さは1mmであり、その屈曲部や起伏部(
図1に示す屈曲部20,21、起伏部22,23,24,25)の谷と山の最大高さ差が2mm〜2.5mmであった。
【0117】
「実施例2」
インレットの一方の面に、2液混合型ウレタン樹脂を塗布した後、この2液混合型ウレタン樹脂を硬化して、インレットのICチップが設けられた面が被覆材で被覆されてなる積層体を作製した。
次いで、この積層体を、温度85±5℃、湿度85±10%RHの環境下に、360時間(24時間×15日)以上曝露して、
図1に示すように、外縁部において、その長手方向に沿って、屈曲部および起伏部が設けられた非接触型データ受送信体を得た。
得られた非接触型データ受送信体の厚さは1mmであり、その屈曲部や起伏部(
図1に示す屈曲部20,21、起伏部22,23,24,25)の谷と山の最大高さ差が2mm〜3mmであった。
【0118】
「実施例3」
インレットの一方の面および他方の面に、2液混合型ウレタン樹脂を塗布した後、この2液混合型ウレタン樹脂を硬化して、インレットの一方の面および他方の面が被覆材で被覆されてなる積層体を作製した。
次いで、この積層体を、温度85±5℃、湿度85±10%RHの環境下に、168時間(24時間×7日)以上曝露して、
図8に示すように、外縁部において、その長手方向に沿って、屈曲部および起伏部が設けられた非接触型データ受送信体を得た。
得られた非接触型データ受送信体の厚さは1mmであり、その屈曲部や起伏部(
図8に示す屈曲部60,61、起伏部62,63,64,65)の谷と山の最大高さ差が2mm〜2.5mmであった。
【0119】
「実施例4」
インレットの一方の面および他方の面に、2液混合型ウレタン樹脂を塗布した後、この2液混合型ウレタン樹脂を硬化して、インレットの一方の面および他方の面が被覆材で被覆されてなる積層体を作製した。
次いで、この積層体を、温度85±5℃、湿度85±10%RHの環境下に、360時間(24時間×15日)以上曝露して、
図8に示すように、外縁部において、その長手方向に沿って、屈曲部および起伏部が設けられた非接触型データ受送信体を得た。
得られた非接触型データ受送信体の厚さは1mmであり、その屈曲部や起伏部(
図8に示す屈曲部60,61、起伏部62,63,64,65)の谷と山の最大高さ差が2mm〜3mmであった。
【0120】
「実施例5」
インレットの一方の面および他方の面に、2液混合型ウレタン樹脂を塗布した後、この2液混合型ウレタン樹脂を硬化して、インレットの一方の面および他方の面が被覆材で被覆されてなる積層体を作製した。
次いで、この積層体を、温度125±5℃で30分加熱した後、温度55±5℃で30分加熱する処理を1サイクルとし、この処理を50サイクル行った。
その結果、
図8に示すように、外縁部において、その長手方向に沿って、屈曲部および起伏部が設けられた非接触型データ受送信体を得た。
得られた非接触型データ受送信体の厚さは1mmであり、その屈曲部や起伏部(
図8に示す屈曲部60,61、起伏部62,63,64,65)の谷と山の最大高さ差が1.5mm〜2.0mmであった。
【0121】
「実施例6」
インレットの一方の面および他方の面に、2液混合型ウレタン樹脂を塗布した後、この2液混合型ウレタン樹脂を硬化して、インレットの一方の面および他方の面が被覆材で被覆されてなる積層体を作製した。
次いで、この積層体を、温度125±5℃で30分加熱した後、温度55±5℃で30分加熱する処理を1サイクルとし、この処理を150サイクル行った。
その結果、
図8に示すように、外縁部において、その長手方向に沿って、屈曲部および起伏部が設けられた非接触型データ受送信体を得た。
得られた非接触型データ受送信体の厚さは1mmであり、その屈曲部や起伏部(
図8に示す屈曲部60,61、起伏部62,63,64,65)の谷と山の最大高さ差が1.5mm〜3.0mmであった。