(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
円板状弁体の天地のボス部を縦方向に連設したバタフライ弁の弁体であって、前記ボス部の中央領域に筒形状の断面六角形部を形成し、この断面六角形部以外の天地のステム嵌合部付近に筒形状の断面円形部を形成すると共に、前記ボス部と前記弁体の弁翼部をつなぎR部で接続し、このつなぎR部は、前記断面円形部の天地双方から前記断面六角形部の中央部に向けてそれぞれ小さいつなぎRから徐々に大きいRに設定した徐変Rで接続すると共に、前記弁体の中央部で前記つなぎR部の重なりにより嶺部を形成し、前記嶺部が弁翼外径方向へ張出す張出し量は、弁体半径の40〜45%程度に設定したことを特徴とするバタフライ弁の弁体。
【背景技術】
【0002】
通常、バタフライ弁の弁体は、弾性シートリングを嵌め込んだボデー内に回転自在に取付けられたステムにより、その直径方向が支持された状態でボデー内に回動自在に装着されている。この装着構造により、バタフライ弁の流路を閉止したときには流路より大きな流体圧が弁体に加わるようになっており、特に、例えば、350〜600A程度の比較的大きめの口径サイズで、呼び圧力がJIS 16Kや20K、ISO PN16やPN20、ASME クラス125やクラス150程度である場合には、流体圧を受ける弁体の面積も大きくなるため、流体圧に対する弁体強度を確保する必要がある。
【0003】
この場合、一体型のステムを弁体に貫通して取付けることにより弁体強度を確保したものがあるが、ステムにかかる材料費が高価になると共に、弁体を着脱する時にバルブ全体を分解して弁体とステムとを取外す必要も生じることから弁体の交換や弁の組立て・メンテナンス性が悪くなる。
また、弁体の肉厚を厚くして強度を確保することも考えられるが、この場合には弁体全体の重量が増加することにより操作トルクが大きくなって操作性が低下することにつながる。
【0004】
そのため、分割したステムで弁体の上下端側を支持した構造に設けることでステムの材料費を安価にし、ステムを挿脱によって弁体の着脱容易性を確保した上で、流体圧に対する強度を確保しながらトルク性を向上できる弁体が求められている。このような弁体を大きめの口径サイズのバルブに用いることで、強い流体圧に対する強度を確保した上で、弁体の軽量化を図って操作性の向上も可能になる。
【0005】
この種の分割ステム型のバタフライ弁の弁体として、例えば、特許文献1の中心型バタフライ弁の弁体が知られている。同文献1のバタフライ弁の弁体は、ステム挿入用のボス部が弁体の天地側に独立して形成され、この弁体の両側に両ボス部とほぼ同じ幅の補強板が一体に設けられている。この弁体では補強板を設けることによってボス部を補強し、この補強により流体による曲げ破壊を防ごうとしたものである。
ボス部の強度向上を図るための弁体のその他の構造としては、特許文献2に開示されている弁体が知られている。この弁体は、断面六角形のボス部が天地に連なるように一体に形成され、このボス部により弁体が補強されている。ボス部と弁体の翼部分との間には、外周側から中央部位まで均一な半径の小さいアール部位が形成されている。
【0006】
更に、特許文献3のバタフライ弁の弁体では、断面円形の天地に連なった一体型のボスが形成され、このボス部の側面から弁体の左右の翼部分に向かって傾斜状の盛り肉部位が形成されている。この弁体は、翼部分が略円錐形状になっており、断面円形の天地一体型ボスと、盛り肉部位を設けた弁体の翼部分とにより全体が補強されている。
このような翼部分の補強によって全体の強度を向上しようとした弁体のその他の構造としては、特許文献4ではX軸方向に延びる複数の横リブが形成されており、このリブにより弁体の強度を向上させ、かつ、弁体の厚みを低減して軽量化を図ろうとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、ボス部の強度を向上させて弁体を補強する場合、特許文献1のバタフライ弁の弁体は、別部材である補強板を設けた構造としているために重量が増加して操作性が悪くなると共に、部品点数が多くなり、かつ、製作時における工数も増えて製作に手間がかかっていた。
同文献2の弁体の場合においては、天地に連なるように形成することでボス部の強度を上げようとしているが、ボス部と弁体の翼部分とをつなぐアール部位の半径が小さく、弁体の外周部分から翼中央部に同じ半径のアール部位によりつながっているため、弁閉止状態で最大使用圧力を負荷した静的荷重に対してこのアール部位に応力が集中することになる。しかも、この弁体では断面六角形の天地一体型ボスの採用によってボス部自体の強度を向上させようとしているが、ボス部よりも薄肉である翼部分には流体圧によって曲げモーメントが加わり、その結果、ボス部と翼部分との接続部分であるアール部位を介して応力が集中しやすくなって耐久性が悪くなっていた。この対策として翼部分の肉厚を増すことも考えられるが、肉厚を増加すると弁体全体の重量が増してトルク性が悪くなる。
【0009】
一方、同文献3のようにボス部から傾斜状の盛り肉部位を翼部分に形成する場合には、略円錐状の翼部分の高さが大きくなることで重量が増加し、トルク性が悪くなっていた。しかも、流体圧によって発生する応力は、翼部分の外周部になるにつれて小さくなる傾向にあるため、翼部分の外周側付近の盛り肉部位が強度の向上の点で無駄になり、重量も余計に増加していた。
【0010】
同文献4の場合のように弁体にリブを設ける場合には、このリブと翼部分とのつなぐ部位に集中応力が発生し、この集中応力によってリブの形成されていない部分に歪みが生じることがあった。弁体に歪みが生じた場合、塑性変形が生じてシール性が低下するなどの耐久性に悪影響が生じることになる。弁体は一般的に鋳造成形により製造されることが多いが、特に、中口径以上の弁体に鋳造成形でリブを設けると弁体の厚肉部と薄肉部との肉厚差が大きくなって鋳造不良が発生しやすくなり、弁口径が大きくなるにつれてこの肉厚差による悪影響が大きくなる。一方、溶接手段によりリブを有する弁体を製造することもできるが、この場合、生産性が悪くなりコストもアップするため一般的ではない。
【0011】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、全体を軽量化して弁操作時におけるトルク性の向上を図りつつ、弁閉時の応力を分散させて強度を向上させることが可能なバタフライ弁の弁体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、円板状弁体の天地のボス部を縦方向に連設したバタフライ弁の弁体であって、ボス部の中央領域に筒形状の断面六角形部を形成し、この断面六角形部以外の天地のステム嵌合部付近に筒形状の断面円形部を形成すると共に、ボス部と弁体の弁翼部をつなぎR部で接続し、このつなぎR部は、断面円形部の天地双方から断面六角形部の中央部に向けてそれぞれ小さいつなぎRから徐々に大きいRに設定した徐変Rで接続
すると共に、前記弁体の中央部で前記つなぎR部の重なりにより嶺部を形成し、前記嶺部が弁翼外径方向へ張出す張出し量は、弁体半径の40〜45%程度に設定したバタフライ弁の弁体である。
【0013】
請求項2に係る発明は、断面六角形部は、六角の2面並行方向を弁翼外径方向に平行に配設したバタフライ弁の弁体である。
【0016】
請求項
3に係る発明は、弁翼部を円錐形状とし、弁体中心から両側に向かって弁体表面を傾斜させて弁体に加わる応力を分散したバタフライ弁の弁体である。
【0017】
請求項
4に係る発明は、ボス部の天地のステム嵌合部に上下ステムをそれぞれ嵌合したバタフライ弁の弁体である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に係る発明によると、ボス部の中央領域に断面六角形部、天地のステム嵌合部付近に断面円形部を設け、ボス部と弁体の弁翼部とを徐変Rを有するつなぎRで接続した構成とすることで、部品点数を増やすことなく鋳造成形によって簡単に製作でき、この形状によって全体の薄肉化を維持して軽量化を図ることで弁操作時におけるトルク性を向上することが可能になり、更に、発生応力が軽微であるステム嵌合部を断面円形部とすることで一層の重量減を図っている。この場合、弁閉時の流体圧による応力集中を防いで応力を分散させることにより、強度を向上して弁閉時のシール性を確保することができる。この弁体を大口径サイズのバルブに用いる際にも、弁体の強度を確保しつつ操作トルクを低減して操作性を向上できるため、大出力のアクチュエータを必要とすることなくスムーズな動作が可能になり、小型のアクチュエータを搭載して全体のコンパクト化も可能になる。しかも、弁開時においては、ボス部付近の凹凸部位が減少することでこの部位付近や2次側における乱流の発生を減少させ、圧力損失を少なく抑えて流量特性の向上を図ることもできる。
しかも、弁翼部の肉厚を薄く保つことができ、弁閉状態で最大使用圧力を負荷した場合に静的荷重に対して弁体に発生する応力を、弁翼部全体の広範囲に分散させて弁体強度を保った軽量な弁体を製作できる。しかも、徐変Rにより弁体の凹凸部位をより少なくできるため、高粘度流体を流した場合にも弁体への液溜まりが減少する。このボス部と弁翼部とをつなぐつなぎR部のつなぎ形状を最適化することにより、例えば、円筒形状が天地に連なるボス部を有する弁体と比較して、ほぼ同等の強度を確保しつつ大幅な重量減を図ることも可能であり、弁体重量と応力分散とのバランスを最適な状態に設定でき、軽トルクによる操作性の向上と、弁体の強度向上によるバルブのシール性向上との双方の機能性を確保しつつ弁体を形成できる。
【0019】
請求項2に係る発明によると、断面六角形部の六角の2面並行方向を弁翼外径方向に並行に配設することで、弁開時の流体抵抗を最小限に抑えることができ、かつ、この並行部分により弁体を横置きしやすくなるため、機械加工時などにすわりが良くなって治具等による保持が容易になり加工が簡単になる。
【0022】
請求項
3に係る発明によると、全体を補強して弁体に加わる応力を分散させて強度を向上させることができ、また、特にステムの挿入部位付近の肉を多く盗むことにより全体の重量減を図ることができる。
【0023】
請求項
4に係る発明によると、分離した上下ステムを用いてバルブボデーに弁体を固定する構造に設けることで、一体型のステムを用いた構造に比較してステムの使用材料を削減でき、弁体の交換等を容易に実施できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明におけるバタフライ弁の弁体の好ましい実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1においては、本発明におけるバタフライ弁の弁体の斜視図を示しており、
図2においては
図1の平面図、
図3においては
図2の平面図を示している。
図6においては、本発明のバタフライ弁の弁体のより詳細な斜視図を示している。
【0026】
図に示すように、本発明におけるバタフライ弁の弁体1は、円板状に形成され、ボス部2が天地から縦方向に連設された形状を呈しており、このボス部2には筒形状の断面六角形部3、断面円形部4が形成されていると共に、このボス部2と弁体1の弁翼部5とは、徐変R6を有するつなぎR部7により接続されている。
【0027】
上記のバタフライ弁の弁体1において、ボス部2には天地方向に貫通穴9が設けられ、ボス部2の中央領域Tに断面六角形部3が形成されている。断面六角形部3における六角を成している2面部3aの並行方向が弁翼外径方向に平行に配設された状態になっており、これにより、並行した2面部3aが弁閉時に図示しない流路と直交する向きになる。断面六角形部3は、正六角形状であることが望ましいが、正六角形状以外の六角形状であってもよく、更には、弁体1の中央領域Tには、断面六角形部以外の形状、例えば、断面八角形部や断面十角形部などの断面多角形部を形成することも可能である。
【0028】
断面円形部4は、断面六角形部3以外の天地のステム嵌合部8付近に筒形状に形成され、断面六角形部3と滑らかな曲面部10によりつながれている。ステム嵌合部8の縁部には環状シート面15が形成され、断面円形部4の端部は、この環状シート面15に向かって略円錐状に形成されている。断面円形部4は、曲面部10により、断面六角形部3から断面円形部4にかけて直線状の外形部位が形成されることがないため、弁開時の流路抵抗が低減される。
【0029】
弁翼部5は、ボス部2の両側に略円板状に設けられ、弁体1の回転操作時にこの弁翼部5が図示しないバタフライ弁の弾性シートリングに接離して流路の開閉可能になっている。この弁翼部5は円錐形状に形成され、弁体1の中心から両側に向かって弁体表面部5aを傾斜させて弁体1に加わる応力を分散させるようになっている。
【0030】
図7において、上述したボス部2と弁翼部5とは、つなぎR部7で接続されている。つなぎR部7は、徐変R6を有し、この徐変R6は、断面円形部4の天地双方から断面六角形部3の中央部3bに向けて小さいつなぎRから徐々に大きいRに設定された形状になっている。すなわち、
図7(a)の徐変R6a、
図7(b)の徐変R6b、
図7(c)の徐変R6cのアール寸法は、徐変R6a<徐変R6b<徐変R6cの関係になっており、徐変R6は、弁体1の中心部に向かって徐々に大きな半径を有する曲面に設定されている。この場合、例えば、徐変R6aのアール寸法が16mmであるとき、徐変R6cのアール寸法が90mmとなるような関係の徐変R6の形状にするとよい。弁体1の中央部3bにおいては、天地方向からそれぞれ形成されたつなぎR部7の重なりによる嶺部11が形成されている。
【0031】
図1、
図2に示すように、嶺部11が弁翼部5の外径方向へ張出すときの張出し量Wは、弁体半径Lの40〜45%程度に設定されているとよい。また、上下ステム12、13が嵌合される断面円形部4付近では、弁体1の軽量化を重視した場合につなぎR部7の高さを最小とすることが望ましい。
【0032】
図1においては、ボス部2と弁翼部5、断面六角形部3と断面円形部4との境界付近にそれぞれ境界線が示されているが、実際には、
図6に示すように、ボス部2と弁翼部5とがつなぎR部7、断面六角形部3と断面円形部4とが曲面部10により滑らかにつながっている。
【0033】
図示しないが、弁体1は、一般的な構造のバタフライ弁の弁体として使用可能であり、例えば、弾性シートリングが嵌め込まれたバルブボデー内に
図6の上下ステム12、13を介して固定され、上方側まで突出した上ステム12をボス部2の上端側(天側)の内側に形成されたステム嵌合部8に、下ステム13をボス部2の下端側(地側)ボス部の内側に形成されたステム嵌合部8にそれぞれ嵌合することでバルブボデーに回動自在に取り付け可能になっている。更に、上ステム12には自動アクチュエータ又は手動用ハンドルからなる操作手段が取付けられ、この操作手段によりバタフライ弁の弁体を自動又は手動で所定の弁開度に回転制御できる。上下ステム12、13の取付け構造は、前述した構造と反対であってもよい。
【0034】
続いて、上記したバタフライ弁の弁体において、断面六角形部3付近の形状をより詳しく説明する。
図4においては、弁体の一部省略横断面図を示しており、弁体の応力に対する強度を比較するために弁翼部分を省略したものである。
図4(a)においては、本発明におけるバタフライ弁の弁体の断面六角形部3における一部省略横断面図、
図4(b)においては、本発明と比較するための比較品における弁体の一部省略横断面図を示しており、この比較品の弁体20において、本発明のバタフライ弁の弁体1の断面六角形部3が該当する部位には、円筒部21が形成されている。そして、
図4(a)の断面六角形部3の対辺寸法Aに対して、
図4(b)の円筒部21の外径寸法Bを等しく設けている。
【0035】
図4(a)、
図4(b)において、ハッチングで示した断面六角形部3の断面積と円筒部21の断面積とが等しくなるように、内部の抜き部分である貫通穴9の内周円14と貫通穴22の内周円23とを異なる内径に設け、これらの内周円14と内周円23の寸法を、それぞれ内径φd
1、内径φd
2とした場合の断面六角形部3と円筒部21との強度を比較する。
【0036】
断面六角形部3と円筒部21との断面積が等しい場合には、断面六角形部3の中心点O
1から最も離れた頂点(位置)までの距離S
1が、円筒部21の中心点O
2から最も離れた位置までの距離(=半径の長さ)S
2よりも長くなって断面の張り出し面積が大きくなる。このことから、断面係数及び断面二次モーメントに関して、断面六角形部3が円筒部21よりも大きくなり、このとき、断面六角形部3のほうが約10%程度大きくなる。このような同じ断面積である場合(=重量が等しい場合)には、断面係数がより大きいほうが流体圧に対する剛性を高めることができるため、延いては、内周円14と内周円23との断面積が同じ場合には、断面六角形部3の剛性を円筒部21よりも高めることができる。
【0037】
従って、上記の円筒部21と同じ断面係数の断面六角形部3を中央部に設けようとする場合には、断面六角形部3の断面積をより小さく設けることが可能になり、これによって、断面六角形部3の形状により弁体1の中央部3bを構成する場合には、円筒部21の形状により中央部を構成する場合に比較して同程度の剛性を得ながらこの円筒部21の場合よりも重量を減らすことができる。
【0038】
例えば、
図4(a)における断面六角形部3の対辺寸法Aを74mm、内周円14の直径φd
1をφ56mm、
図4(b)における円筒部21の外径寸法Bをφ74mm、内周円23の直径φd
2を62mmとした場合には、断面六角形部3の断面積が約1723mm
2、円筒部21の断面積が約1837mm
2となり、断面六角形部3の断面積が円筒部21の断面積よりもやや小さくなる。この場合の断面係数を比較すると、断面六角形部3の図示しないX軸(横軸)に対する最小断面係数が約29137mm
3、円筒部21のX軸に対する最小断面係数が約26735mm
3となり、断面積が小さい場合でもあっても断面六角形部3の断面係数が円筒部21の断面係数よりもおよそ10%程度大きくなっている。
【0039】
しかも、断面六角形部3は、六角の2面部3aの並行方向が弁翼外径方向に平行に配設された構成となっているので、弁開時における流体抵抗を最小限に抑えることができ、弁開時の流量特性に優れたバタフライ弁を設けることが可能になる。
【0040】
次いで、弁体1のつなぎR部7、徐変R6と、
図5(b)に示した比較品の弁体20の接続アール部24とを比較する。
図5においては、弁体の要部説明図を示しており、
図5(a)には本発明のバラフライ弁の弁体1における断面六角形部3付近の形状、
図5(b)には比較品における弁体20における円筒部21付近の断面形状を示している。
【0041】
図5(a)に示すように、断面六角形部3の六角の延長面と弁翼部5の円錐面部位とを接続する接線状の曲面がつなぎR部7であり、このつなぎR部7に徐変R6が形成されている。一方、
図5(b)に示すように、円筒部21と弁翼部26の円錐面部位とを接続する部分に接線状の接続アール部24が形成されている。
このとき、弁翼部5の高さCと弁翼部26の高さC´とを同じ寸法とすると、徐変R6により設けられる肉盛り部αの肉盛り量(
図5(a)に示したハッチング部分の断面積)を、接続アール部24により設けられる肉盛り部βの肉盛り量(
図5(b)に示したハッチング部分の断面積)よりも大きくできる。これは、中央断面部において同じアール寸法により徐変R6、接続アール部24を形成した場合、断面六角形部3と円筒部21との形状の違いにより、徐変R6による張出し量W
1を接続アール部24による張出し量W
2よりも大きくできるためである。その結果、弁体1における中央部付近の徐変R6の肉盛り量を周囲よりも大きくしたつなぎR部7に形成でき、これにより弁体1を補強する上で有利な形状になる。
【0042】
例えば、
図5(a)における口径サイズ400Aであるときの弁翼部5の高さCを17.5mm、徐変R6の中央部付近のアール径をR90mm、断面六角形部3の対辺寸法Aを74mmとすると、断面六角形部3付近の徐変R6の嶺部11の弁翼部5の外径方向への張出し量W
1を81.8mm程度設けることができる。同様に
図5(b)における弁翼部26の高さC´を17.5mm、接続アール部24を徐変としたときの中央部付近のアール径をR90mm、断面円筒部21の直径φd
2を74mmとすると、断面円筒部21付近の接続アール部24の弁翼部26の外径方向への張出し量W
2は68.7mm程度となる。これにより、
図5(a)の肉盛り部αの肉盛り量が、
図5(b)の肉盛り部βの肉盛り量よりも大きくなって、中央部付近の補強効果が高まり、弁体強度が向上する。
【0043】
しかも、徐変R6の場合の張出し量W
1は、
図5(a)の弁翼部5の外径方向、および弁体1の表裏方向の双方共に大きくなり、弁体1全体の強度も高まる。徐変R6を形成する際には六角部分の幅寸法をやや広げるようにすれば、徐変R6のアール寸法をより大きく形成でき、前記した張出し部分を弁翼部5の外径方向に張出させるほど強度が上がることになる。
【0044】
徐変R6の最大寸法は、断面六角形部3と弁翼部5との寸法の関係により限界があるが、この徐変R6の嶺部11の張出し量Wとしては、前述したとおり、弁体1の半径の40〜45%程度に設定するとよい。徐変R6の寸法を設定する場合、嶺部11の寸法を大きく設定すると弁翼部5の円錐高さを小さくできるが徐変R6の形成部分が大きくなることで重量増となり、一方、嶺部11の寸法を小さく設定すると徐変R6の形成部分を小さくできるが弁翼部5の円錐高さを大きく取る必要が生じて重量増となる。嶺部11や徐変R6を設定する場合、これらのことを考慮した上で小さいつなぎRから徐々に大きいRとなる適宜の形状に設定するとよい。
【0045】
一方、断面円形部4付近、および弁翼部5の外周付近は静荷重における発生応力が軽微になるため中央部3b付近に比べて強度を必要とせず、このとき、断面円形部4のステム嵌合部8の内径は上下ステム12、13のステム径によって決定される。このため、中央部3bに比較して強度を必要としないこの部分を、断面六角形部3と同寸法程度の断面円形部4に設けることで強度を維持しながら肉厚を少なくして重量減を図ることができる。更に、徐変R6についても同様であり、断面円形部4付近のつなぎR部7の発生応力が少なくなるため、耐久性とシール性とを考慮しつつ断面円形部4付近の徐変R6を小さいつなぎRに設けることにより重量を低減できる。その結果、応力の大きい中央部3b付近の徐変R6を大きく形成することで応力的に有利な形状とし、中央部3bから徐々に小さいつなぎRによりこの徐変R6を設けることで弁体1全体を軽量化しつつ弁閉時の応力を分散させて強度を向上できる。
【0046】
弁体軽量化と応力緩和性とを重視した場合、弁体1を天地方向に二分割する位置が最大寸法になるようにつなぎR部7の寸法を設定するとよい。この弁体1を天地方向に二分割する位置には前記した嶺部11が設けられ、この嶺部11は、つなぎR部7が最大寸法になっていることで最も外径側に張出した形状となり、この嶺部11の形状により最も効果的に弁翼部5を補強してこの弁翼部5に発生する応力を全体に大きく分散させている。
【0047】
ここで、本発明におけるバタフライ弁の弁体を供試品とし、この供試品が、例えば、口径サイズ400Aであるときの端部側と中央側との徐変Rの寸法を表1に示す。本発明の弁体と比較するために、比較品の弁体の一定接続アール部のアール寸法も表1に示す。
【0049】
表1における弁体サイズ400Aの供試品の弁体において、この弁体の半径に対する徐変Rの中央側の張出し量の比率は、例えば、42%程度であることが望ましい。
【0050】
次に、前述した表1に記載の弁体に流体圧が加わって応力が発生するときの応力分布をシミュレーションにより解析した。この場合、弁体に対して加わる荷重(流体圧により加わる荷重)を1.6MPa、1.8MPa、2.0MPaとし、この場合のミーゼス応力分布、最大主応力(引張)分布を解析した。
これらの応力分布の解析の結果、本発明におけるバタフライ弁の弁体1(供試品)は、断面六角形部3により断面係数が高くなっている中央部3b付近への応力分布が少なくなり、つなぎR部7を形成した全体形状により応力が中央部3bから外周部付近にかけて全体に加わる結果となった。このことから、流体圧による応力集中が弁体1に発生し難くなっており、断面六角形部3付近が流体圧によって反るように塑性変形することを防止でき、弁体1によるシール性を確保できる。更に、断面円形部4付近や図示しないバタフライ弁のシートリングと密接シールする外周端部付近においては、応力による負荷がほとんど加わらないためシール性が確実に保持される。
【0051】
一方、天地に連なる円筒形状のボス部を有する弁体(比較品)に流体圧が加わった場合、流体圧が集中する中央部付近の形状が断面円筒状の円筒部21であるためにこの付近の断面係数が不足すると共に、徐変Rを有するつなぎR部の代わりに一定の寸法でかつアール部位の半径が小さい接続アール部24が形成されているため、特に、この中央部付近に応力が集中しやすくなる。しかも、弁体が上下のステムにより支承された取付け構造であることから、弁体の流体圧が加わる一次側がステム側に押されるようにして支えられる一方、二次側はステムによって支えられた状態になっていない。このため、中央部付近の撓みがより大きくなって、この中央部付近への応力集中により一次側の面を中心に反りが生じて塑性変形しやすくなる。これにより、例えば、この弁体を、口径サイズ400Aを含む350〜600A程度の口径のバルブに使用した場合には、その受圧面積が増加することで弁体強度の確保が難しくなってシール性の維持が更に困難になる。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は、前記実施の形態記載に限定されるものではなく、本発明の特許請求の範囲に記載されている発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の変更ができるものである。これにより、断面六角形部の形状や外径寸法、断面円形部の外径寸法や長さ、つなぎR部における徐変Rのアール形状、弁翼部の断面形状や肉厚などを適宜の仕様に設けることができ、バタフライ弁の口径寸法や用途などに応じて所望の弁体を提供することが可能になる。