特許第5690537号(P5690537)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690537
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】流路開閉弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 5/06 20060101AFI20150305BHJP
   F16K 39/06 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   F16K5/06 A
   F16K39/06
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2010-216295(P2010-216295)
(22)【出願日】2010年9月28日
(65)【公開番号】特開2012-72782(P2012-72782A)
(43)【公開日】2012年4月12日
【審査請求日】2013年7月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141901
【氏名又は名称】株式会社ケーヒン
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100149261
【弁理士】
【氏名又は名称】大内 秀治
(72)【発明者】
【氏名】粟坂 守良
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 裕弥
(72)【発明者】
【氏名】小滝 広隆
(72)【発明者】
【氏名】住谷 武則
【審査官】 吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−205072(JP,A)
【文献】 特開2002−089724(JP,A)
【文献】 特開平09−079390(JP,A)
【文献】 特開昭62−233573(JP,A)
【文献】 特開昭50−028026(JP,A)
【文献】 実開昭57−056257(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1/22
F16K 3/22
F16K 5/06
F16K 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフトを介して回動可能に設けられた弁体と、
前記弁体を収容するバルブ室を有するボディ本体と、
前記弁体が着座するシート面を有する可動シートと、を備え、
前記弁体は、弁閉状態において前記シート面に当接する球面形状部を有し、
前記シャフトは、その軸線が前記球面形状部の曲率中心から外れた位置で前記弁体に取り付けられ、
前記ボディ本体において、前記可動シートを基準として前記弁体とは反対側には、前記可動シートに対向するシート対向部が設けられ、
前記可動シートには、前記シート対向部側に向かって突出するとともに前記シート対向部に対して当接する第1環状側部突起が設けられ、
前記シート対向部には、前記可動シート側に向かって突出するとともに前記可動シートの前記第1環状側部突起に対して摺接する第2環状側部突起が設けられ、
前記第1環状側部突起と前記第2環状側部突起との摺動部は、前記弁体と前記シート面との接触部よりも外側に位置する、
ことを特徴とする流路開閉弁。
【請求項2】
請求項1記載の流路開閉弁において、
前記第1環状側部突起又は前記第2環状側部突起よりも内側の位置に、前記シート対向部と前記可動シートの一方に、前記可動シート側又は前記シート対向部側に向かって突出するとともに他方に対して近接する環状壁部が設けられる、
ことを特徴とする流路開閉弁。
【請求項3】
請求項1又は2記載の流路開閉弁において、
前記可動シートの外周部には、外方に突出するともに前記バルブ室の内周面に対して近接する環状外周突起が設けられる、
ことを特徴とする流路開閉弁。
【請求項4】
請求項2記載の流路開閉弁において、
前記第1環状側部突起又は前記第2環状側部突起前記環状壁部との間に、内側環状空間が形成される、
ことを特徴とする流路開閉弁。
【請求項5】
請求項3記載の流路開閉弁において、
前記環状外周突起と前記シート対向部との間であって前記第1環状側部突起の外方に、外側環状空間が形成される、
ことを特徴とする流路開閉弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流通する流路を開閉することにより該流体の流通状態を切り換える流路開閉弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、流体の流通する流路に接続され、該流路の連通状態を切り換えることによって前記流体の流通状態を制御する流路開閉弁が知られている。このような流路開閉弁は、弁本体の内部にボールバルブが設けられ、該ボールバルブの上部に連結されたシャフトが回転することにより、前記ボールバルブの貫通孔が前記弁本体に形成された一対の通路(ガス流入口及びガス流出口)を互いに連通させる。また、ボールバルブのガス流入口側及びガス流出口側には、ボールバルブを挟むように固定シート及び可動シートが設けられ、バネ部材により可動シートをボールバルブ側に付勢することにより、その間にボールバルブが保持される。この構成により、ボールバルブが固定シート及び可動シートに常時接触するため、シール性が確保されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭57−114068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来技術では、ボールバルブが可動シート及び固定シートと常時接触・摺動しているため、これらの構成要素間に常に摩擦(フリクション)が生じ、各構成要素の磨耗や耐久性の問題がある。また、ボールバルブをバネ部材により押さえているため、押さえ荷重がそのまま耐振性に影響していた。
【0005】
こうした問題に対処するため、固定シートを省略して、弁閉時のみボールバルブが可動シートに着座するように構成することが考えられる。また、このような構成において、可動シートとボールバルブとの間のシール性を担保するため、可動シートをその軸線方向に対して直交する方向に変位可能に構成し、可動シートに調芯機能を持たせることが考えられる。
【0006】
一方、不要物(例えば、燃焼生成物)を含むガスを流す流路を開閉する流路開閉弁(例えば、EGRバルブ)の場合、不要物が可動シートの摺動部の周辺に堆積し、その摺動性を低下させ、この結果、上述した可動シートの調芯機能が低下することで、シール性が確保されにくくなることが懸念される。
【0007】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、弁体とシートとの間の摩擦に起因する磨耗を低減でき、耐振性を向上することが可能であり、しかも弁体とシートとの間のシール性を有効に確保することが可能な流路開閉弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明に係る流開閉弁は、シャフトを介して回動可能に設けられた弁体と、前記弁体を収容するバルブ室を有するボディ本体と、前記弁体が着座するシート面を有する可動シートと、を備え、前記弁体は、弁閉状態において前記シート面に当接する球面形状部を有し、前記シャフトは、その軸線が前記球面形状部の曲率中心から外れた位置で前記弁体に取り付けられ、前記ボディ本体において、前記可動シートを基準として前記弁体とは反対側には、前記可動シートに対向するシート対向部が設けられ、前記可動シートには、前記シート対向部側に向かって突出するとともに前記シート対向部に対して当接する第1環状側部突起が設けられ、前記シート対向部には、前記可動シート側に向かって突出するとともに前記可動シートの前記第1環状側部突起に対して摺接する第2環状側部突起が設けられ、前記第1環状側部突起と前記第2環状側部突起との摺動部は、前記弁体と前記シート面との接触部よりも外側に位置することを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、弁体と可動シートとの常時接触がないため、弁体及び可動シートの磨耗を低減できるとともに、耐振性への影響を小さくすることができる。また、可動シートとシート対向部とは、第1及び第2環状側部突起の端面同士で摺接し、その摺動面積が小さいため、可動シートがその軸線に対して直交する方向に変位する際の摺動部での摺動抵抗を低減することができ、可動シートの調芯機能を好適に発揮させることができる。よって、リークの発生を有効に防止することが可能となる。またさらに、可動シートとシート対向部との摺動部が、弁閉状態における弁体と可動シートとの接触部よりも外側にあるため、可動シートはシート対向部により安定的に支持され、弁体が可動シートに着座する際、可動シートが傾くことがなく、リークの発生を有効に防止することが可能となる。
【0010】
上記の流路開閉弁において、前記第1環状側部突起又は前記第2環状側部突起よりも内側の位置に、前記シート対向部と前記可動シートの一方に、前記可動シート側又は前記シート対向部側に向かって突出するとともに他方に対して近接する環状壁部が設けられるとよい。
【0011】
上記の構成によれば、環状壁部が障壁として機能するため、ガス流入口を通して流入したガスが上記摺動部の内周側に到達しにくい。従って、ガスに含まれる不要物が、可動シートとシート対向部との摺動部の内周側に堆積しにくくなるので、摺動部での摺動性がより好適に確保される。
【0012】
上記の流路開閉弁において、前記可動シートの外周部には、外方に突出するともに前記バルブ室の内周面に対して近接する環状外周突起が設けられとよい。
【0013】
上記の構成によれば、環状外周突起が障壁として機能するため、弁体側からのガスが上記摺動部の外周側に到達しにくい。従って、ガスに含まれる不要物が、可動シートとシート対向部との摺動部の外周側に堆積しにくくなるので、摺動部での摺動性がより好適に確保される。
【0014】
上記の流路開閉弁において、前記第1環状側部突起又は前記第2環状側部突起前記環状壁部との間に、内側環状空間が形成されるとよい。
【0015】
上記の構成によれば、内側環状空間と環状壁部とにより構成される内側のラビリンス構造により、不要物を含むガスが上記摺動部の内周側により到達しにくくなるので、上記摺動部の内周側への不要物の堆積がより効果的に抑制される。
【0016】
上記の流路開閉弁において、前記環状外周突起と前記シート対向部との間であって前記第1環状側部突起の外方に、外側環状空間が形成されるとよい。
【0017】
上記の構成によれば、外側環状空間と環状外周突起とにより構成される外側のラビリンス構造により、不要物を含むガスが上記摺動部の外周側により到達しにくくなるので、上記摺動部の外周側への不要物の堆積がより効果的に抑制される。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る流路開閉弁によれば、弁体とシートとの間の摩擦に起因する磨耗を低減でき、耐振性を向上することが可能であり、しかも弁体とシートとの間のシール性を有効に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る流路開閉弁の一部断面斜視図である。
図2図2Aは、図1におけるIIA−IIA線での断面図であり、図2Bは、弁開状態でのボールバルブ及びその周辺部位を示す断面図である。
図3図3Aは、互いの軸線が一致した状態における可動シート及びシート対向部とその周辺部位を示す一部省略拡大断面図であり、図3Bは、互いの軸線がずれた状態における可動シート及びシート対向部とその周辺部位を示す一部省略拡大断面図である。
図4図4Aは、可動シート及びシート対向部の第1変形例を示す一部省略拡大断面図であり、図4Bは、可動シート及びシート対向部の第2変形例を示す一部省略拡大断面図であり、図4Cは、可動シート及びシート対向部の第3変形例を示す一部省略拡大断面図であり、図4Dは、可動シート及びシート対向部の第4変形例を示す一部省略拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る流路開閉弁について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る流路開閉弁10の一部断面斜視図である。流路開閉弁10は、ボディ本体12と、該ボディ本体12の内部に回動自在に設けられる弁体14と、弁体14に当接する可動シート16と、可動シート16を付勢する弾性体18と、ボディ本体12の上部に設けられ、弁体14に対して回転駆動力を付与する駆動力伝達機構20とを有する。
【0022】
本実施形態に係る流路開閉弁10は、排気ガス循環用バルブ(EGRバルブ)10Aとして構成されており、ボディ本体12の下部には、気化した燃料を含む排気ガスが供給されるガス流入口22が設けられ、ガス流入口22の弁体14を間にした反対側には、排気ガスを導出して内燃機関(図示せず)へと循環させるガス流出口24が設けられている。
【0023】
ボディ本体12において、ガス流入口22とガス流出口24とは略一直線上に設けられる。ボディ本体12には、ガス流入口22とガス流出口24との間にバルブ室26が形成され、このバルブ室26の内部に球状の弁体14が回動自在に配設される。弁体14において、上部及び下部は平面状に形成され、上部及び下部を除いた部分の外周面は球面形状部30として構成されており、弁体14は、この球面形状部30の一部(シール面)で可動シート16に当接する。
【0024】
なお、弁体14は、可動シート16に当接する部分(シール面)が球面に形成されていれば、全体が球状でなくてもよく、例えば、弁体14において、可動シート16に対向する側とは反対側を平面状に切り取った形状でもよく、あるいは、可動シート16に当接するシール面を外周部に有する円盤状の弁体として構成されてもよい。
【0025】
弁体14の下部には、第1シャフト32の上端部が連結固定され、弁体14の上部には、第2シャフト34の下端部が連結固定されている。第1シャフト32は、ボディ本体12の下部に装着・固定された軸受36により軸線A1を中心として回転自在に支持されている。第2シャフト34は、ボディ本体12の上部に装着・固定された軸受38により軸線A1を中心として回転自在に支持されている。すなわち、第1シャフト32及び第2シャフト34は、同一の軸線A1を中心として回転する。軸線A1は、可動シート16の軸線Cに直交する直線と平行である。
【0026】
ここで、図1中、可動シート16の軸線Cは、ガス流入口22の中心と、ガス流出口24の中心とを通る直線である。また、矢印X方向は、軸線Cに沿う方向であり、矢印Z方向は、X方向に直交する方向であって第1シャフト32及び第2シャフト34の軸線A1に沿う方向(図1で上下方向)であり、矢印Y方向は、X方向及びZ方向に直交する方向である。
【0027】
第1シャフト32及び第2シャフト34の軸線A1の位置は、その軸線A1と平行でかつ球面形状部30の曲率中心(ほぼ球状の弁体14の場合、その中心)を通る軸線A2から偏心した位置に設定されている。すなわち、軸線A1は、弁体14の軸線A2に対して所定距離だけ離間して設定されている。このため、弁体14は、軸線A2から偏心した位置に設定された軸線A1を中心として回動(揺動)するようにバルブ室26内に設置されている。
【0028】
駆動力伝達機構20は、上述した第2シャフト34と、第2シャフト34の上端部に連結される回転ヨーク40と、ボディ本体12の上部に連結され、回転ヨーク40を介して第2シャフト34を回転駆動させる駆動源42とを含む。
【0029】
第2シャフト34の上端部は、回転ヨーク40の略中央部に挿通されてナット44を締め付けることによって固定されている。駆動源42は、例えば、通電作用下に回転駆動するステッピングモータやロータリーアクチュエータからなり、その回転駆動力が回転ヨーク40を介して第2シャフト34へと伝達されることにより、第2シャフト34に連結された弁体14が軸線A1を中心として回動動作する。この場合、弁体14の下部に連結された第1シャフト32は、軸受36の支持作用下に弁体14と一体となって回転する。
【0030】
図2Aは、図1におけるIIA−IIA線での断面図である。図1及び図2Aに示すように、弁体14とガス流入口22との間には、バルブ室26の一部を構成するシート収納部46が形成されており、このシート収納部46にリング状の可動シート16が配置され、この可動シート16のX1方向側に弾性体18を支持するストッパ56が配置され、可動シート16のX2方向側に可動シート16が着座するシート対向部58が配置されている。
【0031】
可動シート16は、軸線C方向に規制された範囲内で変位可能であり、弾性体18によって弁体14とは反対側(X2方向側)に付勢されている。可動シート16の最外周部とシート収納部46の内周面との間にはクリアランス47が設けられている。これにより、可動シート16は、軸線C方向と直交する方向に変位可能にボディ本体12内に配置されている。すなわち、可動シート16は、YZ平面内で変位可能である。このような可動シート16の変位機能により、後述する調芯機能が発揮される。
【0032】
可動シート16には、その中心部に軸線C方向に貫通する連通孔17が形成されるとともに、連通孔17のX1方向側には、弁体14が着座するシート面48が形成されている。このシート面48は、可動シート16の軸線Cを中心に延在する円環状の面であって、当該軸線Cに対して所定角度だけ傾斜した面である。すなわち、シート面48は、X1方向側に向かうにつれて内径が直線的に拡大するように形成されている。
【0033】
可動シート16の外周部には、半径方向外方に突出して周方向に延在する環状外周突起50が設けられている。この環状外周突起50の外径は、シート収納部46の内径よりも小さく設定されおり、これにより、上述したクリアランス47が形成されている。また、環状外周突起50のX2方向側には、可動シート16、シート対向部58及びシート収納部46によって囲まれた外側環状空間49が形成されている。
【0034】
環状外周突起50とシート収納部46との間に形成されたクリアランス47は、円環状に延在する隙間である。クリアランス47は、可動シート16の調芯機能を発揮するための可動範囲を確保できる範囲で、弁体14側からのガスの外側環状空間49への流入を極力抑制できるような小さい隙間に設定するとよい。
【0035】
可動シート16の、シート面48が設けられた側と反対側(X2方向側)の側面には、軸線C方向に突出して周方向に延在する第1環状側部突起(環状側部突起)52が設けられている。この第1環状側部突起52の内径D2は、連通孔17の内径よりも大きく、第1環状側部突起52の外径は、環状外周突起50の外径よりも小さい。第1環状側部突起52の端面は、軸線Cに対して垂直な平面である。
【0036】
図示例のストッパ56は、シート収納部46のX1方向側に形成されたストッパ装着部57に固定して装着されたリング状の部材であり、X2側の端面で弾性体18のX1方向側の端部に当接することで、軸線C方向の弾性体18の変位を規制している。なお、ストッパ56は、リング状に限らず、ストッパ装着部57の周方向に間隔を置いて配置された複数のストッパ片により構成されるものであってもよい。
【0037】
弾性体18は、X1方向側の端部でストッパ56のX2方向側の側面に当接し、X2方向側の端部で可動シート16の環状外周突起50のX1方向側の側面に当接し、可動シート16をX2方向側に弾性的に付勢している。図1等に示した一構成例に係る弾性体18は、ウェーブワッシャとして構成されている。このウェーブワッシャは、周方向の位置によって軸線方向の位相が異なるように形成されたリング状の部品であり、バネとして機能する。なお、弾性体18は、ウェーブワッシャに限られず、コイルバネ等の他のバネ材でもよく、あるいは、可動シート16を弁体14とは反対側に付勢する機能を有するゴム弾性体からなるものでもよい。
【0038】
シート対向部58は、シート収納部46のX2方向側に形成されたシート装着部60に装着して固定されている。一構成例に係るシート対向部58は、リング状であり、その中心部には軸線方向に貫通する連通孔62が設けられている。当該連通孔62は、可動シート16の連通孔17と連通しており、連通孔17とともにガスの流路を構成するものである。図示例において、連通孔62の内径は、可動シート16の連通孔17の内径とほぼ同じに設定されている。
【0039】
シート対向部58の可動シート16側(X1方向側)の側部には、軸線方向に突出し、かつ周方向に延在する第2環状側部突起(環状側部突起)64が設けられている。第2環状側部突起64の内径D3は、連通孔62の内径よりも大きく、図示例では、第1環状側部突起52の内径D2とほぼ同じである。第2環状側部突起64の端面は、軸線Cに対して垂直な平面である。
【0040】
図2Aに示すように、弾性体18により可動シート16がシート対向部58側に付勢されることで、第1環状側部突起52の端面は、第2環状側部突起64の端面に当接している。上述したように、可動シート16の外周部(環状外周突起50)とシート収納部46との間には、所定のクリアランス47が形成されているため、可動シート16は、軸線Cに直交するYZ平面内で、シート対向部58の第2環状側部突起64に対して摺動しながら変位することが可能である。
【0041】
また、上述したように、第1環状側部突起52と第2環状側部突起64はともに周方向に延在する環状に形成され、かつ第1環状側部突起52の端面と第2環状側部突起64の端面はともに軸線Cに対して垂直な面である。このため、当該端面は周方向の全周にわたって互いに密着し、これによって可動シート16とシート対向部58との間のシールがなされる。
【0042】
図2Aに示すように、第1環状側部突起52の内径D2と第2環状側部突起64の内径D3は、弁閉状態における弁体14と可動シート16との接触部51が描く円(接触線)の直径D1よりも大きく設定されている。従って、可動シート16とシート対向部58との摺動部70は、弁閉状態における弁体14と可動シート16との接触部51よりも外側(半径方向外側)にある。
【0043】
シート対向部58には、さらに、第2環状側部突起64よりも半径方向内側に、可動シート16側に向かって突出し、かつ周方向に延在する環状壁部66が設けられ、第2環状側部突起64と環状壁部66との間に、内側環状空間67が形成されている。環状壁部66の内径は、連通孔62の内径と同じである。環状壁部66の外径は、第1環状側部突起52及び第2環状側部突起64の内径D2、D3よりも小さく設定されている。
【0044】
環状壁部66の長さは、環状壁部66の端部の位置が第2環状側部突起64よりも可動シート16側(X1方向側)に位置し、かつ、環状壁部66の端部と可動シート16との間に環状のクリアランス68が形成されるように設定されている。
【0045】
クリアランス68は、円環状に延在する隙間であり、図示例では、第1環状側部突起52と第2環状側部突起64との摺動部(接触部)70よりも弁体14側(X1方向側)に位置している。クリアランス68は、ガスの内側環状空間67側への流入を極力抑制できる程度に小さく設定するとよい。
【0046】
なお、図示例では、シート対向部58とボディ本体12とは別部品として構成したが、シート対向部58に相当する形状部分をボディ本体12の内部に一体的に形成してもよい。
【0047】
本実施形態に係る流路開閉弁10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、ここでは、図1及び図2Aに示されるように、ガス流入口22とガス流出口24との間の流路が弁体14によって遮断された弁閉状態を初期位置として説明する。
【0048】
図2Aに示すように、初期位置では、弁体14の側面に設けられた球面形状部30が可動シート16に設けられたシート面48に当接している。すなわち、弁体14が可動シート16に着座し、可動シート16の連通孔17が閉塞された状態となっている。上述したように、可動シート16は、軸線C方向と直交する方向に変位可能となっているので、弁体14が可動シート16に着座する際に、製作誤差や組付け誤差に起因するズレが弁体14と可動シート16との間にあっても、可動シート16の位置が自動的に調整される。すなわち、可動シート16が自動的に調芯されて、球面形状部30とシート面48とが周方向の全周で密着するので、その間のシール性が確実に確保される。
【0049】
また、弾性体18により可動シート16がシート対向部58側に付勢されることで、可動シート16とシート対向部58との間のシールがなされている。このように、弁体14と可動シート16との間、及び可動シート16とシート対向部58との間がシールされることで、ガス流入口22とガス流出口24との間の流路が遮断されている。従って、ガス流入口22には図示しないガスが供給されているが、当該ガスは、可動シート16よりも下流側には流入しない。
【0050】
このような弁閉状態から、図1に示す駆動源42が駆動すると、駆動源42の回転駆動力が回転ヨーク40を介して第2シャフト34に伝達され、この第2シャフト34に連結された弁体14が軸線A2から偏心した位置に設定された軸線A1を中心として回転し、図2Bに示す状態となる。このように、偏心した軸線A1を中心に弁体14が回転するとき、弁体14は可動シート16に対して後退する方向(X1方向)に変位する。
【0051】
この場合、可動シート16は弾性体18によりシート対向部58側に付勢されているため、可動シート16の弁体14への追従性は強制的に切断され、弁体14は、X1方向側への変位に伴って可動シート16から離間する。この結果、可動シート16と弁体14との間に隙間が形成され、弁開状態となる。このような弁開状態では、ガス流入口22に供給された図示しないガスは、可動シート16と弁体14との間に形成された隙間を流れ、ガス流出口24から流出して図示しない内燃機関へと導入される。
【0052】
上述したように、本実施形態に係る流路開閉弁10(EGRバルブ10A)によれば、弁体14が偏心した回動軸心を中心として回動(揺動)し、弁体14が可動シート16に着座することで弁閉状態となり、弁体14が可動シート16から離間することで弁開状態となる。このような構成では、従来の固定シートは不要であり、弁体14が可動シート16に接触しているのは、可動シート16に着座している弁閉状態のときだけであり、弁体14と可動シート16との常時接触がないため、弁体14及び可動シート16の磨耗を低減することができるとともに、回動トルクの増大を防止できる。
【0053】
また、弁閉状態にある弁体14が可動シート16から離間する方向に揺動する際、可動シート16の弁体14への追従性は、弁体14とは逆方向への弾性体18の付勢力により強制的に切断され、特に、弁体14が可動シート16から離れるとき、可動シート16に追従されることなく離れられるので、弁体14と可動シート16間の磨耗を低減できる。さらに、弁体14が可動シート16から離間している間は、可動シート16からの振動が弁体14に伝わらないため、耐振性への影響を小さくすることができる。
【0054】
またさらに、可動シート16がその軸線C方向と直交する方向に変位可能に配置されているので、弁体14が可動シート16に着座する際に、製作誤差や組付け誤差に起因するズレが弁体14と可動シート16との間にあっても、可動シート16が弁体14の表面(球面形状部30)に追従して軸線と直交する方向に動くことが可能であるため、可動シート16の位置が自動的に調整される。すなわち、可動シート16の調芯機能が発揮されることで上記誤差を許容できる。このため、弁閉状態において弁体14と可動シート16とが確実に密着し、良好なシール性を確保できる。
【0055】
ところで、EGRバルブ10Aに流れる排気ガスには、燃焼生成物(例えば、炭素の微粒子)が含まれている。このような燃焼生成物が可動シート16とシート対向部58との摺動部70に堆積すると、摺動性が低下し、その結果、上述した可動シート16の調芯機能が低下することで、シール性が確保されにくくなることが懸念される。
【0056】
そこで、本実施形態では、可動シート16とシート対向部58との摺動部70の内周側と外周側にそれぞれラビリンス構造を設けることで、摺動部70側へのガスの流入を抑制する。これにより、図3Aに示すように、燃焼生成物72が摺動部70の周辺に堆積すること防止または抑制している。
【0057】
具体的には、摺動部70の内周側には、内側環状空間67が形成され、さらにその内側に環状壁部66が設けられることで、内側のラビリンス構造が構成されるため、ガス流入口を通して流入したガスGは、環状壁部66の内周面に堆積する一方、環状壁部66によって内側環状空間67側への流入が阻止または抑制されるので、上記摺動部70の内周側に到達しにくい。
【0058】
また、摺動部70の外周側には外側環状空間49が形成され、さらに外側環状空間49と弁体14側の空間との間には環状外周突起50が設けられることで、外側のラビリンス構造が構成されるため、弁体14側からのガスGは、環状外周突起50のX1側の側面に堆積する一方、環状外周突起50によって外側環状空間49への流入が阻止または抑制されるので、上記摺動部70の外周部に到達しにくい。
【0059】
このように、摺動部70の内周側及び外周側にガスGが到達しにくいことから、ガスGに含まれる燃焼生成物72が、摺動部70の内周側及び外周側に堆積しにくくなる。これにより、摺動部70での摺動性が担保され、可動シート16の円滑な調芯機能が好適に発揮される。
【0060】
可動シート16とシート対向部58とは、互いの端面の全体で摺接するのではなく、第1環状側部突起52と第2環状側部突起64の端面同士で摺接するので、可動シート16とシート対向部58の接触面積が小さいものとなっている。このため、可動シート16が軸線C(図2A等参照)に対して直交する方向に変位する際の摺動部70での摺動抵抗を低減することができ、可動シート16の調芯機能をより好適に発揮させることができる。
【0061】
また、本実施形態では、可動シート16と環状壁部66との間に形成されたクリアランス68が、摺動部70よりもガスGの流れ方向の下流側(弁体14側)に位置しているので、クリアランス68を通してガスGが内側環状空間67に流入しても、ガスGは流れ方向を反転しなければ摺動部70側に流れない。このため、ガスGが摺動部70側へ到達しにくく、燃焼生成物72の堆積が効果的に抑制される。
【0062】
上述したように、可動シート16には第1環状側部突起52が設けられ、シート対向部58には第2環状側部突起64が設けられているので、第1及び第2環状側部突起52、64の外周側及び内周側に燃焼生成物72が堆積したとしても、図3Bに示すように、可動シート16が変位するたびに第1環状側部突起52と第2環状側部突起64が互いに摺動することにより、燃焼生成物72を剪断できる。従って、燃焼生成物72の固着化を有効に防止でき、結果として、可動シート16の調芯機能がより好適に発揮される。
【0063】
第1環状側部突起52及び第2環状側部突起64を設ける場合、可動シート16及びシート対向部58の位置によっては、弁体14が可動シート16に着座する際、可動シート16全体が傾くことで、弁閉状態でのシール性が確保されにくくなることが懸念される。そこで、図2Aに示したように、本実施形態では、可動シート16とシート対向部58との摺動部70を、弁閉状態における弁体14と可動シート16との接触部51よりも外側(半径方向外側)としている。
【0064】
この構成により、可動シート16はシート対向部58により安定的に支持され、弁体14が可動シート16に着座する際、可動シート16はシート対向部58に接触した状態を保持するので、可動シート16が傾くことがない。従って、弁閉状態における弁体14と可動シート16とのシール性が好適に確保され、リークの発生を有効に防止することが可能となる。
【0065】
次に、上述した流路開閉弁10における可動シート16及びシート対向部58について、いくつかの変形例を説明する。
【0066】
流路開閉弁10では、可動シート16及びシート対向部58に代えて、図4Aに示す可動シート16a及びシート対向部58aを採用してもよい。可動シート16aは、図2A等に示した可動シート16における第1環状側部突起52を、これよりも軸線方向に長い環状側部突起52aに置き換えた構成である。シート対向部58aは、シート対向部58における第2環状側部突起64を無くした構成である。
【0067】
図4Aに示す構成を採用した場合、燃焼生成物の剪断作用(図3B参照)は得られないが、図2A等に示した流路開閉弁10と同様に、燃焼生成物が摺動部70の周辺に堆積することを防止または抑制する作用は得られる。また、図4Aに示す構成においても、摺動部70の位置は、接触部51よりも外側にあるので、弁体14が可動シート16aに着座する際、可動シート16aが傾くことがなく、リークの発生を有効に防止できる。
【0068】
また、流路開閉弁10では、可動シート16及びシート対向部58に代えて、図4Bに示す可動シート16b及びシート対向部58bを採用してもよい。可動シート16bは、図3等に示した可動シート16における第1環状側部突起52を無くした構成である。シート対向部58bは、シート対向部58における第2環状側部突起64を、これよりも軸線方向に長い環状側部突起64aに置き換えた構成である。
【0069】
図4Bに示す構成を採用した場合、燃焼生成物の剪断作用は得られないが、図2A等に示した流路開閉弁10と同様に、燃焼生成物が摺動部70の周辺に堆積することを防止または抑制する作用は得られる。また、図4Bに示す構成においても、摺動部70の位置は、接触部51よりも外側にあるので、弁体14が可動シート16bに着座する際、可動シート16bが傾くことがなく、リークの発生を有効に防止できる。
【0070】
また、流路開閉弁10における可動シート16及びシート対向部58に代えて、図4Cに示す可動シート16c及びシート対向部58cを採用してもよい。可動シート16cは、図2A等に示した可動シート16に対して、シート対向部58cに向かって突出する環状壁部66aを追加した構成である。シート対向部58cは、シート対向部58における環状壁部66を無くした構成である。すなわち、図4Cに示す構成は、図2A等に示す構成において、環状壁部66をシート対向部58側から可動シート16側に配置変更した構成である。
【0071】
図4Cに示す構成を採用した場合でも、図2A等に示した流路開閉弁10とほぼ同様の作用効果が得られる。また、図4Cに示す構成においても、摺動部70の位置は、接触部51よりも外側にあるので、弁体14が可動シート16cに着座する際、可動シート16cが傾くことがなく、リークの発生を有効に防止できる。なお、図4Aまたは図4Bに示した構成において、シート対向部58a、58b側に設けられた環状壁部66を、可動シート16側に配置変更してもよい。
【0072】
また、流路開閉弁10におけるシート対向部58に代えて、図4Dに示すシート対向部58dを採用してもよい。シート対向部58dは、図2A等に示したシート対向部58における環状壁部66を無くした構成である。シート対向部58dに当接する可動シート16は、図2A等に示した可動シート16と同じである。
【0073】
図4Dに示す構成を採用した場合、環状壁部66が無いため、摺動部70の内周側に燃焼生成物が堆積しやすいが、上述した剪断作用(図3B参照)により燃焼生成物を剪断することができるため、燃焼生成物の固着化を有効に防止できる。また、図4Dに示す構成においても、摺動部70の位置は、接触部51よりも外側にあるので、弁体14が可動シート16に着座する際、可動シート16が傾くことがなく、リークの発生を有効に防止できる。
【0074】
なお、本発明は、EGRバルブに限定されるものではなく、燃焼生成物等の不要物を含むガスを流す流路を開閉する他の流路開閉弁に適用することができる。
【0075】
上記において、本発明について好適な実施の形態を挙げて説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改変が可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0076】
10…流路開閉弁 10A…EGRバルブ
12…ボディ本体 14…弁体
16、16a、16b、16c…可動シート
17…連通孔 22…ガス流入口
24…ガス流出口 26…バルブ室
30…球面形状部 48…シート面
52、52a…第1環状側部突起 58、58a〜58d…シート対向部
64、64a…第2環状側部突起 66、66a…環状壁部
図1
図2
図3
図4