(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面研削装置と研削液とを用いて研削前板状ガラス素材を研削加工する表面研削工程を含む製造工程を経て情報記録媒体用ガラス基板を製造する情報記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、
前記表面研削工程は、前記表面研削装置に設けられた第1研削部と第2研削部とで、前記研削前板状ガラス素材の第1面と、表面粗さ(Ra)が前記第1面とは異なる第2面とを研削するものであり、
前記表面研削装置として、第1研削部を有する上定盤と、その第1研削部と対向し第1研削部と互いに反対方向に相対回転可能な第2研削部を有する下定盤と、自転しながら下定盤の研削部を周方向に移動して公転し得るように前記上定盤と下定盤との夫々の研削部の間に回転可能に配設されて前記研削前板状ガラス素材を保持するキャリアとを備えたものを用い、前記上定盤と下定盤とは、前記第1面と前記第2面との前記表面粗さが互いに同じ前記研削前板状ガラス素材における前記第1面を前記第1研削部で研削し前記第2面を前記第2研削部で研削した場合に前記第1研削部の加工レートが前記第2研削部の加工レートよりも低くなるように構成されており、
前記第1面の被研削加工部と前記第2面の被研削加工部との平行度が所定以下、前記第1面の被研削加工部と前記第2面の被研削加工部とのそれぞれの表面の最大高さ(Rz)が所定以下、前記第1面の表面粗さよりも前記第2面の表面粗さが粗く、且つ、前記第1面の表面粗さ(Ra)と前記第2面の表面粗さ(Ra)とがそれぞれ所定の範囲内に形成された前記研削前板状ガラス素材の前記第1面と前記第2面とのうちで表面粗さ(Ra)が粗い方の前記第2面を前記表面研削装置における前記第1研削部及び前記第2研削部のうちの前記加工レートが低い側の前記第2研削部に、前記第1面を前記上定盤の第1研削部に、夫々対向させるようにして前記研削前板状ガラス素材を、前記第1研削部と第2研削部との間に配設するとともに前記キャリアに保持させ、その状態で、前記第1面と第1研削部との間、前記第2面と第2研削部との間、夫々に研削液を供給するようにし、前記第1研削部と前記第2研削部とで前記第1面と前記第2面とを略同じ量だけ研削して前記第1面と前記第2面との表面粗さ(Ra)が要求品質を満たすものにすることを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、表面研削工程前の研削前板状ガラス素材の第1面と第2面とを同時に研削する表面研削装置を用いて行なう場合、上記特許文献1に記載のように第1面と第2面とを粗面に形成しておくことで、加工レートを向上させることができても、第1面と第2面との加工レートが一致しない場合が多く、例えば上向きに配置した第1面側が下向きに配置した第2面よりも削り量が多くなる。尚、本現象の原因については、更に後述する。
【0006】
このように、例えば上向きに配置した面が下向きに配置した面よりも削り量が多くなると、上向きに配置した面を所定の加工レートで削ると、下向きに配置した面の削り量が確保できないことになる。そのため、低加工レートの面の表面粗さ(Ra)が要求品質に達することができず、後工程でも所定の表面粗さ(Ra)にし難くなる。その結果、製造されたガラス基板を情報記録媒体として使用すると、正常なデータの読み書きが実現できないおそれがある。
【0007】
この場合に、加工途中で上下面を反転させる方法や予め研削前板状ガラス素材の厚さを厚くしておく方法も考えられるが、いずれも加工時間の増大によるコストアップになってしまう。
【0008】
両面の削り量を一致させることができれば、両面を共に高品質に加工することが可能となり、情報記録媒体として使用した場合に正常なデータの読み書きが異常なく実現できる。更に、両面の削り量を一致させることで、板状ガラス素材を限界まで削減できるとともに、表面加工時間、研削液使用量及び加工盤の研削部の磨耗を抑制でき、コストダウンに繋がる。そのため、従来から、表面研削装置を用いて両面の研削を行なう際に両面の削り量を一致させるようにして行なえるようにすることが望まれている。
【0009】
本発明は、第1面と第2面とを表面研削装置を用いて同時に研削する際に両面の削り量を略一致させることができる
情報記録媒体用ガラス基板の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一態様に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法は、表面研削装置と研削液とを用いて研削前板状ガラス素材を研削加工する表面研削工程を含む製造工程を経て情報記録媒体用ガラス基板を製造する情報記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、前記表面研削工程は、前記表面研削装置に設けられた第1研削部と第2研削部とで、前記研削前板状ガラス素材の第1面と、表面粗さ(Ra)が前記第1面とは異なる第2面とを研削するものであり、
前記表面研削装置として、第1研削部を有する上定盤と、その第1研削部と対向し第1研削部と互いに反対方向に相対回転可能な第2研削部を有する下定盤と、自転しながら下定盤の研削部を周方向に移動して公転し得るように前記上定盤と下定盤との夫々の研削部の間に回転可能に配設されて前記研削前板状ガラス素材を保持するキャリアとを備えたものを用い、前記上定盤と下定盤とは、前記第1面と前記第2面との前記表面粗さが互いに同じ前記研削前板状ガラス素材における前記第1面を前記第1研削部で研削し前記第2面を前記第2研削部で研削した場合に前記第1研削部の加工レートが前記第2研削部の加工レートよりも低くなるように構成されており、前記第1面の被研削加工部と前記第2面の被研削加工部との平行度が所定以下、前記第1面の被研削加工部と前記第2面の被研削加工部とのそれぞれの表面の最大高さ(Rz)が所定以下、前記第1面の表面粗さよりも前記第2面の表面粗さが粗く、且つ、前記第1面の表面粗さ(Ra)と前記第2面の表面粗さ(Ra)とがそれぞれ所定の範囲内に形成された前記研削前板状ガラス素材の前記第1面と前記第2面とのうちで表面粗さ(Ra)が粗い方の
前記第2面を前記表面研削装置における前記第1研削部及び前記第2研削部のうちの
前記加工レートが低い側の
前記第2研削部に、前記第1面を前記上定盤の第1研削部に、夫々対向させるようにして前記研削前板状ガラス素材を、前記第1研削部と第2研削部との間に配設するとともに前記キャリアに保持させ、その状態で、前記第1面と第1研削部との間、前記第2面と第2研削部との間、夫々に研削液を供給するようにし、前記第1研削部と前記第2研削部とで前記第1面と前記第2面とを略同じ量だけ研削して前記第1面と前記第2面との表面粗さ(Ra)が要求品質を満たすものにすることを特徴とする情報記録媒体用ガラス基板の製造方法である。
【0020】
この構成によれば、表面研削装置と研削液とを用いて研削加工を行なう表面研削工程で、研削前板状ガラス素材の第1面と第2面とを、略同じ量だけ研削でき、両面を共に高品質に加工することが可能となり、情報記録媒体として使用した場合に正常なデータの読み書きが実現できる情報記録媒体用ガラス基板を得ることができる。また、両面の削り量を一致させることで、研削前板状ガラス素材を限界まで削減できるとともに、表面加工時間、研削液使用量及び加工盤の研削部の磨耗を抑制でき、コストダウンを図ることも可能になる。
【0021】
他の一態様
の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法は、表面研削装置と研削液とを用いて研削前板状ガラス素材を研削加工する表面研削工程を含む製造工程を経て情報記録媒体用ガラス基板を製造する情報記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、前記表面研削工程は、前記表面研削装置に設けられた第1研削部と第2研削部とで、前記研削前板状ガラス素材の第1面と、表面粗さ(Ra)が前記第1面とは異なる第2面とを研削するものであり、前記表面研削装置として、第1研削部を有する上定盤と、その第1研削部と対向し第1研削部と互いに反対方向に相対回転可能な第2研削部を有する下定盤と、自転しながら下定盤の研削部を周方向に移動して公転し得るように前記上定盤と下定盤との夫々の研削部の間に回転可能に配設されて前記研削前板状ガラス素材を保持するキャリアとを備えたものを用い、前記上定盤と下定盤とは、前記第1面と前記第2面との前記表面粗さが互いに同じ前記研削前板状ガラス素材における前記第1面を前記第1研削部で研削し前記第2面を前記第2研削部で研削した場合に前記第1研削部の加工レートが前記第2研削部の加工レートよりも低くなるように構成されており、前記第1面の被研削加工部と前記第2面の被研削加工部との平行度が15μm以下、前記第1面の被研削加工部と前記第2面の被研削加工部とのそれぞれの表面の最大高さ(Rz)が20μm以下、前記第1面の表面粗さよりも前記第2面の表面粗さが粗く、且つ、前記第1面の表面粗さ(Ra)が0.1μm以上、2.0μm以下で前記第2面の表面粗さ(Ra)が0.1μm以上、3.0μm以下の範囲であって前記第1面の表面粗さ(Ra)の1.2倍以上、3.0倍以下になるように形成された前記研削前板状ガラス素材の前記第1面と前記第2面とのうちで表面粗さ(Ra)が粗い方の前記第2面を前記表面研削装置における前記第1研削部及び前記第2研削部のうちの前記加工レートが低い側の前記第2研削部に、前記第1面を前記上定盤の第1研削部に、夫々対向させるようにして前記研削前板状ガラス素材を、前記第1研削部と第2研削部との間に配設するとともに前記キャリアに保持させ、その状態で、前記第1面と第1研削部との間、前記第2面と第2研削部との間、夫々に研削液を供給するようにして研削することを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、表面研削装置の上定盤の第1研削部と下定盤の第2研削部とで、研削前板状ガラス素材の第1面と第2面とを夫々、略同じ量だけ研削でき、両面を共に高品質に加工することが可能になる。
他の一態様の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法は、表面研削装置と研削液とを用いて研削前板状ガラス素材を研削加工する表面研削工程を含む製造工程を経て情報記録媒体用ガラス基板を製造する情報記録媒体用ガラス基板の製造方法であって、前記表面研削工程は、前記表面研削装置に設けられた第1研削部と第2研削部とで、前記研削前板状ガラス素材の第1面と、表面粗さ(Ra)が前記第1面とは異なる第2面とを研削するものであり、前記表面研削装置として、第1研削部を有する上定盤と、その第1研削部と対向し第1研削部と互いに反対方向に相対回転可能な第2研削部を有する下定盤と、自転しながら下定盤の研削部を周方向に移動して公転し得るように前記上定盤と下定盤との夫々の研削部の間に回転可能に配設されて前記研削前板状ガラス素材を保持するキャリアとを備えたものを用い、前記上定盤と下定盤とは、前記第1面と前記第2面との前記表面粗さが互いに同じ前記研削前板状ガラス素材における前記第1面を前記第1研削部で研削し前記第2面を前記第2研削部で研削した場合に前記第1研削部の加工レートが前記第2研削部の加工レートよりも低くなるように構成されており、前記第1面の表面粗さよりも前記第2面の表面粗さが粗くなるように形成された前記研削前板状ガラス素材の前記第1面と前記第2面とのうちで表面粗さ(Ra)が粗い方の前記第2面を前記表面研削装置における前記第1研削部及び前記第2研削部のうちの前記加工レートが低い側の前記第2研削部に、前記第1面を前記上定盤の第1研削部に、夫々対向させるようにして前記研削前板状ガラス素材を、前記第1研削部と第2研削部との間に配設するとともに前記キャリアに保持させ、その状態で、前記第1面と第1研削部との間、前記第2面と第2研削部との間、夫々に研削液を供給するようにし、前記第1研削部と前記第2研削部とで前記第1面と前記第2面とを略同じ量だけ研削して前記第1面と前記第2面との表面粗さ(Ra)が0.13μm以下になるようにすることを特徴とする。
他の一態様では、上述の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法において、前記第1研削部及び前記第2研削部は、固定砥粒を備えていることを特徴とする。
他の一態様では、上述の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法において、前記固定砥粒は、ダイヤモンド砥粒であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、表面研削装置を用いて第1面と第2面とを同時に研削する際に両面の削り量を略一致させることができる
情報記録媒体用ガラス基板の製造方法を提供し得たものである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態の研削前板状ガラス素材の一部の断面の模式図、
図2は、本発明の情報記録媒体用ガラス基板の製造方法に用いる表面研削装置の模式図である。
【0026】
本発明の製造方法により製造される情報記録媒体用ガラス基板は、0.8インチ型ディスク(内径6mm、外径21.6mm、板厚0.381mm)、1.0インチ型ディスク(内径7mm、外径27.4mm、板厚0.381mm)、1.8インチ型ディスク(内径12mm、外径48mm、板厚0.508mm)などの仕様で製造される。また、2.5インチ型ディスクや3.5インチ型ディスクとして製造してもよい。
【0027】
本実施形態に係る製造方法は、板状ガラス成形工程、表面研削工程(ラッピング)、切り出し成形工程、表面研磨工程を備えている。尚、以下の説明において、表面研削工程(後述の第1表面研削工程)で研削加工する前の板状のガラス素材を研削前板状ガラス素材とし、表面研削工程を経た後のものを単に板状ガラス素材とする。
【0028】
(板状ガラス成形工程)
本実施形態に係る情報記録媒体用ガラス基板の製造方法においては、まず、溶融ガラスを材料として、ダイレクトプレス法、フロート法、ダウンドロー法、リドロー法、フュージョン法など、公知の成形方法を用いて、研削前板状ガラス素材を製造する。
【0029】
これらのうち、ダイレクトプレス法は、溶解したガラスを直接、目的とするガラス成形品に成形できるので、同一の形状を有するガラス物品を多量に生産する場合に好適であり、情報記録媒体用ガラス基板製造の主流となっている。ダイレクトプレス法では、溶融ガラスをプレス成形型に供給し、このガラスが軟化状態にある間にプレス成形型でプレスして研削前板状ガラス素材を成形できる。この実施形態では、このダイレクトプレス法によって、本発明の研削前ガラス板状ガラス素材1(ガラス基板ブランクス)を得るようにしている。
【0030】
この研削前板状ガラス素材1は、
図1に示すように、図の上側の第1面1aと下側の第2面1bとの夫々には、表面研削工程で研削加工される被研削部11を備えている。この被研削部11は、後述するように切り出し成形工程でカットされる中心部及び外周縁部を除く部分である。
【0031】
第1面1aと第2面1bとの夫々の被研削部11は、互いに表面粗さ(Ra)が異なるように構成されている。この実施形態では、第1面1aは、被研削部11を含むほぼ全体に渡って、表面粗さ(Ra)が0.1μm以上、2.0μm以下に形成されている。 一方、第2面1bは、被研削部11を含むほぼ全体に渡って、表面粗さ(Ra)が0.1μm以上、3.0μm以下の範囲で、且つ、上記第1面1aの表面粗さ(Ra)の1.2倍以上、3.0倍以下になるように形成され、第1面1aよりも表面粗さが粗くなるように形成されている。
【0032】
表面粗さ(Ra)が0.1μmよりも小さい場合は、表面研削加工での加工レートが悪くなるとともに、プレス成形型からの離型性が悪くなり、一方、表面粗さ(Ra)が3.0μmを超えると、研削後の表面粗さ(Ra)を良好にし難くなる。従って、表面粗さ(Ra)を、上記のように0.1μm以上、3.0μm以下の範囲にしておくのが好ましい。
【0033】
又、この実施形態では、第1面1aと第2面1bとの夫々の被研削部11の最大高さ(Rz)を、20μm以下になるように、又、平行度を15μm以下になるようにしている。最大高さ(Rz)が、20μmを越えると、研削後の表面粗さ(Ra)を良好にし難いからであり、又、平行度が15μmを越えると、同様に、研削後の表面粗さ(Ra)を良好にし難いからである。従って、第1面1aと第2面1bとの夫々の被研削部11の最大高さ(Rz)が20μm以下に、平行度が15μm以下に、夫々なるようにするのが好ましい。
【0034】
尚、表面粗さ(Ra)、最大高さ(Rz)は、夫々、JIS B 0601−2001に規定された算術平均粗さ、最大高さである。
【0035】
又、この実施形態では、第1面1aと第2面1bとの夫々の表面粗さ(Ra)を、プレス成形型によるプレス成形時に形成するようにしている。
【0036】
尚、プレス成形型でプレス成形した研削前板状ガラス素材1の第1面1a及び第2面1bの表面粗さ(Ra)は、プレス成形型に設けられた上型、下型夫々の押圧成形面の表面粗さ(Ra)よりもやや小さくなるので、上型、下型夫々の押圧成形面の表面粗さ(Ra)を、プレス成形しようとする研削前板状ガラス素材1の第1面1a及び第2面1bの表面粗さ(Ra)よりもやや大きく設定しておくのが好ましい。
【0037】
そして、このプレス成形型によるプレス成形時に、研削前板状ガラス素材1の上面を、上記上型の押圧成形面を転写させるようにして第1面1aを形成し、研削前板状ガラス素材1の下面を、上記下型の押圧成形面を転写させるようにして第2面1bを形成する。
【0038】
尚、板状ガラスの材質としては、アモルファスガラスやガラスセラミクス(結晶化ガラス)を利用できる。板状ガラスの材料としては、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラス等を用いることができる。特にアモルファスガラスとしては、化学強化を施すことができ、また主表面の平坦性及び基板強度において優れた磁気ディスク用基板を供給することができるという点で、アルミノシリケートガラスを好ましく用いることができる。
【0039】
又、この実施形態では、第1面1aと第2面1bとの夫々の表面粗さ(Ra)を、プレス成形型によるプレス成形時に形成するようにしているが、この形態のものに限らず、適宜変更できる。例えばプレス成形型によるプレス成形後に、ショットブラスト等の機械的手段、或いは、化学的手段により、第1面1aと第2面1bとの夫々を粗面化して上記表面粗さ(Ra)に形成する。或いは、ダイレクトプレス法以外の上記方法で得た板状のガラス素材を、ショットブラスト等の機械的手段、或いは、化学的手段により、第1面1aと第2面1bとの夫々を粗面化して上記表面粗さ(Ra)に形成するようにしてもよい。ただし、プレス成形型によるプレス成形時に形成すれば、簡単に第1面1aと第2面1bとの夫々を粗面化して上記表面粗さ(Ra)に形成でき、その点で好ましい。
【0040】
(表面研削工程)
次いで、研削前板状ガラス素材1の第1面1a及び第2面1bを研削(ラッピング)加工してガラス母材を得る。研削加工は、例えば
図2に示すような両面を同時に研削する表面研削装置100と、研削液(クーラント)とを用いて行う。
【0041】
この表面研削装置100は、上定盤101と、下定盤111と、上定盤101と下定盤111との間に配設され研削前板状ガラス素材1を保持するキャリア120とを備えている。上定盤101は、下面側に、固定砥粒(ダイヤモンド砥粒)を備えた第1研削部102を有する。そして、この上定盤101は、この実施形態では、その全体が上下方向に移動可能且つ回転可能に配設され、これにより、第1研削部102が上下方向に移動可能且つ回転可能とされている。
【0042】
下定盤111は、上面側に、第1研削部102と対向し固定砥粒(ダイヤモンド砥粒)を備えた第2研削部102を有する。そして、この下定盤111は、この実施形態では、その全体が第2研削部112が第1研削部102と反対方向に回転可能に配設され、これにより、第2研削部112が第1研削部102と反対方向に回転可能とされている。
【0043】
キャリア120は、円板状の複数のものから構成され、研削前板状ガラス素材1を保持するガラス素材保持部としての複数のガラス素材保持孔121を備えているとともに、外周に全周に渡って形成されたキャリア用ギア124を備えている。尚、
図3では、キャリア用ギア124を、キャリア120の外周の一部にだけ表して他を省略している。又、ガラス素材保持孔121を、1つのキャリア120について3つだけ表して(研削前板状ガラス素材1を入れた状態で示す)そのキャリア120の他のガラス素材保持孔121を省略しているとともに、他のキャリア120のガラス素材保持孔121を省略している。
【0044】
そして、キャリア120は、キャリア用ギア124が上記下定盤111に設けられた内側の第1ギア122に噛合するとともに、下定盤111に設けられた外側の第2ギア123に噛合され、下定盤111回転に伴い、キャリア120自体が回転しながら、下定盤111の第2ギア123に沿って移動して下定盤111の第2研削部102の周方向に沿って移動して公転する。
【0045】
この表面研削装置100を用いて研削前板状ガラス素材1の表面を研削する場合は、
図2、
図3に示すように各ガラス素材保持孔121に複数の研削前板状ガラス素材1を入れる。その際、研削前板状ガラス素材1の第1面1aを上にして上定盤101の第1研削部102と対向するようにして入れる。
【0046】
そして、この状態で、上定盤101を、第1研削部102が研削前板状ガラス素材1の第1面1aに当接する程度まで下方側に移動させ、上定盤101及び下定盤111を回転させる。
【0047】
又、研削液を、上定盤101の第1研削部102と第1面1aとの間、下定盤111の第2研削部112と第2面1bとの間、夫々に供給する。これにより、上定盤101の第1研削部102で第1面1aを、下定盤111の第2研削部112で第2面1bを、夫々、同時に研削できる。
【0048】
その際、第1研削部102により第1面1aを研削する研削量が、第2研削部112により第2面1bを研削する研削量よりも多い。これは、研削前板状ガラス素材1の位置が定盤101、111に対して特に垂直方向に不安定であること、また研削液の流れ方が研削前板状ガラス素材1の第1面1aと第2面とで完全に同一状態にならないこと等が原因であると考えられる。
【0049】
そのため、この実施形態では、上述のように、予め第1面1aよりも第2面1bの表面粗さ(Ra)を粗く形成した研削前板状ガラス素材1を研削する。これにより、第1研削部102により第1面1aを研削する研削量と、第2研削部112により第2面1bを研削する研削量とをほぼ同じにできる。これにより、第1面1a及び第2面1bを平坦な主表面に形成でき、平坦な主表面を有する板状ガラス素材を得ることができる。
【0050】
(切り出し成形工程)
次に、ダイヤモンドカッタを用いてガラス母材を切断し、このガラス母材から円盤状に切り出す切り出し成形工程を実施する。この切り出し成形工程では、円筒状のダイヤモンドドリルを用いて、この板状ガラス素材の中心部に内孔を形成し、円環状の板状ガラス素材を成形する(コアリング)。そして内周端面および外周端面をダイヤモンド砥石によって研削し、所定の面取り加工を施す(フォーミング、チャンファリング)。
【0051】
尚、この実施形態では、得られた円環状の板状ガラス素材の両主表面について、第2表面研削工程を施す。この第2表面研削工程を製造工程に含ませる場合は、上記表面研削工程が第1表面研削工程を構成する。この第2表面研削工程は、第1表面研削工程の表面研削量に較べて少ない。従って、例えば板状ガラス素材の第1面と第2面とがほぼ同じ表面粗さ(Ra)であっても、先の第1表面研削工程に用いた表面研削装置100を用いて行う場合に、第1研削部102により第1面1aを研削する研削量と、第2研削部112により第2面1bを研削する研削量とをほぼ同じ範囲でおこなうことができる。
【0052】
このような第2表面研削工程を行うことにより、前工程である切り出し成形工程において主表面に形成された微細な凹凸形状を予め除去しておくことができ、後述の主表面研磨工程を短時間で完了させることができるようになる。
【0053】
(主表面研磨工程)
第2表面研削工程を終えた板状ガラス素材は、好ましくは複数に分けて第1面及び第2面の主表面が研磨される。例えば、第1、第2研磨工程の2回にわけて主表面を研磨することにより、徐々に板状ガラス素材の仕上がり精度を高めることが好ましい。その場合、第1研磨工程は、前述の表面研削工程において主表面に残留したキズや歪みの除去を主たる目的とし、第2研磨工程は、主表面を鏡面状に仕上げることを目的とする。また、第2研磨工程は、好ましくは、後述する形状矯正工程の後に施すことが好ましい。
【0054】
主表面研磨工程は、例えばいわゆるオスカー研磨方式で研磨することができる。研磨工程毎に、板状ガラス素材を洗浄することが好ましい。板状ガラス素材を洗浄する際には、洗浄槽に超音波を印加することが好ましい。
【実施例】
【0055】
以下に、具体的に実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明する。
【0056】
実施例1
溶融させたアルミノシリケートガラスを上型、下型を用いたダイレクトプレスによりディスク形状に成形し、直径67mm、厚さ1000μmの大きさの実施例1の研削前板状ガラス素材を得た。なお、アルミノシリケートガラスとしては、SiO
2:58重量%〜75重量%、Al
2O
3:5重量%〜23重量%、Li
2O:3重量%〜10重量%、Na
2O:4重量%〜13重量%を主成分として含有する化学強化ガラスを使用した。ガラス転移点は、約500℃、歪点は、約350℃であった。
【0057】
実施例1の研削前板状ガラス素材1の第1面1aと第2面1bの表面粗さ(Ra)は、
図4に示すように、夫々、1.0μm、1.5μmで、第1面1aと第2面1bの最大高さ(Rz)は、14μmであった。又、平行度は、10μmであった。尚、この実施形態では、表面粗さ(Ra)及び最大高さ(Rz)は、粗さ測定器である商品名:サーフコム((株)東京精密製)で測定した。
【0058】
実施例2
実施例1に用いた上型及び下型と表面粗さが異なる上型及び下型を用いて実施例2の研削前板状ガラス素材を得た。その他は、実施例1の場合と同条件とした。
【0059】
実施例2の研削前板状ガラス素材1の第1面1aと第2面1bの表面粗さ(Ra)は、
図4に示すように、夫々、1.0μm、2.6μmで、第1面1aと第2面1bの最大高さ(Rz)は、15μmであった。
【0060】
このようにして、第1面の表面粗さ(Ra)が0.1μm以上、2.0μm以下で、第2面の表面粗さ(Ra)が0.1μm以上、3.0μm以下で、且つ、第1面の表面粗さ(Ra)の1.2倍以上、3.0倍以下の範囲になるようにし、又、その表面の最大高さ(Rz)が20μm以下で、平行度が15μm以下(実施例1)になるようにした本発明の実施例1及び実施例2を得た。
【0061】
比較例1〜比較例5
比較例1〜比較例5として、実施例1に用いた上型及び下型と表面粗さが異なる上型及び下型を用いて、夫々、製造した。その他は、実施例1の場合と同条件とした。
【0062】
比較例1の第1面1aと第2面1bの表面粗さ(Ra)は、
図4に示すように、夫々、0.4μm、0.4μmで、第1面1aと第2面1bの最大高さ(Rz)は、12μmであった。
【0063】
比較例2の第1面1aと第2面1bの表面粗さ(Ra)は、
図4に示すように、夫々、1.0μm、1.0μmで、第1面1aと第2面1bの最大高さ(Rz)は、14μmであった。
【0064】
比較例3の第1面1aと第2面1bの表面粗さ(Ra)は、
図4に示すように、夫々、1.0μm、2.6μmで、第1面1aと第2面1bの最大高さ(Rz)は、36μmであった。
【0065】
比較例4の第1面1aと第2面1bの表面粗さ(Ra)は、
図4に示すように、夫々、1.3μm、3.5μmで、第1面1aと第2面1bの最大高さ(Rz)は、17μmであった。
【0066】
比較例5の第1面1aと第2面1bの表面粗さ(Ra)は、
図4に示すように、夫々、1.0μm、1.5μmで、第1面1aと第2面1bの最大高さ(Rz)は、14μmであった。又、平行度は、30μmであった。
【0067】
そして、上記実施例1、実施例2、比較例1〜5夫々の研削前板状ガラス素材を、上記表面研削装置100と研削液とを用い、第1面と第2面との合計の研削量(研削厚)が140μmになるまで研削し、加工時間、加工レート、第1面及び第2面それぞれの削り量、研削後の第1面と第2面との内の表面粗さ(Ra)の大きい方の値夫々について測定し、
図4に示した。
【0068】
結果は、実施例1及び2では、第1面と第2面の加工レート及び研削量が接近し、加工後の表面粗さ(Ra)が、0.13μm以下になった。又、加工時間も7(min)以下になった。加工後の表面粗さ(Ra)が、0.13μm以上になると、研磨工程等の後工程で所望の表面粗さ(Ra)にし難くなるため、上記表面研削装置100による加工後の表面粗さ(Ra)が、0.13μm以下にしておくのが好ましい。そこで、この実施形態では、加工後の表面粗さ(Ra)が、0.13μm以下になった場合を良(
図4では◎で記す)とした。
【0069】
これに対して、第1面と第2面との表面粗さ(Ra)が同じ比較例1及び2では、第1面の加工レート及び研削量が第2面のそれに較べて大きく、加工後の表面粗さ(Ra)が0.13μm以下にならなかった。又、加工時間も実施例1及び実施例2に較べて長かった。又、表面粗さ(Ra)が1.0μm以下の比較例1では、加工時間が実施例2に較べて長くなった。
【0070】
又、最大高さ(Rz)が20μm以上の比較例3(この比較例3では36μm)では、第1面と第2面の加工レート及び研削量は、実施例1及び実施例2に較べて大きな差はなかったが、加工後の表面粗さ(Ra)が0.87μmと最も悪かった。
【0071】
又、第2面の表面粗さ(Ra)が3.0μm以上の比較例4(この比較例4では3.5μm)においても、第1面と第2面の加工レート及び研削量は、実施例1及び実施例2に較べて大きな差はなかったが、加工後の表面粗さ(Ra)が0.20μmであった。これは、
図5に示すように、表面粗さ(Ra)が大きくなると、削り量を多くしなければ加工後の表面粗さ(Ra)を小さくできなくなるからである。
【0072】
又、平行度が15μm以上の比較例4(平行度30μm)でも、加工後の表面粗さ(Ra)が0.13μm以下にならなかった。
【0073】
以上のように、研削前ガラス素材の第1面と第2面との表面粗さがほぼ同じものを同時に研削する際に第1面と第2面とで研削量が異なる表面研削装置を用いてそれらの第1面と第2面とを研削する場合、本発明の第1面と第2面との表面粗さが異なる研削前板状ガラス素材は適したものになり、両面を共に高品質に加工することが可能となり、情報記録媒体として使用した場合に正常なデータの読み書きが異常なく実現できる。また、両面の削り量を一致させることで、板状ガラス素材を限界まで削減できるとともに、表面加工時間、研削液使用量及び加工盤の研削部の磨耗を抑制でき、コストダウンを図ることも可能になる。
【0074】
尚、上記実施形態で示した製造工程は、例示であり、それに限定されず、例えば表面研削工程として、第2表面研削工程を省略して第1表面研削工程のみで構成してもよい。