(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一中間点は、前記回転軸から前記前側プロペラの半径の70〜95%の位置に配置され、前記第二中間点は、前記回転軸から前記後側プロペラの半径の70〜95%の位置に配置されている、ことを特徴とする請求項1に記載の二重反転プロペラ。
前記前側プロペラは、前記翼先端部におけるレーキ幅が、前記前側プロペラの直径に対して3〜15%の大きさを有し、前記後側プロペラは、前記翼先端部におけるレーキ幅が、前記後側プロペラの直径に対して3〜15%の大きさを有し、前記前側プロペラの前記翼先端部におけるレーキ幅は、前記前側プロペラの前記翼先端部におけるレーキ量と前記前側プロペラのレーキ量の最小値との差分であり、前記後側プロペラの前記翼先端部におけるレーキ幅は、前記後側プロペラの前記翼先端部におけるレーキ量と前記後側プロペラのレーキ量の最小値との差分である、ことを特徴とする請求項1に記載の二重反転プロペラ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載された二重反転プロペラでは、前側プロペラの先端部を折り曲げるように後方に傾斜させていることから、折り曲げた部分で流れに乱れが生じやすくなり、さらに翼自体に応力集中を起こしやすくなるという問題があった。また、後側プロペラは翼全体を直線的に傾斜させており、翼先端を回り込む流れを弱めて推進効率を改善させるような形状にはなっていなかった。なお、翼先端において翼面の正圧側と負圧側の圧力差から翼先端を回り込む流れが生じるが、その流れは正圧側と負圧側の圧力差を小さくさせ推進効率低下に繋がることとなる。
【0007】
本発明は、上述した問題点に鑑み創案されたものであり、エロージョンの発生を抑制しつつ推進効率を向上させることができる二重反転プロペラ及び船舶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、回転軸の前後に配置された前側プロペラと後側プロペラとを互いに逆回転させて推進力を得る二重反転プロペラにおいて、前記前側プロペラは、レーキを、前記回転軸と翼先端部との間に配置された第一中間点から該翼先端部までの範囲に渡って後方に湾曲させて形成し、前記後側プロペラは、レーキを、前記回転軸と翼先端部との間に配置された第二中間点から該翼先端部までの範囲に渡って前方に湾曲させて形成し、前記後側プロペラの半径を前記前側プロペラの半径より小さく形成し
、さらに、前記前側プロペラが前記回転軸から前記第一中間点までの範囲に渡ってレーキが前記回転軸に対して後方に傾斜するとともに前記後側プロペラが前記回転軸から前記第二中間点までの範囲に渡ってレーキが前記回転軸に対して前方に傾斜している、又は、前記前側プロペラが前記回転軸から前記第一中間点までの範囲に渡ってレーキが前記回転軸に対して前方に傾斜するとともに前記後側プロペラが前記回転軸から前記第二中間点までの範囲に渡ってレーキが前記回転軸に対して後方に傾斜している、ことを特徴とする二重反転プロペラが提供される。
【0009】
また、本発明によれば、回転軸の前後に配置された前側プロペラと後側プロペラとを互いに逆回転させて推進力を得る二重反転プロペラ
であって、前記前側プロペラは、レーキを、前記回転軸と翼先端部との間に配置された第一中間点から該翼先端部までの範囲に渡って後方に湾曲させて形成し、前記後側プロペラは、レーキを、前記回転軸と翼先端部との間に配置された第二中間点から該翼先端部までの範囲に渡って前方に湾曲させて形成し、前記後側プロペラの半径を前記前側プロペラの半径より小さく形成し
、さらに、前記前側プロペラが前記回転軸から前記第一中間点までの範囲に渡ってレーキが前記回転軸に対して後方に傾斜するとともに前記後側プロペラが前記回転軸から前記第二中間点までの範囲に渡ってレーキが前記回転軸に対して前方に傾斜している、又は、前記前側プロペラが前記回転軸から前記第一中間点までの範囲に渡ってレーキが前記回転軸に対して前方に傾斜するとともに前記後側プロペラが前記回転軸から前記第二中間点までの範囲に渡ってレーキが前記回転軸に対して後方に傾斜している、ことを特徴とする二重反転プロペラを搭載したことを特徴とする船舶が提供される。
【0010】
上述した二重反転プロペラ及び船舶において、前記後側プロペラの半径は、前記前側プロペラの半径の90〜95%の大きさであってもよい。
【0011】
前記第一中間点は、前記回転軸から前記前側プロペラの半径の70〜95%の位置に配置され、前記第二中間点は、前記回転軸から前記後側プロペラの半径の70〜95%の位置に配置されていてもよい。
【0012】
前記前側プロペラは、前記翼先端部におけるレーキ幅が、前記前側プロペラの直径に対して3〜15%の大きさを有し、前記後側プロペラは、前記翼先端部におけるレーキ幅が、前記後側プロペラの直径に対して3〜15%の大きさを有していてもよい。
【発明の効果】
【0015】
上述した本発明に係る二重反転プロペラ及び船舶によれば、前側プロペラのレーキを翼先端部で後方に湾曲させていることから、チップボルテックスキャビテーションの流れを後方に移動させることができ、その分だけ後側プロペラの半径を大きくすることができる。また、本発明では、後側プロペラのレーキを翼先端部で前方に湾曲させていることから、後側プロペラの半径をより大きくすることができる。したがって、本発明によれば、チップボルテックスキャビテーションと干渉させることなく、後側プロペラの半径を大きくすることができ、推進効率を向上させることができる。
【0016】
また、本発明では、前側プロペラのレーキを連続的に滑らかに湾曲させたことから、レーキ変化部で流れに乱れが生じにくく、翼自体に生じる応力集中を低減することができる。また、前側プロペラ及び後側プロペラともに翼先端部を湾曲させたことから、翼先端を回り込む流れを弱める効果があり、翼面の正圧側と負圧側の圧力差を大きく保てることから推力の増加につながり推進効率を改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る二重反転プロペラの第一実施形態について
図1乃至
図3を用いて説明する。ここで、
図1は、二重反転プロペラの斜視図であり、(a)は第一実施形態、(b)は従来技術、を示している。
図2は、二重反転プロペラの側面図であり、(a)は第一実施形態、(b)は従来技術、を示している。
図3は、第一実施形態に係る二重反転プロペラのレーキ及び最大翼厚分布を示す図である。
【0019】
本発明の第一実施形態に係る二重反転プロペラ1は、
図1乃至
図3に示したように、回転軸Aの前後に配置された前側プロペラ2と後側プロペラ3とを互いに逆回転させて推進力を得る二重反転プロペラであって、前側プロペラ2は、レーキBを、回転軸Aと翼先端部21との間に配置された第一中間点22から翼先端部21までの範囲に渡って後方に湾曲させて形成し、後側プロペラ3は、レーキCを、回転軸Aと翼先端部31との間に配置された第二中間点32から翼先端部31までの範囲に渡って前方に湾曲させて形成し、後側プロペラ3の半径R3を前側プロペラ2の半径R2より小さく形成したものである。
【0020】
前記前側プロペラ2は、
図1(a)及び
図2(a)に示したように、回転軸Aを構成する略円筒形状の前側ボス部23と、前側ボス部23の周面上に均等な間隔で配置される複数の前側翼部24と、を有する。同様に、前記後側プロペラ3は、回転軸Aを構成する略円筒形状の後側ボス部33と、後側ボス部33の周面上に均等な間隔で配置される複数の後側翼部34と、を有する。
【0021】
後側ボス部33は、例えば、主機により回転される内側シャフト(図示せず)に接続されて所定の方向に回転駆動される。また、内側シャフトの一部の外周には外歯歯車が形成されている。前側ボス部23は、例えば、内側シャフトを挿通した外側シャフト(図示せず)に接続されており、外側シャフトの一部には内歯歯車が形成されている。さらに、内側シャフトの外歯歯車と外側シャフトの内歯歯車との間には、複数の遊星歯車が噛合されており、歯車機構が構成されている。
【0022】
かかる歯車機構により、内側シャフトの回転が反転されて外側シャフトに伝達され、外側シャフトは内側シャフトの回転と逆方向に回転する。かかる駆動機構によって、前側プロペラ2と後側プロペラ3とは互いに逆回転される。なお、かかる駆動機構は単なる一例であり、本発明では、従来から存在している二重反転プロペラの駆動機構を任意に適用することができる。
【0023】
一方、
図1(b)及び
図2(b)に示したように、従来技術における二重反転プロペラ101は、回転軸の前後に配置された前側プロペラ102と後側プロペラ103とを互いに逆回転させて推進力を得る二重反転プロペラであって、前側プロペラ102は、回転軸を構成する略円筒形状の前側ボス部123と、前側ボス部123の周面上に均等な間隔で配置された複数の前側翼部124と、を有し、後側プロペラ103は、回転軸を構成する略円筒形状の後側ボス部133と、後側ボス部133の周面上に均等な間隔で配置された複数の後側翼部134と、を有する。
【0024】
ここで、「レーキ」とは、翼部の径方向における各断面が回転軸Aの軸心方向の前方又は後方にずれていることを意味する。また、レーキ線と回転軸Aとの交点Sを基準にした場合の各断面中心のずれ量を「レーキ量」と称する。観念的には、各断面が前方にずれている場合には、翼部は前方に傾斜し、各断面が後方にずれている場合には、翼部は後方に傾斜した状態となる。
【0025】
図示した従来技術における二重反転プロペラ101では、前側プロペラ102の前側翼部124及び後側プロペラ103の後側翼部134において、レーキがない場合(レーキ量=0の場合)を示している。そして、後側プロペラ103の直径又は半径は、一般に、前側プロペラ102の直径又は半径の80〜90%の大きさに形成されている。
【0026】
一方、本発明の第一実施形態に係る二重反転プロペラ1は、
図3に示したように、レーキが設定されている。なお、
図3において、前側翼部24及び後側翼部34のレーキを破線で示し、最大翼厚分布を実線で表示している。
【0027】
具体的には、前側プロペラ2の前側翼部24におけるレーキBは、回転軸Aと翼先端部21との間に配置された第一中間点22から翼先端部21までの範囲に渡って後方に湾曲するように設定される。また、後側プロペラ3の後側翼部34におけるレーキCは、回転軸Aと翼先端部31との間に配置された第二中間点32から翼先端部31までの範囲に渡って前方に湾曲するように設定される。
【0028】
いま、図示したように、前側プロペラ2の半径をR2、第一中間点22の回転軸Aからの径方向距離をr2、翼先端部21におけるレーキ幅をL2とし、後側プロペラ3の半径をR3、第二中間点32の回転軸Aからの径方向距離をr3、翼先端部31におけるレーキ幅をL3とする。なお、レーキ幅の定義については後述する。
【0029】
第一中間点22及び第二中間点32は、レーキB,Cの設定方法が変更される部分である。例えば、第一中間点22は、回転軸Aから前側プロペラ2の半径R2の70〜95%の位置に配置され、第二中間点32は、回転軸Aから後側プロペラ3の半径R3の70〜95%の位置に配置される。すなわち、第一中間点22及び第二中間点32の径方向距離r2,r3は、0.7×R2≦r2≦0.95×R2、0.7×R3≦r3≦0.95×R3、の範囲に設定される。かかる範囲に、第一中間点22及び第二中間点32を設定することにより、翼先端部21,31において本発明に適した湾曲を容易に形成することができる。
【0030】
そして、前側プロペラ2(前側翼部24)は、回転軸Aから第一中間点22までの範囲に渡って、レーキBが回転軸Aに対して直角に形成され、後側プロペラ3(後側翼部34)は、回転軸Aから第二中間点32までの範囲に渡って、レーキCが回転軸Aに対して直角に形成されている。すなわち、第一中間点22及び第二中間点32の径方向距離r2,r3の範囲内における前側翼部24及び後側翼部34は、レーキがない状態(レーキ量=0の状態)に設定されている。
【0031】
一方、第一中間点22から翼先端部21の範囲におけるレーキBは後方に所定の曲率で湾曲され、第二中間点32から翼先端部31の範囲におけるレーキCは前方に所定の曲率で湾曲され、互いに向き合うように湾曲されている。
【0032】
例えば、前側プロペラ2(前側翼部24)は、翼先端部21におけるレーキ幅L2が、前側プロペラ2の直径(半径R2の二倍)に対して3〜15%の大きさを有し、後側プロペラ3(後側翼部34)は、翼先端部31におけるレーキ幅L3が、後側プロペラ3の直径(半径R3の二倍)に対して3〜15%の大きさを有する。かかる範囲に、レーキ幅L2,L3を設定することにより、翼先端部21,31において本発明に適した湾曲を容易に形成することができる。
【0033】
ここで、前側プロペラ2の翼先端部21におけるレーキ幅L2は、前側プロペラ2の翼先端部21におけるレーキ量と前側プロペラ2(前側翼部24)のレーキ量の最小値との差分であり、後側プロペラ3の翼先端部31におけるレーキ幅L3は、後側プロペラ3の翼先端部31におけるレーキ量と後側プロペラ3(後側翼部34)のレーキ量の最小値との差分である。したがって、回転軸Aから第一中間点22及び第二中間点32までの範囲に渡ってレーキしていない場合、すなわち、レーキ量の最小値=0の場合には、翼先端部21,31におけるレーキ幅L2,L3は、翼先端部21,31におけるレーキ量を意味する。なお、最小値を考慮する場合、レーキBでは後方側に向かって正の座標軸を取り、レーキCでは前方側に向かって正の座標軸を取るものとする。
【0034】
第一実施形態では、回転軸Aから第一中間点22及び第二中間点32までの範囲に渡って、レーキB,Cが回転軸Aに対して直角に形成されていることから、前側プロペラ2の翼先端部21におけるレーキ幅L2(レーキ量)は、第一中間点22と翼先端部21との軸方向距離に等しく、後側プロペラ3の翼先端部31におけるレーキ幅L3(レーキ量)は、第二中間点32と翼先端部31との軸方向距離に等しくなる。
【0035】
したがって、第一中間点22から翼先端部21の範囲におけるレーキBの曲率は、径方向距離(R2−r2)とレーキ幅L2とにより設定される先端領域内において、後方に湾曲するように任意に設定される。かかる曲率は、先端領域内で一定の曲率に設定してもよいし、翼先端部21に向かって徐々に曲率が大きくなるように設定してもよい。
【0036】
同様に、第二中間点32から翼先端部31の範囲におけるレーキCの曲率は、径方向距離(R3−r3)とレーキ幅L3とにより設定される先端領域内において、前方に湾曲するように任意に設定される。かかる曲率は、先端領域内で一定の曲率に設定してもよいし、翼先端部31に向かって徐々に曲率が大きくなるように設定してもよい。
【0037】
このように、前側プロペラ2のレーキBを翼先端部21で後方に湾曲させるとともに、後側プロペラ3のレーキCを翼先端部31で前方に湾曲させていることから、後側プロペラ3の半径R3を従来よりも大きくすることができる。具体的には、後側プロペラ3の半径R3は、前側プロペラ2の半径R2の90〜95%の大きさに設定することができる。すなわち、後側プロペラ3の半径R3は、0.9×R2≦R3≦0.95×R2の範囲内に設定することができる。
【0038】
次に、上述した第一実施形態に係る二重反転プロペラ1の作用及び効果について説明する。ここで、
図4は、第一実施形態に係る二重反転プロペラの作用及び効果を説明するための図であり、(a)は作用を示す概念図、(b)は効果を示す図、である。なお、
図4(a)において、従来技術における二重反転プロペラ101の形状及びチップボルテックスキャビテーションの流れを二点鎖線で表示している。
【0039】
図4(a)に示したように、前側プロペラ2のレーキBを翼先端部21で後方に湾曲させていることから、チップボルテックスキャビテーションの流れを後方に移動させることができ、その分だけZ軸方向(径方向)に従来の後側プロペラ103との間に余裕を形成することができ、Δr1だけ後側プロペラ3の半径R3を大きくすることができる。さらに、上述した第一実施形態では、後側プロペラ3のレーキCを翼先端部31で前方に湾曲させていることから、さらにΔr2だけ後側プロペラ3の半径R3を大きくすることができる。したがって、上述した第一実施形態に係る二重反転プロペラ1によれば、図示したように、チップボルテックスキャビテーションと干渉させることなく、後側プロペラ3の半径R3を従来の後側プロペラ103の半径よりも、Δr1+Δr2だけ大きくすることができる。
【0040】
また、第一実施形態に係る二重反転プロペラ1では、前側プロペラ2及び後側プロペラ3において、第一中間点22及び第二中間点32以下のレーキB,Cを回転軸Aに対して直角に形成し、翼先端部21,31を連続的に滑らかに湾曲させるようにしたことから、レーキ変化部で流れに乱れが生じにくく、前側翼部24及び後側翼部34に生じる応力集中を低減することができる。また、前側プロペラ2及び後側プロペラ3ともに翼先端部21,31を湾曲させたことから翼先端を回り込む流れを弱める効果があり、翼面の正圧側と負圧側の圧力差を大きく保てることから推力の増加につながり推進効率を改善することができる。
【0041】
図4(b)は、第一実施形態に係る二重反転プロペラ1及び従来技術による二重反転プロペラ101を、キャビテーション水槽内で一定の回転数で回転させながら、水槽内の流速を3〜7m/sの範囲で変化させて、プロペラ荷重度と効率との関係を計測した結果である。
図4(b)において、黒丸(●)は従来技術の試験結果、白丸(○)は第一実施形態の試験結果を示している。図示したように、第一実施形態に係る二重反転プロペラ1の効率は、プロペラ荷重度が大きくなるにつれて、従来技術による二重反転プロペラ101よりも高くなり、全体で約1.5%程度の効率の改善を把握することができた。
【0042】
続いて、本発明の他の実施形態に係る二重反転プロペラ1について説明する。ここで、
図5は、本発明に係る二重反転プロペラの他の実施形態を示す図であり、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態、を示している。また、
図6は、本発明に係る二重反転プロペラの他の実施形態を示す図であり、(a)は第四実施形態、(b)は第五実施形態、を示している。なお、上述した第一実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0043】
図5(a)に示した第二実施形態の二重反転プロペラ1は、前側プロペラ2が、回転軸Aから第一中間点22までの範囲に渡って、レーキBが後方に傾斜され、後側プロペラ3が、回転軸Aから第二中間点32までの範囲に渡って、レーキCが回転軸Aに対して直角に形成されたものである。すなわち、第一実施形態の二重反転プロペラ1において、前側プロペラ2(前側翼部24)の翼根部側(第一中間点22以下の部分)を後方に傾斜させたものである。
【0044】
このように、前側プロペラ2を後方に傾斜させることによって、翼先端部21の位置をさらに後方に配置することができ、チップボルテックスキャビテーションの流れをさらに後方に移動させることができ、後側プロペラ3の半径R3をさらに大きくすることができる。なお、ここでは、レーキBが直線的に傾斜される場合を図示したが、曲線的に傾斜されてもよい。
【0045】
図5(b)に示した第三実施形態の二重反転プロペラ1は、前側プロペラ2が、回転軸Aから第一中間点22までの範囲に渡って、レーキBが回転軸Aに対して直角に形成され、後側プロペラ3が、回転軸Aから第二中間点32までの範囲に渡って、レーキCが前方に傾斜されたものである。すなわち、第一実施形態の二重反転プロペラ1において、後側プロペラ3(後側翼部34)の翼根部側(第二中間点32以下の部分)を前方に傾斜させたものである。
【0046】
このように、後側プロペラ3を前方に傾斜させることによって、翼先端部31の位置をさらに前方に配置することができ、チップボルテックスキャビテーションの流れと干渉させずに後側プロペラ3の半径R3をさらに大きくすることができる。なお、ここでは、レーキCが直線的に傾斜される場合を図示したが、曲線的に傾斜されてもよい。
【0047】
また、第三実施形態のように、後側プロペラ3を前方に傾斜させた場合であっても、翼先端部34を連続的に滑らかに湾曲させていることから、第一実施形態と同様に、前側翼部24及び後側翼部34の応力集中を低減し、翼面の正圧側と負圧側の圧力差を大きく保つことができ、推進効率を改善することができる。
【0048】
図6(a)に示した第四実施形態の二重反転プロペラ1は、前側プロペラ2が、回転軸Aから第一中間点22までの範囲に渡って、レーキBが後方に傾斜され、後側プロペラ3が、回転軸Aから第二中間点32までの範囲に渡って、レーキCが前方に傾斜されたものである。かかる第四実施形態は、第二実施形態の前側プロペラ2と、第三実施形態の後側プロペラ3と、を組み合わせたものでもある。
【0049】
このように、前側プロペラ2を後方に傾斜させることによって、翼先端部21の位置をさらに後方に配置することができ、チップボルテックスキャビテーションの流れをさらに後方に移動させることができ、後側プロペラ3の半径R3をさらに大きくすることができる。加えて、
後側プロペラ3を前方に傾斜させることによって、翼先端部31の位置をさらに前方に配置することができ、チップボルテックスキャビテーションの流れと干渉させずに後側プロペラ3の半径R3をさらに大きくすることができる。
【0050】
図6(b)に示した第五実施形態の二重反転プロペラ1は、前側プロペラ2が、回転軸Aから第一中間点22までの範囲に渡って、レーキBが回転軸Aに対して前方に傾斜され、後側プロペラ3が、回転軸Aから第二中間点32までの範囲に渡って、レーキCが後方に傾斜されたものである。
【0051】
このように、前側プロペラ2を前方に傾斜させることによって、翼先端部21におけるレーキ幅L2を大きくすることができ、前側プロペラ2による推進効率を向上させることができる。さらに、前側プロペラ2の翼先端部21を後方に湾曲させていることから、チップボルテックスキャビテーションの流れを後方に移動させることができ、後側プロペラ3の半径R3を大きくすることもできる。
【0052】
また、後側プロペラ3を後方に傾斜させることによって、翼先端部31におけるレーキ幅L3を大きくすることができ、後側プロペラ3による推進効率を向上させることができる。さらに、後側プロペラ3の翼先端部31を前方に湾曲させていることから、チップボルテックスキャビテーションの流れと干渉させずに後側プロペラ3の半径R3を大きくすることもできる。
【0053】
上述した第一実施形態乃至第五実施形態に示したように、前側プロペラ2は、回転軸Aから第一中間点22までの範囲に渡って、レーキBが、回転軸Aに対して直角に形成又は前方若しくは後方に傾斜され、後側プロペラ3は、回転軸Aから第二中間点32までの範囲に渡って、レーキCが、回転軸Aに対して直角に形成又は前方若しくは後方に傾斜されている。また、第一中間点22以下のレーキBの形状及び第二中間点32以下のレーキCの形状は、必要に応じて任意の組合せを選択することができる。
【0054】
最後に、本発明に係る船舶の実施形態について説明する。ここで、
図7は、本発明に係る船舶の実施形態を示す全体構成図である。
【0055】
図7に示した船舶10は、船尾部に二重反転プロペラ1を有する。かかる二重反転プロペラ1は、
図1乃至
図3に示したように、回転軸Aの前後に配置された前側プロペラ2と後側プロペラ3とを互いに逆回転させて推進力を得る二重反転プロペラであって、前側プロペラ2は、レーキを、回転軸Aと翼先端部21との間に配置された第一中間点22から翼先端部21までの範囲に渡って後方に湾曲させて形成し、後側プロペラ3は、レーキを、回転軸Aと翼先端部31との間に配置された第二中間点32から翼先端部31までの範囲に渡って前方に湾曲させて形成し、後側プロペラ3の半径R3を前側プロペラ2の半径R2より小さく形成したものである。
【0056】
すなわち、
図7に示した船舶10は、推進器のプロペラに上述した本発明の第一実施形態に係る二重反転プロペラ1を搭載したものである。かかる構成により、前側プロペラ2により生じるチップボルテックスキャビテーションの流れを後方に移動させることができ、その分だけ後側プロペラ3の半径R3を大きくすることができる。また、後側プロペラ3のレーキを翼先端部31で前方に湾曲させていることから、後側プロペラ3の半径R3をより大きくすることができる。したがって、本実施形態に係る船舶10によれば、前側プロペラ2により生じるチップボルテックスキャビテーションと干渉させることなく、後側プロペラ3の半径R3を大きくすることができ、推進効率を向上させることができる。
【0057】
さらに、本実施形態に係る船舶10によれば、前側プロペラ2のレーキを連続的に滑らかに湾曲させたことから、レーキ変化部で流れに乱れが生じにくく、前側翼部24及び後側翼部34に生じる応力集中を低減することができる。また、前側プロペラ2及び後側プロペラ3ともに翼先端部21,31を湾曲させたことから、翼先端を回り込む流れを弱める効果があり、翼面の正圧側と負圧側の圧力差を大きく保てることから推力の増加につながり推進効率を改善することができる。
【0058】
また、図示した船舶10は、例えば、甲板上にデッキクレーン11や操舵室や居住区等の上部構造物12を有するバルクキャリアである。もちろん、本実施形態に係る船舶10は、バルクキャリア以外の船舶、例えば、タンカー、コンテナ船、フェリー等であってもよい。また、二重反転プロペラ1には、上述した第二実施形態乃至第五実施形態のものを搭載するようにしてもよい。
【0059】
本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。