【実施例1】
【0021】
図1及び
図3に示すように、第1実施例において、回転ダンパはハウジング10を具備し、このハウジング10は円筒形の本体10aと、この本体10aの開放端を塞ぐキャップ10bとから構成される。本体10a及びキャップ10bは共に適当な合成樹脂材料から一体成形品として成形され得るが、金属で構成してもよい。なお、
図1及び
図3には図示されないが、本体10aとキャップ10bとによって形成された室内には粘性流体が充填されている。
【0022】
回転ダンパは、合成樹脂材料或いは金属材料から形成されたシャフト11を具備する。シャフト11は、その一端部はハウジング本体10aの閉塞端の内面側の軸受部に回転自在に支持される。詳述すると、シャフト11は、ハウジング10のキャップ10bに形成された中央孔を貫通し、その一端部はハウジング10の室内に収容されるとともに、ハウジング本体10aの閉塞端の内面側のに装着された軸受11aによって回転自在に支持される。一方、キャップ10bの中央の外面側に形成された凹部にはボール軸受11bが設けられ、これによりシャフト11のスムーズな回転が保証される。また、キャップ10bの中央の内面側に形成された凹部内では、シャフト11を囲むようにOリングシール11cが設けられ、これによりシャフト11に沿うキャップ10bからの粘性流体の漏れが防止される。
【0023】
なお、本実施例において、回転ダンパは、ハウジング10が固定側、シャフト11が回転側として吊り戸等に取り付けられる。
【0024】
シャフト11にはスリーブ11dが被着され、このスリーブ11dの内面側にはシャフト11の軸方向に沿って少なくとも1つの凸条即ちキー11d−1が形成され、これらキーはシャフト11に形成されたキー溝11−1と係合され、これによりスリーブ要素11dはシャフト11と共に一体的に回転する。
【0025】
また、スリーブ11dのハウジング本体10aの閉塞端に近い側の端面には、端板11eがシャフト11を囲むように装着され、この端板11eの中心部からは3つの指状片11e
1が半径方向に伸延し、これら指状片11e
1はシャフト11の廻りに等間隔に配置される。また、指状片11e
1のそれぞれの先端部の近傍からはキャップ10b側に向かって軸方向に3つのばね保持用突出体11e
2が突出している。なお、
図1及び
図3では、3つのばね保持用突出体11e
2のうちの1つだけを見ることができる。
【0026】
シャフト11には端板11eに隣接した箇所に周囲溝が形成され、この周囲溝にはスナップリング11fが係合され、これによりスリーブ11e及び端板11eはシャフト11上で所定位置に保持される。
【0027】
回転ダンパは、ハウジング本体10aの閉塞端の壁部に一体化された第1トルク発生部材12を具備する。この第1トルク発生部材12は、ハウジング本体10aの閉塞端の内面からキャップ10b側に向かって、シャフト11の軸方向かつ中心軸線を中心とする円周方向に沿って同心状に複数列、ハウジング本体10aと一体的に突出形成された3つの環状突出部12aから成る。これら環状突出部12aはシャフト11の半径方向に等間隔で配置され、各環状突出部12aの表面は後述するようにトルク発生面として機能する。なお、本実施例にあっては、半径方向最外方の環状突出板12aと向かい合うハウジング本体10aの側壁の内面の部分もトルク発生面として機能する。なお、環状突出部12aは同心状に複数列設けた構成を説明したが、単数列であっても良い。
【0028】
なお、第1実施例では、第1トルク発生部材12を構成する環状突出部12aはハウジング本体10aの成形時に同時に形成されるが、必要に応じて、環状突出部12aを一体に備えた環状円板をハウジング本体とは別体に構成し、この別体品をハウジング本体10aの閉塞端の内面に接合してもよい。
【0029】
なお、先に述べたように、本実施例では、回転ダンパの使用時には、ハウジング10が固定側となるために、第1トルク発生部材12については、シャフト11の中心軸線方向に移動不可能な固定部材として定義することができる。
【0030】
回転ダンパは更にシャフト11と共に回転するようにスリーブ11d上に装着された第2トルク発生部材13を具備し、この第2トルク発生部材13は合成樹脂材料で成形される。
【0031】
図1ないし
図4に示すように、第2トルク発生部材13は、環状の中央本体13aと、この中央本体13aの外周部から半径方向に突出し、円周方向に等間隔に配置させられた3つの扇形突出部13bと、各扇形突出部13bの一方の側面部からハウジング本体10aの閉塞端内面側に向かって軸方向かつシャフト11の中心軸線を中心とする周方向に沿って同心状に一体的に突出形成された3つの弧状突出板13cと、中央本体13aと一体的に成形され、その廻りに等間隔で配置され、しかも端板11eの3つのばね保持用突出体11e
2と対応するように位置合わせさせられた3つのばね収納用筒部13dとから成る。また、各扇形突出部13bの他方の側面側、即ちキャップ10bと向かい合う側の面には、シャフト11の中心軸線と直交する面に対してキャップ10b側に所定の角度だけ傾斜された傾斜面、即ちガイド面13eが形成され、このガイド面13eは中央本体13aにまで及ぶように形成される。即ち、
図1及び
図3に示すように、傾斜面13eの半径方向内側縁はスリーブ11dの近傍まで達する。
【0032】
第2トルク発生部材13の中央本体13aの内径部には軸方向に沿って少なくとも1つの凸条即ちキー13a−1が形成され、これらキーはスリーブ11dに軸方向に形成されたキー溝11d−2と係合し、これにより第2トルク発生部材13はシャフト11及びスリーブ11dと共に一体的に回転される。また、スリーブ11dのキー溝11d−2の長さは、第2トルク発生部材13が第1トルク発生部材12に対して移動自在となるように、中央本体13aのキー13a−1の長さに比べて適当な充分な長さとされている。即ち、第2トルク発生部材13は、
図1に示す最左方位置と
図3に示す最右方位置との間で移動自在とされる。かくして、本実施例では、第2トルク発生部材13は、シャフト11の中心軸線方向に移動可能な可動部材として定義することができる。
【0033】
第2トルク発生部材13の各弧状突出板13cは第1トルク発生部材12の環状突出板12aの場合と同様に同心状に等間隔に複数列配置され、各弧状突出板13cの表面は後述するようにトルク発生面として機能する。第2トルク発生部材13が第1トルク発生部材12に向かって移動させられた際には、第1トルク発生部材12の環状突出板12aと第2トルク発生部材13の弧状突出板13cとは
図3に示すように互いに対向配置されて係合し合うことになる。すなわち、第2トルク発生部材13の弧状突出板13cの厚さは第1トルク発生部材12の環状突出板12aの厚さとほぼ同じであり、第2トルク発生部材13の弧状突出板13cの配置ピッチは第1トルク発生部材12の環状突出板12aの配置ピッチに対して半ピッチ分だけ外側にずらされ、このため
図3に示すような係合状態が得られる。なお、弧状突出板13cは同心状に複数列設けた構成を説明したが、単数列であっても良い。
【0034】
図1及び
図3に示すように、回転ダンパは更に第2トルク発生部材13の各ばね収納用筒部13dに収納されたは弾性手段即ち圧縮コイルばね14を具備し、各ばね収納用筒部13dから突出した圧縮コイルばね14の部分には、端板11eのばね保持用突出体11e
2が挿通させられ、これにより圧縮コイルばね14はばね収納用筒部13d内に拘束されることになる。圧縮コイルばね14は第2トルク発生部材13を第1トルク発生部材12から弾性的に引き離すように機能し、このため第2トルク発生部材13は
図1に示す最左方位置に通常は弾性的に留められる。
【0035】
なお、本実施例によれば、
図2及び
図4に示すように、第2トルク発生部材13においては、3つのガイド面即ち傾斜面13eと3つの圧縮コイルばね14とをシャフト11の廻りに交互に配置することにより、回転ダンパの全体をコンパクト構成とすることができる。
【0036】
回転ダンパは更にスリーブ11d上に設けられたガイド手段15を具備し、このガイド手段15はスリーブ11dに固着された環状部15a(
図1及び
図3参照)と、この環状部15aの外周部から半径方向に一体的に突出し、かつ該外周部の廻りに等間隔に配置させられた3つの矩形ガイド部材15bとから成る。これら矩形ガイド部材15bは第2トルク発生部材13の3つの扇形突出部13bのそれぞれと整列させられ(
図2及び
図4参照)、各矩形ガイド部材15bには矩形開口部が形成され、その矩形開口部の側辺に沿って一対のガイドレール15cが設けら、この一対のガイドレール15cによってガイド面15d(
図1及び
図3参照)が提供される。なお、本実施例では、ガイド面15dはシャフト11の中心軸線と直交する面に並行となっている。
【0037】
回転ダンパは更に第2トルク発生部材13の3つの扇形突出部13bとガイド手段15の3つの矩形ガイド部材15bとの間にそれぞれ挟持されたガバナ要素16を具備し、このガバナ要素16は遠心力感応体として機能させられ、高質量材料例えば鉄や鉛等の金属材料、高質量樹脂材或いはそれらの複合材料から形成される。
【0038】
本実施例では、各ガバナ要素即ち遠心力感応体16は上述した高質量材料からブロック体として一体加工されたものであり、このブロック体は第2トルク発生部材13のガイド面13eと摺動自在に係合させられる傾斜部16a(
図1及び
図3参照)と、ガイド部材15bの一対のガイドレール15cのガイド面15dと摺動自在に係合させられる肩部16b(
図1及び
図3参照)と、該一対のガイドレール16b間に挟まれて摺動自在に係合する凸部16cとから成る。
【0039】
次に、以上のように構成された回転ダンパの第1の実施例の作動について説明する。
【0040】
回転ダンパのシャフト11が非回転状態におかれているとき、
図1に示すように、圧縮コイルばね14の弾性力により、第2トルク発生部材13は第1トルク発生部材12から引き離されてガイド手段15側に押し付けられ、このとき第1トルク発生部材12の環状突出板12aのトルク発生面と第2トルク発生部材13の弧状突出板13cトルク発生面との対向面積は実質的にゼロ若しくはゼロに近い状態とされる。
【0041】
シャフト11がいずれかの回転方向に回転させられると、その回転状態が極めて小さいときは、遠心力感応体16はほとんど動くことがなく、従って、第1トルク発生部材12の環状突出板12aのトルク発生面と第2トルク発生部材13の弧状突出板13cのトルク発生面との対向面積がゼロ若しくはゼロに近い状態で回転する。シャフト11がいずれかの回転方向に回転させられて、その回転速度が徐々に速くなると、遠心力感応体16は遠心力を受け、このため遠心力感応体16は圧縮コイルばね14の弾性力に抗してシャフト11の半径方向外側に移動させられ、このとき遠心力感応体16の傾斜部16aと第2トルク発生部材13の傾斜面13eとの間で得られるカム作用により、第2トルク発生部材13は回転しつつ第1トルク発生部材12側に移動させられて、第1トルク発生部材12の環状突出板12aのトルク発生面と第2トルク発生部材13の弧状突出板13cのトルク発生面とが互いに対向することになる。その結果、双方のトルク発生面間に粘性流体を介した摩擦抵抗によりトルクが発生させられ、シャフト11には制動力が加わることになる。
【0042】
シャフト11の回転速度が大きくなるつれ、遠心力感応体16は次第に大きくなる遠心力を受け、第1トルク発生部材12に向かう第2トルク発生部材13の移動量も大きくなり、第1トルク発生部材12の環状突出板12aのトルク発生面と第2トルク発生部材13の弧状突出板13cのトルク発生面との間の対向面積も次第に増大し、双方のトルク発生面間に発生するトルク、即ちシャフト11に加わる制動力も増大する。シャフト11の回転速度が上限速度に到達すると、
図4に示すように、上述の対向面積は最大となり、その間に発生するトルク、即ちシャフト11に加わる制動力も最大となる。
【0043】
第2トルク発生部材13のガイド面13eが傾斜面として形成されているので、第1トルク発生部材12の環状突出板12aのトルク発生面と第2トルク発生部材13の弧状突出板13cのトルク発生面との間の対向面積の変化はシャフト11の回転速度に比例することになる。従って、双方のトルク発生面間に発生するトルク、即ちシャフト11に加わる制動力もシャフト11の回転速度に比例することになる。
【0044】
かくして、例えば、回転ダンパが吊り戸に組み込まれ(このときシャフト11が吊り戸の回転軸に連結され、ハウジング10が吊り戸に隣接した壁等に固着される)、しかも開放された吊り戸が重力によって閉鎖位置まで移動する場合を想定すると、吊り戸は重力加速度によって加速されるが、シャフト11に加わる制動力はシャフト11の回転速度に比例するので、吊り戸は一定の早さで閉鎖位置まで移動することになる。また、本件発明に係るこの第1実施例の装置を引き戸等に使用したときには、引き戸を急速に移動させる力が加えられたときには制動力が大きくなり、ゆっくり移動させる力が加えられたときには制動力が小さくなることになり、引き戸を開閉せしめる力の大きさにかかわらず、常に略一定の移動速度で開閉動作が行なわれることになる。
【0045】
以上の記載から明らかなように、本実施例にあっては、第1トルク発生部材12、第2トルク発生部材13、圧縮コイルばね14、ガイド手段15及び遠心力感応体16等によってトルク調整機構が構成され、このトルク調整機構により、第1トルク発生部材12の環状突出板12aのトルク発生面と第2トルク発生部材13の弧状突出板13cのトルク発生面との間の対向面積をシャフト11の回転速度に比例して変化させることが可能となる。
【0046】
第1実施例にあっては、第2トルク発生部材13に形成されたガイド面13eが傾斜面として形成され、またガイド手段15の一対のガイドレール15cのガイド面15dがシャフト11の中心軸線に対して直角な面とされているが、必要に応じて、
図5及び
図6に示すように、ガイド面13eをシャフト11の中心軸線と直交する面に沿ってシャフト11の半径方向に伸延する面として形成し、ガイド面15dを室の側壁内面に向かって外方に延びるにしたがってガイド面13eに近寄るような傾斜面として形成してもよい。また、
図7及び
図8に示すように、ガイド面13e及びガイド面15dの双方が室の側壁内面に向かって外方に延びるにしたがって互いに近寄るようになった傾斜面として形成されてもよい。
【0047】
次に、
図9及び
図10を参照して、本発明による速度依存型の回転ダンパの第2実施例について説明する。
【0048】
図9及び
図10に示すように、第2実施例でも、回転ダンパはハウジング20を具備し、このハウジング20は上述の第1実施例の場合と同様にハウジング本体20a及びキャップ20bから構成され、ハウジング本体20a及びキャップ20bも合成樹脂材料から一体成形品として成形され得るが、金属で構成してもよい。また、
図9及び
図10には図示されないが、ハウジング本体20aとキャップ20bとによって形成された室内には粘性流体が充填されている。
【0049】
また、上述の第1実施例の場合と同様に、回転ダンパはハウジング20に対して相対的に回転する合成樹脂材料或いは金属材料から形成されたシャフト21を具備する。シャフト21の一端部はハウジング本体20aの閉塞端内面の内側中心に装着されたスリーブ軸受21aによって回転自在に支持され、またシャフト21はキャップ20bの中心部の外側壁部に形成された凹部に設けられたボール軸受21bによっても回転自在に支持される。また、キャップ20bの中心部の内側壁部に形成された凹部にはシャフト21の回りにOリングシール21cが設けられ、これによりシャフト21の沿ったハウジング20からの粘性流体の漏れが防止される。
【0050】
なお、本実施例においても、回転ダンパは、ハウジング20が固定側、シャフト21が回転側として吊り戸等に取り付けられる。
【0051】
シャフト21にはスリーブ21dが被着され、このスリーブ21dも上述の第1実施例のスリーブ11dの場合と同様にシャフト21と共に一体的に回転させられるように該シャフト21上に装着される。
【0052】
回転ダンパは更に第1トルク発生部材22を具備し、この第1トルク発生部材22は、スリーブ21dの一端部、即ちハウジング本体20aの閉塞端内面側の一端部に隣接してシャフト21上に装着される。第1トルク発生部材22は管状部22aと、この管状部22aの一端部、即ちハウジング本体20aの閉塞端内面側の一端部から一体的に半径方向に展延する円板部22bと、この円板部22bの外方の一側面部からキャップ20b側に向かってしかもシャフト21の中心軸線に沿って同心状に一体的に突出させらた3つの環状突出板22cとから構成される。なお、環状突出板22cは、三重に設けた構成について説明したが、三重以外の複数列でもよく、一重であってもよい。また、第1トルク発生部材22は適当な合成樹脂材料から一体成形品として成形され得る。
【0053】
第1トルク発生部材22の環状部22aの内側壁部にはシャフト21の中心軸線方向に沿って少なくとも1つの凸条体即ちキー22a−1が形成され、これらキーはシャフト21にその中心軸線方向に沿って形成されたキー溝21−1と係合させられ、これにより第1トルク発生部材22はシャフト21と共に一体的に回転させられる。環状突出板22cは等間隔に配置され、各環状突出板22cの表面はトルク発生面として機能する。
【0054】
なお、第1トルク発生部材22については、シャフト21と共に回転することが可能であるが、その中心軸線方向に移動不動な固定部材として定義することができる。
【0055】
図9及び
図10に示すように、回転ダンパは更にハウジング20のハウジング本体20a内に設けられた第2トルク発生部材23を具備し、この第2トルク発生部材23も上述の第1実施例の第2トルク発生部材13の場合と同様に適当な合成樹脂材料から一体成形品として成形され得る。
【0056】
第2トルク発生部材23は、スリーブ21dを所定の遊びをもって取り囲む中央本体23aと、この中央本体23aの第1トルク発生部材22と対向する側面の外周側に形成された3つの環状突出板23bとから構成される。また、中央本体23aの他方の側面部、即ちキャップ20bと向かい合う側面部には、シャフト21の中心軸線と直交する面に対してキャップ20b側に所定の角度だけ傾斜させられた3つの傾斜面即ちガイド面23cが形成され、3つのガイド面23cはシャフト21の中心軸線方向の廻りに等間隔に配置される。なお、
図9及び
図10では、3つのガイド面23cのうちの2つのガイド面23c、即ち中央本体23aの直径方向に配置された2つのガイド面23cを見ることができる。
【0057】
第2トルク発生部材23の中央本体23aの外周面にはその中心軸線方向に沿って少なくとも1つの凸条即ちキー23a−1が形成され、これらキーはハウジング本体20aの内側壁部にその中心軸線方向に沿って形成されたキー溝10a−1と係合させられる。また、ハウジング本体20aのキー溝の長さは中央本体23aのキーの長さに比べて適当な充分な長さとされ、このため第2トルク発生部材23は第1トルク発生部材22に対して移動自在となっている。即ち、第2トルク発生部材23は
図9に示す最左方位置と
図10に示す最右方位置との間で移動自在とされる。かくして、本実施例では、第2トルク発生部材23については、シャフト21の中心軸線方向に移動可能な可動部材として定義することができる。
【0058】
第2トルク発生部材23の各弧状突出板23bは、第1トルク発生部材22の環状突出板22cの場合と同様に同心状に3つ等間隔に配置され、各弧状突出板23bの表面はトルク発生面として機能する。第2トルク発生部材23が第1トルク発生部材22に向かって移動させられた際には、第1トルク発生部材22の環状突出板22cと第2トルク発生部材23の弧状突出板23bとは
図10に示すように互いに対向配置されて係合し合うことになる。詳述すると、第2トルク発生部材23の環状突出板23bの厚さは第1トルク発生部材22の環状突出板22cの厚さとほぼ同じであり、第2トルク発生部材23の弧状突出板23bの配置ピッチは第1トルク発生部材22の環状突出板22cの配置ピッチに対して半ピッチ分だけずらされ、このため
図10に示すような係合状態が得られる。なお、弧状突出板23bは同心状に3つ設けた構成を説明したが、1つであってもよい。
【0059】
回転ダンパは更にハウジング本体20aの閉塞端内面と第2トルク発生部材23との間にかつハウジング本体20aの内側周壁に沿って設けられた弾性手段即ち圧縮コイルばね24を具備し、圧縮コイルばね24は第2トルク発生部材23を第1トルク発生部材22から弾性的に引き離すように機能し、このため第2トルク発生部材23は
図9に示す最左方位置に通常は弾性的に留められる。
【0060】
回転ダンパは更にスリーブ21d上に設けられたガイド手段25を具備し、このガイド手段25はスリーブ21dに固着された環状部25aと、この環状部25aの外周部から半径方向に一体的に突出し、かつ該外周部の廻りに等間隔に配置させられた3つの矩形ガイド部材25bとから成る。各矩形カイド部材25bは上述の第1実施例の矩形ガイド部材15bと同様な態様で形成される。即ち、3つの矩形ガイド部材25bは第2トルク発生部材23の3つのガイド面23cのそれぞれと整列させられ、各矩形ガイド部材25bには矩形開口部が形成され、その矩形開口部の側辺に沿って一対のガイドレール25c(
図9及び
図10では、その一方だけを見ることができる)が設けら、この一対のガイドレール25cによってガイド面25dが提供される。なお、本実施例では、ガイド面25dはシャフト21の中心軸線と直交する面に並行となっている。
【0061】
回転ダンパは更に第2トルク発生部材23の3つの扇形突出部23bとガイド手段25の3つの矩形ガイド部材25bとの間にそれぞれ挟持されたガバナ要素26を具備し、このガバナ要素26は遠心力感応体として機能させられ、高質量材料例えば鉄や鉛等の金属材料、高質量樹脂材或いはそれらの複合材料から形成される。
【0062】
本実施例では、各ガバナ要素即ち遠心力感応体26は上述した高質量材料からブロック体として一体加工されたものであり、このブロック体は第2トルク発生部材23のガイド面23cと摺動自在に係合させられる傾斜部26aと、ガイド部材25bの一対のガイドレール25cのガイド面25dと摺動自在に係合させられる肩部26bと、該一対のガイドレール26b間に挟まれて摺動自在に係合する凸部26cとから成る。
【0063】
次に、以上のように構成された回転ダンパの第2の実施例の作動について説明する。
【0064】
回転ダンパのシャフト21が非回転状態におかれているとき、
図9に示すように、圧縮コイルばね24の弾性力により、第2トルク発生部材23は第1トルク発生部材22から引き離されてガイド手段25側に押し付けられ、このとき第1トルク発生部材22の環状突出板22aのトルク発生面と第2トルク発生部材23の環状突出板23cトルク発生面との対向面積は実質的にゼロ若しくはゼロに近い状態とされる。
【0065】
シャフト21がいずれかの回転方向に回転させられると、その回転状態が極めて小さいときは、遠心力感応体26はほとんど動くことがなく、従って、第1トルク発生部材22の環状突出板22aのトルク発生面と第2トルク発生部材23の弧状突出板23cのトルク発生面との対向面積がゼロ若しくはゼロに近い状態で回転する。シャフト21がいずれかの回転方向に回転させられて、その回転速度が徐々に速くなると、遠心力感応体26は遠心力を受け、このため遠心力感応体26は圧縮コイルばね24の弾性力に抗してシャフト21の半径方向外側に移動させられ、このとき遠心力感応体26の傾斜部26aと第2トルク発生部材23の傾斜面23cとの間で得られるカム作用により、第2トルク発生部材23は第1トルク発生部材22側に移動させられて、第1トルク発生部材22の環状突出板22cのトルク発生面と第2トルク発生部材23の環状突出板23bのトルク発生面とが互いに対向することになる。その結果、双方のトルク発生面間に粘性流体を介した摩擦抵抗によりトルクが発生させられ、シャフト21には制動力が加わることになる。
【0066】
シャフト21の回転速度が大きくなるつれ、遠心力感応体26は次第に大きくなる遠心力を受け、第1トルク発生部材22に向かう第2トルク発生部材23の移動量も大きくなり、第1トルク発生部材22の環状突出板22cのトルク発生面と第2トルク発生部材23の弧状突出板23bのトルク発生面との間の対向面積も次第に増大し、双方のトルク発生面間に発生するトルク、即ちシャフト21に加わる制動力も増大する。シャフト21の回転速度が上限速度に到達すると、
図10に示すように、上述の対向面積は最大となり、その間に発生するトルク、即ちシャフト21に加わる制動力も最大となる。
【0067】
上述の第1実施例の場合と同様に、第2トルク発生部材23のガイド面23cが傾斜面として形成されているので、第1トルク発生部材22の環状突出板22cのトルク発生面と第2トルク発生部材23の弧状突出板23bのトルク発生面との間の対向面積の変化はシャフト21の回転速度に比例することになる。従って、双方のトルク発生面間に発生するトルク、即ちシャフト21に加わる制動力もシャフト21の回転速度に比例することになる。
【0068】
かくして、上述の第1実施例の場合と同様に、例えば、回転ダンパが吊り戸に組み込まれ(このときシャフト21が吊り戸の回転軸に連結され、ハウジング20が吊り戸に隣接した壁等に固着される)、しかも開放された吊り戸が重力によって閉鎖位置まで移動する場合を想定すると、吊り戸は重力加速度によって加速されるが、シャフト21に加わる制動力はシャフト21の回転速度に比例するので、吊り戸は一定の早さで閉鎖位置まで移動することになる。また、この第2実施例の装置を引き戸等に使用したときには、引き戸を急速に移動させる力が加えられたときには制動力が大きくなり、ゆっくり移動させる力が加えられたときには制動力が小さくなることになり、引き戸を開閉せしめる力の大きさにかかわらず、常に略一定の移動速度で開閉動作が行なわれることになる。
【0069】
また、以上の記載から明らかなように、上述の第1実施例の場合と同様、第2実施例でも、第1トルク発生部材22、第2トルク発生部材23、圧縮コイルばね24、ガイド手段25及び遠心力感応体26等によってトルク調整機構が構成され、このトルク調整機構により、第1トルク発生部材22の環状突出板22cのトルク発生面と第2トルク発生部材23の環状突出板23bのトルク発生面との間の対向面積をシャフト21の回転速度に比例して変化させることが可能となる。
【0070】
第2実施例にあっては、第2トルク発生部材23に形成されたガイド面23cが傾斜面として形成され、またガイド手段25の一対のガイドレール25cのガイド面25dがシャフト21の中心軸線と直交する面に沿ってシャフト21の半径方向に伸延する面とされているが、必要に応じて、第1実施例の変更例と同様に、ガイド面23eをシャフト21の中心軸線に対して直角な面として形成し、ガイド面25dを傾斜面として形成してもよい。また、ガイド面23c及びガイド面25dの双方が室の側壁内面に向かって外方に延びるにしたがって互いに近寄るようになった傾斜面として形成されてもよい。
【0071】
次に、
図11及び
図12を参照して、本発明による速度依存型回転ダンパの第3実施例について説明する。
【0072】
図11及び
図12に示すように、第3実施例でも、回転ダンパはハウジング30を具備し、このハウジング30は上述の第1実施例の場合と同様にハウジング本体30a及びキャップ30bから構成され、ハウジング本体30a及びキャップ30bも合成樹脂材料から一体成形品として成形され得るが、金属で構成してもよい。また、
図11及び
図12には図示されないが、ハウジング本体30aとキャップ30bとによって形成された室内には粘性流体が充填させられている。
【0073】
また、上述の第1実施例の場合と同様に、回転ダンパは更に合成樹脂材料或いは形金属材料から形成されたシャフト31を具備し、このシャフト31はハウジング30の中心軸線X(シャフト31の中心軸線でもある)に沿って伸延される。シャフト31の一端部はハウジング本体30aの閉塞端内面の内側中心に装着されたスリーブ軸受31aによって回転自在に支持され、またシャフト31はキャップ30bの中心部の外側壁部に形成された凹部に設けられたボール軸受31bによっても回転自在に支持される。また、キャップ30bの内径部に形成された凹部にはシャフト31を取り巻くようにOリングシール31cが設けられ、これによりハウジング30からの粘性流体の漏れが防止される。
【0074】
なお、本実施例においては、回転ダンパは、ハウジング30が回転側、シャフトが固定側として吊り戸等に取り付けられる。
【0075】
シャフト31にはスリーブ31dが被着され、このスリーブ31dの内側壁部にはシャフト31の中心軸線方向に沿って少なくとも1つの凸条体即ちキー31d−1が形成され、これらキーはシャフト31にその中心軸線方向に沿って形成されたキー溝31−1と係合させられる。
【0076】
シャフト31にはスリーブ31dの一方の端面部に隣接した箇所に周囲溝が形成され、この周囲溝にはスナップリング31eが係合させられ、これによりスリーブ31dはシャフト11上で所定位置に拘束される。
【0077】
また、スリーブ31dの他方の端面部、即ちキャップ30b側の端面部からは3つの指状片31d
1が半径方向に伸延し、これら指状片11d
1はシャフト31の廻りに等間隔に配置される。また、指状片31d
1のそれぞれの先端部の近傍からはハウジング本体30aの閉塞端内面側に向かってしかもシャフト31の中心軸線方向に沿って3つのばね保持用突出体31d
2が突出させられる。なお、
図11及び
図12では、3つのばね保持用突出体31d
2のうちの1つだけを見ることができる。
【0078】
回転ダンパは更にキャップ30bの内側壁部に一体化された第1トルク発生部材32を具備し、この第1トルク発生部材32はキャップ30bの内側壁部の外周近傍からハウジング本体30a側に向かってしかもシャフト31の中心軸線方向に沿って同心状に一体的に突出させられた3つの環状突出板32aから構成される。これら環状突出板32aは同心状に等間隔に配置され、各環状突出板32aの表面はトルク発生面として機能する。要するに、本実施例では、第1トルク発生部材32については、キャップ30bの内側壁部の一部と、そこから突出した3つの環状突出板32aとから成るものとして定義することができる。なお、環状突出板32aは同心状に3つ設けた構成を説明したが、1つであっても良い。
【0079】
なお、第3実施例では、環状突出板32aはキャップ30bの成形時に同時に形成されることになるが、しかし必要に応じて第1トルク発生部材32については、環状突出板32aを一体に備えた環状円板としてキャップ30bと別に構成し、この別体品をキャップ30bの内面に接合してもよい。
【0080】
なお、第1トルク発生部材32については、ハウジング30と共にシャフト30の廻りで回転することが可能であるが、その中心軸線方向に移動不動な固定部材として定義することができる。
【0081】
図11及び
図12に示すように、回転ダンパは更にハウジング30のハウジング本体30a内に設けられた第2トルク発生部材33を具備し、この第2トルク発生部材33も上述の第1実施例の第2トルク発生部材13の場合と同様に合成樹脂材料から一体成形品として成形され得る。
【0082】
第2トルク発生部材33は、スリーブ31d上に、自身の凸条キー33a―1とスリーブ31d側のキー溝31d−2との係合により、軸方向に摺動自在に装着された中央本体33aと、この中央本体33aの一方の側面、即ちキャップ30bと対向する側面の外周側に同心状に形成された3つの弧状突出板33bとから構成される。また、中央本体33aの他方の側面、即ちハウジング本体30aの閉塞端内面と対向する側面には、シャフト31の中心軸線と直交する面に対してハウジング本体30a側に所定の角度だけ傾斜させられた3つの傾斜面即ちガイド面33cが形成され、3つのガイド面33cはシャフト31の中心軸線方向の廻りに等間隔に配置される。なお、
図11及び
図12では、3つのガイド面33cのうちの1つのガイド面33cだけを見ることができる。また、中央本体33aの一方の側面部の内周側には3つのばね収納孔33dが形成され、これら3つのばね収納孔33dはシャフト31の中心軸線方向の廻りに等間隔に配置され、しかもスリーブ31dの3つのばね保持用突出体31d
2のそれぞれと整列させられる。なお、弧状突出板33bは同心状に3つ設けた構成を説明したが、1つであってもよい。
【0083】
上述したように、第2トルク発生部材33の中央本体33aはスリーブ31d上に摺動自在に装着されているので、第2トルク発生部材33は第1トルク発生部材32に対して移動自在となっている。即ち、第2トルク発生部材33は
図11に示す最右方位置と
図12に示す最左方位置との間で移動自在とされる。かくして、本実施例では、第2トルク発生部材33については、シャフト31の中心軸線方向に移動可能な可動部材として定義することができる。
【0084】
第2トルク発生部材33の各弧状突出板33bは第1トルク発生部材32の環状突出板32aの場合と同様に等間隔に配置され、各弧状突出板33bの表面はトルク発生面として機能する。第2トルク発生部材33が第1トルク発生部材32に向かって移動させられた際には、第1トルク発生部材32の環状突出板32cと第2トルク発生部材33の弧状突出板33bとは
図12に示すように互いに対向配置されて係合し合うことになる。詳述すると、第2トルク発生部材33の弧状突出板33bの厚さは第1トルク発生部材32の環状突出板32cの厚さとほぼ同じであり、第2トルク発生部材33の弧状突出板33bの配置ピッチは第1トルク発生部材32の環状突出板32cの配置ピッチに対して半ピッチ分だけずらされ、このため
図10に示すような係合状態が得られる。
【0085】
図11及び
図12に示すように、回転ダンパは更に第2トルク発生部材33の各ばね収納孔33dに収納されたは弾性手段即ち圧縮コイルばね34を具備し、各ばね収納孔33dから突出した圧縮コイルばね34の部分には、スリーブ31dに形成されたばね保持用突出体31d
2が挿通させられ、これにより圧縮コイルばね34はばね収納孔3d内に拘束されることになる。圧縮コイルばね34は第2トルク発生部材33を第1トルク発生部材22から弾性的に引き離すように機能し、このため第2トルク発生部材33は
図11に示す最右方位置に通常は弾性的に留められる。
【0086】
回転ダンパは更にハウジング本体30aの閉塞端内面の内側壁面に設けられたガイド手段を具備し、このガイド手段は内側壁面に形成された3つのガイド面35としてもうけられる。3つのガイド面35はハウジング30の中心軸線の廻りで等間隔に配置され、しかも第2トルク発生部材33の3つのガイド面即ち傾斜面33cとそれぞれ整列される。本実施例では、ガイド面35はシャフト31の中心軸線と直交する面に並行となっている。なお、
図11及び
図12では、3つのガイド面35のうちの1つだけを見ることができる。
【0087】
回転ダンパは更に第2トルク発生部材33のガイド面即ち傾斜面33cとガイド面35との間にそれぞれ挟持されたガバナ要素36を具備し、このガバナ要素36は遠心力感応体として機能させられ、高質量材料例えば鉄や鉛等の金属材料、高質量樹脂材或いはそれらの複合材料から形成される。
【0088】
本実施例では、各ガバナ要素即ち遠心力感応体36は上述した高質量材料からブロック体として一体加工されたものであり、このブロック体は第2トルク発生部材33の傾斜面33cと摺動自在に係合させられる傾斜部36aと、ガイド面35と摺動自在に係合させられる矩形部36bとから成る。
【0089】
次に、以上のように構成された回転ダンパの第3の実施例の作動について説明する。
【0090】
回転ダンパのハウジング30が非回転状態におかれているとき、
図11に示すように、圧縮コイルばね34の弾性力により、第2トルク発生部材33は第1トルク発生部材32から引き離されてガイド面35側に押し付けられ、このとき第1トルク発生部材32の環状突出板32aのトルク発生面と第2トルク発生部材33の弧状突出板33bのトルク発生面との対向面積は実質的にゼロ若しくはゼロに近い状態とされる。
【0091】
ハウジング30がいずれかの回転方向に回転させられると、その回転状態が極めて小さいときは、遠心力感応体36はほとんど動くことがなく、従って、第1トルク発生部材32の環状突出板32aのトルク発生面と第2トルク発生部材33の弧状突出板33bのトルク発生面との対向面積がゼロ若しくはゼロに近い状態で回転する。ハウジング30の回転速度が徐々に速くなると、遠心力感応体36は遠心力を受け、このため遠心力感応体36は圧縮コイルばね34の弾性力に抗してシャフト31の半径方向外側に移動させられ、このとき遠心力感応体36の傾斜部36aと第2トルク発生部材33の傾斜面33cとの間で得られるカム作用のために、第2トルク発生部材33は第1トルク発生部材32側に移動させられて、第1トルク発生部材32の環状突出板32aのトルク発生面と第2トルク発生部材33の環状突出板33bのトルク発生面とが互いに対向することになる。その結果、双方のトルク発生面間に粘性流体を介した摩擦抵抗によりトルクが発生させられ、ハウジング30には制動力が加わることになる。
【0092】
ハウジング30の回転速度が大きくなるつれ、遠心力感応体36は次第に大きくなる遠心力を受け、第1トルク発生部材32に向かう第2トルク発生部材33の移動量も大きくなり、第1トルク発生部材32の環状突出板32aのトルク発生面と第2トルク発生部材33の弧状突出板33bのトルク発生面との間の対向面積も次第に増大し、双方のトルク発生面間に発生するトルク、即ちハウジング30に加わる制動力も増大する。ハウジング30の回転速度が上限速度に到達すると、
図8に示すように、上述の対向面積は最大となり、その間に発生するトルク、即ちハウジング30に加わる制動力も最大となる。
【0093】
上述の第1実施例の場合と同様に、第2トルク発生部材33のガイド面33cが傾斜面として形成されているので、第1トルク発生部材32の環状突出板32aのトルク発生面と第2トルク発生部材33の弧状突出板33bのトルク発生面との間の対向面積の変化はハウジング30の回転速度に比例することになる。従って、双方のトルク発生面間に発生するトルク、即ちハウジング30に加わる制動力もハウジング30の回転速度に比例することになる。
【0094】
かくして、上述の第1実施例の場合と同様に、例えば、回転ダンパが吊り戸に組み込まれ(このときハウジング30が吊り戸の回転軸に連結され、シャフト31が吊り戸に隣接した壁等に固着される)、しかも開放された吊り戸が重力によって閉鎖位置まで移動する場合を想定すると、吊り戸は重力加速度によって加速されるが、ハウジング30に加わる制動力はハウジング30の回転速度に比例するので、吊り戸は一定の早さで閉鎖位置まで移動することになる。また、この第3実施例の装置を引き戸等に使用したときには、引き戸を急速に移動させる力が加えられたときには制動力が大きくなり、ゆっくり移動させる力が加えられたときには制動力が小さくなることになり、引き戸を開閉せしめる力の大きさにかかわらず、常に略一定の移動速度で開閉動作が行なわれることになる。
【0095】
また、以上の記載から明らかなように、上述の第1実施例の場合と同様、第3実施例でも、第1トルク発生部材32、第2トルク発生部材33、圧縮コイルばね34、ガイド面35及び遠心力感応体36等によってトルク調整機構が構成され、このトルク調整機構により、第1トルク発生部材32の環状突出板32aのトルク発生面と第2トルク発生部材33の環状突出板33bのトルク発生面との間の対向面積をハウジング30の回転速度に比例して変化させることが可能となる。
【0096】
第3実施例にあっては、第2トルク発生部材33に形成されたガイド面33cが傾斜面として形成され、またガイド面35がシャフト31の中心軸線に対して直角な面とされているが、必要に応じて、第1実施例の変更例と同様に、ガイド面33cをシャフト31の中心軸線に対して直角な面として形成し、ガイド面35を傾斜面として形成してもよい。また、ガイド面33c及びガイド面35の双方が室の側壁内面に向かって外方に延びるにしたがって互いに近寄るようにされた傾斜面として形成されてもよい。
【0097】
次に、
図13を参照して、本発明による速度依存型回転ダンパの第4実施例について説明する。
図13に示すように、第4実施例では、第3実施例の場合と同様に、ハウジング40が回転側、シャフト41が固定側として構成される。
【0098】
第1トルク発生部材42は、回転側のハウジング40とは別体に構成され、かつキャップ44の室内側に配設されている。この第1トルク発生部材42は、第2実施例の第1トルク発生部材22と同様に構成されており、円板部42bの外方からキャップ44から離れる方向にしかもシャフト41の中心軸線方向に沿って同心状に一体的に突出させられた環状突出板42aを有する。また、内径部に軸方向に沿って形成された少なくとも1つの凸条キー42−1と固定側のシャフト41に形成されたキー溝41−1との係合により、シャフト41上に回転不能に設けられている。また、第1トルク発生部材42はスナップリング41eによりシャフト41上で軸方向の所定位置に拘束されている。
【0099】
この第1トルク発生部材42と軸方向に対向して配置された第2トルク発生部材43は、外周面にその中心軸線方向に沿って形成された少なくとも1つの凸条キー43dを有し、これらキーはハウジング本体40aの内側壁部にその中心軸線方向に沿って形成されたキー溝40bと係合しており、第2トルク発生部材43は回転側のハウジング40と共に回転するとともに、キー溝40bに沿ってシャフト41の中心軸線方向に移動可能に設けられている。
【0100】
この第2トルク発生部材43は、中央本体43aと、この中央本体43aの一方の側面、即ち第1トルク発生部材42と対向する側面の外周側に形成された環状突出板43bとから構成される。また、中央本体43aの他方の側面、即ちハウジング本体40aの閉塞端内面と対向する側面には、シャフト41の中心軸線と直交する面に対してハウジング本体40a側に所定の角度だけ傾斜させられた傾斜面即ちガイド面43cが形成されている。
【0101】
この第4実施例において、第1トルク発生部材42の環状突出板42aは、第2実施例における第1トルク発生部材22の環状突出板22cと同様に形成されており、また第2トルク発生部材43の弧状突出板43bは、第2実施例における第2トルク発生部材23の弧状突出板23bと同様に形成されている。
【0102】
第2トルク発生部材43は、キャップ44の室内側内面と第2トルク発生部材43との間にハウジング本体40aの内周壁に沿って設けられた弾性手段、即ち圧縮コイルばね46により、第1トルク発生部材42から弾性的に離れる方向に付勢されており、このため第2トルク発生部材43は通常時、即ちハウジング40が回転していない状態では、
図13に示す最右方位置に弾性的に留められている。
【0103】
ガイド手段45は、第3実施例と同様に、ハウジング本体40aの閉塞端内面の内側壁面に形成されたガイド面45aを有し、ガイド面45aはシャフト41の中心軸線と直交する面に並行となっている。
【0104】
第2トルク発生部材43のガイド面43cとガイド手段45のガイド面45aとの間には、遠心力感応体であるガバナ要素46が摺動自在に挟持されている。
【0105】
以上のように構成された回転ダンパの第4の実施例の作動については、次の通りである。
【0106】
図13において、ハウジング40がいずれかの回転方向に回転させられ、その回転速度が徐々に速くなると、遠心力感応体46は遠心力を受け、圧縮コイルばね46の弾性力に抗してシャフト41の半径方向外側に移動させられる。このとき遠心力感応体46は、第2トルク発生部材43の傾斜面43cのカム作用により、第2トルク発生部材43を第1トルク発生部材42側に移動させ、第1トルク発生部材42の環状突出板42aのトルク発生面と第2トルク発生部材43の弧状突出板43bのトルク発生面とが互いに対向することになる。その結果、双方のトルク発生面間の粘性流体の粘性抵抗によりダンパトルクが発生し、ハウジング40には制動力が加わることになる。
【0107】
ハウジング40の回転速度が大きくなるにつれ、第1トルク発生部材42に向かう第2トルク発生部材43の移動量も大きくなり、第1トルク発生部材42の環状突出板42aのトルク発生面と第2トルク発生部材43の弧状突出板43bのトルク発生面との間の対向面積も次第に増大し、双方のトルク発生面間に発生するダンパトルク、即ちハウジング40に加わる制動力も増大する。
【0108】
このとき、上述の第1実施例の場合と同様に、第2トルク発生部材43のガイド面43cが傾斜面として形成されているので、双方のトルク発生面間の対向面積の変化はハウジング40の回転速度に比例し、ハウジング40に加わる制動力もハウジング40の回転速度に比例することになる。
【0109】
なお、第1乃至第3実施例の説明において、ガバナ要素16,26,36、ガイド手段15,25,35、第2トルク発生部材13,23,33等がシャフトの円周方向に3つ設けられた例について説明したが、これらの部材、手段の数はそれに限定されるものではない。
【0110】
特に、軸方向に移動自在に構成された第2トルク発生部材13,23,33,43は、複数の分割体として説明されたが、円盤状の一体として構成されてもよく、その場合、第2トルク発生部材の弧状突出板13c,23b,33b,43bは弧状ではなく、環状に形成されることになる。