特許第5690595号(P5690595)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690595
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】廃棄物を処理するための装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20150305BHJP
   C12P 7/08 20060101ALI20150305BHJP
   C10L 1/02 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   B09B3/00 304H
   B09B3/00 304Z
   C12P7/08ZAB
   C10L1/02
【請求項の数】18
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2010-544782(P2010-544782)
(86)(22)【出願日】2009年2月2日
(65)【公表番号】特表2011-514236(P2011-514236A)
(43)【公表日】2011年5月6日
(86)【国際出願番号】GB2009000276
(87)【国際公開番号】WO2009095693
(87)【国際公開日】20090806
【審査請求日】2012年1月24日
(31)【優先権主張番号】0801787.3
(32)【優先日】2008年1月31日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】509031235
【氏名又は名称】リクレイム リソーシズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】RECLAIM RESOURSESLIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100136630
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 祐啓
(72)【発明者】
【氏名】ホール, フィリップ
【審査官】 大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−062437(JP,A)
【文献】 特開2000−041588(JP,A)
【文献】 特開昭54−105062(JP,A)
【文献】 特開平11−302439(JP,A)
【文献】 特開2000−135273(JP,A)
【文献】 特開昭61−192380(JP,A)
【文献】 特表昭57−502110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3
C10L 1
C12P 7
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子状の廃棄物を処理するための装置であって、導入すべき廃棄物の導入口を備えた容器と、処理済み廃棄物の取り出し口と、前記容器を水平軸線の周りで回転する駆動機構と、蒸気を前記容器の内部に選択的に注入するための複数の蒸気導入口と、蒸気発生器から前記蒸気導入口に至る前記蒸気の流れを制御する蒸気制御手段とを含み、
前記蒸気導入口が前記容器に固定され、前記容器が、前記駆動機構により回転されたときに、該容器の内部に廃棄物で満たされる第1区域と、廃棄物が存在しない第2区域とを形成し、前記蒸気制御手段が、常に前記第1区域内の前記蒸気導入口のみに蒸気が供給されるように、前記蒸気の流れを制御することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記容器の前記内部を摂氏150度乃至200度の温度まで加熱及び/または維持する加熱手段をさらに含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記加熱手段が、加熱空気、外部蒸気ジャケット、及び発熱体からなるグループから選択される、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記加熱手段が、蒸気により加熱される加熱ジャケットのみを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記容器の前記内部が2バール未満の圧力である、請求項1〜4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記容器の前記内部が概ね大気圧である、請求項1〜5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記装置が廃棄物を連続的に処理するよう配置されている、請求項1〜6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記処理済み廃棄物が、硫黄を1%未満含有するセルロース物質のバイオマスを含む、請求項1〜7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記取り出し口が、前記廃棄物をプラスチック、フェラスメタル、非フェラスメタル、及びセルロース物質のバイオマスに分ける分別室に接続されている、請求項1〜8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記バイオマスは高圧エンジン若しくは燃料電池に移動されるか、該バイオマスをバイオディーゼルに、またはバイオエタノール若しくはバイオブタノールなどの有機アルコールに、或いは航空燃料に変換するための変換ユニットに移動される、請求項8又は9に記載の装置。
【請求項11】
前記装置は、前記バイオディーゼルまたは有機アルコールを動力源とする発電機をさらに含む、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記蒸気制御手段が、前記蒸気発生器からの蒸気を前記蒸気導入口に送出するための分配弁を含み、前記分配弁が、前記蒸気発生器に流体接続可能な弁導入口を備えた弁ハウジングと、前記蒸気導入口に流体接続可能な複数の弁排出口とを含み、前記弁排出口の少なくとも1つを常に前記弁導入口から流体切り離しするように構成されている、請求項1〜11の何れか一項に記載の装置。
【請求項13】
請求項1〜12の何れか一項に記載の装置を用いて廃棄物を処理するための方法であって、
a) 粒子状の廃棄物を容器に搬入する段階と、
b) 前記容器の内部で前記粒子状の廃棄物を蒸気で処理する段階とを含む、方法。
【請求項14】
前記蒸気は摂氏150度乃至200度である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記容器の内部は大気圧である、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記方法は連続的な方法であり、廃棄物が前記容器の導入口において搬入され、処理済み廃棄物が前記容器の取り出し口で取り出される、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記処理済み廃棄物が、セルロースのバイオマス、プラスチック、フェラスメタル、及び非フェラスメタルを含む、請求項13〜16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記容器の内部が摂氏150度と200度との間の温度まで加熱される、請求項13〜16の何れか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物質のリサイクルに関し、より詳細には地方自治体の生活系廃棄物のリサイクルに関する。
【背景技術】
【0002】
地方自治体の固形廃棄物とも呼ばれる家庭廃棄物の処理には幾つかの方法があるが、最も一般的な二つの方法は埋め立てによるものか、焼却によるものである。これらの方法は両方とも内在的な問題を抱えている。埋め立てによる場合は廃棄物が分別されずに埋められてしまう。貴重な空間を使用し、長年にわたって土地を利用できない状態にしてしまう。更には、有毒な流出水が地中に漏出することがある。また、埋め立て用地として適した場所を見つけることが困難になりつつある。
【0003】
焼却に関しては、廃棄物を可燃廃棄物と不燃廃棄物に分別し、不燃廃棄物を埋め立て用地に送る一方、可燃廃棄物を燃やすことになる。しかし、廃棄物の焼却は通常、硫黄排気物を放出し、目障りな煙突も必要とする。更に、焼却炉は高レベルのエネルギー入力を必要とするため効率的でない。
【0004】
最近では、処理すべき廃棄物質を充填したオートクレーブで、蒸気アキュムレーターからの蒸気が供給されるオートクレーブを用いて地方自治体の廃棄物を処理する提案もなされている。この一例が米国特許5,190,226号に開示されており、ここでは固形廃棄物質が4バールの圧力で処理される。これらの提案は、上述した2つの一般的な従来方法よりは環境に優しい解決策ではあるが、バッチプロセスであるため非効率的である。例えば、米国特許6,752,337号では連続プロセスが開発されているが、高価で危険な高圧蒸気処理装置を維持するために特別な装置が提案されている。
【特許文献1】米国特許5,190,226号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、エネルギー効率が良くしかも環境に優しい地方自治体の生活系廃棄物をリサイクルするための解決策を提供しようとするものである。処理プラントはモジュラー設計であり、未分別廃棄物を受け入れ、連続蒸気処理を用いてそれを熱処理する。好適には、このシステムはプラントから発生する悪臭の問題にも対処する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、固形廃棄物質を処理するための装置が提供され、この装置は、導入すべき廃棄物の導入口及び処理済み廃棄物の取り出し口を備えた容器で、その内部が第1区域及び第2区域を備えた容器を含み、さらに、蒸気を前記容器の前記内部に選択的に注入するための複数の蒸気導入口と、常に前記蒸気導入口の一部のみが前記第1区域内に位置するよう、前記蒸気導入口と前記第1区域との間に相対運動を与えるよう構成された駆動機構と、前記第1区域内の蒸気導入口のみに蒸気を供給するよう構成された蒸気制御手段とをさらに含む。この装置は、有利なことに、前記蒸気を前記廃棄物質に送出して、特に前記廃棄物質に含まれる有機物質の分解工程に必要なエネルギーを与え、前記廃棄物質が効率的に処理されるようにする。
【0007】
このリサイクリング処理は、一端に前記導入口と他端に前記取り出し口とを備えた長尺容器を前記容器とする場合に達成が容易となる連続処理とすると有利である。前記駆動機構は、前記容器を回転させ、この様態で前記物質を前記容器に沿って移動させつつ、前記廃棄物質の十分な処理を保証すべく前記物質を混合するよう構成されている。
【0008】
通常、前記蒸気導入口は蒸気パイプとして与えられる。前記蒸気導入口を前記容器の前記内部に対して固定してもよい。前記蒸気取り出し口は、摂氏150度乃至200度の蒸気を注入し、大きな運動及び熱エネルギーを前記廃棄物質に直接的に与える。
【0009】
通常、前記内部を摂氏150度乃至200度に加熱し且つ/または維持する加熱手段を設けるが、その理由は、これが前記廃棄物質を前記分解工程が妥当な時間以内で達成できる温度まで加熱する単純な方法だからである。前記加熱手段は、通常、加熱空気、外部蒸気ジャケット、及び発熱体からなるグループから選択される。前記加熱手段は、蒸気により加熱されるジャケットのみでとするのが好ましい。これは加熱を容易に制御可能とし、前記容器内でのホットスポットを避けることができるので特に有利な技法であり、熱効率がよい。この場合、前記容器は一連の区域に分けられている。例えば、各区間の前記物質を所望の温度まで加熱しまたは維持できるように、各区域への熱入力は個別に制御可能としてもよい。例えば、廃棄物導入口の近くではより多くの熱入力が必要となるが、それは比較的低温の廃棄物を、処理温度まで実用的に可能な限り短時間で加熱する必要があるからである。前記取り出し口に隣接する領域は、前記廃棄物質が部分的に乾燥されるよう制御してもよい。
【0010】
この処理は、加圧を必要としないという利点があり、前記容器の前記内部を2バール未満、通常は1.25バールまたは実質的に周囲圧力とする。これは、加圧システムと比較して大きなコスト減と、安全性の向上をもたらす。
【0011】
前記処理済み物質は、セルロース物質と1%未満の硫黄とを含有するバイオマスを含むことが好ましい。前記バイオマスは多くの様態で有用であって、本システムの鍵となる利点を提供する。
【0012】
通常は、前記廃棄物質がプラスチック、フェラスメタル、非フェラスメタル、及びセルロース物質のバイオマスに分けられる位置に分別室が設けられている。その後、前記バイオマスは高圧エンジン若しくは燃料電池に移動されるか、該バイオマスをバイオディーゼルに、またはバイオエタノール若しくはバイオブタノールなどの有機アルコール燃料に、或いは航空燃料に変換するための変換ユニットに移動される。前記バイオ燃料を使って、電気エネルギーを発生する1つまたは複数の発電機に動力を与えることができ、または他のエンジン(例えば航空機のエンジン)或いは他の発生器に動力を供給してもよい。
【0013】
本発明の第二側面によれば、蒸気発生器またはボイラーからの蒸気を蒸気入力に送出するための分配弁が提供され、この分配弁は、前記蒸気発生器に流体接続可能な導入開口部を備えた弁体と、前記蒸気入力に流体接続可能な複数の排出開口部とを含み、前記弁は、前記排出開口部の少なくとも1つが常に前記導入開口部から流体切り離しされるよう構成されている。この構成要素は、単純且つ頑丈な様態で、前記蒸気を所望のチャンネル蒸気パイプに送出可能とする。通常は1つの蒸気パイプのみが一度に前記廃棄物質内に位置するので、常態では、前記導入開口部は、一度に1つの排出開口部のみと流体接続されるよう構成されている。いうまでもなく、これは設置状況によって変更できる。
【0014】
前記分配弁においては、前記導入開口部が、弁体に収容された管状弁部材の一端に流体結合可能で、前記複数の排出開口部が、前記弁体における前記弁部材の回転によって前記弁部材に個別に流体接続するように、前記弁体の外周に沿って離間されている。従って、前記分配弁は、本発明の第1実施形態による前記蒸気制御手段を実現する洗練された方法を提供する。
【0015】
好適な一実施形態による分配弁では、前記導入開口部を、好適には、回転可能な弁室を介して前記弁体まで軸方向に延伸した流体結合部を備えた導入口マニホルドに設けてもよい。好適には、前記回転可能な弁室が、蒸気を加熱ジャッケットに供給する蒸気フィードと、前記加熱ジャケットから凝縮水を受け取る凝縮水リターンとを備え、前記蒸気フィードは前記導入口マニホルドにおいて蒸気線に流体接続されており、前記凝縮水リターンは前記導入口マニホルドおいて戻し線に流体接続されている。これは、供給蒸気を回転する前記加熱ジャケットに接続する単純な方法を提供し、前記回転可能な弁室が前記容器と共に回転しつつ、前記弁の残り部分は静止状態を維持することになる。
【0016】
本発明の第3実施形態によれば、廃棄物質を処理するための方法が提供され、この方法は、
a) 粒子状の廃棄物質を容器に入力する段階と、
b) 前記粒子状の廃棄物質を摂氏150度乃至200度の蒸気で処理する段階とを含み、前記容器は周囲圧力であり、且つ/または前記蒸気は前記粒子状の廃棄物質のみに注入される。こうすることで、前記廃棄物質は、商業的に高効率且つ環境にとって健全な様態で多くの有用な生産物に分解される。通常、前記方法は連続的な方法であって、廃棄物質が前記容器の入力において入力され、処理済み廃棄物質が前記容器の取り出し口で取り出される。
【0017】
もちろん、前記方法は、本発明の第1及び第2実施形態の装置を用いて実行するのが好ましい。前記処理済み廃棄物質は、セルロース物質のバイオマス、プラスチック、フェラスメタル、及び非フェラスメタルを有利に含む。前記方法によって形成されたバイオマスはさらに処理を施して、バイオディーゼル、燃料電池用の燃料、例えばバイオエタノールなどのバイオアルコール、或いはバイオアルコールと混合可能な航空燃料を生成するのに適しており、特に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明がより容易に理解されるように、添付した図面を参照しつつその実施形態を例証として以下に詳細に説明する。
図1】本発明による処理プラントの略図を示す。
図2】本発明で使用される基本的な処理のフローチャートである。
図3図3は、本発明の第1実施形態で使用される蒸気処理ユニットの概略図である。
図4A】本発明によるシステムからのエタノール生産を表す概略図である。
図4B】本発明によるシステムからのエタノール生産を表す概略図である。
図5】本発明によるシステムからのバイオディーゼル生産を表す概略図である。
図6】本発明による第1実施形態の分配弁の図である。
図7】本発明で使用される蒸気処理ユニットの概略図である。
図8】本発明による第2の好適な実施形態の第2分配弁を平面図(図8A)及び透視図(図8B)で示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1を参照すると、本発明による好適な処理プラントが図示されている。ごみ運搬車は地方自治体の生活系廃棄物を積み替え場Aまで運び、ここから生廃棄物が分別されずに機械的粉砕ユニットBを介して蒸気処理ユニットCに連続的に供給される。図1では、2つの蒸気処理ユニットが並行して動作し、それぞれが、粉砕した廃棄物を当該ユニットに供給する前に格納するそれ自身のホッパーを備えている。「生」という用語は、蒸気処理ユニットに供給する前に化学物質及び/または水のような付加的物質が廃棄物に加えられていないことを意味する。
【0020】
蒸気処理ユニットCは、廃棄物が概ね45乃至60分にわたって処理されるように動作させ、処理済みの廃棄物は次に分離ステージEにおいて、生バイオマス又はセルロース、プラスチック、フェラスメタル、非フェラスメタル、織物、並びに、他の残留物及び物質のような異なる範疇に分離される。蒸気処理ユニットCからの混合出力を分離する技法及びそれらの変更例は当業者には周知である。これらの技法を用いれば、当初廃棄物の体積の10%未満が実際に埋め立て用に送られることになり、その他の分別廃棄物はリサイクル可能となる。廃棄物の体積は最大で60%まで減少する。生バイオマス及びプラスチックは、ユニットG及びHに示す追加処理を施され且つ/または分別され、乾燥され、さらにガス変換ユニット(ガス化装置。図示しない)に供給されるか、発電用に使用可能な燃料電池(図示しない)への入力となるよう処理すればよい。さらに、後に詳述するように、このバイオマスは高圧(hyerbaric)エンジン(図示しない)用の燃料となるように処理したり、Nに送出してバイオエタノール、バイオブタノール、またはバイオディーゼルなどのバイオ燃料生産に使用したりできる。こうしたバイオ燃料は、所望なら発電機の燃料として使用できる。図1に示したような完全に機能するプラントが発生する全ての燃料が後者の様態で使用されれば、発電機は6メガワット乃至20メガワットの電気を発電するはずである。図4及び5はセルロース材料又はその一部の代替的処理を示す。その他の分別材料はFに示すように分別される。ユニットPから分別されたプラスチックはプラスチック回収ユニットJに送出できる。
【0021】
その性質によって、廃棄物質は蒸気処理ユニットCへの導入口及びユニットCからの取り出し口の両方で不快な臭気を発散する。この理由のため、この蒸気処理ユニットから空気を抽出し、図1においてDで示したように、臭気除去処理を施すことが提案されている。この臭気除去処理としては、例えば紫外線を用いて生成したオゾンにより空気を処理する国際出願PCT/GB2006/000888号に記載されたものがある。この技法の一つの特徴は、十分な量のオゾンが発生され、処理対象の空気に十分な時間にわたり接触されていれば、悪臭がかなり減少されることである。しかし、この場合は、当該処理から大気に放出される空気には活性オゾンが存在しないことを保証するため、オゾン発生に用いられるものに加えて、付加的な紫外線を異なる波長で供給する必要がある。蒸気処理ユニットCは圧力封じ込めを目的として封止されていないが、通常は遮蔽又はカーテン仕切り(curtaining)を採用して、気体及び蒸気が所望の経路を介して蒸気処理ユニットCからの放出可能とする。
【0022】
図2を参照すると、蒸気を通常は12乃至15バールの高圧で、図示の実施形態では14バールで供給するボイラー装置において蒸気が発生され、この蒸気の好適な温度は摂氏190乃至200度であり、並列で動作する1つ又は複数の個別ユニットを含むことができる蒸気処理区間12に供給される。ブロックBで示した受け取り及びフィードエリアからの廃棄物は、後述する温度及び圧力で蒸気処理プラントに供給される。処理済み廃棄物は次に分別機Eまで運ばれる。
【0023】
さらに、蒸気処理ユニットから流出する蒸気はダクティッドシステム16により捕捉され、大気に放出する前に上述の処理が施される臭気処理ユニット17に供給される。
【0024】
図3を参照すると、この図は本プラントの蒸気処理ユニットCの一形態をより詳細に示す。これには、導入口32から取り出し口33まで廃棄物質を移動させるための運搬装置31が備えられた長尺容器30が含まれる。導入口32は図3ではホッパー式の装置として示されているが、図7に示したように振動コンベヤーまたは他の装置を使用することもできる。
【0025】
容器30の好適な構成は、回転ドラム式コンベヤーとして、内部表面に1つまたは複数の連続螺旋ブレードが設けられたものである。廃棄物質が処理される時間は、いうまでもなく、コンベヤーの回転速度及びコンベヤーの長さの関数であり、廃棄物が概ね45乃至60分にわたって処理されるようにこれらを調節する。
【0026】
この容器の内部は摂氏150度乃至200度の間の温度に保たれるが、好適には低温側が摂氏160度で、それからは独立して高温側が180度である。摂氏150度未満の温度では、廃棄物分解のための変換率が非常に遅くなり、廃棄物を商業的に容認できない時間にわたって容器30内に保持しておくことが必要になってしまう。摂氏200度の温度では、例えば有毒ガス及び他の有毒化合物を発生する熱溶解によって廃棄物中のプラスチック材料が溶解し始める可能性が高く、これが処理を大きく複雑化するので、こうした有毒物質の発生を回避または最小限に抑えることが重要である。
【0027】
廃棄物は、容器30にパイプ35によって注入される蒸気を用いて処理される。注入される蒸気は好適には摂氏150度乃至180度だが、最高で摂氏200度までの温度でもよい。蒸気はチャンバ30内の廃棄物質に、5乃至12バールの範囲で好適には10バールの圧力で注入される。蒸気はチャンバ全体に注入可能だが、好適には廃棄物質のみに送出する。この処理で用いる圧力及び温度では、蒸気は比較的大きな運動エネルギーを与え、蒸気が廃棄物質に注入されるとこの運動エネルギーは効率的に廃棄物質に移動する。従って、注入された蒸気は廃棄物質を効率的に分解する。特に、注入された蒸気は廃棄物中の有機物質を効率的に処理し、有機物質はほとんど或いは全く硫黄を含まないセルロース物質のバイオマスに変換される。
【0028】
導入口及び取り出し口32、33に加え、チャンバ30すなわちドラムには、蒸気処理から発生する底質(bottom
material)の収集及び除去のためボトムホッパーを設けてもよい。さらに、この処理から発生する気体除去のためガス通気孔を設けてもよい。これら気体は清浄し且つ分離して、有用な炭化水素を本プラントの他の部分で使用可能とし且つ/またはそれら炭化水素から熱エネルギーを除去して当該処理に再導入してもよい。
【0029】
処理プラント全体が一般廃棄物の処理に使用されているときは、廃棄物を前処理して、ユニットへの導入口に供給する前に破砕処理によってより均一なサイズにする必要が生じる場合もあろう。こうすることで処理ユニットへの導入口における封鎖が発生することを確実に防ぎ、よりばらつきのない生産物がもたらされる。しかし、本発明に関しては、こうした物質は、断片すなわち粒子状となっていればよい。
【0030】
蒸気処理ユニットC(図1)の構成を、図3を参照して以下により詳細に説明する。蒸気処理ユニットCは、ローラ35上に水平に載置され且つモータ34によりチェーン(図示しない)で駆動されるよう構成された回転ドラム30を含む。ドラム30はその全長にわたって均一な断面積を備え、内部表面には多数の離間したブレードが設けられている。これらブレードは、ドラム31の概ね全長に沿って螺旋形状で延伸する単一の連続的な螺旋ねじ部材または複数の部分螺旋ブレードから形成すればよい。必要なら、材料がこの容器に投入された際に持ち上げ及び転がりを促進するため、軸方向に配置されたブレードを螺旋区間の巻の間に設けてもよい。
【0031】
蒸気は容器30の全長にわたって延伸する複数のパイプ38により容器内に導入されるが、この場合、これらは容器30の内部表面に取り付けられ、各ピッチセンターに中心を集めた開口部を備えている。各パイプ38の一端は閉じられており、他端は分配弁36に取り付けられている。分配弁36は容器の中心軸上に位置している。弁36は蒸気源からの供給パイプに流体接続している。分配弁36は図6に詳細に示した。分配弁36は、弁ハウジング50に配置された弁導入口52を含み、それを介して蒸気ボイラ10が入力される。弁ハウジング50は、それぞれが対応する蒸気パイプ38に接続された3つの弁排出口54も備えている。分配弁36は、供給蒸気を蒸気パイプ38に簡単に流体接続できる。しかし、容器30の回転時に、弁36は蒸気を各蒸気パイプ38へ順番に供給することが好ましい。後に詳述するように、廃棄物が容器30の既知の基準面までしか充填されないように、廃棄物を所定の割合で容器に供給する。この基準面が容器30を2つの区域に分割する。第1区域は主として廃棄物質で満たされ、第2区域は主に廃棄物が存在しない。各蒸気パイプ38は容器30に固定されており、従って容器30の回転に合わせて2つの区域の間を移動する。常に第1区域内の蒸気パイプ38のみが蒸気供給源に接続されるように、弁36は、各蒸気排出口54に個別に流体接続する内部ポートをハウジング50内に備えている。こうすることで、蒸気は廃棄物質のみに注入される。
【0032】
容器の端部は、容器内に蒸気を封じ込め且つ処理済み廃棄物の取り出し口としての働きをするシュラウド内に位置している。
【0033】
容器30が動作時に毎分1乃至2回転の速度で回転すると、既に詳述したように、廃棄物質がパイプ38の何れかの上に位置したときに蒸気が廃棄物質内に注入される。
【0034】
この容器の内部は通常、加熱手段によって摂氏150度乃至200度までの温度に保たれるが、好適には低温側が摂氏160度で、それからは独立して高温側が180度である。この加熱手段は空気加熱とし、高温空気をチャンバ内に吹き込めばよい。好適には、容器30内に設けた発熱体か容器の周囲に巻き付けた発熱体を使用してもよい。好適には、容器30には蒸気ジャケットが周設可能で、この場合、ジャケットは容器が形成されている材料層の間に形成できる。同じ蒸気ボイラー10を用いてもよいし、或いは別の蒸気源を用いてもよい。蒸気ジャケットに供給される蒸気は、容器内で所望の温度となるような温度及び圧力とする。
【0035】
図7は、本プラントの好適なタイプの蒸気処理ユニットCを示す。蒸気処理ユニットCは図3に示した蒸気処理ユニットCに概ね似ており、ユニットの同一部材を表すには同一の参照番号を用いた。
【0036】
廃棄物は振動コンベヤー132に載せて容器130内に供給される。コンベヤーが振動するのは廃棄物質の凝集を防止するためである。廃棄物質は標準的なコンベヤー133から振動コンベヤーに供給される。廃棄物質は、容器130内の運搬手段31により取り出し口33まで搬送される。容器130の内部は容器30の内部と同じで、容器の回転とともに廃棄物質を搬送するブレードが設けられている。
【0037】
容器30と容器130の主要な違いは、チャンバ及び廃棄物質を処理温度まで加熱するために蒸気を容器130内に供給しないことである。しかし、蒸気はパイプ38を介して廃棄物質を処理するためには使用される。チャンバ及び廃棄物質は、後に詳述する容器130全体を囲む加熱ジャケット140を介して加熱される。
【0038】
容器130は容器130を覆う加熱ジャケット140を含む。加熱ジャケット140は弁136から蒸気が供給されるパイプ網を含む。容器130及び廃棄物質を所望の処理温度である摂氏150度乃至摂氏200度まで迅速に加熱するため、加熱ジャケットは4つの区画140a乃至dに分割されており、導入口区間140aから、第1処理区間140b及び第2処理区間140cを介して取り出し口区間140dまで延伸している。熱が最も必要なのは、廃棄物質を周囲温度から実施可能な最短時間で処理温度まで加熱する必要がある導入口区間140aであり、典型的には40乃至60%のエネルギーが導入口区間140aで必要とされる。廃棄物が容器130内を移動しつつ、より多くの熱エネルギーを保持し、廃棄物を適切な処理温度に維持するのにより少ないエネルギーしか必要としなくなる。例えば、処理区間140b及び140cでは、エネルギーの55-30%が必要である。さらに、最終の取り出し口区間140dでは、廃棄物質は典型的には含水率20乃至40%まで部分的に乾燥されている。
【0039】
加熱ジャケットに供給される熱は、廃棄物質への注入蒸気を供給するため使用するものと同一の蒸気ボイラーから蒸気として供給される。加熱ジャケット140をボイラーに流体接続する効率的な方法は、図8に示したものような設計修正した分配弁136を用いることである。図8に示した分配弁136は図6に示した分配弁36に概ね似ており、ユニットの同一部材を表すには同一の参照番号を用いた。
【0040】
分配弁136は、導入口マニホルド158に配置された蒸気導入口152を含む。流体接続部が、弁室156の内部を介して弁ハウジング50まで延伸している。弁室156は容器130の中心軸の周りを回転可能だが、導入口マニホルド158及び弁ハウジング50は固定されている。弁室156は、蒸気を加熱ジャケット140に供給する蒸気フィード160と、加熱ジャケット140から凝縮水を戻す凝縮水リターン162とを備えている。容器130からの回転は、蒸気フィード160及び凝縮水リターン162を介して弁室156に結合される。さらに、導入口マニホルド158は、蒸気フィード160に流体接続された蒸気線164と、凝縮水リターン162に流体接続された戻し線166とを含む。内部的には、弁室は、蒸気フィード160を導入口マニホルド156内の環状空間を介して蒸気線164に接続する第1環状空間と、戻し線166を導入口マニホルド152内の別の環状空間を介して凝縮水リターン162に接続する第2環状空間とに分割されている。これら環状空間全てが、蒸気導入口152及び弁ハウジング50との間の流体接続部を囲んでいる。第1及び第2環状空間は互いから流体的に分離されている。いうまでもなく、この弁の細かな内部構成は様々に変更可能である。
【0041】
凝縮水の効率的な除去を保証するため、各区間140a乃至dには少なくとも1つの蒸気トラップが組み込まれている。この蒸気トラップは、生蒸気が凝縮水と一緒にボイラーに戻されるのを防止するよう設計されている。この蒸気トラップは凝縮水タンクに接続されている。これは典型的には、ドラムの外周に沿って配置される大口径パイプを含む。凝縮水はドラムとともに回転しつつ、外周に沿った様々な地点からこのタンク内に流入し、最終的には、取り出し口ポートが回転サイクルの底部に到達する際に凝縮水が除去配管に流入される。
【0042】
基本的な処理は図2に示されている。この処理は、主としてセルロース物質を含む大量のバイオマスを生成する。有利なことに、後に詳述するように、このバイオマスを本処理プラント自身の燃料として利用でき、或いはバイオエタノール、バイオブタノール、または他の誘導製品など別の生産物として利用できる。この蒸気処理ユニットからの出力であるバイオマスに含まれるセルロース繊維は、3キロワットのエネルギーを与える11
MJ/kgの総発熱量を持つ。乾燥させれば、このセルロース物質の総発熱量は17乃至18MJ/kgまで増加する。このバイオマスはほとんど硫黄を含まないので、燃焼時に化石燃料よりもかなり清潔で、化石燃料の代替物として使用される。
【0043】
セルロース繊維は商品として販売してもよいし、後に詳述するように、このセルロースバイオマスから気体燃料を生産するバイオマスガス化装置に送ることもできる。直流の電力出力を発生する燃料電池用への入力水素を生産するために、この気体燃料には追加処理を施してもよい。或いは、このセルロース材料を図4及び5に示すように追加処理して、上述のように固体残留物を処理する前にバイオエタノール、バイオブタノール、バイオディーゼル、及び航空燃料を生産することも可能である。
【0044】
図4及び5を参照すると、図1に概ねそれぞれユニットN及びJとして示したようにバイオエタノール/ディーゼルを生産するため、蒸気処理からの出力から生産されたバイオマス及び/またはプラスチックをどのように処理するかを示す。
【0045】
セルロース物質を最初に処置して、図4に示したように、図1の蒸気処理ユニットからのバイオマスは処理済みであって、望ましくない嫌気性プロセスを概ね停止させることによりこの物質を衛生化し、図4の第1段階で概ね示したように加水分解に適する状態になっている。図4に示した第2段階では、バイオマスをバイオマスサイロ50aに約8時間にわたって格納する。次に、バイオマスは酸処理容器51aに供給され、その後に酸タンク50bからの硫酸で処理されて約8時間にわたり酸水解が行われる。水は水タンク50cから供給される。この生産物は次に濾過され、この蒸気処理プラントのボイラーの燃料として利用可能な固形物(リグニン)が除去される。石灰貯蔵ホッパー50dからの石灰を加えて、この液体生産物を酸除去中和容器51bにおいて中和し、さらに精製且つ濾過する。加水分解を用いて固形バイオマスを、このバイオマスに含まれる主要な糖類であるセルロースとヘミセルロースに分解する。この処理は、好適にも重金属も除去する。上述のように、酸水解は、ボイラーに、主要な非加水分解性残留物であるリグニンの形で燃料を供給する働きもする。
【0046】
図示しない代替的な第1段階では、酸水解の代わりに、バイオマスをタンクに投入し、そこでバイオマスは、アスパギリウムス(aspergillums)酵素などの酵素を加えるか、セルロースを加水分解する微生物及び栄養素を用いて分解される。追加の水を加えてもよい。この段階で、発生器からの活性オゾンもタンクに注入してもよい。得られた素材は一定時間にわたり放置し、可溶性の糖類を含む液体を抜き取る。
【0047】
何れの場合でも、この液体を発酵容器52に供給し、ここでイーストサイロ53からのイーストを液体に加えることで発酵が起こる。このイーストは通常はサッカロマイセス・セレビシエであり、図示したようにリサイクルできる。発酵は通常、約72時間を要する。その結果、エタノール及び他の生産物を含む液体が得られ、エタノールを蒸留してエタノール貯蔵タンク55に収集するため、この液体は次に蒸留塔54を含む第4段階に送り込まれる。蒸留過程では、12乃至14%のエタノール溶液を含む発酵混合物を処理して、約99%またはそれを上回る濃度のエタノールまで濃縮する。これは2つの段階で達成される。第一は約94%エタノールの溶液が得られる従来の蒸留であり、残りの水は分子ふるいで除去される。
【0048】
図4に示した処理は、それが連続的に実施できるように一連の並行ユニットで行われることが多い。
【0049】
本発明の方法及び装置により生産されるエタノールまたは他のバイオ燃料は、所望なら通常の様態で使用できる。有利なことに、この燃料は、図2に示したように現場に設置された発電機に燃料として直接供給でき、輸送などに関わる無駄が避けられる。図示した発電機は、Cummins社、Perkin社、Caterpillar社、及びGeneral
Electric社などの主要エンジン製造者から入手可能な1.5乃至3メガワットの数台のエンジンを通常含む。これらは容易に改造してバイオ燃料で動作可能にできる。図1に示したような完全に動作するプラントは、約6メガワット乃至15メガワットを発電するのに十分な燃料を生産するはずである。この出力と発電機は個別の設置状況によって変化しうる。
【0050】
蒸気処理から回収されたプラスチック材料に関しては、図5に示したようにこれをタンク60に送り込み、ここで溶剤を加え、得られた混合物は蒸発タンク61内に放置する。適切な時間経過後、発生する蒸気はゼオライト触媒62を通過させ、続いて蒸留塔63内で蒸留してディーゼルを収集する。所望なら、オゾンをタンク60に注入してもよい。
【0051】
タンク51及び60に注入されるオゾンは、蒸気処理ユニット及び発電機の付近の空気から悪臭を除去する際と同じ様態で発生させればよい。オゾンは別個の1つまたは複数の発生器から供給してもよい。さらに、必要なら、エタノール処理付近の空気はオゾン処理して、タンク51及び60に残っている余分な活性オゾンを取り除いてもよい。
【0052】
本発明は、リサイクル及び回収を必要とする地方自治体の固形廃棄物や様々な他の有機物質を扱う。これらの物質はバイオマス含有率が高く、自然環境中に存在する微生物により汚染されやすく、望ましくない発酵や分解反応に至ることがある。これらの微生物を制御して、後のバイオマス変換段階、特に発酵に依存する段階に入る供給原料の汚染を最小限に抑えることが重要である。
【0053】
また、タンク51、52、60、及び61の一部または全部の内部を抗菌物質で被覆するのが好ましい。好適には、この抗菌物質は、非浸出性且つ非揮発性で、微生物によって消費されないものとする。特に適した物質は表面塗布が可能なものである。
【0054】
適した抗菌性配合物は、有効成分として四アンモニウム塩基、好適には塩素塩または臭素塩を含むものである。こうした塩の窒素原子は、シラン基、好ましくはトリアルキルオキシシラン基(trialkyloxysilane group)、最も好適にはトリメチルオキシ基(trimethyloxysilane
group)で好適には置換される。このシラン基は、プロピル基を介して塩の窒素原子に結合するのが最も好ましい。この塩の窒素原子は、3つの他のアルキル基によって置換されるのが好ましく、好適にはそれらの少なくとも1つはメチルで、好適には少なくとも1つはC8乃至C20のアルキルである。従って、これら好適な化合物は次の一般的な構造を備えている。
【0055】
【化1】
【0056】
上記式でR1はメチルであり、
R2はメチルまたはC8乃至C20のアルキルで、好適にはメチルであり、
R3はC8乃至C20のアルキルで、好適にはテトラデシルまたはオクタデシルであり、
R4はC1乃至C4のアルキルで、好適にはメチルであり、
Xは塩素 臭素で、好適には塩素である。
【0057】
有用な抗菌物質の一例は、3-(トリメトキシシリル)プロピルジメチルオクタデシルアンモニウムクロリド(3-(trimethoxysilyl)-propyldimethyloctadecyl ammonium chloride)を有効成分として含む。有用な抗菌物質の別の例は、3-(トリメトキシシリル)プロピルジメチルテトラデシルアンモニウムクロリド(3-(trimethoxysilyl)-propyldimethyltetradecyl
ammonium chloride )を有効成分として含む。
【0058】
本発明は、機器の内部表面に設けた高分子フィルムの一部として導入した殺菌作用を含むのが好ましい。この高分子フィルムは、複数高分子湿潤剤の独自の混合物を使って分散させたオルガノシラン前駆体を使って現場で生成したもので、機械を分解する必要なく再度塗布または補充できる。実験及び測定から、こうして付着させた殺菌性フィルムは強く、耐久性に優れ、長期にわたる抗菌効果をもたらすことが分かっている。部分的には、この高分子フィルムが、コーティングの表面構造により微生物を破壊する。

バイオマス変換
【0059】
この処理で生産されるバイオマスには上述したように多くの用途がある。反応室C(図1)で生産されるバイオマスは、有利なことに消毒され且つ体積が減少している。重要なことに、この蒸気処理は有機物質の構造を破壊して、セルロース及び他の構成成分が開かれ、下流側の処理でより容易に使用可能となる。このバイオマスは基本的にはセルロース源であり、このセルロースがバイオ燃料、バイオアルコールなどを生成するための後に続く処理のために容易に使用可能となるように処理されているものである。

バイオマス発酵による燃料アルコール生産
【0060】
バイオマスの発酵によるアルコール製造は、最も古くから存在する生物工学的方法の一つである。さらに、発酵回収したエタノールをエネルギー源として用いることは長年知られてはいるが、これまでは石油回収と比較するとコスト高のため商業的には利用されてこなかった。原油供給が不足気味になり且つコストも上昇するなか、バイオエタノールの使用可能性は、エネルギー源として新たに重要となっている。
【0061】
再生可能バイオ燃料の開発は、温室効果ガス放出削減、自国の燃料供給の増加、及び農村経済の維持を含めた経済的懸念と環境に関する懸念とに動機付けられた国際的な優先事項である。バイオ燃料の原料を生産するため微生物を使用するのはバイオ燃料生産には特に魅力的な方法であり、微生物が他の処理で発生した廃棄物を用いてこれを行うときはとりわけ妙味がある。

バイオマスのガス化
【0062】
合成用原料ガス[(「合成ガス」)は、第一に石炭のガス化の主たる副産物として、さらに農業収穫物及び残留物など炭質材料のガス化の主たる副産物として製造されていた。主として二酸化炭素と水を発生する燃焼とは対照的に、ガス化は高い燃料対酸素の比で行われ、水素ガス(H2)と一酸化炭素(CO)を主として発生する。従って、合成ガスは主にH2とCOからなり、少量のCO2と他のガスも含まれる。合成ガスは、低品位の燃料として或いは燃料電池への供給材料として直接使用できる。或いは、合成ガスは触媒処理で用いて、メタン、メタノール、及びホルムアルデヒドなどの広範囲にわたる有用な化学製品を生産できる。本発明のバイオマスは合成ガス生成用の供給材料として極めて適している。
【0063】
酢酸生成菌などの嫌気性微生物は、合成ガスを、特にバイオエタノール及びバイオディーゼルなどの液体バイオ燃料のような有用生産物に変換する実用的な手段となる。こうしたバクテリアは、化学処理を用いて得られるよりも高い特異度、高い歩留まり、及び低エネルギーコストで合成ガスの変換を触媒する。これまでに、廃ガス及び他の基質からバイオ燃料を生産する能力がある幾つかの微生物が確認されている。
【0064】
例えば、合成ガスからの液体燃料生産に用いられる3株の酢酸生成菌が記載されている。すなわちブチリバクテリウム・メチロトロフィカム(Butyribacterium
methylotrophicum)(Grethlein等、1990; Jain等、1994b)、クロストリジウム・オートエタノゲヌム(Clostridium
autoethanogenum)(Abrini等、1994)、及びクロストリジウム・リュングダーリー(Clostridium ljungdahlii)(Arora等、1995;
Barik等、1988; Barik等、1990; 及びTanner等、1993)である。クロストリジウム・リュングダーリーとクロストリジウム・オートエタノゲヌムは、一酸化炭素をエタノールに変換することが知られている。米国特許出願第2007/275447号には、クロストリジウム・カルボキシディボランス(Clostridium carboxidivorans)、ATCC
BAA-624、「P7」が、廃ガスから、バイオ燃料として有用な物質を合成できること、特にP7が一酸化炭素をエタノールに変換できることが記載されている。

バイオマスの酸水解によるアルコール生産
【0065】
このバイオマスは、典型的に2つの基本的な構成成分、炭水化物とリグニンを含んでいる。このバイオマスの炭水化物の内容は、セルロースとヘミセルロースからなり、両者とも多糖類である。セルロース及びヘミセルロースは、単純な糖類に、特にヘキソース(グルコース、フルクトース、マンノース、及びガラクトース)やペントース(キシロース及びアラビノース)に変換できる。ヘキソース糖類は従来は発酵してエタノールを生成し、ペントース糖類は現時点では様々な市販の微生物株を利用して発酵可能で、これら微生物株には、イースト菌のパチソレン・タノフィルス(Pachysolen tannophilus)NRRL
Y-2460、イースト菌のカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)ATCC 1369、Argone National
Laboratory社が開発した真菌のフルサリム(Fursarium)株、及びカリフォルニア大学バークレー校及びLawrence Berkley
Laboratory社が開発したバチルス・マセラン(Bacillus Macerans)が含まれる(がそれらに限定されない)。エタノール、ブタノール、2,3-ブタンジオールが、生産される典型的なアルコールである。これらアルコールは、全てエンジンの大幅な改造をしなくても高い濃度でガソリンに混合可能で、車両の燃料システムに対する腐食作用が比較的少ないので、運輸目的には実用的で多用途のアルコールである。
【0066】
燃料アルコールは、炭水化物及びリグニンを含むバイオマスから製造でき、その際にエネルギーの純生産が実現する。すなわち、アルコールは外部エネルギー源から付加的なエネルギーを加えることなくバイオマスから生産でき、導入したバイオマスそのものがエタノール用の原材料と全ての処理段階のためのエネルギーを提供する。実際に、動作段階及びパラメータによるが、全ての処理段階に必要なエネルギーを上回るエネルギーが生産可能であり、スチームまたは電気として販売してもよい。
【0067】
従って、アルコールは炭水化物及びリグニンを含むバイオマスから製造でき、それにはバイオマスを粒子化し且つスラリー状とし、さらに連続的に酸水解が施される。酸水解はバイオマス中のヘミセルロースの加水分解が行われるのに十分な温度、酸濃度、及び滞留時間の条件で行われ、そこからペントースとヘキソースを分離し、加水分解物を生成する。この加水分解物は、発酵微生物成長を実質的に抑制するほどのフルフラールは含まず、バイオマス中のセルロースを実質的に加水分解もしない。次に、この加水分解物中のペントースとヘキソースを適切な環境条件の下で、イースト菌のパチソレン・タノフィルス(Pachysolen tannophilus)NRRL
Y-2460、真菌のフルサリム(Fursarium)株、バチルス・マセラン(Bacillus Macerans)などに曝露することで、これら糖類を発酵させると、続いて通常の処理(例えば、蒸留)を介して発酵したペントースとヘキソースからアルコールが生産される。
【0068】
状況によっては、フルフラールの生成を最小限にするため、加水分解をセルロースの分解でなくヘミセルロースの分解に向けた方が好ましい場合がある。これには処理によるエネルギー消費が最小限となるという利点があり、さらに、ヘミセルロースの酸水解後に残ったバイオマス(リグニンとセルロースを含む)を燃焼して全ての処理段階のエネルギーに加え他の処理のエネルギーを生産できる。ある種の阻害物質が低濃度であっても発酵微生物の成長率に悪影響を及ぼし、または死滅させうるので、フルフラールなどの阻害物質の生産を最小限にする必要がある。
【0069】
酸水解は通常、酸の体積濃度が約2乃至70%で行われ(好適には硫酸)、加水分解温度は摂氏約120度以下である。酸水解処理の滞留時間は約1乃至3時間で、処理されたバイオマススラリーは、バイオマスの固体対液体比が概ね体積換算で20/100乃至40/100である。バイオマスの粒径は約1乃至4mmである。
【0070】
発酵可能な材料を含むバイオマスを処理する代替的な一方法は、次の段階を含む。すなわち、スラリー化したバイオマスを直立酸水解容器にくみ入れる。この際に、バイオマスの平均粒径を約1乃至4mmとするのが好ましい。バイオマスの酸水解は摂氏約120度以下の温度において容器内で連続的に行われ、加水分解物を与える。加水分解物の第1部分はその発酵のため最終目的地に送られ、加水分解物の第2部分はバイオマスのスラリー化のためスラリー化導管に送られる。容器内のバイオマスは、その酸水解の後で、容器の上部に高温の洗浄水流を導入することで洗い落とす。加水分解し且つ洗い落としたバイオマスは容器の上部から取り出して、脱水する。バイオマスを脱水して得た水は、容器に導入される洗浄水の流れに送り込まれる。
【0071】
この加水分解物は、石灰を用いて中和し、浄化し、次に従来の発酵容器に送るという処理を行うのが好ましい。発酵後は、この「ビール」はイースト分離段階に送り、最終的には、エタノール、ブタノール、2,3-ブタンジオール、及び/または他のアルコール類が生成される従来の蒸留塔に送られる。脱水後に、蒸気を発生するため、バイオマスはイースト分離段階からの生産物とともに炉に送られる。発生される蒸気の量は、蒸留塔で必要な蒸気を供給し、サージタンク(surge
bin)内のバイオマスを蒸気処理し、洗浄水を加熱し、必要なポンプやミキサーなどを作動できる量である。さらに、設備全体が正味エネルギー生産施設となり、外部源からエネルギーを導入しなくても(バイオマス自体を別として)、アルコールに加えて蒸気または電気を生産できるほどの十分なエネルギーが残っているはずである。
【0072】
バイオマスは超音波エネルギーを用いてアルコールに変換できる。「超音波エネルギーを用いたバイオマスのアルコールへの変換」と題した米国特許出願第2008/044891号(FC
STONE CARBON有限会社)では、エタノール生産処理などのバイオマスからアルコールを生産する処理に超音波エネルギーを印加する段階を含む方法が記載されている。この処理は、前処理の唯一の手段として超音波エネルギーを利用し、或いは、付加的に濃縮酸水解(concentrated
acid hydrolysis )の前処理、または熱水若しくは化学的前処理を用い、その後、酵素加水分解の段階若しくは酵素加水分解と糖化とを同時に行う段階が続く。

マイクロ波触媒バイオマス
【0073】
中国特許公開公報CN 100999676(安徽工業大学)には、高純度アセトンアルコールを備えた生物油を製造するためのマイクロ波触媒バイオマスクラッキング処理が記載されており、この処理は、炭酸ナトリウムを触媒として用い、炭化ケイ素をマイクロ波吸収媒体として用い、バイオマスをクラッキングする熱源としてマイクロ波源を用い、揮発性成分の冷却用の氷水混合物を用いて高純度アセトンアルコールを備えた生物油を得ることを特徴としている。バイオマス粒子におけるマイクロ波の独特の温度作用と、バイオマスのクラッキングにおける炭酸ナトリウムの独特の触媒作用とを用いることで、この処理は高度な選択性でアセトンアルコールを生産する。

ブタノール生産
【0074】
ブタノールの発酵生産もよく知られている。国際特許出願WO 2008/
025522号(Bayer Technology Services社)は、バイオアルコールを生産する方法に関するものである。粉砕されたバイオマスからのエタノールまたはブタノールに関して、残りのバイオマスを発酵過程に供給し、アルコールが発酵の生産物として得られるが、発酵前に不溶性成分及び/または非発酵性糖類がバイオマスから分離され、且つ/或いは発酵後に発酵物及び/またはイースト菌及びバクテリアが分離される。

燃料電池におけるバイオマスの使用
【0075】
発電業界は、一般に比較的大規模の発電用途における燃料電池の使用を見越していきた。燃料電池による発電は、高効率と環境へのエミッションの低さという利点を備えている。従って、燃料電池は、他の既存の発電技術に比べてより経済的な発電手段となるかもしれない。
【0076】
溶融炭酸塩燃料電池及び固体酸化物形燃料電池は、加熱気体蒸気の使用に適しており、従って工業発電の用途において大きな将来性を示している。バイオマス・ガス化装置は、これら燃料電池での使用に適した材料の供給源として使用できる。上述したように、燃料電池供給材料として必要な気体は、本発明のバイオマスのガス化から容易に入手できる。
【0077】
従来の燃料電池のさらなる効率化は、例えば、ガス化装置と燃料電池を組み合わせたシステムなどのバイオマスガス化装置との統合によって実現可能であり、このシステムでは、気体蒸気がガス化装置から外部二酸化炭素分離器を介して移動する。米国特許出願第2002/194782号(Paisley)には、燃料電池における電気化学反応がガス化装置から反応ガスを提供することで行われる、バイオマス・ガス化及び燃料電池統合システムが記載されている。ガス化装置からの燃料ガスは燃料電池のアノードに送られ、アノードからの排気ガスの少なくとも一部分は燃焼器に送られる。アノードからの排気ガスの上記の部分は残留エネルギーを回収するため燃焼され、バイオマス・ガス化及び燃料電池統合システムの全体的な効率を向上させる。また、燃焼器からの酸化剤ガスは燃料電池のカソードに送ることもできる。
【0078】
「バイオマス燃料電池コージェネレーション装置及び方法」と題した米国特許第5736026号(Energy Res社)は、バイオマスの発酵によるエタノール製造と電気及び熱エネルギーの電気燃料電池発電機との統合が記載されており、このコージェネレーションは、発酵からのアルコールと二酸化炭素との燃料電池による利用を含み、これがエネルギー発生を増大し、さらに、燃料電池からの熱及び電気エネルギーのアルコール製造過程による利用を含み、これが燃料製造を増加させる。
【0079】
上述の記載から本発明により生産されるバイオマスが様々な方法で使用できることが示されている。通常は、各プラントは、これら下流側処理の特定の何れかに特化するはずである。例えば、燃料電池からの発電、またはバイオ燃料及びバイオアルコールの生産などである。当業者であれば、説明または参照した技術或いは本発明の分野で他の公知技術の何れかを用いてこれを実施或いは、開発可能である。

まとめ
【0080】
本明細書で用いた周囲圧力という用語は、容器30が気体の流れに対して封止されていないときの容器内の圧力を定義するために用いる。この容器内の圧力は、従って通常は大気圧或いはプラントの周りに存在する圧力である。容器内の圧力は、容器が封止されていなくても蒸気注入によってプラント周囲の圧力より僅かに高いことがある。本明細書で用いた周囲温度という用語は、位置、季節、及び一般的な気象条件により変化するプラント周囲の温度を指す。セルロース物質は、文脈から異なるものを明確に指す場合を除いて、セルロース及びヘミセルロースを指す。
【0081】
一般的に、本発明は、地方自治体の生活系廃棄物をリサイクルするための処理工程及び装置に関し、こうした廃棄物を摂氏150乃至200度の蒸気に曝す段階を含む。蒸気処理の後、得られた物質を成分毎に分離し、バイオマス及び/またはプラスチックにはさらなる処理が施される。蒸気処理は、処理済み物質を有利に衛生化し、その体積を有意に減少させる。重要なことに、この蒸気処理はセルロース及び他の有機物質の構造を破壊して、繊維が開かれ、蒸気処理されたバイオマスがより容易にバイオ燃料、バイオアルコールなどに変換可能となる。こうした追加処理は、好適にはバイオマスからバイオエタノールを、プラスチックからディーゼルを生産する。代替的には、水素を発生し、次にその水素を燃料電池に供給して電気出力を得るために、バイオマスの一部または全てをガス化してもよい。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8