(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
屋根の下地材の上に配置され、屋根上設置物を支持するための支持部を備えている支持用屋根仕上げ部材と、この支持用屋根仕上げ部材の下段に配置される屋根仕上げ部材に対して前記支持用屋根仕上げ部材の下部を上側とし、かつこの下部を前記下段の屋根仕上げ部材に対して高さ調整自在とするための高さ調整手段とを含んで構成される屋根上設置物の取付装置において、
前記高さ調整手段は前記支持用屋根仕上げ部材に連結可能となっており、
前記高さ調整手段は、長さ方向が前記屋根の下地材に対して上方へ延びる方向となっている雄ねじ軸部材を有するものとなっており、この雄ねじ軸部材が螺入される雌ねじ孔が前記支持用屋根仕上げ部材に設けられ、この雌ねじ孔に前記雄ねじ軸部材が螺入されることにより前記高さ調整手段は前記支持用屋根仕上げ部材に連結されるとともに、前記雌ねじ孔に対して前記雄ねじ軸部材が回転操作されることにより前記支持用屋根仕上げ部材の下部が前記下段の屋根仕上げ部材に対して高さ調整され、
前記雄ねじ軸部材は前記支持用屋根仕上げ部材を下から上に貫通しており、この支持用屋根仕上げ部材の上面に露出している前記雄ねじ軸部材の上端に、この雄ねじ軸部材を前記雌ねじ孔に対して回転操作するための操作部が設けられていることを特徴とする屋根上設置物の取付装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このため、特許文献1の高さ調整手段は、屋根の下地材の上に配置される楔形状の介装部材を有するものとなっており、この介装部材は、上述の支持用瓦とは分離した部材となっているため、高さ調整手段についての工場等での管理や施工現場等で取り扱いは、支持用瓦と介装部材を別々にして行わなければならず、これらの管理や取り扱いに手間がかかることになり、作業性が低下することになる。
【0007】
本発明の目的は、高さ調整手段についての管理や取り扱いを容易に行うことができるようになる屋根上設置物の取付装置を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る屋根上設置物の取付装置は、屋根の下地材の上に配置され、屋根上設置物を支持するための支持部を備えている支持用屋根仕上げ部材と、この支持用屋根仕上げ部材の下段に配置される屋根仕上げ部材に対して前記支持用屋根仕上げ部材の下部を上側とし、この下部を前記下段の屋根仕上げ部材に対して高さ調整自在とするための高さ調整手段とを含んで構成される屋根上設置物の取付装置において、前記高さ調整手段は前記支持用屋根仕上げ部材に連結可能となっていることを特徴とするものである。
【0009】
この屋根上設置物の取付装置では、高さ調整手段は支持用屋根仕上げ部材に連結可能となっているため、高さ調整手段について工場等で管理するときや、施工現場等で取り扱うときに、高さ調整手段を支持用屋根仕上げ部材に連結しておくことができる。このため、高さ調整手段についての管理や取り扱いを容易に行うことができるようになり、作業性が向上する。
【0010】
なお、本発明に係る高さ調整手段は、支持用屋根仕上げ部材と常時連結されているものでもよく、あるいは、必要に応じて支持用屋根仕上げ部材と連結できるものでもよい。
【0011】
また、本発明に係る高さ調整手段は、屋根仕上げ部材の重量が支持用屋根仕上げ部材を介して下段の瓦に作用しないように用いてもよく、言い換えると、支持用屋根仕上げ部材の下部と下段の屋根仕上げ部材との間に僅かな隙間をあけるために、本発明に係る高さ調整手段を用いてもよく、あるいは、屋根仕上げ部材の重量が支持用屋根仕上げ部材を介して下段の屋根仕上げ部材に作用することを抑制するために、本発明に係る高さ調整手段を用いてもよく、言い換えると、支持用屋根仕上げ部材の下部が下段の屋根仕上げ部材に接触するが、この接触が、支持用屋根仕上げ部材に作用している屋根上設置物の重量のうち、少しの重量だけが下段の屋根仕上げ部材に作用する接触となるように、本発明に係る高さ調整手段を用いてもよい。
【0012】
さらに、本発明に係る高さ調整手段は、支持用屋根仕上げ部材と連結可能になるものであれば、任意な形式、構造によるものでよい。その一例の高さ調整手段は、長さ方向が屋根の下地材に対して上方へ延びる方向となっている雄ねじ軸部材を有するものとし、この雄ねじ軸部材が螺入される雌ねじ孔を支持用屋根仕上げ部材に設け、この雌ねじ孔に雄ねじ軸部材を螺入することにより高さ調整手段を支持用屋根仕上げ部材に連結できるようにするとともに、前記雌ねじ孔に対して雄ねじ軸部材を回転操作することにより支持用屋根仕上げ部材の下部を前記下段の屋根仕上げ部材に対して高さ調整できるようにすることである。
【0013】
このように高さ調整手段を構成する場合において、雄ねじ軸部材が螺入される雌ねじ孔を支持用屋根仕上げ部材に設けることは、この支持用屋根仕上げ部材に雌ねじ孔を形成することでもよく、あるいは、雌ねじ孔が形成されているナット部材を支持用屋根仕上げ部材に取り付けることでもよい。
【0014】
また、高さ調整手段を上述のようにする構成する場合には、前記雄ねじ軸部材を、支持用屋根仕上げ部材を下から上に貫通するものとし、この支持用屋根仕上げ部材の上面に露出する雄ねじ軸部材の上端に、この雄ねじ軸部材を前記雌ねじ孔に対して回転操作するための操作部を設けることが好ましい。
【0015】
これによると、支持用屋根仕上げ部材を屋根の下地材の上に配置した後に、支持用屋根仕上げ部材の上面に露出している雄ねじ軸部材の上端の操作部で雄ねじ軸部材を回転操作することにより、支持用屋根仕上げ部材の下部を下段の屋根仕上げ部材に対して高さ調整
することができ、この高さ調整作業を屋根の下地材の上に配置された支持用屋根仕上げ部材の上側から行うことができるため、作業の容易化を図ることができる。
【0016】
なお、雄ねじ軸部材の上端に設ける操作部は、例えば、手動式又は電動式の回転工具を挿入係合することができる溝等の係合部でもよく、雄ねじ軸部材の上端に取り付けられたハンドル等による手動操作部でもよい。
【0017】
また、上述のように高さ調整手段を、長さ方向が屋根の下地材に対して上方へ延びる方向となっている雄ねじ軸部材を有するものとする場合には、この雄ねじ軸部材の下端にベース部材を設け、このベース部材が屋根の下地材の上に載せられることにより、雄ねじ軸部材が屋根の下地材に対して上方へ延びるようにすることが好ましい。
【0018】
これによると、屋根上設置物の重量は、支持用屋根仕上げ部材、雄ねじ軸部材及びベース部材を介して屋根の下地材に作用することになり、ベース部材により、屋根上設置物の重量を屋根の下地材に有効に支持させることができるようになる。
【0019】
また、ベース部材に対して雄ねじ軸部材を首振り可能とすることが好ましい。
【0020】
これによると、ベース部材に対して雄ねじ軸部材を首振りさせて、屋根の下地材に対する雄ねじ軸部材の角度を変更することにより、勾配角度が異なる各種の屋根に対処することや、屋根の下地材に対する支持用屋根仕上げ部材の配置角度を任意に設定することを行うことができるようになる。
【0021】
また、上述したように雄ねじ軸部材を、支持用屋根仕上げ部材を下から上に貫通するものとする場合には、本発明に係る屋根上設置物の取付装置を、支持用屋根仕上げ部材に形成されている貫通孔の上端を塞ぐための防水キャップ部材を備えているものとし、雄ねじ軸部材が前述したように回転操作された後に、防水キャップ部材により貫通孔の上端を塞ぐようにすることが好ましい。
【0022】
これによると、支持用屋根仕上げ部材に雄ねじ軸部材が下から上に貫通する貫通孔を形成しても、雄ねじ軸部材が回転操作された後に、防水キャップ部材によりこの貫通孔の上端を塞ぐことにより、雨水が貫通孔を通過して支持用屋根仕上げ部材の下側まで達してしまうことを防止できる。
【0023】
また、本発明において、支持用屋根仕上げ部材の前記支持部に前記屋根上設置物を支持させるための構造は、任意である。その一例は、屋根上設置物をこの支持部に取り付けるための取付構造体をこの支持部に連結することである。このように支持用屋根仕上げ部材の支持部に取付構造体を連結するためには、前記支持部に形成した雌ねじ部に上から1本又は複数本のボルトを螺入することによりこの連結を行い、この雌ねじ部を、支持用屋根仕上げ部材の下面まで達していない不貫通穴とすることが好ましい。
【0024】
これによると、支持用屋根仕上げ部材の支持部に取付構造体を連結するための1本又は複数本のボルトを螺入するための雌ねじ部を支持用屋根仕上げ部材に形成しても、この雌ねじ部は、支持用屋根仕上げ部材の下面まで達していない不貫通穴となっているため、雨水が雌ねじ部を通過して支持用屋根仕上げ部材の下側まで達してしまうことを防止できる。
【0025】
また、上述したように、屋根上設置物を屋根仕上げ部材の支持部に取り付けるための取付構造体をこの支持部に連結する場合には、この連結を、上下方向を長さ方向とする1本のボルトにより行い、このボルトを中心に取付構造体の向きを支持用屋根仕上げ部材に対して変更可能とすることが好ましい。
【0026】
これによると、取付構造体の向きを、例えば、屋根の勾配方向とすることや、屋根の勾配方向と直角をなす方向とすることに、その屋根上設置物の施工現場ごとに任意に決めることができるようになり、屋根上設置物の種類等に応じて取付構造体の向きを自由に設定できるようになる。
【0027】
なお、屋根上設置物を支持用屋根仕上げ部材の支持部に取り付けるための前記取付構造体は、1個の部材からなるものでもよく、あるいは、複数個の部材の組み合わせからなるものでもよく、この取付構造体の形式、構造は任意である。
【0028】
また、本発明において、屋根仕上げ部材は瓦によるものでもよく、スレートによるものでもよい。すなわち、本発明に係る屋根上設置物の取付装置は、瓦葺き屋根にも適用することができ、スレート葺き屋根にも適用することができる。
【0029】
また、本発明において、屋根上設置物は、太陽光発電のためのソーラーパネルでもよく、太陽熱利用の温水器でもよく、屋根の上に設置される看板でもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によると、屋根上設置物の取付装置の構成要素となっている高さ調整手段についての管理や取り扱いを容易に行うことができるようになるという効果を得られる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。本実施形態に係る取付装置は、ソーラーパネルを瓦葺き屋根に取り付けるために用いられる。このため、本実施形態における屋根上設置物はソーラーパネルであり、また、屋根仕上げ部材は瓦である。
【0033】
図1には、本実施形態に係る取付装置1が瓦葺き屋根2に適用されている場合が示されている。この瓦葺き屋根2は、下地材3と、この下地材3の上に、上下及び左右に配置された複数の瓦4とにより構成されている。
図1に示されている瓦4には、下段の瓦4Aと、この瓦4Aの上部の上側に下部が被せられている中段の瓦4Bと、この中段の瓦4Bの上部の上側に下部が被せられている上段の瓦4Cとが示されている。これらの瓦4A〜4Cのうち、中段の瓦4Bは、ソーラーパネルを支持するための支持用屋根仕上げ部材となっている支持用瓦であり、この支持用瓦4Bは、本実施形態に係る取付装置1の構成要素にもなっている。
【0034】
図3には、屋根2の下地材3が示されている。この下地材3は、野地板3Aと、上下の瓦4のそれぞれの段ごとに野地板3Aの上面に固定された横桟3Bと、中段の瓦4Bが配置された箇所において、すなわち、上述の支持用瓦4Bが配置された箇所において、野地板3Aの上面に固定された板状の補強部材3Cとを含んで構成されている。それぞれの瓦4の上部は横桟3Bの上に載せられているとともに、下段と上段の瓦4A,4Cは、これらの瓦4A,4Cに形成されている下孔に上側から挿入されて横桟3Bまで打ち込まれている釘等の止着具5により、下地材3に固定されている。
【0035】
支持用瓦4Bの基本形状及び寸法はほかの瓦4A,4Cと同じであり、また、この支持用瓦4Bは、例えば、陶器製のほかの瓦4A,4Cと異なり、アルミ製又はアルミ合金製となっている。
図2にはこの支持用瓦4Bが示されている。支持用瓦4Bの上面には、上方へ膨出して形成された1個の大きな第1膨出部11と、この第1膨出部11の周囲において、上方へ膨出して形成された4個の小さな第2膨出部12と、支持用瓦4Bの上面に沿ったこれらの第2膨出部12よりも下側において、第1膨出部11と第2膨出部12の間の大きさで上方へ膨出して形成された左右2個の第3膨出部13とが設けられている。
【0036】
本実施形態では、後述の説明で分かるように、第1膨出部11が、支持用瓦4Bにおけるソーラーパネルを支持するための支持部となっている。
【0037】
また、全部の第2膨出部12には、支持用瓦4Bを上下方向に貫通する貫通孔6が形成されており、それぞれの貫通孔6は、頭部7Aの下面に防水部材8がセットされたスクリュウ釘や、ビス、ボルト等による止着具7が上から挿入される下孔となっており、
図3に示されているように、これらの止着具7により、支持用瓦4Bが屋根2の下地材3に固定されるようになっている。
【0038】
図2に示されているように、それぞれの第3膨出部13には、支持用瓦4Bを上下方向に貫通している貫通孔14が形成されており、これらの貫通孔14は、
図5に示されているように、下向きに先細り状となっている上部の孔部14Aと、下部の雌ねじ孔部14Bとからなる。本実施形態における雌ねじ孔となっているこの雌ねじ孔部14Bには、雄ねじ軸部材15が下から螺入されており、屋根の下地材3に対して上方へ延びる部材となっているこの雄ねじ軸部材15は、貫通孔14において支持用瓦4Bを下から上に貫通している。また、雄ねじ軸部材15の下端には、ベース部材16が設けられており、このベース部材16は、下端の平板部16Aと、この平板部16Aの上部に形成された半球状又は略半球状の本体部16Bとからなる。なお、この本体部16Bは、半球状又は略半球状の形状に限らず、例えば、角形状のハット状でもよく、後述するように、雄ねじ軸部材15を首振り可能に連結することができる形状であればよい。
【0039】
この本体部16Bの頂部には孔16Cが形成されており、この孔16Cに、雄ねじ軸部材15の下端から下方へ突出している突出部15Aが挿入されている。そして、この突出部15Aが、例えば、下面の打圧押し出し加工により、下方へ末広がり形状に形成されていることにより、雄ねじ軸部材15の下端にベース部材16がこの雄ねじ軸部材15と分離不能に連結されているとともに、この連結は、ベース部材16に対して雄ねじ軸部材15が、突出部15Aを中心にして首振り可能に行われている。また、
図5に示されているように、支持用瓦4Bの上面に露出している雄ねじ軸部材15の上端には、この雄ねじ軸部材15を支持用瓦4Bに形成されている雌ねじ孔部14Bに対して回転操作するための操作部15Bが設けられている。本実施形態におけるこの操作部15Bは、ドライバ等の手動式工具又は電動式工具が挿入係合される溝となっている。
【0040】
さらに、
図5に示されているように、雄ねじ軸部材15を下から上へ挿入できるように支持用瓦4Bに形成されていて、一部が雌ねじ孔部14Bとなっている上述の貫通孔14の上端には、防水キャップ部材17が被せられており、この貫通孔14の上端を塞ぐためのこの防水キャップ部材17は、貫通孔14のうち、下向きに先細り状となっている上部の孔部14Aに挿入される挿入部17Aと、貫通孔14が形成されている前述の第3膨出部13の上部に被せられるフランジ部17Bを有している。このため、貫通孔14を通過して雨水が支持用瓦4Bの下側に達してしまうことは、防水キャップ部材17により防止されている。
【0041】
また、挿入部17Aは、雄ねじ軸部材15の上部の雄ねじ部に噛み込んだ状態でこの雄ねじ軸部材15に係合するため、雄ねじ軸部材15がベース部材16に対して回転することが防水キャップ部材17で防止され、このため、本実施形態に係る取付装置が長期間使用されて、風等による微振動等で支持用瓦4Bの雌ねじ孔部14Bに対して雄ねじ軸部材15が緩んでしまって支持用瓦4Bが下段の瓦4Aに対して下降してしまうことを防止できる。
【0042】
以上のようにベース部材16が下端に設けられた雄ねじ軸部材15と、防水キャップ部材17は、
図2に示されている左右2個の第3膨出部13のそれぞれについて設けられている。
【0043】
左右2個の第3膨出部13のそれぞれに形成されている貫通孔14の上端を防水キャップ部材17によって塞ぐ前に、
図1に示されているように、下段の瓦4Aの上部に対して支持用瓦4Bの下部を上側にするとともに、
図3に示されているように、支持用瓦4Bの上部を横桟3Bの上に載せ、また、ベース部材16を屋根2の下地材3の補強部材3Cの上に載せ、これにより、ベース部材16に下端が首振り可能に連結されている雄ねじ軸部材15を屋根2の下地材3に対して上方へ延ばして、支持用瓦4Bを屋根2の下地材3に上に配置した後に、支持用瓦4Bの雌ねじ孔部14Bに螺入されているそれぞれの雄ねじ軸部材15を、ドライバ等の手動式工具又は電動式工具による操作部15Bの操作により、雌ねじ孔部14Bに対して正逆回転させると、支持用瓦4Bの下部は上下に移動するため、支持用瓦4Bの下部を、この支持用瓦4Bの下段に配置されている瓦4Aに対して高さ調整することができる。
【0044】
このため、雄ねじ軸部材15やベース部材16により、支持用瓦4Bの下部を下段の瓦4Aに対して高さ調整するための本実施形態に係る高さ調整手段18が構成されていることになる。そして、この高さ調整手段18による高さ調整作業により、
図3に示されているように、支持用瓦4Bの下部と下段の瓦4Aとの間に、例えば、1mm程度の隙間Sをあけることができる。
【0045】
また、高さ調整手段18による高さ調整作業は、支持用瓦4Bの上面に露出している雄ねじ軸部材15の上端に設けられた操作部15Bにおいて、雄ねじ軸部材15を回転操作することにより行えるため、屋根2の下地材3に上に配置された支持用瓦4Bの上側から高さ調整作業を行えることになり、このため、この高さ調整作業を容易に行えることになる。
【0046】
さらに、この高さ調整手段18による高さ調整作業は、支持用瓦4Bの周囲にそれぞれ瓦が配置されている状態でも、言い換えると、支持用瓦4Bの周囲にそれぞれ瓦を配置する作業を行った後でも、容易に行うことができる。
【0047】
また、高さ調整手段18による高さ調整作業を行った後に、それぞれの貫通孔14の上端を防水キャップ部材17によって塞ぐことにより、雨水が貫通孔14を通過して支持用瓦4Bの下側に達してしまうことを防止できる。
【0048】
また、前述したように、本実施形態に係る取付装置が長期間使用されても、風等による微振動等で支持用瓦4Bの雌ねじ孔部14Bに対して雄ねじ軸部材15が緩んでしまうことが防水キャップ部材17によりなくすことができるため、支持用瓦4Bが下段の瓦4Aに対して下降してしまうことを防止できることになる。
【0049】
さらに、上述したように、ベース部材16に対して雄ねじ軸部材15は首振り可能となっているため、屋根2の下地材3に対する雄ねじ軸部材15の角度を変更することができる。このため、勾配角度が異なる各種の屋根2に対処でき、また、屋根2の下地材3に対する支持用瓦4Bの配置角度を必要とされる任意の角度に設定することができる。
【0050】
以上のように高さ調整手段18により支持用瓦4Bの下部を下段の瓦4Aに対して高さ調整した後に、この支持用瓦4Bに合計4個設けられている第2膨出部12のそれぞれの貫通孔6に、スクリュウ釘や、ビス、ボルト等による止着具7を上から挿入するとともに、これらの止着具7を、
図5に示されているように、屋根2の下地材3の補強部材3C及び野地板3Aまで打ち込むことにより、支持用瓦4Bは、4本の止着具7により下地材3に固定される。そして、それぞれの止着具7の頭部7Aの下面には防水部材8がセットされているため、貫通孔6の上端が防水部材8で塞がれることになり、これにより、雨水が貫通孔6を通過して支持用瓦4Bの下側に達してしまうことが防止される。
【0051】
また、
図5に示されているように、貫通孔6は下向きの末広がり状となっているため、貫通孔6に対する止着具7の挿入角度を変更することができ、このため、下地材3に対する支持用瓦4Bの配置角度が異なるそれぞれの屋根に対して対処することができる。
【0052】
以上の作業が終了した後に、支持用瓦4Bの第1膨出部11に、
図3及び
図4で示されている取付構造体20を介して
図3で示されているソーラーパネル19を取り付けるための作業が行われる。すなわち、支持用瓦4Bの第1膨出部11は、取付構造体20を介してソーラーパネル19を支持させるための支持部となっている。
【0053】
次に、取付構造体20について説明する。
図6には、この取付構造体20の一部を構成する構成要素の分解斜視図が示されている。
【0054】
図6に示されているように、取付構造体20は、ベース部材21と、このベース部材21の上側に配置されるブラケット部材22と、このブラケット部材22の両方の側面に配設される一対の押込部材23とを有するものとなっており、ブラケット部材22は、
図4に示されているように、レール部材24を下側から受けるための部材であり、このレール部材24も取付構造体20を構成する構成要素となっている。
【0055】
図6に示されているように、ベース部材21は、底部21Aと、この底部21Aの両端から立ち上がっている立上部21Bと、これらの立上部21Bの上端から内側へ屈曲して底部21Aと平行になっている屈曲部21Cとからなる。底部21Aには、1本のボルト25の雄ねじ軸部25Aを上から挿入するための孔26が形成されており、この雄ねじ軸部25Aが、
図5で示されている支持用瓦4Bの第1膨出部11に上から下に形成されている雌ねじ部27に螺入されることにより、ベース部材21は、この第1膨出部11の頂部にボルト25で取り付けられる。
【0056】
雌ねじ部27は、
図5から分かるように、支持用瓦4Bの下面まで達していない不貫通穴となっている。このため、この雌ねじ部27を通過して雨水が支持用瓦4Bの下側に達してしまうことはない。
【0057】
また、
図6に示されているように、ブラケット部材22は、ベース部22Aと、このベース部22Aの両端から下向きに垂下した一対の垂下部22Bと、ベース部22Aの両端近傍から上向きに立ち上がった一対の立上部22Cとからなる略H字形状の部材となっている。
図4から分かるように、ブラケット部材22のベース部22Aはベース部材21の屈曲部21Cの上に載せられるとともに、それぞれの垂下部22Bは、ベース部材21の立上部21Bにボルト28及びナット29で結合され、これにより、ブラケット部材22は、このブラケット部材22のベース部22Aがベース部材21の上側に配置されてベース部材21に結合されている。
【0058】
図6に示されているように、ブラケット部材22のベース部22Aには大きな孔30が形成されており、このため、ボルト28及びナット29によりブラケット部材22をベース部材21に結合した後でも、上述したボルト25によりベース部材21を支持用瓦4Bの第1膨出部11に結合する作業を、この孔30に挿入した手動式又は電動工具でボルト25を回転させることにより、行えるようになっている。
【0059】
また、
図6に示されているように、上述のボルト28の軸部を挿入するためにブラケット部材22の垂下部22Bに形成されている孔は、上下方向に長い長孔31となっており、このため、ベース部材21に対するブラケット部材22の高さ位置を上下方向に調整することができるようになっている。
【0060】
図4及び
図6に示されているように、ブラケット部材22のそれぞれの立上部22Cには、ブラケット部材22の幅方向外側に、言い換えると、前述したレール部材24の幅方向外側に先細り状に突出した突出部32が形成されており、この突出部32の外側面に前述した押込部材23が配置されている。突出部32と対応する形状の凹部23Aが形成されているこの押込部材23には、ブラケット部材22にレール部材24を結合するために用いられる
図4のボルト33の軸部33Aが挿入される
図6の孔34が形成されている。また、
図6に示されているように、ブラケット部材22の立上部22Cには、上記突出部32において、このボルト33の軸部33Aが螺入される雌ねじ孔35が形成されている。
【0061】
また、それぞれの押込部材23には、孔34の両側に孔36,37が形成され、ブラケット部材22の立上部22Cには、これらの孔36,37と対応する孔38,39が形成されている。
【0062】
また、
図4に示されているように、レール部材24の幅方向両側の側面には、ブラケット部材22の立上部22Cの上端が嵌合する突起部40が形成されており、さらに、それぞれの押込部材23には、この突起部40の上面を押えるための押え部41が設けられている。
【0063】
ブラケット部材22にレール部材24を結合するためには、前述したボルト33の軸部33Aを押込部材23の孔34に挿入するとともに、この軸部33Aを、レール部材24を下側から受けるための部材となっているブラケット部材22の立上部22Cに設けられた雌ねじ孔35にレール部材24に向かって進退自在に螺入する。さらに、ボルト33を回転させてこのボルト33をレール部材24に向かって前進させると、
図4に示されているとおり、軸部33Aの先端は、アルミ製又はアルミ合金製の押し出し成形品又は引き抜き成形品であるレール部材24の側面24Aのうち、この軸部33Aの先端と対応する部分42を強圧することにより、この部分42をレール部材24の内側へ膨出変形させることになる。これにより、レール部材24は、ボルト33の軸部33Aの先端とレール部材24の上記部分42との大きな摩擦力により、ブラケット部材22に結合されることになる。
【0064】
また、上述のようにブラケット部材22にレール部材24を結合するためにボルト33を前進させると、ボルト33の頭部33Bは押込部材23をレール部材24の側へ押すため、この押込部材23の前述した凹部23Aが、ブラケット部材22の立上部22Cにブラケット部材22の幅方向外側に先細り状に形成されている突出部32に嵌合するとともに、押込部材23に設けられている押え部41が、レール部材24の側面24Aに形成されている突起部40の上面を押えるため、レール部材24は、押込部材23とブラケット部材22のベース部22Aとにより上下に押さえ込まれることになり、これにより、レール部材24は上下方向に不動状態の固定された状態となる。
【0065】
このようにレール部材24が押込部材23とブラケット部材22のベース部22Aとにより上下に押さえ込まれて上下方向に固定された状態となったときに、ボルト33の軸部33Aの先端が、レール部材24の側面24Aのうち、この軸部33Aの先端と対応する部分42を強圧し、この強圧により、この部分42をレール部材24の内側に膨出変形させるため、レール部材24をブラケット部材22に結合するために必要となるこの膨出変形を確実に実現することができ、これにより、レール部材24をブラケット部材22に確実に結合することができる。
【0066】
なお、ボルト33を前進させる作業は、上記部分42が膨出変形した後に、この部分42が破損する前に停止してもよく、あるいは、部分42が膨出変形した後に、この部分42がさらに破損するまで継続させてもよい。
【0067】
図4に示されているように、レール部材24には、このレール部材24に
図3で示したソーラーパネル19を固定するためのボルト50が配置されている。このボルト50は頭部50A付きのボルトであり、この頭部50Aは、レール部材24の上部に設けられている溝51に挿入され、また、ボルト50の軸部50Bは、溝51の上部にレール部材24の幅方向に一対形成されている突部52の間の隙間53からレール部材24の上方へ延出している。溝51及び隙間53は、レール部材24の全長に渡って連続して形成されている。ボルト50の軸部50Bに螺合させているナット54を突部52の上面に当接させてさらに締め付けることにより、ボルト50は、レール部材24の長さ方向の任意な位置においてレール部材24に結合される。
【0068】
ボルト50は、レール部材24とボルト50との分解斜視図となっている
図7に示されているように、T字形ボルトである。すなわち、ボルト50の頭部50Aの平面形状は、短寸法L1と長寸法L2とからなる長方形又は略長方形である。そして、短寸法L1の寸法は、レール部材24の隙間53の寸法L3よりも小さく、長寸法L2の寸法は、溝51の寸法L4よりも小さくかつ隙間53の寸法L3よりも大きくなっている。
【0069】
このため、本実施形態では、ボルト50をレール部材24の長さ方向の所定位置に配置するためには、頭部50Aをレール部材24の長さ方向の一方の端部から溝51に挿入してボルト50をレール部材24の所定位置までスライドさせる作業は不要である。すなわち、本実施形態において、ボルト50をレール部材24の長さ方向の所定位置に配置するためには、レール部材24の所定位置の上方において、
図7に示されているように、ボルト50の頭部50Aの向きをレール部材24の長さ方向と一致させた後に、言い換えると、長寸法L2の方向とレール部材24の長さ方向とを平行にさせた後に、ボルト50をそのまま降ろすことにより、頭部50Aを隙間53を通過させて溝51に到達させ、次いで、ボルト50を軸部50Bを中心に90度回動させることにより、頭部50Aを溝51に係止させる。この後に、ナット54を突部52の上面に当接させてさらに締め付けることにより、ボルト50をレール部材24の長さ方向の所定位置でレール部材24に結合できることになる。
【0070】
このようなボルト50は、1本のレール部材24につき複数個設けられており、
図3に示されているように、これらのボルト50ごとに用意されている固定部材61により、ソーラーパネル19がレール部材24に固定されるようになっている。
図3に示されているように、固定部材61は、ボルト50の上向きの軸部50Bが上下に貫通する孔が形成された基部61Aと、この基部61Aの下面に一対形成され、レール部材24の上面に載せられる脚部61Bと、基部61Aから立ち上がり、ソーラーパネル19の上面に当接し、ソーラーパネル19をレール部材24に押し付けるための押付部61Cとからなる。
【0071】
このため、ボルト50の軸部50Bに螺合したナット62により固定部材61をレール部材24に結合することにより、ソーラーパネル19は、固定部材61の押付部61Cによる押し付け作用によりレール部材24に固定されることになる。
【0072】
このように固定部材61でソーラーパネル19が固定されるレール部材24や、取付構造体20、支持用瓦4Bは、それぞれのそれぞれソーラーパネル設置現場について複数個設けられる。
【0073】
そして、以上の説明で分かるように、前述した支持用瓦4Bの第1膨出部11にソーラーパネル19を取り付けるためのものであって、この第1膨出部11を、ソーラーパネル19を支持させるための支持部とするための取付構造体20は、前述したベース部材21と、ブラケット部材22と、一対の押込部材23と、レール部材24と、ボルト50と、固定部材61により構成されたものとなっている。
【0074】
なお、
図6で示した押込部材23の孔36,37と、ブラケット部材22の孔38,39は、長さ方向が屋根2の勾配方向となってブラケット部材22に載置されるレール部材24がこのブラケット部材22に沿ってスライドしてしまうことを防止するための手段となっている棒状部材を挿入するために用いられる。
【0075】
すなわち、押込部材23の孔36,37のうち、屋根2の勾配方向の下側となっている孔と、ブラケット部材22の孔38,39のうち、屋根2の勾配方向の下側となっている孔とに、スプリングピン等による棒状部材を挿入するとともに、この棒状部材を、レール部材24にこのレール部材24の長さ方向に長く形成された長孔にも挿入し、これにより、
図4で説明したようにボルト33によりレール部材24をブラケット部材22に結合した後に、レール部材24が、たとえ、レール部材24自身の重量及びソーラーパネル19の重量によりブラケット部材22に沿ってスライドしてしまうことがあっても、レール部材24の長孔の端部が棒状部材に当接することにより、レール部材24がそれ以上にスライドすることを防止することができる。
【0076】
そして、棒状部材が挿入される可能となっている押込部材23の孔36,37及びブラケット部材22の38,39は、ボルト33の軸部33Aが挿入される押込部材23の孔34及びブラケット部材22の雌ねじ孔35の両側に設けられているため、
図6で示されているベース部材21に対してブラケット部材22の向きを180度逆にしても、上述したように、屋根2の勾配方向の下側となっている押込部材23及びブラケット部材22の孔に棒状部材を挿入することができる。
【0077】
以上説明したように、本実施形態に係るソーラーパネル19の取付装置1は、ソーラーパネル19を支持する支持部となっている第1膨出部11を備えた支持用瓦4Bと、この支持用瓦4Bの下段に配置される瓦4Aに対して支持用瓦4Bの下部を上側とし、かつこの下部を下段の瓦4Aに対して高さ調整自在とするための高さ調整手段18とを含んで構成されたものとなっており、この高さ調整手段18の構成要素となっていて、下端に
図5で示したベース部材16が連結されている雄ねじ軸部材15は、支持用瓦4Bに形成されている貫通孔14の雌ねじ孔部14Bに螺入されるものとなっているため、支持用瓦4B等を製造する工場や、支持用瓦4Bを施工するソーラーパネル設置現場において、雄ねじ軸部材15を雌ねじ孔部14Bに螺入しておくことにより、支持用瓦4Bに高さ調整手段18を連結しておくことができる。
【0078】
このため、高さ調整手段18を支持用瓦4Bから分離したものとせずに、高さ調整手段18についての工場での管理や施工現場等で取り扱いを行うことができることになり、これにより、高さ調整手段18についての管理や取り扱いを容易に行うことができるようになる。
【0079】
また、この高さ調整手段18により、
図3で説明したように、支持用瓦4Bの下部と下段の瓦4Aとの間に、例えば、1mm程度の隙間Sをあけることができるため、支持用瓦4Bに作用するソーラーパネル19の重量は、下段の瓦4Aに作用することはなく、このため、この下段の瓦4Aがソーラーパネル19の重量により破損等することを防止することができる。
【0080】
また、雄ねじ軸部材15の下端には屋根2の下地材3に載せられるベース部材16が設けられているため、この雄ねじ軸部材15に作用するソーラーパネル19の重量をベース部材16を介して屋根2の下地材3に作用させることができ、このため、このベース部材16により、ソーラーパネル19の重量を屋根2の下地材3に有効に支持させることができるようになる。
【0081】
さらに、
図6で示す取付構造体20の構成要素となっているベース部材21は、
図4、
図5及び
図6で示されている1本のボルト25により支持用瓦4Bの第1膨出部11に取り付けられているため、取付構造体20は、上下方向を長さ方向とするこのボルト25を中心にして支持用瓦4Bに対する向きを変更できるようになっており、このため、取付構造体20の向きを、言い換えるとレール部材24の向きを、例えば、前述したように屋根2の勾配方向としたり、屋根2の勾配方向と直角をなす方向としたりすることができ、この向きをソーラーパネル19の施工現場ごとに任意に設定することができる。