(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690616
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】光照射装置及び光照射方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20150305BHJP
【FI】
H01L21/68 N
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-49752(P2011-49752)
(22)【出願日】2011年3月8日
(65)【公開番号】特開2012-186399(P2012-186399A)
(43)【公開日】2012年9月27日
【審査請求日】2013年11月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101188
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 義雄
(72)【発明者】
【氏名】中田 幹
【審査官】
杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−212384(JP,A)
【文献】
特開2003−173029(JP,A)
【文献】
特開2011−040476(JP,A)
【文献】
特開2007−194433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/67 − 21/687
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被照射体に相対配置されて前記被照射体の被照射面に光を照射する発光手段と、前記被照射体と発光手段とを相対移動させる移動手段とを含む光照射装置において、
前記発光手段は、発光源と、当該発光源から発光された光を平行光に変換し、前記相対移動方向と交差する方向に延びる帯状光を形成可能に設けられた平行光変換手段と、前記発光源から発光された光を矩形投光面に変換して前記平行光変換手段に導く矩形光変換手段とを備えていることを特徴とする光照射装置。
【請求項2】
前記発光手段は、前記発光源から発光された光を前記平行光変換手段に導く導光手段を有することを特徴とする請求項1記載の光照射装置。
【請求項3】
被照射体と発光源とを相対配置する工程と、
前記発光源から発光された光を矩形投光面に変換する工程と、
前記矩形投光面に変換された光を平行光に変換する工程と、
前記被照射体と発光源とを相対移動させて前記平行光を被照射体の被照射面に照射する工程とを備えていることを特徴とする光照射方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光照射装置及び光照射方法に係り、特に、半導体ウエハ等に貼付された光反応型の接着剤層を有する接着シートに光を照射することのできる光照射装置及び光照射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ(以下、単に、「ウエハ」と称する場合がある)の処理装置においては、ウエハの回路面に保護用の接着シートを貼付して裏面研削を行ったり、ダイシングテープを貼付して複数のチップに個片化したりする処理が行われる。このような処理に使用される接着シートには、接着剤に紫外線硬化型(光反応型)のものが採用されており、上記のような処理の後、紫外線照射装置(光照射装置)により紫外線(光)を接着シートに照射することで、当該接着シートの接着剤を硬化させて接着力を弱め、ウエハの破損を防止して容易に剥離できるようになっている。
【0003】
前記紫外線照射装置としては、例えば、特許文献1に開示されている。同文献における紫外線照射装置は、発光体から射出された光を収縮させて形成した焦点を照射面に向かって照射する構成となっている。このような構成の紫外線照射装置では、
図3の矢印P1の位置で二点鎖線で示されるように、発光体21から射出された光は、集光レンズ52によって収縮させることで高い照度が得られるので、この高い照度を規準として走査速度V1で所定の積算光量が得られるように設計されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−212384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、
図3の矢印P2やP3の位置で二点鎖線で示されるように、照射対象物Wの厚みの違い等により、発光体21から照射面までの距離Lが変わると照度も変わってしまうため、走査速度V1のままで光照射が行われると、所定の積算光量を得ることができず、紫外線硬化型テープの接着剤層を十分に硬化反応させることができず、接着シートSをウエハWから剥離するときに、剥離不良を引き起こしてしまう。そのため、発光体21と照射対象物Wの照射面との距離Lの設定を厳密に行わなくてはならず、照射対象物Wの厚みが変わるたびにそれらの相対距離を再度設定し直したり、走査速度V1を別の速度V2やV3に変更したりしなければならなくなり、装置やその制御が複雑化してしまう、という不都合がある。発光体からの光を拡散させて照射する装置も発光体から照射面までの距離の違いによる照度の変化が生じるため同様の不都合がある。
【0006】
[発明の目的]
本発明の目的は、特に、ウエハ等に貼付された光反応型の接着剤層を有する接着シートに光を照射する場合、発光体から被照射面までの距離に関係なく接着剤層を十分に硬化反応させることができる光照射装置及び光照射方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、被照射体に相対配置されて前記被照射体の被照射面に光を照射する発光手段と、前記被照射体と発光手段とを相対移動させる移動手段とを含む光照射装置において、
前記発光手段は、発光源と、当該発光源から発光された光を平行光に変換し、前記相対移動方向と交差する方向に延びる帯状光を形成可能に設けられた平行光変換手段と
、前記発光源から発光された光を矩形投光面に変換して前記平行光変換手段に導く矩形光変換手段とを備える、という構成を採っている。更に、前記発光手段は、前記発光源から発光された光を前記平行光変換手段に導く導光手段を有することが好まし
い。
【0008】
更に、本発明の光照射方法は、被照射体と発光源とを相対配置する工程と、
前記発光源から発光された光を矩形投光面に変換する工程と、
前記矩形投光面に変換された光を平行光に変換する工程と、
前記被照射体と発光源とを相対移動させて前記平行光を被照射体の被照射面に照射する工程とを備える、という方法を採っている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発光源から発光された光を平行光に変換して帯状に照射するので、従来のように光を収縮し、その焦点を被照射面に照射する場合に比べ、被照射面までの距離に関係なく均一な強さの光を被照射面に照射することが可能となり、例えば、被照射体が紫外線硬化型の接着シートである場合、接着剤層が硬化するための光を十分に与えることができる。
また、導光手段を有する構成とすれば、発光源から発光された光を外部に漏らすことなく平行光変換手段に導くことができ、光の照射効率を高めることができる上、漏れた光が人の目に入ることを防止することができる。
更に、矩形光変換手段を有することで、発光源から発光された光が一部に照射されなかったり、一部で重なり合ったりすることなく平行光変換手段に導くことができ、当該平行光変換手段で変換された平行光が不均一な光となることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図3】実施形態及び従来例に係る照射形態の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
なお、本明細書及び特許請求の範囲において、「光」は、紫外線を含む不可視光線の他、可視光線も含む概念として用いる。
また、本明細書において、特に明示しない限り、「上」、「下」、「左」、「右」は、
図1を基準として用いる。
【0012】
図1において、光照射装置10は、紫外線硬化型の接着シートS(被照射体)が貼付された略円形のウエハWを支持するテーブル11と、当該テーブル11の上方に相対配置されて接着シートSに光を照射する発光手段12と、テーブル11と発光手段12とを左右方向に相対移動させる移動手段13とを備えて構成されている。
【0013】
前記接着シートSは、少なくとも基材シートBSと紫外線硬化型の接着剤層ADからなり、当該接着剤層ADが被照射面S1となる。なお、接着剤層ADは、厳密には厚みを有するため面ではないが、その厚みは極薄なため、面として表現する。
【0014】
前記発光手段12は、基板20に取り付けられるとともに、接着シートSの被照射面S1と平行となる面に設けられた発光源としての複数の発光ダイオード21と、これら発光ダイオード21から発光された光を屈折させることで平行光に変換するとともに、テーブル11と発光手段12との相対移動方向と交差する方向に延びる帯状光Bを形成可能に設けられた平行光変換手段としての第1レンズ22と、前記発光ダイオード21から発光された光を第1レンズ22に導く導光手段23と、発光ダイオード21から発光された光を矩形投光面に変換して第1レンズ22に導く矩形光変換手段としての第2レンズ24とを備えている。
【0015】
各発光ダイオード21は、拡散光の紫外線を発光可能に設けられ、
図1中紙面直交方向に所定間隔毎に並設されている。
【0016】
第1レンズ22は、図示しない保持部材を介して基板20に一体的に保持される。第1レンズ22は、発光ダイオード21が並設された方向と平行に延び、各発光ダイオード21から発せられる光を平行光に屈折可能に設けられている。これにより、第1レンズ22は、第1レンズ22と略同一の左右幅であって、
図1中紙面直交方向に延びる帯状光Bを被照射面S1上に照射可能となっている。
【0017】
導光手段23は、基板20の下方から第1レンズ22の上方にかけて左右方向に広がるように設けられた左右一対の左右面23Aと、各左右面23Aを
図1中紙面直交方向両側で繋ぐ一対の側面23Bとからなり、発光ダイオード21から発光された光を外部に漏れることなく第1レンズ22へ導くようになっている。なお、各左右面23A及び側面23Bの内側には、光を反射可能な鏡や鏡面仕上げされた金属等の反射手段が設けられている。
【0018】
第2レンズ24は、図示しない保持部材を介して発光ダイオード21と第1レンズ22との間に一体的に保持される。第2レンズ24は、各発光ダイオード21それぞれの下方に設けられ、各発光ダイオード21から発光される円形の投光面となる拡散光を平面視で矩形の投光面ESになるように屈折可能に設けられている。これにより、第2レンズ24は、隣り合う発光ダイオード21から発光される光に隙間が生じてしまったり、発光される光が一部で重なり合ったりすることなく第1レンズ22へ導くことができ、被照射面S1における光の照射に斑ができることを防止することができる。
【0019】
前記移動手段13は、基板20の上部にスライダ26が取り付けられた駆動機器としての直動モータ25と、テーブル11の下部にスライダ31が取り付けられた駆動機器としての直動モータ30とを備え、直動モータ25は図示しないフレーム等を介してテーブル11の上方に支持され、直動モータ30は図示しないフレーム等を介してテーブル下方に支持されている。
【0020】
以上の構成において、接着シートSの被照射面S1に紫外線を照射する場合、先ず、図示しない搬送手段を介して、接着シートSが貼付されたウエハWをテーブル11の上面に支持させ、接着シートSと発光手段12とを相対配置させ、各発光ダイオード21からの紫外線照射を開始する。そして、直動モータ25、30の駆動により発光手段12を右方向へ移動させ、テーブル11を左方向へ移動させることで、帯状光Bによって、被照射面S1の全ての領域に紫外線が照射される。
【0021】
ここで、
図3の二点鎖線で示される従来例に係る集光レンズ52によって、厚みにバラツキがあるウエハWに貼付された接着シートSにライン光LB2を照射する場合、同図中P1、P2、P3で示した各位置で照射される光は照度がそれぞれ異なってしまう。
本実施形態の場合、帯状光LB1を被照射面S1に照射するので、
図3の実線で示されるように、同図中P1、P2及びP3で示される何れの位置においてもその照度が変化することはない。そのため、P1、P2及びP3において同じ走査速度V1で照射しても、被照射面S1は所定の積算光量を得ることとなり、接着シートSをウエハWから剥離するときに、剥離不良を引き起こしてしまうような不都合は発生しなくなる。
【0022】
以上のように、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、前記記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。
すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示、説明されているが、本発明の技術的思想及び目的の範囲から逸脱することなく、以上説明した実施形態に対し、形状、位置若しくは配置等に関し、必要に応じて当業者が様々な変更を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状などの限定の一部若しくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【0023】
例えば、紫外線を照射するときの動作は、前記実施形態と同様に照射を行える限りにおいて、直動モータ30によるテーブル11の移動は行わず、直動モータ25により発光手段12を移動させてもよいし、直動モータ25による発光手段12の移動は行わず、直動モータ30によりテーブル11を移動させてもよい。
【0024】
また、発光源は、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、蛍光灯等の他の発光源であってよい。
更に、被照射体は、接着シートSに限定されることなく、光を照射することで硬化する塗料や、光を照射することで軟化する樹脂等、何ら限定されるものではない。
また、照射する光は、紫外線以外に、可視光線や赤外線等の他の光を採用することができる。
更に、平行光変換手段、矩形光変換手段としては、第1、第2レンズ22、24以外に反射板やブラスファイバ等を採用してもよい。
更に、接着シートSが貼付される被着体はウエハWに限定されることなく、ガラス板、鋼板、または、樹脂板等、その他のものも対象とすることができ、半導体ウエハは、シリコン半導体ウエハや化合物半導体ウエハであってもよい。
更に、前記実施形態における駆動機器は、回動モータ、直動モータ、リニアモータ、単軸ロボット、多関節ロボット等の電動機器、エアシリンダ、油圧シリンダ、ロッドレスシリンダ及びロータリシリンダ等のアクチュエータ等を採用することができる上、それらを直接的又は間接的に組み合せたものを採用することもできる(実施形態で例示したものと重複するものもある)。
【符号の説明】
【0025】
10 光照射装置
12 発光手段
13 移動手段
21 発光ダイオード(発光源)
22 第1レンズ(平行光変換手段)
23 導光手段
24 第2レンズ(矩形光変換手段)
B 帯状光
S 接着シート(被照射体)
S1 被照射面