(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
この種の従来のステアリングロック装置として、特許文献1に開示されたものが知られている。
図20および
図21は、特許文献1に記載されたステアリングロック装置の構成を示している。
【0003】
このステアリングロック装置100は、巻バネ101により自動車の図示しないステアリングシャフトの方向(
図20および
図21の上方向)に付勢され、ステアリングシャフトに対して嵌合可能なロック部材102と、このロック部材102を駆動する駆動体103と、ロック部材102の近傍に配置され、ロック部材102をロック位置にてロック可能な補助ロック部材104とを備えている。また、駆動体103は、モータ105により図示しないウォームを介して駆動される回転部材106と、この回転部材106の回転によりロック部材102の移動方向に往復移動するカム部材107とを備え、このカム部材107は、連結ピン108を介してロック部材102に連結されている。
【0004】
補助ロック部材104は、ロック部材102の移動方向に直交する方向にスライド可能に装備され、スライド方向の先端部に、ロック部材102の側部に形成された係合溝109に係合可能な係合突起110を有し、バネ部材111によりロック部材102の方向(先端方向)に付勢されている。また、フレームカバー112の裏面(内面)には、補助ロック部材104のスライド方向に直交する方向に突出した保持手段113が設けられ、この保持手段113の先端が、フレームカバー112が適正に装着されている状態のときに、補助ロック部材104の係合溝部114に係合することにより、補助ロック部材104がロック部材102から離隔する状態に保たれている。
【0005】
上記構成において、駐車時にモータ105を施錠方向に回転させると、モータ105の駆動力によって、回転部材106が回転してカム部材107がロック部材102の施錠方向(
図20の上方向)へ移動するので、巻バネ101の付勢力によってロック部材102がロック位置へ変位する。その結果、ロック部材102の先端がステアリングシャフトに嵌合し、ステアリングシャフトの回転が阻止されるので、自動車は操縦不能な状態となる。
【0006】
その後、モータ105を解錠方向に回転させると、回転部材106が逆方向へ回転して、カム部材107とともにロック部材102がロック解除位置に変位する。その結果、ロック部材102のステアリングシャフトに対する嵌合が解除されるので、ステアリングシャフトの回転が自由となり、自動車は操縦可能な状態となる。
【0007】
また、
図20に示すロック状態においては、フレームカバー112が適正に装着されているので、フレームカバー112の裏面に突設された保持手段113の先端が補助ロック部材104の係合溝部114に係合しており、これにより、補助ロック部材104がロック部材102から離隔する状態に保たれている。
【0008】
この状態から、
図21に示すように、車両駐車時に例えばフレームカバー112が何者かによって外された場合、
図20に示したフレームカバー112の裏面の保持手段113が、補助ロック部材104の係合溝部114から離脱するので、補助ロック部材104がバネ部材111の付勢力によってロック部材102の方向に押し出され、補助ロック部材104の係合突起110がロック部材102の側部の係合溝109に係合する。これにより、ロック部材102がロック位置に保持された状態となり、ステアリングシャフトの回転が阻止されて、不正な解錠操作で車両が操縦可能になるという不具合が防止されて、車両駐車時における車両の防盗性能が確保される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述した従来のステアリングロック装置100では、ロック部材102の側部に補助ロック部材104の係合する係合溝109が設けられているので、溝がある分だけロック部材102の強度が低下する。そのため、強度を保証する上でロック部材102のサイズを大きくする等の対策が必要となり、それゆえに限られたスペースへの構成部品の配置が難しくなるという問題があった。
【0011】
また、ロック部材102の側部に設けた係合溝109に補助ロック部材104の係合突起110を係合させる際に、係合溝109の縁と係合突起110の角が引っ掛かりを起こすと、スムーズに係合溝109に係合突起110が入らないことがあり、そのような不具合が発生すると、防盗性能を発揮できないおそれがあった。
【0012】
本発明は、上記事情を考慮し、ロック部材の強度を確保しつつ、不正行為によってステアリングシャフトをロック解除することが困難な、優れた防盗性能を備えたステアリングロック装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、請求項1の発明のステアリングロック装置は、ステアリングシャフトの近傍に固定されるフレームと、該フレームにスライド自在に設けられ、ロック位置にスライドすることで前記ステアリングシャフトと係合して該ステアリングシャフトの回転を阻止し、前記ステアリングシャフトから離間したロック解除位置にスライドすることで前記ステアリングシャフトの回転を許容するロック部材と、該ロック部材の外周に突設された突起と、
前記ロック部材がロック位置に位置している状態のときに係合位置に
位置することで前記ロック部材の外周に突設された前記突起と係合して該ロック部材のロック解除位置への移動を阻止し、係合位置から離間した離脱位置に
位置することで前記突起から離れて前記ロック部材のロック解除位置への移動を許容
し、該ロック部材のスライド方向と直交する方向に沿って該離脱位置から該係合位置に向かってのみスライド移動可能なスライドプレートと、前記フレームに着脱可能に設けられ、該フレームに装着された状態で、前記離脱位置に位置する前記スライドプレートと係合して該スライドプレートを前記離脱位置に保持し、前記フレームから相対移動した際に、前記スライドプレートの離脱位置から係合位置への移動を許可する保持手段と、前記スライドプレートを前記係合位置へ向かって付勢し、前記保持手段が前記フレームから相対移動して前記スライドプレートの離脱位置から係合位置への移動が許可された際に、前記スライドプレートを付勢力によって係合位置に押し出して前記ロック部材の突起と係合させ、それにより前記スライドプレートに前記ロック部材のロック解除位置への移動を阻止させる付勢手段と、を具備し、前記スライドプレートの先端に、該スライドプレートが前記係合位置にスライドした際に、前記ロック位置に位置した状態の前記ロック部材の突起のロック解除位置側に挿入される係合腕部が設けられ、該係合腕部に、前記ロック部材のスライド方向と直交する方向に沿って形成され、前記突起と当接することで該突起のロック解除位置側への移動を制止して前記ロック部材のロック解除位置への移動を阻止する保持壁が設けられ、前記係合腕部の先端に、前記スライドプレートの係合位置へのスライドに従って前記保持壁へ前記突起を誘導する誘導斜面が設けられていることを特徴としている。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1に記載のステアリングロック装置であって、前記スライドプレートの先端に、前記係合腕部と対をなす補助腕部が設けられることで、前記係合腕部と補助腕部の間に前記突起の嵌まるU字状の係合凹部が設けられており、前記補助腕部の先端の前記誘導斜面との対向部に、前記スライドプレートの係合位置へのスライドに従って前記係合凹部へ前記突起を誘導する補助誘導斜面が設けられていることを特徴としている。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載のステアリングロック装置であって、前記付勢手段として巻バネが設けられており、その巻バネが、前記ロック位置にあるロック部材の突起から該ロック部材のスライド方向と直交する方向に引いた直線に対してオフセットした位置に配置されていることを特徴としている。
【0016】
請求項4の発明は、請求項3に記載のステアリングロック装置であって、前記巻バネが、前記直線を挟んで前記ロック解除位置側とロック位置側の両方に一対配置されていることを特徴としている。
【0017】
請求項5の発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載のステアリングロック装置であって、前記フレームに、前記スライドプレートをスライド自在に収容すると共に前記
付勢手段を収容する補助ロック収容孔が設けられ、該補助ロック収容孔が前記ステアリングシャフト側に、前記スライドプレートおよび前記
付勢手段を挿入するための開口部を有しており、前記スライドプレートおよび
付勢手段は、前記開口部を閉止する閉止部材に支持された状態で前記補助ロック収容孔に収容され、前記
付勢手段として設けられた巻バネが、前記閉止部材に設けられたバネ受座と前記スライドプレートに設けられたバネ受座との間に圧縮状態で介装され、前記保持手段と前記スライドプレートとの係合部が、前記開口部と反対側に配置されていることを特徴としている。
【0018】
請求項6の発明は、請求項5に記載のステアリングロック装置であって、前記閉止部材に、前記スライドプレートを、前記巻バネを圧縮させつつ前記離脱位置に保持した状態で前記開口部から前記補助ロック収容孔に挿入するための組立治具のセット部が設けられていることを特徴としている。
【0019】
請求項7の発明は、請求項6に記載のステアリングロック装置であって、前記セット部として、前記組立治具に設けられた棒状体を貫通させることで、該棒状部にて前記スライドプレートの先端を前記巻バネの付勢力に抗して押し止めることのできる貫通孔が設けられていることを特徴としている。
【0020】
請求項8の発明は、請求項5〜7のいずれか1項に記載のステアリングロック装置であって、前記閉止部材に、前記スライドプレートの後端の凸部に係合することで、前記スライドプレートの姿勢を適正に保つ係合部が設けられていることを特徴としている。
【0021】
請求項9の発明のステアリングロック装置の組立方法は、ステアリングシャフトの近傍に固定されるフレームと、該フレームにスライド自在に設けられ、ロック位置にスライドすることで前記ステアリングシャフトと係合して該ステアリングシャフトの回転を阻止し、前記ステアリングシャフトから離間したロック解除位置にスライドすることで前記ステアリングシャフトの回転を許容するロック部材と、該ロック部材の外周に突設された突起と、前記ロック部材のスライド方向と直交する方向にスライド自在に設けられ、前記ロック部材がロック位置に位置している状態のときに、係合位置にスライドすることで前記ロック部材の外周に突設された前記突起と係合して前記ロック部材のロック解除位置への移動を阻止し、係合位置から離間した離脱位置にスライドすることで前記突起から離れて前記ロック部材のロック解除位置への移動を許容するスライドプレートと、前記フレームに着脱可能に設けられ、該フレームに装着された状態で、前記離脱位置に位置する前記スライドプレートと係合して該スライドプレートを前記離脱位置に保持し、前記フレームから相対移動した際に、前記スライドプレートの離脱位置から係合位置への移動を許可する保持手段と、前記スライドプレートを前記係合位置へ向かって付勢し、前記保持手段が前記フレームから相対移動して前記スライドプレートの離脱位置から係合位置への移動が許可された際に、前記スライドプレートを係合位置に押し出して前記ロック部材の突起と係合させ、それにより前記スライドプレートに前記ロック部材のロック解除位置への移動を阻止させる付勢手段と、を具備し、前記スライドプレートの先端に、該スライドプレートが前記係合位置にスライドした際に、前記ロック位置に位置した状態の前記ロック部材の突起のロック解除位置側に挿入される係合腕部が設けられ、該係合腕部に、前記ロック部材のスライド方向と直交する方向に沿って形成され、前記突起と当接することで該突起のロック解除位置側への移動を制止して前記ロック部材のロック解除位置への移動を阻止する保持壁が設けられ、前記係合腕部の先端に、前記スライドプレートの係合位置へのスライドに従って前記保持壁へ前記突起を誘導する誘導斜面が設けられ、さらに、前記フレームに、前記スライドプレートをスライド自在に収容すると共に前記
付勢手段を収容する補助ロック収容孔が設けられ、該補助ロック収容孔が前記ステアリングシャフト側に、前記スライドプレートおよび前記
付勢手段を挿入するための開口部を有したステアリングロック装置の組立方法であって、前記スライドプレートを、前記開口部を閉止する閉止部材にセットすると共に、前記
付勢手段として設けられた巻バネを、前記閉止部材に設けられたバネ受座と前記スライドプレートに設けられたバネ受座との間に圧縮状態で介装し、その状態で、前記閉止部材に設けられた貫通孔に組立治具に設けられた棒状体を貫通させることにより、該棒状体により前記スライドプレートの先端を前記巻バネの付勢力に抗して押し止めて該スライドプレートを前記離脱位置に保持する工程と、該工程により前記スライドプレートを離脱位置に保持した状態で、前記閉止部材によって支持したスライドプレートおよび巻バネを、前記開口部から前記補助ロック収容孔に挿入し、且つ、前記開口部を前記閉止部材で閉止する工程と、前記フレームに装着された前記保持手段との係合によって前記スライドプレートを離脱位置に保持した上で、前記組立治具の棒状体を前記閉止部材の貫通孔から引き抜くことにより、前記スライドプレートの離脱位置への保持を前記組立治具から前記保持手段に受け渡す工程と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の発明によれば、従来例のようにロック部材に係合溝を設ける代わりに、スライドプレートが係合する突起をロック部材に設けたので、ロック部材の強度を確保しつつ、ロック部材のコンパクト化を図ることができ、限られたスペースへの構成部品の配置が比較的容易にできるようになる。また、スライドプレートの先端に、ロック部材の突起のロック解除位置側に挿入される係合腕部を設け、その係合腕部に、ロック部材のスライド方向と直交する方向に沿った保持壁を設けたので、前記突起が保持壁に受け止められることによって、確実にロック部材をロック解除位置へ移動しないように止めることができる。また、係合腕部の先端に誘導斜面を設けて突起を保持壁に誘導するようにしたので、付勢手段の付勢力がスライドプレートにアンバランスに加わることなどによって、係合腕部が突起に対して傾いた状態でスライドしてきても、引っ掛かりなくスムーズに突起を保持壁に誘導することができる。従って、確実な防盗性能を発揮することができる。また、ロック部材をロック位置に保持する手段としてスライドプレートを用いているので、保持手段との係合箇所を含めた形状の自由度や付勢手段の配置の自由度を増すことができ、一層のコンパクト化を図ることができる。
【0023】
請求項2の発明によれば、スライドプレートの先端に、係合腕部と対をなす補助腕部を設けることで、係合腕部と補助腕部との間にU字状の係合凹部を設けたので、スライドプレートの先端がロック位置側やロック解除位置側に傾いた状態でスライドした場合にも、スムーズ且つ確実に突起を係合凹部に誘導することができ、ロック部材をロック位置に保持することができる。
【0024】
請求項3の発明によれば、付勢手段としての巻バネが突起に対してオフセットしている場合、付勢力の加わり方のアンバランスにより、スライドプレートの先端が傾いた姿勢で突起に係合しようとする可能性があるが、その場合でも、係合腕部や補助腕部の先端に突起を拾う誘導斜面が設けられているので、確実に突起を係合腕部の保持壁に誘導することができ、それによってロック部材をロック解除位置に移動しないように止めておくことができる。また、巻バネがオフセットして配置されているので、巻バネの配置箇所を任意に選ぶことができ、構成の単純化やコンパクト化を図ることができる。
【0025】
請求項4の発明によれば、巻バネを、ロック位置にあるロック部材の突起から該ロック部材のスライド方向と直交する方向に引いた直線を挟んでロック解除位置側とロック位置側の両方に一対配置しているので、片方の巻バネによる付勢力のアンバランスを他方の巻バネにより修正することができる。従って、バランスよくスライドプレートを突起に対してスライドさせることができ、無理なくスムーズにスライドプレートの先端を突起に係合させることができる。
【0026】
請求項5の発明によれば、スライドプレートをステアリングシャフト側から挿入セットすることができるので、防盗性能の向上を図ることができる。また、スライドプレートおよび付勢手段としての巻バネを、それらを挿入するための閉止部材と一緒にフレームに組み付けることができるので、組み付けの容易化を図ることができる。
【0027】
請求項6の発明によれば、閉止部材に、スライドプレートを、巻バネを圧縮させつつ離脱位置に保持した状態で開口部から補助ロック収容孔に挿入するための組立治具のセット部が設けられているので、組立治具を用いることによって、スライドプレートおよび巻バネを容易に補助ロック収容孔に組み付けることができる。
【0028】
請求項7の発明によれば、閉止部材に設けられた貫通孔に組立治具の棒状体を貫通させることによって、棒状体によりスライドプレートの先端を巻バネの付勢力に抗して離脱位置に押し止めることができるので、簡単な組立治具を用いながら、スライドプレートおよび巻バネを容易に補助ロック収容孔に組み付けることができる。
【0029】
請求項8の発明によれば、巻バネの位置が突起に対してオフセットされている場合、スライドプレートの先端が傾いた姿勢で突起に対してスライドする可能性があるが、スライドプレートの後端の凸部を閉止部材の係合部で押さえることによって、スライドプレートの傾きを抑制することができるので、スライドプレートをアンバランスな姿勢になりにくくすることができる。また、補助ロック収容孔にスライドプレートを挿入する場合にもスライドプレートの姿勢を適正に保つことができるので、組み付けしやすくなる。
【0030】
請求項9の発明によれば、閉止部材に設けられた貫通孔に組立治具の棒状体を貫通させることによって、棒状体によりスライドプレートの先端を巻バネの付勢力に抗して離脱位置に押し止めることができるので、簡単な組立治具を用いながら、スライドプレートおよび巻バネを容易に補助ロック収容孔に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の第1実施形態のステアリングロック装置のロック状態を示す側面図である。
【
図2】同ステアリングロック装置のロック状態を示す正面図である。
【
図5】同ステアリングロック装置のロック部材を示す斜視図である。
【
図6】同ロック部材とスライドプレートの組み合わせを示し、スライドプレートに保持手段が係合している状態を示す斜視図である。
【
図7】同保持手段がスライドプレートから離脱することで、スライドプレートの先端がロック部材の突起に係合した状態を示す斜視図である。
【
図8】前記ロック部材をスライドさせるためのスライド部材がロック位置に移動した状態を示す断面図である。
【
図9】同スライド部材がロック解除位置に移動した状態を示す断面図である。
【
図10】(a)は同ステアリングロック装置において、補助ロック部材としてのスライドプレートが保持手段によって離脱位置に保持されている状態を示す要部断面図、(b)はスライドプレートの側面図である。
【
図11】(a)は同スライドプレートの構成を示す斜視図、(b)はスライドプレートと巻バネと閉止部材の組立体(補助ロック組立体)の構成を示す斜視図である。
【
図12】同ステアリングロック装置のロック状態を示すステアリングシャフト側から見た図である。
【
図14】同ステアリングロック装置からフレームカバーを取り外した状態を示す断面図である。
【
図15】前記スライドプレートと巻バネと閉止部材の組立体(補助ロック組立体)を、組立治具によりフレームに挿入できるように保持した状態を示す斜視図である。
【
図16】(a)は
図15の状態を示す正面図、(b)は側面図、(c)は上面図である。
【
図17】
図15および
図16に示す状態から組立治具を引き抜き、スライドプレートの離脱位置への保持を、組立治具から保持手段に委ねた状態を示す斜視図である。
【
図18】本発明の第2実施形態のステアリングロック装置において、補助ロック部材としてのスライドプレートが保持手段によって離脱位置に保持されている状態を示す要部断面図である。
【
図19】本発明の第3実施形態のステアリングロック装置において、補助ロック部材としてのスライドプレートが保持手段によって離脱位置に保持されている状態を示す要部断面図である。
【
図20】従来例のステアリングロック装置のロック状態を示す断面図である。
【
図21】
図20のステアリングロック装置のフレームからカバーが外された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0033】
図1〜
図17は第1実施形態のステアリングロック装置の説明図である。
【0034】
本実施形態のステアリングロック装置1は、
図1〜
図4に示すように、互いに組み付けされるカバー2およびフレーム3を有し、図示しない自動車のステアリングシャフトを収容するステアリングコラム装置A(
図4参照)に取付けられる。
【0035】
フレーム3は、一方の側(
図3および
図4の下側)に向かって開口する部品収容室3aと、この部品収容室3aの底部からステアリングコラム装置A側(
図3および
図4の上側)に貫通し、ステアリングシャフトの軸方向に対して垂直な方向へ延びるロック収容孔3b(
図4)と、このロック収容孔3bと直交する方向に延びる補助ロック収容孔3c(
図3)とを内部に有すると共に、ステアリングコラム装置Aに跨るように配置される一対の脚部3d,3dを外部に有している。
【0036】
部品収容室3aには、
図4に示すように、駆動源であるモータ(図示せず)と、このモータ回転軸のウォームギヤ41の駆動によって解錠方向および施錠方向に回転するウォームホイール4と、このウォームホイール4を介して駆動され、後述するロック本体8に対して垂直な方向にスライドするスライド部材5とが収容されている。ロック収容孔3bには、ステアリングシャフトのロック状態を保持するロック部材6が収容され、補助ロック収容孔3cには、フレーム3からカバー2が外された場合にロック部材6を施錠位置で保持する補助ロック部材9が収容されている。
【0037】
スライド部材5は、
図8および
図9に示すように、スライド方向に延設される基部51と、この基部51の一端から突出し、先端側に向かって次第にステアリングシャフトの方向(
図8および
図9の上方向)へ傾斜する傾斜部52と、この傾斜部52よりスライド方向に突出する先端部53とから構成されている。また、基部51には、図示を省略したが、駆動ギヤと噛み合うラック部が設けられている。傾斜部52は、カバー2側のロック解除傾斜部52a、およびフレーム3側のロック傾斜部52bを有している。
【0038】
また、スライド部材5は、ロック端E1およびロック解除端E2の間でスライド可能に配置されており、スライド部材5がスライドするのに伴って、ロック部材6がスライド部材5の傾斜部52のカム作用によって移動することによって、ロック部材6がステアリングシャフトと係合してステアリングシャフトの回転を阻止する
図8のロック位置と、ステアリングシャフトから離間してステアリングシャフトの回転を許容する
図9のロック解除位置との間で変位する。
【0039】
図4〜
図9に示すように、ロック部材6は、該ロック部材6の基端側を構成し、スライド部材5と係合するハンガー7と、ロック部材6の先端側を構成し、ハンガー7に連結されると共に、自身の先端がフレーム3の底面から出入りしてステアリングシャフトに対して嵌合可能なロック本体8と、これらのハンガー7およびロック本体8間に介設され、ロック本体8をロック解除位置側からロック位置側へ向かって付勢する付勢手段としての巻バネ61と、ハンガー7およびロック本体8を連結する連結ピン62(後述)とから構成されている。
【0040】
また、ロック部材6は、
図5に示すように、ステアリングシャフトの軸方向と平行な幅広の面B、および幅広の面Bに対して垂直な厚さの面C(後述する腕部74の側面)を有しており、厚さの面C(ロック部材6の外周の一部に相当)に連結ピン62の端部からなる突起が設けられている。
【0041】
ハンガー7は、
図5〜
図7に示すように、断面略コ字形状を有し、内部にスライド部材5が挿通される傾斜受部71を備えた基部72と、この基部72からステアリングシャフトの方向(ロック部材6の先端側であり、
図5〜
図7の下方向)へ突出し、ロック本体8と連結される連結部73と、基部72からステアリングシャフトの方向へ突出し、連結部73と所定間隔をあけて、厚さの面Cに沿って平行に配置される腕部74とから構成されている。
【0042】
連結部73および腕部74の幅方向の面(幅広の面B)は、ステアリングシャフトの軸方向(
図5〜
図7の上下方向)と平行に配置されており、連結ピン62が嵌合する丸穴73a、74aが幅方向に延設されている。また、傾斜受部71の幅方向の寸法は、スライド部材5の基部51、傾斜部52および先端部53の幅寸法よりも少し大きく設定され、傾斜受部71の高さ方向の両縁部には、ロック解除傾斜部71aおよびロック傾斜部71bがそれぞれ形成されている。
【0043】
なお、ロック解除傾斜部71aは、傾斜受部71のカバー2側の縁(
図8および
図9の下側面)に、ロック傾斜部71bは、傾斜受部71のフレーム3側の縁(
図8および
図9の上側面)に、スライド部材5の傾斜部52と同様の傾斜角度で傾斜しつつ、それぞれ形成されている。また、ロック解除傾斜部71aは、傾斜部52のロック解除傾斜部52aに対して湾曲して形成されつつ、ロック傾斜部71bは、傾斜部52のロック傾斜部52bに向かって突出するように形成されることで、スライド部材5がスライドする際に、ハンガー7の傾斜受部71とスライド部材5とが、面接触せずに線接触して、スライド部材5とハンガー7との間の摺動抵抗を低減し、作動不具合を低減している。
【0044】
また、基部72のカバー2側の端部には、付勢手段である巻バネ75の一端を受け入れるバネ座用穴76が形成され、連結部73のステアリングコラム装置A側の端部には、巻バネ61の一端を受けるバネ受け77が形成されている。腕部74の側面(すなわちロック部材6の厚さの面C)には、連結ピン62と平行に、且つ所定間隔を置いてカバー2側に配置される突起78が設けられている。
【0045】
ロック本体8の基端側端部には、
図5〜
図7に示すように、ハンガー7の方向(
図5〜
図7の上方)へ突出する一対の腕部81,82が設けられ、各腕部81,82には、ハンガー7の移動方向に長い長穴81a、82aが設けられており、連結ピン62が長穴81a、82aに移動可能に挿入される。ロック本体8の腕部81,82間のカバー2側の端部には、巻バネ61の他端を受け入れるバネ座用穴83が形成されている。
【0046】
補助ロック部材9は、
図10(a)にも示すように、ロック部材6の幅広の面Bからロック部材6の板厚方向(
図5の矢印Dで示す方向)に延在するスライドプレート91と、このスライドプレート91をロック部材6の連結ピン62の方向、つまり係合位置へ向かって付勢する巻バネ(付勢手段)92とを有している。そして、スライドプレート91は、ロック位置に位置するロック部材6の連結ピン62と係合する係合位置と、連結ピン62から離間し、ロック部材6のスライドを許容する離脱位置との間をスライド可能に、ロック部材6の幅広の面Bより外側に配置されている。
【0047】
即ち、スライドプレート91は、ロック部材6のスライド方向と直交する方向にスライド自在に設けられ、ロック部材6がロック位置に位置している状態のときに係合位置にスライドすることでロック部材6の外周に突設された連結ピン62と係合して、ロック部材6のロック解除位置への移動を阻止し(
図14に示す状態)、
図10(a)に示すように、係合位置から離間した離脱位置にスライドすることで連結ピン62から離れてロック部材6のロック解除位置への移動を許容する。
【0048】
スライドプレート91は、
図10(b)および
図11に示すように、一定幅の帯板の外周縁に種々の凹状の切欠を形成したプレートであり、ロック部材6に近い先端部94の両側部に、補助ロック収容孔3cのスライドガイド部3gと閉止部材11(後述)のスライドガイド部11aとによってスライド案内される互いに平行なスライド縁部91a、91bを有している。なお、スライドガイド3c、11aは、ロック部材6のスライド方向と直交する方向に互いに平行に延在している。
【0049】
また、スライドプレート91の先端部94には、スライドプレート91が係合位置にスライドした際に、ロック位置に位置した状態のロック部材6の連結ピン62のロック解除位置側〔
図10(a)中の矢印Y2側〕に挿入される係合腕部97と、係合腕部97と対をなす補助腕部96とが設けられており、係合腕部97と補助腕部96の間には、連結ピン62の嵌まるU字状の係合凹部95が確保されている。つまり、スライドプレート91の先端部94が二股状になっている。
【0050】
また、係合腕部97の内側面には、ロック部材6のスライド方向と直交する方向に沿って形成され、連結ピン62と当接することで、連結ピン62のロック解除位置側(矢印Y2側)への移動を制止してロック部材6のロック解除位置への移動を阻止する保持壁97aが設けられ、係合腕部97の先端に、スライドプレート91の係合位置へのスライドに従って保持壁97aへ連結ピン62を誘導する誘導斜面97cが設けられている。また、補助腕部96の内側面には、係合腕部97の保持壁97aと平行に形成され、連結ピン62を係合凹部95内にスムーズに誘導する補助保持壁96aが設けられ、補助腕部96の先端の誘導斜面97aとの対向部に、スライドプレート91の係合位置へのスライドに従って係合凹部95へ連結ピン62を誘導する補助誘導斜面96cが設けられている。誘導斜面97cおよび補助誘導斜面96cは、面取り部やアール部によって構成されている。
【0051】
また、スライドプレート91のロック部材6から遠い後端側の一方の側縁(係合腕部97のある側の側縁)には、カバー2に突設された保持手段21の先端が係合する凹状の係合部93が設けられ、反対側の側縁には巻バネ92の収容凹所99がL形の切欠として設けられている。巻バネ92の収容凹所99の後方を向いた内側縁には、巻バネ92の一端を受けるバネ受座99aが設けられている。また、スライドプレート91の最後端には凸部98が設けられている。
【0052】
保持手段21は、フレーム3に着脱可能に装着されるカバー2の内面(裏面)に突設されており、カバー2がフレーム3に装着された状態で、離脱位置に位置するスライドプレート91の凹状の係合部93と係合してスライドプレート91を離脱位置に保持し、カバー2がフレーム3から取り外された際に、スライドプレート91の離脱位置から係合位置への移動を許可するものである。
【0053】
また、巻バネ92は、スライドプレート91を係合位置(連結ピン62側)へ向かって付勢し、保持手段21がフレーム3から取り外されてスライドプレート91の離脱位置から係合位置への移動が許可された際に、スライドプレート91を付勢力によって係合位置に押し出してロック部材6の連結ピン62と係合させ、それによりスライドプレート91にロック部材6のロック解除位置への移動を阻止させるものである。
【0054】
なお、
図10(a)に示すように、ロック部材6を収容しているロック収容孔3bの内部には、係合腕部97が連結ピン62のロック解除位置側にスライドして来たとき、その係合腕部97の先端を受け止めることのできる段部3fが設けられている。
【0055】
また、この実施形態において、巻バネ92は、ロック位置にあるロック部材6の連結ピン62からロック部材6のスライド方向と直交する方向に引いた直線Sに対してロック位置側〔
図10の矢印Y2と反対方向〕にオフセットした状態で配置されている。
【0056】
また、
図12および
図14に示すように、フレーム3に形成された補助ロック収容孔3cは、ステアリングシャフト側に、スライドプレート91および巻バネ92を挿入するための開口部3hを有しており、スライドプレート91および巻バネ92は、開口部3hを閉止する閉止部材11に支持された状態で補助ロック収容孔3cに収容され、巻バネ92が、
図11(b)に示すように、閉止部材11に設けられたバネ受座11bとスライドプレート91に設けられたバネ受座99aとの間に圧縮状態で介装されている。なお、保持手段21とスライドプレート91との係合部(凹状の係合部93)は、開口部3hと反対側に配置されている。
【0057】
閉止部材11には、
図11(b)、
図15および
図16(a)〜(c)に示すように、スライドプレート91を、巻バネ92を圧縮させつつ離脱位置に保持した状態で開口部3hから補助ロック収容孔3cに挿入するための組立治具15のセット部が設けられている。閉止部材11の一端には張り出し部11gが設けられており、この張り出し部11gに前記セット部として、組立治具15に設けられた棒状体15bを貫通させることで、棒状体15bにてスライドプレート91の先端部94を巻バネ92の付勢力に抗して押し止めることのできる貫通孔11dが設けられている。また、閉止部材11には、スライドプレート91の後端の凸部98に係合することで、スライドプレート91の姿勢を適正に保つための係合部11eや、スライドガイド部11aからのスライドプレート91の脱落を抑えるための案内突起11cや、弾性爪13が設けられている。
【0058】
次に、上記ステアリングロック装置1の組み立て手順を説明する。すなわち、まずロック本体8のバネ座用穴83とハンガー7のバネ受け77に巻バネ61を配置しつつ、ハンガー7を横方向から組み込んでロック本体8と連結し、連結部73をロック本体8の腕部81,82間に受け入れると共に、連結部73および腕部74間にロック本体8の腕部81を受け入れて、連結ピン62でハンガー7およびロック本体8を連結する。これにより、
図4に示すように、連結ピン62が腕部81,82の長穴81a,82aに挿入されると共に、連結部73および腕部74の丸穴73a、74aに嵌合し、連結ピン62の一端が腕部74の厚さの面Cから外側へ突出する。次いで、ハンガー7の傾斜受部71にスライド部材5を挿通する。このようにしてスライド部材5、ハンガー7およびロック本体8を組立ててフレーム3の部品収容室3aに収容すると共に、ロック本体8およびハンガー7をフレーム3のロック収容孔3bに収容する。
【0059】
次いで、フレーム3の部品収容室3a内の所定箇所に、ウォームホイール4を配設して駆動ギヤをスライド部材5のラック部と噛み合わせると共に、ウォームホイール4の近傍にモータを配設して回転軸のウォームギヤ41をウォームホイール4と噛み合わせる。次いで、部品収容室3a内の上部に、プリント基板10を配置して配線を行い、プリント基板10を部品収容室3a内でネジ止めした後、ハンガー7のバネ座用穴76に巻バネ75を載置し、フレーム3にカバー2を装着することによって部品収容室3aを覆う。
【0060】
スライドプレート91を、開口部3hを閉止する閉止部材11にセットすると共に、巻バネ92を、閉止部材11に設けられたバネ受座11bとスライドプレート91に設けられたバネ受座99aとの間に圧縮状態で介装し、その状態で、
図15および
図16に示すように、閉止部材11に設けられた貫通孔11dに組立治具15の本体15aの上部に立設した棒状体15bを貫通させることにより、棒状体15bによりスライドプレート91の先端部94を、巻バネ92の付勢力に抗して押し止めて、スライドプレート91を離脱位置に保持する。
【0061】
その状態で、閉止部材11によって支持したスライドプレート91および巻バネ92を、開口部3hから補助ロック収容孔3cに挿入し、且つ、閉止部材11に設けられた弾性爪13を補助ロック収容孔3c内の係合段部3eに係合させることにより、開口部3hを閉止部材11で閉止する。
【0062】
そして、
図17に示すように、フレーム3に装着された保持手段21との係合によってスライドプレート91を離脱位置に保持した上で、組立治具15の棒状体15bを閉止部材11の貫通孔11dから引き抜くことにより、スライドプレート91の離脱位置への保持を組立治具15から保持手段21に受け渡す。以上により組立が完了する。
【0063】
このようにしてステアリングロック装置1を組立てた後、一対の脚部3d,3dがステアリングコラム装置Aに跨る状態でステアリングロック装置1をステアリングコラム装置Aに装着する。
【0064】
次に、上記ステアリングロック装置1の動作を説明する。
図1〜
図4などに示すロック本体8の施錠時には、
図8に示すようにスライド部材5はロック端E1側に位置し、スライド部材5の先端部53および傾斜部52がハンガー7の傾斜受部71と係合するので、ハンガー7と連結されるロック本体8がロック位置に位置し、すなわち、ロック本体8がフレーム3の底面から突出してステアリングシャフトに嵌合する。その結果、ステアリングシャフトの回転が阻止されるので、自動車が操縦不能な状態に保たれる。
【0065】
次いで、上記ロック状態で解錠信号の出力によってモータの解錠方向への回転を開始すると、ウォームギヤ41およびウォームホイール4を介して駆動ギヤによってラック部が駆動されるので、スライド部材5がロック端E1側からロック解除端E2の方向への移動を開始する。これに伴って、スライド部材5のロック解除傾斜部52aがハンガー7のロック解除傾斜部71aと当接係合した状態で、傾斜部52に沿ってハンガー7が移動することによって、ロック本体8が連動してステアリングシャフトから離れ、ロック解除位置に変位する。
【0066】
次いで、モータが解錠方向へさらに回転すると、
図9に示す解錠状態となり、ロック本体8がフレーム3内に後退してロック解除位置に変位し、ステアリングシャフトの回転が許容されるので、自動車が操縦可能な状態にある。
【0067】
次いで、施錠信号の出力によって再びロック状態に戻る際、モータの駆動によってウォームホイール4が施錠方向に回転すると、スライド部材5に追従してロック本体8がロック位置へ変位する。このとき、ハンガー7およびロック本体8は、巻バネ75によってカバー2側からステアリングコラム装置A側へ付勢されると共に、ロック本体8は、上記方向へ巻バネ61によっても付勢されている。これに伴って、スライド部材5のロック傾斜部52bがハンガー7のロック傾斜部71bと当接係合した状態で、傾斜部52に沿ってハンガー7が移動することによって、ロック本体8が連動してステアリングシャフトに向かって変位する。その結果、ロック本体8がステアリングシャフトに嵌合してステアリングシャフトの回転が阻止されるので、自動車が操縦不能な状態となる。このとき、例えば、ロック本体8がステアリングシャフトの係合溝ではなく係合溝の間の外周部に係合した場合、その後、ステアリングシャフトが回転した際に、巻バネ61の付勢によってロック本体8がステアリングシャフトの係合溝に嵌合するので、ステアリングシャフトの回転が阻止される。
【0068】
一方、
図3に示すように、巻バネ92の付勢力によってスライドプレート91が係合位置側に付勢保持されているので、上記ロック状態で、不正行為によってフレーム3からカバー2を外した際に、カバー2の保持手段21がスライドプレート91の係合凹部93から離脱し、スライドプレート91が離脱位置から係合位置へ移動し、スライドプレート91の係合腕部97と補助腕部96がロック本体8の連結ピン62を上下から挟むように係合する。これによって、
図14に示すように、ロック部材6(ハンガー7およびロック本体8)の移動が阻止され、ロック本体8によるステアリングシャフトの施錠状態が保持される。
【0069】
以上、本発明では、従来例のようにロック部材に係合溝を設ける代わりに、スライドプレート91が係合する連結ピンをロック部材6に設けたので、ロック部材6の強度を確保しつつ、ロック部材6のコンパクト化を図ることができ、限られたスペースへの構成部品の配置が比較的容易にできるようになる。
【0070】
また、スライドプレート91の先端に、ロック部材6の連結ピン62のロック解除位置側に挿入される係合腕部97を設け、その係合腕部97に、ロック部材6のスライド方向と直交する方向に沿った保持壁97aを設けたので、突起が保持壁97aに受け止められることによって、確実にロック部材6をロック解除位置へ移動しないように止めることができる。
【0071】
特に、本実施形態では、スライドプレート91の先端部94に、係合腕部97と対をなす補助腕部96を設けることで、係合腕部97と補助腕部96との間にU字状の係合凹部95を設けているので、スライドプレート91の先端部94がロック位置側やロック解除位置側に傾いた状態でスライドしてきた場合にも、スムーズ且つ確実に連結ピン62を係合凹部95に誘導することができ、ロック部材6をロック位置に保持することができる。
【0072】
また、巻バネ92が連結ピン62に対してオフセットしている場合、付勢力の加わり方のアンバランスにより、保持手段21による係止点を支点P1にしてスライドプレート91がガタ範囲内で矢印Y1のように傾いて、係合腕部97が突起に対して傾いた状態でスライドしてくる可能性があるが、その場合でも、係合腕部97や補助腕部96の先端に連結ピン62を拾う誘導斜面97c、96cが設けられているので、確実に連結ピン62を係合凹部95に誘導することができ、それによって、ロック部材6をロック解除位置に移動しないように止めておくことができて、確実な防盗性能を発揮することができる。
【0073】
また、ロック部材6をロック位置に保持する手段としてスライドプレート91を用いているので、保持手段21との係合箇所を含めた形状の自由度や付勢手段としての巻バネ92の配置の自由度を増すことができ、一層のコンパクト化を図ることができる。また、巻バネ92が突起に対してオフセット配置されているので、巻バネ92の配置箇所を任意に選ぶことができ、構成の単純化やコンパクト化を図ることができる。
【0074】
また、連結ピン62に係合するスライドプレート91が、ロック部材6の幅広の面Bからロック部材6の板厚方向(
図5の矢印Dで示す方向)に延設されるとともに、スライドプレート91を含む補助ロック部材9がロック部材6の幅広の面Bより外側に配置されるので、この補助ロック部材9の位置を、不正な解錠操作行為を受けるスペースがない位置、例えば、車両前方側の位置に設定することができ、不正な解錠操作行為を受けにくくすることができる。
【0075】
さらに、補助ロック部材9が板状のスライドプレート91を備えたので、補助ロック部材9を収容するフレーム3の補助ロック収容孔3cを小さくすることができ、フレーム3に対する不正な解錠操作の影響を抑制することができる。したがって、車両駐車時に不正な解錠操作で車両が操縦可能になるという不具合を防止でき、車両の防盗性能を向上させることができる。
【0076】
また、ロック部材6のハンガー7およびロック本体8を連結する連結ピン62によって、スライドプレート91が係合する突起を構成したので、この突起のために別部品あるいは別部位を特に設ける必要がない。
【0077】
また、ハンガー7の腕部74から連結ピン62が外側へ突出するので、この連結ピン62の突出長さを限定して連結ピン62に掛かる曲げ力を抑制して連結ピン62の耐久性を高めることができ、ロック部材6に対する不正な解錠操作の影響を抑制し、防盗性能の向上を図ることができる。
【0078】
また、スライドプレート91が連結ピン62に係合した際に、係合腕部97と補助腕部96とで上下から挟むように連結ピン62を保持するので、ロック部材6にスライドする方向の力が加えられてもスライドプレート91でガタ付きをより確実に防止できる。また、係合腕部97がハンガー7の腕部74の突起78と連結ピン62とに挟まれるので、連結ピン62を中心としてスライドプレート91を回動させる方向に力が掛かった場合、腕部74の突起78でスライドプレート91の回転が阻止される。これらによっても、ロック部材6およびスライドプレート91に対する不正な解錠操作の影響を抑制し、防盗性能の向上を図ることができる。
【0079】
また、スライドプレート91をステアリングシャフト側から挿入セットすることができるので、防盗性能の向上を図ることができる。また、スライドプレート91および巻バネ92を、それらを挿入するための閉止部材11と一緒にフレーム3に組み付けることができるので、組み付けの容易化を図ることができる。
【0080】
また、閉止部材11に設けられた貫通孔11dに組立治具15の棒状体15bを貫通させることによって、棒状体15bによりスライドプレート91の先端を巻バネ92の付勢力に抗して離脱位置に押し止めることができるので、簡単な組立治具15を用いながら、スライドプレート91および巻バネ92を容易に補助ロック収容孔3cに組み付けることができる。
【0081】
また、巻バネ92の位置が連結ピン62に対してオフセットされている場合、スライドプレート91の先端が傾いた姿勢で連結ピン62に対してスライドする可能性があるが、スライドプレート91の後端の凸部98を閉止部材11の係合部11eで押さえることによって、スライドプレート91の傾きを抑制することができるので、スライドプレート91をアンバランスな姿勢になりにくくすることができる。また、補助ロック収容孔3cにスライドプレート91を挿入する場合にもスライドプレート91の姿勢を適正に保つことができるので、組み付けしやすくなる。
【0082】
なお、本実施形態では、カバー2がフレーム3から取り外されることで、保持手段21と係合部93との係合が解除され、スライドプレート91の離脱位置から係合位置への移動を許可するように構成されているが、カバー2がフレーム3上を回転するなどして、保持手段21がフレームから相対移動し、保持手段21と係合部93との係合を解除することで、スライドプレートの離脱位置から係合位置への移動を許可する構成としても良い。
【0083】
また、
図18に示す第2実施形態の補助ロック部材9Bのように、スライドプレート91Bを、係合腕部97がある側だけの半分の幅のものに構成し、補助腕部を省略して、係合凹部95を半分だけのものにすることもできる。その場合、巻バネ92の配置箇所を、係合腕部97のある側にオフセットして設定し、その部分にバネ収容用の切欠92を設ける。この際、バネ収容用の切欠92が、保持手段21の係合する凹状の係合部93と連続した形になってもよい。また、巻バネ92が第1実施形態と反対側に配置されるので、閉止部材11Bには、スライドプレート91Bと干渉しないようにバネ受座11hを延長して設けることになる。
【0084】
この第2実施形態の場合、巻バネ92が、第1実施形態と反対側にオフセットして設けられているので、スライドプレート91Bには第1実施形態と逆向きの傾き(矢印Y3で示す方向の傾き)が発生する可能性があるが、係合腕部97の先端には誘導斜面97cが設けられているので、連結ピン62を確実に保持壁97aに誘導することができる。
【0085】
また、
図19に示す第3実施形態の補助ロック部材9Cのように、巻バネ92を、ロック位置にあるロック部材6の連結ピン62からロック部材6のスライド方向と直交する方向に引いた直線Sを挟んでロック解除位置側とロック位置側の両方に一対配置することもできる。この場合は、巻バネ92を収容する切欠92を、前記直線Sを挟んだ両側に設ける。また、巻バネ92が両側に一対配置されるので、閉止部材11Cには、スライドプレート91Bと干渉しないようにバネ受座11hを設けることになる。
【0086】
このように、巻バネ92を前記直線Sの両側に一対配置した場合、片方の巻バネ92による付勢力のアンバランスを他方の巻バネ92により修正することができるので、矢印Y4のように前記直線Sに沿ってバランスよくスライドプレート91を連結ピン62に対してスライドさせることができ、無理なくスムーズにスライドプレート91の先端部94を連結ピン62に係合させることができる。