【実施例1】
【0023】
本発明の実施例を
図1に示す。
図1に示す直流電源装置は、直流電圧源100と、直流電圧源100の出力電圧である直流入力電圧Vsを検出する第1の電圧センサ101と、直流電圧源100の出力する直流電力を交流電力に変換するコンバータ102と、コンバータ102の出力する交流電力を入力する変圧器103と、変圧器103の二次電流I2を検出する電流センサ104と、変圧器103の出力する交流電力を直流電力に変換する整流回路105と、整流回路105の直流出力側に並列接続された共振スイッチ106と共振コンデンサ107から構成された共振回路と、整流回路105の出力する直流電力を平滑化するフィルタリアクトル108とフィルタコンデンサ112と、フィルタコンデンサ112に並列接続するダイオードブリッジであるスナバダイオード110と、スナバダイオード110のダイオードブリッジの中点の出力と整流回路105の直流出力側を接続するスナバコンデンサ109と、フィルタコンデンサ112の直流出力電圧Vdを検出する第2の電圧センサ111と、フィルタコンデンサ112に並列接続された負荷113と、第1の電圧センサ101が検出する直流入力電圧Vsと第2の電圧センサ111が検出する直流出力電圧Vdと電流センサ104が検出する二次電流I2を入力し、コンバータ102を構成する半導体素子Q1〜Q4のゲート信号G1〜G4、および、共振スイッチ106を構成する半導体素子Qzのゲート信号Gzを制御する制御装置114から構成される。
【0024】
制御装置114の詳細を
図2に示す。
図2に示す直流電源装置の制御装置114は、第2の電圧センサ111の出力信号を入力する第1のA/D変換器200と、電流センサ104の出力信号を入力する第2のA/D変換器201と、第1の電圧センサ101の出力信号を入力する第3のA/D変換器202と、直流出力電圧指令Vd*と第1のA/D変換器200の出力信号である直流出力電圧Vdの偏差を求める第1の減算器203と、第1の減算器203の出力信号を入力して負荷電流指令Id*を出力する第1のPI制御器204と、第1のPI制御器204の出力する負荷電流指令Id*と第2のA/D変換器201の出力信号である負荷電流推定値Id’の偏差を求める第2の減算器205と、第2の減算器205の出力信号をA接点スイッチ206を介して入力する第2のPI制御器208と、第2のPI制御器208の出力信号とコンバータ制御周期の初期値Tc*を加算してコンバータ制御周期Tcを求める第1の加算器210と、第1のA/D変換器200の出力信号である直流出力電圧Vdと第3のA/D変換器202の出力信号である直流入力電圧Vsを入力してコンバータ102を構成する半導体素子のターンオン時間指令T1*を出力する関数テーブル212と、第2の減算器205の出力信号をB接点スイッチ207を介して入力する第3のPI制御器209と、第3のPI制御器209の出力信号と関数テーブル212のコンバータ102を構成する半導体素子のターンオン時間指令T1*の和を求める第2の加算器211と、第2の加算器211の出力信号を入力し所定の範囲内にコンバータ102を構成する半導体素子のターンオン時間T1を制限すると同時に出力を制限しているか否かを判別するアンダーフローフラグUFを出力するリミッタ213と、第1の加算器210の出力するコンバータ102の制御周期Tcとリミッタ213の出力するコンバータ102を構成する半導体素子のターンオン時間T1と共振スイッチ106を構成する半導体素子のターンオン時間T2を入力しコンバータ102を構成する半導体素子Q1〜Q4のゲート信号G1〜G4と、共振スイッチ106を構成する半導体素子Qzのゲート信号Gzと、第1〜3のA/D変換器200〜202をサンプル&ホールドするA/D変換器のトリガ信号Tadを出力するパルス制御装置214から構成される。
【0025】
リミッタ213の出力するアンダーフローフラグUFに応じて、A接点スイッチ206とB接点スイッチ207は排他的に、以下のように動作する。
a)リミッタ213の出力が所定の範囲内(T1>T1min)のとき、
アンダーフローフラグUF:オフ
A接点スイッチ206 :開放
第1のPI制御器208 :リセット、出力ゼロ
第1の加算器210 :出力Tc*(固定)
B接点スイッチ207 :接続
第2のPI制御器209 :動作中
リミッタ213 :出力T1(可変)
b)リミッタ213の出力が下限値に制限(T1=T1min)されているとき、
アンダーフローフラグUF:オン
A接点スイッチ206 :接続
第1のPI制御器208 :動作中
第1の加算器210 :出力Tc(可変)
B接点スイッチ207 :開放
第2のPI制御器209 :リセット、出力ゼロ
リミッタ213 :出力T1min(固定)
【0026】
本発明の直流電源装置の動作波形を
図3に示す。
図3において、上の図から順に以下の信号を示している。
(1)・二次電流I2と負荷電流Id
(2)・共振電流Izとスナバ電流Is
(3)・コンバータ102を構成する半導体素子Q1、Q4のゲート信号G1、G4
(4)・共振スイッチ106を構成する半導体素子Qzのゲート信号Gz
(5)・第1〜第3A/D変換器200〜202のトリガ信号Tad
が示されている。
【0027】
図3の横軸は時間軸であり、時間の推移とともに(状態1)から(状態5)へと遷移する。
(状態1)コンバータ102を構成する半導体素子Q1、Q4がオフ中のとき、変圧器103の二次電流I2はゼロになっているが、負荷電流Idは整流回路105を通って流れ続けている。
【0028】
(状態2)コンバータ102を構成する半導体素子Q1、Q4がターンオンすると、変圧器103の二次電流I2が流れ出すと同時にスナバコンデンサ109の充電電流Isが流れる。この状態は、スナバコンデンサ109の静電容量と回路インダクタンスから求まる共振周期の約1/2の間継続する。
【0029】
(状態3)スナバコンデンサ109が充電し終わると、変圧器103の二次電流I2と負荷電流Idの大きさは一致する。この状態の先頭のタイミングで、第1〜第3のA/D変換器200〜202を動作させるA/D変換器のトリガ信号Tadを出力し、A/D変換(サンプル&ホールド)を行うことにより、検出した変圧器103の二次電流I2の値を用いて、負荷電流Idの値を求めることができる。
【0030】
(状態4)コンバータ102を構成する半導体素子Q1、Q4のターンオフタイミングに対し、共振コンデンサ107の静電容量と回路インダクタンスから求める共振周期の3/4より前のタイミングで、共振スイッチ106を構成する半導体素子Qzをターンオンする。スナバコンデンサ109に充電されていた電荷は瞬時に放電されて共振コンデンサ107に充電され、その後、スナバコンデンサ109は再充電する。共振電流Izとスナバ電流Isの電流値の和が変圧器103の二次電流I2の電流値に重畳され、いったん変圧器103の二次電流I2の電流値は増加するが共振コンデンサ107の共振周期の1/2を過ぎると減少に転じてゼロになる。変圧器103の二次電流I2は、整流回路105を構成するダイオードにより負の方向には流れないため、二次電流I2がゼロの状態が続く。変圧器103の二次電流I2がゼロの状態で共振スイッチ106をターンオフすると、このとき共振スイッチ106に流れている共振電流Izが負であるため、共振スイッチ106のターンオフ損失はゼロとなる。また、変圧器103の二次電流I2がゼロの状態でコンバータ102をターンオフすると、このとき変圧器103の一次電流I1は励磁電流のみの状態であるためコンバータ102を構成する半導体素子Q1〜Q4のターンオフ損失を大幅に低減できる。
【0031】
(状態5)コンバータ102を構成する半導体素子Q1、Q4がオフ、共振スイッチ106を構成する半導体素子Qzがオフのとき、変圧器103の二次電流I2はゼロになっているが、共振コンデンサ107に充電された電荷がゼロになるまで共振電流Izは流れ続ける。共振電流Izとスナバ電流Isの和が負荷電流Idとなって負荷113に供給される。共振電流Izがゼロになると状態1に戻る。
【0032】
本発明の直流電源装置のリカバリ時の動作波形を
図7に示す。
図7において、上の図から順に、以下の信号を示している。
(1)・整流回路105を構成するダイオードの端子電圧である直流出力電圧Vd
(2)・整流回路105を構成するダイオードに流れる電流である負荷電流Id
(3)・コンバータ102を構成する半導体素子Q1、Q4のゲート信号G1、G4
【0033】
コンバータ102を構成する半導体素子Q1、Q4がオフしている間、変圧器103の一次電流I1および二次電流I2はゼロとなっているが、整流回路105を構成するダイオードには還流電流が流れ続けている。この状態から、半導体素子Q1、Q4がターンオンすると変圧器103の一次電流I1と二次電流I2が流れ始め、変圧器103の二次電流I2の大きさは負荷電流Idに一致する。このとき、整流回路105を構成するダイオードの半数には変圧器103の二次電流I2と同じ大きさの電流が流れ、残りの半数のダイオードは電流ゼロとなる。後者のダイオードの電圧・電流波形を
図7に示している。
【0034】
整流回路105を構成するダイオードに電流が流れている状態から電流が遮断されて電圧が印加される状態に遷移するとき、整流回路105を構成するダイオードの中に蓄積されたキャリアが放出されて一時的に逆方向に電流(リバースリカバリ電流)が流れ、サージ電圧が発生する。図
9の従来技術と比較すると、
図7に示されるように、スナバコンデンサ109およびスナバダイオード110から構成されるスナバ回路によって、このサージ電圧を低減できることが分かる。
【0035】
本発明の直流電源装置の動作波形の一例を
図4に示す。
図4は、
図2における第2のPI制御器209が動作しているモードの波形である。
図4において、上の図から順に以下の信号を示している。
(1)・直流入力電圧Vsが低電圧(80%)、定格負荷時の変圧器103の二次電流I2、負荷電流Id
(2)・直流入力電圧Vsが定格電圧、定格負荷時の変圧器103の二次電流I2、負荷電流Id
(3)・直流入力電圧Vsが高電圧(120%)、定格負荷時の変圧器103の二次電流I2、負荷電流Id
【0036】
共振電流Izが流れていない場合、コンバータ102のオン時間T1は直流入力電圧Vsと直流出力電圧Vdの比に応じて決まる。直流出力電圧Vdを一定に制御するのが目的であるから、コンバータ102を構成する半導体素子のターンオン時間T1は単に直流入力電圧Vsの大きさに反比例すると簡略化して考えてもよい。ところが、共振電流Izの大きさは、
図4に示すように直流入力電圧Vsに比例する。つまり、共振電流Izの伝達するエネルギーは直流入力電圧Vsの二乗に比例するため、直流入力電圧Vsが高くなるにつれてコンバータ102を構成する半導体素子のターンオン時間T1は直流入力電圧Vsの大きさに反比例した値よりも短くなる。このように、定格負荷時は、直流入力電圧Vsに応じてコンバータ102を構成する半導体素子のターンオン時間T1を調整することによって負荷電流Idを一定に保つ。
【0037】
本発明の直流電源装置の動作波形の一例を
図5に示す。
図5は、
図2における第2のPI制御器209が動作しているモードの波形である。
図5において、上の図から順に以下の信号を示している。
(1)・直流入力電圧Vsが定格電圧、定格負荷時の変圧器103の二次電流I2、及び、負荷電流Id
(2)・直流入力電圧Vsが定格電圧、軽負荷(50%)時の変圧器103の二次電流I2、及び、負荷電流Id
【0038】
共振電流Izが流れていない場合、コンバータ102を構成する半導体素子のターンオン時間T1は負荷電流Idの大きさによらず一定でよい。コンバータ102がオンしている間、負荷電流Idは直流入力電圧Vsと直流出力電圧Vdおよびフィルタリアクトル108のインダクタンスに応じて増加し、コンバータ102がオフしている間は直流出力電圧Vdおよびフィルタリアクトル108のインダクタンスに応じて減少する。この負荷電流Idの増加量と減少量が等しくなるのが定常状態であり、コンバータ102を構成する半導体素子のターンオン時間T1は負荷電流Idの大きさによらない。
【0039】
ところが、共振電流Izの伝達するエネルギーは、直流入力電圧Vsの二乗に比例するため、軽負荷になるとコンバータ102を構成する半導体素子のターンオン時間T1を定格負荷時よりも短くする必要がある。
【0040】
本発明の直流電源装置の動作波形の一例を
図6に示す。
図6において、、上の図から順に、以下の信号を示している。
(1)・直流入力電圧Vsが高電圧(120%)、定格負荷時の変圧器103の二次電流I2、及び、負荷電流Id
(2)・直流入力電圧Vsが高電圧(120%)、軽負荷(50%)時の変圧器103の二次電流I2、及び、負荷電流Id
(3)・直流入力電圧Vsが高電圧(120%)、軽負荷(20%)時の変圧器103の二次電流I2、及び、負荷電流Id
を示す。
【0041】
軽負荷になるとコンバータ102を構成する半導体素子のターンオン時間T1を定格負荷時よりも短くすることで供給電力を調整するが、共振電流Izの伝達するエネルギーは直流入力電圧Vsの二乗に比例するため、直流入力電圧Vsが高い場合にはコンバータ102を構成する半導体素子のターンのオン時間T1を短くしても、コンバータ102を構成する半導体素子のターンオン時間の下限値T1minに抵触し、これ以上、供給電力を絞ることが出来なくなる。この場合、コンバータ102のコンバータ制御周期Tcを長く設定することで、供給電力を調整することができる。
図6は、
図2における第1のPI制御器208が動作しているモードの波形である。
【0042】
ここで、コンバータ102を構成する半導体素子のターンオン時間の下限値T1minは、第1〜第3A/D変換器200〜202のサンプル&ホールド期間を確保するため、共振コンデンサ107の静電容量と回路のインダクタンスから求まる共振周期の3/4と、スナバコンデンサ109の静電容量と回路のインダクタンスから求まる共振周期の1/2の和よりも大きくすることが必要である。