(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690711
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】弾性波素子
(51)【国際特許分類】
H03H 9/145 20060101AFI20150305BHJP
H03H 9/64 20060101ALI20150305BHJP
H03H 9/72 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
H03H9/145 C
H03H9/64 Z
H03H9/72
【請求項の数】19
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-288230(P2011-288230)
(22)【出願日】2011年12月28日
(65)【公開番号】特開2013-138333(P2013-138333A)
(43)【公開日】2013年7月11日
【審査請求日】2013年11月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】514250975
【氏名又は名称】スカイワークス・パナソニック フィルターソリューションズ ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(72)【発明者】
【氏名】藤原 城二
(72)【発明者】
【氏名】中西 秀和
(72)【発明者】
【氏名】鶴成 哲也
(72)【発明者】
【氏名】小松 禎也
(72)【発明者】
【氏名】中村 弘幸
【審査官】
橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2011/158445(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/052914(WO,A1)
【文献】
特表2008−533779(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H9/00−9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電基板と、
前記圧電基板の上方に形成された少なくとも1組のIDT電極と、
前記圧電基板および前記IDT電極を被覆する第1の誘電体膜と、
前記第1誘電体膜より横波の伝搬速度が速い材料からなり、少なくとも前記第1の誘電体膜の前記IDT電極の電極指の上方の領域、および、前記IDT電極の電極指間の上方の領域を被覆する第2の誘電体膜とを備え、
前記第2の誘電体膜は、前記IDT電極の電極指の上方の領域の膜厚が、前記IDT電極の電極指間の上方の領域の膜厚より厚い弾性波素子。
【請求項2】
圧電基板と、
前記圧電基板の上方に形成された少なくとも1組のIDT電極と、
前記圧電基板および前記IDT電極を被覆する第1の誘電体膜と、
前記第1の誘電体膜よりも横波の伝搬速度が速い材料からなり、前記第1の誘電体膜の少なくとも一部を被覆する第2の誘電体膜とを備え、
前記第2誘電体膜は、前記IDT電極の電極指の上方の領域を被覆しない、弾性波素子。
【請求項3】
圧電基板と、
前記圧電基板の上方に形成された少なくとも1組のIDT電極と、
前記圧電基板および前記IDT電極を被覆する第1の誘電体膜と、
前記第1の誘電体膜よりも横波の伝搬速度が速い材料からなり、前記第1の誘電体膜の少なくとも一部を被覆する第2の誘電体膜とを備え、
前記第2誘電体膜は、前記IDT電極の電極指間の上方の領域を被覆しない、弾性波素子。
【請求項4】
レイリー波およびSH波を励振する圧電基板と、
前記圧電基板の上方に形成され、少なくとも1組のIDT電極からなり、前記レイリー波を主要弾性波として励振させる共振器と、
前記圧電基板および前記IDT電極を被覆する第1の誘電体膜と、
横波の伝搬速度が前記第1の誘電体膜より速い材料からなり、前記第1の誘電体膜の少なくとも一部の領域を所定の膜厚で被覆する第2の誘電体膜とを備え、
前記所定の膜厚は、前記IDT電極の電極指間の上方の領域の膜厚が、前記IDT電極の電極指の上方の領域の膜厚より厚くなるように構成され、
前記SH波による共振周波数が、前記レイリー波による反共振周波数より高い、弾性波素子。
【請求項5】
レイリー波およびSH波を励振する圧電基板と、
前記圧電基板の上方に形成され、少なくとも1組のIDT電極からなり、前記レイリー波を主要弾性波として励振させる共振器と、
前記圧電基板および前記IDT電極を被覆する第1の誘電体膜と、
横波の伝搬速度が前記第1の誘電体膜より速い材料からなり、前記第1の誘電体膜の少なくとも一部の領域を所定の膜厚で被覆する第2の誘電体膜とを備え、
前記所定の膜厚は、前記IDT電極の電極指の上方の領域の膜厚が、前記IDT電極の電極指間の上方の領域の膜厚より厚くなるように構成され、
前記SH波による共振周波数が、前記レイリー波による共振周波数より低い、弾性波素子。
【請求項6】
前記第2の誘電体膜は、上方に突出した凸部によって膜厚の差が形成される、請求項2または4に記載の弾性表面波素子。
【請求項7】
前記第1の誘電体膜は、凹部を備え、
前記第2の誘電体膜は、前記第1の誘電体膜の凹部を含む領域に被覆される請求項2、4および6のいずれかに記載の弾性波素子。
【請求項8】
前記第1の誘電体膜は、前記IDT電極の一方のバスバーと他方の電極指の先端との間の領域、および、前記IDT電極の一方の電極指の先端と他方のバスバーとの間の領域をそれぞれ含む2つの帯状の領域において、それぞれ平坦な上面を有する、請求項2、4、6および7のいずれかに記載の弾性波素子。
【請求項9】
前記第2の誘電体膜は、前記2つの帯状の領域において、被覆されない、または、同一の膜厚で被覆される、請求項8に記載の弾性波素子。
【請求項10】
前記第1の誘電体膜または前記第2の誘電体膜は、膜厚が連続的に変化するテーパー部を有する、請求項2、4および6−9のいずれかに記載の弾性波素子。
【請求項11】
前記第2の誘電体膜は、上方に突出した凸部によって膜厚の差が形成される、請求項2または5に記載の弾性表面波素子。
【請求項12】
前記第1の誘電体膜は、凹部を備え、
前記第2の誘電体膜は、前記第1の誘電体膜の凹部を含む領域に被覆される請求項2、3、5および11のいずれかに記載の弾性波素子。
【請求項13】
前記第1の誘電体膜は、前記IDT電極の一方のバスバーと他方の電極指の先端との間の領域、および、前記IDT電極の一方の電極指の先端と他方のバスバーとの間の領域をそれぞれ含む2つの帯状の領域において、それぞれ平坦な上面を有する、請求項3、5、11および12のいずれかに記載の弾性波素子。
【請求項14】
前記第2の誘電体膜は、前記2つの帯状の領域において、被覆されない、または、同一の膜厚で被覆される、請求項13に記載の弾性波素子。
【請求項15】
前記第1の誘電体膜または前記第2の誘電体膜は、各膜の端部または膜厚が変化する箇所においてテーパー部を備え、膜厚が連続的に変化する、請求項3、5、7、11−14のいずれかに記載の弾性波素子。
【請求項16】
入力端子と、
出力端子と、
前記入力端子および前記出力端子との間に直列に接続される直列共振器と、
前記直列共振器に一端が接続され、他端が接地される並列共振器とを含むラダー型フィルタであって、
前記直列共振器は、請求項2、4および6−10のいずれかに記載の弾性波素子である、ラダー型フィルタ。
【請求項17】
入力端子と、
出力端子と、
前記入力端子および前記出力端子との間に直列に接続される直列共振器と、
前記直列共振器に一端が接続され、他端が接地される並列共振器とを含むラダー型フィルタであって、
前記並列共振器は、請求項3、5および11−15のいずれかに記載の弾性波素子である、ラダー型フィルタ。
【請求項18】
入力端子と、
出力端子と、
前記入力端子および前記出力端子の間に直列に接続された、DMSフィルタおよび直列共振器とを含むフィルタであって、
前記直列共振器は、請求項1−15のいずれかに記載の弾性波素子である、フィルタ。
【請求項19】
第1、第2および第3の端子と、
前記第1の端子および前記第2の端子の間に接続された第1のフィルタと、
前記第1の端子および前記第3の端子の間に接続された第2のフィルタとを含むデュプレクサであって、
前記第1のフィルタおよび前記第2のフィルタの少なくとも一方は、請求項1−15のいずれかに記載の弾性波素子である、デュプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯域フィルタ等に用いられる弾性波素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、携帯電話等の情報通信機器などの分野において、共振子、フィルタなどの回路素子として、圧電基板の表面に電極を形成した弾性波素子が用いられている。このような弾性波素子の一例を
図21に示す。
図21の(a)は、弾性波素子1500の上面図である。弾性波素子1500は、圧電基板1501に1対の櫛形のIDT電極1502と、2つの反射器1503を配置して形成されている。IDT電極1502はそれぞれ、バスバー1511および当該バスバー1511から延伸する複数の電極指1512を有する。IDT電極1502のそれぞれの電極指1512は、他方のIDT電極1502の電極指1512と交互に並ぶよう配置される。また、反射器1503は、これらのIDT電極1502をはさんで、1つずつ配置される。これらの電極指1512が交互に並んだ領域を含む帯状の領域である交差領域は、弾性波の主要な伝播路として利用される。
【0003】
また、特許文献1および特許文献2は、このような弾性波素子1500に誘電体膜を被覆することを開示している。
図21の(b)は、誘電体膜を被覆した弾性波素子1500の、
図21の(a)に示すC−C´線に沿った断面の一部を示す図である。弾性波素子1500は、圧電基板1501およびIDT電極1502に誘電体膜1504を被覆している。これにより、弾性波素子1500の温度特性が改善される。また、誘電体膜1504の膜厚を、各電極指1512の上方の部分が、各電極指1512の間の上方の部分より薄くしている。これにより、挿入損失を低減するとともに比帯域の低下を抑制し、あるいは、共振周波数と反共振周波数とのエネルギー分布差を小さくし、これらの周波数における温度特性差を小さくしている。
【0004】
また、誘電体膜を被覆した弾性波素子に、耐湿性の高いパッシベーション膜(第2の誘電体膜)をさらに保護膜として被覆したものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−147818号公報
【特許文献2】国際公開2007/099742号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、レイリー波を主要波とする弾性波素子においては、共振周波数と反共振周波数との間にSH波による不要な応答が存在する。そのため、弾性波素子をフィルタとして使用する場合、この不要応答が帯域内リプルとなりフィルタの通過特性の劣化を招く課題があった。
【0007】
それゆえに、本発明の目的は、誘電体膜を被覆した弾性波素子において、フィルタとしての通過特性の劣化を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、圧電基板と、圧電基板の上方に形成された少なくとも1組のIDT電極と、圧電基板およびIDT電極を被覆する第1の誘電体膜と、第1誘電体膜より横波の伝搬速度が速い材料からなり、少なくとも第1の誘電体膜のIDT電極の電極指の上方の領域、および、IDT電極の電極指間の上方の領域を被覆する第2の誘電体膜とを備え、第2の誘電体膜の、IDT電極の電極指の上方の領域の膜厚と、IDT電極の電極指間の上方の領域の膜厚とが異なる弾性波素子である。
【0009】
第2の誘電体膜は、IDT電極の電極指間の上方の領域の膜厚が、IDT電極の電極指の上方の領域の膜厚より厚いことが好ましい。
【0010】
あるいは、第2の誘電体膜は、IDT電極の電極指の上方の領域の膜厚が、IDT電極の電極指間の上方の領域の膜厚より厚いことが好ましい。
【0011】
また、本発明は、圧電基板と、圧電基板の上方に形成された少なくとも1組のIDT電極と、圧電基板およびIDT電極を被覆する第1の誘電体膜と、第1の誘電体膜よりも横波の伝搬速度が速い材料からなり、第1の誘電体膜の少なくとも一部を被覆する第2の誘電体膜とを備え、第2誘電体膜は、IDT電極の電極指の上方の領域を被覆しない、あるいは、IDT電極の電極指間の上方の領域を被覆しない、弾性波素子である。
【0012】
また、本発明は、レイリー波およびSH波を励振する圧電基板と、圧電基板の上方に形成され、少なくとも1組のIDT電極からなり、レイリー波を主要弾性波として励振させる共振器と、圧電基板およびIDT電極を被覆する第1の誘電体膜と、横波の伝搬速度が第1の誘電体膜より速い材料からなり、第1の誘電体膜の少なくとも一部の領域を所定の膜厚パターンで被覆する第2の誘電体膜とを備え、SH波による共振周波数が、レイリー波による反共振周波数より高い、あるいは、レイリー波による共振周波数より低い、弾性波素子である。
【0013】
また、第2の誘電体膜は、上方に突出した凸部によって膜厚の差が形成されることが好ましい。
【0014】
あるいは、第1の誘電体膜は、凹部を備え、第2の誘電体膜は、第1の誘電体膜の凹部を含む領域に被覆されることが好ましい。
【0015】
また、第1の誘電体膜は、IDT電極の一方のバスバーと他方の電極指の先端との間の領域、および、IDT電極の一方の電極指の先端と他方のバスバーとの間の領域をそれぞれ含む2つの帯状の領域において、それぞれ平坦な上面を有し、第2の誘電体膜は、2つの帯状の領域において、被覆されない、または、同一の膜厚で被覆されることが好ましい。
【0016】
また、第1の誘電体膜または第2の誘電体膜は、各膜の端部または膜厚が変化する箇所においてテーパー部を備え、膜厚が連続的に変化することが好ましい。
【0017】
また、本発明は、入力端子と、出力端子と、入力端子および出力端子との間に直列に接続される直列共振器と、直列共振器に一端が接続され、他端が接地される並列共振器とを含むラダー型フィルタにも向けられる。直列共振器および並列共振器は上述の弾性波素子が用いられる。また、本発明は、入力端子と、出力端子と、入力端子および出力端子の間に直列に接続された、DMSフィルタおよび直列共振器とを含むフィルタにも向けられる。直列共振器は、上述の弾性波素子が用いられる。また、本発明は、第1、第2および第3の端子と、第1の端子および第2の端子の間に接続された第1のフィルタと、第1の端子および第3の端子の間に接続された第2のフィルタとを含むデュプレクサにも向けられる。第1のフィルタおよび第2のフィルタの少なくとも一方は、上述の弾性波素子が用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る弾性波素子の上面図および拡大断面図
【
図2】比較例に係る弾性波素子の周波数特性を示す図
【
図3】比較例に係る弾性波素子の周波数特性を示す図
【
図4】比較例に係る弾性波素子の周波数特性を示す図
【
図5】本発明の第1の実施形態に係る弾性波素子の検討例の周波数特性を示す図
【
図6】本発明の第1の実施形態に係る弾性波素子の検討例の周波数特性を示す図
【
図7】本発明の第1の実施形態に係る弾性波素子の検討例の周波数特性を示す図
【
図8】本発明の第1の実施形態に係る弾性波素子の拡大断面図
【
図9】本発明の第1の実施形態に係る弾性波素子の拡大断面図
【
図10】本発明の第1の実施形態に係る弾性波素子の部分上面図
【
図11】本発明の第2の実施形態に係る弾性波素子の上面図および拡大断面図
【
図12】本発明の第2の実施形態に係る弾性波素子の検討例の周波数特性を示す図
【
図13】本発明の第2の実施形態に係る弾性波素子の検討例の周波数特性を示す図
【
図14】本発明の第2の実施形態に係る弾性波素子の検討例の周波数特性を示す図
【
図15】本発明の第2の実施形態に係る弾性波素子の拡大断面図
【
図16】本発明の第2の実施形態に係る弾性波素子の拡大断面図
【
図17】本発明の第1の実施形態に係る弾性波素子の部分上面図
【
図18】本発明の第3の実施形態に係る弾性波素子の拡大断面図
【
図19】本発明の第1−第3の実施形態の変形例に係る弾性波素子の上面図
【
図20】本発明の第4の実施形態に係るラダー型フィルタの構成図
【
図21】従来の弾性波素子の上面図および拡大断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態について以下に説明する。
図1は本実施形態に係る弾性波素子100を透過的に描いた上面図およびそのA−A´線に沿った拡大断面図である。弾性波素子100は、圧電基板101に2つのIDT電極102と、2つの反射器103を配置して構成される共振子である。IDT電極102はそれぞれ、バスバー111および当該バスバー111から延伸する複数の電極指112を有する。各IDT電極102のそれぞれの電極指112は、他方のIDT電極102の電極指112と交互に並び、かつ、先端が他方のIDT電極102のバスバー111に近接するよう配置される。また、反射器103はこれらのIDT電極102をはさんで、1つずつ配置される。また、圧電基板101、IDT電極102および反射器103は、第1の誘電体膜104および、第1の誘電体膜より横波の伝搬速度が速い第2の誘電体膜105によって被覆されている。各IDT電極102の電極指112が交互に並んだ帯状の領域である交差領域は、弾性波の主要な伝播路として利用される。第1の誘電体膜104は、上面が平坦な面となるよう被覆されている。第2の誘電体膜105は、電極指112間の上方の領域に、上方に突出した凸部121を備え、電極指112の上方の部分より、電極指112間の上方の部分のほうが膜厚が厚くなっている。
【0020】
圧電基板101としては、例えばカット角129°の回転Yカットニオブ酸リチウム基板(LiNbO
3)が用いられる。また、IDT電極102および反射器103としては、例えば、アルミニウム、銅、銀、金、チタン、タングステン、モリブデン、白金、またはクロムからなる単体金属、もしくはこれらを主成分とする合金、またはこれらの金属を積層させた積層体からなる電極が用いられる。また、第1の誘電体膜104は、二酸化珪素(SiO
2)を主成分とすることが好適である。また、第2の誘電体膜105は、窒化珪素(SiN)または酸化窒化珪素(SiON)を主成分とすることが好適である。
【0021】
以下に、第2の誘電体膜105の膜厚を、電極指112の上方の部分より、電極指112間の上方の部分のほうを厚くする効果を説明する。
図2−4は、弾性波素子100において、電極指112のピッチを2nm、第1の誘電体膜104の主成分をSiO
2、圧電基板からの高さを0.31λ(λは励起波長)、第2の誘電体膜105の主成分をSiNとし、比較用に第2の誘電体膜105を、電極指112の上方の部分および電極指112間の部分に一様な膜厚で被覆し、その膜厚を変化させた場合の弾性波素子100のアドミタンス特性を示す図である。
図2−4に示すように第2の誘電体膜105を被覆しない場合(0λ)から、膜厚を厚くしていくにつれて、レイリー波の共振周波数、反共振周波数およびSH波のピークの周波数がいずれも同程度に高くなる。そのため、レイリー波の共振周波数と反共振周波数との間から帯域内リプルとなるSH波のピークが外れることがなく、フィルタとしての通過特性を改善できない。
【0022】
図5−7は、上述の場合におい
て、第2の誘電体膜105を、電極指112の上方に被覆せず、電極指112間の上方にのみ被覆する点のみ条件を変えて、その膜厚を変化させた場合の弾性波素子100のアドミタンス特性を示す図である。
図5−7に示すように、第2の誘電体膜105を被覆しない場合(0λ)から、膜厚を厚くしていくにつれて、レイリー波の共振周波数、反共振周波数が低くなるのに対し、SH波のピークの周波数が高くなり、膜厚が0.01λ以上であれば、SH波のピークの周波数が、レイリー波の反共振周波数より高くなる。これは、レイリー波に対しては、第2の誘電体膜105を被覆することによる質量付加の効果が作用して、レイリー波の伝搬速度が低下するのに対し、レイリー波より伝送路の表面側にエネルギーが集中するSH波に対しては、第2の誘電体膜105の横波の伝搬速度が第1の誘電体膜104より速いことが作用し、SH波の伝搬速度が増加するためと考えられる。このように、第2の誘電体膜105の厚さを、電極指112の上方の部分より、電極指112間の上方の部分のほうを厚くすることで、レイリー波の共振周波数と反共振周波数との間から帯域内リプルとなるSH波のピークを高周波数側に外すことができ、フィルタの通過特性を改善できる。
【0023】
第2の誘電体膜105の、電極指112の上方の部分の厚さと電極指112間の上方の部分の厚さとの差は、0.1λを超えると、レイリー波のK
2値が小さくなる。そのため、厚さの差は、0.1λ以下とすることが望ましい。
【0024】
弾性波素子100においては、第2の誘電体膜105は、電極指112間の上方の領域に、上方に突出した凸部121を備えることで膜厚に差を設けたが、下方に突出した凸部を備えてもよい。
図8の(a)および(b)に、このような弾性波素子200および300の拡大断面図を示す。弾性波素子200は、弾性波素子100において、凸部121を備えない代わりに、第1の誘電体膜104が、電極指112間の領域に凹部122を備え、第2の誘電体膜105が、凹部122に嵌合する下方に突出した凸部123を備えることで、第2の誘電体膜105の膜厚の差を設けたものである。また、弾性波素子300は、弾性波素子200において、弾性波素子100における凸部121を併せて備えることで膜厚の差を設けたものである。これらの弾性波素子100、200および300においては、第1の誘電体膜104の全面に第2の誘電体膜105を被覆している。これにより、第2の誘電体膜105の保護膜としての機能が十分に発揮され、品質を向上することができる。
【0025】
あるいは、第2の誘電体膜105を電極指112間の上方の領域に被覆し、電極指112の上方の領域には被覆しなくてもよい。
図9の(a)および(b)に、このような弾性波素子400および500の拡大断面図を示す。弾性波素子400は、弾性波素子100において、第2の誘電体膜105を電極指112間の上方の領域にのみ被覆したものである。弾性波素子500は、弾性波素子100において、第1の誘電体膜104が、電極指112間の上方の領域に凹部124を備え、第2の誘電体膜105が、凹部124を被覆したものである。弾性波素子500においては、第1の誘電体膜104の凹部124を除く表面より、第2の誘電体膜105の上端部が高くてもよく、低くてもよく、同一の高さであってもよい。
【0026】
図10は弾性波素子100、200および300の上面の一部を示す図であり、第2の誘電体膜105の弾性波素子上面における被覆パターンの3つの例を示している。
図10において、斜線で示した領域は、他の領域より第2の誘電体膜105の膜厚が厚い領域を示す。各弾性波素子は、
図10の(a)に示すように交差領域の電極指112間の上方においてのみ第2の誘電体膜105の膜厚の厚い領域を設けてもよく、
図10の(b)に示すように、交差領域以外の領域にも延長して膜厚の厚い領域を設けてもよい。あるいは、
図10の(c)に示すように、交差領域の電極指112の上方においてのみ第2の誘電体膜105の膜厚を薄くしてもよい。
図10の(a)および(c)に示すように、IDT電極102のバスバー111と他方のIDT電極102の電極指112の先端との間の領域を含む帯状のギャップ領域において、第1の誘電体膜104および第2の誘電体膜105の上面に凹凸を設けず平坦な上面を有するようにした場合、ギャップ領域における凹凸による伝搬速度の低下を防ぎ、交差領域への弾性波の閉じ込めが向上しフィルタの性能を改善できる。
【0027】
弾性波素子400および500においては、
図10に示す各被覆パターンにおいて、斜線で示した領域に第2の誘電体膜105を被覆し、他の領域に被覆しないものとすればよい。また、
図10の(a)および(c)に示すように、ギャップ領域において、第1の誘電体膜104の上面を凹凸のない平坦な面にし、第2の誘電体膜105を被覆しないか、一様な膜厚で被覆することで、ギャップ領域における凹凸による伝搬速度の低下を防ぎ、交差領域への弾性波の閉じ込めが向上しフィルタの性能を改善できる。
【0028】
第2の誘電体膜105の被覆パターンは、上述の各例に限られず、電極指112の上方の領域の膜厚より、電極指112間の上方の少なくとも一部の領域の膜厚が厚ければよい。
【0029】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態について以下に説明する。
図11は本実施形態に係る弾性波素子600を透過的に描いた上面図およびそのB−B´線に沿った拡大断面図である。弾性波素子600は、第1の実施形態に係る弾性波素子100において、第2の誘電体膜105が、電極指112の上方の領域に、上方に突出した凸部125を備え、電極指112間の上方の部分より、電極指112の上方の部分のほうが膜厚が厚くなっている点で異なる。
【0030】
以下に、第2の誘電体膜105の膜厚を、電極指112間の上方の部分より、電極指112の上方の部分のほうを厚くする効果を説明する。
図12−14は、弾性波素子600において、電極指112のピッチを2nm、第1の誘電体膜104の主成分をSiO
2、圧電基板からの高さを0.31λ(λは励起波長)、第2の誘電体膜105の主成分をSiNとし、第2の誘電体膜105を、電極指112間の上方に被覆せず、電極指112の上方に被覆した場合の弾性波素子100のアドミタンス特性を示す図である。
図12−14に示すように第2の誘電体膜105を被覆しない場合(0λ)から、膜厚を厚くしていくにつれて、レイリー波の共振周波数、反共振周波数およびSH波のピークの周波数がともに低くなる。SH波のピークの周波数の低下量は、レイリー波の共振周波数および反共振周波数の低下量より大きく、膜厚が0.04λ以上であれば、SH波のピークの周波数が、レイリー波の反共振周波数より低くなる。これは、レイリー波およびSH波のいずれに対しても、第2の誘電体膜105を被覆することによる質量付加の効果が作用して、伝搬速度が低下し、とくにレイリー波より伝送路の表面側にエネルギーが集中するSH波に対しては、電極指112の上方表面に近接する第2の誘電体膜105によって、より大きく質量付加の効果が作用するためと考えられる。このように、第2の誘電体膜105の厚さを、電極指112間の上方の部分より、電極指112の上方の部分のほうを厚くすることで、レイリー波の共振周波数と反共振周波数との間から帯域内リプルとなるSH波のピークを低周波数側に外すことができ、フィルタの通過特性を改善できる。
【0031】
第2の誘電体膜105の、電極指112の上方の部分の厚さと電極指112間の上方の部分の厚さとの差は、0.1λを超えると、レイリー波のK
2値が小さくなる。そのため、厚さの差は、0.1λ以下とすることが望ましい。
【0032】
弾性波素子600においては、第2の誘電体膜105は、電極指112の上方の領域に、上方に突出した凸部121を備えることで膜厚に差を設けたが、下方に突出した凸部を備えてもよい。
図15の(a)および(b)に、このような弾性波素子700および800の拡大断面図を示す。弾性波素子700は、弾性波素子600において、凸部125を備えない代わりに、第1の誘電体膜104が、電極指112の上方の領域に凹部126を備え、第2の誘電体膜105が、凹部126に嵌合する下方に突出した凸部127を備えることで、第2の誘電体膜105の膜厚の差を設けたものである。また、弾性波素子800は、弾性波素子700において、弾性波素子600における凸部121を併せて備えることで膜厚の差を設けたものである。これらの弾性波素子600、700および800においては、第1の誘電体膜104の全面に第2の誘電体膜105を被覆している。これにより、第2の誘電体膜105の保護膜としての機能が十分に発揮され、品質を向上することができる。
【0033】
あるいは、第2の誘電体膜105を電極指112の上方の領域に被覆し、電極指112の上方の領域には被覆しなくてもよい。
図16の(a)および(b)に、このような弾性波素子900および1000の拡大断面図を示す。弾性波素子900は、弾性波素子600において、第2の誘電体膜105を電極指112の上方の領域に被覆したものである。弾性波素子1000は、弾性波素子600において、第1の誘電体膜104が、電極指112の領域に凹部128を備え、第2の誘電体膜105が、凹部128を被覆したものである。弾性波素子1000においては、第1の誘電体膜104の凹部128を除く表面より、第2の誘電体膜105の上端部が高くてもよく、低くてもよく、同一の高さであってもよい。
【0034】
図17は弾性波素子600、700および800の上面の一部を示す図であり、第2の誘電体膜105の弾性波素子上面における被覆パターンの3つの例を示している。
図17において、斜線で示した領域は、他の領域より第2の誘電体膜105の膜厚が厚い領域を示す。各弾性波素子は、
図17の(a)に示すように交差領域の電極指112の上方においてのみ第2の誘電体膜105の膜厚の厚い領域を設けてもよく、
図17の(b)に示すように、交差領域以外の領域にも延長して膜厚の厚い領域を設けてもよい。あるいは、
図17の(c)に示すように、交差領域の電極指112間の上方においてのみ第2の誘電体膜105の膜厚を薄くしてもよい。
図17の(a)および(c)に示すように、IDT電極102のバスバー111と他方のIDT電極102の電極指112の先端との間の領域を含む帯状のギャップ領域において、第1の誘電体膜104および第2の誘電体膜105の上面に凹凸を設けず平坦な上面を有するようにした場合、ギャップ領域における凹凸による伝搬速度の低下を防ぎ、交差領域への弾性波の閉じ込めが向上しフィルタの性能を改善できる。
【0035】
弾性波素子900および1000においては、
図17に示す各被覆パターンにおいて、斜線で示した領域に第2の誘電体膜105を被覆し、他の領域に被覆しないものとすればよい。また、
図17の(a)および(c)に示すように、ギャップ領域において、第1の誘電体膜104の上面を凹凸のない平坦な面にし、第2の誘電体膜105を被覆しないか、一様な膜厚で被覆することで、ギャップ領域における凹凸による伝搬速度の低下を防ぎ、交差領域への弾性波の閉じ込めが向上しフィルタの性能を改善できる。
【0036】
第2の誘電体膜105の被覆パターンは、上述の各例に限られず、電極指112間の上方の領域の膜厚より、電極指112の上方の少なくとも一部の領域の膜厚が厚ければよい。
【0037】
(第3の実施形態)
本実施形態は、第1の実施形態および第2の実施形態に係る各弾性波素子において、第1の誘電体膜の膜厚を連続的に変化させ、各誘電体膜の膜厚の急峻な変化を抑制したものである。
図18の(a)は、一例として、
図1に示した第1の実施形態に係る弾性波素子100において、誘電体膜104の凸部121の端部に、連続的に膜厚が変化するテーパー部1201を設けた弾性波素子100bの拡大断面図である。
図18の(b)は、他の例として、
図8に示した第1の実施形態に係る弾性波素子300において、第2の誘電体膜105の凸部121、122および第1の誘電体膜104の凹部124に、テーパー部1201を設けた弾性波素子300bの拡大断面図である。また、
図18の(c)は、さらに他の例として、
図9に示した第1の実施形態に係る弾性波素子500において、第2の誘電体膜105の端部にテーパー部1201を設けた弾性波素子500bの拡大断面図である。また、他の弾性波デバイスに同様にテーパー部1201を設けてもよい。これらのように、テーパー部1201によって誘電体膜の膜厚を連続的に変化させる場合、膜厚を急峻に変化させる場合に比べて、当該箇所を伝搬する弾性波の伝搬速度の急速な変化が抑制され、不要なスプリアス波の発生を低減することができる。また、電極指112と、第2の誘電体膜105の被覆パターンとの間の位置決めに誤差があっても、位置決め誤差による弾性波素子の周波数特性の変動が抑制され、品質のばらつきを低減することができる。
【0038】
第1−第3の実施形態に係る各弾性波素子において、IDT電極102が、ダミー電極指113をさらに備えてもよい。
図19は、このような弾性波素子1100を透過的に示す上面図である。ダミー電極指113は、バスバー111から、電極指112と交互に延伸し、他方のIDT電極102の電極指112の先端に近接する。第2の誘電体膜105の被覆パターンは、第1の実施形態または第2の実施形態と同様のパターンを用いればよい。
【0039】
(第4の実施形態)
本実施形態は、上述の各弾性波素子をラダー型フィルタ2000に適用したものである。
図20にラダー型フィルタ2000の構成を示す。ラダー型フィルタ2000は、入力端子2001および出力端子2002と、これらの間に直列に接続された直列共振器として、第1の実施形態に係る弾性波素子100と、弾性波素子100に一端が接続され、他端が接地される並列共振器として、第2の実施形態に係る弾性波素子600とを含む。
【0040】
一般に、ラダー型フィルタの通過帯域の高周波数側の通過帯域と減衰帯域との間の通過特性であるスロープ特性は、直列共振器の共振周波数の高周波数側のスロープ特性に依存する。また、ラダー型フィルタの通過帯域の低周波数側のスロープ特性は、並列共振器の共振周波数の低周波側のスロープ特性に依存する。ラダー型フィルタ2000においては、直列共振器として、SH波による不要な応答のピークを、高周波数側に移動させた弾性波素子100を用い、並列共振器として、SH波による不要な応答のピークを、低周波数側に移動させた弾性波素子600を用いる。これらの弾性波素子100および600においては、主要波であるレイリー波の共振周波数がラダー型フィルタ2000の通過帯域内にあり、SH波による不要な応答がラダー型フィルタ2000の減衰帯域と通過帯域との間のスロープ内にあるように設定される。これにより、ラダー型フィルタ2000のSH波による帯域内リプルを低減することができる。
【0041】
また、ラダー型フィルタ2000において、弾性波素子100、600以外の弾性波素子を用いてもよい。例えば、直列共振器として、第1の実施形態に係る弾性波素子200−500のいずれかを用い、並列共振器として弾性波素子700−1000のいずれかを用いてもよい。また、直列共振器および並列共振器の一方のみ本発明に係る弾性波素子を用いてもよい。
【0042】
また、他の適用例として、入力端子と出力端子間に、上述の各弾性波素子100−1000のいずれかを、直列共振器としてDMSフィルタ(二重モード弾性波フィルタ)に直列に接続して構成されるフィルタが挙げられる。弾性波素子においては、主要波であるレイリー波の共振周波数がフィルタの通過帯域内にあり、SH波による不要な応答がフィルタの減衰帯域と通過帯域との間のスロープ内にあるように設定される。これにより、フィルタの通過特性を弾性波素子を用いて調整しつつ、SH波による帯域内リプルを低減することができる。
【0043】
また、さらに他の適用例として、上述の各弾性波素子を用いたデュプレクサが挙げられる。デュプレクサは、通過帯域の異なる2つのフィルタを含む。2つのフィルタの各一端が第1の端子に接続され、各他端がそれぞれ第2の端子および第3の端子に接続される。通過帯域の低い方のフィルタとして上述の弾性波素子100−600のいずれかを用いた場合、SH波による不要な応答が、通過帯域の高い方のフィルタの減衰帯域と通過帯域との間のスロープ内にあるように設定することで、デュプレクサの分波性能を向上することができる。また、過帯域の高い方のフィルタとして上述の弾性波素子700−1000のいずれかを用いた場合、SH波による不要な応答が、通過帯域の低い方のフィルタの減衰帯域と通過帯域との間のスロープ内にあるように設定することで、デュプレクサの分波性能を向上することができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、フィルタ等に用いられる弾性波素子において有用である。
【符号の説明】
【0045】
100、100b、200、300、300b、400、500、500b、600、700、800、900、1000、1100、1500 弾性波素子
101、1501 圧電基板
102、1502 IDT電極
103、1503 反射器
104、1504 第1の誘電体膜
105 第2の誘電体膜
111、1511 バスバー
112、1512 電極指
113 ダミー電極指
121、123、125、127 凸部
122、124、126、128 凹部
1201 テーパー部
2000 ラダー型フィルタ
2001 入力端子
2002 出力端子