【文献】
Biotechnol. Bioeng. (2003) vol.81, no.6, p.726-731
【文献】
Enzyme Microb. Technol. (2006) vol.39, no.4, p.897-902
【文献】
Appl. Environ. Microbiol. (1996) vol.62, no.10, p.3840-3846
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項6、7、8のいずれかの請求項の方法であって、当該少なくとも1個のキシラナーゼは配列番号1または配列番号2から選ばれたアミノ酸配列と少なくとも90%同一であるアミノ酸配列を有するものである方法。
請求項6から10のいずれかの請求項の方法であって、当該第1の酵素組成物、当該第2の酵素組成物及び当該第3の酵素組成物が単一の組成物酵素ブレンド中に含まれている方法。
【発明の概要】
【0006】
本開示は最適化された生物変換を行う酵素ブレンド、これを製造する方法、及びバイオマスを糖へ変換するための最適化された生物変換酵素ブレンドの使用法を提供する。生物変換酵素ブレンドは全セルラーゼと1以上のヘミセルラーゼの混合物からなり、その選択は予定するバイオマスと処理条件により決定される。
【0007】
一面では、以下を含む
セルロースを含む物質とヘミセルロースを含む物質の混合物を加水分解する酵素ブレンド組成物が提供される。
(a) セルラーゼを含む第1の酵素組成物
(b) GH10又はGH11キシラナーゼから選ばれた少なくとも1個のキシラナーゼを含む第2の酵素組成物、及び
(c) GH10でもGH11キシラナーゼでもない、または(b)と同一のGH10でもGH11キシラナーゼでもない少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼを含む第3の酵素組成物
ここで、この酵素ブレンド組成物は、当該少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼを欠く相当する酵素ブレンドと比較して(i)グルカンの変換の向上、または(ii)キシランの変換
の向上のうち少なくとも1つを行う。
【0008】
いくつかの実施態様では、第1の酵素組成物はある糸状菌由来の全セルラーゼのブレンドである。いくつかの実施態様では、第1の酵素組成物は、追加のβ-グルコシダーゼが追加された糸状菌由来の全セルラーゼのブレンドである。
【0009】
いくつかの実施態様では、第2の酵素組成物はトリコデルマ・レセイ(Trichoderma reesei)由来のキシラナーゼXYN2を含む。いくつかの実施態様では、第2の酵素組成物はトリコデルマ・レセイ由来のキシラナーゼXYN3を含む。
【0010】
いくつかの実施態様では、当該少なくとも1個のキシラナーゼは配列番号1または配列番号2から選ばれたアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施態様では、当該少なくとも1個のキシラナーゼは、配列番号1または2から選ばれたアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、さらに少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。ある実施地様では、少なくとも1個のキシラナーゼは、配列番号1または配列番号2から選ばれたアミノ酸配列を有する。
【0011】
いくつかの実施態様では、少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼはGH54ヘミセルラーゼ、GH62 ヘミセルラーゼ、GH27ヘミセルラーゼ、GH36ヘミセルラーゼ、GH5ヘミセルラーゼ、GH74ヘミセルラーゼ、GH67ヘミセルラーゼ、GH28ヘミセルラーゼ、GH11ヘミセルラーゼ、GH10ヘミセルラーゼ、GH3へミセルラーゼ、及びCE5ヘミセルラーゼからなる群から選ばれる。
【0012】
いくつかの実施態様では、当該少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼはβ-キシロシダーゼか、またはアラビノフラノシダーゼである。ある実施態様では、β-キシロシダーゼはトリコデルマ・レセイ由来のBXL1であり、アラビノフラノシダーゼは、トリコデルマ・レセイ由来のABF1、ABF2、またはABF3である。いくつかの実施態様では、この少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼはβ-キシロシダーゼとアラビノフラノシダーゼの組み合わせである。
【0013】
いくつかの実施態様では、第1の酵素組成物は、β-グルコシダーゼを追加したある糸状菌由来の全セルラーゼブレンドであり、第2の酵素組成物は、キシラナーゼを含み、当該少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼは、β-キシロシダーゼとアラビノフラノシダーゼの組み合わせである。
【0014】
いくつかの実施態様では、この少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼは、α-アラビノフラノシダーゼI(ABF1)、α-アラビノフラノシダーゼII(ABF2)、α-アラビノフラノシダーゼIII(ABF3)、α-ガラクトシダーゼI (AGL1)、α-ガラクトシダーゼII (AGL2)、α-ガラクトシダーゼIII (AGL3)、アセチルキシランエステラーゼI(AXE1)、アセチルキシランエステラーゼIII(AXE3)、エンドグルカナーゼVI(EG6)、エンドグルカナーゼVIII(EG8)、α-グルクロニダーゼI(GLR1)、β-マンナナーゼ(MAN1)、ポリガラクツロナーゼ(PEC2)、キシラナーゼI(XYN1)、キシラナーゼII(XYN2)、キシラナーゼIII(XYN3)及びβ-キシロシダーゼ(BXL1)からなる群から選択されるトリコデルマ・レセイヘミセルラーゼである。
【0015】
いくつかの実施態様では、この少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼは配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16及び配列番号17からなる群から選択される1つのアミノ酸配列と少なくとも80%同一のアミノ酸配列をもつ。いくつかの実施態様では、この少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼは、先に述べたアミノ酸配列の1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、またさらに少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。ある実施態様では、この少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼは先に述べたアミノ酸配列の一つに相当するアミノ酸配列をもつ。
【0016】
別の実施態様では、
セルロースを含む物質とヘミセルロースを含む物質の混合物を
(a) セルラーゼを含む第1の酵素組成物
(b) GH10またはGH11キシラナーゼから選ばれる少なくとも1個のキシラナーゼを含む第2の酵素組成物、及び
(c) GH10でもGH11キシラナーゼでもなく、または(b)のGH10またはGH11キシラナーゼと同一ではない少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼを含む第3の酵素組成物
と接触させ、それにより
セルロースを含む物質とヘミセルロースを含む物質の混合物を加水分解することを含み、この接触の結果、この少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼを欠いた条件での相当する接触と比較して、(i)グルカンの変換の増大または(ii)キシランの変換の増大、のうち少なくとも一つを成し遂げる、
セルロースを含む物質とヘミセルロースを含む物質の混合物を加水分解する方法が提供される。
【0017】
いくつかの実施態様では、第1の酵素組成物は糸状菌由来の全セルラーゼのブレンドである。いくつかの実施態様では、この第1の酵素組成物は追加のβ-グルコシダーゼが添加された糸状菌由来の全セルラーゼのブレンドである。
【0018】
いくつかの実施態様では、第2の酵素組成物はトリコデルマ・レセイ由来のキシラナーゼXYN2を含む。いくつかの実施態様では、この第2の酵素組成物はトリコデルマ・レセイ由来のキシラナーゼXYN3を含む。
【0019】
いくつかの実施態様では、この少なくとも1個のキシラナーゼは、配列番号1または配列番号2から選ばれるアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施態様では、この少なくとも1個のキシラナーゼは、配列番号1または配列番号2から選ばれるアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%またはさらに少なくとも99%同一のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。ある実施態様では、少なくとも1個のキシラナーゼは配列番号1または配列番号2から選ばれたアミノ酸配列を有する。
【0020】
いくつかの実施態様では、この少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼはGH54ヘミセルラーゼ、GH62ヘミセルラーゼ、GH27ヘミセルラーゼ、GH36ヘミセルラーゼ、GH5ヘミセルラーゼ、GH74ヘミセルラーゼ、GH67ヘミセルラーゼ、GH28ヘミセルラーゼ、GH11ヘミセルラーゼ、GH10ヘミセルラーゼ、GH3ヘミセルラーゼ及びCE5ヘミセルラーゼからなる群から選択される。
【0021】
いくつかの実施態様では、この少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼはβ-キシロシダーゼまたはアラビノフラノシダーゼである。ある実施態様では、このβ-キシロシダーゼはトリコデルマ・レセイ由来のBXL1であり、アラビノフラノシダーゼは、トリコデルマ・レセイ由来のABF1、ABF2またはABF3である。いくつかの実施態様では、この少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼは、β-キシロシダーゼとアラビノフラノシダーゼの組み合わせである。
【0022】
いくつかの実施態様では、この第1の酵素組成物は、追加のβ-グルコシダーゼが添加された糸状菌由来の全セルラーゼのブレンドであり、第2の酵素組成物はキシラナーゼを含み、この少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼは、β-キシロシダーゼとアラビノフラノシダーゼの組み合わせである。
【0023】
いくつかの実施態様では、この少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼはα-アラビノフラノシダーゼI(ABF1)、α-アラビノフラノシダーゼII(ABF2)、α-アラビノフラノシダーゼIII(ABF3)、α-ガラクトシダーゼI(AGL1)、α-ガラクトシダーゼII(AGL2)、α-ガラクトシダーゼIII(AGL3)、アセチルキシランエステラーゼI(AXE1)、アセチルキシランエステラーゼIII(AXE3)、エンドグルカナーゼVI(EG6)、エンドグルカナーゼVIII(EG8)、α-グルクロニダーゼI(GLR 1)、β-マンナナーゼ(MAN1)、ポリガラクツロナーゼ(PEC2)、キシラナーゼ(XYN1)、キシラナーゼII(XYN2)、キシラナーゼIII(XYN3)及びβ-キシロシダーゼ(BXL1)からなる群から選択されるトリコデルマ・レセイヘミセルラーゼである。
【0024】
いくつかの実施態様では、この少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼは配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、及び配列番号17からなる群から選択される1のアミノ酸配列と少なくとも80%同一であるアミノ酸配列をもつ。いくつかの実施態様では、この少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼは、先に述べたアミノ酸配列の1つと少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、またはさらに少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列をもつ。ある実施態様では、この少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼは、先に述べたアミノ酸配列の一つに相当するアミノ酸配列を有する。
【0025】
いくつかの実施態様では、
セルロースを含む物質とヘミセルロースを含む物質の混合物と、第1の酵素組成物、第2の酵素組成物及び第3の酵素組成物の接触を同時に行う。
【0026】
いくつかの実施態様では、第1の酵素組成物、第2の酵素組成物及び第3の酵素組成物が単一の組成物酵素ブレンドに加えられる。
【0027】
本組成物と方法のこれまでの面及び他の面及び実施態様は以下の説明から明らかになろう。
詳細な説明
1.定義
【0028】
本明細書で別に記載がない場合、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本技術分野の通常の技術者が普通に理解するものと同一の意味をもつ。本明細書の項目名は、1つの項目名の元で記載された発明の種々の面又は実施態様を限定するものではなく、明細書全体の組成物と方法に当てはまるものである。先の一般的説明と以下の詳細な説明の両者は例示であり、説明であり、本明細書で述べられる組成物と方法を限定するものではない。特に別に記載があるのではない場合には、単数の表記は複数を含み、別に記載されている場合を除き、「または」とは、「及び/または」を意味する。「含む」、「含んでいる」は、限定することを意図していない。本明細書に引用された全ての特許と刊行物は、その特許と刊行物に開示されたアミノ酸とヌクレオチド配列を含めて、引用により明示的に組み入れられる。意味を明確にするため以下の用語を定義する。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「セルロース」は、一般的な化学式(C
6H
10O
5)nをもつβ(1→4)結合したD-グルコース単位からなる多糖をいう。セルロースは緑色植物、多くの形態の藻類及び卵菌類の一次細胞壁の構成成分である。
【0030】
本明細書で使用する場合、用語「セルラーゼ」はセルロースポリマーを短いオリゴマー及び/またはグルコースに加水分解できる酵素をいう。
【0031】
本明細書で使用する場合、用語「全セルラーゼ組成物/調製物/混合物」等は、ある生物、例えばある糸状菌類により産生される複数のセルラーゼを含む天然及び非天然成分の両方を言う。全セルラーゼ組成物の一例は糸状菌が培養される培地である。これは分泌されたセルラーゼ、例えば1以上のセロビオヒドロラーゼ、1以上のエンドグルカナーゼ、及び1以上のβ-グルコシダーゼ、を予定された割合で含んでいる。
【0032】
本明細書で使用する場合、「ヘミセルロース」は、グルコースのみを含むセルロースと異なり、グルコース以外の糖のモノマーを含む植物性物質のポリマー性成分である。グルコースに加え、ヘミセルロースは、キシロース、マンノース、ガラクトース、ラムノース及びアラビノースを含むことができ、キシロースが最も一般的な糖モノマーである。ヘミセルラーゼは、殆どのD-ペントース糖を含み、ある場合は少量のL-糖を含む。ヘミセルラーゼの糖はグルコシド結合とともにエステル結合により結合されても良い。ヘミセルラーゼの例にはガラクタン、マンナン、キシラン、アラバナン、アラビノキシラン、グルコマンナン、ガラクトマンナン等を含むがこれらに限定されない。
【0033】
本明細書で使用する場合、用語「ヘミセルラーゼ」はヘミセルロースをその成分の糖又はより短いポリマーに分解できるあるクラスの酵素をいい、エンド-活性加水分解酵素、エキソ-活性加水分解酵素、及び種々のエステラーゼを含む。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「キシラナーゼ」は、微生物、例えば、菌類、細菌由来、または植物又は動物由来のタンパク質またはタンパク質のポリペプチドドメイン又はポリペプチドをいい、分岐したキシランとキシロオリゴ糖を含む、キシランの炭水化物骨格の種々の位置の一以上でキシランの開裂を触媒できるものである。キシラナーゼはヘミセルラーゼの一種であることに留意されたい。
【0035】
本明細書で使用する場合、「バイオマス基質」はセルロースとヘミセルロース両方を含有する物質である。
【0036】
本明細書で使用する場合、「天然の」組成物は、天然に産生される組成物または天然に生じる生物により産生される組成物である。
【0037】
本明細書で使用する場合、「変異」タンパク質は、それから少数のアミノ酸残基、例えば、1,2,3,4,5,6,7,8,9,10,11,12,13,14,15,16,17,18,19,20またはそれ以上のアミノ酸残基の、置換、欠失、または付加により変異タンパク質が生じた元の「親」タンパク質と異なる。いくつかの場合、親タンパク質は「野生型」、「自然の」、または「自然に生じる」ポリペプチドである。変異タンパク質は親タンパク質とあるパーセンテージの配列同一性、例えば、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも、92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも、95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、さらに少なくとも99%
の同一性をもつものとして記述できる。ここで同一性は本技術分野で知られているいずれかの適したソフトウェアプログラム、例えば、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY(F.M. Ausubelら(編)1987、補遺30、7.7.18部)に記載されているものを用いて決定できる。
【0038】
好ましいプログラムにはVector NTI Advance(商標)9.0(Invitrogen Corp. Carlsbad, CA)、GCGPileup program, FASTA(Pearsonら(1988) Proc. Natl, Acad. Sci USA 85:2444-2448) 及びBLAST(BLAST Manual, Altschulら、Natl Cent. Biotechnol. Inf., Natl Lib. Med.(NCIB NLM NIH), Bethesda, Md., 及びAltschulら(1997) NAR 25:3389-3402)が含まれる。別の好ましい位置合わせプログラムはALIGN Plus(Scientific and Educational Software, PA)であり、初期値を使用するのが好ましい。使用される別の配列ソフトウェアプログラムは、Sequence Software Package Version 6.0(Genetics Computer Group, University of Wisconsin, Madison, WI)にあるTFASTA Data Searching Programである。
II.生物変換酵素ブレンド組成物とその使用法
【0039】
セルロースは無水セロビオースのホモポリマーであり、そのため直鎖β-(1-4)-D-グルカンである。一方、ヘミセルロースは、複雑な分岐構造中に種々の成分を含んでおり、例えばキシラン、キシログルカン、アラビノキシラン、及びマンナンを含み、ある範囲の置換基を有している。ヘミセルロースの複雑な分岐と不均一な組成、特にアラビノキシラン類により、植物性物質の酵素的分解は、一組の分岐の切断とポリマーの分解活性の作用の両方を必要とする。加えて、植物性物質の分解はキシロースとアラビノースのような5炭糖(ペントース)と、マンノースとグルコースのような6炭糖(ヘキソース)の両方を含むヘミセルロースに作用する酵素を必要とする。
【0040】
ヘミセルロースをそのモノマーへ酵素的に加水分解するためには異なる機能をもついくつかのヘミセルラーゼ酵素を使用することが必要である。ヘミセルラーゼは3つの一般的分類に分けられる。多糖の内側の内部結合を攻撃するエンド活性酵素、多糖鎖の還元性末端又は非還元性末端のいずれかから連続的に作用するエキソ-活性酵素、及びアクセサリー酵素(accessory enzyme)、アセチルエステラーゼとリグニングリコシド結合を加水分解するエステラーゼ、例えば、クマル酸エステラーゼとフェルラ酸エステラーゼである。
【0041】
ある菌類はエキソ-セロビオヒドロラーゼ(または、CBH-型セルラーゼ)、エンドグルカナーゼ(またはEG-型セルラーゼ)及びβ-グルコシダーゼ(またはBG-型セルラーゼ)を含む完全なセルラーゼ系を産生するが、既知のセルラーゼ酵素とその混合物は、通常、ヘミセルロースに対して限定された活性、植物性物質の加水分解に限られた価値しかもたない。本生物変換酵素ブレンド組成物と方法は、一部、セルラーゼとヘミセルラーゼのある組み合わせが、植物性物質の加水分解の効率(グルカンとキシランの変換をモニターすることにより決定される)を大きく高めるという観察に基づいている。
【0042】
グルカン及び/又はキシランの加水分解を高めるセルラーゼ/ヘミセルラーゼ組成物を調製するために使用されるセルラーゼ組成物の例は、糸状菌(つまり、トリコデルマ・レセイ)により産生される全セルラーゼ組成物である。この組成物は、いくつかのエキソ-セロビオヒドロラーゼとエンドグルカナーゼを含み、グルコースの遊離を増やすため追加のβ-グルコシダーゼが添加されている。この組成物はACCELLERASE1000(商標)(Danisco A/S, Genencor Division, Palo Alto, CA)として市販されている。ACCELLERASE1000(商標)はエキソ-セロビオヒドロラーゼ(つまり、約50%(wt/wt)のCBHI(CEL7A)と約14%のCBHII(CEL6A))、エンドグルカナーゼ(つまり、約12%のEGI(CEL7B)と約10%のEGII(CEL5A))及びβ-グルコシダーゼ(つまり、約5%のBGLl(CEL3A))を含む。少量のXYN2(つまり、約1%未満)も含まれている。特定されていない他の成分も約1%未満で含まれている。
【0043】
他の全セルラーゼ混合物と複数の各々単離されたセルラーゼから組み合わされたセルラーゼの混合物を含む、他のセルラーゼ組成物も使用できる。好ましいセルラーゼ組成物はエキソ-セロビオヒドロラーゼ、エンドグルカナーゼ、及びβ-グルコシダーゼの少なくとも1個を含む。いくつかの実施態様では、複数のセルラーゼを含む全液体培地が、アクレモニウム属、アスペルギルス属、エメリセラ属、フサリウム属、フミコラ属、ムコル属、マイセリオフトラ(Myceliophthora)属、ニューロスポラ属、シタリジウム(Scytalidium)属、シエラビア(Thielavia)属、トリポクラディウム(Tolypocladium)属、ペニシリウム属またはトリコデルマ属の種または、これらから生じた種のような生物から調製される。
【0044】
この組成物は、さらに少なくとも1個の、いくつの場合には、2個、3個またはそれより多いヘミセルラーゼを含む。適した追加のヘミセルラーゼの例は、キシラナーゼ、アラビノフラノシダーゼ、アセチルキシランエステラーゼ、グルクロニダーゼ、エンド-ガラクタナーゼ、マンナナーゼ、エンド又はエキソ-アラビナーゼ、エキソ-ガラクタナーゼ、及びそれらの混合物を含む。適した追加のヘミセルラーゼの例は、エンド-アラビナナーゼ、エンド-アラビノガラクタナーゼ、エンドグルカナーゼ、エンド-マンナナーゼ、エンド-キシラナーゼ、及びフェラキサンエンドキシラナーゼを含む。適したエキソ-活性のヘミセルラーゼの例は、α-L-アラビノシダーゼ、β-L-アラビノシダーゼ、α-1,2-L-フルコシダーゼ、α-D-ガラクトシダーゼ、β-D-ガラクトシダーゼ、β-D-グルコシダーゼ、β-D-グルクロニダーゼ、β-D-マンノシダーゼ、β-D-キシロシダーゼ、エキソ-グルコシダーゼ、エキソ-セロビオヒドロラーゼ、エキソ-マンノビオヒドロラーゼ、エキソ-マンナナーゼ、エキソ-キシラナーゼ、キシランα-グルクロニダーゼ、及び針葉樹β-グルコシダーゼを含む。適したエステラーゼの例はアセチルエステラーゼ(アセチルキシランエステラーゼ、アセチルガラクタンエステラーゼ、アセチルマンナンエステラーゼ、及びアセチルキシランエステラーゼ)とアリールエステラーゼ(クマリン酸エステラーゼとフェルラ酸エステラーゼ)を含む。
【0045】
好ましくは、本組成物と方法は、少なくとも1個のキシラナーゼを含み、これはヘミセルロースのキシラン主鎖を開裂する特定の種類のヘミセルラーゼである。好ましくは、キシラナーゼはエンド-1,4-β-キシラナーゼ(E.C.3.2.1.8)である。菌類と細菌由来の多くのキシラナーゼが同定され、特徴付けられた(例えば、米国特許第5,437,992号;Coughlin, M.P. 上記;Biely, P.ら(1993)、Proceedings of the second TRICEL symposium on Trichoderma reesei Cellulases and Other Hydrolases, Espoo 1993、Souminen,P及びReinikainen, T.(編)のFoundation for Biotechnical and Industrial Fermentation Research 8:125-135参照)。3個の特定のキシラナーゼ(XYN1、XYN2、及びXYN3)がT・レセイで同定された(Tenkanenら(1992) Enzyme Microb. Technol. 14:566;Torronenら(1992) Bio/Technology 10:1461;及びXuら(1998) Appl. Microbiol. Biotechnol.49:718)。T・レセイから単離された4番目のキシラナーゼ(XYN4)は、Saloheimoらのトリコデルマ・レセイ由来のキシラナーゼ、その産生法及びこの酵素の使用法という名称の米国特許6,555,335号と6,768,001号(引用により全部を本明細書に組み入れる)に記載されている。
【0046】
本組成物と方法で使用されるキシラナーゼの例は、XYN2とXYN3である。XYN2とXYN3の適した変異種と、他の生物由来の適した関連する酵素は、XYN2またはXYN3(つまり、各々、配列番号1と2)と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%またさらに少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有している。
【0047】
セルラーゼ組成物とキシラナーゼに加えて、本組成物と方法は、エンド型活性のヘミセルラーゼ、エキソ型活性のヘミセルラーゼ、及び/またはエステラーゼのような1以上の追加のヘミセルラーゼを含んでも良い。
【0048】
適したエンド型-活性ヘミセルラーゼはマンナンエンド型1,4-β-マンノシダーゼ(E.C.3.2.1.78、β-マンナーゼとβ-マンナナーゼとしても知られている)、(マンナン、ガラクトマンナン、グルコマンナンの1,4-β-D-マンノース結合の無作為なエンド型加水分解を触媒する)、α-アミラーゼ(E.C.3.2.1.1)(3個以上の1,4-α-結合D-グルコース単位を含む多糖の1,4-α-D-グルコシド結合のエンド型加水分解を触媒する)、キシランα-1,2-グルクロノシダーゼ(E.C.3.2.1.131、α-グルクロノシダーゼとしても知られている)(硬材木キシランの主鎖のD-1,2-(4-O-メチル)グルクロノシル結合の加水分解を触媒する)及びエンドグルカナーゼ(E.C.3.2.1.4)(セルラーゼ、リケニン、及び穀物β-D-グルカンの1,4-β-グルコシド結合のエンド型加水分解を触媒する)を含むが、これらに限定されない。エンドグルカナーゼの多数のサブタイプが同定され、本組成物と方法での使用に適している。例えば、エンドグルカナーゼI、エンドグルカナーゼII、エンドグルカナーゼIII、エンドグルカナーゼV、及びエンドグルカナーゼVIである。
【0049】
適したエキソ型-活性ヘミセルラーゼは、α-アラビノフラノシダーゼ、α-ガラクトシダーゼとβ-キシロシダーゼを含むが、これらに限定されない。α-アラビノフラノシダーゼは、また、N-アラビノフラノシダーゼ(E.C.3.2.1.55)としても知られ、α-L-アラビノシドの末端非還元α-L-アラビノフラノシド残基の加水分解を触媒する。少なくとも3個の既知のαアラビノフラノシダーゼのサブタイプ(つまり、abf1、abf2及びabf3)が使用できる。α-ガラクトシダーゼ(E.C.3.2.1.22)は、ガラクトースオリゴ多糖とガラクトマンナンを含むα-D-ガラクトシドの末端非還元α-D-ガラクトース残基の加水分解を触媒する。これら3個の既知のサブタイプ、つまりα-ガラクトシダーゼI(agl1)、α-ガラクトシダーゼII(agl2)及びα-ガラクトシダーゼIII(agl3)のうちのいずれも使用できる。グルコアミラーゼは、またグルカン1,4-α-グルコシダーゼ(E.C.3.2.1.3)としても知られており、分子鎖の非還元性末端から連続的に1,4-結合α-D-グルコース残基の加水分解を触媒し、β-D-グルコースを遊離する。β-グルコシダーゼ(E.C.3.2.1.21)は、末端非還元性β-D-グルコース残基の加水分解を触媒しβ-D-グルコースを遊離する。β-キシロシダーゼは、キシラン1,4-β-キシロシダーゼ(E.C.3.2.1.37)としても知られ、1,4-β-D-キシランの加水分解を触媒し非還元末端からD-キシロース残基を連続的に除く。全セルラーゼ混合物を含む組成物は、キシラナーゼ及びα-アラビノフラノシダーゼ又はβ-キシロシダーゼのいずれかと組み合わされて、グルカン及び/又はキシラン変換で特に効果がある。
【0050】
適したエステラーゼは、フェルラ酸エステラーゼとアセチルキシランエステラーゼを含むがこれらに限定されない。フェルラ酸エステラーゼは、フェルレートエステラーゼ(E.C.3.1.1.73)としても知られているが、エステル化された糖(「天然の」基質では普通アラビノースである)からの4-ヒドロキシ-3-メトキシシンナモイル(フェルロイル)基の加水分解を触媒する。既知の微生物フェルラ酸エステラーゼは培地に分泌される。フェルラ酸エステラーゼ3個の既知のサブタイプ(fae1、fae2とfae3)のいずれでも本組成物と方法に使用できる。アセチルキシランエステラーゼI(E.C.3.1.1.72)はキシランとキシロ-オリゴ糖の脱アセチル化を触媒し、本組成物と方法で使用することができる。De Graaffらの米国特許第5,426,043号と第5,681,732号は菌類からのアセチルキシランエステラーゼのクローニングと発現を記載している。EP507369はAspergillus nigerから単離されたアセチルキシランエステラーゼをコードするDNA配列を開示している。アセチルエステラーゼ活性のある酵素という名称のChristgauらの米国特許第5,830,734号は食品産業で使用される種々のエステラーゼの単離について記載している。
【0051】
いくつかの実施態様では、少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼは、GH54へミセルラーゼ、GH62ヘミセルラーゼ、GH27ヘミセルラーゼ、GH36ヘミセルラーゼ、GH5ヘミセルラーゼ、GH74ヘミセルラーゼ、GH67ヘミセルラーゼ、GH28ヘミセルラーゼ、GH11ヘミセルラーゼ、GH10ヘミセルラーゼ、GH3ヘミセルラーゼ及びCE5ヘミセルラーゼからなる群から選択される。いくつかの実施態様では、少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼはα-アラビノフラノシダーゼ1(ABF1)、α-アラビノフラノシダーゼII(ABF2)、α-アラビノフラノシダーゼIII(ABF3)、α-ガラクトシダーゼI(AGL1)、α-ガラクトシダーゼII(AGL2)、α-ガラクトシダーゼIII(AGL3)、アセチルキシランエステラーゼI(AXE1)、アセチルキシランエステラーゼIII(AXE3)、エンドグルカナーゼVI(EG6)、エンドグルカナーゼVIII(EG8)、α-グルクロニダーゼI(GLR-1)、β-マンナナーゼ(MAN1)、ポリガラクツロナーゼ(PEC2)、キシラナーゼI(XYN1)、キシラナーゼII(XYN2)、キシラナーゼIII(XYN3)及びβ-キシロシダーゼ(BXL-1)からなる群から選択され、糸状菌、例えばT・レセイ由来であっても良い。いくつかの実施態様では、少なくとも1個の追加のヘミセルラーゼは配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、配列番号11、配列番号12、配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17からなる群から選択されたアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%
、少なくとも98%またはさらに少なくとも99%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列をもつ。
【0052】
ヘミセルラーゼ(キシラナーゼを含む)の変異種は、機能に実質的に影響しない、またはこの酵素に有利な特徴を加える置換、挿入または欠失を含んでも良い。いくつかの実施態様では、この置換、挿入または欠失は保存された配列では行われず、保存された配列の外のアミノ酸配列に限られる。置換の例には保存的置換があり、これは、親アミノ酸配列と電荷、疎水性、または側鎖の大きさを保存する。保存的置換の例は以下の表に与えられている。
【表1】
【0053】
天然のアミノ酸をポリペプチドをコードする核酸のコーディング配列を変えることによりポリペプチドへ導入できることは明らかであるが、非天然のアミノ酸は、通常、発現されたポリペプチドを化学的に修飾することにより生成される。
【0054】
さらに、例えば、ラッカーゼ(芳香族化合物の酸化を触媒し、その結果、酸素が還元されて水を生成する)(E.C.1.10.3.2)のような、アクセサリー酵素は、本組成物の方法の生物変換酵素ブレンドと方法に含ませることもできる。
【0055】
いくつかの実施態様では、本生物変換酵素ブレンドで使用される酵素は、糸状菌の一以上の株から調製できる。適した糸状菌は以下の属を含むがこれらに限定されない真菌類(Eumycota)及び卵菌類(Oomycota)亜門の属を含む。即ち、アスペルギルス属、アクレモニウム属、アウレバシディウム(Aurebasidium)属、べアウベリア(Beauveria)属、セファロスポリウム属、セリポリオプシス(Ceriporiopsis)属、ケトミウム(Chaetomium)属、クリソスポリウム(Chrysosporium)属、クラビセプス(Claviceps)属、コチオボルス(Cochiobolus)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、シアサス属(Cyathus)、エンドシア属(Endothia)、エンドシア・ムコル属(Endothia mucor)、フサリウム属、ジロクラディウム(Gilocladium)属、フミコラ属、マグナポルテ(Magnaporthe)属、マイセリオフソラ(Myceliophthora)属、ミロセシウム(Myrothecium)属、ムコル属、ニューロスポラ属、ファネロカエテ(Phanerochaete)属、ポドスポラ(Podospora)属、ペシロマイセス(Paecilomyces)属、ピリキュラリア(Pyricularia)属、リゾムコル属、リゾプス属、シゾフィルム(Schizophylum)属、スタゴノスポラ(Stagonospora)属、タラロマイセス属、トリコデルマ属、テルモマイセス属、テルモアスクス(Thermoascus)属、シエラビア(Thielavia)属、トリポクラディウム(Tolypocladium)属、トリコフィトン(Trichophyton)属及びトラメテス(Trametes)属。いくつかの実施態様では、糸状菌は、以下を含むがこれらに限定される訳ではない。A・ニジュランス(A・nidulans)、A・ニゲル、A・アワモリ、A・アクレアツス、A・カワチ、例えばNRRL 3112、ATCC22342(NRRL3112)、ATCC 44733、ATCC 14331、及びUVK143f株、A・オリゼ、例えば、ATCC 11490、N. クラッサ、トリコデルマ・レセイ、例えば、NRRL 15709、ATCC13631、56764、56765、56466、56767及びトリコデルマ・ヴィルデ、例えばATCC32098と32086。特に好ましい実施態様では、糸状菌はトリコデルマ属の種である。本発明に用いられる特に好ましい種と株は、T・レセイRL-P37である。
【0056】
ある実施態様では、単一の遺伝子操作を受けた株は、望む割合で構成成分の酵素を過剰発現するので、追加の精製または添加が必要ない。他の実施態様では、生物変換酵素ブレンドは、糸状菌の2以上の天然の、又は遺伝子操作を受けた株から得られる。構成成分である酵素の望ましい割合は最終ブレンド中の相対的な酵素量を変えることにより達成できる。2以上の産生株が使用される場合でも、構成成分酵素の望ましい割合は精製された又は部分的に精製された酵素を補うことにより達成できる。
【0057】
ある実施態様では、ヘミセルラーゼはアスペルギルス・アクレアツス(Aspergillus aculeatus)、アスペルギルス・アワモリ(Aspergillus awamori)、アスペルギルス・フェティダス(Aspergillus foetidus)、アスペルギルス・ジャポニクス(Aspergillus japonicus)、アスペルギルス・ニジュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニゲル(Aspergillus niger)またはアスペルギルス・オリゼ(Aspergillus oryzae)から産生される。別の面では、全発酵液体培地はフサリウム・バクトリディオイデス(Fusarium bactridioides)、フサリウム・セレアリス(Fusarium cerealis)、フサリウム・クルックヴェレンス(Fusarium crookwellense)、フサリウム・クルモラム(Fusarium culmorum)、フサリウム・グラミネアルム(Fusarium graminearum)、フサリウム・グラミナム(Fusarium graminum)、フサリウム・ヘテロスポルム(Fusarium heterosporum)、フサリウム・ネグンジ(Fusarium negundi)、フサリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)、フサリウム・レティキュラツム(Fusarium reticulatum)、フサリウム・ロゼウム(Fusarium roseum)、フサリウム・サンブシナム(Fusarium sambucinum)、フサリウム・サルコクロウム(Fusarium sarcochroum)、フサリウム・スポロトリチオイデス(Fusarium sporotrichioides)、フサリウム・サルフレウム(Fusarium sulphureum)、フサリウム・トルロスム(Fusarium torulosum)、フサリウム・トリコセシオイデス(Fusarium trichothecioides)、フサリウム・ベネナツム(Fusarium venenatum)またはフサリウム・ベルティシロイデス(Fusarium verticilloides)から調製される。別の面では、ヘミセルラーゼの複合体は、フミコラ・インソレンス(Humicola insolens)、フミコラ・ラヌギノサ(Humicola lanuginosa)、ムコル・ミヘイ(Mucor miehei)、マイセリオフトラ・テルモフィラ(Myceliophthora thermophila)、ニューロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)、シタリディウム・テルモフィラム(Scytalidium thermophilum)またはシエラビア・テレストリス(Thielavia terrestris)から調製される。他の実施態様では、ヘミセルラーゼはトリコデルマ・ハルジアヌム(Trichoderma harzianum)、トリコデルマ・コニンギ(Trichoderma koningii)、トリコデルマ・ロンギブラキアツム(Trichoderma longibrachiatum)、トリコデルマ・レセイ、例えば、RL-P37[Sheir-Neissら(1984) Appl. Microbiol.Biotechnology 20:46-53;米国特許第 4,797,361号;米国農務省北部研究所(Northern Regional Research Laboratory)サンプル、ペオリア、イリノイ州.,米国(NRRL 15709) の永久保存サンプルから生物学的に純粋な培養物として入手できる;ATCC 13631, 56764, 56466, 56767]、またはトリコデルマ・ヴィリデ(Trichoderma viride)、例えば、ATCC 32098及び32086、から調製される。
【0058】
いくつかの実施態様では、成分であるヘミセルラーゼ酵素は、ヘミセルラーゼ酵素をコードする遺伝子を発現することにより産生される。例えば、キシラナーゼはバシラス属またはアクチノマイセート(Actinomycetes)属のような、グラム陽性菌、又は、トリコデルマ属、アスペルギルス属、サッカロマイセス属またはピキア属のような真核生物、の細胞外に分泌されうる。いくつかの実施態様では、1以上のヘミセルラーゼ酵素が、元来の水準と比較して組換え生物中で過剰発現されえることが理解されるべきである。宿主細胞は、その細胞に固有である1以上のタンパク質の発現を減少させるために遺伝学的に修飾されても良い。一実施態様では、この細胞は、欠失または不活性化された、一以上の固有の遺伝子、特に分泌されるタンパク質をコードする遺伝子を含んでもよい。例えば、一以上のプロテアーゼをコーディングする遺伝子(例.アスパルチルプロテアーゼ-コーディング遺伝子;Berkaら(1990) Gene 86:153-162、及び米国特許第6,509,171号参照)または、セルラーゼコーディング遺伝子が欠失または不活性化されてもよい。ヘミセルラーゼをコードする核酸は生物のゲノムまたはその生物内で複製するプラスミドに含まれても良い。ヘミセルラーゼがゲノムから発現される場合、その遺伝子とそれと組み合わされた調整配列は、無作為に、又は相同的な組み入れにより遺伝子に導入できる。ある場合、例えば、特に高い水準の発現が求められるときは、無作為な組み入れと相同的な組み入れの両者が使用できる。
【0059】
本酵素組成物と方法を用いる加水分解用のセルロースとヘミセルロース源として使用するバイオマス物質は、例えば、草からの原料、農業の残留物、林業の残留物、都市の固体廃棄物、使用済みの紙、及びパルプ製紙業の残留物等でもよい。一般的形態のバイオマス物質は、木材、潅木及び草、小麦、小麦のワラ、砂糖きびの絞りかす、トウモロコシ、トウモロコシの皮、トウモロコシの粒由来の繊維を含むトウモロコシの粒、トウモロコシのような穀粒の製粉からの生産物と副産物(湿式製粉と乾式製粉を含む)及び都市の固体廃棄物、使用済みの紙、庭の廃棄物を含むがこれらに限定されない。バイオマス物質は、「未加工バイオマス」(例えば、木、低木、草、果実、花、穀物、硬材と軟材)、「加工バイオマス」(例えば、農業の副産物、販売用の有機性廃棄物、建築及び解体の破片、都市の固体廃棄物及び庭の廃棄物)または「ブレンドバイオマス」(これは「未加工バイオマス」と「加工バイオマス」の混合物である)から得てもよい。バイオマス物質は、例えば、木材、木材パルプ、製紙から出る沈積物、製紙用パルプの廃棄物流、パーティクルボード、トウモロコシのわら、トウモロコシの繊維、コメ、紙及びパルプ加工廃棄物、木本植物又は草本植物、果実からのパルプ、植物性パルプ、軽石(pumice)、蒸留所の穀粒、草、コメのもみ殻、サトウキビの絞りかす、綿、ジュート、麻、亜麻、竹、サイザル麻、マニラ麻、ワラ、トウモロコシの穂軸、蒸留所の穀粒、葉、小麦のワラ、ココナッツの毛、藻類、アメリカクサキビ(switchgrass)、及びそれらの混合物を含んでも良い。
【0060】
バイオマス物質は直接に使用でき、あるいは本技術分野で知られている従来の方法を用いた前処理を受けてもよい。そのような前処理は、化学的、物理的及び生物学的前処理を含む。例えば、物理的前処理技術には、限定はなく、種々の種類の製粉、粉砕、蒸気処理/蒸気破裂(steam explosion)、照射及び熱水分解(hydrothermolysis)を含む。化学的前処理技術に、限定はなく、希酸、アルカリ試薬、有機溶媒、アンモニア、二酸化硫黄、二酸化炭素、及びpH-制御熱水分解を含む。生物学的前処理技術には、限定はなく、リグニン-可溶化微生物の使用を含む。
【0061】
生物変換酵素ブレンドと、その中のセルラーゼ及びヘミセルラーゼの最適な使用水準は、バイオマス物質と使用される前処理技術により変わる。pH、温度と反応時間のような操作条件はエタノール生産の速度にも影響する。好ましくは、反応性組成物はバイオマス1グラム当たり0.1から200mgの生物変換酵素ブレンドを含み、より好ましくは、バイオマス1グラム当たり1から100mgの生物変換酵素ブレンド、最も好ましくは、バイオマス1グラム当たり10-50mgの生物変換酵素を含む。例えば、バイオマス1グラム当たり0.1-50、1-40、20-40、1-30、2-40及び10-20mgの生物変換酵素が含まれる。または、酵素量は、系中の基質の量に基づいて決定できる。そのような場合、反応組成物は、好ましくは、全糖1グラム当たり0.1から50mgの生物変換酵素ブレンドを、より好ましくは、全糖1グラム当たり1から30mgの生物変換酵素ブレンドを、さらに好ましくは、全糖1グラム当たり10から20mgの生物変換酵素ブレンドを含む。または、酵素の量は系中のセルロース基質の量に基づいて決定できる。または、酵素量は、系のセルロース基質の量に基づいて決定できる。そのような場合、反応組成物は、グルカン総量の1グラム当たり0.2から100mgの生物変換酵素を含み、より好ましくは、グルカン総量の1グラム当たり2から60mgの生物変換酵素ブレンドを含み、より好ましくは、グルカン総量1グラムあたり20から40mgの生物変換酵素ブレンドを含む。同様に、使用する生物変換酵素ブレンドの量は、基質バイオマス中のヘミセルラーゼの量により決定できる。従って、反応組成物はヘミセルロース1グラム当たり0.2から100mgの生物変換酵素ブレンドを含むことが好ましく、ヘミセルロース1グラム当たり2から60mgの生物変換酵素を含むことがより好ましく、ヘミセルロース1グラム当たり20から40mgの生物変換酵素ブレンドを含むことがさらに好ましい。
【0062】
いくつかの実施態様では、本組成物は、全セルラーゼ調製品と少なくとも1個のヘミセルラーゼを含有する、ヘミセルラーゼを強化した全セルラーゼ組成物の形態であって、ヘミセルラーゼの量は全タンパク質の1%から50%の範囲にあり、全セルラーゼは全タンパク質の99%未満から50%の範囲にある。例えば、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の1%を占め、全セルラーゼは全タンパク質の99%を占め、ヘミセルラーゼは全タンパク質の2%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の98%を占め、ヘミセルラーゼは全タンパク質の3%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の97%を占め、ヘミセルラーゼは全タンパク質の4%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の96%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の5%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の95%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の6%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の94%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の7%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の93%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の8%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の92%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の9%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の91%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の10%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の90%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の11%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の89%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の12%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の88%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の13%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の87%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の14%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の86%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の15%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の85%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の16%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の84%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の17%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の83%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の18%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の82%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の19%を占め、全セ
ルラーゼ組成物は全タンパク質の81%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の20%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の80%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の21%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の79%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の22%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の78%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の23%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の77%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の24%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の76%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の25%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の75%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の26%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の74%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の27%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の73%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の28%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の72%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の29%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の71%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の30%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の70%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の31%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の69%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の32%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の68%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の33%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の67%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の34%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の66%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の35%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の65%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の36%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の64%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の37%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の63%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の38%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の62%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の39%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の61%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の40%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク
質の60%を占め、ヘミセルラーゼは、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の41%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の59%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の42%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の58%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の43%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の57%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の44%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の56%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の45%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の55%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の46%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の54%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の47%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の53%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の48%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の52%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の49%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の51%を占め、ヘミセルラーゼは、全タンパク質の50%を占め、全セルラーゼ組成物は全タンパク質の50%を占める。
【0063】
使用時、生物変換酵素ブレンド組成物は、適した基質原料に別々に、つまり別の酵素組成物として、またはすべてのセルラーゼとヘミセルラーゼが、基質に加えられる前に単一の酵素混合物に含まれて、加えられても良い。セルラーゼとヘミセルラーゼは別の酵素組成物である場合、それらは基質へ連続してまたは同時に加えられても良い。セルラーゼとヘミセルラーゼが単一の混合物に含まれている場合、それらは同時に加えられる。
【0064】
組成物と方法の他の面と実施態様は、以下の実施例を参照することによりさらに理解できよう。しかし、これらを限定するものと解釈してはならない。本技術分野の技術者にとり、物質と方法の両方に対して、現教示から逸脱することなく多くの修飾をすることができることは明らかであろう。