特許第5690723号(P5690723)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5690723炭化水素原料分解炉におけるオンストリーミングデコーキング法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690723
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】炭化水素原料分解炉におけるオンストリーミングデコーキング法
(51)【国際特許分類】
   C10G 9/16 20060101AFI20150305BHJP
   C10G 9/20 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   C10G9/16
   C10G9/20
【請求項の数】10
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2011-516374(P2011-516374)
(86)(22)【出願日】2009年5月20日
(65)【公表番号】特表2011-525943(P2011-525943A)
(43)【公表日】2011年9月29日
(86)【国際出願番号】US2009044586
(87)【国際公開番号】WO2010005633
(87)【国際公開日】20100114
【審査請求日】2010年12月27日
(31)【優先権主張番号】12/172,048
(32)【優先日】2008年7月11日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599134676
【氏名又は名称】エクソンモービル・ケミカル・パテンツ・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100071010
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 行造
(72)【発明者】
【氏名】スパイサー、デイビッド・ビー
【審査官】 相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第98/055563(WO,A2)
【文献】 英国特許出願公告第1306962(GB,A)
【文献】 英国特許出願公告第1198873(GB,A)
【文献】 米国特許第05186815(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却システムを有する炉のオンストリームデコーキングのための方法であって、前記炉は炭化水素原料の入り口と熱放射部の交差部との間に位置する複数の管群を含み、熱放射部は熱放射コイルを含み、各管群は管群内に配置されている複数の管を含み、
前記方法は
(a)多数の管群の全部ではない複数の管の一部分への炭化水素原料流れを停止する工程、
(b)工程(a)での多数の管群の全部ではない複数の管の一部分へ、蒸気を含むデコーキング原料を提供して、対流部から熱放射部の交差部の温度を788℃以下に維持しつつ、熱放射コイルの内部と、多数の管群の全部ではない複数の管の一部分に連結している冷却システムの構成部分とに蓄積されたコークを効果的に除去する工程を含む、方法。
【請求項2】
(c)多数の管群の全部ではない複数の管の一部分を炭化水素処理工程へ戻す工程、
(d)多数の管群の全部ではない複数の管の第二部分への炭化水素原料流れを停止する工程、
(e)前記第二部分において、工程(b)及び(c)を繰り返す工程、を更に含む、請求項1の方法。
【請求項3】
原料供給が停止され、デコーキング原料が多数の管群の全部ではない複数の管の1つに一度に供給され、炉の転換能力を減少せずに熱放射コイルと多数の管群の全部ではない複数の管の一部分に連結している冷却システムの構成部分とに蓄積したコークを除去する、請求項1の方法。
【請求項4】
(a)において、停止された炭化水素流れが気体−液体セパレーターからの気体流れを含む、請求項1、2、および3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
(a)において停止された炭化水素流れが、第二輸送ライン交換器からの気体流れを含む、請求項1、2、および3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)に供給されるデコーキング原料が追加的な水を含まない請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(b)の間の多数の管群の全部ではない複数の管の一部分内の温度が、残りの稼動している多数の管群の全部ではない複数の管の±200℃以内である、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記炉がスチームクラッキング炉である、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(b)で供給されたデコーキング原料が蒸気のみからなる請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
炉が炭化水素原料の入り口と対流部から熱放射部の交差部との間に連続的に配置されている多数の管群を含む対流部を含み、
各管群は管群内に配置された複数の管を含み、
熱放射部は複数の管のそれぞれに連結して、炭化水素供給原料を熱分解し、
スチームを多数の管群の全部ではない複数の一部分に供給して、熱放射コイル及び冷却システムの構成部分のオンストリーミングデコーキングを行い、
複数の管群の全部ではない複数の管のそれぞれの流れをバルブを用いて、炭化水素源から蒸気供給からの蒸気へ切り替える、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、オレフィン、特にエチレン等の低分子量オレフィン生成のための炭化水素の熱分解の分野に関する。より具体的には、発明は熱分解(スチームクラッキング)プロセス等の間に成形される付着コークを稼動しながら除去する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱分解とも言われている、スチームクラッキングは各種炭化水素原料をオレフィン類、特にエチレン、プロピレン、及びブテン等の軽質オレフィンへ分解するために、使用されている。従来のスチームクラッキングは、2つの主要セクションを有する熱分解炉を使用する。その2つのセクションとは対流部熱放射部である。炭化水素原料は通常この炉の対流部に液体として入り(軽質原料は気体として入る)、加熱され、熱放射部からの高温燃焼排ガスと非接触的に接近し、又は蒸気と直接接触することにより、少なくとも部分的に気化させられる。気化した供給原料と蒸気との混合物はそのあと熱放射部へ導入される。ここでは主に分解化学反応が起こる。オレフィンを含む生成物はこの熱分解炉を去り、冷却工程を含む下流域で更に処理される。
【0003】
オレフィンガス分解システムは通常、エチレン、プロパン、及び時折ブテンを分解することを意図しており、通常、重質液体原料、特に1%より多い量のタールを生成するの液体原料を分解する能力を欠いている。ガス原料はほとんどタールを生成しない傾向にあるので、一次、二次、及び更に三次的な輸送ライン変換器(TLE)を用いて、高圧及び中圧蒸気の生成を通じて(生成される)エネルギーを回収する。炉の流れは炉の出口から冷却タワー入り口までを冷却するので、処理される気体は通常、その後、冷却タワーに供給され、ここでこの気体を冷却水に直接的に接触させて更に冷却する。
【0004】
従来のスチームクラッキングシステムはガスオイル及びナフサ等の十分に揮発性である炭化水素を含む高品質液体原料を分解するにも効果的であった。これらの原料を処理する炉からの分解された排出液は少なくとも一次TLEで冷却工程される。重質ナフサ及び全ガスオイル原料のために、一次TLEの下流に二次オイル冷却工程がしばしば必要とされる。そのような炉からの処理排出液は、通常一次フラクショネーターに供給され、重質炭化水素が除去され、軽質炭化水素流れが更なる処理のために下流工程に供給される。
【0005】
しかしながら、経済的理由から、スチームクラッキングで残油を含む低価格原料を処理することが好ましい。そのような原料の非限定的な例としては、常圧残油、例えば、常圧パイプスチルボトム(パイプ内残油)及び原油を含む。原油及び常圧残油はしばしば595℃(1100F)を超える沸点を有する、高分子不揮発性化合物を含む。これらの原料のこの不揮発性化合物は従来の熱分解炉の対流部においてコークとして蓄積する。不揮発性化合物の非常に低いレベルの化合物のみが、軽質化合物が完全に気化される個所の対流部下流において利用可能となる。不揮発性物質の相当量を含む原料を分解するために、部分的に予備加熱された原料を気体−液体セパレーターに、好ましくは揮発性炭化水素の全てが蒸発する温度より低い温度で、通過させることが必要とされる。そのような気体−液体セパレーターを採用する炉は米国特許第7,138,047号及び米国特許出願第2005/0209495A1に開示されている。
【0006】
ケロシン及びガスオイル等の重質原料を分解すると大量のタールを生成する。タールは炉の熱放射部及び冷却セクションですばやくコークス化し、コーク除去を可能にするために、頻繁に原料を供給することが阻害される。コークを除去する工程をデコーキングという。しかしながら、軽質ガス原料のクラッキングでさえ、熱放射コイルの内部表面にコークを付着させ、定期的なコークス除去が必要とされている。
【0007】
クラッキング炉の熱放射部及び冷却システムからのコークを除去するために商業的に行われている通常の方法はスチーム−エア−デコーキングである。このプロセスの間、炭化水素原料の炉への供給が阻害され、蒸気が炉を通過する。炉の排出液は更にオレフィンプラントの回収セクションからデコーキングシステムへ再循環する。空気は炉を通過しているスチームに添加され、加熱された空気/スチーム混合物が燃焼を調節することにより、体積したコークを除去する。スチーム−エア−デコーキングはクラッキング炉の熱放射コイル及び冷却システムから、蓄積したコークを取り除くのに効果的であるが、デコーキングプロセスを継続している間、炉からのオレフィン生成を完全に停止しなければならないという不利益がある。
【0008】
米国特許第3,365,387号は、炉の稼動を維持しながら、1つ以上のに蒸気及び/又は水原料を通して分解炉からコークを取り除く方法を提案する。この蒸気及び/又は水原料は、炭化水素原料が炉へ導入される個所において、炭化水素供給原料に置き換えられる。スチーム−エア−デコーキングに対するこの方法の利点は、デコークされる炉の区画においてオレフィン生成物を生成し続けることができることであり、空気又は酸素がこのプロセスに添加されないので、炉の排出液はオレフィンプラントの回収セクションから再循環しなくてもよいことである。このプロセスは「オンストリームデコーキング」と呼ばれ、所与のプラントの炉のオレフィン生成速度における変動が少ないという利点を有し、全体炉排出液の再循環が必要とされないので、プラント稼動の負荷も少なくてすむ。
【0009】
米国特許第3,557,241号は炉の稼動を維持しながら、且つコークを取り除かないにおいて熱分解プロセスを続けながら、少なくとも1つ以上のを蒸気及び/又は水及び水素のデコーキング原料を通すことにより、分解炉からコークを除去する方法を提案している。この蒸気及び/又は水及び水素原料は炭化水素フィードストックが炉に導入される個所で炭化水素原料ストックに置換される。
【0010】
前述の2つの特徴はスチーム−エア−デコーキングの不利益の多くを排除する稼動デコーキング技術を説明するが、原料が炉に導入される個所で蒸気/水混合物を置き換えることは幾つかの不利益がある。稼動デコーキング流れは炉に原料が供給される個所で導入されるので、この流れはコイル又はバンクを加熱する対流部プロセス全体を通過しなければならない。もしデコーキング原料が蒸気のみであれば、対流部を去り及び炉の熱放射部に入る温度(交差部温度として知られている)は炉のこのセクションにおいて、通常用いられている物質のキャパシティーを超えている。通常用いられている物質のキャパシティー内に交差部の温度を維持するために、水を蒸気に添加することが必要とされる。しかしながら、過剰量の水が存在すると水が層化し、加熱されて対流部の管のボトムセクションに沿って進み、機械的な問題を生じる。そのような現象はを曲げて、対流部内で支持体内(チューブシートとして知られている)のそれらの自由な膨張及び/又は修飾を制限することになる。更に、デコーキングスチームに水を添加しようとすると、パイプワークが複雑になり、炉に制御システムを追加しなければならない。稼動デコーキングプロセス及び通常用いられている物質の範囲内で、対流部及び/又は交差部温度を維持するために水を必要としない稼動デコーキングプロセス及び炉の設計が望まれている。
【0011】
技術の進歩にも関わらず、熱分解炉の稼動デコーキングのための改善されたプロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【0012】
1つの側面において、スチームクラッキング炉のオンストリームデコーキングのための方法を提供する。このスチームクラッキング炉は炭化水素フィードストック入り口と対流部から熱放射部の交差部までの間に位置する多数の管群を含む。各管群は内部に配置された複数の管を含む。このプロセスは多数の管群の全部ではない複数の管の一部分への炭化水素原料の流れを停止する工程、及び対流部から熱放射部の交差部における温度を約788℃(1445oF)に維持しながら、スチームを含むデコーキング原料を多数の管群の全部ではない複数の管の一部分に、熱放射コイルの内部及びそのような管により供給される冷却システムの構成部分に蓄積されたコークの効果的な除去及びそのために十分な量を供給する工程を含む。
【0013】
1つの態様において、この方法は更に、多数の管群の全部ではない複数のの一部分をスチームクラッキングオペレーションへ戻す工程、多数の管群の全部ではない複数の第二の部分への炭化水素の流れを停止する工程、及びこれらの工程を繰り返す工程を含む。
【0014】
他の態様において、原料供給を停止し、デコーキング原料を多数の管群の全部ではない管の複数の管の1つの管に、一度に提供して、炉の転換キャパシティーを実質的に低減させずに、熱放射コイル及びそのような管により供給され冷却システムの構成部分からコークを除去する。
【0015】
他の態様において、多数の管群の全部ではない複数のの一部分内の温度は稼動したままの多数の管群の全部ではない複数のの主要部分と同じ温度である(約±200℃以内)。更なる態様において、デコーキング原料は主に蒸気である。更なる態様において、炉はスチームクラッキング炉である。
【0016】
更なる態様において、本発明は炭化水素物質の熱分解のために提供される。この方法は炭化水素フィードストック入り口及び対流部から熱放射部の交差部の間に連続的に位置している複数の管群に蒸気を含む同じ混合物を通過させる。各管群はこの管群内に配置された複数の管を含む。この多数の管群は高温燃焼排ガスに接触させて対流部における中間温度にまで加熱し、下流の熱放射部で放射加熱される。このプロセスは多数の管群の全部ではない複数の管の一部分への炭化水素原料の流れを停止する工程、十分量のデコーキング原料を多数の管群の全部ではない複数の管の一部分に供給して、対流部から熱放射部の交差部の温度を約788℃以下に維持しながら、熱放射コイルの内部及びそのような管により供給される冷却システムの構成部分に蓄積したコークを効果的に除去する工程、及び多数の管群の全部ではない複数の管の一部分をスチームクラッキングオペレーションに戻す工程を含む。
【0017】
更なる態様において、冷却システムを含む、エチレンの生成のための炉を提供する。この炉は炭化水素フィードストック入り口及び対流部から熱放射部までの間に連続的に位置する多数の管群を含む対流部を含む。各管群は管群内に平行に配置された複数の管を含み、熱放射コイル及び多数の管群の全部ではない管の複数の一部分により供給さえる冷却システムの構成部分をオンストリームデコーキングするスチーム供給、炭化水素原料の源から多数の管群の全部ではない部分に複数のそれぞれをスチーム供給からのスチームに切り替えるためのバルブ、炭化水素フィードストックの熱分解のための複数の管のそれぞれと流体連結している熱放射部を含む。これらの及び他の特徴は、添付の図及び発明の詳細な説明より明らかである。
【図の簡単な説明】
【0018】
本発明は以下の例示的な図面を参照することにより詳細に説明される。これらの図面は本発明の各種態様を示している。
【0019】
図1は炉を用いた本発明の方法の略式流図を示す。この図では特に炉の対流部が強調されている。
【0020】
図2は炉を用いた本発明の方法の略式流図を示す。この図では特に炉の対流部が強調されている。
【好適な態様の詳細な説明】
【0021】
例示の目的で選択された特定の態様を参照により本明細書に援用して本発明の各種側面を説明する。本明細書の開示されているプロセス及びシステムの精神及び範囲は選択された態様に限定されないことは理解されるであろう。更に、本明細書添付する図面は本発明が特定の部分又はスケールに限定されることを意味するものではない。例示的な態様の多くのバリエーションが可能である。ここで図面を参照すると、数字を用いて部分を特定している。量、濃度、又は他の値又はパラメーターは上限の好ましい値と下限の好ましい値で示されているが、範囲が別途記載されていない限り、任意の好適な上限値と好適な下限値により形成されている全ての範囲が開示されるものである。本明細書で用いられるフィードストックは、各種オレフィンに分解できる限り任意のフィードストックを用いることができ、高沸点分画及びエバポレーション残渣分画等の重質分画を含んでいてもよい。
【0022】
図1は不揮発性物質の相当量を含む分解原料のための熱分解炉を表す。そのような炉は米国特許第7,138,047号及び米国特許出願第20005/0209495A1に記載されている。図1を参照すると、熱分解炉10は下部熱放射部12、中間対流部14、及び上部燃焼排ガス排出セクション16を含む。熱放射部12において、熱放射バーナー(示さず)が炭化水素原料に放射加熱を提供して、原料を熱分解し、所望の生成物を製造する。このバーナーは高温ガスを生成し、このガスは対流部14を通り、上向きに流れ、燃料排ガス排出セクション16を通り炉10から排出される高温ガスを生成する。
【0023】
図1に示すとおり、炭化水素は入り口18を入って、入り口フィードバルブ20を通過し、予備加熱されている対流部14の上部を流れる。示したように、18の複数は平行に配置されており、外部管群22により概略的に示されている。図示していないけれども、入り口18の複数のそれぞれは入り口供給バルブ20が付いている。図示するように、複数の18のそれぞれは、対流部の管群26の熱交換24に流体連結している。「複数の」の語は対流部14は、多数の管群のそれぞれが少なくとも平行に配置された2つのを有していることを意味する。図1に示すように、8つのが概略的に示されている。しかしながら、3個、4個、6個、8個、10個、12個、16個、18個のものも知られている。
【0024】
炭化水素原料の予備加熱は一般的な当業者に知られている任意のやり方で行うことができる。通常、加熱は炉10の上部対流部14において原料を炉10の熱放射部12からの高温燃料排ガスと非直接的に接触させることを含む。このことは、非限定的な例として、炉10の対流部14の内に位置する熱交換器に原料を通過させることにより行われる。
【0025】
予備加熱された炭化水素原料が対流部14を出た後、水がライン30を通じて予備加熱された炭化水素原料に導入され、希釈された蒸気がライン46を通じて導入して、混合物を形成する。おわかりのように、ウォーターライン30の複数は並行に配置されており、外部管群34により例示的に表されている。同様に、スチームライン46の複数は並行に配置されており、エクスターナルバング48として概略的に示されている。水は、水及び希釈蒸気の総重量に基づいて0%乃至100%の量で予備加熱された原料に添加される。1つの形態に基づいて、100%の水が炭化水素原料に添加され、希釈蒸気は添加されない。水流れ及び希釈蒸気流れの重量の合計は、所望の炭化水素圧力を達するために必要な反応ゾーンのHOを与える。
【0026】
図1に示したように、水は希釈蒸気を添加する前に予備加熱された原料に添加される。この添加の順序は炭化水素原料、水、及び希釈蒸気の混合物に由来するプロセス流れにおける好ましくない圧力の変動を低くする。当業者に理解されているように、そのような変動はウォーターハンマー又はスチームハンマーと言われている。水及び蒸気を予備加熱した原料に添加することは、既知の混合デバイスを用いて行うことができるけれども、スパージャーアッセンブリー36を用いることが好ましい。水は第一スパージャー44で添加されることが好ましい。示したように、第一スパージャー44は内部導管38及び該部導管42の間に環状のフロースペースを形成するように外部導管42により取り巻かれている内部有孔導管38を含む。予備加熱された炭化水素原料は環状フロースペースを通じて流れる。好ましくは、水が内部有孔導管38を通り、内部導管38において示されている開口部(ミシン目)を通じて予備加熱された炭化水素原料に注入される。複数のスパージャーアッセンブリー36が並行に配置されている。
【0027】
希釈蒸気はライン46を通じて第二スパージャー58において、予備加熱した原料に導入される。示したように、第二スパージャー58は内部有孔導管52を有する。この導管は内部導管52と外部導管54の間に環状フロースペース56を形成するように、外部導管により取り巻かれている。水を添加された予備加熱された炭化水素原料は環状フロースペース56を通じて流れる。それゆえ、希釈蒸気は内部有孔導管52を通じて流れ、ない部導管52に示されている開口部(ミシン目)を通じて予備加熱された炭化水素原料に注入される。
【0028】
他の態様において、第一スパージャー44及び第二スパージャー58はスパージャーアッセンブリー36の一部分であり、示したように、第一スパージャー44及び第二スパージャー58は流体連結している。第一スパージャー44及び第二スパージャー58はリッキッドフローインターコネクター60により、流体連結で相互接続的につながっている。水及び希釈蒸気を予備加熱された炭化水素原料と混合するためのスパージャーアッセンブリーは米国特許第7,090,765に記載されている。
【0029】
更なる例示的態様において、スパージャーアッセンブリー36を出ると、炭化水素原料、水、及び希釈蒸気の混合物は管群66の熱交換64を通じて炉10に戻る。群66では、対流部14の下方部内でこの混合物を更に加熱する。炭化水素原料の更なる加熱は当業者に知られている任意の手段で行うことができる。この更なる加熱は炉10の対流部14において原料をこの炉の熱放射部12からの高温燃料排ガスに非直接的に接触させることにより行われる。このことは、非限定的には、炉10の対流部14の管群66内に位置している複数の熱交換64のこの原料を通過させることにより行われる。管群66で混合物を追加的に加熱した後に、得られた加熱された混合物は対流部14を出て、更に加熱された高圧蒸気セクション70を迂回して、管群74の熱交換72を通じて炉10に戻る。この混合物は対流部14のより下方部内で更に加熱される。
【0030】
炭化水素原料、水、及び希釈蒸気の混合物は84で、対流部を再び去り、更に加熱された高圧蒸気セクション88を迂回する。この混合物は90の1つ以上に流れ、分離のためにフラッシュ分離ベッセル92に供給される。1つ以上の90は並行に配置されており、外部管群86により概略的に表現されている複数の84に供給される。オーバーヘッド部分はライン94を通じて除去され、バルブ98を通って、管群102の熱交換100を通じて炉10に戻る。この混合物は対流部14の下方部内で更に加熱される。再度、ライン94の複数は提供され、並行に配置されており、外部管群96により概略的に示されている。
【0031】
104において、対流部14を去ると、加熱された炭化水素は炭化水素の熱クラッキングのために炉の熱放射部を通される。熱放射部へ向かう加熱された原料は約425℃乃至約760℃(約800F乃至約1400F)、又は約560乃至約730℃(約1050乃至約1350F)の温度を有する。
【0032】
典型的な分解炉10において、予備加熱及び気化のための対流部14における領域は790℃までに予備加熱されていることが必要である。オンストリームデコーキングに必要とされる蒸気の添加は配管の限度を超える加熱を避けなければならない。このことは特に直接オイル冷却を行い、従って図1に例示的に示しているように対流部14において更に加熱される蒸気を有する輸送ライン交換機(TLE)のない重質液体原料炉の場合に当てはまる。
【0033】
炭化水素オペレーションにおいて、例えば、原料は多数の管群26において予備加熱される。希釈蒸気が添加され、更に多数の管群66において予備加熱が続けられる。図1に示すように、この方法は高圧沸騰原料水(HPBFW)及びスチームスーパーヒート管群70を迂回して、更に管群74で予備加熱される。この箇所において、各種パスからの部分的に気化された原料が組み合わせられ気体−液体セパレーター92に供給される。気体−液体セパレーター由来の気体生成物は複数のコントロールバルブ98の複数を通って、複数の94の(図1に記載の態様における96により示される8つ)に分配され、クラッキングのために熱放射部を通る前に、管群102に戻って最終的な予備加熱を行う。
【0034】
有利なことには、本明細書はオンストリーミングデコーキングを短縮する方法を開示している。流れはプロセスプレヒーティングの区画のみ通し、デコーキングオペレーションにおいて、水(蒸気に加えて)の使用を排除することを可能とする。一方で、交差部のパイピング104の温度限度内の温度を維持している。本明細書で開示するように、プロセスプレヒーティングエリアの残りはプロセスプレヒートを維持することができる。例示的な図1の概略図はこの要求に適した炉を示し、不揮発性分画を含む重質液体原料の分解のための設計を示している。
【0035】
本明細書における1つの態様において、炉10の稼動でコーキングのための発明的方法が提供される、炉10は多数の管群26、66、74、及び102を含み、これらは炭化水素フィードストック入り口18、及び熱放射部の交差部104の間に連続的に位置し、各管群26、66、74、及び102は複数の管24、64、80、及び100をそれぞれ含む。各管群内でこれらは並行に配置されている。このプロセスは、多数の管群26、66、74、及び102の全部ではない管24、64、80、及び100の複数の一部分への炭化水素原料の流れを停止する工程、蒸気を含むデコーキング原料を複数の管群26、66、74、及び102の全部ではない管24、64、80、及び100の複数の一部分に供給して、約1450oF以下の対流部から熱放射部の交差部における温度を維持しながら、対流コイル、熱放射コイル、前述の対流部の管により供給される冷却システムの構成部分の内部に蓄積したコークを効果的に取り除く工程、及び複数管26、66、74、及び102の全部ではない管24、64、80、及び100の複数の一部分をデコーキング後の炭化水素プロセスオペレーションに戻す工程を含む。
【0036】
本発明の方法は多数の管群26、66、74、及び102の全部ではない管24、64、80、及び100の複数の一部分への炭化水素原料の流を停止する工程、多数の管群26、66、74、及び102の全部ではない管24、64、80、及び100の複数の一部分へスチームよりなるデコーキング原料を供給して、対流部から熱放射部104への交差部における温度を約1450oF以下に維持しつつ、熱放射コイルの内部及びそのような対流部の管により供給される冷却システムの構成部分に蓄積したコークを効果的に取り除く工程、及び多数の管群26、66、74、及び102の全部ではない管24、64、80、及び100の複数の一部分を炭化水素プロセスオペレーションに戻す工程を含む。
【0037】
の複数の一部分」の語は少なくとも1つでの複数の全部ではない部分を意味する。多数の管群の全部ではない」の語は多数の管群の1つ以上で全部ではない部分を意味する。
【0038】
実施において、そこへの通常の原料の供給をバルブで切断して、熱放射コイルの内部、供給された冷却成分からコークを取り除くのに充分な量のデコーキング原料を又は20を通過させることにより、炉10を停止せずに、バルブで多数の管群26、66、74、及び102の全部ではない24、64、及び100の複数の一部分を流れからはずす。デコーキングの後、又は20はデコーキング原料の流れを切り替えて、脱コークされたを通常のサービスに戻して、通常の流れに戻す。
【0039】
デコーキングに用いるスチームは通常利用されているものであり、1つ以上のコントロールバルブ112を通じで制御することができる。デコーキングスチームはバルブ114の複数のいずれかを通り、所望ののコントロールバルブ98の複数の下流個所に流れる。1つのコントロールバルブ112を用いる場合、このデコーキングスチームをゲートバルブ114を用いていずれかの対流部パスに流す。が本明細書で開示するデコーキングオペレーションを行っている場合、個々のバルブ98が閉まって、蒸気−液体セパレーターからの蒸気オーバーヘッド生成物が閉鎖され、蒸気−液体セパレーターからのこの蒸気オーバーヘッド生成物はの複数の残りのにのみ供給される(図1による定時的なケースにおいて、対流部の管群102及び熱放射部の8つののうちの7つ)。しかしながら、対流部の管群26、66、及び74の複数の24、66、及び80の全てが予備加熱サービスに用いられているままである。
【0040】
例示的な態様の図2を参照していただきたい。エタン及びプロパン等のクラッキングガス原料のための炉200が本発明に基づいて設計された。炉200は底部熱放射部212、中間対流部214、上部排ガス排気セクション216を含む。熱放射部212において、熱放射バーナー(示さず)が炭化水素原料に放射熱を与えて、原料を熱分解して所望の生成物を与える。このバーナーは高温ガスを生成し、このガスは対流部214を通り、上向きに流れ、燃料排ガス排出セクション216を通り炉10から排出される高温ガスを生成する。
【0041】
図2に例示的に示しているように、炭化水素原料は入り口218に入り、入り口供給バルブ220を通過し、予備加熱された対流部214の上部に向けて流れる。図示するように、複数の218が並行に配置されており、これらは外部管群222として概略的に現されている。図示されないけれども、複数の218のそれぞれには入り口フィードバルブ220が付いているか、又は示したように1つのフィードバルブを用いている。図示するように、対流部の管群226の対応している複数の熱交換224と218のそれぞれは、流体連結している。
【0042】
炭化水素原料の予備加熱は当業者により知られている任意の方法で行うことができる。通常、加熱は炉200の熱放射部212から高温原料ガスで、炉200の上部対流部214において、原料を非直接的に接触させることを含む。このことは、非限定的な例としては、炉200の対流部214に位置している熱交換に原料を通すことにより達成される。管群226を出ると、予備加熱された原料は、約95℃乃至約315℃(約200F乃至約600F)の温度又は約150℃乃至約260℃(約300F乃至約500F)の間の温度を有する。
【0043】
予備加熱された炭化水素原料が上部対流部214を出ると、希釈蒸気がライン246を通じて導入され、混合物を形成する。希釈蒸気は、希釈蒸気重量に基づいて少なくとも約20%(即ち、約20%乃至約100%)、又は少なくとも25%、又は少なくとも30%の量で添加される。
【0044】
更に例示的に図2に示されるように、炭化水素原料と希釈蒸気の混合物は第二TLE等のトランスファーラインエクスチャンジャー(TEL)292へ流れ、高温炉排出ガス250により加熱される。炭化水素原料及び希釈蒸気の加熱された混合物はライン294を通ってこの交換機を去る。冷却された炉排出ガスはライン306を通って去る。294の複数は管群266の熱交換264の複数に対応している流れを、コントロールバルブ298により制御されるの複数のそれぞれに供給する。ここでは、この混合物は対流部214の底部において更に加熱される。炭化水素原料の更なる加熱は当業者に知られている方法で行うことができる。この更なる加熱は炉の熱放射部212からの高温燃料ガスと、炉200の対流部214において原料を非直接的に接触させることを含む。このことは、非限定的な例では、炉200の対流部214の管群266内に位置している複数の熱交換264に原料を通過させることにより行われる。管群266内の混合物の追加的な加熱に続いて、得られた加熱混合物は対流部214を出て、更に加熱された高圧上部セクション270を迂回し、その後管群274の熱交換272を通って炉200に戻る。ここで、この混合物は対流部214の更に底部内で加熱される。
【0045】
炭化水素原料及び希釈蒸気の混合物は再び対流部214を去り、下流の更に加熱された高圧蒸気セクション及びそのエクスポート288を迂回する。この混合物流れは管群302の熱交換300を通じて炉200に戻る。ここにおいて、この混合物は対流部214の底部で更に加熱される。
【0046】
304で対流部214を再び出ると、加熱された炭化水素は炭化水素の熱分解のために炉200の熱放射部212に向かう。熱放射部へ向かう加熱された原料は、約425℃乃至約760℃(約800F乃至約1400F)又は約560乃至約730℃(約1050F乃至約1350F)の間の温度を有する。
【0047】
重質炭化水素分解操作において、コークは熱放射管の内部表面に蓄積し、の有効な交差面積を減らす。それ故、高圧を用いて処理能力を維持している。コークは効果的な絶縁体であるので、コークが壁に形成されると炉の温度を高くして、分解効率を維持しなければならない。高いオペレーティング温度は、用いるべき温度が限定されているの寿命を短くし、最終的には対流効率及び生産性も低くする。
【0048】
有利なことに、稼動中にデコーキング流れがプロセス予備加熱エリアのフラクションのみ通過する、本明細書で開示する方法及び装置は交差部パイピング304の温度限定を維持したままで、デコーキングオペレーション中の水の使用を排除することができる。本明細書に記載のように、プロセス予備加熱エリアはプロセス予備加熱作業に維持できる。
【0049】
図示するように、対流部214は管群に配置されている。各管群において、幾つかのは並行に配置されている(図2の複数管群226(4つのを有する)以外では、8つが示されているが、3個、4個、6個、8個、10個、12個、16個、及び18個を有する炉も知られている。)各パスは曲がりくねったからなる。複数管群226、266、274、及び302は対流部214において全てのプロセス予備加熱管群である。
【0050】
例示的な図2に示す態様において、デコーキングスチームはコントロールバルブ312を通じてコントロールされる。デコーキングスチームはバルブ314のいずれかを通って、バルブ298の下流個所へ向かう。がオンストリーミングデコーキングをされているときに、個々のバルブ298は閉じており、原料及び希釈蒸気が伝導管群266、274、及び302及び熱放射部212の残りのへ供給される。対流部の管群226の全ての及び第二TLE292の総面積はプロセス予備加熱サービスに用いられたままである。
【実施例】
【0051】
この実施例において、図1に例示されるシステムを用いた。デコーキングスチームを提供し、コントロールバルブを通じてコントロールした。デコーキングスチームはバルブ114を通過して、バルブ98の下流個所へ向かう。バルブ98は熱放射コイル及びそのような管により提供される冷却システムの構成部分を閉鎖している。気体−液体セパレーター92からの気体オーバーヘッド生成物は対流部の管群102及び熱放射部12のほかの7つの管に提供される。対流部の管群26、66、及び74の全ての管は、プロセス予備加熱サービス用いられたままである。
【0052】
本明細書に従って操作した時に満足の行くデコーキングが得られるだろう。全ての特許、試験方法、及び従来技術を開示する文献を含む本明細書で引用する他のドキュメントは本発明の発明と矛盾せず、援用が法律で認められている場合に限り、参照により本明細書に援用される。
【0053】
本発明の例示的な態様を説明したが、本発明の精神及び範囲を逸脱しない範囲の各種変更は当業者に明らかであり、当業者は容易に行うことができると理解されるべきである。即ち、明細書に添付の特許請求の範囲を実施例に限定することは意図しない。本発明の明細書での説明は、本願発明の当業者により均等であると扱われている全ての技術的特徴を含む、本発明に存在する特許性のある全ての技術的特徴を包含するように解釈されるであろう。
図1
図2