(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
スリーブ印刷版は、通常、繊維強化プラスチック(FRP)製のスリーブ支持体と、このスリーブ支持体の外周面に配設された版本体と、で構成されている。版本体は、例えばレーザー光による彫刻が可能な感光性樹脂からなり、画像パターンが形成されている。
このようなスリーブ印刷版は、例えば特許文献1に記載されているように、フレキソ印刷、凸版印刷の分野において広く使用されている。また、特許文献2に記載されているように、缶等の円筒物に対するオフセット印刷の分野においても、このスリーブ印刷版が適用されている。
【0003】
このスリーブ印刷版は、印刷装置の版胴の円筒面に装着されて使用される。このスリーブ印刷版においては、画像パターンの周方向位置がスリーブ支持体上で予め設定されているので、スリーブ支持体と版胴との位置合わせを行うことで画像パターンの見当合わせを行うことができる。よって、画像パターンの交換作業に掛かる時間と労力を大幅に削減することが可能となる。
【0004】
前述のスリーブ印刷版においては、その内径が前述の版胴の外径よりも僅かに小さくされており、版胴の円筒面に設けられたエア孔からエアを噴出してスリーブ印刷版を拡径させて版胴の円筒面に嵌着されている。つまり、拡径されたスリーブ印刷版が元の内径に復元しようとする収縮力によって生じるスリーブ印刷版の内面と版胴の外面との間の摩擦力により、スリーブ印刷版と版胴とが固定されている。
【0005】
前述のスリーブ印刷版においては、スリーブ印刷版と版胴との軸線方向位置及び周方向位置を固定する必要がある。
特許文献3には、スリーブ印刷版に位置決凸部を形成するとともに版胴に位置決部材を形成し、これら位置決凸部と位置決部材とを係合させることで、スリーブ印刷版と版胴との周方向の相対位置及び軸線方向の相対位置を決定するといった技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献4に示すように、スリーブ印刷版の一部に前記軸線方向端部に向けて開口した切欠部を設けるとともに版胴にガイドピンを設けて、前記切欠部をガイドピンに係合させることによって、スリーブ印刷版と版胴との周方向の相対位置及び軸線方向の相対位置を決定するといった技術も提供されている。
【0007】
ところで、スリーブ印刷版を実際に印刷に使用すると、スリーブ印刷版と版胴との間にトルクの伝達が生じる場合がある。つまり、版胴からスリーブ印刷版を回転方向へずらす力を生じる場合がある。
このトルクが小さければ、スリーブ印刷版の内面と版胴の外面との間の摩擦力により、回転方向へずらす力に耐えることができる。しかし、印刷速度が高速化したり、印刷品質を上げるために印圧を上げたりすると、前記トルクが過大となり、前記摩擦力だけではスリーブ印刷版を固定することができず、滑り始めてしまう。
【0008】
スリーブ印刷版と版胴との位置決めを、ガイドピンを用いて行う場合には、前記トルクが過大となってスリーブ印刷版が滑ると、回転トルクは、版胴のガイドピンを介してスリーブ印刷版の切欠部が押圧されることによって、スリーブ印刷版に伝達される。すると、切欠部に過度の荷重が負荷されることになり、切欠部が早期に塑性変形してしまうおそれがあった。切欠部が塑性変形した場合には、スリーブ印刷版の位置決めを精度良く行うことができず、印刷品位が低下してしまう。すると、スリーブ印刷版の版本体等が健全な場合でもスリーブ印刷版を廃棄することになり、スリーブ印刷版の使用寿命が大幅に短くなってしまう。
【0009】
特許文献3に記載されたように、スリーブ印刷版及び版胴との位置決めを、スリーブ印刷版に設けられた位置決凸部と版胴に設けられた位置決部材とを用いて行う場合においても、この位置決凸部が設けられた部分に過度の荷重が負荷されることになって、スリーブ印刷版が変形してしまうおそれがあった。
ガイドピンや位置決凸部を用いた位置決めは、スリーブ印刷版及び版胴の一端で行われることから、位置決めがされていない端部側が周方向に移動して、スリーブ印刷版にねじれが発生するおそれがあった。
【0010】
特許文献4では、切欠部の塑性変形を抑制するために、切欠部を補強する技術が開示されている。しかしながら、位置決めのための切欠部を用いてトルクを伝達することから、位置決めの精度が劣化するおそれがあるため、好ましくない。また、切欠部を補強するために、スリーブ印刷版の製造コストが増加するといった問題があった。
【0011】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、スリーブ印刷版を強固に固定して印刷中の位置ズレの発生を防止でき、印刷作業を安定して行うことが可能なスリーブ印刷版用版胴、このスリーブ印刷版用版胴の使用方法及びこのスリーブ印刷版用版胴を備えた缶の印刷装置を提供することにある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のスリーブ印刷版用版胴は、軸線に沿って延びる円筒面を有し、この円筒面に円筒状をなすスリーブ印刷版が着脱可能に取り付けられるスリーブ印刷版用版胴であって、前記版胴の内部に、前記円筒面の軸線に沿って延びるエア供給路と、前記エア供給路に連通されるとともに前記円筒面に開口するエア孔とを備え、前記エア供給路に供給されたエアが、前記円筒面に開口する前記エア孔から噴出され、前記エア孔から噴出されたエアによって前記スリーブ印刷版が拡径され、これによって前記版胴
の軸線方向一方側から前記スリーブ印刷版が装着される
構成とされ、前記版胴の前記軸線方向一方側から装着され、前記スリーブ印刷版の一方の端面に当接し、前記スリーブ印刷版を前記軸線方向他方側に向けて押圧する端面当接部材を備えており、前記スリーブ印刷版が取り付けられた状態で、前記スリーブ印刷版の内周面に接触する前記円筒面及び前記端面当接部材のうち前記スリーブ印刷版の一方の端面に接触する面の少なくとも一方又は両方に、前記スリーブ印刷版との摩擦力が増す滑り止め加工部が形成されていることを特徴としている。
【0014】
このような構成とされた本発明のスリーブ印刷版用版胴においては、滑り止め加工部によってスリーブ印刷版が強固に固定され、印刷中の位置ズレの発生が防止される。よって、印刷作業を安定して行うことができる。また、回転トルクは、滑り止め加工部によってスリーブ印刷版に伝達されるため、スリーブ印刷版の切欠部等に過度の負荷が作用することがなくなる。よって、スリーブ印刷版の切欠部等の変形が抑えられ、スリーブ印刷版の早期劣化が抑制されるとともに、見当精度の良い印刷が可能となる。
さらに、端面当接部材によって前記スリーブ印刷版を前記軸線方向他方側に向けて押圧する構成としているので、スリーブ印刷版と端面当接部材とが強く密着することになり、スリーブ印刷版と端面当接部材との間で摩擦係数が大幅に上昇し、スリーブ印刷版が強固に固定される。
【0017】
前記滑り止め加工部は、周方向に複数設けられており、これら複数の前記滑り止め加工部が前記周方向に等間隔で配置されていてもよい。
この場合、滑り止め加工部からの回転トルクがスリーブ印刷版の周方向で均等に作用することになり、スリーブ印刷版の変形を抑制することができる。また、スリーブ印刷版の印刷中の位置ズレをさらに確実に防止することができる。
【0018】
前記滑り止め加工部は、前記スリーブ印刷版との接触面に粗面化処理を行うことによって形成された粗面部とされており、この粗面部の十点平均粗さRzjisが10μm以上とされていてもよい。
例えば、前記スリーブ印刷版との接触面にブラスト加工等の粗面化処理を行うことによって粗面部が形成される。この粗面部は、微小な凹凸を有するものである。この微小な凹凸がスリーブ印刷版との接触面に食い込むように配置されることで、スリーブ印刷版と粗面部との間で摩擦係数が大幅に上昇し、スリーブ印刷版が強固に固定される。
ここで、粗面部の十点平均粗さRzjisが10μm以上に設定されていることから、摩擦力によってスリーブ印刷版を強固に固定することができる。なお、この十点平均粗さRzjisは、JIS B 0601:2001に規定されたものである。
【0019】
前記滑り止め加工部は、前記スリーブ印刷版との接触面に凹凸加工を行うことによって形成された凹凸部とされてもよい。
例えば前記スリーブ印刷版との接触面にローレット加工等の凹凸加工を施すことによって、凹凸部が形成される。この凹凸部を前記スリーブ印刷版に食い込ませることで、スリーブ印刷版の印刷中の位置ズレを確実に防止することが可能となる。
【0020】
前記滑り止め加工部を前記円筒面の一部に形成し、前記滑り止め加工部を凹凸部とした場合には、前記凹凸部は、前記軸線に平行な方向において、径方向内方に凹んだ凹部と径方向外方に突出した凸部とが交互に配設されるように構成されていてもよい。
この場合、版胴の軸線に平行な方向において径方向内方に凹んだ凹部と径方向外方に突出した凸部とが交互に配設することにより、スリーブ印刷版が版胴の軸線方向に沿って移動することが防止されることになる。
【0022】
本発明のスリーブ印刷版用版胴の使用方法は、前述のスリーブ印刷版用版胴の使用方法であって、前記スリーブ印刷版の外周面には、印刷に使用される画像パターンが配設された画像部と、印刷に使用されない非画像部とが形成されており、前記滑り止め加工部が、前記非画像部に配置されるように、前記スリーブ印刷版を装着することを特徴としている。
このような構成とされたスリーブ印刷版用版胴の使用方法によれば、非画像部に滑り止め加工部が配置されていることから、滑り止め加工部をスリーブ印刷版に食い込ませたとしても、印刷に使用される画像部が変形せず、印刷作業を安定して行うことができる。
【0023】
本発明の缶の印刷装置は、円筒状をなすスリーブ印刷版の外周面に形成された画像パターンを、缶胴に印刷する缶の印刷装置であって、前記スリーブ印刷版が前述のスリーブ印刷版用版胴に装着されることを特徴としている。
この構成の缶の印刷装置によれば、スリーブ印刷版と版胴とが強固に固定されており、スリーブ印刷版の印刷中の位置ズレが防止され、安定した印刷作業を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、スリーブ印刷版を強固に固定して印刷中の位置ズレの発生を防止でき、印刷作業を安定して行うことが可能なスリーブ印刷版用版胴、このスリーブ印刷版用版胴の使用方法及びこのスリーブ印刷版用版胴を備えた缶の印刷装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明の実施の形態について添付した図面を参照して説明する。
まず、本実施形態である缶の印刷装置Aについて説明する。缶の印刷装置Aの概略を
図1に示す。
本実施形態である缶の印刷装置Aは、複数配置されたインク付着機構Bと、缶移動機構Cと、を備えている。
【0027】
インク付着機構Bは、インクを供給するインカーユニット1と、このインカーユニット1に接触してインクを写し取った後、缶胴20の外周面に接触して該インクを印刷する(付着させる)ブランケット9を複数枚備えるブランケットホイール8と、を備えている。
【0028】
インカーユニット1は、インク源2と、インク源2に接触してインクを受けるダクティングロール3と、このダクティングロール3に接続して複数のローラからなる中間ローラ4と、この中間ローラ4に接続するゴムローラ5と、このゴムローラ5に接続する版胴60とを備えている。版胴60の外周面(円筒面62)に、スリーブ印刷版30が配設されている。版胴60は、駆動軸71に片持ち状態で回転自在に軸支されている。
【0029】
ブランケットホイール8の外周面には、ブランケット9が複数枚備えられている。ブランケット9は、版胴60の外周面に配設されたスリーブ印刷版30の版本体33に接触するとともに、缶胴20に接触する構成とされている。
【0030】
缶移動機構Cは、缶胴20を取り入れる缶シュータ10と、この缶シュータ10から供給された缶胴20を回転自在に保持するマンドレル11と、このマンドレル11に装着された缶胴20を、順次、インク付着機構B方向に回転移動させるマンドレルターレット12と、を備えている。
【0031】
次に、版胴60の外周面(円筒面62)に配設されるスリーブ印刷版30について説明する。本実施形態で使用されるスリーブ印刷版30は、
図2及び
図3に示すように、軸線Lに沿って延びる円筒状をなすスリーブ支持体31を備えている。
スリーブ支持体31は、繊維強化プラスチック(FRP)若しくはポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂で形成されている。スリーブ支持体31の肉厚t1は、軸線L方向及び周方向で一定とされている。スリーブ支持体31の肉厚t1は、0.25mm≦t1≦1mmの範囲内とされ、本実施形態ではt1=0.6mmとされている。
【0032】
スリーブ支持体31の外周面には、画像パターンが形成された版本体33が配設されている。この版本体33は、版材にエッチングやレーザー加工によって画像パターンを形成したものである。版材は、例えばレーザー光による彫刻が可能な感光性樹脂で形成されている。版本体33の肉厚t2は、0.4mm≦t2≦1.2mmの範囲内とされ、本実施形態ではt2=0.7mmとされている。
【0033】
なお、本実施形態では、2つの版本体33,33が軸線Lを挟んで対向する位置に配設されている。そして、版本体33,33が形成された部分が印刷に使用される画像部S1とされている。また、版本体33,33が配設されていない部分が非画像部S2とされている。
スリーブ印刷版30の軸線L方向他方側(
図2において右側)には、版胴60との周方向相対位置及び軸線L方向相対位置を案内するためのガイド切欠部34が形成されている。
【0034】
次に、版胴60について説明する。版胴60は、
図2及び
図3に示すように、円筒状をなしており、内周孔61と、外周側を向く円筒面62と、軸線L方向一方側を向く端面63と、を備えている。
版胴60は、軸線L方向一方側を向く端面63に開口するとともに軸線Lに沿って延びるエア供給路64と、このエア供給路64に連通されるとともに円筒面62に開口するエア孔65とを備えている。
【0035】
内周孔61には、版胴60を回転駆動する駆動軸71の先端が着脱可能に挿入される。本実施形態では、内周孔61は軸線L方向一方側(
図2において左側)に向かうに従い漸次縮径するテーパ孔とされており、駆動軸71の先端も軸線L方向一方側(
図2において左側)に向かうに従い漸次縮径するテーパ軸とされている。ここで、内周孔61と駆動軸71とは、テーパ嵌合されており、軸線L方向の相対位置が決定される。
【0036】
円筒面62には、軸線L方向他方側(
図2において右側)の端部に、スリーブ印刷版30との周方向相対位置及び軸線L方向相対位置を案内するガイドピン66が突設されている。
【0037】
そして、円筒面62には、その周方向の一部に、凹凸部67が設けられている。この凹凸部67は、径方向内方に凹んだ凹条67Aと径方向外方に突出した凸条67Bとを有する。
凹凸部67は、円筒面62の周方向に複数設けられており、これら複数の凹凸部67が周方向に等間隔で配置されている。本実施形態では、
図3に示すように、2つの凹凸部67、67が軸線Lを中心として対称に配設されている。
【0038】
凹凸部67の凹条67A及び凸条67Bは、
図2に示すように、軸線L方向他方側部分が、軸線L方向他方側に向かうに従い版胴60の回転方向R前方側に向かうように軸線Lに対して傾斜しており、軸線L方向一方側部分が、軸線L方向一方側に向かうに従い版胴60の回転方向R前方側に向かうように軸線Lに対して傾斜している。これにより、軸線Lに沿った断面において凹条67Aと凸条67Bとが交互に配設される。この凹凸部67は、円筒面62にローレット加工等の凹凸加工を施すことによって形成されている。
【0039】
また、本実施形態では、凹条67Aと凸条67Bは、
図4に示すように、断面三角形状をなしている。
そして、凹条67Aの深さdは、スリーブ印刷版30のスリーブ支持体31の厚さt1に対して0≦d≦t1とされている。また、凸条67Bの高さhは、スリーブ印刷版30のスリーブ支持体31の厚さt1に対して0.1×t1≦h≦0.8×t1とされている。
【0040】
次に、この版胴60にスリーブ印刷版30を装着する方法について説明する。
まず、スリーブ印刷版30の他方側の端部を版胴60の外周面に嵌め込む。この状態で、エアポンプ等を版胴60の軸線L方向一方側を向く端面63に開口したエア供給路64に接続してエアを供給する。供給されたエアは、軸線Lに平行に延びるエア供給路64を介して円筒面62に開口するエア孔65から噴出される。噴出されたエアによってスリーブ印刷版30が拡径され、版胴60にスリーブ印刷版30が装着される。
【0041】
このとき、スリーブ印刷版30の軸線L方向他方側に設けられたガイド切欠部34が、版胴60の円筒面62の軸線L方向他方側に突設されたガイドピン66に係合され、スリーブ印刷版30と版胴60との周方向相対位置及び軸線L方向相対位置が決定される。
こうして決定されたスリーブ印刷版30と版胴60との周方向相対位置においては、スリーブ印刷版30の外周面に設けられた版本体33,33の間の部分、すなわち非画像部S2の内周面に、凹凸部67が位置するように位置決めされる。
【0042】
このようにしてスリーブ印刷版30が版胴60に装着された缶の印刷装置Aにおいては、各々のインカーユニット1のインク源2から各々異なった色のインクが、ダクティングロール3、中間ローラ4、ゴムローラ5を介して、版胴60の外周面(円筒面62)に配設された版本体33に付着させられる。これら各色のインクが、回転するブランケットホイール8上のブランケット9にパターンとして乗せられ、このパターンがマンドレル11に保持された缶胴20に接触しながら印刷される。
【0043】
このような構成とされた本実施形態である版胴60によれば、スリーブ印刷版30が取りつけられる円筒面62に、径方向内方に凹んだ凹条67Aと径方向外方に突出した凸条67Bとを有する凹凸部67が設けられているので、この凹凸部67がスリーブ印刷版30の内周面に食い込むことによって、スリーブ印刷版30が強固に固定される。これにより、スリーブ印刷版30の印刷中の位置ズレが防止され、印刷品質が向上する。
【0044】
また、版胴60からの回転トルクが、凹凸部67を介してスリーブ印刷版30に伝達されることから、ガイド切欠部34等に過度の負荷が作用することがなくなり、スリーブ印刷版30の早期劣化を抑制することができる。
さらに、凹凸部67の凹条67A及び凸条67Bの断面が三角形状とされているので、スリーブ印刷版30の内周面に凹凸部67を確実に食い込ませることができ、スリーブ印刷版30を強固に固定することが可能となる。
【0045】
また、円筒面62には、2つの凹凸部67、67が軸線Lを中心として対称に配設されているので、凹凸部67からの回転トルクがスリーブ印刷版30の周方向で均等に作用することになり、スリーブ印刷版30の変形を抑制することができ、印刷作業を安定して行うことができる。また、スリーブ印刷版30の印刷中の位置ズレをさらに確実に防止することができる。
そして、凹凸部67が、スリーブ印刷版30の非画像部S2の内周面に位置するように構成されているので、凹凸部67をスリーブ印刷版30の内周面に食い込ませたとしても、印刷に使用される画像部S1に配設された版本体33,33の画像パターンが変形せず、印刷作業を安定して行うことができる。
【0046】
また、凹凸部67の凹条67Aと凸条67Bとが、軸線Lに沿った断面において交互に配設されているので、スリーブ印刷版30が版胴60の軸線L方向に沿って移動することが防止され、スリーブ印刷版30と版胴60との軸線L方向位置が固定されることになる。
【0047】
凹凸部67の凹条67A及び凸条67Bは、軸線L方向他方側部分が、軸線L方向他方側に向かうに従い版胴60の回転方向R前方側に向かうように軸線Lに対して傾斜し、軸線L方向一方側部分が、軸線L方向一方側に向かうに従い版胴60の回転方向R前方側に向かうように軸線Lに対して傾斜しているので、スリーブ印刷版30が凹条67A及び凸条67Bの延在方向に沿って移動しようとしても、互いに異なる方向に力が作用することになり、スリーブ印刷版30の移動が抑制される。
【0048】
凹条67Aの深さdが、0≦d≦t1とされているので、スリーブ印刷版30を取り外すためにエア孔65からエアを噴出した場合に、エアの抜けが抑制され、スリーブ印刷版30を拡径して確実に取り外すことができる。
【0049】
さらに、凹凸部67の凸条67Bの高さhが、スリーブ印刷版30のスリーブ支持体31の厚さt1に対して、h≧0.1×t1とされているので、凸条67Bの高さhが確保され、スリーブ支持体31に凸条67Bを確実に食い込ませることができる。また、凸条67Bの高さhが、h≦0.8×t1とされているので、スリーブ印刷版30の変形が抑制される。
【0050】
また、本実施形態である缶の印刷装置Aによれば、スリーブ印刷版30と版胴60とが強固に固定されることになり、スリーブ印刷版30の印刷中の位置ズレが防止され、印刷作業を安定して行うことができる。
【0051】
次に、本発明の第二の
参考実施形態である版胴について、
図5を参照して説明する。
本実施形態である版胴160は、円筒状をなしており、内周孔161と、外周側を向く円筒面162と、軸線L方向一方側を向く端面163と、を備えている。
版胴160には、軸線L方向一方側を向く端面163に開口するとともに軸線Lに沿って延びるエア供給路164と、このエア供給路164に連通されるとともに円筒面162に開口するエア孔165とを備えている。
【0052】
そして、円筒面162には、その周方向の一部に、微小な凹凸を有する粗面部167が設けられている。
この粗面部167は、円筒面162の周方向に複数設けられており、これら複数の粗面部167が周方向に等間隔で配置されている。本実施形態では、2つの粗面部167,167が軸線Lを中心として対称に配設されている。
また、この粗面部167は、円筒面162に対してブラスト加工等の粗面化処理を行うことによって形成されている。ここで、粗面部167の十点平均粗さRzjisが、10μm以上に設定されている。
【0053】
このような構成とされた本実施形態である版胴160によれば、スリーブ印刷版30が取り付けられる円筒面162の周方向の一部に、微小な凹凸を有する粗面部167が形成されているので、この粗面部167の微小な凹凸がスリーブ印刷版30の内周面に食い込むことによって、スリーブ印刷版30の内周面と粗面部167との間で摩擦係数が大幅に上昇し、スリーブ印刷版30を強固に固定することができる。特に、粗面部167の十点平均粗さRzjisが10μm以上に設定されていることから、スリーブ印刷版30の内周面に粗面部167の微小な凹凸を確実に食い込ませることができる。
なお、ブラスト加工では、衝突させる研削粒の硬度や粒径を選択することにより、形成される粗面部の表面粗さを精度良く調整することができる。
【0054】
次に、本発明の第三の
参考実施形態である版胴について、
図6を参照して説明する。
この版胴560は、
図6に示すように、軸線L方向他方側(
図6において右側)に、径方向外方に向けて突出したフランジ部570が設けられている。このフランジ部570は、スリーブ印刷版30を取り付けた際に、スリーブ印刷版30の他方側の端面に当接する端面当接部材とされている。ここで、フランジ部570は、スリーブ印刷版30の版本体よりも径方向内方に後退している。
【0055】
そして、このフランジ部570の軸線L方向一方側を向く面、すなわち、スリーブ印刷版30の他方側の端面に接触する面には、軸線L方向他方側に後退した凹部と軸線L方向一方側に突出した凸部とからなる凹凸部571が形成されている。
また、この版胴560の円筒面562には、軸線L方向他方側の端部に、スリーブ印刷版30との周方向相対位置及び軸線L方向相対位置とを案内するガイドピン566が突設されている。
【0056】
このような構成とされた本実施形態である版胴560によれば、スリーブ印刷版30が取り付けられた際に、スリーブ印刷版30の他方側の端面と、フランジ部570の軸線L方向一方側を向く面と、が接触する。このとき、フランジ部570の凹凸部571がスリーブ印刷版30の他方側の端面に食い込むことによって、スリーブ印刷版30とフランジ部570との間で摩擦係数が大幅に上昇する。よって、スリーブ印刷版30を強固に固定されることになり、スリーブ印刷版30の印刷中の位置ズレが防止される。したがって、この版胴560によれば、高品質な印刷を行うことが可能となる。また、スリーブ印刷版30の使用寿命の延長を図ることができる。
また、フランジ部570が、スリーブ印刷版30の版本体よりも径方向内方に後退しているので、フランジ部570が印刷時に周辺部材と干渉することが抑制され、印刷作業を安定して行うことができる。
【0057】
次に、本発明の第四の実施形態である版胴について、
図7を参照して説明する。
この版胴660は、
図7に示すように、軸線L方向一方側(
図7において左側)から装着される端面当接部材670を備えている。
この端面当接部材670は、リング状をなしており、
図7及び
図8に示すように、版胴660の軸線L方向一方側の端面663に設けられたねじ穴663Aを用いて、固定ボルト675にて軸線L方向他方側に押圧するようにして固定される構造とされている。なお、固定ボルト675は、周方向に複数配設されている。
そして、端面当接部材670は、版胴660の円筒面662に装着されたスリーブ印刷版30の一方側の端面に当接される。ここで、端面当接部材670は、スリーブ印刷版30の版本体よりも径方向内方に後退している。
【0058】
端面当接部材670の軸線L方向他方側を向く面、すなわち、スリーブ印刷版30の一方側の端面に接触する面には、軸線L方向一方側に後退した凹部と軸線L方向他方側に突出した凸部とからなる凹凸部671が形成されている。
また、この版胴660の円筒面662には、軸線L方向他方側の端部に、スリーブ印刷版30との周方向相対位置及び軸線L方向相対位置とを案内するガイドピン666が突設されている。
【0059】
ここで、
図8に示すように、この端面当接部材670は、径方向外縁部が版胴660の円筒面662上に突出する構造とされており、この突出した部分がスリーブ印刷版30の一方側の端面に当接され、スリーブ印刷版30を軸線L方向他方側に向けて押圧している。
【0060】
このような構成とされた本実施形態である版胴660によれば、軸線L方向一方側から装着された端面当接部材670が、スリーブ印刷版30を軸線L方向他方側に向けて押圧するので、端面当接部材670とスリーブ印刷版30の一方側の面とが強く密着する。そして、この端面当接部材670に凹凸部671が形成されているので、凹凸部671がスリーブ印刷版30に食い込むことで、スリーブ印刷版30が強固に固定される。
また、端面当接部材670が、スリーブ印刷版30の版本体よりも径方向内方に後退しているので、端面当接部材670が印刷時に周辺部材と干渉することが抑制され、印刷作業を安定して行うことができる。
【0061】
スリーブ印刷版30が軸線L方向他方側に向けて押圧されることで、ガイド切欠部34とガイドピン666とが確実に係合され、スリーブ印刷版30と版胴660との周方向相対位置及び軸線L方向相対位置とが精度良く決定される。
端面当接部材670の軸線L方向位置を調整することで、スリーブ印刷版30への押圧力を調整でき、スリーブ印刷版30の過度の変形を防止することができる。
【0062】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、第一の
参考実施形態では、
図4に示すように、凹凸部67の凹条67A及び凸条67Bが断面三角形状をなすものとして説明したが、凹条67A及び凸条67Bの断面形状に特に限定はなく、断面円弧状や断面矩形状をなしていてもよい。
【0063】
第一の
参考実施形態では、凹凸部67の凹条67A及び凸条67Bが、軸線L方向他方側部分が軸線L方向他方側に向かうに従い版胴60の回転方向R前方側に向かうように軸線Lに対して傾斜し、軸線L方向一方側部分が軸線L方向一方側に向かうに従い版胴60の回転方向R前方側に向かうように軸線Lに対して傾斜するものとして説明したが、これに限定されることはない。
【0064】
例えば、
図9に示す
版胴260のように、凹凸部267の凹条267A及び凸条267Bが軸線Lに沿って延在していてもよい。
図10に示す
版胴360のように、軸線L方向に延在する凹条367A及び凸条367Bと周方向に延在する凹条367C及び凸条367Dとを有する凹凸部367を、円筒面362に形成してもよい。
図11に示す版胴460のように、凹条及び凸条の代わりに、凹部467A及び凸部467Bを形成して凹凸部467を構成してもよい。
【0065】
第三の
参考実施形態では、スリーブ印刷版の他方側の面に当接する端面当接部材としてフランジ部を設けたものとして説明したが、これに限定されることはない。
図12に示すように、周方向の一部から径方向外方に突出する端面当接部材770を設け、この端面当接部材770を周方向に複数配置してもよい。
【0066】
第三の
参考実施形態では、フランジ部570がスリーブ印刷版30の版本体よりも径方向内方に後退したものとして説明したが、これに限定されることはなく、フランジ部570がスリーブ印刷版30の版本体よりも径方向外方に突出していてもよい。
【0067】
第四の実施形態では、スリーブ印刷版の一方側の面に当接する端面当接部材としてリング状の部材を設けたものとして説明したが、これに限定されることはない。
図13に示すように、スリーブ印刷版30の周方向の一部を押圧する端面当接部材870を設け、この端面当接部材870を周方向に複数配置してもよい。
【0068】
第四の実施形態では、端面当接部材の径方向外縁部が円筒面上に突出するものとして説明したが、これに限定されることはない。
図14に示すように、スリーブ印刷版30の軸線L方向長さを長くし、スリーブ印刷版30の一方側の端面を円筒面962から突出させ、端面当接部材970でスリーブ印刷版30の一方側の端面を押圧する構成としてもよい。なお、スリーブ印刷版30の突出長さは、0.6mmから1mmの範囲内とすることが好ましい。
【0069】
第四の実施形態では、端面当接部材670がスリーブ印刷版30の版本体よりも径方向内方に後退したものとして説明したが、これに限定されることはなく、端面当接部材670がスリーブ印刷版30の版本体よりも径方向外方に突出していてもよい。
【0070】
周方向に2つの凹凸部又は粗面部が形成されたものとして説明したが、これに限定されることはなく、1又は3以上の凹凸部又は粗面部が形成されていてもよい。
非画像部の内周面に凹凸部又は粗面部が位置するものとして説明したが、画像部の画像パターン等の変形が抑制されるのであれば、画像部の内周面側に凹凸部又は粗面部が位置してもよい。
【0071】
スリーブ支持体31を有し、このスリーブ支持体31の外周面に版本体33が形成されたものとして説明したが、装着されるスリーブ印刷版は本実施形態に限定されることはない。
スリーブ印刷版の内周面に接触する円筒面及びスリーブ印刷版の端面に接触する端面当接部材の両方に、それぞれ滑り止め加工部を形成してもよい。
【実施例】
【0072】
本発明の有効性を確認するために行った比較実験について説明する。
外径が226mm、軸線L方向長さが187mmの版胴に、内径225.5mmのスリーブ印刷版を装着して回転させ、スリーブ印刷版が円筒面に沿って移動を開始する回転トルク値を測定した。
なお、スリーブ印刷版は、スリーブ支持体がFRPで構成され、版材が感光性樹脂で構成されており、スリーブ支持体の厚さt1が0.7mmとされ,版材の厚さt2が0.6mmとされたものを使用した。
【0073】
従来例は、円筒面に凹凸がなく、かつ、スリーブ印刷版の端面に当接する端面当接部材を有していない版胴を使用した。なお、この円筒面の十点平均粗さRzjisは5μmであった。
参考例1は、円筒面にブラスト加工によって粗面部を形成した版胴を使用した。この粗面部の十点平均粗さRzjisは20μmとした。この粗面部を、円筒面の周方向に2箇所形成し、一つの粗面部が円筒面の周方向の20%を占めるように形成した。
【0074】
参考例2は、円筒面に凹凸加工を行って、
図9に示すように、軸線Lに沿った凹条と凸条とを備えた凹凸部を、円筒面に形成した版胴を使用した。凹条及び凸条は、断面三角形状とし、凹条の深さdを0.2mm、凸条の高さhを0.5mmとした。この凹凸部を、円筒面の周方向に2箇所形成し、一つの凹凸部が円筒面の周方向の20%を占めるように形成した。
【0075】
参考例3は、円筒面に凹凸加工を行って、
図2に示すように、軸線Lに対して傾斜した凹条と凸条とを備えた凹凸部を、円筒面に形成した版胴を使用した。凹条及び凸条は、断面三角形状とし、凹条の深さdを0.2mm、凸条の高さhを0.5mmとした。この凹凸部を、円筒面の周方向に2箇所形成し、一つの凹凸部が円筒面の周方向の20%を占めるように形成した。
【0076】
参考例4は、図6に示すように、版胴の軸線L方向他方側にフランジ部を設け、このフランジ部に凹凸部を形成したものとした。凹凸部は、断面三角形状とし、凹部の深さdを0.2mm、凸部の高さhを0.5mmとした。
【0077】
参考例5は、図12に示すように、版胴の軸線L方向他方側に径方向外方に突出する端面当接部材を設けたものとした。3つの端面当接部材を周方向に等間隔で配置した。端面当接部材の周方向の大きさは、25mmとした。この端面当接部材には、
参考例4と同様の凹凸部を形成した。
【0078】
本発明例6は、
図7に示すように、版胴の軸線L方向一方側からスリーブ印刷版に当接するリング状の端面当接部材を備えたものとした。この端面当接部材に凹凸部を形成した。凹凸部は、断面三角形状とし、凹部の深さdを0.2mm、凸部の高さhを0.5mmとした。また、スリーブ印刷版を軸線L方向他方側に向けて0.8mm押圧するものとした。
【0079】
本発明例7は、
図13に示すように、版胴の軸線L方向一方側からスリーブ印刷版に当接する複数の端面当接部材を設けたものとした。3つの端面当接部材を周方向に等間隔で配置した。端面当接部材の周方向の大きさは、13mmとした。この端面当接部材には、本発明例6と同様の凹凸部を形成した。
【0080】
本発明例8は、
参考例2のように円筒面に凹凸部を形成し、かつ、本発明例6のように版胴の軸線L方向一方側からスリーブ印刷版に当接するリング状の端面当接部材を備えたものとした。
【0081】
参考例9は、
参考例3のように円筒面に凹凸部を形成し、かつ、
参考例4のように版胴の軸線L方向他方側にフランジ部を設け、このフランジ部に凹凸部を形成したものとした。
【0082】
【表1】
【0083】
表1によれば、
本発明例6―8は、従来例と比較して、スリーブ印刷版が回転移動を開始するトルクが高くなっており、スリーブ印刷版を強固に固定できることが確認された。よって、本発明によれば、スリーブ印刷版の印刷中の位置ズレを防止でき、印刷作業を安定して行うことが可能となる。