(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690746
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】クレーンブームを支えるための引張棒
(51)【国際特許分類】
B66C 23/82 20060101AFI20150305BHJP
【FI】
B66C23/82 Z
【請求項の数】4
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2011-549433(P2011-549433)
(86)(22)【出願日】2010年2月5日
(65)【公表番号】特表2012-517393(P2012-517393A)
(43)【公表日】2012年8月2日
(86)【国際出願番号】DE2010000180
(87)【国際公開番号】WO2010091678
(87)【国際公開日】20100819
【審査請求日】2013年2月1日
(31)【優先権主張番号】102009008809.1
(32)【優先日】2009年2月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507015963
【氏名又は名称】ヴァルレク・ドイッチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100162330
【弁理士】
【氏名又は名称】広瀬 幹規
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,トーマス
【審査官】
筑波 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−060167(JP,A)
【文献】
特開平11−180680(JP,A)
【文献】
特開昭62−180189(JP,A)
【文献】
実開平03−038899(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンブームを支えるための引張棒であって、金属管体と連結要素とを備え、該連結要素が、前記引張棒をボルトによって相互に関節結合するために、両方の末端で前記金属管体に接続されているものにおいて、
前記金属管体(2)と前記連結要素(3)が、一体的な管部分から成り、
前記金属管体(2)の長手方向端部には、壁肉厚部が設けられ、
前記壁肉厚部は、長手方向端に向かうに従い外径が大きくなる外径拡大部によって形成され、
前記連結要素(3)は、それぞれ、前記金属管体(2)の末端の壁肉厚部として形成されており、
前記壁肉厚部は、前記金属管体(2)の耐力計算用に考慮すべき前記連結要素(3)の呼称肉厚の横断面弱化がボルト結合領域内で防止され、かつ疲労強度を高めるために前記壁肉厚部から前記金属管体(2)への移行領域が段差なしの移行部(7)を有するように、設計されていることを特徴とする引張棒。
【請求項2】
前記壁肉厚部が、前記金属管体(2)の外径拡大部及び内径縮小部の両方によって形成されていることを特徴とする請求項1に記載の引張棒。
【請求項3】
前記壁肉厚部は、熱間据込みによって据え込んだ管端であることを特徴とする請求項2に記載の引張棒。
【請求項4】
前記壁肉厚部は、肉盛溶接によって厚肉にされた管端であることを特徴とする請求項1又は2に記載の引張棒。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載したクレーンブームを支えるための引張棒に関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンブームを備えたクレーンは、例えば特許文献1により公知である。ここでは、クレーンブームは、ロープ状要素又は互いに関節結合された個々の棒状要素によって支えられている。
【0003】
引張棒として実施される棒状要素に関して、末端が溶接された二股状の端部材を備えた管部材からこれらの棒状要素を連結要素として構成することが知られている。個々の引張棒は、次に、二股状の端部材がボルト結合によって所要長さで互いに関節連結される。
【0004】
例えばラチスブームクレーンとして実施されるこのようなクレーンは、持続的に運転する際に高い動荷重を受けており、この動荷重は、索具の引張棒にも作用する。
【0005】
溶接引張棒の欠点として、管と連結要素との間の溶接結合部が、高い切欠き感度を有し、それゆえに溶接継手領域内で疲労亀裂の感受性が高まる。したがって、このような引張棒の疲労強度が著しく低減し、これによって、早期故障が生じて高い費用をもたらすことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国実用新案第202008006167号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記諸欠点を防ぎ、かつ安価に製造することのできるクレーンブームを支えるための引張棒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、請求項1の前文と特徴部分とを合わせることよって解決される。有利な諸構成は、従属請求項に記載されている。
【0009】
本発明によれば、管体と連結要素が、一体的な管部分から成り、連結要素は、それぞれ、管体の末端の壁肉厚部として形成されている。ここで、管体の末端の壁肉厚部は、管体の耐力計算用に考慮すべき連結要素の呼称肉厚の横断面弱化がボルト結合領域内で防止され、かつ疲労強度を高めるために、各壁肉厚部から管体への移行領域が段差なしの移行部を含むように、設計されている。
【0010】
本発明によれば、壁肉厚部は、外径拡大及び内径縮小の両方、又はこれらの一方を実施することによって達成することができる。
【0011】
本発明に係る引張棒の利点は、一方で一体的に形成することによって製造が本質的に安価となり、他方で管横断面の完全耐力計算によってボルト結合領域内で引張棒の疲労強度が著しく改善されることにある。
【0012】
本発明によれば、有利な第1の変形例において、壁肉厚部は、管端の据込みによって、特に熱間据込みによって形成されている。
【0013】
有利には、据込み過程は、管から連結部材に至る据込み時に生成される移行部が極力段差なしにかつ切欠き効果の少ないように、実施される。このため、移行部は、極力大きな半径を有する。必要ならば、移行部は機械加工によって生成することもできる。
【0014】
このように形成された移行部は、厚肉にされていない管領域への円滑でかつ切欠き効果のない移行部をもたらすことになる。これにより有利なことに移行区域において低い応力集中係数が保証される。
【0015】
本発明の他の有利な1構成によれば、管端の壁肉厚部を肉盛溶接又は焼結によって生成し、引き続き、機械加工を施すこともできる。
【0016】
上記の変形例では、管体の壁肉厚部の生成が、圧延プロセスから完全に切り離される。そのことの利点として、元々上記利用目的用に設けられていない例えば軸受管等の管に、壁肉厚部を設けることができ、機械加工プロセスを追加的に行うことができる。
【0017】
さらに、製造技術上の観点からそれが有利であると考えられる場合、熱間圧延継目無管の製造時に、既に管端肉厚部を生成することができる。例えば、ロールの離反によって管端に拡大外径が生成され、拡大内径は、例えば相応に構成された内部工具によって生成される。
【0018】
本発明のその他の特徴、利点、詳細は略示した実施例の以下の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る引張棒の各末端を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
引張棒1が、管体2から成り、管体2の末端が、連結要素3を有している。本発明によれば、連結要素3は、管の壁肉厚部として形成されている。この例において壁肉厚部は、拡大外径を備えて実施されているが、しかし内径低減によって壁肉厚部を実現することもできる。
【0021】
本発明によれば、壁肉厚部から管体2に至る移行部7は、運転時に引張棒の極力高い疲労強度を達成するために段差なしにかつ切欠き効果の少ないように形成されている。
【0022】
連結要素3は、それぞれ、穴4を備えており、引張棒1は、相互にチェーンリンク状に関節結合することができる。このため、余剰長さを有するボルト5が、穴4に押し込まれており、連結要素3から両側に突出するボルト5の末端は、固定板6によって結合され、緩まないように固定されている。
【符号の説明】
【0023】
1 引張棒
2 管体
3 連結要素
4 穴
5 ボルト
6 固定板
7 移行部