(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690772
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】内燃エンジン
(51)【国際特許分類】
F02B 75/28 20060101AFI20150305BHJP
F02B 75/24 20060101ALI20150305BHJP
F02B 25/08 20060101ALI20150305BHJP
F02B 75/32 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
F02B75/28 E
F02B75/28 D
F02B75/24
F02B25/08
F02B75/32 A
【請求項の数】13
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-100895(P2012-100895)
(22)【出願日】2012年4月26日
(62)【分割の表示】特願2010-510866(P2010-510866)の分割
【原出願日】2008年5月28日
(65)【公開番号】特開2012-163109(P2012-163109A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2012年4月26日
(31)【優先権主張番号】0710852.5
(32)【優先日】2007年6月6日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】509335317
【氏名又は名称】コックス・パワートレイン・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】デイヴィッド・コックス
【審査官】
佐々木 淳
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭33−005358(JP,B1)
【文献】
米国特許第02213817(US,A)
【文献】
国際公開第2007/057660(WO,A1)
【文献】
特公昭18−002803(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 75/28
F02B 25/08
F02B 75/24
F02B 75/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの対向したシリンダを含み、
各々の該シリンダは2つの対向したピストンを収容し、1つ以上の吸気ポートと1つ以上の排気ポートと、前記ピストンを駆動するためのクランクシャフトを備え、
各々の前記シリンダは、前記クランクシャフトによって駆動されて吸気および排気ポートを開閉するスリーブバルブを具備し、かつ
前記スリーブバルブの幾何形態および質量は、前記ピストンの動作に起因した動的不釣合いを打ち消すように選択されていることを特徴とする2ストローク内燃エンジン。
【請求項2】
前記クランクシャフトは、ジャーナルを備え、前記クランクシャフトは前記ピストンから前記ジャーナルを駆動するためのものであることを特徴とする請求項1に記載の2ストローク内燃エンジン。
【請求項3】
前記クランクシャフトは前記シリンダの前記スリーブバルブを駆動するためのジャーナルを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載のエンジン。
【請求項4】
各々の前記シリンダは往復運動するように配置された内側および外側ピストンを備え、該シリンダの間に燃焼チャンバを形成し、
前記エンジンは、
前記内側ピストンに剛的に取り付けられた第1および第2のスコッチヨーク機構であって、該機構は前記内側ピストンを一致して推進可能にクランクシャフトの対応したジャーナルに連結している、第1および第2のスコッチヨークと、
前記外側ピストンに剛的に取り付けられた第3のスコッチヨーク機構であって、該機構は前記外側ピストンを推進可能に前記クランクシャフトの対応したジャーナルに連結している、第3のスコッチヨークと、
をさらに具備していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項5】
前記ピストンの幾何形態およびスコッチヨーク機構は、前記ピストンの作動の際に前記エンジンの動的不釣合いを最小化するように選択されていることを特徴とする請求項4に記載のエンジン。
【請求項6】
前記第3のスコッチヨーク機構は、前記内側ピストンの燃焼面内の穴を貫通したロッドを介して前記外側ピストンに剛的に取り付けられていることを特徴とする請求項4または5に記載のエンジン。
【請求項7】
各々の前記シリンダは、端部に1つ以上の前記排気ポートを備え且つ反対側に1つ以上の前記吸気ポートを備えたスリーブバルブを具備していることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項8】
双方の前記シリンダは前記クランクシャフトに最も近い内側端に前記排気ポートを備え、前記クランクシャフトから最も遠い外側端に前記吸気ポートを備えていることを特徴とする請求項7に記載のエンジン。
【請求項9】
双方の前記シリンダは前記クランクシャフトから最も遠い外側端に前記排気ポートを備え、前記クランクシャフトに最も近い内側端に前記吸気ポートを備えていることを特徴とする請求項7に記載のエンジン。
【請求項10】
前記各々のシリンダの吸気ポートに圧縮空気を作用させるための手段を含んでいることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項11】
2つの過給器が含まれており、各々の該過給器は関連した前記シリンダの前記排気ポートに連結されて、該排気ポートからのブローダウンガスを受容し、関連した前記シリンダの前記吸気ポートに圧縮空気を作用させることを特徴とする請求項10に記載のエンジン。
【請求項12】
各シリンダは、前記クランクシャフトから最も遠い前記シリンダの端部に燃料噴射手段を備え、前記燃料噴射手段は、前記外側ピストンを前記クランクシャフトに取り付ける管状部材内で往復可能に受容されており、前記燃料噴射手段は、前記管状部材を通り形成された径方向の小孔を介して前記シリンダに複数の径方向高圧燃料噴射が放出されるように構成されていることを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載のエンジン。
【請求項13】
前記シリンダ内の燃料混合気の圧縮は前記燃料混合気の点火の原因となることを特徴とする請求項12に記載のエンジン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内燃エンジンに関する。より具体的には、本発明は対向ピストンおよび対向シリンダ(POCO)形態を備えた内燃エンジンに関する。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンは第二次世界大戦の終結依頼非常にわずかな変更しか受けておらず、ほぼ世界中において今日使用されているピストンエンジンは、第2次世界大戦中に行われた発展よりも第2次世界大戦の勃発時における設計慣習のほうがより一般的であるということが論証できる。
【0003】
戦争の終結に伴って、要求は、安価且つ容易に生産できるもの、特に進化した機械加工技術または非標準的な材料を必要としないものとなった。当時は、内燃エンジンは別の技術が支配するまでの一時凌ぎの技術に過ぎず、この仮説は10年ごとに繰り返し唱えられてきた。
【0004】
ロータリーエンジンは軍事的開発後の多数のもののうちの1つである。ロータリーエンジンの基本的な幾何形状は蒸気時代から現存しているが、その動作は生存に適した解決方法を提案した点にまで持ち込んだフェリックス・ヴァンケルによって成された。従来型の内燃エンジンと比較して、ヴァンケルエンジンは与えられた容量よりもはるかに小さく、無振動運転に近いという追加的な利点を提供した。10年の終わりまでに、ほとんどすべての大手エンジン製作者はWankel Instituteからライセンスを購入し、ロータリーエンジンを生産したが、問題がすぐに明確になった。第1に、この問題は最終的には解消されたが、ローターチップの脆弱なシールは多くの製品の生産後のみにリコールされたが、保証要求は先進的な生産者を倒産寸前に追い込んだ。第2は基本設計における先天的なものである。ヴァンケルエンジン内の回転ローターとチャンバ壁との形状は、燃焼容積が燃焼する間際のローターとチャンバとの間に使い残されることを強要する。このことは大きい領域/容積比(area/volume ratio)および非効率的な形状によって不完全燃焼を引き起こす。少ない燃費は、世界が1974年の第1次オイルショックになるまでともに暮らしえることを教わったが、ヴァンケルエンジンはマツダを除いて全ての大手の生産者からあきらめられた。少ない燃費と同じくらい今日重要な排ガスを伴って、ヴァンケルの非効率的なエンジンは、ユーザが小型且つスムーズな特性と引き換えにこれらの欠陥を容認することが可能なアプリケーションを除いては、将来任意の重要な役割を担うとは考えられない。
【0005】
それらはひどい目にあい、生産者は従来型のエンジンへと回帰し、将来の動力源として受け入れられるものの進化を待っていた。それは燃料電池である。進化したバッテリの開発も継続中であるが、このとき第1の商用電気自動車が現実的に予期され得るものであったことは皮肉なことであり、内燃エンジンが長年にわたって高効率な自動車専用のまたはハイブリッド伝動機構としての重要な未来を有していること実感が育っている。
【0006】
ある観点では、商業的使用のためのディーゼルエンジンの設計者は対向ピストン2ストロークエンジンにより多くの利点を備え、そのエンジンは1930年代にJunkers Jumoとして、ならびに1950年代および60年代にNapier DelticおよびCommer TS3としてドイツで開発された。
【0007】
近代ピストンエンジンの要求を構築する場合、問題はどのような特徴を備えるべきであるかということである。
【0008】
生産の効率化および現実的な使用の理由のために、エンジンは最小限の可動部品を備えて極力単純のものであるべきである。極力小さく、容易に適応されて自動車の駆動、パッケージの改良、歩行者安全性の強化、より容易なハイブリッド伝動機構への組み込みが行われる。
【0009】
エンジンは軽量であり、最小エネルギは自身の質量を移動することに使用される一方で、固定された自動車の総重量以内でより大きな最大積載量を可能とする。
【0010】
同世代のエンジンよりもより良好な燃費で使用され、それはより良好な燃焼、少ない内部摩擦および往復する塊が減少されていることを意味する。
【0011】
可能であれば、無振動で自動車乗員の快適性を改善し、車室内のストレスを減少させる。
【0012】
理論上は、2ストロークエンジンはそのサイズに関してより大きな出力を達成することにおいて利点があり、それは各々のシリンダが各回転で出力を生み出すためである。しかしながら、この潜在能力は、過度の吸気および排気工程が重なり合うことによって障害が起き、実際のところ対向ピストン2ストロークエンジンは最も効率的な燃焼を達成するためにもともと最適化された非対称性を備えていない。燃費の利点は燃料噴射システムとエンジン管理手段とから得られ、この多くはより清浄なエンジンが現れることで克服され得る。
【0013】
対向シリンダを備え、各々のシリンダが共通の中央クランクシャフトに連結された一組の対向ピストンを備えた2ストローク内燃エンジンは、Hofbauerの特許文献1に開示されている。クランクシャフトの偏心器の角度位置の独立性は吸気および排気ポートの非対称タイミングを可能にし、これによって吸気および排気ポートの重なりを最適化している。初期的な動的不均衡に起因したその影響は、移動する部品の幾何形状および質量を複雑な方式において制御することによって最小化される。
【0014】
従来型エンジンの生成された排ガスおよび全体的な効率の悪さに別に寄与しているものは、連結ロッド/クランクシャフト形状に起因したピストン側の推進力によってもたらされ、一方でビッグエンドおよび主ベアリングに向かって直接的に作用する燃焼力による摩擦損失が顕著である。
【0015】
これらの分野全ての改善は有益なものとなり得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第6,170,443号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は全体的に2シリンダ2ストローク内燃エンジンに関する。
【0018】
本発明の目的は、現行の4シリンダ4ストロークエンジンの動作特性よりも優れた動作特性を備えた2シリンダ2ストローク内燃エンジンを供給することであるが、効率の改善、組み付け性改良のために高さプロファイルの低減および重心の低下、進化した過給器および燃料噴射方法への適合性、生産コスト低減のための動的釣り合いおよび機械的な簡素化が行われている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって、一般的局面において、本発明は、クランクシャフトと2つの同軸対向シリンダとを具備した2ストローク内燃エンジンを提供している。
【0020】
各々のシリンダは対向した内側および外側ピストンを好適に含み、それらは往復運動可能に配置されて、ピストンの間に内燃チャンバを形成している。外側ピストンに剛的に連結されたスコッチヨーク機構は、外側ピストンをクランクシャフトに推進可能に連結するように設けられている。好適に、2つの並列のスコッチヨーク機構はシリンダの中心線について均等に配置され、それらの間に当該外側ピストンの単一のスコッチヨークをスライド可能に受容するための十分な空間を形成するように設けられ、内側ピストンをクランクシャフトに駆動可能に連結するように剛的に連結されている。
【0021】
いくつかの実施形態において、穴には各々の内側ピストンのクラウンにおいてシール手段が設けられ、外側ピストンをスコッチヨーク機構に接続しているロッドの動作のための空間を提供している。したがって、外側ピストンのスコッチヨーク機構は内側ピストンの2つのスコッチヨーク機構内に入れ子になっている。
【0022】
内側ピストンと外側ピストンとの組み立てを容易にするために、本発明の好適な特徴は、内側ピストンを、シリンダ軸を通り且つクランクシャフト軸に直交した平面に沿って分割している。内側ピストンの半割の2つは、したがって、締結部材と共に際組み付けされる。代替的な組み立て手段が同一の効果を達成するために採用されてもよいということが認識される。
【0023】
さらに、本発明によれば、クランクシャフトは個々のスコッチヨーク機構からの駆動力を受容するために、分離した少なくとも3つのジャーナルを好適に備えている。各々のシリンダは排気ポートと個々の端部近傍に形成された空気流入ポートとを備えている。
【0024】
本発明の好適な特徴は、燃料噴射手段が設けられ、その手段は径方向に配置された複数のノズルを介して燃料が供給され、ノズルの配置軸はシリンダと同軸である。噴射工程の際、外側ピストンの管状ロッド内に径方向に配置された同数のポートは噴射流に位置合わせして且つ包み込み、これによって燃焼チャンバ内への燃料の流入を可能にしている。
【0025】
本発明の重要で好適な特徴は、内側および外側剛体ピストン/スコッチヨーク/ピストンアセンブリ(APIおよびAPO)の質量がエンジンの初期的な動的不釣合いを打ち消すか、または最小化するように選択されていることである。スコッチヨーク機構を利用したエンジンはそれらのピストンを純粋な単振動で駆動し、それによって、2次的なまたはより高いオーダーの調和運動要素を備えていない。より具体的には、APIの質量が好適に選択され、クランクシャフトジャーナルを駆動するスローによって増幅された質量の積はクランクシャフトジャーナルを駆動するスローによって増幅されたAPOの質量の積に等しい。この形態は、非対称クランクシャフトジャーナルが導入されない限り動的不釣合いを打ち消す。
【0026】
本発明のさらに好適な特徴によれば、APIおよびAPOを駆動しているクランクシャフトのジャーナルは、径方向に配置される代わりに非対称に配置され、関係したシリンダの排気ポートは空気流入ポートが開く前に開き、空気流入ポートが閉じる前に閉じる。この非対称ポートタイミングは、排ガスの掃気を改善し、エンジン効率を増幅するための過給器の使用を可能にしている。
【0027】
一旦、非対称ピストン動作がピストン対向エンジンに導入されると、上死点(TDC)および下死点(BDC)の意味を見直す必要がある。それらは非常に多くのエンジン設計においてシリンダ内に含まれた最小および最大容積と共に同時に発生する。ピストン対向エンジンの場合、そのピストンは(180+α)°の位相の不一致であり、ここでαは位相不一致角(OOP)として知られている。最小内容積の位置は内死点(IDC)として知られ、最大内容積の位置は外死点(ODC)として知られている。
【0028】
本発明のさらに重要で好適な特徴は2つのスリーブバルブを使用することであり、そのバルブは吸気および排気ポートを含み、その内部にピストンが往復運動するシリンダを形成している。クランクシャフトの一端において偏心器、球面ジャーナルは1つのスリーブバルブを駆動し、一方でクランクシャフトの他端において類似した同軸のジャーナルは第2のスリーブバルブを駆動していることは、本発明の好適な特徴である。いくつかの実施形態において、偏心ジャーナルの最大偏心量はAPOのクランクシャフトジャーナルから(90+α/2)°だけ遅れている。
【0029】
上述のような運動の処置がOOP角度αを有する場合、初期の不釣合い力はAPOジャーナル位置から(90+α/2)°だけ遅れて発生し、
強度はAPIまたはAPOの質量/クランクス
ローの積
を掛けた2sin(α/2)であることは、代数的三角法によって示され得る。完全な動的釣り合いを達成するために、必要なこと全ては、
2つのスリーブバルブの質量の総和に偏心器ジャーナルのスローを掛けたものがこれまでに述べた不釣合い力の強度と等しくなるように処置することである。したがって、結果的にエンジンは根本的に完全な動的バランスとなる。スリーブバルブの動作の回転
成分は対向
し、互いに完全に打ち消しあっている。また、対向シリンダは同軸であるので、揺動的な連結は発生せず、従来の水平対向交互配置のシリンダに比べて空間が節約される。
【0030】
本発明のこの特徴に関する別の重要な理由は、排気ピストンの動作から(90+α/2)°だけ遅れたスリーブバルブの動作を備えた効果は、3つ以上の因子によってポートタイミングの非対称性を増幅することであり、そのことはピストンの非対称性が最小化することを可能にし、それに伴ってエンジン容積の損失を最小化し、且つ内部不釣合い部品を工業デザインでは珍しい完全な円とする。
【0031】
さらに望まれる効果は、本明細書中にも十分に記載されているが、偏心によってスリーブバルブに伝えられる円運動であり、決して0にはならない、ピストンリングとシリンダとの相対速度によるピストン摩擦とシリンダ摩耗とを顕著に減少させている。それによって流体力学的潤滑は最大化される。それと同時に、潤滑油はより均等に広がり、潤滑の機能停止の機械を減少させることでより高い信頼性を導き、且つ熱伝達を改善してホットスポットおよび温度勾配の減少を導いている。
【0032】
本発明によるエンジンからの最大出力効率は加圧された空気を各々のシリンダの吸気ポートに送り込むことによって達成される。したがって、本発明による非対称タイミングを備えたエンジンの好適な形式は2つの過給器を含み、各々の過給器は関連したシリンダの排気ポートに連結されてシリンダからのブローダウンガスを受け、関連したシリンダの吸気ポートに加圧された空気を送り込んでいる。別個の過給器を各々の排気ポートリング近傍に連結してガスダイナミックパルスからの余分なエネルギを使用することによってより高い効率とすることは、任意のピストンエンジンに本来備わっている。
【図面の簡単な説明】
【0033】
本発明の実施形態が、添付図を参照すると共に例を利用してここに記載される。
【
図1】本発明の実施形態によるエンジン構成の断面を示しており、右シリンダおよび左シリンダの軸を通り且つクランクシャフトの軸に直交した垂直面上の断面を示した図である。
【
図2】本発明の実施形態によるエンジン構成の断面を示しており、左シリンダの軸、右シリンダの軸およびクランクシャフト軸を通る水平面上の断面を示した図である。
【
図3a】クランクシャフトの完全な1回転にわたる
図1および2に示したエンジン構成の構成部品の相対位置を示しており、クランクシャフトの回転開始位置であって、右シリンダの吸気ポート(IN)および排気ポート(EX)が開いた状態を示した図である。
【
図3b】クランクシャフトの完全な1回転にわたる
図1および2に示したエンジン構成の構成部品の相対位置を示しており、クランクシャフトが反時計回りに30°回転した後の全ての部品の相対位置を示した図である。
【
図3c】クランクシャフトの完全な1回転にわたる
図1および2に示したエンジン構成の構成部品の相対位置を示しており、クランクシャフトが反時計回りに60°回転した後の全ての部品の相対位置を示した図である。
【
図3d】クランクシャフトの完全な1回転にわたる
図1および2に示したエンジン構成の構成部品の相対位置を示しており、クランクシャフトが反時計回りに90°回転した後の全ての部品の相対位置を示した図である。
【
図3e】クランクシャフトの完全な1回転にわたる
図1および2に示したエンジン構成の構成部品の相対位置を示しており、クランクシャフトが反時計回りに120°回転した後の全ての部品の相対位置を示した図である。
【
図3f】クランクシャフトの完全な1回転にわたる
図1および2に示したエンジン構成の構成部品の相対位置を示しており、クランクシャフトが反時計回りに150°回転した後の全ての部品の相対位置を示した図である。
【
図3g】クランクシャフトの完全な1回転にわたる
図1および2に示したエンジン構成の構成部品の相対位置を示しており、クランクシャフトが反時計回りに180°回転した後の全ての部品の相対位置を示した図である。
【
図3h】クランクシャフトの完全な1回転にわたる
図1および2に示したエンジン構成の構成部品の相対位置を示しており、クランクシャフトが反時計回りに210°回転した後の全ての部品の相対位置を示した図である。
【
図3i】クランクシャフトの完全な1回転にわたる
図1および2に示したエンジン構成の構成部品の相対位置を示しており、クランクシャフトが反時計回りに240°回転した後の全ての部品の相対位置を示した図である。
【
図3j】クランクシャフトの完全な1回転にわたる
図1および2に示したエンジン構成の構成部品の相対位置を示しており、クランクシャフトが反時計回りに270°回転した後の全ての部品の相対位置を示した図である。
【
図3k】クランクシャフトの完全な1回転にわたる
図1および2に示したエンジン構成の構成部品の相対位置を示しており、クランクシャフトが反時計回りに300°回転した後の全ての部品の相対位置を示した図である。
【
図3l】クランクシャフトの完全な1回転にわたる
図1および2に示したエンジン構成の構成部品の相対位置を示しており、クランクシャフトが反時計回りに330°回転した後の全ての部品の相対位置を示した図である。
【
図3m】クランクシャフトの完全な1回転にわたる
図1および2に示したエンジン構成の構成部品の相対位置を示しており、クランクシャフトが反時計回りに360°回転した後の全ての部品の相対位置を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下に好適な実施形態について記載されているが、多くのバリエーションが本発明の範囲内で可能である。
【0035】
図1および2に示されたように、本発明のエンジン形態は、右シリンダ7、左シリンダ8およびそれらのシリンダの間に配置された単一の中央クランクシャフト112を具備している(明確化のために、1と2とを隔離するためのエンジンの多くの支持部材が
図1および2から省略されている)。
右シリンダ7は個々に燃焼面23および25を有する外側ピストン3(P
R0)および内側ピストン5(P
R1)を備えており、それらの2つのピストンはその間に燃焼チャンバ27を形成している。左シリンダ8はそれと同様に、個々に燃焼面24および26を有する外側ピストン4(P
L0)および内側ピストン6(P
R1)を備えており、燃焼チャンバ28を形成している。2つの外側ピストン3および4はスコッチヨーク(scotch yoke)101によって互いに剛的に接続されている。2つの上内側半割ピストン5aおよび6aはスコッチヨーク103によって共に剛的に接続され、2つの下内側ピストン5bおよび6bはスコッチヨーク104によって共に剛的に接続されている。好適な実施形態において、アセンブリを組み立て可能にするために、2つの内側ピストン/スコッチヨーク/シリンダ軸を通って且つクランクシャフト軸に直交した割れ目を有する半割ピストンは、結果的に共に剛的に固定され、それと同時にピストンリングシールのグループ17および18を捕捉している。
【0036】
外側ピストン3/スコッチヨーク101/ピストン4のシステムは、5つの偏心器のうちの中間の偏心器115に歯止め102を介して取り付けられている。内側ピストン/スコッチヨーク/ピストンのシステムは、5つの偏心器のうちの一組の内側の偏心器114および116に歯止め105および106を介して取り付けられている。4つのピストン3,4,5(a+b),6(a+b)は個々に複数のピストンリング19,20,21および22と共に示され、燃焼面の後方に配置されている。エンジンの他の実施形態において、追加のピストンリングがさらにピストン本体または合致したシリンダ壁に沿って使用されて、ポートからクランクケース118へのガスの抜けを最小化していてもよい。好適な実施形態において、追加のピストンリングは外側ゾーン31および32において使用されている。
【0037】
シリンダはスリーブバルブ7および8ならびにそれらの個々のベアリングキャップ110および109から成り、それらは個々にクランクシャフトから偏心器113および117によって駆動されている。スリーブバルブ7および8は各々排気ポート35,34および吸気ポート33(左手スリーブバルブ8の吸気ポートは図示略)を備えている。右手シリンダのスリーブバルブ7において、外側ピストン3は排気ポート33を開閉し、内側ピストン5(a+b)は吸気ポート35を開閉する。複数の径方向燃料噴射ポート37はピストンの管状アタッチメントを貫通し、噴射機9の径方向燃料噴射ノズル39からの燃料通路を提供しており、ポート37が噴射段階の際にノズル39を位置合わせして包む場合にノズル39が燃焼チャンバ27に接近する。それと同様に、左手のスリーブバルブ8において、外側ピストン4は排気ポート34を開閉し、内側ピストン6(a+b)は吸気ポート36を開閉する。複数の径方向燃料噴射ポート38はピストンの管状アタッチメントを貫通し、噴射機10の径方向燃料噴射ノズル40からの燃料通路を提供しており、ポート38が噴射段階の際にノズル40を位置合わせして包む場合にのみノズル40が燃焼チャンバ28に接近する(
図1および2では左シリンダにおいて起こっている)。
【0038】
5つのクランクシャフト偏心器113,114,115,116および117の各々は、クランクシャフト回転軸111に対して独自に配置されている。図示された実施形態において、外側排気ピストン115に関する偏心器ならびに内側吸気ピストン114および115に関する同軸の偏心器は、クランクシャフト回転軸111から同じ径方向の距離である。好適な実施形態において、スコッチヨーク101は内側吸気ピストン5(a+b)および6(a+b)内に代替的に受容され、偏心器115の半径はこれによって制限されている。しかしながら、同軸の偏心器114および116にはそれに等しい制限は存在せず、したがって、これらの偏心器の半径を伸ばすことが可能であり、これは内側吸気ピストンのストロークの増加の効果をもたらす。以前の対向ピストン2ストロークエンジンは、文献によれば、クランクシャフトの回転で約110°の吸気期間および約130°の排気期間を有している。得ることのできる最大のポート面積は関連するピストンのストロークと共に線形に変化するので、余分な吸気ピストンストロークは吸気及び排気ポートの面積の均等性を復元するだろう。そのサイズおよび負荷にしたがって、これが与えられたエンジンの任意の実施形態に関して所望されているかどうかということは、個別的な場合に基づいたさらなるコンピュータ解析および最適化試験に依存するだろう。
【0039】
外側排気ピストンに関する偏心器115は2つのシリンダ内で排気ポートを開閉し、好適な実施形態では角度的に4°進んでおり、一方で(対称のポートタイミングを備えたエンジンの実施形態において理論的に180°対向したピストンに関しては)内側吸気ピストンに関する同軸の偏心器114および116は2つのシリンダ内で吸気ポートを開閉し、角度的に4°遅れている。同軸の偏心器113および117はシリンダスリーブバルブ動作を駆動し、偏心器115の位置に対して角度的に(90+4)°遅れている(クランクシャフトの回転方向は矢印で図示されているように反時計回りであることを記しておく)。
【0040】
偏心器の独自の位置は、エンジンのバランスと、スーパーチャージおよび廃棄のブローダウンからのエネルギの回復に対するエンジンの操作との双方に寄与しており、それらは以下に議論されている。エンジンバランスはクランクシャフトのすべての無回転力が相殺することに帰着し、したがって、いかにも議論されているように、クランクシャフトのデザインを簡素化することを可能にする。対向ピストンの使用はシリンダあたりのより大きな掃気容積を達成し、その一方でクランクシャフトスロー(crankshaft throws)を減少し、これによってエンジン高さを低減している。入れ子になったスコッチヨークの形態は非常に短く小型のエンジンとすることを可能にしている一方で、ピストン/シリンダ界面を介した反力による摩擦損失を大きく低減している。
【0041】
比較可能な能力を備えた、主流の技術による製品である直列4シリンダの4ストロークエンジンと比較して、本発明のエンジンは組み付け適正、摩擦損失の低減および振動除去において大幅な改良を与えている。対向ピストン対向シリンダエンジンの高さは、クランクシャフトの最大スイープと得ることのできる最小クラッチ直径とによって、およびフライホイールの要求によって初期的に決定される。対向ピストンデザインを伴って、クランクシャフトスローは同じシリンダ変位の約半分に切られてもよい。したがって、直列4シリンダ4ストロークエンジンの高さ450mmと比較して、高さは約200mmに低減することが可能である。図示されたように、口径46.6mmを有する本発明を具現化したエンジンは158m3のスイープ容積をもたらす。単一の中央クランクシャフトと入れ子になったスコッチヨークとの形態は独自に小型エンジンとすることを可能にし、約720mmの幅を持った試作デザインにおいては、自動車、商用車および軽飛行機等に組み込むことが可能な幅である。152×83.5mmの口径およびストロークを伴って、結果的に5.5リッターのスイープ容積となっている。スーパーチャージャとアクセサリーとを備えて約130kgの質量が期待される。より小さい型が大部分の大量生産アプリケーションのために必要とされるだろう。
【0042】
ピストン/シリンダ界面を介した反力による摩擦は本発明によって大幅に減少した。最先端技術による直列4シリンダ4ストロークエンジンはクランクシャフトスローを備え、約0.25の連結ロッド中心比(centres ratio)λである。スコッチヨーク機構のために、無限値λが達成され、ピすべてのストンの完全な単振動に帰結する。
【0043】
本発明の2シリンダエンジンは、従来の直列4シリンダ4ストロークエンジンと全部で同じ数のピストンを備えているが、比較可能な出力に関しては、各々のピストンがより短い距離で往復するので、実際のピストン速度は大幅に低減されている。
【0044】
外側ピストンからの引張が内側ピストンからの押圧に対向して作用するので、対向ピストンの形態は主軸受けの無回転燃焼力を大幅に相殺している。これらの大きい力はクランクシャフトに初期的に二面剪断の応力を負荷し、クランクシャフトにほぼ純粋なトルクを負わせる。したがって、主軸受けの数は2つに低減可能であり、クランクシャフトとエンジン支持構造とは対応してより軽量にされることが可能である。
【0045】
本発明のエンジンは、以下に議論するように、排気及び吸気ポートタイミングにおいて大幅なひずみを伴っていても全体的に動力学的にバランスがとられている。このことは2つのピストン/スコッチヨーク/ピストンシステムの質量/偏心器スロー(mass/eccentric throw)の積の不均等な要素を確実に是正するスリーブバルブの質量/偏心スローの積の使用によって達成される。さらに、スリーブバルブの動作は排気および吸気ポートタイミングを改良して、ポートタイミングのひずみがクランクシャフト偏心器のひずみの少なくとも3倍とされることが可能である。
【0046】
本発明のエンジン形態は過給に十分に適している。
図1及び2に図示された好適な実施形態において、エンジンの各々のシリンダは別個の過給器29および30を備えている。2つのシリンダのみを伴って、過給器は、パルスターボチャージとしてそのような技術をより現実的にするために各々のシリンダに経済的に専用であってもよい。過給器は好適に電気モータ補助ターボチャージャであり。改良された掃気作用の働きがあり、低エンジン速度におけるエンジン特性を改良する一方で、ターボラグを回避し且つエンジンの排気(構成(compounding))からのエネルギ回収を行う。そのことは常温始動のために吸入空気を予熱することと同様に以下に記載されている。
【0047】
エンジン動作
図3はクランクシャフトの一回転にわたった本発明のエンジンの動作を示している。
図3(a)〜3(m)は30°回転ごとのピストン位置、スリーブバルブならびに関連した排気及び吸気ポート位置を示している(
図3のクランクシャフトの回転は矢印で示されたように反時計回りであることを記しておく)。クランクシャフト角度φは図番の右側に示されており、ADC(死点後)と付されている。それは、左右のピストンが同時にそれぞれIDC(内死点)およびODC(外死点)となるからである。吸気ポートINおよび排気ポートEXにおける矢印は、ポートが開いていることを示している。
【0048】
ADC0°における
図3(a)はクランクシャフト位置0°(左シリンダにおいてIDCとして独自に定義されている)におけるエンジンを示している。この位置において、左外側ピストンP
L0および左内側ピストンP
L1はそれらが最も接近した位置である。クランクシャフトの回転のこの角度近傍において、直接噴射型のエンジンでは、燃料供給は左シリンダ内に噴射され、燃焼が開始する。この位置において、左シリンダの排気及び吸気ポート(EXおよびIN)はそれぞれP
L0およびP
L1によって完全に閉じされている。排気ポートを作動するピストンのタイミングは4°進み、吸気ポートを作動するピストンのタイミングは4°遅れているので、P
L0がちょうど方向を変えたときに、双方のピストンP
L0とP
L1とは左側に向かう僅かな速度を有する。右シリンダにおいて、右外側シリンダP
R0と右内側シリンダP
R1とは最も遠く離れた位置にある。右シリンダの排気ポートEXと吸気ポートINとの双方は矢印で示されたように開いており、先の燃焼サイクルによる排ガスは一方向に流れて取り除かれる(ループ流れよりもむしろ一方向流れ)。左シリンダ内のピストンのように、P
R0およびP
R1の双方は左側に向かう僅かな速度を有していなければならず、それは、P
R0がちょうど方向を変えたときに、P
R0とP
R1とは入れ子のヨーク機構によって剛体的に連結されているためである。双方のスリーブバルブは一体になって動き、ピストンP
L0とP
R0との作動遅れは(90+4)°であり、ピストンP
L1とP
R1との作動進みは(90+4)°であり、双方のスリーブバルブは右に向かう最大速度を伴って中間ストロークに位置し、これによってポートタイミングに影響するような変化の原因とならない。
【0049】
ADC30°の
図3(b)において、左シリンダのP
L0とP
L1とは爆発工程の開始時において別々に動いており、P
L1は移動の方向を変える。P
L0はP
L1よりも8°先行しているので、P
L0はP
L1よりも高速で移動している。右シリンダにおいて、ポートEXおよびINの双方のセットは矢印で示されたように開いたままであるが、ポートEXは閉じ始めている。双方のスリーブバルブはピストン中間ストローク位置の右への偏心器スロー(eccentrics' throw)の50%であって、右への移動途中であり、これによって右シリンダの吸気ポートINの開きを増加させ、排気ポートEXの開きを減少させる。
【0050】
ADC60°の
図3(c)において、左シリンダは爆発工程が継続しており、2つのピストンP
L0とP
L1とはより均等に近いが対向した速度となっている。右シリンダにおいて、外側ピストンP
R0は排気ポートEXを閉じ、一方で吸気ポートINは部分的に開いたままで、矢印で示された過吸気を受け入れている。双方のスリーブバルブはピストン中間ストローク位置の右への偏心器スローの87%であって、右への移動途中であり、これによって右シリンダにおける吸気ポートINの開きを増加させ、排気ポートEXの閉鎖を加速している。
【0051】
ADC90°の
図3(d)において、左シリンダは爆発工程が継続しており、一方で右シリンダにおいては、P
R1は吸気ポートINを閉じ、2つのピストンP
R0とP
R1とは互いに向かって移動し、それらの間の空気を圧縮する。双方のスリーブバルブはピストン中間ストローク位置の右への偏心器スローの100%であり、静止しており、右シリンダにおける吸気ポートの閉鎖を遅らせている。
【0052】
ADC120°の
図3(e)において、左シリンダのピストンP
L0は矢印で示したように排気ポートEXを開き、一方で吸気ポートは閉じたままである。この“ブローダウン”状態において、燃焼チャンバから膨張するガスの運動エネルギは、次の充填燃料の圧縮および/または電気エネルギの発生のためのターボチャージャ(“パルス”ターボチャージ)によって外部から回収され得る。発生した電気エネルギはエンジンのクランクシャフト(構成(compounding))に貯蔵および/または供給されてもよい。双方のスリーブバルブはピストン中間ストローク位置の右への偏心器スローの87%であって、左へ移動しており、これによって左シリンダにおける排気ポートEXの開きを増加させ、吸気ポートINの開きを遅らせている。
【0053】
ADC150°の
図3(f)において、左シリンダのピストンP
L0は吸気ポートINを開き、シリンダは矢印で図示されたように一方向流れで清掃される。右シリンダは圧縮ストロークの終端に近付き、“圧搾”段階が開始する。これはピストンP
R0およびP
R1の外側面、環状面および対向面がそれらの間から空気を放出し始める位置であり、それは破線の矢印によって図示されている。双方のスリーブバルブはピストン中間ストローク位置の右への偏心器スローの50%であって、左への移動途中であり、これによって左シリンダにおける排気ポートEXの開きを増加させ、吸気ポートINの開きを減少させる。
【0054】
ADC180°の
図3(g)において、左シリンダのピストンP
L0およびP
L1はEXおよびINの双方のポートを矢印で示したように開いたままにし、一方向流れの掃気を継続する。外側ピストンP
L0は移動の方向を変える。右シリンダがIDC位置に到達し、そこはピストンP
R0およびP
R1はそれらの最も近接した位置であり、P
R0はちょうど方向を変える。“圧搾”段階は破線の矢印で示されたように継続しており、“スモークリング(smoke ring)”効果を増大させて、部分的に正接の吸気ポートINに起因したすでに存在しているシリンダ軸周りの渦に併発させる。これらの構成ガスの動作は、燃焼チャンバが円錐曲線回転面に最も近く、最小の容積である場合に、IDCにおいて最も強烈になる。この位置において、複数の径方向スプレーが、点の領域で示されたように、中央燃料噴射機から放射され、得られる空気のほとんどすべてに到達し、構成(compounding)を備えた効果的な燃焼導入がそのクラスで最高の特別な燃費をもたらす。双方のスリーブバルブは左への最大速度となって中間ストロークに位置し、これによって変化の影響がポートタイミングに与えられない。
【0055】
ADC210°の
図3(h)において、左シリンダでは、ポートEXおよびINのセットの双方は矢印で示されたように開いたままであるが、ポートEXは閉じ始めている。右シリンダのピストンP
R0およびP
R1は爆発工程の開始時において別々に動いており、P
R1は移動の方向を変える。P
R0はP
R1よりも8°先行しているので、P
R0はP
R1よりも高速で移動している。双方のスリーブバルブはピストン中間ストローク位置の左への偏心器スローの50%であって、左への移動途中であり、これによって左シリンダの吸気ポートINの開きを増加させ、排気ポートEXの開きを減少させる。
【0056】
ADC240°の
図3(i)において、左シリンダでは、外側ピストンP
L0は排気ポートEXを閉じ、一方で吸気ポートINは部分的に開いたままで、矢印で示されたように過吸気を受容する。右シリンダはその爆発工程を継続しており、2つのピストンP
R0とP
R1とはより均等に近いが対向した速度となっている。双方のスリーブバルブはピストン中間ストローク位置の左への偏心器スローの87%であって、左への移動途中であり、これによって左シリンダにおける吸気ポートINの開きを増加させ、排気ポートEXの閉鎖を加速している。
【0057】
ADC270°の
図3(j)において、左シリンダでは、P
L1は吸気ポートINを閉じ、2つのピストンP
L0とP
L1とは互いに向かって移動し、それらの間の空気を圧縮する。一方で右シリンダは爆発工程を継続している。双方のスリーブバルブはピストン中間ストローク位置の左への偏心器スローの100%であり、静止しており、左シリンダにおける吸気ポートの閉鎖を遅らせている。
【0058】
ADC300°の
図3(k)において、左シリンダでは、ピストンP
L0とP
L1とは圧縮ストロークを継続している。右シリンダのピストンP
R0は矢印で示されたように排気ポートEXを開き、一方で吸気ポートINは閉じたままである。この“ブローダウン”状態において、燃焼チャンバから膨張するガスの運動エネルギは、次の充填燃料の圧縮および/または電気エネルギの発生のためのターボチャージャ(“パルス”ターボチャージ)によって外部から回収され得る。発生した電気エネルギはエンジンのクランクシャフト(構成(compounding))に貯蔵および/または供給されてもよい。双方のスリーブバルブはピストン中間ストローク位置の左への偏心器スローの87%であって、右へ移動しており、これによって右シリンダにおける排気ポートEXの開きを増加させ、吸気ポートINの開きを遅らせている。
【0059】
ADC330°の
図3(l)において、左シリンダは圧縮ストロークの終端に近付き、“圧搾”段階が開始する。これはピストンP
L0およびP
L1の外側面、環状面および対向面がそれらの間から空気を放出し始める位置であり、それは破線の矢印によって図示されている。右シリンダのピストンP
R0は吸気ポートINを開き、シリンダは矢印で図示されたように一方向流れで清掃される。双方のスリーブバルブはピストン中間ストローク位置の左への偏心器スローの50%であって、右への移動途中であり、これによって右シリンダにおける排気ポートEXの開きを増加させ、吸気ポートINの開きを減少させる。
【0060】
ADC360°の
図3(m)において、位置は
図3(a)に示されたものと同一である。左シリンダはIDC位置に到達し、そこでピストンP
L0およびP
L1はそれらの最も近接した位置であり、P
L0は方向を変える。“圧搾”段階は破線の矢印で示されたように継続しており、“スモークリング(smoke ring)”効果を増大させて、部分的に正接の吸気ポートINに起因したすでに存在しているシリンダ軸周りの渦に併発させる。これらの構成ガスの動作は、燃焼チャンバが円錐曲線回転面に最も近く、最小の容積である場合に、IDCにおいて最も強烈になる。この位置において、複数の径方向スプレーが、点の領域で示されたように、中央燃料噴射機から放射され、得られる空気のほとんどすべてに到達し、構成(compounding)を備えた効果的な燃焼導入がそのクラスで最高の特別な燃費をもたらす。右シリンダのピストンP
R0およびP
R1はEXおよびINの双方のポートを開いたままにし、矢印で示したように一方向流れの掃気を継続する。外側ピストンP
R0は移動の方向を変える。双方のスリーブバルブは左への最大速度となって中間ストロークに位置し、これによって変化の影響がポートタイミングに与えられない。
【0061】
特定の角度およびタイミングはクランクシャフトの幾何形状およびポートサイズとその位置とに依存する。これまでの記載は単に本発明の概念を示すことを意図している。
【0062】
排気および吸気ポートの非対称タイミング
2ストロークエンジンにおける排気および吸気ポートの非対称タイミングは、大河の重要な利点をもたらす。排気ポートが吸気ポートよりも前に開いた場合、排ガス内のエネルギはターボチャージャによってより効果的に回収されることが可能であり、排気ポートが吸気ポートよりも前に閉じた場合、シリンダはより効果的に過給され得る。
【0063】
本発明のエンジン形態において、上述の通り、排気ポートは各々のシリンダ内の外側ピストンによって制御され、吸気ポートは内側ピストンによって制御される。この形態は効果的な掃気(“一方向流れ”の掃気)を可能にするだけでなく、排気および吸気ポートの単独の非対称タイミングを可能にしている。
【0064】
各々のシリンダ内の2つのピストンの非対称タイミングは、クランクシャフトジャーナルに対応した相対角度位置の変化によって達成される。180°離れた排気および吸気ピストンに関するジャーナルの位置決めは、双方のピストンが同時に(対称のタイミングで)最大および最小偏位に到達することに帰着する。本発明の好適な実施形態において、排気ピストンのためのジャーナルは角度的に4°進んでおり、吸気ポートのためのジャーナルは4°遅れている(これによって内側および外側の死点は、対称タイミングのエンジンの場合と同一のクランクシャフト角度となるが、双方のピストンはシリンダに対して小さい共通速度(small common velocity)を有している)。それに加えて、これは双方のスリーブバルブの共通速度の寄与であり、その寄与はすべての排気および吸気ポートならびにそれらの動作が90°だけ排気ピストンの内死点を遅らせることを含んでいる。好適な実施形態におけるこの動作は効果的に排気ピストンを12.5°進むまで且つ効果的に吸気ピストンを12.5°遅れるまで増加させる。結果的に、排気ポートは“ブローダウン”のために吸気ポートよりも前に開き、過給のために吸気ポートよりも後に閉じる。
【0065】
スリーブバルブの質量/偏心器スローの積は、ピストンジャーナルの非対称に起因した初期不釣合いを完全に排除するように適合され得る。したがって本発明は2シリンダストロークエンジンについて開示しており、そのエンジンは初期およびすべてのより高いオーダーにおいて完全なバランスを達成し得る。さらに、対向ピストン/スコッチヨーク/ピストンシステムのマス/偏心器スロー製品が均等なままである限り、排気および吸気ピストンのストロークは異なっていてもよく、そのことは最良の性能のための得られる最大ポート面積の最適化を可能にする。
【0066】
対向ピストン対向シリンダ形態の大型エンジンへの適応性
多くのエンジン形態において、バランスは4,6,8またはそれ以上のシリンダを備えることに依存しており、シリンダは個々のピストンによって導かれる自由マスフォース(free-mass forces)を打ち消すように配置されている。対向回転ウェイト(Counter-rotating weights)もしばしば取り入れられ、それが複雑さを加えて、エンジンの質量および摩擦損失となる。本発明の利点は、複数シリンダエンジンが複数の2シリンダエンジンを並べて配置し、それらのクランクシャフトを全体的に連結することによって形成されてもよいことである。連結は、オペレータまたはロジック制御の下のクラッチとしての手段等によって行ってもよく、低負荷時に必要とされない場合はシリンダの組が切り離されることが可能であってもよい。現実にあるエンジンは、部分的な負荷で稼動しているがシリンダがクランクシャフトに接続されたままであり且つピストンがシリンダ内で移動し続けており、したがってエンジンの寄生性の摩擦負荷が継続している場合に、全シリンダ数未満で使用される
【0067】
結論
上記の事項は本発明の特別な実施形態の詳細な記載である。開示された実施形態からの逸脱は本発明の範囲内であってもよく、明確な変更が当業者には考え付くだろう。本明細書は、発明が表題を付けられた保護の範囲に、過度に狭く解釈されるべきではない。
【0068】
以下の請求項中の対応する構造、材料、動作およびすべての手段またはステップと機能要素とは、他の請求項の要素と結合して機能を発揮するための任意の構造または動作を含むことを意図しており、それらは明確に主張されている。
【符号の説明】
【0069】
3,4 ・・・外側ピストン
5,6 ・・・内側ピストン
7 ・・・右シリンダ
8 ・・・左シリンダ
9,10 ・・・噴射機
19,20,21,22 ・・・ピストンリング
23,24,25,26 ・・・燃焼面
27,28 ・・・燃焼チャンバ
29,30 ・・・スーパーチャージャ
31,32 ・・・外側ゾーン
33 ・・・吸気ポート
34,35 ・・・排気ポート
37,38 ・・・燃焼チャンバ
39,40 ・・・燃料噴射ノズル
101,103,104 ・・・スコッチヨーク
102,105,106 ・・・歯止め
111 ・・・クランクシャフト回転軸
112 ・・・中央クランクシャフト
113,117 ・・・偏心器
114,116 ・・・内側の偏心器
115 ・・・中間の偏心器
118 ・・・クランクケース