(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記導入量減少制御を開始してから第1時間が経過した後、前記触媒温度検出部によって検出される前記温度が前記未改質ガス発生温度よりも高く前記第1閾値よりも低い第2閾値未満である場合に、前記原燃料導入部に対して前記原燃料の導入を停止させる導入停止制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池システム。
前記制御部は、前記導入量減少制御を開始してから、前記第1時間に続く第2時間が経過した後、前記触媒温度検出部によって検出される前記温度が前記第1閾値よりも高い第3閾値以上である場合に、前記導入量減少制御を解除することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したような従来の燃料電池システムでは、燃料電池での発電を停止するにあたり燃料電池にダメージが与えられるのを回避することはできるものの、燃料電池での発電中におけるダメージ対策については考慮されていない。燃料電池での発電中には、発電のための原燃料を改質触媒で改質して改質ガスを燃料電池に供給する際、原燃料が十分に改質されずに未改質ガスの状態で燃料電池に流入するような事態が生じ得る。このような事態が生じた場合、従来の燃料電池システムでは、未改質ガスの流入によって発電中の燃料電池にダメージを与えてしまうという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、上記の技術課題を解決するためになされたものであり、発電中の燃料電池にダメージが与えられるのを回避することができる燃料電池システム、改質器システム、及び燃料電池システムの運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る燃料電池システムは、原燃料及び水を改質触媒で改質することにより、水素を含有する改質ガスを生成する改質器と、改質ガスを用いて、セル部で発電を行う燃料電池と、改質触媒に原燃料を導入する原燃料導入部と、改質触媒の温度を検出する触媒温度検出部と、原燃料導入部に対して原燃料の導入量を減少させる導入量減少制御、および、燃料電池に対して発電量を抑制させる発電量抑制制御を行う制御部と、を備え、制御部は、触媒温度検出部によって検出される温度が、
導入量減少制御が行われない場合における原燃料の改質触媒への導入量に応じて予め定められた、未改質ガス発生温度よりも高い第1閾値以下である場合に、原燃料導入部に対して原燃料の導入量を減少させる導入量減少制御を行うとともに、燃料電池に対して発電量を抑制させる発電量抑制制御を行うことを特徴とする。
【0008】
更に、本発明に係る燃料電池システムの運転方法は、原燃料及び水を改質触媒で改質することにより、水素を含有する改質ガスを生成する改質器と、改質ガスを用いて、セル部で発電を行う燃料電池と、改質触媒に原燃料を導入する原燃料導入部と、改質触媒の温度を検出する触媒温度検出部と、を備える燃料電池システムの運転方法であって、触媒温度検出部によって温度を取得する温度取得ステップと、温度が、予め定められた、未改質ガス発生温度よりも高い第1閾値以下である場合に、原燃料導入部に対して原燃料の導入量を減少させる導入量減少制御ステップと、温度が第1閾値以下である場合に、燃料電池に対して発電量を抑制させる発電量抑制制御ステップと、を含
み、第1閾値は、導入量減少制御が行われない場合における原燃料の改質触媒への導入量に応じて、予め定められていることを特徴とする。
【0009】
これらの燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法では、触媒温度検出部によって改質触媒の温度が検出され、この温度が、予め定められた、未改質ガス発生温度よりも高い第1閾値以下である場合に、制御部の導入量減少制御によって、原燃料導入部に対して原燃料の導入量が減少させられる。ここで、「導入量」は、「単位時間あたりに導入される量」を意味する。原燃料及び水を改質触媒で改質することにより改質ガスを生成する反応は、吸熱反応である。そのため、原燃料の導入量が減少させられることにより、改質ガスの生成量と共に吸熱量は減少する。よって、改質触媒の温度が未改質ガス発生温度に降下することを防止できる。これにより、未改質ガスの発生が防止されて、改質ガスが燃料電池に供給されることになる。従って、発電中の燃料電池にダメージが与えられるのを回避することができる。また、原燃料の導入量が減少させられると、これに伴い改質ガスの生成量が減少するが、原燃料の導入量が減少させられるのと同時に、燃料電池に対して発電量が抑制させられる。よって、改質器及び燃料電池のバランスを好適に維持することができる。
通常、未改質ガス発生温度は、導入量減少制御が行われない場合における原燃料の改質触媒への導入量によって決まる。導入量減少制御が行われない場合における原燃料の改質触媒への導入量に応じて第1閾値が予め定められるため、未改質ガスの発生をより一層効果的に防止することができる。
【0020】
また、制御部は、導入量減少制御を開始してから第1時間が経過した後、触媒温度検出部によって検出される温度が未改質ガス発生温度よりも高く第1閾値よりも低い第2閾値未満である場合に、原燃料導入部に対して原燃料の導入を停止させる導入停止制御を行う態様とすることができる。
【0021】
この燃料電池システムによれば、触媒温度検出部によって検出される温度が未改質ガス発生温度よりも高い第2閾値未満である場合に、制御部によって導入停止制御が行われ、原燃料の導入が停止させられる。このように原燃料の導入が停止させられると、改質器における改質ガスの生成反応が停止すると共に、未改質ガスの発生が防止される。よって、燃料電池にダメージが与えられるのを回避することができる。
【0022】
また、第2閾値は、導入量減少制御が行われた場合における原燃料の改質触媒への導入量に応じて、予め定められている態様とすることができる。
【0023】
この燃料電池システムによれば、導入量減少制御が行われた場合における原燃料の改質触媒への導入量に応じて第2閾値が予め定められるため、未改質ガスの発生をより一層効果的に防止することができる。
【0024】
また、制御部は、導入量減少制御を開始してから、第1時間に続く第2時間が経過した後、触媒温度検出部によって検出される温度が前記第1閾値よりも高い第3閾値以上である場合に、導入量減少制御を解除する態様とすることができる。
【0025】
この燃料電池システムによれば、触媒温度検出部によって検出される温度が第1閾値よりも高い第3閾値以上である場合に、制御部によって、原燃料の導入量減少制御が解除される。このような制御により、改質器において、未改質ガスの発生を防止しつつ改質ガスの生成量を回復させることができる。よって、燃料電池にダメージを与えることなく燃料電池での発電量を回復させることができる。
【0026】
また、セル部の温度を検出するセル部温度検出部を更に備え、制御部は、導入量減少制御を開始してから、第1時間に続く第2時間が経過した後、触媒温度検出部によって検出される温度が第1閾値よりも高い第3閾値以上であり、且つセル部温度検出部によって検出される温度が
、通常の発電運転時のセル部の温度より低い第4閾値以上である場合に、導入量減少制御を解除する態様とすることができる。
【0027】
この燃料電池システムによれば、触媒温度検出部によって検出される温度が第1閾値よりも高い第3閾値以上であり、且つセル部温度検出部によって検出される温度が
、通常の発電運転時のセル部の温度より低い第4閾値以上である場合に、制御部によって、原燃料の導入量減少制御が解除される。このような制御により、改質器において、未改質ガスの発生を防止しつつ改質ガスの生成量を回復させることができると共に、燃料電池において、生成量が回復された改質ガスを用いてセル部で好適な発電を行うことができる。よって、燃料電池にダメージを与えることなく燃料電池での発電量を回復させることができる。
【0028】
また、第3閾値は、導入量減少制御が行われた場合における原燃料の改質触媒への導入量に応じて、予め定められている態様とすることができる。
【0029】
この燃料電池システムによれば、導入量減少制御が行われた場合における原燃料の改質触媒への導入量に応じて第3閾値が予め定められるため、未改質ガスの発生をより一層効果的に防止することができる。
【0030】
また、第4閾値は、導入量減少制御が行われない場合における原燃料の改質触媒への導入量に応じて、予め定められている態様とすることができる。
【0031】
この燃料電池システムによれば、導入量減少制御が行われない場合における原燃料の改質触媒への導入量に応じて第4閾値が予め定められるため、未改質ガスの発生をより一層効果的に防止することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、発電中の燃料電池にダメージが与えられるのを回避することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0035】
図1に示されるように、本実施形態の燃料電池システム1は、原燃料を改質触媒2aで改質することにより、水素を含有する改質ガスを生成する改質器2と、改質ガスを燃料として用いる固体酸化物形燃料電池12と、を備えている。
【0036】
改質器2は、原燃料及び水蒸気(水)を改質触媒2aで水蒸気改質反応させて、改質ガスを生成する。水蒸気改質反応は吸熱反応であるため、改質器2は、水蒸気改質反応に燃料電池12の排熱を利用する。改質触媒2aとしては、水蒸気改質触媒として公知の触媒を用いることができる。
【0037】
原燃料としては、改質ガスの原料として固体酸化物形燃料電池の分野で公知の炭化水素系燃料、すなわち、分子中に炭素と水素とを含む化合物(酸素等、他の元素を含んでいてもよい)若しくはその混合物から適宜選んで用いることができる。例えば、炭化水素類、アルコール類、エーテル類等、分子中に炭素と水素とを含む化合物である。より具体的には、メタン、エタン、プロパン、ブタン、天然ガス、LPG(液化石油ガス)、都市ガス、ガソリン、ナフサ、灯油、軽油等の炭化水素類、メタノール、エタノール等のアルコール類、ジメチルエーテル等のエーテル類等である。なかでも、灯油やLPGは、入手が容易であるため好ましい。また、灯油やLPGは、独立して貯蔵可能であるため、都市ガスのラインが普及していない地域において有用である。更に、灯油やLPGを利用した固体酸化物形燃料電池は、非常用電源として有用である。
【0038】
燃料電池12は、改質器2で生成された改質ガスを燃料として用い、SOFC(Solid Oxide Fuel Cells)と称される複数のセルを積層させてなるセルスタック13で発電を行う。各セルは、固体酸化物である電解質が燃料極と空気極との間に配置されることで構成されている。電解質は、例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ)からなり、800℃〜1000℃の温度で酸化物イオンを伝導する。燃料極は、例えばニッケルとYSZとの混合物からなり、酸化物イオンと改質ガス中の水素とを反応させて、電子及び水を発生させる。空気極は、例えばランタンストロンチウムマンガナイトからなり、空気中の酸素と電子とを反応させて、酸化物イオンを発生させる。
【0039】
また、燃料電池システム1は、改質触媒2aに原燃料を導入する原燃料導入装置(原燃料導入部)3と、改質触媒2aに水蒸気を導入する水導入装置4と、カソード(空気極)に空気を導入するカソード用空気導入装置(不図示)と、を備えている。原燃料導入装置3は、原燃料を導入するための原燃料導入管や、原燃料の導入量を調節するための導入量調節弁等を有している。同様に、カソード用空気導入装置は、空気を導入するための空気導入管や、空気の導入量を調節するための導入量調節弁等を有している。また、水導入装置4は、水を導入するための水導入管や、水の導入量を調節するための導入量調節弁等を有している。本実施形態では、水導入装置4は、改質器2に水を導入する。この水は、改質器2ないし改質器2とは別体に設けられた気化器によって気化され、水蒸気として改質触媒2aに導入される。
【0040】
更に、燃料電池システム1は、システム全体を制御する制御装置(制御部)5と、改質触媒2aの温度を検出する触媒温度検出器(触媒温度検出部)6と、燃料電池12のセルスタック13の温度を検出するセルスタック温度検出器(セル部温度検出部)14と、を備えている。改質触媒2aの温度は、未改質ガスの発生可能性に関する情報である未改質ガス発生情報に相当する。触媒温度検出器6は、未改質ガス発生情報取得部に相当する。
【0041】
温度検出器6,14は、例えば熱電対である。触媒温度検出器6は改質器2内における複数の位置に設けられており、各触媒温度検出器6の測温接点は、原燃料導入装置3によって導入される原燃料の流路の中心軸線上に配置されている。セルスタック温度検出器14はセルスタック13内における複数の位置に設けられており、各セルスタック温度検出器14の測温接点は、セルスタック13を構成するセル上又はセルの近傍に配置されている。
【0042】
制御装置5は、操作者による操作に応じてシステム全体を起動させる制御を行う。また、制御装置5は、触媒温度検出器6によって検出される改質触媒2aの温度及びセルスタック温度検出器14によって検出されるセルスタック13の温度を取得し、取得した各部の温度に基づいて原燃料導入装置3、水導入装置4、及び燃料電池12を制御する。
【0043】
より詳しくは、制御装置5は、改質触媒2aの温度及びセルスタック13の温度に基づいて所定の処理を実行することにより、原燃料導入装置3及び燃料電池12に対して、改質器2及び燃料電池12における負荷を抑制させるように指示する(以下、この指示を「改質器2及び燃料電池12の負荷抑制指示」という)。すなわち、制御装置5は、原燃料導入装置3に対して原燃料の導入量を減少させる制御(導入量減少制御)を行う。また、制御装置5は、原燃料の導入量の減少制御と共に、燃料電池12に対して発電量を抑制させる制御(発電量抑制制御)を行う。なお、この燃料電池12に対する発電量の抑制制御では、制御装置5は、セルスタック13の温度が作動温度の状態で燃料電池システム1を待機させるいわゆる「ホットスタンバイ」に移行する制御を行ってもよい。また、制御装置5は、原燃料の導入量の減少制御と共に、水導入装置4に対して水の導入量を減少させる制御を行ってもよい。
【0044】
更に、制御装置5は、改質触媒2aの温度及びセルスタック13の温度に基づいて所定の処理を実行することにより、システムを停止させる。すなわち、制御装置5は、原燃料導入装置3に対して原燃料の導入を停止させる制御(導入停止制御)を行う。また、制御装置5は、原燃料の導入停止制御と共に、燃料電池12に対して発電を停止させる制御を行う。このシステムの停止においては、燃料電池12が水素を含有するガスを必要としない温度帯まで除冷しつつ改質を実施するのが好ましい。そのため、制御装置5は、原燃料導入装置3における原燃料の導入量を通常の運転時やホットスタンバイ状態から段階的に、又は連続的に(徐々に)下げて運転する。なお、制御装置5は、原燃料の導入停止制御と共に、水導入装置4に対して水の導入を停止させる制御を行ってもよい。この場合、制御装置5は、水導入装置4における水の導入量を通常の運転時やホットスタンバイ状態から段階的に、又は連続的に(徐々に)下げて運転する。
【0045】
また、制御装置5は、改質触媒2aの温度及びセルスタック13の温度に基づいて所定の処理を実行することにより、原燃料導入装置3及び燃料電池12に対して、改質器2及び燃料電池12における負荷の抑制を解除するように指示する(以下、この指示を「改質器2及び燃料電池12の負荷抑制解除」という)。すなわち、制御装置5は、原燃料導入装置3に対して原燃料の導入量を増加させる制御を行う。また、制御装置5は、原燃料の導入量の増加制御と共に、燃料電池12に対して発電量を増加させる制御を行う。なお、制御装置5は、原燃料の導入量の増加制御と共に、水導入装置4に対して水の導入量を増加させる制御を行ってもよい。
【0046】
更にまた、制御装置5は、上記した各制御に移行するか否かの判断基準となる複数の閾値(第1閾値〜第4閾値)を記憶している。これらの複数の閾値は、改質触媒2aの温度又はセルスタック13の温度に関する閾値である。また、制御装置5は、上記した各制御に移行するか否かの判断を行う時間を規制するための複数の時間(第1時間〜第3時間)を記憶している。第1閾値は、通常の発電運転時における原燃料の改質触媒2aへの導入量に応じて、予め定められる値である。第2閾値及び第3閾値は、改質器2及び燃料電池12の負荷抑制指示が行われた場合(すなわち負荷抑制後)における原燃料の改質触媒2aへの導入量に応じて、予め定められる値である。第4閾値T
4は、通常の発電運転時における原燃料の改質触媒2aへの導入量や燃料電池12での発電量等に応じて、予め定められる値である。
【0047】
本実施形態では、これらの改質器2、原燃料導入装置3、水導入装置4、制御装置5及び触媒温度検出器6によって改質器システム10が構成されている。
【0048】
次に、燃料電池システム1の運転方法について
図2及び
図3を参照して説明する。
図2及び
図3に示される各処理は、制御装置5によって実行される。
【0049】
まず、操作者による操作に応じてシステム全体が起動させられる。すなわち、制御装置5によって、改質器2、原燃料導入装置3、水導入装置4、及び燃料電池12に対して起動工程を完了させるように指示が出される。これにより、システム全体が通常の発電運転モード(定常運転モード)に移行する。
【0050】
続いて、
図2に示されるように、触媒温度検出器6によって検出される改質触媒2aの温度が第1閾値T
1以下であるか否かが判断される(ステップS1)。この第1閾値T
1は、未改質ガス発生温度と通常の発電運転時の改質触媒2aの温度との間の温度であり、例えば原燃料が灯油の場合、400℃〜700℃の温度である。言い換えれば、第1閾値T
1は、未改質ガス発生温度よりも高く、通常の発電運転時の改質触媒2aの温度よりも低い温度である。ここでの判断処理に用いられる改質触媒2aの温度は、各触媒温度検出器6で検出された複数の温度の平均値であってもよいし、特定の触媒温度検出器6で検出された温度であってもよい。以下、改質触媒2aの温度に関する判断処理(S4,S7)においても同様とする。
【0051】
ここで、未改質ガス発生温度は、原燃料が改質触媒2aで完全に改質されず、燃料電池12のセルスタック13を構成するセルにダメージを与え得る炭素数2以上の炭化水素ガス(未改質ガス)が発生して改質ガスに混入し始める温度(いわゆる改質スリップが発生する始点となるスリップ温度)を意味する。これらの未改質ガス発生温度及び第1閾値T
1は、改質器2及び燃料電池12の負荷抑制指示が行われない時、すなわち通常の発電運転時における原燃料の改質触媒2aへの導入量に応じて予め設定される。
【0052】
改質触媒2aの温度が第1閾値T
1よりも高い場合、ステップS1の判断処理が繰り返される。
【0053】
改質触媒2aの温度が第1閾値T
1以下である場合、改質器2及び燃料電池12の負荷抑制指示が実行される(ステップS2)。すなわち、未改質ガス発生情報である改質触媒2aの温度に基づいて、原燃料導入装置3に対して原燃料の導入量を減少させる制御が行われる。なお、原燃料の導入量の減少制御と共に、水導入装置4に対して水の導入量を減少させる制御が行われてもよい。この場合、水蒸気の導入量は、原燃料の導入量の減少に応じて減少させられる。また、燃料電池12に対して発電量を抑制させる制御が行われる。このような制御により、改質器2における水蒸気改質反応(吸熱反応)に伴う吸熱量が減少するため、改質器2における熱バランスは良好な状態へと改善(復帰)される。
【0054】
これらのステップS1及びステップS2は、導入量減少制御ステップ及び発電量抑制
制御ステップに相当する。なお、改質器2が水蒸気過多の状態で運転されていた場合には、ステップS2において、水蒸気の導入量を原燃料の導入量に応じて増加させる制御が行われてもよい。
【0055】
続いて、改質器2及び燃料電池12の負荷抑制指示が開始されてから第1時間が経過したか否かが判断される(ステップS3)。この第1時間は、例えば通常の発電運転時における原燃料の改質触媒2aへの導入量や燃料電池12での発電量に応じて予め設定される。また、第1時間は、ステップS2における原燃料の導入量の減少量、水の導入量の減少量、又は燃料電池12の発電量の抑制量に基づいて適宜設定されてもよい。ここで、第1時間が経過していない場合、ステップS3の判断処理が繰り返される。
【0056】
第1時間が経過している場合、触媒温度検出器6によって検出される改質触媒2aの温度が第2閾値T
2以上であるか否かが判断される(ステップS4)。この第2閾値T
2は、改質器2における熱バランスの良好性を判断するための指標であり、第1閾値T
1と同様、未改質ガス発生温度と通常の発電運転時の改質触媒2aの温度との間の温度とされる。好ましくは、第2閾値T
2は、未改質ガス発生温度よりも高く、第1閾値T
1よりも低い温度である。第2閾値T
2は、触媒温度検出器6毎に適宜設定される。
【0057】
改質触媒2aの温度が第2閾値T
2未満である場合、システムが停止させられる(ステップS5)。すなわち、原燃料導入装置3に対して原燃料の導入を停止させる制御が行われる。なお、原燃料の導入停止制御と共に、水導入装置4に対して水の導入を停止させる制御が行われてもよい。また、燃料電池12での発電が停止させられる。これらの停止制御は、セルスタック13の温度が室温の状態で燃料電池システム1が待機するいわゆる「コールドスタンバイ」に移行する制御であってもよいし、セルスタック13の温度が作動温度の状態で燃料電池システム1が待機するいわゆる「ホットスタンバイ」に移行する制御であってもよい。このように、第2閾値T
2は、運転下限温度としての意味も有している。すなわち、第2閾値T
2は、改質器2の負荷を下げても熱バランスの崩れが止まらずに、未改質ガスの発生(改質スリップ)の危険性が極めて高い状態になるか否かを判定するための閾値である。ステップS5は、未改質ガスが発生する危険性が高い状態になると判定されるため、システムを停止する工程である。
【0058】
なお、このステップS5におけるシステムの停止制御では、燃料電池12が水素を含有するガスを必要としない温度帯まで除冷しつつ改質を実施するのが好ましい。そのため、原燃料導入装置3における原燃料の導入量を通常の運転時やホットスタンバイ状態から段階的に、又は連続的に(徐々に)下げて運転する停止工程に移行する。また、このような停止工程への移行が難しい場合には、原燃料導入装置3における原燃料の導入量を即座に停止することもできる。
【0059】
改質触媒2aの温度が第2閾値T
2以上である場合、第1時間の経過時から更に第2時間が経過したか否かが判断される(ステップS6)。すなわち、改質器2及び燃料電池12の負荷抑制指示が開始されてから、第1時間に続く第2時間が経過したか否かが判断される。この第2時間は、通常の発電運転時における原燃料の改質触媒2aへの導入量や燃料電池12での発電量等に応じて適宜設定される。ここで、第2時間が経過していない場合、ステップS4の判断処理に戻る。
【0060】
燃料電池システム1では、ステップS4〜S6での処理により、第2時間内において一時的に改質器負荷量及び発電量を抑制している。更に、改質触媒2aの熱バランスが危機的に崩れていないかを監視しつつ、自立運転への待機状態(自立待機状態)を保持し、また、第2時間内に熱バランスの良好性を判断している。そして、所定の熱バランス状態になっていない場合はシステム停止処理を実施する。また、第2時間内において所定の熱バランス状態になっている場合は、以下に説明する処理に移行し、自立待機状態を継続する。
【0061】
ステップS6で第2時間が経過している場合、
図3に示される処理に移行し、触媒温度検出器6によって検出される改質触媒2aの温度が第3閾値T
3以上であるか否かが判断される(ステップS7)。この第3閾値T
3は、改質器2における熱バランスの良好性を判断するための指標であり、第2閾値T
2と同様、未改質ガス発生温度と通常の発電運転時の改質触媒2aの温度との間の温度とされる。好ましくは、第3閾値T
3は、第1閾値T
1よりも高く、通常の発電運転時の改質触媒2aの温度以下の温度である。第3閾値T
3は、触媒温度検出器6毎に適宜設定される。
【0062】
改質触媒2aの温度が第3閾値T
3以上である場合、セルスタック温度検出器14によって検出されるセルスタック13の温度が第4閾値T
4以上であるか否かが判断される(ステップS8)。この第4閾値T
4は、通常の発電運転時のセルスタック13の温度よりも低い温度である。第4閾値T
4は、通常の発電運転時における原燃料の改質触媒2aへの導入量や燃料電池12での発電量等に応じて適宜設定される。また、ここでの判断処理に用いられるセルスタック13の温度は、各セルスタック温度検出器14で検出された複数の温度の平均値であってもよいし、特定のセルスタック温度検出器14で検出された温度であってもよい。
【0063】
そして、セルスタック13の温度が第4閾値T
4以上である場合、改質器2及び燃料電池12の負荷抑制解除が実行される(ステップS9)。すなわち、原燃料導入装置3に対して原燃料の導入量を増加させる制御が行われる。なお、原燃料の導入量の増加制御と共に、水導入装置4に対して水の導入量を増加させる制御が行われてもよい。また、燃料電池12に対して発電量を増加させる制御が行われる。このような制御により、燃料電池システム1は通常の発電運転モードへと復帰する。なお、ステップS2において水蒸気の導入量を原燃料の導入量に応じて増加させる制御が行われた場合には、このステップS9では、水蒸気の導入量を原燃料の導入量に応じて減少させる制御が行われることとなる。このステップS9の後、ステップS1の判断処理に戻る。
【0064】
一方、ステップS7で改質触媒2aの温度が第3閾値T
3未満である場合、システムが停止させられる(ステップS10)。ここでの停止制御は、ステップS5での停止制御と同様である。このように、第3閾値T
3は、運転下限温度としての意味も有している。
【0065】
また、ステップS8でセルスタック13の温度が第4閾値T
4未満である場合、第2時間の経過時から更に第3時間が経過したか否かが判断される(ステップS11)。この第3時間は、通常の発電運転時における原燃料の改質触媒2aへの導入量や燃料電池12での発電量等に応じて適宜設定される。ここで、第3時間が経過していない場合、ステップS7の判断処理に戻る。
【0066】
第3時間が経過している場合、システムが停止させられる(ステップS12)。ここでの停止制御は、ステップS5,S10での停止制御と同様である。このように、第4閾値T
4は、運転下限温度としての意味も有している。また、第3時間は、通常の発電運転モードへ復帰する際の制限時間としての意味を有している。
【0067】
燃料電池システム1では、ステップS7,S8,S11での処理により、第3時間内において一時的に改質器負荷量及び発電量を抑制している。更に、改質触媒2aの熱バランスが危機的に崩れていないかを監視しつつ、自立待機状態を保持し、また、第3時間内に熱バランスの良好性を判断している。そして、所定の熱バランス状態になっていない場合はシステム停止処理を実施する。また、第3時間内において所定の熱バランス状態になっている場合は、第3時間が終了したか否かの判断(カウントダウン)を解除し、通常の発電工程へ復帰する。
【0068】
以上説明したように、改質器システム10、燃料電池システム1、及びその運転方法では、触媒温度検出器6によって検出される改質触媒2aの温度が未改質ガス発生温度よりも高い第1閾値T
1以下である場合に、制御装置5によって、改質器2及び燃料電池12の負荷抑制指示が実行される。原燃料及び水を改質触媒2aで改質することにより改質ガスを生成する反応は、吸熱反応である。そのため、原燃料及び水の導入量が減少させられることにより、改質ガスの生成量と共に吸熱量は減少する。よって、改質触媒2aの温度が未改質ガス発生温度に降下することを防止できる。これにより、未改質ガスの発生が防止されて、改質ガスが燃料電池12に供給されることになる。従って、発電中の燃料電池12にダメージが与えられるのを回避することができる。
【0069】
改質触媒2aの温度は、未改質ガスの発生の有無に大きく影響する。燃料電池システム1によれば、改質触媒2aの温度を未改質ガス発生情報とするため、未改質ガスの発生がより確実に防止される。
【0070】
また、原燃料の導入量が減少させられると、これに伴い改質ガスの生成量が減少するが、原燃料の導入量が減少させられるのと同時に、燃料電池12に対して発電量が抑制させられる。よって、改質器2及び燃料電池12のバランスを好適に維持することができる。
【0071】
また、第1時間経過後の第2時間内において、触媒温度検出器6によって検出される温度が未改質ガス発生温度よりも高い第2閾値T
2未満である場合に、制御装置5によってシステムが停止させられる。このようにシステムが停止させられると、改質器2における改質ガスの生成反応が停止すると共に、未改質ガスの発生が防止される。よって、燃料電池12にダメージが与えられるのを回避することができる。また、このような停止制御を行う時間的基準となる第2時間を設けることにより、システムの安定性を高めることができる。
【0072】
また、第2時間経過後の第3時間内において、触媒温度検出器6によって検出される温度が第1閾値T
1よりも高い第3閾値T
3以上であり、且つセルスタック温度検出器14によって検出される温度が予め定められた第4閾値T
4以上である場合に、制御装置5によって、改質器2及び燃料電池12の負荷抑制解除が実行される。このような制御により、改質器2において、未改質ガスの発生を防止しつつ改質ガスの生成量を回復させることができると共に、燃料電池12において、生成量が回復された改質ガスを用いてセルスタック13で好適な発電を行うことができる。よって、燃料電池12にダメージを与えることなく燃料電池12での発電量を回復させることができる。
【0073】
また、第2時間経過後の第3時間内において、触媒温度検出器6によって検出される温度が第3閾値T
3未満である場合に、制御装置5によってシステムが停止させられる。このようにシステムが停止させられると、改質器2における改質ガスの生成反応が停止すると共に、未改質ガスの発生が防止される。よって、燃料電池12にダメージが与えられるのを回避することができる。また、このような停止制御を行う時間的基準となる第3時間を設けることにより、システムの安定性をより一層高めることができる。
【0074】
また、通常の発電運転時における原燃料の改質触媒2aへの導入量に応じて第1閾値T
1が予め定められるため、未改質ガスの発生をより一層効果的に防止することができる。
【0075】
また、改質器2及び燃料電池12の負荷抑制後における原燃料の改質触媒2aへの導入量に応じて第2閾値T
2及び第3閾値T
3が予め定められるため、未改質ガスの発生をより一層効果的に防止することができる。
【0076】
更にまた、通常の発電運転時における原燃料の改質触媒2aへの導入量に応じて第4閾値T
4が予め定められるため、未改質ガスの発生をより一層効果的に防止することができる。
【0077】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池を用いる場合について説明したが、本発明は、固体高分子形燃料電池や溶融炭酸塩形燃料電池を用いた燃料電池システムにも適用できる。
【0078】
また、上記実施形態では、第3時間内において、改質触媒2aの温度が第3閾値T
3以上であると、セルスタック13の温度が第4閾値T
4以上であるか否かを判断する場合について説明したが、ステップS8のセルスタック13の温度に関する判断を省略することもできる。すなわち、第3時間内において、改質触媒2aの温度が第3閾値T
3以上である場合に、ステップS9の発電量抑制解除制御を実行してもよい。
【0079】
また、燃料電池12の通常の発電運転時に、改質器2で自己熱改質反応(ATR)や部分酸化改質反応を実現させてもよい。それらの場合にも、改質器2の改質触媒2aへの原燃料の導入量を減少させ、改質触媒2aの温度が未改質ガス発生温度に降下する前に、改質触媒2aの温度を上昇させれば、燃料電池12での発電を停止する際に、簡単な構成で、未改質ガスの発生を防止することができ、燃料電池12にダメージが与えられるのを回避することが可能となる。なお、それらの場合、改質触媒2aとしては、オートサーマル改質(自己熱改質)触媒若しくは部分酸化改質触媒として公知の触媒を用いることができる。
【0080】
更に、燃料電池システム1は、間接内部型SOFCの公知の構成要素を必要に応じて適宜設けることができる。具体例を挙げれば、液体を気化させる気化器、各種流体を加圧するためのポンプ、圧縮機、ブロワ等の昇圧手段、流体の流量を調節するため、或いは流体の流れを遮断/切り替えるためのバルブ等の流量調節手段や流路遮断/切り替え手段、熱交換・熱回収を行うための熱交換器、気体を凝縮する凝縮器、スチーム等で各種機器を外熱する加熱/保温手段、炭化水素系燃料や可燃物の貯蔵手段、計装用の空気や電気系統、制御用の信号系統、制御装置、出力用や動力用の電気系統等である。
【0081】
また、上記実施形態では、触媒温度検出器6によって検出される改質触媒2aの温度が未改質ガス発生温度よりも高い第1閾値T
1以下である場合に、制御装置5によって、改質器2及び燃料電池12の負荷抑制指示が実行される場合について説明したが、負荷抑制指示が実行される判断基準は改質触媒2aの温度に限られない。
【0082】
すなわち、触媒温度検出器6によって検出される改質触媒2aの温度に関する情報を取得する温度情報取得部を備え、温度情報取得部によって取得された温度情報に基づいて、制御装置5による負荷抑制指示を行うこととしてもよい。
【0083】
また、上記実施形態では、第2閾値及び第3閾値が、改質器2及び燃料電池12の負荷抑制後における原燃料の改質触媒2aへの導入量に応じて予め定められる場合について説明したが、第2閾値及び第3閾値は、負荷抑制後の原燃料の導入量によらず、固定された値であってもよい。
【0084】
また、制御装置5による負荷抑制指示は、改質触媒2a等の温度に関する情報のみならず、他の情報にも基づくことができる。例えば、改質器2において生成される改質ガスの組成(例えば水素の割合、未改質ガスの割合等)を検出する改質ガス組成検出装置(未改質ガス発生情報取得部)を備え、この改質ガス組成検出装置による改質ガスの組成の検出結果に基づいて、制御装置5による導入量減少制御や発電量抑制制御を行うようにしてもよい。この場合、改質ガス中の特定のガスの割合(例えば水素)が所定の閾値以下であることを導入量減少制御や発電量抑制制御を行う際の判定条件とすることができる。ここで、改質ガス組成検出装置によって検出される改質ガスの組成は、未改質ガス発生情報に相当する。なお、改質触媒2aやセルスタック13の温度に関する情報と改質ガスの組成とを未改質ガス発生情報として取得し、これらの情報に基づいて、導入量減少制御や発電量抑制制御を行うようにしてもよい。
【0085】
このように、改質触媒2aの温度を含む多様なパラメータから演算される情報に基づいて制御装置5による負荷抑制指示が実行されることで、より信頼性の高いシステムが実現可能となる。