(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の縦結合型弾性波フィルタが有する前記各IDT電極の最外端の電極指の極性は、前記第2の縦結合型弾性波フィルタが有する前記各IDT電極の最外端の電極指の極性と同じである請求項3に記載の弾性波フィルタ。
【背景技術】
【0002】
従来この種の弾性波フィルタは、
図14にその構成図を示す如く、不平衡信号端子16と、不平衡信号端子16にその配線電極が電気的に接続された第1、第2、第3のIDT電極17A、17B、17Cとを備えている。また、従来の弾性波フィルタは、第1、第2のIDT電極17A、17B間に設けられた第4のIDT電極17Dと、第2、第3のIDT電極17B、17C間に設けられた第5のIDT電極17Eとを備えている。また、従来の弾性波フィルタは、第4のIDT電極17Dの配線電極に電気的に接続された第1の平衡信号端子18Aと、第5のIDT電極17Eの配線電極に電気的に接続された第2の平衡信号端子18Bとを備えている。また、従来の弾性波フィルタは、第1、第2、第3、第4、第5のIDT電極17A、17B、17C、17D、17Eの接地電極はグランドに電気的に接続されている。また、従来の弾性波フィルタは、不平衡信号端子16から入力される信号と逆位相の信号が前記第1の平衡信号端子18Aから出力され、不平衡信号端子16から入力される信号と同位相の信号が第2の平衡信号端子18Bから出力される。また、従来の弾性波フィルタは、第2、第3のIDT電極17B、17Cの配線電極と第5のIDT電極17Eの接地電極とが隣り合い、第1、第2のIDT電極17A、17Bの接地電極と第4のIDT電極17Dの接地電極とが隣り合う構成をしていた(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、このような従来の弾性波フィルタは、通過帯域内においてスプリアスが発生することが問題となっていた。
【0004】
すなわち、上記従来の構成においては、第1、第2のIDT電極17A、17Bの接地電極と第4のIDT電極17Dの接地電極とが隣り合う構成としていたため、
図15にその通過帯域特性を示す如く、通過帯域内においてスプリアスSが発生してしまうことが問題となっていた。
【0005】
また、
図14に示すような弾性波フィルタを並列接続させて通過特性を改善した弾性波フィルタが知られている。従来の並列型の弾性波フィルタは、
図16に示す如く、圧電基板1上に形成された、第1の不平衡信号端子2と、第1の不平衡信号端子2に電気的に接続された、第1の平衡信号端子3および第2の平衡信号端子4を有する第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ5を備えている。さらに、圧電基板1上に形成された、第2の不平衡信号端子6と、第2の不平衡信号端子6に電気的に接続された、第3の平衡信号端子7および第4の平衡信号端子8を有する第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ9を備えている。
【0006】
第1の不平衡信号端子2と第2の不平衡信号端子6とが電気的に接続されている。第1の平衡信号端子3と第2の平衡信号端子4とが第1の入出力端子10に電気的に接続されている。第3の平衡信号端子7と第4の平衡信号端子8とが第2の入出力端子11に電気的に接続されている。第1の入出力端子10からの入出力信号の位相が、第2の入出力端子11からの入出力信号の位相に対して180°ずれている構成である(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
しかし、このような従来の並列型の弾性波フィルタは、帯域高域部分の挿入損失劣化が大きいことが問題となっていた。
【0008】
図17は、従来の並列型の弾性波フィルタの通過帯域特性を示す図である。すなわち、従来の並列型の弾性波フィルタでは、
図17に示す如く、所望の通過帯域PB0における高域部分にスプリアスSが発生する。その結果として、挿入損失劣化が大きくなっていた。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施の形態に基づいて図面を用いて説明する。なお、本発明は以下の実施の形態によって限定されるものではない。
【0015】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1における弾性波フィルタの概略上面図である。
図1において、本実施の形態における弾性波フィルタは、不平衡信号端子12と、不平衡信号端子12にその配線電極が電気的に接続された第1、第2、第3のIDT(Interdigital Transducer)電極13A、13B、13Cとを備えている。また、本実施の形態における弾性波フィルタは、第1、第2のIDT電極13A、13B間に設けられた第4のIDT電極13Dを備えている。また、本実施の形態における弾性波フィルタは、第2、第3のIDT電極13B、13C間に設けられた第5のIDT電極13Eを備えている。また、本実施の形態における弾性波フィルタは、第4のIDT電極13Dの配線電極に電気的に接続された第1の平衡信号端子14Aと、第5のIDT電極13Eの配線電極に電気的に接続された第2の平衡信号端子14Bとを備えている。また、本実施の形態における弾性波フィルタは、第1、第2、第3、第4、第5のIDT電極13A、13B、13C、13D、13Eの接地電極はグランドに電気的に接続されている。また、本実施の形態における弾性波フィルタは、不平衡信号端子12から入力される信号と逆位相の信号が第1の平衡信号端子14Aから出力される。また、本実施の形態における弾性波フィルタは、不平衡信号端子12から入力される信号と同位相の信号が第2の平衡信号端子14Bから出力される。また、本実施の形態における弾性波フィルタは、第2、第3のIDT電極13B、13Cの配線電極と第5のIDT電極13Eの接地電極とが隣り合っている。また、本実施の形態における弾性波フィルタは、第1、第2のIDT電極13A、13Bの内の一方の配線電極と第4のIDT電極13Dの配線電極とが隣り合っている。また、本実施の形態における弾性波フィルタは、第1、第2のIDT電極13A、13Bの内の他方の接地電極と第4のIDT電極13Dの接地電極とが隣り合っている。
【0016】
具体的には、第1、第2、第3、第5のIDT電極13A、13B、13C、13Eは、それぞれ5つの電極指を有している。また、第4のIDT電極13Dは6つの電極指を有している。第1、第2、第3、第4、第5のIDT電極13A、13B、13C、13D、13Eのそれぞれの電極指は、配線電極と接地電極とから構成される。第1のIDT電極13Aにおいて、その接地電極が最外側に配置されており、この接地電極と第4のIDT電極13Dにおける接地電極とが隣り合うよう配置されている。そして、この第4のIDT電極13Dはその電極指の数が偶数となっており、第1のIDT電極13Aと隣り合う接地電極と反対側の電極指は配線電極となる。この第4のIDT電極13Dの配線電極は第1の平衡信号端子14Aに電気的に接続されるとともに、第2のIDT電極13Bの配線電極と隣り合うよう配置されている。
【0017】
ここで、第2のIDT電極13Bはその電極指の数が奇数となっているため、第4のIDT電極13Dと隣り合う配線電極と反対側の電極指は配線電極となっており、この配線電極が第5のIDT電極13Eの接地電極と隣り合う構成となっている。そして、第5のIDT電極13Eの配線電極は第2の平衡信号端子14Bに電気的に接続されている。
【0018】
ここで、第5のIDT電極13Eはその電極指の数が奇数となっているため、第2のIDT電極13Bと隣り合う接地電極と反対側の電極指も接地電極となっており、この接地電極が第3のIDT電極13Cの配線電極と隣り合う構成となっている。
【0019】
そして、第1のIDT電極13Aに関して第4のIDT電極13Dの反対側には反射器15Aを配置すると共に、第3のIDT電極13Cに関して第5のIDT電極13Eの反対側には反射器15Bを配置している。
【0020】
このような構成により、通過帯域内におけるスプリアスの発生を抑制することができる。
【0021】
図3は、本実施の形態における弾性波フィルタの通過特性図である。
図3において、実線の特性301は本実施の形態による特性を示し、点線の特性302は従来の弾性波フィルタの特性(
図15と同じ)を示している。
図3のA部に示す如く、本実施の形態における弾性波フィルタの特性301によれば、従来の特性302において現れていたスプリアスSが通過特性から消えていることがわかる。
【0022】
さらに、以下に示す3つの構成のうち、少なくとも1つを採用することにより、
図3のB部に示す如く、特性301(本実施の形態)の方が特性302(従来)よりも、その減衰特性を向上させることができる。
【0023】
一つ目の構成は、第1、第2、第3、第4、第5のIDT電極13A、13B、13C、13D、13Eに存在する電極指のピッチ間隔に関するものである。すなわち、第2のIDT電極13Bにおける中心線A−AAを中心にして、一方側に存在するピッチ間隔P1と他方側に存在するピッチ間隔P2とを非対称とする構成である。
【0024】
二つ目の構成は、第1、第2、第3、第4、第5のIDT電極13A、13B、13C、13D、13Eに存在する電極指のピッチグラデーションに関するものである。すなわち、第2のIDT電極13Bにおける中心線A−AAを中心にして、一方側に存在するピッチ間隔P1のピッチグラデーションと他方側に存在するピッチ間隔P2のピッチグラデーションとを非対称とする構成である。例えば、一方側に存在するピッチ間隔P1のピッチグラデーションを中心線A−AAから離れるに従い間隔αずつ漸減させ、他方側に存在するピッチ間隔P2のピッチグラデーションを中心線A−AAから離れるに従い間隔β
(≠α)ずつ漸減させる構成である。
【0025】
三つ目の構成は、第1、第2、第3、第4、第5のIDT電極13A、13B、13C、13D、13Eの間隔に関するものである。すなわち、第1のIDT電極13Aと第4のIDT電極13Dとの間隔L14と、第4のIDT電極13Dと第2のIDT電極13Bとの間隔L42の内少なくとも一方が、第2のIDT電極13Bと第5のIDT電極13Eとの間隔L25と、第5のIDT電極13Eと第3のIDT電極13Cとの間隔L53の内少なくとも一方と異なる構成である。
【0026】
なお、本実施の形態においては、第2のIDT電極13Bの電極指の本数を奇数とした。さらに、これによって、第1のIDT電極13Aの接地電極と第4のIDT電極13Dの接地電極とが隣り合うと共に、第4のIDT電極13Dの配線電極と第2のIDT電極13Bの配線電極とが隣り合う構成とした。しかし、
図2に示す如く、第2のIDT電極13Bの電極指の本数を偶数とすることも可能である。この場合、第1のIDT電極13Aの配線電極と第4のIDT電極13Dの配線電極とが隣り合うと共に、第4のIDT電極13Dの接地電極と第2のIDT電極13Bの接地電極とが隣り合う構成とする。
【0027】
ただし、
図1に示す構成とする方が、減衰特性改善の観点からは望ましい。
図4は、
図2に示す弾性波フィルタの通過特性図である。
図4は、
図2に示す構成の弾性波フィルタの特性402と、
図1に示す構成の弾性波フィルタの特性401とを重ねて示している。この
図4からもわかるように、特性401の方が特性402よりも減衰特性が改善されている。したがって、
図1に示す構成、すなわち、第2のIDT電極13Bの電極指の本数を奇数とし、第1のIDT電極13Aの接地電極と第4のIDT電極13Dの接地電極とが隣り合うと共に、第4のIDT電極13Dの配線電極と第2のIDT電極13Bの配線電極とが隣り合う構成とした方が、減衰特性がより改善されており望ましい。
【0028】
なお、
図1の弾性波フィルタの電極指の配置を上下反転した構成としても、同様の効果を得ることができる。この場合、不平衡信号電極12、第1の平衡信号電極14A、第2の平衡信号電極14Bと各電極指との接続関係は
図1と同じである。これにより、第2、第3のIDT電極13B、13Cの接地電極と第5のIDT電極13Eの配線電極とが隣り合い、第1、第2のIDT電極13A、13Bの内の一方の配線電極と第4のIDT電極13Dの配線電極とが隣り合い、第1、第2のIDT電極13A、13Bの内の他方の接地電極と第4のIDT電極13Dの接地電極とが隣り合う構成となる。
【0029】
(実施の形態2)
本実施の形態2における弾性波フィルタは、実施の形態1で説明した弾性波フィルタを並列接続することにより、さらに通過特性を改善することができる。
【0030】
本実施の形態における並列型の弾性波フィルタについて図面を参照しながら説明する。本実施の形態の並列型の弾性波フィルタは、
図5に示す如く、圧電基板21と、圧電基板21上に形成された、第1の不平衡信号端子22と第1の平衡信号端子23と第2の平衡信号端子24とを有する第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ25を備えている。第1の不平衡信号端子22、第1の平衡信号端子23、第2の平衡信号端子24のそれぞれは、第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ25に電気的に接続されている。さらに、圧電基板21と、圧電基板21上に形成された、第2の不平衡信号端子26と第3の平衡信号端子27と第4の平衡信号端子28とを有する第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ29とを備えている。第2の不平衡信号端子26、第3の平衡信号端子27、第4の平衡信号端子28のそれぞれは、第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ29に電気的に接続されている。
【0031】
また、第1の不平衡信号端子22と第2の不平衡信号端子26とが電気的に接続されている。第1の平衡信号端子23と第3の平衡信号端子27とが第1の入出力端子30に電気的に接続されている。第2の平衡信号端子24と第4の平衡信号端子28とが第2の入出力端子31に電気的に接続された構成としている。
【0032】
ここで、第1の入出力端子30からの入出力信号の位相が第2の入出力端子31からの入出力信号の位相に対して180°ずれた逆位相の構成としている。なお、実際には、設計精度やばらつきを考慮すると、第1の入出力端子30と第2の入出力端子31の入出力信号の位相差は180°±10°程度の幅を有する。
【0033】
さらに、第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ25は、第1、第2、第3、第4、第5のIDT電極32、33、34、35、36を有する。第1、第2、第3、第4、第5のIDT電極32、33、34、35、36の弾性波伝搬方向の両側にはグレーティング型の反射器42、43を有している。同様に、第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ29は、第6、第7、第8、第9、第10のIDT電極37、38、39、40、41を有する。第6、第7、第8、第9、第10のIDT電極37、38、39、40、41の弾性波伝搬方向の両側にはグレーティング型の反射器44、45を有している。
【0034】
第1、第3、第5のIDT電極32、34、36の一端は、第1の不平衡信号端子22に電気的に接続されると共に、その他端はグランドに接続されている。同様に、第6、第8、第10のIDT電極37、39、41の一端は第2の不平衡信号端子26に電気的に接続されると共に、その他端はグランドに接続されている。
【0035】
すなわち、第1、第3、第5のIDT電極32、34、36は、それぞれ、
図5に示すように、共通接続された複数本の電極指と、共通接続された複数本の電極指が交差するように対向配置されている。第1、第5のIDT電極32、36のそれぞれの、共通接続された複数本の電極指と、第3のIDT電極34の共通接続された複数本の電極指とが、第1の不平衡信号端子22に電気的に接続されている。第1、第5のIDT電極32、36のそれぞれの、共通接続された複数本の電極指と、第3のIDT電極34の共通接続された複数本の電極指とが、グランドに接続されている。第6、第8、第10のIDT電極37、39、41は、それぞれ、
図5に示すように、共通接続された複数本の電極指と、共通接続された複数本の電極指を有している。第6、第10のIDT電極37、41のそれぞれの、共通接続された複数本の電極指と、第8のIDT電極39の共通接続された複数本の電極指とが、第2の不平衡信号端子26に電気的に接続されている。第6、第10のIDT電極37、41のそれぞれの、共通接続された複数本の電極指と、第8のIDT電極39の共通接続された複数本の電極指とが、グランドに接続されている。
【0036】
第2のIDT電極33の一端はグランドに接続されると共に、その他端は第1の平衡信号端子23に電気的に接続されている。第7のIDT電極38の一端はグランドに接続されると共に、その他端は第3の平衡信号端子27に電気的に接続されている。また、上述の通り、第1の平衡信号端子23と第3の平衡信号端子27とが第1の入出力端子30に電気的に接続されている。
【0037】
一方、第4のIDT電極35の一端はグランドに接続されると共に、その他端は第2の平衡信号端子24に電気的に接続されている。第9のIDT電極40の一端はグランドに接続されると共に、その他端は第4の平衡信号端子28に電気的に接続されている。また、上述の通り、この第2の平衡信号端子24と第4の平衡信号端子28とが第2の入出力端子31に電気的に接続されている。
【0038】
すなわち、第2、第4、第7、第9のIDT電極33、35、38、40は、それぞれ、
図5に示すように、共通接続された複数本の電極指と、共通接続された複数本の電極指が交差するように対向配置されている。第2、第7のIDT電極33、38のそれぞれの一端は、共通接続された複数本の電極指がグランドに接続されている。第2のIDT電極33は、他方の共通接続された複数本の電極指が第1の平衡信号端子23に電気的に接続されている。第7のIDT電極38は、他方の共通接続された複数本の電極指が第3の平衡信号端子27に電気的に接続されている。第4、第9のIDT電極35、40のそれぞれは、一方の共通接続された複数本の電極指がグランドに接続されている。第4のIDT電極35は、他方の共通接続された複数本の電極指が第2の平衡信号端子24に電気的に接続されている。第9のIDT電極40は、他方の共通接続された複数本の電極指が第4の平衡信号端子28に電気的に接続されている。
【0039】
そして、第1の平衡信号端子23からの入出力信号の位相と第2の平衡信号端子24からの入出力信号の位相とを逆位相にする。さらに、第3の平衡信号端子27からの入出力信号の位相と第4の平衡信号端子28からの入出力信号の位相とを逆位相にする。
【0040】
また、第1の平衡信号端子23からの入出力信号の位相と第3の平衡信号端子27からの入出力信号の位相とを同位相にする。さらに、第2の平衡信号端子24からの入出力信号の位相と第4の平衡信号端子28からの入出力信号の位相とを同位相にする。
【0041】
このことにより、第1の入出力端子30からの入出力信号の位相が前記第2の入出力端子31からの入出力信号の位相に対して逆位相の構成としている。
【0042】
このような構成により、本実施の形態では、所望の帯域における高域部のスプリアスを抑制し、挿入損失劣化を低減させることができる。
【0043】
図6は本実施の形態における並列型の弾性波フィルタの通過特性を示す図である。横軸に周波数を、縦軸にその周波数におけるフィルタの通過特性を示している。
図6では、本実施の形態による特性201と従来例による特性202を示している。
図6に示すように、所望の通過帯域PBが2.11GHz〜2.17GHzの周波数範囲において、本実施の形態の特性201(太線)は、その高域部におけるスプリアスSが抑制され、挿入損失劣化が低減されていることがわかる。具体的には、高域部である2.17GHzの挿入損失が従来例による特性202(細線)では1.8dBであるのに対し、本実施の形態の特性202によれば1.4dBにまで改善されていることがわかる。
【0044】
図5に示した圧電基板21には、YカットX伝播LiNbO
3基板や、その他のカット角を有するLiNbO
3基板、LiTaO
3基板、水晶などの圧電性を有する圧電基板を用いることができる。
【0045】
圧電基板21上に形成する電極材料としては、アルミニウム等の金属もしくは合金を用いることができる。
【0046】
なお、本実施の形態における第1、第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ25、29は、いずれも弾性波伝播方向に沿って配置された5個のIDT電極を有する構成とした。しかし、1つの不平衡信号を2つの平衡信号に変換できる構成であれば、IDT電極の数はこれに限定されない。
【0047】
また、本実施の形態における第1、第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ25、29の電極設計は互いに同一である構成とした。しかし、それぞれの縦結合共振子型弾性波フィルタが1つの不平衡信号を2つの平衡信号に変換できる構成であれば同一構成でなくても構わない。
【0048】
ここで、第1の縦結合型弾性波フィルタ25が有する各IDT電極32〜36の最外端のIDT電極32、36の電極指の極性と、第2の縦結合型弾性波フィルタ29が有する各IDT電極37〜41の最外端のIDT電極37、41の電極指の極性を同じにすることが望ましい。これは、第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ25が有する各IDT電極32〜36の櫛歯電極の組み合わせ方と、第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ29が有する各IDT電極37〜41の櫛歯電極の組み合わせ方は同一とすることにより実現することができる。
【0049】
すなわち、IDT電極32と37、IDT電極33と38、IDT電極34と39、IDT電極35と40、IDT電極36と41の各対の櫛歯電極の組み合わせ方が同一とすることにより実現することができる。これにより、第1の平衡信号端子23からの入出力信号と第3の平衡信号端子27からの入出力信号を同位相とすることができ、第2の平衡信号端子24の入出力信号と第4の平衡信号端子28の入出力信号を同位相とすることができ、本実施の形態における並列型の弾性波フィルタを容易に実現することが可能となる。
【0050】
なお、第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ25の交差幅L1を、第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ29の交差幅L2よりも大きくすることにより、横モードスプリアスの発生周波数を効果的に分散させることができる。
【0051】
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3における並列型の弾性波フィルタを示す概略上面図である。本実施の形態の並列型の弾性波フィルタは、実施の形態2の並列型の弾性波フィルタに対して、
図7に示すように、第1の入出力端子30と第2の入出力端子31との間にキャパシタンス成分51を介在させている。
【0052】
すなわち、第1の平衡信号端子23と第3の平衡信号端子27とを第1の接続点46に接続する。第2の平衡信号端子24と第4の平衡信号端子28とを第2の接続点47に接続する。第1の接続点46と第3の平衡信号端子27とを第1の配線48により接続する。第2の接続点47と第2の平衡信号端子24とを第2の配線49により接続する。
【0053】
図7に示す構成は、例えば、
図8、
図9に具体的に示すようにして得られる。
図8は
図7の具体的な構成上面図であり、
図9はその要部斜視図である。すなわち、第1の配線48と第2の配線49とを圧電基板21上にて交差させる。第1の配線48と第2の配線49との間には誘電体膜50を形成する。この構成により、
図7に示す如く第1の入出力端子30と第2の入出力端子31との間にはキャパシタンス成分51を介在させることができる。
【0054】
このような構成とすることにより、第1の入出力端子30と第2の入出力端子31から見たインピーダンスを整合させることができる。
【0055】
なお、誘電体膜50としては酸化ケイ素を用いることが望ましい。酸化ケイ素膜は、低温で製造することができるので、素子へのダメージを回避することができる。これと共に、精度良く、膜質の良い、厚み制御の容易な誘電体膜50を得ることができる。
【0056】
さらに、誘電体膜50が第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ25および第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ29の内少なくとも一方の上面を覆う構成にする。さらに、第1の縦結合共振子型弾性波フィルタ25および第2の縦結合共振子型弾性波フィルタ29の内少なくとも一方に対する機能膜として作用する構成とすることが望ましい。
【0057】
例えば、具体的には、第1の配線48と第2の配線49との間に介在する誘電体膜50により、第1、第2、第3、第4、第5のIDT電極32、33、34、35、36、および/または第6、第7、第8、第9、第10のIDT電極37、38、39、40、41を覆う構成としそれらの機能膜として作用する構成とする。
【0058】
すなわち、例えば、これらの第1、第2、第3、第4、第5、第6、第7、第8、第9、第10のIDT電極32、33、34、35、36、37、38、39、40、41上に、例えば、酸化ケイ素からなる機能膜を形成することにより、IDT電極の保護膜とすることができる。これとともに、共振周波数付近に発生する不要なスプリアスを低減し、さらに周波数温度特性を改善することができる。この機能膜を、IDT電極とは異なる位置に存在する第1の配線48と第2の配線49との間へも拡大して形成することにより、機能膜と誘電体膜50を共用化することができ、生産性高く実現することができる。
【0059】
また、圧電基板としてLiTaO
3を用いた場合などは、共振周波数付近に発生する不要なスプリアスが小さいため、加工性の良いポリイミド等の樹脂系材料を用いて、機能膜と誘電体膜50を共用化することができる。
【0060】
(実施の形態4)
図10は、本発明の実施の形態4における並列型の弾性波フィルタを示す概略上面図である。本実施の形態の並列型の弾性波フィルタは、実施の形態2の並列型の弾性波フィルタに対して、
図10に示すように、第1の入出力端子30と第2の入出力端子31との間にインダクタンス成分52を介在させている。
【0061】
例えば、第1の入出力端子30と第2の入出力端子31の間に、両端が電気的に接続されるように積層インダクタや薄膜インダクタを設けることにより、インダクタンス成分52を介在させる。
【0062】
第1の入出力端子30と第2の入出力端子31との間にインダクタンス成分52を介在させることにより、このインダクタンス成分52によりインピーダンス整合を図ることができる。そのため、インピーダンス整合をとるために必要なキャパシタンス値を低減させることができる。その結果として、
図8、
図9に示した第1の配線48と第2の配線49との交差面積を小さくすることができ、フィルタの小型化を実現することができる。
【0063】
(実施の形態5)
以下、本発明の実施の形態5におけるデュプレクサについて図面を参照しながら説明する。
図11は、本実施の形態におけるデュプレクサを示す電気回路図である。
【0064】
図11に示す如く、本実施の形態におけるデュプレクサ56は、送信用弾性波フィルタ53と、受信用弾性波フィルタ54と、これら送信用弾性波フィルタ53、受信用弾性波フィルタ54に電気的に接続される移相回路55とを有する。本実施の形態における受信用弾性波フィルタ54は、実施の形態2において説明した並列型の弾性波フィルタを用いて構成した。
【0065】
図12にこのデュプレクサ56を用いたWCDMA(登録商標)(Wideband Code Division Multiple Access)用アンテナ共用器の通過特性を示す。
図12は、送信通過帯域PB1に対する送信通過特性801と、受信通過帯域PB2に対する受信通過特性802とを示している。
図12から、受信通過帯域PB2内(2.11GHz〜2.17GHz)において、約−2.1dBと良好な挿入損失を実現していることが分かる。
【0066】
このように、実施の形態2において説明した並列型の弾性波フィルタを、受信用弾性波フィルタ54および送信用弾性波フィルタ53の少なくとも一方として用いることによって、低挿入損失であるデュプレクサ56を得ることが可能となる。
【0067】
(実施の形態6)
図13は本発明の実施の形態6における電子機器を示す構成図である。本実施の形態では、電子機器として携帯電話90の構成を示している。すなわち、
図13において、アンテナ91で受信した2.0GHzの受信信号は、デュプレクサ92で受信側に分けられ、ローノイズアンプ93を介して第1段の弾性波フィルタ94に送られる。弾性波フィルタ94でノイズを除去された信号は、ミキサ95で周波数を130MHzに低減され、第2段の弾性波フィルタ96に送られる。弾性波フィルタ96で低損失な信号が取り出され、復調回路97を介してスピーカ98から音声信号を聞くことができる。
【0068】
一方、マイク99に発した音声は、ADコンバータ100でデジタル信号に変換され、変調器101で位相変調されてミキサ102に入力される。ミキサ102で周波数を高くした信号は弾性波フィルタ103に入力される。弾性波フィルタ103で雑音をカットされた信号は、パワーアンプ104およびデュプレクサ92を介してアンテナ91から2.0GHzの送信信号として送信される。
【0069】
このように、例えば、携帯電話90の弾性波フィルタ92、94、96、103に、実施の形態2で説明した並列型の弾性波フィルタを用いることにより、低損失の携帯電話90を得ることができる。すなわち、携帯電話90の聞き安さの品質向上を図ることができる。