特許第5690943号(P5690943)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5690943
(24)【登録日】2015年2月6日
(45)【発行日】2015年3月25日
(54)【発明の名称】水中昇降装置
(51)【国際特許分類】
   B66D 1/40 20060101AFI20150305BHJP
   B66D 1/60 20060101ALI20150305BHJP
   B63C 11/00 20060101ALI20150305BHJP
   B63B 22/00 20060101ALI20150305BHJP
【FI】
   B66D1/40 Z
   B66D1/60 Z
   B63C11/00 Z
   B63B22/00 Z
【請求項の数】16
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-533664(P2013-533664)
(86)(22)【出願日】2012年9月11日
(86)【国際出願番号】JP2012073139
(87)【国際公開番号】WO2013039048
(87)【国際公開日】20130321
【審査請求日】2014年1月14日
(31)【優先権主張番号】特願2011-203274(P2011-203274)
(32)【優先日】2011年9月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232922
【氏名又は名称】日油技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088306
【弁理士】
【氏名又は名称】小宮 良雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126343
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 浩之
(72)【発明者】
【氏名】川原 寿能
(72)【発明者】
【氏名】中村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】太田 純吾
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−063159(JP,A)
【文献】 特開平05−139370(JP,A)
【文献】 特開昭49−116789(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3117566(JP,U)
【文献】 実開昭63−059191(JP,U)
【文献】 特開2001−151474(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63C 11/00
B66D 1/60
B66D 1/40
B66D 1/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水底へ繋がるケーブルを介して水中に係留されつつ水中観測機器と浮力体とが設けられたフレームごと昇降させる水中昇降装置であって、ストッパーが前記フレームよりも下方で前記ケーブルの途中に取り付けられており、前記ケーブルの巻き取り及び繰り出しをするウインチと、開閉可能な複数のフックが前記ケーブルを取り囲み前記巻き取りによる前記ストッパーの押圧接触をトリガーにして閉じた前記フックに前記ストッパーを掴持させつつ前記巻き取りを停止させ、開いた前記フックから前記ストッパーの開放をトリガーにして前記繰り出しを開始させるラッチユニットとが、前記フレームに設けられていることを特徴とする水中昇降装置。
【請求項2】
前記ウインチから上向きに伸びる前記ケーブルを掛けて前記ストッパーの方向へ緊張させて伝達させる綱車が、前記フレームに設けられていることを特徴とする請求項1に記載の水中昇降装置。
【請求項3】
前記綱車のシャフトを支えるリンクアームが、前記フレームに軸支されつつ前記ケーブルの緊張に逆らう方向へ付勢されており、前記シャフトに付されたシャフトマーカーによって前記ケーブルの緊張に応じた前記シャフトの近接状態と前記ケーブルの弛緩により前記付勢に応じた前記シャフトの離反状態とを検知する近接スイッチが、前記フレームに設けられていることを特徴とする請求項2に記載の水中昇降装置。
【請求項4】
前記近接スイッチが、前記シャフトの離反状態を検出したとき前記ウインチの繰り出しを停止し又は前記ケーブルが緊張するまで前記ウインチの巻き取りを駆動するウインチ駆動/停止回路に繋がっていることを特徴とする請求項3に記載の水中昇降装置。
【請求項5】
前記綱車の側面に付された綱車マーカーの接近を検知する近接覚センサーが、前記フレームに設けられ、前記近接覚センサーがその綱車マーカーの接近の回数に応じた綱車回転数の検出回路に接続されていることを特徴とする請求項2〜4の何れかに記載の水中昇降装置。
【請求項6】
前記綱車回転数の検出回路が、その回転数と前記綱車の外周長とに応じた前記ケーブルの巻き取り又は繰り出しの長さを算出する演算回路と、前記長さと前記ケーブル全長とを比較演算する演算回路と、前記長さと前記ケーブル全長との一致を検出したとき前記ケーブルの巻き取り又は繰り出しを停止するウインチ停止回路とに、接続されていることを特徴とする請求項5に記載の水中昇降装置。
【請求項7】
前記ラッチユニットが、前記ストッパーの押圧接触によってロックされる押子とそれを前記トリガーにして前記押子へ係合して閉じる前記フックとを、有していることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の水中昇降装置。
【請求項8】
前記ストッパーに付されその存在を示すストッパー存在指示マーカーと、前記フックに付されその閉じ状態を示すストッパー掴持マーカーとの少なくとも何れかを検知するストッパー検出用センサーが、前記フレームに設けられ、前記ストッパー存在指示マーカー及び/又はストッパー掴持マーカーの検出に応じ前記ケーブルの巻き取り及び繰り出しを制御するウインチ駆動回路が、前記ラッチユニットに接続されていることを特徴とする請求項1〜7の何れかに記載の水中昇降装置。
【請求項9】
前記ストッパーが、ブイ及び/又は犠牲電極を有していることを特徴とする請求項1〜8の何れかに記載の水中昇降装置。
【請求項10】
前記ケーブルが、前記水底に沈めた錘に繋がる係留用ロープへ、分離器を介して、接続されていることを特徴とする請求項1〜9の何れかに記載の水中昇降装置。
【請求項11】
回転する前記ウインチのドラムに同一回転軸のスリーブが挿入され、前記スリーブの外周でその軸に対し傾斜した周回溝が設けられ、前記ドラムから前記軸向きに突き出た突起が、変速器により前記スリーブと異なる速度で回転しつつ前記軸と平行に前記突起の往復動を誘導するガイドを介して、前記周回溝へ摺動走行可能に嵌まり、前記ガイドで牽引されつつ連動して回転する前記ドラムが、前記スリーブの回転による前記周回溝上での前記突起の走行に連動して前記ケーブルの径ずつ順次ずれながら、前記突起の往復動に従い、前記ケーブルを層状に巻き取ることを特徴とする請求項1〜10の何れかに記載の水中昇降装置。
【請求項12】
前記フレームが、水圧計、及び前記水圧計の検出水圧に基づいて水面の状態を検出する水面状態の検出回路を有していることを特徴とする請求項1〜11の何れかに記載の水中昇降装置。
【請求項13】
前記水面状態の検出回路が、前記検出水圧の変動から前記水中観測機器の上昇速度を算出し、この上昇速度に基づいて前記水面の状態を検出することを特徴とする請求項12に記載の水中昇降器。
【請求項14】
前記水面状態の検出回路が、前記上昇速度の分散値を算出し、前記分散値が所定閾値を超えたときに、前記水面の状態として波高が高いと判別することを特徴とする請求項13に記載の水中昇降器。
【請求項15】
前記水面状態の検出回路が、前記上昇速度がマイナス値になったときに、前記水面の状態として波高が高いと判別することを特徴とする請求項13に記載の水中昇降器。
【請求項16】
前記水面状態の検出回路が、検出した前記水面の状態に基づいて、前記ウインチの繰り出しを停止させることを特徴とする請求項12〜15の何れかに記載の水中昇降装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋等で、特定の水域での一定又は異なる水深の環境状態を水中観測する機器を、水中で昇降させる水中昇降装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
海洋、湖沼、河川、ダム等の水中における水温、pH、クロロフィル濃度、塩分濃度、潮流等を測定する水中観測が行われている。このような水中観測では、特に、同一水域での水面から深層域までの異なる水深での繰り返した観測データや、水面直下での経時的な観測データを得ることが、重要である。
【0003】
このような水中観測は、特許文献1に記載のように、ケーブルを巻き取るウインチと観測機器とが搭載された浮力体を、水底まで沈めた錨にそのケーブルで係留した水中昇降装置によって行われる。ウインチでケーブルを巻き取って浮力体を沈めて深い水深で観測したり、ウインチからケーブルを繰り出し解き放ち浮力体を浮き上がらせて浅い水深で観測したりして、繰返し異なる水深での環境状態を、観測する。また、潮の満ち引きに合わせて常に浮力体が水面直下となるよう、ウインチの巻き取り・繰り出しを調整して、経時的に環境状態を、観測する。
【0004】
このようにして、浮力体ごと観測機器を、水面直下まで浮上させたり、ちょうど水面まで浮上させたりする際、水面の波や潮流の変動のせいで、ウインチによるケーブルの巻き取り・繰り出しによりケーブルに弛みが生じ易い。そのため、ケーブルが、ウインチのドラムや綱車から脱落してしまい、水中昇降装置が、作動不能に陥り易い。観測機器に水圧計を併設して水圧から深度を算出するモニタリングによって深度を微調整するのは、誤差が生じやすいうえ、水面又は水面直下まで浮上させたとき波浪や潮流のせいで不意に水面で漂った場合に、必然的に生じる弛みを直接的に判断できない。
【0005】
また、水中昇降装置と錨とを繋ぐケーブルは、水中の影響、特に外洋等の潮の流れの影響を極力受けないように、可能な限り細くしている。そのため、海況等が荒れ水面がしけている状況で、水中昇降装置を水面まで浮上させてしまうと、水面の大波・波浪の影響でその装置が波動にもまれてケーブルが過度に緊張してしまうせいで、細いケーブルが破断し易く、回収すべき高価な水中昇降装置の流出の危険性が高まる。また、観測機器に水圧計を併設して水面直下や水面への浮上を意図的に常に避けるようにすると、水中観測、とりわけ鉛直方向の海洋観測において重要な水面又は水面直下での観測ができず、折角の海洋観測の意義が半減してしまう。
【0006】
また、ウインチの減速器は伝達効率を優先すると、ウインチからのケーブルの巻き取り又は繰り出しをしない時にウインチのモータへ通電させないと、ウインチが回転フリーの状態となり、昇降装置の自己浮力により、ケーブルが徐々に自然と繰り出され、時間の経過とともに水面へ不意に浮上してしまい、水面浮上時に前記と同様な危険にさらされる。ウォームギアのような逆転防止機能を有する大型の減速器を使用することは、伝達効率が悪いためモータの消費電力が大きくなってしまうせいで、水中で自律して動作しなければならない電池駆動の水中昇降装置に、向かない。
【0007】
さらに、水中昇降装置は、水中で自律して所期通りに昇降動作しなければならないから、ケーブル繰り出し時にはウインチに巻き取られているケーブルが全て繰り出される前に繰り出しを停止させなければ、同一方向への過剰駆動により、逆に巻き取りが始まってしまうため、ケーブルの繰り出し長を正確にカウントしなければならない。ウインチの回転数に応じて、ケーブルの繰り出し長を概算するものが汎用されているが、ウインチによるケーブルの巻き層に応じて、ひと巻き当たりのケーブル長が変動することになり、ウインチの回転数のみから正確な繰り出し長を算出できない。
【0008】
さらに加えて、水中、とりわけ腐食し易い海中で、水中昇降装置に腐食防止のために犠牲電極を装着すると、犠牲電極の消耗に応じて水中昇降装置の自己浮力が増加し、ウインチへの負荷が増強し、自己浮力の増加に見合うウインチの駆動を必要とするため、消費電力が増大し、長期間の自律した昇降動作の妨げとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2001−151474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、水中待機時に自己浮力によってケーブルが不意に繰り出されず、簡素な機械仕掛けによってケーブルの繰り出しを防止でき、不必要に電力を消費しない水中昇降装置を提供することを目的とする。
【0011】
また、水中昇降装置の水面への浮上時や水中待機時にもケーブルの弛みによるウインチ等からの脱離を生じさせず、ケーブルの過剰な巻き取りや繰り出しを防止するため巻き取り又は繰り出したケーブル長を正確に検出でき、充分に防食しつつ、余計な電力を消費せず、必要に応じ荒天時にのみ水面への浮上を簡便に回避できる水中昇降装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するためになされた請求の範囲の請求項1に記載の水中昇降装置は、水底へ繋がるケーブルを介して水中に係留されつつ水中観測機器と浮力体とが設けられたフレームごと昇降させる水中昇降装置であって、ストッパーが前記フレームよりも下方で前記ケーブルの途中に取り付けられており、前記ケーブルの巻き取り及び繰り出しをするウインチと、開閉可能な複数のフックが前記ケーブルを取り囲み前記巻き取りによる前記ストッパーの押圧接触をトリガーにして閉じた前記フックに前記ストッパーを掴持させつつ前記巻き取りを停止させ、開いた前記フックから前記ストッパーの開放をトリガーにして前記繰り出しを開始させるラッチユニットとが、前記フレームに設けられていることを特徴とする。
【0013】
請求項2に記載の水中昇降装置は、請求項1に記載されたもので、前記ウインチから上向きに伸びる前記ケーブルを掛けて前記ストッパーの方向へ緊張させて伝達させる綱車が、前記フレームに設けられていることを特徴とする。
【0014】
請求項3に記載の水中昇降装置は、請求項2に記載されたもので、前記綱車のシャフトを支えるリンクアームが、前記フレームに軸支されつつ前記ケーブルの緊張に逆らう方向へ付勢されており、前記シャフトに付されたシャフトマーカーによって前記ケーブルの緊張に応じた前記シャフトの近接状態と前記ケーブルの弛緩により前記付勢に応じた前記シャフトの離反状態とを検知する近接スイッチが、前記フレームに設けられていることを特徴とする。
【0015】
請求項4に記載の水中昇降装置は、請求項3に記載されたもので、前記近接スイッチが、前記シャフトの離反状態を検出したとき前記ウインチの繰り出しを停止し又は前記ケーブルが緊張するまで前記ウインチの巻き取りを駆動するウインチ駆動/停止回路に繋がっていることを特徴とする。
【0016】
請求項5に記載の水中昇降装置は、請求項2〜4の何れかに記載されたもので、前記綱車の側面に付された綱車マーカーの接近を検知する近接覚センサーが、前記フレームに設けられ、前記近接覚センサーがその綱車マーカーの接近の回数に応じた綱車回転数の検出回路に接続されていることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の水中昇降装置は、請求項5に記載されたもので、前記綱車回転数の検出回路が、その回転数と前記綱車の外周長とに応じた前記ケーブルの巻き取り又は繰り出しの長さを算出する演算回路と、前記長さと前記ケーブル全長とを比較演算する演算回路と、前記長さと前記ケーブル全長との一致を検出したとき前記ケーブルの巻き取り又は繰り出しを停止するウインチ停止回路とに、接続されていることを特徴とする。
【0018】
請求項7に記載の水中昇降装置は、請求項1〜6の何れかに記載されたもので、前記ラッチユニットが、前記ストッパーの押圧接触によってロックされる押子とそれを前記トリガーにして前記押子へ係合して閉じる前記フックとを、有していることを特徴とする。
【0019】
請求項8に記載の水中昇降装置は、請求項1〜7の何れかに記載されたもので、前記ストッパーに付されその存在を示すストッパー存在指示マーカーと、前記フックに付されその閉じ状態を示すストッパー掴持マーカーとの少なくとも何れかを検知するストッパー検出用センサーが、前記フレームに設けられ、前記ストッパー存在指示マーカー及び/又はストッパー掴持マーカーの検出に応じ前記ケーブルの巻き取り及び繰り出しを制御するウインチ駆動回路が、前記ラッチユニットに接続されていることを特徴とする。
【0020】
請求項9に記載の水中昇降装置は、請求項1〜8の何れかに記載されたもので、前記ストッパーが、ブイ及び/又は犠牲電極を有していることを特徴とする。
【0021】
請求項10に記載の水中昇降装置は、請求項1〜9の何れかに記載されたもので、前記ケーブルが、前記水底に沈めた錘に繋がる係留用ロープへ、分離器を介して、接続されていることを特徴とする。
【0022】
請求項11に記載の水中昇降装置は、請求項1〜10の何れかに記載されたもので、回転する前記ウインチのドラムに同一回転軸のスリーブが挿入され、前記スリーブの外周でその軸に対し傾斜した周回溝が設けられ、前記ドラムから前記軸向きに突き出た突起が、変速器により前記スリーブと異なる速度で回転しつつ前記軸と平行に前記突起の往復動を誘導するガイドを介して、前記周回溝へ摺動走行可能に嵌まり、前記ガイドで牽引されつつ連動して回転する前記ドラムが、前記スリーブの回転による前記周回溝上での前記突起の走行に連動して前記ケーブルの径ずつ順次ずれながら、前記突起の往復動に従い、前記ケーブルを層状に巻き取ることを特徴とする。
【0023】
請求項12に記載の水中昇降装置は、請求項1〜11の何れかに記載されたもので、前記フレームが、水圧計、及び前記水圧計の検出水圧に基づいて水面の状態を検出する水面状態の検出回路を有していることを特徴とする。
【0024】
請求項13に記載の水中昇降装置は、請求項12に記載されたもので、前記水面状態の検出回路が、前記検出水圧の変動から前記水中観測機器の上昇速度を算出し、この上昇速度に基づいて前記水面の状態を検出することを特徴とする。
【0025】
請求項14に記載の水中昇降装置は、請求項13に記載されたもので、前記水面状態の検出回路が、前記上昇速度の分散値を算出し、前記分散値が所定閾値を超えたときに、前記水面の状態として波高が高いと判別することを特徴とする。
【0026】
請求項15に記載の水中昇降装置は、請求項13に記載されたもので、前記水面状態の検出回路が、前記上昇速度がマイナス値になったときに、前記水面の状態として波高が高いと判別することを特徴とする。
【0027】
請求項16に記載の水中昇降装置は、請求項12〜15の何れかに記載されたもので、前記水面状態の検出回路が、検出した前記水面の状態に基づいて、前記ウインチの繰り出しを停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
本発明の水中昇降装置は、水中待機時に、ウインチのモータに通電がなくウインチがフリーとなっていても、水中昇降装置の自己浮力が掛かり続けていても、ケーブルが不意に繰り出されない。そのため、水中昇降装置が不意に水上へ浮上してしまう不測の事態を避けることができる。このようなケーブルの繰り出しの防止は、ラッチユニットによりストッパーをフックでホールドする簡素な機械仕掛けによるものであるから、確実にケーブルの繰り出しを防止できるうえ、不必要に電力を消費せず、水中で自律して長期間の水中観測する都合上、省電力化を図ることができ、軽量化、簡素化に資する。
【0029】
また、水中昇降装置は、綱車にケーブルの弛みを検出する機構が備わっていると、水中昇降装置の水面浮上を的確に、検知することができる。そのため、水中昇降装置が水面に浮上しケーブルに弛みが発生した瞬間に、ケーブルの繰り出しを停止したり必要に応じケーブルを再緊張させたりすることができるため、それの水面への浮上時や水中待機時にもケーブルの弛みによるウインチのドラムや綱車等からの脱離を生じさせない。
【0030】
また、水中昇降装置は、ケーブルの巻き取り又は繰り出しによっても、ケーブルの巻き層に応じて外周が変化するウインチのドラムの回転数を基準とするのとは異なり、外周が不変である綱車の回転数を基準にして、巻き取り又は繰り出したケーブル長を検出するという、簡素な構成とするものである。これにより、巻き取り又は繰り出したケーブル長を再現性及び精度良く正確に検出して算出し、それに応じてケーブルの過剰な巻き取りや繰り出しを防止することができる。しかも、ウインチのモータの駆動伝達部に逆転防止機構が必要なく、その駆動伝達部の効率を向上させることができ、省電力化に資する。
【0031】
さらに、水中昇降装置は、ストッパーがブイを有することによりラッチユニットの作動が一層正確になる。また、水中昇降装置本体のフレームから離れて存するストッパーが犠牲電極を有することにより、全体の軽量化を図りつつ充分に防食でき、しかも余計な電力を消費しない。しかも、水中昇降装置は、水中待機時にラッチユニットを介してストッパーと導通があるため、ストッパーに装着されている犠牲電極を水中昇降装置の腐食から守るために利用できる。
【0032】
さらに加えて、水中昇降装置は、内蔵する水圧計の値の揺らぎを統計的に処理することにより、必要に応じ荒天時にのみ、水面にまで浮上する前にケーブルの繰り出しを中断して上昇を停止させ、安全に、かつ予防的に、荒天時の危険な水面への浮上を簡便に回避できる。また、水中では電波が減衰してしまうため、従来難しかった電波による観測結果の無線データ伝送が、水面に浮上した際に纏めて行うことも可能となる。必要に応じ、水底の錨に繋がった係留用ロープから、水中昇降装置本体に繋がっているケーブルを、分離器によって分離させることにより、水中観測機器やデータロガー等をフレームごと、回収して、再使用することが、可能である。
【0033】
さらに、水中昇降装置は、ウインチのドラム内部に、ケーブルを整然と巻き取らせる機構を一体的に収めたことにより、簡素で小型なものになる。その場合、軽量であり、しかも流体抵抗面積が狭いから、水中で使用しても流体抵抗が小さく、ケーブルを巻き取るのに少ない電力エネルギーで足りる。特に水中でバッテリーにより駆動させる際の電力消費量が少なくてすむので、小型バッテリーを用いても長時間繰返して使用できる。
【0034】
しかも、この水中昇降装置は、高度の調整技術を要する精密な部品を用いなくてすみ、部品の数や大きさを低減できるので、簡便に効率よく、安価に製造することができる。また、簡易な構造であって、破損し難いから、汎用性があるうえ、誤動作を起こさず、長期間、水中でも安定して使用できる。この水中昇降装置によれば、異なる水深で経時的に繰返し観測データを、長期間にわたって得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1】本発明を適用する水中昇降装置の使用状態を示す斜視図である。
図2】本発明を適用する水中昇降装置の一部を表しつつ使用状態を示す斜視図である。
図3】本発明を適用する水中昇降装置の内部のシーブユニットの動作状態を示す斜視図である。
図4】本発明を適用する水中昇降装置の内部のシーブユニットの別な動作状態を示す斜視図である。
図5】本発明を適用する水中昇降装置の内部のラッチユニットの動作状態を示す斜視図である。
図6】本発明を適用する水中昇降装置の内部のラッチユニットとストッパーユニットとの動作状態を示す斜視図である。
図7】本発明を適用する水中昇降装置の内部のラッチユニット中のロックユニットを示す一部切欠き斜視図である。
図8】本発明を適用する水中昇降装置の内部のラッチユニット中のロックユニットの動作状態を示す一部切欠き斜視図である。
図9】本発明を適用する水中昇降装置の内部のウインチユニットの動作状態を示す断面図である。
図10】本発明を適用する水中昇降装置の内部のウインチユニットの別な動作状態を示す一部切欠き側面図である。
図11】本発明を適用する水中昇降装置の内部のウインチユニットの別な動作状態を示す一部切欠き平面図である。
図12】本発明を適用する水中昇降装置の内部の別なウインチユニットの動作状態を示す一部切欠き平面図である。
図13】本発明を適用する水中昇降装置のブロック図である。
図14】本発明を適用する水中昇降装置の使用途中を示す概要図である。
図15】本発明を適用する水中昇降装置の別な使用途中を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0037】
本発明の水中昇降装置1の実施の一形態を、使用状態を示す図1、及びそのカバー13を取ってカバー内部の状態を示す図2を参照しながら説明する。
【0038】
水中昇降装置1は、水中で自律して昇降できるようにケーブル11を巻き取ったり繰り出したりするウインチ102を内蔵したものである。この水中昇降装置1は、このウインチ102を有するウインチユニット100、綱車21を有するシーブユニット20、複数のフック34を有するラッチユニット30、各種回路を内蔵するコントロールユニット70、小型電源を有するバッテリーユニット90、水中観測機器80、浮力体12、及びカバー13が、フレーム10に、取り付けられている。
【0039】
コントロールユニット70は、ウインチ駆動/停止回路(第1のウインチ用回路)、ウインチ駆動回路(第2のウインチ用回路)、ウインチ停止回路(第3のウインチ用回路)、綱車回転数の検出回路、長さ演算回路、比較演算回路、水面状態の検出回路、測定管理回路、データロガーを内蔵しており(図13参照)、水中昇降装置1の動作を統括的に制御する。コントロールユニット70は、一例としてCPU(中央処理演算装置)、その動作用のプログラムやデータ等を記憶するメモリ、及び各種インタフェースなどを備え、各回路として機能するように構成されている。
【0040】
水中観測機器80は、水温計・水圧計・pHメータ等の各種観測機器が、防水されて密閉されている。
【0041】
ウインチユニット100は、ウインチ102のドラム125と、そのドラムシャフトを駆動するモータ114とを有しており、フレーム10に固定されている。ウインチ102のドラム125に、ケーブル11が巻き取られている。ケーブル11の一端は、ウインチ102のドラム125に脱落不能に接続されており、ケーブル11の他方の端部は、シーブユニット20とラッチユニット30とを介して下方向に突き抜けて、水底へ向いている。その突き抜けたケーブル11の途中に、ストッパーユニット50が取り付けられている。ストッパーユニット50は、少なくともストッパー51を備え、さらにブイ52及び/又は犠牲電極53を備えることが好ましく、これらがケーブル11から脱落も移動もしないようにケーブル11に確りと固定されている。ストッパー51と犠牲電極53とは電気的に接続されている。
【0042】
そのケーブル11の他方の端部は、水底に沈めた錨17に繋がる係留用ロープ16へ、分離器15を介して接続されている(図14参照)。
【0043】
シーブユニット20を個別に、図3及び図4に示す。シーブユニット20は、周囲にケーブル溝が設けられ中心にシャフト22を有する円盤状の滑車である綱車21と、そのシャフト22を綱車21の両側から支える2枚のリンクアーム26とを有している。リンクアーム26は、支点ピン27によって軸支されつつ、フレーム10に取り付けられている。ウインチ102のウインチユニット100(図2参照)から上向きに伸びたケーブル11が、綱車21によってストッパーユニット50(図1、2参照)のある下方向へ曲げられて伝達され、緊張して、ラッチユニット30(図1、2参照)へ導かれている。ウインチ102のドラム125の回転によりケーブル11が巻き取られ又は繰り出されると、綱車21はシャフト22を中心に回転する。2枚のリンクアーム26は、綱車21からケーブル11を脱離し難くするために、綱車21を跨ぐように接続部材26aによって接続されている。
【0044】
綱車21のシャフト22を支えるリンクアーム26は、支点ピン27によって軸支されつつ、スプリング25によってケーブル11の緊張に逆らう方向、即ち上方向へ付勢されて引っ張られている。図3(a)は、ケーブル11の緊張が解けケーブル11が緩んだ状態を示し、同図(b)は、ケーブル11が緊張している状態を示している。綱車21のシャフト22の一方の先端に、ケーブル11の緊張状態であることを検出するためのマグネットであるシャフトマーカー23が埋め込まれている。フレーム10には、シャフトマーカー23の接近を磁気的に検知する磁気式の近接スイッチ24が、設けられている。一例を示すと、近接スイッチ24は、シャフトマーカー23と最接近したとき対峙可能となるように、2枚のリンクアーム26のうちの片方よりも外側の位置で、フレーム10に固定されて設けられている。ケーブル11に張力がかかって緊張していると、近接スイッチ24によりシャフトマーカー23が接近していることが検知できるから、ケーブル11に弛みがないことを検出できる。一方、ケーブル11に弛みが発生すると、綱車21のシャフト22がスプリング25の付勢により、近接スイッチ24から遠のき、シャフトマーカー23が離反状態となって検知できなくなるから、ケーブル11の弛みがあることを検出できる。近接スイッチ24が、綱車21のシャフト22の離反状態を検知したときウインチ102の繰り出しを停止し又はケーブル11が緊張するまでウインチ102の巻き取りを駆動するウインチ駆動/停止回路に、繋がっている。このウインチ駆動/停止回路は、コントロールユニット70に密閉されて収容されている(図1、2、13参照)。
【0045】
図4のように、円盤状の綱車21の一側面には、綱車21の回転数を検出するためにマグネットである綱車マーカー28が、埋め込まれて、付されている。フレーム10には、綱車マーカー28の接近を磁気的に検知する磁気式の近接覚センサー29が、設けられている。一例を示すと、近接覚センサー29は、綱車マーカー28と最接近したとき対峙可能となるように、2枚のリンクアーム26のうちの他方よりも外側の位置で、フレーム10に固定されて設けられている。この近接覚センサー29は、綱車21の回転数を、綱車マーカー28の接近によって、検出するものである。近接覚センサー29が、その綱車マーカー28の接近の回数に応じた綱車回転数の検出回路に接続されている。またこの綱車回転数の検出回路が、その回転数と綱車21の溝の外周長とに応じたケーブル11の巻き取り又は繰り出しの長さを算出する演算回路(長さ演算回路)に接続され、長さ演算回路が、巻き取り又は繰り出しの長さとケーブル11全長とを比較演算する演算回路(比較演算回路)に接続され、比較演算回路が、巻き取り又は繰り出しの長さとケーブル11全長との一致を検出したときケーブル11の巻き取り又は繰り出しを停止するウインチ停止回路に、接続されている。この綱車回転数の検出回路と、これら演算回路と、このウインチ停止回路とは、コントロールユニット70に密閉されて収容されている(図13参照)。
【0046】
ラッチユニット30を個別に、図5及び図6に示す。ラッチユニット30は、フレーム10に対し固定されているベース板30aと、ケーブル11が遊びを有しつつ貫通している押子31と、ストッパー51の出入りを誘導するストッパーガイド35と、3次元のカム機構になっている複数の金属板状のフック34とを、有している。押子31は、ウインチ102のドラム125へケーブル11が繋がる上側で細くなった細径部と、水底へケーブル11が繋がる下側で太くなった太径部とを、有している。ベース板30aの中心には、押子31が出入りする孔が形成されている。複数のフック34は、ケーブル11を取り囲み支点ピン32によって軸支されている。支点ピン32は、ベース板30aから下方に伸びる支柱に取り付けられていて、ベース板30aに対して位置が固定されている。複数のフック34は、カム機構によって球状のストッパー51を挟み込む際に掴持可能で脱落不能となるように、それぞれケーブル11側で湾曲し凹んでいる。複数のフック34はそれぞれ、上端が押子31に当接するようにスプリング33で付勢されている。フック34はフレーム10に電気的に導通している。ストッパーガイド35は、ストッパー51が通る大きさの円形リング状に形成されていて、ベース板30aに支柱35aで固定されている。ストッパーガイド35は、フック34よりも下方(海底方向)に位置しており、ケーブル11が、円形リング状のストッパーガイド35の中を通っている。支柱35aもストッパー51のガイドを兼ねるように、複数(例えば3本)の支柱35aでストッパーガイド35を支持して、複数の支柱35aに囲まれる範囲内にストッパー51が位置するときに、フック34でストッパー51を挟み込むことが可能な位置関係になっていることが好ましい。
【0047】
押子31は、ノック式ロックユニット40の一部となっている。ロックユニット40は、ベース板30aの上部に固定されているとともにフレーム10に固定されている。押子31は、ストッパー51の押圧接触により一度押し込まれると図5(a)のようにロック機構が働き、押し込まれた状態で保持される。その際、各フック34の上端が押子31の太径部によって押し広げられ、支点ピン32を中心にして回動して、ストッパー51を掴持するように、各フック34の下端が狭められ、カム機構が閉じた状態となる(図6参照)。押子31は、ストッパー51の再度の押圧接触により再び押し込まれると図5(b)のようにロック機構が解かれ、押し戻された状態で保持される。その際、各フック34の上端がスプリング33の付勢によって押子31の細径部へ係合し、支点ピン32を中心にして回動して、ストッパー51を開放するように、各フック34の下端が広げられ、カム機構が開いた状態となる。
【0048】
図5に示すように、ストッパー51に付されその存在を示すストッパー存在指示マーカー54を、検知するストッパー検出用センサーである近接スイッチ36が、ストッパーガイド35の支柱35aに取り付けられて固定され、このストッパー存在指示マーカー54の検出に応じ、ケーブル11の巻き取り及び繰り出しを制御するウインチ駆動回路が、ラッチユニット30に接続されていてもよい。一例として、ストッパー存在指示マーカー54はマグネットであり、近接スイッチ36はマグネットの接近を磁気的に検知する磁気センサーである。ウインチ駆動回路は、コントロールユニット70に密閉されて収容される(図1、13参照)。
【0049】
フック34に付されその閉じ状態を示すストッパー掴持マーカーを検知するストッパー検出用センサーが、ストッパーガイド35又は支柱35aに設けられ、ストッパー掴持マーカーの検出に応じケーブル11の巻き取り及び繰り出しを制御するウインチ駆動回路が、ラッチユニット30に接続されていてもよい(不図示)。一例として、ストッパー掴持マーカーはマグネットであり、ストッパー検出用センサーは磁気センサーである。
【0050】
このロックユニット40を個別に、図7及び図8に示す。このロックユニット40は、図7に示すように、円筒ボディ44の中に、鋸歯状で二歯毎に側壁にスリット41aを有する鋸歯ガイド41と、それへ貫通している押子31と、押子31が貫通している三角波状の鋸歯(A)42及び鋸歯(B)43と、Oリング45と、スプリング46とが嵌め込まれて構成されている。同図に示すように、鋸歯(A)42、鋸歯(B)43には、各々の側壁に、鋸歯ガイド41のスリット41aに嵌ってガイドされる突起42a、突起43aが設けられている。また、鋸歯(A)42の側壁には、鋸歯ガイド41の内壁に形成された溝(図示せず)にガイドされる突起42bが設けられている。鋸歯ガイド41は、円筒ボディ44に対し廻り止めされて固定される。押子31は、Oリング45が嵌められることで鋸歯(B)43に対して抜け止めされる。また、図示しないが、押子31には、鋸歯(A)42を押すための鍔が形成されている。スプリング46は、鋸歯(B)43を下方向に付勢する。
【0051】
このロックユニット40は、図8に示すように作動してロック及びその解除が行われる。初期状態を(a)に示す。ストッパー51(図6参照)で押子31を押し込むと、押子31の鍔(不図示)が鋸歯(A)42を押す。これにより、鋸歯(A)42及び鋸歯(B)43が、鋸歯ガイド41内を上方向にスライドする。この移動の際に、鋸歯(A)42の突起42a及び鋸歯(B)43の突起43aが、鋸歯ガイド41のスリット41aにガイドされてスライドする(同図(b))。さらに押子31が押し込まれると鋸歯(A)42に押されて鋸歯(B)43の突起43aが鋸歯ガイド41のスリット41aから外れて、鋸歯(B)43は、押子31を中心に回転が可能になる(同図(c))。鋸歯(A)42の鋸歯及び鋸歯(B)43の鋸歯は、鋸歯(B)43が図の破線矢印方向に回転可能な角度で、互いに付き当たっている。鋸歯(B)43が回転し始めると、鋸歯(B)43の突起43aは、鋸歯ガイド41の鋸歯上を摺動する(同図(d))。突起43aの下部は、鋸歯ガイド41の鋸歯に合わせた角度で形成されている。押子31を押す力を取り除くと、スプリング46に押されることにより、さらに鋸歯(B)43は回転し、突起43aが鋸歯ガイド41の次の鋸歯に当たって止まり(同図(e))、鋸歯(B)43はこの位置に留まる。押子31には抜け止めのOリング45が嵌められているため、押子31は、押し込まれたまま、つまりロックされたままになる。
【0052】
同図(e)の状態から、押子31を押し込むと、突起43aが鋸歯ガイド41の次の鋸歯を乗り越えて鋸歯(B)43が回転し、突起43aが次のスリット41aに嵌り、スプリング46に押されて、鋸歯(A)42及び鋸歯(B)43が下側にスライドする。これにより、押子31のロックが解除されて、押子31が下側に飛び出した状態(同図(a))になる。
【0053】
ノック式のボールペンのようなこのロック機構によって、押子31が押し込まれるとロック機構が働き押子31が引っ込んだ状態に維持され(同図(e))、押子31が再度押し込まれるとロック機構が開放され、押子31が押し出された状態に維持される(同図(a))。なお、押子31のロック構造は上記の構造に限られない。ロック構造として、公知のノック式のボールペンの他のロック構造や、オルタネイト式の押しボタンスイッチのロック構造や、押すと扉が開き閉めると閉状態に保持する扉のラッチ機構を用いることができる。
【0054】
さらに、ストッパー51と連結している状態では、ストッパー51と水中昇降装置1とは、ラッチユニット30のフック34を介して電気的に導通があり、水中昇降装置1本体に犠牲電極を装着しなくても、ストッパー51に取り付けられた電気防食のための犠牲電極によって水中昇降装置1を腐食から守ることができる。
【0055】
ウインチユニット100は、図9図12に示すように、均等にケーブル11を巻き取り又は繰り出すウインチ102を有していると一層好ましい。このようなウインチ102は、モータ114と、それに接続された円筒状のスリーブ122と、そのスリーブ122が挿入された円筒状のトルク伝達シリンダ120と、そのシリンダ120を取り巻くケーブル巻取ドラム125とを、有している。ケーブル巻取ドラム125は、スリーブ122の略半分の筒長を有する円筒状部分と、その両端でケーブル11がはみ出さないように円筒状部分よりも大径の鍔部分とを、有している。モータ114は、ウインチユニットフレーム115に螺子止めされて固定されている。モータ114の出力軸がシャフトケース117内の減速機116に連結されている。シャフトケース117が、フレーム115に固定されて、摺動可能にスリーブ122へ挿入されている。
【0056】
スリーブ122の外周には、モータ114の出力軸方向に対して、ケーブル巻取ドラム125の筒長Lに相当する幅Lだけ傾斜した周回溝123(図11参照)が、設けられている。スリーブ122が、摺動可能にトルク伝達シリンダ120へ挿入されている。トルク伝達シリンダ120は、モータ114の出力軸方向と平行に、細長い穴が開いたガイド121を有している。
【0057】
減速機116の出力軸が、トルクフランジ118にその外面側で螺子止めされている。トルクフランジ118が、その内面側の外周近傍で、内接歯車119cを介して、トルク伝達シリンダ120に螺子止めされている。内接歯車119cに噛み合う遊星歯車119aが、スリーブ122に軸支され、遊星歯車119aに噛み合う太陽歯車119bが、シャフトケース117に軸支されている。これらの歯車119a・119b・119cで、変速器119を形成している。
【0058】
トルク伝達シリンダ120が、摺動可能にケーブル巻取ドラム125へ挿入されている。ドラム125の内壁から、モータ114の出力軸線へ向いて、突起124が突き出ている。突起124は、トルク伝達シリンダ120のガイド121を貫通して、スリーブ122の周回溝123へ摺動走行可能に嵌まっている。トルク伝達シリンダ120のガイド121は、この軸(モータ114の出力軸線)と平行に突起124の往復動を誘導しつつ軸回転を案内するもので、この軸と平行に開いた穴である。その穴の軸(モータ114の出力軸線)方向での長さは、スリーブ122上で傾斜している周回溝123の傾斜した幅Lよりも、突起124の径と多少の余裕とを持つ程度だけ、長いものである(図11参照)。
【0059】
遊星歯車119aは、太陽歯車119bよりも大きな径を有し、スリーブ122が丁度一回転したときに、突起124がトルク伝達シリンダ120のガイド121内をケーブル径だけずれながら移動するように、歯車数が調整されている。
【0060】
突起124には、スリーブ122の周回溝123で摺動走行し易くするローラーと、トルク伝達シリンダ120のガイド121で摺動し易くするローラーとが、重なって軸支されている。
【0061】
ケーブル11の一端が、ケーブル巻取ドラム125に螺子止めされている。ケーブル11は、フレーム115で支えられた滑車113を介してウインチ102の下方向に延び、他端が、錨17(分離器15)に結い付けられている。
【0062】
本発明の水中昇降装置1は、観測係留システムとして、以下のようにして使用される。
【0063】
この水中昇降装置1は、ウインチユニット100を内蔵することにより、水中を昇降することができ、水中待機時は、ストッパー51とラッチユニット30とがドッキングしている。あらかじめ設定された動作時刻になると、ラッチユニット30はストッパー51を解放しウインチユニット100はケーブルを繰り出し、水中昇降装置1は、上昇を始める。あらかじめ設定された深度もしくはケーブル長に達すると上昇を停止し、直ちに又は所定の時間経過後、下降を始める。昇降中は観測機器が計測するデータをコントロールユニット70内でロギングしている。下降時にストッパー51が近づくとラッチユニット30はストッパー51をホールドし、次回の動作時刻まで待機する。この昇降が繰り返され、長期間にわたって異なる深度での各種観測データが集積される。
【0064】
この観測係留システムとして、この水中昇降装置1は、具体的には、以下のように動作する。
【0065】
この観測係留システムは、図14に示すように、海底から、錨17、それに繋いだ係留用ロープ16、その上端に分離可能に繋がれた音響切り離し装置である分離器15、分離器15に分離不能に繋がれたケーブル11、その途中に付されているブイ14、ストッパーユニット50、水中昇降装置1の順で連結されるように、船上から投入されたものであり、海面に向かい立ち上がっている。このとき、水中昇降装置1は水中の深部に留まっている。ラッチユニット30のフック34は、カム機構によってストッパー51を掴持している(図6参照)。
【0066】
所定の観測時刻になると、コントロールユニット70内のウインチ駆動回路が作動する。先ずウインチ102のドラム125が、モータ114により駆動し始め、ケーブル11を僅かに巻き取る。すると、ストッパー51が押子31を押して、ロックを解除し、フック34がストッパー51を開放できるようになる。引き続いて、ウインチ駆動回路が、モータ114を駆動して、ケーブル11を繰り出す。すると、水中昇降装置1の浮力体12等による浮力で、水中昇降装置1は、浮上し始める。このときその浮力のために、ケーブル11は、図3(b)で示すように、緊張している。
【0067】
さらに、ウインチ駆動/停止回路がケーブル11を繰り出すと、水中昇降装置1は、水面にまで浮上する。すると、ケーブル11は、図3(a)で示すように、浮力による緊張が無くなるので、弛む。すると、綱車21のシャフト22がスプリング25の付勢により、近接スイッチ24から遠のき、シャフトマーカー23が離反状態となって検知できなくなるから、ケーブル11の弛みがあると、検出される。その検出に基づき、ウインチ102の繰り出しを停止する。この場合、弛みが大きいことがあるので、丁度、弛みが無くなり、緊張状態が回復するまで、ウインチ102を少しだけ駆動し、ケーブル11を巻き取る。深部から水面まで水中昇降装置1が浮上している間、コントロールユニット70内の測定管理回路が、各深度で水中観測機器80に所定の観測を実行させる。観測データは、コントロールユニット70のデータロガーに記憶する。
【0068】
なお、図4のように、近接覚センサー29が、綱車21の回転数を、綱車マーカー28の接近によって、検出し、その綱車回転数の検出回路が、その回転数と綱車21の溝の外周長とに応じたケーブル11の繰り出しの長さを演算回路で算出し、この長さとケーブル11全長とを演算回路でさらに比較する。このとき、この長さとケーブル11全長とが、一致したら、それ以上、同一方向へウインチ102のドラム125を回転させても、もはや繰り出しができず、逆に巻き取りをすることになってしまうので、ウインチ102の駆動を、ウインチ停止回路によって、停止する。
【0069】
所定の観測再開時刻になると、コントロールユニット70内のウインチ駆動回路が作動してウインチ102のドラム125が、モータ114により駆動し始め、ケーブル11を巻き取る。すると、水中昇降装置1は、降下し始めるが、それの浮力体12等による浮力で、ケーブル11は、図3(b)で示すように、緊張している。さらに、巻き取りを継続する。ストッパー51のラッチユニット30への押し込みによって、以下のように、巻き取りは、中断される。
【0070】
ウインチユニット100がケーブル11を巻き取っていくと、ストッパー51がストッパーガイド35をくぐる。ウインチユニット100がさらにケーブル11を巻き取ると、ストッパー51の先端が押子31を押し込む。ストッパー51による押子31の押し込みは、ストッパー51の先端が押子31に接触してさらに巻き取りが継続されることによって押圧されることにより行われる。ストッパー51の先端にはマグネットであるストッパー存在指示マーカー54が埋め込まれており、押子31によって、ロックユニット40が作動する位置まで押し込まれると、近接スイッチ36が反応するようになっている。近接スイッチ36が、ストッパー存在指示マーカー54によってストッパー51を検知すると、ウインチ駆動回路が、ウインチ102の駆動を、停止する。水面から深部まで水中昇降装置1が下降している間、コントロールユニット70内の測定管理回路が、各深度で水中観測機器80に所定の観測を実行させる。観測データは、コントロールユニット70のデータロガーに記憶する。
【0071】
さらに、上昇開始再開時は、ケーブル11を繰り出す前に、押子31のロックユニット40が作動しロックが解除するようにケーブル11を巻き取る。ロック機構が作動しロックが解除して近接スイッチ36が反応すると初めてケーブル11を繰り出し始める。このときフック34は開放し、ラッチユニット30はストッパー51を解放する。
【0072】
以後、同様に、昇降を繰り返して、所定の観測を行う。
【0073】
図14に示すように、音響切り離し装置は、分離器15として、観測終了後に、水中昇降装置1を水中観測機器80ごと回収するのに使用する。音響切り離し装置の作動は、船上のデッキユニットからの超音波等の信号の発振により制御する。その切り離し信号により、分離器15が、係留用ロープ16を切り離し、分離器15ごと水中昇降装置1は、水上へ浮上するので、船上から、回収される。
【0074】
なお、水中昇降装置1には、音響モデムを搭載し、音響切り離し装置である分離器15と同様に、船上のデッキユニットから動作を制御したり、水中での状態を音響信号で送信し、船上でモニタしたりしてもよい。この際、1台のデッキユニットで音響切り離し装置とウインチ搭載型水中昇降装置1の音響モデムと音響通信してもよいが、2台に分けていてもよい。
【0075】
また、図9図12に示すウインチユニット100を用いた場合、ウインチ102は、以下のように、動作する。
【0076】
モータ114を駆動させると、モータ114の出力軸が回転する。モータ114の出力軸が連結された減速機116により、適度な比較的高速で、減速機116の出力軸が回転する。それに連結されたトルクフランジ118と、トルク伝達シリンダ120とが、同期して回転する。トルク伝達シリンダ120の回転に伴いそれに開けられたガイド121が、突起124を牽引するので、それに連動してドラム125が回転する。ケーブル11は、ドラム125に巻き取られ始める。
【0077】
同時に、トルクフランジ118とトルク伝達シリンダ120とに挟み込まれている内接歯車119cも、同期して回転する。すると、減速機116の出力軸を中心に回転している内接歯車119cと、固定されたシャフトケース117に軸支されその位置で回転する太陽歯車119bとに、噛み合う遊星歯車119aが、内接歯車119cと逆に回転する。それに従い、スリーブ122が、トルク伝達シリンダ120よりも僅かに遅い速度で回転する。
【0078】
突起124が、傾斜している周回溝123の最もモータ114寄りに在るとき、ケーブル11は、ドラム125の最もトルクフランジ118寄りで巻き取られる。
【0079】
スリーブ122の外周で傾斜している周回溝123へ、突起124が摺動走行可能に嵌まっているから、トルク伝達シリンダ120よりも遅く回転するスリーブ122のせいで、ドラム125が回転するに連れ、突起124が、ガイド121に沿って丁度ドラム125の一回転毎に、ケーブル径ずつ、トルクフランジ118寄りに、順次ずれる。
【0080】
ドラム125が数周回転すると、図10のように、突起124が、周回溝123の最もトルクフランジ118寄りに移動する。それに伴い、ケーブル11は、ドラム125の最もモータ114寄りで巻き取られる。
【0081】
これが繰返されると、ケーブル11が、層状に整然と巻き取られるようになる。
【0082】
ケーブル11を、巻き戻して解き放つときも、同様である。
【0083】
なお、周回溝123が、図11のようにスリーブ122の外周で周回する楕円状の溝の例を示したが、図12のように、互いに交差し合い端部で繋がる右螺旋と左螺旋とで形成され1回交差する8字状の溝であってもよく、多数回交差する溝であってもよい。
【0084】
また、水中昇降装置1はフレーム10に水圧計81を有している。例えば、水圧計81は、コントロールユニット70と一体的に設けられていて、コントロールユニット70内の水面状態の検出回路に接続されている。コントロールユニット70の水面状態の検出回路は、水圧計81により検出される水圧値から、深度を測定することができる。海況が荒天の場合海面付近では水圧計81による深度データ(水圧データ)は揺らぐ(図15参照)。この現象を統計的に処理することにより海況の荒天を検知することができ、荒天の場合海面に浮上する前に上昇を停止し、昇降装置を引き込むことができる。
【0085】
具体的に説明すると、本願発明者は、海面下で海底から一定の高さの位置に水圧計を設置していても、荒天のように海面の状態が波高の高い状態であるときには、水圧計の検出水圧が一定の値ではなく変動することを見出した。さらに、本願発明者は、水中観測機器を海底から一定の速度(ケーブル繰出速度)で上昇させたときに、水中観測機器に設けられた水圧計の検出水圧を時間で微分して得られる上昇速度はケーブル繰出速度にほぼ等しい値になるはずであるが、荒天のように水面の状態が波高の高い状態であるときには、一定のケーブル繰出速度で実際に上昇していても、上昇速度が一定の値にならず変動し、ときには上昇しているのにも関わらず、あたかも下降しているかのようにマイナスの速度になる場合があることを見出した。このような現象は、水圧計の位置が水面に近づくほど顕著に表れた。この現象が観測できる所定深度は、水面が穏やかなときの水面の位置を基準として、荒天時に少なくとも深度30mから観測されたが、深度20mの方がより顕著に表れ、深度10mの方がより一層顕著に表れた。このような現象は、波高が高いときには、水面が上昇、下降を繰り返すので、波面からの深度が時々刻々と変化することに起因していると考えられる。深度が深くなると、波の影響が分散されて、検出水圧の変動は小さくなると考えられる。
【0086】
このような知見に基づき、本願発明者は、水圧計81の検出水圧に基づき、水面の状態、つまり波高が高い状態であるか、波高が低い状態であるか検出し、波高が高いときには、ケーブル11等の破損を防止するために、水上に浮上せず、水中で停止することが可能な水中昇降装置1を開発した。以下、詳細に説明する。
【0087】
図13に示すように、水中昇降装置1は水圧計81を備え、その検出水圧はコントロールユニット70に入力されている。コントロールユニット70は、水圧計81の検出水圧に基づいて水面の状態を検出する水面状態の検出回路を密閉して内蔵している。水面状態の検出回路は、例えば、CPU及びその動作用のプログラムを記憶するメモリなどで構成されており、プログラムに従って演算処理が可能になっている。
【0088】
図15を用いて、水面状態の検出回路の動作を説明する。なお、この動作を荒天検知ともいう。
【0089】
同図には、水中を上昇していく水中昇降装置1の様子を示している。水面状態の検出回路は、所定のサンプリング周期T(例えば0.1秒〜5秒)ごとに水圧計81から検出水圧を読み込む。サンプリング周期Tは、ケーブル繰出速度に応じて適宜設定する。ケーブル繰出速度が早ければ、短い周期Tで検出する。ケーブル繰出速度が遅ければ、比較的長い周期Tで検出してもよい。ケーブル11は、一例として、一定のケーブル繰出速度でウインチユニット100から繰り出されているものとする。
【0090】
水面状態の検出回路は、サンプリング周期Tごとに読み込んだ検出水圧から深度Dを算出し、メモリに記録する。深度Dは、検出水圧に対応する静状態の水深である。同図には、波がある場合の波面からの深度と、平坦時の海面からの深度とに差が生じる様子を示している。
【0091】
次に、水面状態の検出回路は、深度Dのデータから上昇速度を算出しメモリに記録する。時刻tiにおける深度をD(ti)とすると、時刻tiの上昇速度v(ti)は以下の式(1)で算出できる。
【数1】
【0092】
続いて、水面状態の検出回路は、上昇速度の移動平均を算出し、メモリに記録する。時刻tiにおける過去N区間(N個のサンプリング値)の上昇速度の移動平均vma(ti)は、以下の式(2)で算出できる。Nは、一例として8、16又は36などの値とする。例えば所定周期T=1秒、N=8のときには、8秒間にサンプリングした8個の検出水圧から上昇速度の移動平均を算出する。
【数2】
【0093】
続いて、水面状態の検出回路は、上昇速度の分散値を算出し、メモリに記録する。時刻tiにおける過去N区間の上昇速度の分散値V(ti)は、以下の式(3)で算出できる。
【数3】
【0094】
ここで、ある時刻の分散値V(ti)が所定閾値を越えると、それは海面波高のバラツキが大きいとき(波高が高いとき)であるので、水面状態の検出回路は荒天と判別する。所定閾値は、荒天時に得られる分散値データから予め適宜設定しておく。
【0095】
また、上昇しているのにもかかわらず、上昇速度v(ti)がマイナス値を示すときは、突発的な高波が発生したときであるので、水面状態の検出回路は荒天と判別する。
【0096】
水面状態の検出回路が荒天と判別したときに、水面状態の検出回路はウインチ駆動/停止回路にウインチユニット100のケーブル繰り出しを直ちに停止させる。これにより、水中昇降装置1は海上に浮上せず海中で停止する。水中昇降装置1は、停止した海中で所定の測定項目を観測して、又は観測を中止して、海底のストッパーユニット50まで下降する。荒天検知は、海況が荒天時に水中昇降装置1の海面浮上を中止するための機能なので、荒天検知を上昇時のみ行うことが好ましい。
【0097】
なお、上昇速度の分散値だけに基づき荒天検知をしてもよいし、上昇速度がマイナス値となるか否かだけに基づき荒天検知をしてもよいし、両方を組み合わせて荒天検知をしてもよい。
【0098】
また、上昇速度の標準偏差を算出して荒天検知をしてもよいが、標準偏差を算出するためには平方根演算が必要になるので、CPUの演算負荷を低くするために、平方根演算の不要な分散値で荒天検知をする方が好ましい。また、検出水圧から算出される他のパラメータから荒天検知を行ってもよい。また、上昇速度が、前のサンプリング時の上昇速度から所定値を超えて変動したときに荒天と判別してもよい。
【0099】
さらに、検出水圧(又は深度)が本来検出されるべき水圧(又は深度)であるか否か、その差分や移動平均、又は分散値等から、荒天であるか(波高が高いか否か)を検出してもよい。要は、検出水圧やそれに基づく上昇速度等の値が、本来検出されるべき値から乖離しているときに、荒天であると判別すればよい。そのため、ケーブル繰出速度を一定ではなく可変してもよい。この場合、可変したケーブル繰出速度と、本来検出されるべき上昇速度とが乖離しているか否かを算出して荒天検知を行う。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明の水中昇降装置は、水中観測機器を任意の水深に移動させて時間的および位置的に連続した水中の観測データを得ることができる。さらに、水中観測機器およびその昇降装置を観測終了後に簡便に回収できる。
【符号の説明】
【0101】
1は水中昇降装置、10はフレーム、11はケーブル、12は浮力体、13はカバー、14はブイ、15は分離器、16は係留用ロープ、17は錨、20はシーブユニット、21は綱車、22はシャフト、23はシャフトマーカー、24は近接スイッチ、25はスプリング、26はリンクアーム、26aは接続部材、27は支点ピン、28は綱車マーカー、29は近接覚センサー、30はラッチユニット、30aはベース板、31は押子、32は支点ピン、33はスプリング、34はフック、35はストッパーガイド、35aは支柱、36は近接スイッチ、40はロックユニット、41は鋸歯ガイド、41aはスリット、42は鋸歯(A)、42aは突起、42bは突起、43は鋸歯(B)、43aは突起、44は円筒ボディ、45はOリング、46はスプリング、50はストッパーユニット、51はストッパー、52はブイ、53は犠牲電極、54はストッパー存在指示マーカー、70はコントロールユニット、80は水中観測機器、81は水圧計、90はバッテリーユニット、100はウインチユニット、102はウインチ、113は滑車、114はモータ、115はフレーム、116は減速機、117はシャフトケース、118はトルクフランジ、119は変速器、119aは遊星歯車、119bは太陽歯車、119cは内接歯車、120はトルク伝達シリンダ、121はガイド、122はスリーブ、123は周回溝、124は突起、125はドラム、Tはサンプリング周期である。
図1
図2
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図15