(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のコンベンショナル火力発電所においては、二酸化炭素の排出量を抑制するために、複雑な設備構成が必要になったり、コストが増大したりするという問題がある。つまり、発電効率を向上させたコンベンショナル火力発電所を新設する際には、複雑な設備構成が必要になったり、コストが増大したりする。また、既設のコンベンショナル火力発電所を改良して発電効率を向上させる場合においても、同様の問題がある。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、簡易に、二酸化炭素の排出量を抑制することができるコンベンショナル火力発電所及びコンベンショナル火力発電方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るコンベンショナル火力発電所は、ボイラを備え、前記ボイラで燃料を燃焼させて発電を行うコンベンショナル火力発電所であって、有機化合物から脱水素化することで水素を生成する脱水素装置を備え、前記ボイラは、前記脱水素装置が生成した水素と化石燃料とを混焼する。
【0007】
これによれば、コンベンショナル火力発電所において、脱水素装置で有機化合物から脱水素化することで水素を生成し、ボイラで当該水素と化石燃料とを混焼することで、発電を行う。つまり、化石燃料だけではなく水素も燃焼して発電を行うことで、化石燃料のみを燃焼する場合よりも二酸化炭素の排出量を低減することができる。これにより、簡易に、二酸化炭素の排出量を抑制することができるコンベンショナル火力発電所を実現することができる。
【0008】
また、前記脱水素装置は、前記コンベンショナル火力発電所が発電を行う際に生成される蒸気、排ガス及び高温空気のうちの少なくとも1つが有する熱を前記有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成することにしてもよい。
【0009】
これによれば、脱水素装置は、発電の際に生成される蒸気、排ガスまたは高温空気が有する熱を有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。つまり、脱水素装置は、発電の際に生成される熱を利用することで、簡易に水素を生成することができる。これにより、コンベンショナル火力発電所において、簡易に、二酸化炭素の排出量を抑制することができる。
【0010】
また、さらに、空気を排ガスで予熱する空気予熱器を備え、前記脱水素装置は、前記空気予熱器の排ガス入口または空気出口から取り出された排ガスまたは高温空気が有する熱を前記有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成することにしてもよい。
【0011】
これによれば、脱水素装置は、空気予熱器の排ガス入口または空気出口から取り出された排ガスまたは高温空気が有する熱を有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。つまり、脱水素装置は、空気予熱器の排ガス入口または空気出口から取り出された熱を利用することで、簡易に水素を生成することができる。これにより、コンベンショナル火力発電所において、簡易に、二酸化炭素の排出量を抑制することができる。
【0012】
また、さらに、排ガスを脱硝する脱硝装置を備え、前記脱水素装置は、前記脱硝装置の入口または出口から取り出された排ガスが有する熱を前記有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成することにしてもよい。
【0013】
これによれば、脱水素装置は、脱硝装置の入口または出口から取り出された排ガスが有する熱を有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。つまり、脱水素装置は、脱硝装置の入口または出口から取り出された熱を利用することで、簡易に水素を生成することができる。これにより、コンベンショナル火力発電所において、簡易に、二酸化炭素の排出量を抑制することができる。
【0014】
また、さらに、蒸気タービンを備え、前記脱水素装置は、前記ボイラから前記蒸気タービンに送られる蒸気、及び前記蒸気タービンからの抽気のうちの少なくとも1つが有する熱を前記有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成することにしてもよい。
【0015】
これによれば、脱水素装置は、ボイラから蒸気タービンに送られる蒸気、または蒸気タービンからの抽気が有する熱を有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。つまり、脱水素装置は、当該蒸気または当該抽気の熱を利用することで、簡易に水素を生成することができる。これにより、コンベンショナル火力発電所において、簡易に、二酸化炭素の排出量を抑制することができる。
【0016】
また、前記蒸気タービンは、高圧タービン、中圧タービン及び低圧タービンを有しており、前記脱水素装置は、前記ボイラから前記高圧タービンに送られる主蒸気、前記高圧タービンまたは前記中圧タービンからの抽気、及び前記高圧タービンからの抽気である低温再熱蒸気が前記ボイラにより加熱された高温再熱蒸気のうちの少なくとも1つが有する熱を前記有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成することにしてもよい。
【0017】
これによれば、脱水素装置は、主蒸気、高圧タービンまたは中圧タービンからの抽気、または高温再熱蒸気が有する熱を有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。つまり、脱水素装置は、当該主蒸気、当該抽気、または高温再熱蒸気の熱を利用することで、簡易に水素を生成することができる。これにより、コンベンショナル火力発電所において、簡易に、二酸化炭素の排出量を抑制することができる。
【0018】
また、前記脱水素装置は、水素を生成する際に使用した蒸気、排ガス及び高温空気のうちの少なくとも1つを、前記コンベンショナル火力発電所が発電を行うために使用される蒸気、排ガス及び高温空気のうちの少なくとも1つとして供給することにしてもよい。
【0019】
これによれば、脱水素装置は、水素を生成する際に使用した蒸気、排ガス及び高温空気のうちの少なくとも1つを、コンベンショナル火力発電所が発電を行うために再利用する。これにより、熱を有効活用することができるため、脱水素装置で熱を使用することによる発電効率の低下を抑制することができる。
【0020】
また、前記脱水素装置は、常圧の水素を前記ボイラに供給することにしてもよい。
【0021】
これによれば、脱水素装置は、常圧の水素をボイラに供給すればよいので、生成した水素を昇圧する必要が無い。このため、コンベンショナル火力発電所において、簡易に水素をボイラに供給して発電を行うことができるため、簡易に、二酸化炭素の排出量を抑制することができる。
【0022】
また、前記脱水素装置は、有機ケミカルハイドライト法を用いて、水素化された前記有機化合物から脱水素化することで水素を生成することにしてもよい。
【0023】
これによれば、脱水素装置は、有機ケミカルハイドライト法を用いて、水素化された有機化合物から脱水素化することで水素を生成する。これにより、コンベンショナル火力発電所において、簡易に水素を生成して発電を行うことができるため、簡易に、二酸化炭素の排出量を抑制することができる。
【0024】
また、前記ボイラは、前記脱水素装置が生成した水素と石炭とを混焼することにしてもよい。
【0025】
これによれば、コンベンショナル火力発電所において、水素と石炭とを混焼して発電を行うことで、石炭の燃焼によって増加する二酸化炭素の排出量を、簡易に抑制することができる。
【0026】
また、さらに、発電機を備え、前記脱水素装置は、生成した水素を、前記発電機の冷却用の水素として供給することにしてもよい。
【0027】
これによれば、脱水素装置は、生成した水素を、発電機の冷却用の水素としても活用することができる。
【0028】
なお、本発明は、このようなコンベンショナル火力発電所として実現することができるだけでなく、当該コンベンショナル火力発電所において発電を行う方法であるコンベンショナル火力発電方法として実現することもできる。
【発明の効果】
【0029】
本発明におけるコンベンショナル火力発電所によれば、簡易に、二酸化炭素の排出量を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係るコンベンショナル火力発電所について説明する。なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本発明の好ましい一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、工程、工程の順序などは、一例であり、本発明を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0032】
(実施の形態)
まず、コンベンショナル火力発電所1の構成について、説明する。
【0033】
図1は、本発明の実施の形態に係るコンベンショナル火力発電所1の概略構成を示す模式図である。また、
図2は、本発明の実施の形態に係る蒸気タービン200周りの構成を示す模式図である。また、
図3は、本発明の実施の形態に係るボイラ100周りの構成を示す模式図である。
【0034】
コンベンショナル火力発電所1は、ボイラで燃料を燃焼させて蒸気を発生し、蒸気タービンで発電を行う発電システムである。
【0035】
まず、
図1に示すように、コンベンショナル火力発電所1は、ボイラ100、蒸気タービン200、発電機300などを含む発電部10と、発電部10に含まれる機器を制御する制御装置20とを備えている。具体的には、発電部10は、ボイラ100、蒸気タービン200、発電機300、脱水素装置400、化石燃料供給装置500、脱硝装置600、空気予熱器700、及び煙突800などを有している。
【0036】
ボイラ100は、脱水素装置400が生成した水素と化石燃料とを混焼するボイラであり、本実施の形態では、定圧貫流ボイラである。つまり、ボイラ100は、脱水素装置400から供給される水素を燃焼するとともに、化石燃料供給装置500から供給される化石燃料を燃焼する。
【0037】
ここで、脱水素装置400から供給される水素は、常圧の水素であり、具体的には、常温かつ常圧の水素である。そして、ボイラ100は、当該水素を燃焼する水素燃焼用バーナ(図示せず)を有している。また、本実施の形態では、化石燃料供給装置500から供給される化石燃料は石炭(微粉炭)であり、ボイラ100は、当該微粉炭を燃焼する微粉炭燃焼用バーナ(図示せず)も有している。つまり、ボイラ100は、脱水素装置400が生成した水素と石炭とを混焼する。
【0038】
なお、水素燃焼用バーナ及び微粉炭燃焼用バーナは、従来の水素を燃焼するバーナ(水素を空気とともに噴出して燃焼するバーナ)、及び微粉炭を燃焼するバーナ(微粉炭を空気とともに噴出して燃焼するバーナ)を用いることができる。
【0039】
また、ボイラ100は、主蒸気管110を有しており、燃料を燃焼することで生成した蒸気(主蒸気)を、主蒸気管110を通じて蒸気タービン200に送る。また、ボイラ100は、煙道120を有しており、燃料を燃焼した後の排ガスを、煙道120を通じて脱硝装置600、空気予熱器700及び煙突800へと送る。また、ボイラ100の底部にはボトムアッシュ処理設備130が設けられており、このボトムアッシュ処理設備130にて、ボイラ100で燃料を燃焼して生成される灰(石炭灰)を処理する。
【0040】
なお、ボイラ100の形式は、定圧貫流ボイラには限定されず、変圧貫流ボイラや循環式ボイラなど、どのような形式のボイラであってもかまわない。
【0041】
蒸気タービン200は、ボイラ100で生成された蒸気のエネルギーによって回転するタービンである。本実施の形態では、蒸気タービン200は、高圧タービン210、中圧タービン220及び低圧タービン230を有している。
【0042】
高圧タービン210は、高圧の蒸気によって回転するタービンであり、中圧タービン220は、当該高圧の蒸気よりも圧力の低い中圧の蒸気によって回転するタービンであり、低圧タービン230は、当該中圧の蒸気よりも圧力の低い低圧の蒸気によって回転するタービンである。本実施の形態では、発電機300に近い側から、低圧タービン230、中圧タービン220、高圧タービン210の順に配置されている。
【0043】
つまり、ボイラ100で生成された高温高圧の蒸気(主蒸気)は、主蒸気管110を通って高圧タービン210に送られ、高圧タービン210を回転させる。また、高圧タービン210を出た蒸気は、中圧タービン220に送られて、中圧タービン220を回転させる。また、中圧タービン220を出た蒸気は、低圧タービン230に送られて、低圧タービン230を回転させる。
【0044】
具体的には、
図2に示すように、ボイラ100で生成された高温高圧の主蒸気は、主蒸気管110を通って高圧タービン210に送られ、高圧タービン210を回転させる。また、高圧タービン210を出た蒸気(低温再熱蒸気)は、低温再熱蒸気管211を通ってボイラ100に送られ、ボイラ100で再加熱される。そして、ボイラ100で再加熱された蒸気(高温再熱蒸気)は、高温再熱蒸気管140を通って中圧タービン220に送られ、中圧タービン220を回転させる。また、中圧タービン220を出た蒸気は、蒸気管223を通って低圧タービン230に送られ、低圧タービン230を回転させる。
【0045】
なお、高温再熱蒸気は、主蒸気と同程度か主蒸気よりも高い温度まで加熱される。
【0046】
また、低圧タービン230を出た蒸気は、蒸気管235を通って復水器240に送られ、復水器240で冷やされて水になり、配管241を通ってグランドコンデンサ242に送られる。
【0047】
ここで、蒸気タービン200は、8段抽気として、8箇所から蒸気が取り出される構成になっている。つまり、蒸気タービン200から、第一抽気から第八抽気までの8段の抽気が取り出される。
【0048】
具体的には、低圧タービン230から、第一抽気管231によって第一抽気が取り出され、取り出された第一抽気は、第一給水ヒータ251において、グランドコンデンサ242を出た水(給水)を加熱する。また、低圧タービン230から、第二抽気管232によって第二抽気が取り出され、取り出された第二抽気は、第二給水ヒータ252において、第一給水ヒータ251を出た給水を加熱する。
【0049】
また、低圧タービン230から、第三抽気管233によって第三抽気が取り出され、取り出された第三抽気は、第三給水ヒータ253において、第二給水ヒータ252を出た給水を加熱する。また、低圧タービン230から、第四抽気管234によって第四抽気が取り出され、取り出された第四抽気は、第四給水ヒータ254において、第三給水ヒータ253を出た給水を加熱する。
【0050】
このように、低圧タービン230からは、第一抽気から第四抽気までの4段の抽気が取り出される。なお、取り出された抽気の温度は、低い方から、第一抽気、第二抽気、第三抽気、第四抽気となっている。
【0051】
また、中圧タービン220から、第五抽気管221によって第五抽気が取り出され、取り出された第五抽気は、脱気器255に送られる。また、中圧タービン220から、第六抽気管222によって第六抽気が取り出され、取り出された第六抽気は、第六給水ヒータ256において、脱気器255で脱気された給水を加熱する。
【0052】
このように、中圧タービン220からは、第五抽気及び第六抽気の2段の抽気が取り出される。なお、取り出された抽気の温度は、低い方から、第五抽気、第六抽気となっている。また、第五抽気及び第六抽気は、第一抽気から第四抽気までの抽気よりも高い温度となっている。
【0053】
また、高圧タービン210の低温再熱蒸気管211から、第七抽気管212によって第七抽気(補助蒸気)が取り出され、取り出された第七抽気は、第七給水ヒータ257において、第六給水ヒータ256を出た給水を加熱する。また、高圧タービン210から、第八抽気管213によって第八抽気が取り出され、取り出された第八抽気は、第八給水ヒータ258において、第七給水ヒータ257を出た給水を加熱する。そして、第七給水ヒータ257で加熱された給水は、配管259を通ってボイラ100に送られる。
【0054】
このように、高圧タービン210からは、第七抽気及び第八抽気の2段の抽気が取り出される。なお、取り出された抽気の温度は、低い方から、第七抽気、第八抽気となっている。
【0055】
なお、蒸気タービン200は、高圧タービン210、中圧タービン220及び低圧タービン230のうちのいずれかのタービンを有していない構成でもかまわない。また、蒸気タービン200からの抽気は、上記のような8段抽気でなくともかまわない。
【0056】
また、主蒸気管110、高温再熱蒸気管140、低温再熱蒸気管211、第一抽気管231〜第八抽気管213、蒸気管223、235、配管241、259などの配管は、内部を通る蒸気(または水)の条件(流量、流速、温度、圧力等)に応じた仕様(口径、材質等)で構成されていれば、どのような仕様であってもかまわない。
【0057】
また、第一給水ヒータ251〜第四給水ヒータ254及び第六給水ヒータ256〜第八給水ヒータ258は、第一抽気〜第四抽気及び第六抽気〜第八抽気と給水との間で熱交換を行うことができる熱交換器であるが、当該熱交換器の構造は、特に限定されない。
【0058】
図1に戻り、発電機300は、蒸気タービン200の回転力を電力に変換することによって発電を行うタービン発電機である。具体的には、発電機300は、低圧タービン230の側方(中圧タービン220と反対側)に配置されており、高圧タービン210、中圧タービン220及び低圧タービン230の回転力を電力に変換することによって発電を行う。
【0059】
また、発電機300は、発電の際に界磁や固定子に大きな電流が流れて高温になるため、機内に冷媒としての水素が封入される。具体的には、発電機300は、脱水素装置400から発電機供給配管450を通って供給される水素を機内に封入することで、冷却される。
【0060】
脱水素装置400は、有機化合物から脱水素化することで水素を生成する装置である。具体的には、脱水素装置400は、有機ケミカルハイドライト法を用いて、水素化された有機化合物から脱水素化することで水素を生成する。ここで、有機ケミカルハイドライト法とは、芳香族化合物を水素化して水素化芳香族化合物として水素を貯蔵し、使用場所まで輸送して、使用場所で水素化芳香族化合物から脱水素化することで水素を取り出す手法であり、水素の貯蔵及び輸送を安全に行うことができる。
【0061】
本実施の形態では、脱水素装置400は、有機化合物であるMCH(メチルシクロヘキサン)に熱を加えて脱水素反応を起こすことで、トルエンと水素とを生成する。ここで、MCHは、トルエンに水素化反応を行うことで生成することができる。また、MCHは、あらかじめ必要量がコンベンショナル火力発電所1の構内に受け入れられ、タンクなどに貯留されている。
【0062】
具体的には、脱水素装置400は、MCHを、当該タンクからMCH入力配管410を通じて受け入れる。そして、脱水素装置400は、受け入れたMCHに熱エネルギーを加えて脱水素反応を起こすことで、トルエンと水素とを生成する。そして、脱水素装置400は、生成したトルエンをトルエン出口配管420から取り出し、生成した水素を水素出口配管430から取り出す。なお、トルエン出口配管420から取り出されたトルエンは、タンクなどに一時的に保管された後、適切に処理される。
【0063】
また、水素出口配管430から取り出された水素は、ボイラ供給配管440を通って、ボイラ100に供給される。ここで、脱水素装置400で生成される水素は、常温かつ常圧の水素である。つまり、脱水素装置400は、常温かつ常圧の水素をボイラ100に供給する。なお、常温とは10〜20℃程度、常圧とは0.1〜0.3MPa程度の圧力をいう。
【0064】
また、水素出口配管430から取り出された水素は、発電機供給配管450を通って、発電機300に供給される。つまり、脱水素装置400は、生成した水素を、発電機300の冷却用の水素として供給する。このように、脱水素装置400で生成された水素は、発電機300の冷却用の水素としても活用される。
【0065】
ここで、脱水素装置400は、コンベンショナル火力発電所1が発電を行う際に生成される蒸気、排ガス及び高温空気のうちの少なくとも1つが有する熱を有機化合物(MCH)に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。本実施の形態では、脱水素装置400は、空気予熱器700の空気出口から取り出された高温空気が有する熱を有機化合物(MCH)に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。
【0066】
具体的には、脱水素装置400は、空気予熱器700の空気出口ダクト730から取り出された高温空気管731内の高温空気が有する熱を有機化合物(MCH)に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。つまり、脱水素装置400内には熱交換器(図示せず)が配置されており、当該高温空気が有する熱エネルギーをMCHに加えて、水素を生成する。
【0067】
また、脱水素装置400は、水素を生成する際に使用した蒸気、排ガス及び高温空気のうちの少なくとも1つを、コンベンショナル火力発電所1が発電を行うために使用される蒸気、排ガス及び高温空気のうちの少なくとも1つとして供給する。本実施の形態では、脱水素装置400は、空気予熱器700の空気出口から取り出された高温空気を熱交換器に通して熱交換を行った後に、熱交換器から取り出された当該高温空気を空気出口ダクト730に再び戻す。これにより、当該高温空気は、ボイラ100での燃焼用空気として有効活用される。
【0068】
なお、当該高温空気の供給先は、空気出口ダクト730には限定されず、ボイラ100での燃焼用空気以外で有効活用されてもよい。
【0069】
化石燃料供給装置500は、ボイラ100に化石燃料である石炭(微粉炭)を供給する装置である。具体的には、化石燃料供給装置500は、石炭を貯蔵する貯蔵設備(図示せず)を有しており、当該貯蔵設備に貯蔵された石炭を微粉炭に粉砕して、当該微粉炭を微粉炭搬送路510を通じてボイラ100に供給する。
【0070】
脱硝装置600は、排ガスを脱硝する装置である。具体的には、脱硝装置600は、ボイラ100の煙道120の空気予熱器700の手前に配置されており、煙道120内の空気予熱器700に向かう排ガス中の窒素酸化物を除去する。
【0071】
空気予熱器700は、空気を排ガスで予熱する装置、つまり、ボイラ100の熱効率を高めるために燃焼用の空気をボイラ100に送り込む前に加熱する装置である。具体的には、空気予熱器700には、押込ファン710が接続されており、押込ファン710の駆動によって空気入口ダクト720を通じて空気が送り込まれる。そして、空気予熱器700は、当該空気を、煙道120内の脱硝装置600を出た排ガスと熱交換させて、高温空気として空気出口ダクト730に送り出す。
【0072】
さらに具体的には、
図3に示すように、空気予熱器700と押込ファン710との間の空気入口ダクト720には、蒸気式空気予熱器740が配置されている。蒸気式空気予熱器740は、押込ファン710によって空気入口ダクト720に送り込まれた空気を蒸気で加熱する。そして、蒸気式空気予熱器740で加熱された空気は、空気予熱器700で再度加熱され、空気出口ダクト730を通じてボイラ100に送られる。
【0073】
つまり、空気出口ダクト730は、ボイラ100の風箱(ウインドボックス)に接続されており、空気予熱器700で加熱された高温空気は、当該風箱に送られる。そして、このボイラ100の風箱に送られた高温空気は、水素及び微粉炭の燃焼用空気として使用される。
【0074】
なお、空気予熱器700は、内部に伝熱体(エレメント)が配置されており、空気と排ガスとの熱交換を行う構成を有しているが、空気予熱器700は、空気と排ガスとの熱交換を行うことができるのであればどのような構成を有していてもかまわない。
【0075】
また、
図3に示すように、煙道120における脱硝装置600の手前には、節炭器124が配置されている。節炭器124は、ボイラ100からの燃焼排ガスの余熱を利用して給水などを加熱する機器である。
【0076】
また、煙道120の空気予熱器700と煙突800との間には、電気集じん器910、吸込ファン920及び脱硫装置930が配置されている。電気集じん器910は、排ガス中のばいじんを静電気力で引き付け除去する装置である。吸込ファン920は、ボイラ100から煙道120を通じて排ガスを吸い込み、煙突800に導くファンである。脱硫装置930は、排ガス中の硫黄酸化物を除去する装置である。
【0077】
以上のようにして、排ガス中から、窒素酸化物、ばいじん(灰)、硫黄酸化物などが取り除かれて、煙突800から排出される。
【0078】
また、以上の構成により、コンベンショナル火力発電所1が全負荷運転で600MWの出力の場合に、空気出口ダクト730中の空気予熱器700の出口空気温度(高温空気管731内の高温空気の温度)は、およそ340℃になる。ここで、脱水素装置400がMCHから水素を効率的に生成することができる温度は、例えば300℃(転化率90%の場合の触媒活性化温度)である。このため、脱水素装置400は、高温空気管731を通じて取り込んだ高温空気が有する熱をMCHに加えることにより、効率的に水素を生成することができる。
【0079】
また、脱水素装置400の熱交換器から取り出される高温空気はおよそ300℃程度になるため、当該高温空気を空気出口ダクト730に戻すことで、当該高温空気が有する熱を有効活用することができる。
【0080】
次に、コンベンショナル火力発電所1が有する制御装置20の構成及び制御装置20が行う処理について、詳細に説明する。
【0081】
図4は、本発明の実施の形態に係る制御装置20の機能構成を示すブロック図である。また、
図5は、本発明の実施の形態に係る制御装置20が行う処理を示すフローチャートである。
【0082】
まず、
図4に示すように、制御装置20は、発電部10に含まれる機器を制御する装置であり、具体的には、脱水素制御部21、燃料制御部22、発電機冷却制御部23、発電制御部24及び記憶部25を備えている。
【0083】
脱水素制御部21は、脱水素装置400を制御する。具体的には、脱水素制御部21は、脱水素装置400がMCH入力配管410から受け入れるMCHの量や、高温空気管731から取り込む高温空気の熱量などを調整して、水素出口配管430から取り出される水素の量、温度または圧力などを調整する。本実施の形態では、脱水素制御部21は、ボイラ100へ供給される水素の量が一定になるように、また当該水素が常温かつ常圧となるように、脱水素装置400を制御する。
【0084】
燃料制御部22は、ボイラ100へ供給される燃料を制御する。具体的には、燃料制御部22は、脱水素装置400から供給される水素の量と、化石燃料供給装置500から供給される微粉炭の量とのバランスを調整する。本実施の形態では、燃料制御部22は、ボイラ100へ供給される水素の量を一定に維持できるように、化石燃料供給装置500からボイラ100へ供給される微粉炭の量を変化させる。
【0085】
発電機冷却制御部23は、発電機300の冷却を制御する。具体的には、発電機冷却制御部23は、脱水素装置400から発電機300へ供給される冷却用の水素の量、温度または圧力などを調整する。
【0086】
発電制御部24は、発電部10による発電を制御する。具体的には、発電制御部24は、発電部10に含まれるボイラ100、蒸気タービン200、発電機300などの種々の機器を制御し、発電を行う。
【0087】
記憶部25は、制御装置20に含まれる各処理部が行う処理に必要なデータを記憶しているメモリである。記憶部25は、例えば、脱水素制御部21がMCH入力配管410から受け入れるMCHの量の上限、下限または目標値や、高温空気管731から取り込む高温空気の熱量の上限、下限または目標値などを記憶している。
【0088】
次に、制御装置20に含まれる各処理部が行う処理(コンベンショナル火力発電方法)について、説明する。なお、以下では、当該処理のうち、特に、本願発明の特徴部分についての説明を行う。
【0089】
図5に示すように、まず、脱水素制御部21は、脱水素工程として、有機化合物から脱水素化することで水素を生成する(S102)。つまり、脱水素制御部21は、脱水素装置400が受け入れるMCHの量や、取り込む高温空気の熱量などを調整して、水素出口配管430から取り出される水素の量、温度または圧力などを調整する。
【0090】
そして、燃料制御部22は、混焼工程として、ボイラ100で、脱水素工程で生成された水素と化石燃料とを混焼する(S104)。つまり、燃料制御部22は、脱水素装置400から供給される水素の量と、化石燃料供給装置500から供給される微粉炭の量とのバランスを調整し、水素と微粉炭とを混焼する。
【0091】
そして、発電機冷却制御部23は、発電機冷却工程として、発電機300への冷却用水素の供給を制御する(S106)。つまり、発電機冷却制御部23は、脱水素装置400から発電機300へ供給される冷却用の水素の量、温度または圧力などを調整する。
【0092】
以上のように、本発明の実施の形態に係るコンベンショナル火力発電所1によれば、脱水素装置400で有機化合物から脱水素化することで水素を生成し、ボイラ100で当該水素と化石燃料とを混焼することで、発電を行う。つまり、化石燃料だけではなく水素も燃焼して発電を行うことで、化石燃料のみを燃焼する場合よりも二酸化炭素の排出量を低減することができる。これにより、簡易に、二酸化炭素の排出量を抑制することができるコンベンショナル火力発電所1を実現することができる。
【0093】
また、脱水素装置400は、空気予熱器700の空気出口から取り出された高温空気が有する熱を有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。つまり、脱水素装置400は、空気予熱器700の空気出口から取り出された熱を利用することで、簡易に水素を生成することができる。特に、空気予熱器700の空気出口から取り出された高温空気が有する熱を利用する場合には、排ガス中に含まれる灰等によるエロージョンの懸念が少ないため、トラブル防止の観点から、当該高温空気を利用するのが望ましい。これにより、コンベンショナル火力発電所1において、簡易に、二酸化炭素の排出量を抑制することができる。
【0094】
また、脱水素装置400は、常温かつ常圧の水素をボイラ100に供給すればよいので、生成した水素を昇圧等する必要が無い。このため、コンベンショナル火力発電所1において、簡易に水素をボイラ100に供給して発電を行うことができるため、簡易に、二酸化炭素の排出量を抑制することができる。
【0095】
また、コンバインドサイクル発電などにおいてガスタービンに水素を供給する場合には、1.3〜5MPa程度にまで水素を昇圧する必要があるが、コンベンショナル火力発電所1においては、常温かつ常圧の水素をボイラ100に供給すればよいので、水素の取り扱いが容易であり、また発電効率の低下を抑制することができる。
【0096】
また、脱水素装置400は、有機ケミカルハイドライト法を用いて、水素化された有機化合物から脱水素化することで水素を生成する。これにより、コンベンショナル火力発電所1において、簡易に水素を生成して発電を行うことができるため、簡易に、二酸化炭素の排出量を抑制することができる。
【0097】
また、コンベンショナル火力発電所1において、水素と石炭とを混焼して発電を行うことで、石炭の燃焼によって増加する二酸化炭素の排出量を、簡易に抑制することができる。
【0098】
また、脱水素装置400は、生成した水素を、発電機300の冷却用の水素としても活用することができる。
【0099】
(変形例1)
次に、上記実施の形態の変形例1について、説明する。上記実施の形態では、脱水素装置400は、空気予熱器700の空気出口から取り出された高温空気が有する熱を有機化合物に加えることにより、水素を生成することとした。しかし、本変形例では、脱水素装置400は、空気予熱器700の排ガス入口から取り出された排ガスが有する熱を有機化合物に加えることにより、水素を生成する。
【0100】
図6は、本発明の実施の形態の変形例1に係るボイラ100周りの構成を示す模式図である。
【0101】
同図に示すように、煙道120における空気予熱器700の排ガス入口に、排ガス入口管121が設けられている。そして、脱水素装置400は、排ガス入口管121内の排ガスが有する熱を有機化合物(MCH)に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。つまり、脱水素装置400内には熱交換器が配置されており、当該排ガスが有する熱エネルギーをMCHに加えて、水素を生成する。
【0102】
このように、脱水素装置400は、空気予熱器700の排ガス入口から取り出された排ガスが有する熱を有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。
【0103】
また、脱水素装置400は、空気予熱器700の排ガス入口から取り出された排ガスを熱交換器に通して熱交換を行った後に、熱交換器から取り出された当該排ガスを空気予熱器700の排ガス入口に再び戻す。これにより、当該排ガスは、空気予熱器700での熱源として有効活用される。なお、当該排ガスの供給先は、空気予熱器700の排ガス入口には限定されず、空気予熱器700での熱源以外で有効活用されてもよい。
【0104】
なお、コンベンショナル火力発電所が全負荷運転で600MWの出力の場合に、煙道120中の空気予熱器700の入口排ガス温度(排ガス入口管121内の排ガスの温度)は、およそ380℃になる。ここで、脱水素装置400がMCHから水素を効率的に生成することができる温度は、例えば300℃(転化率90%の場合の触媒活性化温度)である。このため、脱水素装置400は、排ガス入口管121を通じて取り込んだ排ガスが有する熱をMCHに加えることにより、効率的に水素を生成することができる。
【0105】
以上のように、本発明の実施の形態の変形例1に係るコンベンショナル火力発電所によれば、脱水素装置400は、空気予熱器700の排ガス入口から取り出された排ガスが有する熱を有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。つまり、脱水素装置400は、空気予熱器700の排ガス入口から取り出された熱を利用することで、簡易に水素を生成することができる。これにより、コンベンショナル火力発電所において、簡易に、二酸化炭素の排出量を抑制することができる。
【0106】
(変形例2)
次に、上記実施の形態の変形例2について、説明する。上記実施の形態の変形例1では、脱水素装置400は、空気予熱器700の排ガス入口から取り出された排ガスが有する熱を有機化合物に加えることにより、水素を生成することとした。しかし、本変形例では、脱水素装置400は、脱硝装置600の入口または出口から取り出された排ガスが有する熱を有機化合物に加えることにより、水素を生成する。
【0107】
図7は、本発明の実施の形態の変形例2に係るボイラ100周りの構成を示す模式図である。
【0108】
同図に示すように、煙道120における脱硝装置600の入口に、脱硝装置入口管122が設けられている。そして、脱水素装置400は、脱硝装置入口管122内の排ガスが有する熱を有機化合物(MCH)に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。
【0109】
また、煙道120における脱硝装置600の出口に、脱硝装置出口管123が設けられていてもよい。そして、脱水素装置400は、脱硝装置出口管123内の排ガスが有する熱を有機化合物(MCH)に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成することにしてもよい。
【0110】
このように、脱水素装置400は、脱硝装置600の入口または出口から取り出された排ガスが有する熱を有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。
【0111】
また、脱水素装置400は、脱硝装置600の入口または出口から取り出された排ガスを熱交換器に通して熱交換を行った後に、熱交換器から取り出された当該排ガスを脱硝装置600の入口または出口に再び戻す。これにより、当該排ガスは、空気予熱器700での熱源として有効活用される。なお、当該排ガスの供給先は、脱硝装置600の入口または出口には限定されず、空気予熱器700での熱源以外で有効活用されてもよい。
【0112】
なお、コンベンショナル火力発電所が全負荷運転で600MWの出力の場合に、煙道120中の脱硝装置600の入口排ガス温度(脱硝装置入口管122内の排ガスの温度)は、およそ380℃になり、脱硝装置600の出口排ガス温度(脱硝装置出口管123内の排ガスの温度)についても、およそ380℃になる。このため、脱水素装置400は、脱硝装置入口管122または脱硝装置出口管123を通じて取り込んだ排ガスが有する熱をMCHに加えることにより、効率的に水素を生成することができる。
【0113】
以上のように、本発明の実施の形態の変形例2に係るコンベンショナル火力発電所によれば、脱水素装置400は、脱硝装置600の入口または出口から取り出された排ガスが有する熱を有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。つまり、脱水素装置400は、脱硝装置600の入口または出口から取り出された熱を利用することで、簡易に水素を生成することができる。これにより、コンベンショナル火力発電所において、簡易に、二酸化炭素の排出量を抑制することができる。
【0114】
なお、上記では、脱硝装置600の入口に、脱硝装置入口管122が設けられていることとしたが、脱硝装置入口管122は、節炭器124の出口に設けられているとも言える。つまり、脱水素装置400は、節炭器124の出口から取り出された排ガスが有する熱を有機化合物(MCH)に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成することにしてもよい。
【0115】
(変形例3)
次に、上記実施の形態の変形例3について、説明する。上記実施の形態及びその変形例では、脱水素装置400は、排ガス系統から取り出された熱を有機化合物に加えることにより、水素を生成することとした。しかし、本変形例では、脱水素装置400は、蒸気タービン200からの抽気が有する熱を有機化合物に加えることにより、水素を生成する。
【0116】
図8は、本発明の実施の形態の変形例3に係る蒸気タービン200周りの構成を示す模式図である。
【0117】
同図に示すように、高圧タービン210からの第八抽気管213に、第八抽気取出管214が設けられている。そして、脱水素装置400は、第八抽気取出管214内の第八抽気が有する熱を有機化合物(MCH)に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。つまり、脱水素装置400内には熱交換器が配置されており、当該第八抽気が有する熱エネルギーをMCHに加えて、水素を生成する。
【0118】
また、中圧タービン220からの第五抽気管221に、第五抽気取出管224が設けられていてもよい。そして、脱水素装置400は、第五抽気取出管224内の第五抽気が有する熱を有機化合物(MCH)に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成することにしてもよい。
【0119】
また、中圧タービン220からの第六抽気管222に、第六抽気取出管225が設けられていてもよい。そして、脱水素装置400は、第六抽気取出管225内の第六抽気が有する熱を有機化合物(MCH)に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成することにしてもよい。
【0120】
なお、第八抽気取出管214、第五抽気取出管224または第六抽気取出管225は、内部を通る蒸気の条件(流量、流速、温度、圧力等)に応じた仕様(口径、材質等)で構成されていれば、どのような仕様の配管であってもかまわない。
【0121】
このように、脱水素装置400は、蒸気タービン200からの抽気が有する熱を有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。
【0122】
また、脱水素装置400は、蒸気タービン200からの抽気を熱交換器に通して熱交換を行った後に、熱交換器から取り出された当該抽気を蒸気タービン200からの抽気系統に再び戻す。例えば、脱水素装置400は、第六抽気を熱交換器に通して熱交換を行った後に、熱交換器から取り出された当該第六抽気を第七抽気系統(例えば
図2の第七抽気管212)に戻す。これにより、当該抽気は、第七抽気系統(補助蒸気系統)での熱源として有効活用される。なお、当該抽気の供給先は、抽気系統には限定されず、抽気系統での熱源以外で有効活用されてもよい。
【0123】
なお、コンベンショナル火力発電所が全負荷運転で600MWの出力の場合に、第八抽気の温度(第八抽気取出管214内の抽気の温度)は、およそ350℃になり、第五抽気の温度(第五抽気取出管224内の抽気の温度)は、およそ390℃になり、第六抽気の温度(第六抽気取出管225内の抽気の温度)は、およそ470℃になる。このため、脱水素装置400は、第八抽気取出管214、第五抽気取出管224または第六抽気取出管225を通じて取り込んだ抽気が有する熱をMCHに加えることにより、効率的に水素を生成することができる。
【0124】
以上のように、本発明の実施の形態の変形例3に係るコンベンショナル火力発電所によれば、脱水素装置400は、蒸気タービン200からの抽気(高圧タービン210または中圧タービン220からの抽気)が有する熱を有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。つまり、脱水素装置400は、当該抽気の熱を利用することで、簡易に水素を生成することができる。これにより、コンベンショナル火力発電所において、簡易に、二酸化炭素の排出量を抑制することができる。
【0125】
(変形例4)
次に、上記実施の形態の変形例4について、説明する。上記変形例3では、脱水素装置400は、蒸気タービン200からの抽気が有する熱を有機化合物に加えることにより、水素を生成することとした。しかし、本変形例では、脱水素装置400は、ボイラ100から蒸気タービン200に送られる蒸気が有する熱を有機化合物に加えることにより、水素を生成する。
【0126】
図9は、本発明の実施の形態の変形例4に係る蒸気タービン200周りの構成を示す模式図である。
【0127】
同図に示すように、主蒸気管110に、主蒸気取出管111が設けられている。そして、脱水素装置400は、主蒸気取出管111内の主蒸気が有する熱を有機化合物(MCH)に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。
【0128】
また、高温再熱蒸気管140に、高温再熱蒸気取出管141が設けられていてもよい。そして、脱水素装置400は、高温再熱蒸気取出管141内の高温再熱蒸気が有する熱を有機化合物(MCH)に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成することにしてもよい。
【0129】
なお、主蒸気取出管111または高温再熱蒸気取出管141は、内部を通る蒸気の条件(流量、流速、温度、圧力等)に応じた仕様(口径、材質等)で構成されていれば、どのような仕様の配管であってもかまわない。
【0130】
このように、脱水素装置400は、ボイラ100から蒸気タービン200に送られる蒸気が有する熱を有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。
【0131】
また、脱水素装置400は、主蒸気系統または高温再熱蒸気系統からの蒸気を熱交換器に通して熱交換を行った後に、熱交換器から取り出された当該蒸気を、主蒸気系統、高温再熱蒸気系統またはその他の系統に戻す。なお、主蒸気系統または高温再熱蒸気系統からの蒸気は、高温の蒸気であるため、発電に関わる様々な箇所において有効活用することができる。
【0132】
なお、コンベンショナル火力発電所が全負荷運転で600MWの出力の場合に、主蒸気の温度(主蒸気取出管111内の蒸気の温度)は、およそ540℃になり、高温再熱蒸気の温度(高温再熱蒸気取出管141内の蒸気の温度)は、およそ570℃になる。このため、脱水素装置400は、主蒸気取出管111または高温再熱蒸気取出管141を通じて取り込んだ蒸気が有する熱をMCHに加えることにより、効率的に水素を生成することができる。
【0133】
以上のように、本発明の実施の形態の変形例4に係るコンベンショナル火力発電所によれば、脱水素装置400は、ボイラ100から蒸気タービン200に送られる蒸気(主蒸気または高温再熱蒸気)が有する熱を有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。つまり、脱水素装置400は、当該蒸気の熱を利用することで、簡易に水素を生成することができる。これにより、コンベンショナル火力発電所において、簡易に、二酸化炭素の排出量を抑制することができる。
【0134】
このように、変形例3及び4によれば、脱水素装置400は、ボイラ100から蒸気タービン200に送られる蒸気、及び蒸気タービン200からの抽気のうちの少なくとも1つが有する熱を有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。つまり、脱水素装置400は、ボイラ100から高圧タービン210に送られる主蒸気、高圧タービン210または中圧タービン220からの抽気、及び高圧タービン210からの抽気である低温再熱蒸気がボイラ100により加熱された高温再熱蒸気のうちの少なくとも1つが有する熱を有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。
【0135】
そして、以上の実施の形態及びその変形例によれば、脱水素装置400は、発電の際に生成される蒸気、排ガスまたは高温空気が有する熱を有機化合物に加えることにより、脱水素化を行い、水素を生成する。つまり、脱水素装置400は、発電の際に生成される熱を利用することで、簡易に水素を生成することができる。これにより、コンベンショナル火力発電所において、簡易に、二酸化炭素の排出量を抑制することができる。また、脱水素装置400は、発電の際に生成される熱を水素の生成に有効活用することで、発電効率の向上にも寄与する。
【0136】
また、脱水素装置400は、コンバインドサイクル発電などにおいて水素を生成する場合と比較して、高温で様々な温度帯の熱を取得することができ、また発電効率の低下も抑制することができる。
【0137】
また、脱水素装置400は、水素を生成する際に使用した蒸気、排ガス及び高温空気のうちの少なくとも1つを、コンベンショナル火力発電所が発電を行うために再利用する。これにより、熱を有効活用することができるため、脱水素装置400で熱を使用することによる発電効率の低下を抑制することができる。
【0138】
以上のように、本願発明は、コンベンショナル火力発電所(石炭火力発電所)の新設、リプレース、及び、既設油火力発電所の石炭燃料転換時に適用することができ、また、既設石炭火力発電所を改造して本願発明を適用することもできる。
【0139】
以上、本発明の実施の形態及びその変形例に係るコンベンショナル火力発電所について説明したが、本発明は、上記実施の形態及びその変形例に限定されるものではない。つまり、今回開示された実施の形態及びその変形例は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0140】
例えば、上記実施の形態及びその変形例では、ボイラ100は、脱水素装置400によって供給される水素と、化石燃料供給装置500によって供給される石炭(微粉炭)とを混焼することとした。しかし、化石燃料供給装置500が供給する化石燃料は、石炭には限定されず、重油や原油などの油燃料や、液化天然ガス(LNG)などであってもよい。つまり、ボイラ100は、水素と、重油、原油または液化天然ガスなどとを混焼することとにしてもかまわない。
【0141】
また、上記実施の形態及びその変形例では、脱水素装置400は、空気予熱器700の排ガス入口もしくは空気出口、脱硝装置600の入口もしくは出口、主蒸気、高温再熱蒸気、第五抽気、第六抽気、または第八抽気から取り出された熱を用いて水素を生成することとした。しかし、脱水素装置400は、水素を生成することができる温度の熱を取得できるのであれば、どのような系統の熱を用いることにしてもかまわない。
【0142】
また、上記実施の形態及びその変形例では、脱水素装置400は、常温かつ常圧の水素をボイラ100に供給することとした。しかし、脱水素装置400がボイラ100に供給する水素の温度及び圧力は、常温よりも少し低めの温度または少し高めの温度や、常圧よりも少し低めの圧力または少し高めの圧力などであってもかまわない。
【0143】
また、上記実施の形態及びその変形例では、脱水素装置400は、生成した水素を、発電機300の冷却用の水素として供給することとした。しかし、脱水素装置400は、生成した水素の量が不足している場合などには、発電機300には水素を供給せずに、従来の水素ボンベから発電機300に水素を供給するような構成でもかまわない。
【0144】
また、上記実施の形態及びその変形例では、脱水素装置400は、有機ケミカルハイドライト法を用いて、水素化された有機化合物(MCH)から脱水素化することで水素を生成することとした。しかし、脱水素装置400は、熱を加えて水素を生成することができるのであれば、用いる有機化合物はMCHには限定されず、どのような有機化合物を用いることにしてもよい。また、熱を加えて水素を生成することができる手法であれば、有機ケミカルハイドライト法には限定されず、どのような手法を用いてもかまわない。
【0145】
また、上記実施の形態及びその変形例では、制御装置20は、ボイラ100へ供給される水素の量を一定に維持し、ボイラ100へ供給される微粉炭の量を変化させて、ボイラ100における燃焼を調整することとした。しかし、制御装置20は、ボイラ100へ供給される微粉炭の量を一定に維持し、ボイラ100へ供給される水素の量を変化させて、ボイラ100における燃焼を調整することにしてもよい。また、制御装置20は、ボイラ100へ供給される水素の量及び微粉炭の量をともに変化させて、ボイラ100における燃焼を調整することにしてもよい。
【0146】
また、上記実施の形態及び上記変形例を任意に組み合わせて構築される形態も、本発明の範囲内に含まれる。例えば、脱水素装置400は、上記実施の形態及び上記変形例のうちの複数の系統から熱を取得して水素を生成することにしてもよい。また、脱水素装置400は、上記実施の形態及び上記変形例のうちの複数の系統に接続されており、当該複数の系統の中から適切な系統を制御装置20が選択して熱を取得することにしてもよい。
【解決手段】ボイラ100を備え、ボイラ100で燃料を燃焼させて発電を行うコンベンショナル火力発電所1であって、有機化合物から脱水素化することで水素を生成する脱水素装置400を備え、ボイラ100は、脱水素装置400が生成した水素と化石燃料とを混焼する。