(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記突起が前記可撓性膜部を挟んで前記弁部に重なる位置に設けられ、前記開口の周りの仕切り体壁面と前記対向壁との間で前記弁部と突起が圧縮された状態に保持されたことを特徴とする請求項1記載の液封入式防振装置。
前記第2ダイヤフラムは、前記弁部が前記開口の周りの仕切り体壁面から第1副液室側に離間するように前記可撓性壁部が撓み変形でき、これにより前記可撓性膜部に設けた前記貫通穴から第1副液室側に液体を供給できるよう構成されたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の液封入式防振装置。
前記対向壁には、前記弁部の内側の膜部分に対向する位置に中央貫通穴が設けられるともに、該中央貫通穴の周りに複数の外周貫通穴が設けられており、前記突起が前記中央貫通穴を取り囲む周壁状をなしていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の液封入式防振装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、実施形態に係る液封入式防振装置10の縦断面図である。この防振装置10は、自動車のエンジンを支承するエンジンマウントであり、支持側の車体に取り付けられる筒状をなす下側の第1取付具12と、振動源であるエンジン側に取り付けられる上側の第2取付具14と、これら両取付具12,14の間に介設されて両者を連結するゴム弾性体からなる防振基体16とを備えてなる。なお、
図1は無負荷状態を示している。
【0017】
第2取付具14は、第1取付具12の軸心部上方に配されたボス金具であり、径方向外方に向けてフランジ状に突出するストッパ部18が形成されている。また、上端部にはボルト穴20が設けられ、不図示のボルトを介してエンジン側に取り付けられるよう構成されている。
【0018】
第1取付具12は、防振基体16が加硫成形される円筒状の筒状金具22とカップ状の底金具24とからなり、底金具24に下向きの取付ボルト26が突設され、このボルト26を介して車体側に取り付けられるように構成されている。筒状金具22は、その下端部が底金具24の上端開口部に対し、かしめ部28によりかしめ固定されている。符号30は、筒状金具22の上端部にかしめ固定されたストッパ金具であり、第2取付具14のストッパ部18との間でストッパ作用を発揮する。また、符号32は、ストッパ金具30の上面を覆うストッパゴムである。
【0019】
防振基体16は傘状に形成され、その上端部が第2取付具14に、下端部が筒状金具22の上端開口部にそれぞれ加硫接着されている。この防振基体16の下端部に、筒状金具22の内周面を覆うゴム膜状のシール壁部34が連なっている。
【0020】
第1取付具12には、防振基体16の下面に対して軸方向Xに対向配置されて当該下面との間に液体封入室36を形成する可撓性ゴム膜からなる第1ダイヤフラム38が取り付けられ、液体封入室36に水やエチレングリコール、シリコーンオイル等の液体が封入されている。第1ダイヤフラム38は、外周部に環状の補強金具39を備え、該補強金具39を介して上記かしめ部28に固定されている。
【0021】
第1取付具12の内側に設けられた上記液体封入室36は、仕切り体40により、防振基体16側(即ち、上側)の主液室42と、第1ダイヤフラム38側(即ち、下側)の第1副液室44とに仕切られている。主液室42は、防振基体16が室壁の一部をなす液室であり、第1副液室44は、第1ダイヤフラム38が室壁の一部をなす液室である。第1ダイヤフラム38の下側には、底金具24の内側に空気室46が設けられており、従って、第1ダイヤフラム38は、第1副液室44と空気室46との隔壁をなすダイヤフラムである。
【0022】
仕切り体40は、平面視円形状をなして筒状金具22の内側にシール壁部34を介して嵌着されており、樹脂や金属等の剛性材料からなる。仕切り体40の下面には、リング板状の仕切り受板48が当接配置されており、仕切り受板48を第1ダイヤフラム38の補強金具39とともに、上記かしめ部28で固定することにより、仕切り体40は、シール壁部34に設けられた段部34Aと仕切り受板48との間で軸方向Xに挟まれた状態に保持されている。
【0023】
仕切り体40には、絞り流路である第1オリフィス流路50が設けられており、主液室42と第1副液室44は該第1オリフィス流路50を介して互いに連通されている。第1オリフィス流路50は、この例では車両走行時のシェイク振動を減衰するために、シェイク振動に対応した低周波数域(例えば、5〜15Hz程度)にチューニングされた低周波側オリフィスである。すなわち、第1オリフィス流路50を通じて流動する液体の共振作用に基づく減衰効果がシェイク振動の入力時に有効に発揮されるように、流路の断面積及び長さを調整することによってチューニングされている。
【0024】
第1オリフィス流路50は、仕切り体40の外周部に設けられている。詳細には、仕切り体40の外周部に設けられた外向きに開かれた第1オリフィス形成溝52(
図2参照)と、上記シール壁部34との間で、周方向C(
図3(a)参照)に延びる第1オリフィス流路50が形成されている。第1オリフィス通路50は、
図3(a)に示すように、周方向Cの一端に、主液室42に対して開口する主液室側開口50Aを備えるとともに、周方向Cの他端に、第1副液室44に対して開口する副液室側開口50Bを備え、主液室42と第1副液室44の双方に対して常時閉塞されることなく連通している常時連通状態のオリフィス流路である。
【0025】
仕切り体40には、また、主液室42の圧力緩和を目的として、ゴム膜からなる弾性メンブレン54が設けられている。弾性メンブレン54は、仕切り体40の内周側(即ち、上記外周部よりも径方向内側の仕切り体部分)において主液室42と第1副液室44を仕切り構成している。
【0026】
弾性メンブレン54は、円板状(円形膜状)をなして、外周部54Aが全周にわたって厚肉状をなすとともに、その内側に外周部54Aよりも薄肉で平らな可撓性部分54Bを備えてなる。この例では、
図2及び
図3(b)に示すように、弾性メンブレン54は、後述する第2ダイヤフラム72と一体に設けられている。
【0027】
弾性メンブレン54は、外周部54Aが全周にわたって仕切り体40に液密に保持されるとともに、外周部54Aよりも内側の可撓性部分54Bにおいて、一方の膜面(上側の面)に対して主液室42の圧力が及ぼされ、かつ他方の膜面(下側の面)に対して第1副液室44の圧力が及ぼされるように構成されている。
【0028】
そのため、弾性メンブレン54を保持する仕切り体本体56には、
図3(a)に示すように、可撓性部分54Bに対応して主液室42側に開口する開口部58が設けられ、その周りには外周部54Aが配される環状溝60が設けられている。また、この仕切り体本体56との間で弾性メンブレン54を挟持固定するための固定部材62を備える。固定部材62は、樹脂や金属等の剛性材料からなり、
図3(c)に示すように、可撓性部分54Bに対応して第1副液室44側に開口する開口部64を有する。固定部材62は、
図2に示すように、仕切り体本体56の下面側の段部66に対して内嵌固定され、これにより、上記環状溝60との間で弾性メンブレン54の外周部54Aを軸方向Xに圧縮した状態に挟持するよう構成されている。なお、この例では、弾性メンブレン54の上下両側には、弾性メンブレン54の過大な変位を制限する変位規制部材は設けられてない。
【0029】
仕切り体40には、また、ゴム弾性体からなる第2ダイヤフラム72が設けられている。第2ダイヤフラム72は、
図6に示すように、外周部72Aが仕切り体40に対して液密に(即ち、液体がリークしないように)保持されるとともに、外周部72Aよりも内側に可撓性膜部72Bを備えてなる。仕切り体40には、また、第2ダイヤフラム72を介して第1副液室44から区画された第2副液室55が設けられるとともに、主液室42と第2副液室55とを連結する絞り流路である第2オリフィス流路68が設けられている。
【0030】
第2オリフィス流路68は、第1オリフィス流路50よりも高周波数域にチューニングされた高周波側オリフィスであり、この例ではアイドル時(車両停止時)のアイドル振動を低減するために、アイドル振動に対応した高周波数域(例えば、15〜50Hz程度)にチューニングされている。すなわち、第2オリフィス流路68を通じて流動する液体の共振作用に基づく低動ばね効果がアイドル振動の入力時に有効に発揮されるように、流路の断面積及び長さを調整することによってチューニングされている。
【0031】
図2に示すように、第2オリフィス流路68は、仕切り体40の内周側(即ち、上記外周部よりも径方向内側の仕切り体部分)において、仕切り体40の厚み方向(この例では上記軸方向Xと同じ。)に延びて当該仕切り体40を貫通するように設けられている。詳細には、仕切り体本体56の下面には、平面視円形の段付き凹部70が設けられており(
図3(a)参照)、この段付き凹部70の中央部に円形の貫通孔を設けることにより第2オリフィス流路68が形成されている。そして、この段付き凹部70において、第2オリフィス流路68の第2副液室55側への開口68Aに対向させて、上記第2ダイヤフラム72が設けられている。
【0032】
詳細には、第2ダイヤフラム72は、
図4に示すように円板状(円形膜状)をなし、外周部72Aが全周にわたって厚肉状をなすとともに、該厚肉の外周部72Aの内側に円形の可撓性膜部72Bを備えてなる。可撓性膜部72Bは、外周部72Aの厚み方向における中間位置において、当該外周部72Aの内周面間を塞ぐように形成されている。この例では、第2ダイヤフラム72は、上記弾性メンブレン54と一体に成形されている。すなわち、両者の外周部72A,54A同士で連結させた形状にて一体化されており、従って、
図3(b)に示すように、厚肉状の外周部は全体として8の字状をなしている。
【0033】
また、仕切り体40の段付き凹部70には、外周部にリング状の規制突起74が設けられ、その外周側に第2ダイヤフラム72の外周部72Aが配される環状溝76が設けられている。この例では、第2ダイヤフラム72が弾性メンブレン54と一体に設けられているため、外周部72Aを受け入れる環状溝76が、弾性メンブレン54の外周部54Aを受け入れる環状溝60と連結された8の字状に形成されている(
図3(a)参照)。
【0034】
段付き凹部70に配置された第2ダイヤフラム72は、上記固定部材62により、仕切り体本体56に対して挟持固定されている。すなわち、固定部材62は、弾性メンブレン54だけでなく、第2ダイヤフラム72に対しても固定手段となっている。そのため、固定部材62は、上記段部66に内嵌固定され、該環状溝76との間で第2ダイヤフラム72の外周部72Aを軸方向Xに圧縮した状態に挟持することで、当該外周部72Aを液密に(即ち、液体がリークしないように)保持する。固定部材62には、段付き凹部70の規制突起74に対向させて、同様のリング状の規制突起78が設けられている。これらの規制突起74,78は、第2ダイヤフラム72の外周部72Aの径方向内方への変位を規制する。
【0035】
第2ダイヤフラム72の可撓性壁部72Bには、第2オリフィス流路68の上記開口68Aの周りに当接して当該開口68Aを塞ぐ弁部80が設けられている。弁部80は、上記開口68Aに対向する可撓性壁部72Bの第2副液室55側の膜面に突設されている。この例では、弁部80は、可撓性膜部72Bの上面から立ち上がり、上記開口68Aの周りに当接して当該開口68Aを取り囲む周壁状、より詳細には中空短円筒状のゴム壁部分であり、上記開口68Aの周りに押し付けられて第2オリフィス流路68を閉塞する。これにより、周壁状の弁部80の内側において当該弁部80に囲まれた空間が上記第2副液室55に形成されている。すなわち、弁部80の内側であって、可撓性膜部72Bの膜部分72Cと開口68A周りの仕切り体壁面40Aとの間の空間が第2副液室55となっており、第2ダイヤフラム72は、第1副液室44と第2副液室55との間の隔壁をなしている。
【0036】
弁部80は、仕切り体40への当接による衝撃を和らげるとともに、当接した状態で弁部80の軸方向Xにおける変形を許容して仕切り体40への伝達エネルギーを緩和させるように、筒状に形成され、即ち、その肉厚(軸方向Xでの平均肉厚)Pよりも軸方向寸法(可撓性壁部72Bからの突出高さ)Qが大きく(P<Q)設定されている(
図4(b)参照)。また、該軸方向寸法Qが、弁部80の外側における可撓性壁部72Bの肉厚Rよりも大きく設定されている(Q>R)。この例では、弁部80は、先端側ほど漸次肉厚が薄くなるように外周面がテーパ面状に形成されており、すなわち、先端部が薄肉で、根元部が外周面側で増肉された筒状をなしており、これにより軸方向Xに容易に変形できるよう形成されている。
【0037】
弁部80には、その内側の膜部分72Cに弁部80を補強するための突条からなるリブ82が設けられている。リブ82は、膜部分72Cの中心から複数本(この例では3本)が放射状に延びて弁部80の内周面に連結された形状をなし、
図4(b)に示すように中心から径方向外方に向かって漸次高くなるように上面が傾斜して形成されており、これにより弁部80の根元部を補強している。
【0038】
図6に示すように、可撓性膜部72Bには、第2オリフィス流路68の上記開口68Aに対して重ならない位置、即ち軸方向Xからみてラップしないように、少なくとも1つの貫通穴84が設けられている。貫通穴84は、上記弁部80の外側に設けられており、
図4(a)に示すように、該弁部80を取り囲む円周上の複数箇所に並設されており、この例では、等間隔にて4個の貫通穴84が設けられている。貫通穴84は、その総面積が第2オリフィス流路68の上記開口68Aの面積よりも大きく設定されている。
【0039】
図6に示すように、第2ダイヤフラム72の第1副液室44側には、可撓性膜部72Bの第1副液室44側の膜面に対して間隔をあけて対向する対向壁86が設けられている。対向壁86は、固定部材62に一体に設けられている。
図5に示すように、この例では、固定部材62には、上記規制突起78の内側に円形の対向壁86が設けられ、該対向壁86には、第1副液室44と第2ダイヤフラム72側とを連通させるための貫通穴として、中央部に中央貫通穴88が設けられるとともに、該中央貫通穴88の周りに複数の外周貫通穴90が設けられている。
【0040】
中央貫通穴88は、上記弁部80の内側の膜部分72Cに対向する位置に設けられており、この部分での圧力損失がないように、開口面積が第2オリフィス流路68の断面積、即ち上記開口68Aの面積よりも大きく設定されている。
【0041】
外周貫通穴90は、第2ダイヤフラム72の貫通穴84が設けられた円周上に対して軸方向Xからみて重なり合う同径の円周上において、周方向に等間隔にて複数個(この例では4個)が設けられている。外周貫通穴90は、その総面積が第2オリフィス流路68の上記開口68Aの面積よりも大きく設定されている。この例では、外周貫通穴90は、第2ダイヤフラム72の貫通穴84に対して、軸方向Xからみて互いに重なり合う位置に、即ち対向させて設けられている。
【0042】
第2ダイヤフラム72の可撓性壁部72Bには、
図6に示すように、上記弁部80と逆側の第1副液室44側の膜面に、上記対向壁86に圧接される突起92が設けられており、これにより、開口68A周りの仕切り体壁面40Aに対する弁部80の当接力が調整可能となっている。従って、該突起92は、弁部当接力調整突起と称することができる。
【0043】
図4に示すように、突起92は、可撓性膜部72Bを挟んで弁部80に重なる位置、即ち軸方向Xからみてラップする位置に設けられている。これにより、
図6に示すように、上記開口68Aの周りの仕切り体壁面40Aと対向壁86との間で弁部80と突起92が軸方向Xに圧縮された状態に保持されている。より詳細には、突起92は、可撓性膜部72Bを挟んで弁部80と重なり合う位置に周壁状に形成されている。すなわち、突起92は、可撓性膜部72Bの下面から立ち上がり、上記中央貫通穴88の周りに当接して当該中央貫通穴88を取り囲む周壁状、より詳細には中空短円筒状のゴム壁部分である。突起92は、上記弁部80と同様、その肉厚(軸方向Xでの平均肉厚)よりも軸方向寸法(可撓性壁部72Bからの突出高さ)が大きく設定されている。
【0044】
この例では、
図4に示すように、弁部80と突起92が、可撓性膜部72Bの厚み方向の中心面(厚み方向の中心において当該厚み方向に垂直な面)に関して上下対称形状に形成されている。これにより、第2ダイヤフラム72の組み付け時における上下方向性をなくして、組み立て作業性を向上している。
【0045】
なお、突起92の内側には、上記弁部80の内側に設けられた上面側のリブ82と同様の補強用のリブ94が設けられている。該リブ94は、上面側のリブ82と同形状に形成されているが、該上面側のリブ82に対して位相をずらして配置されている(
図4(a)〜(c)参照)。
【0046】
以上よりなる液封入式防振装置10であると、主液室42の液圧が規定値以下であるような通常使用領域においては、第2ダイヤフラム72の弁部80が第2オリフィス流路68の上記開口68Aに当接して当該開口68Aを塞いでいる。すなわち、通常使用領域では、弁部80によって第2副液室55は第1副液室44に対して閉塞されており、第2オリフィス流路68を通る液体は第1副液室44側にはリークしない。一方、主液室42の液圧が規定値よりも大きくなり、第2オリフィス流路68の流量が所定量以上となったときには、
図7に示すように、外周部72Aが保持された第2ダイヤフラム72は、その内側の可撓性膜部72Bが液流動によって第1副液室44側に押圧されることで撓み変形し、弁部80が上記開口68A周りの仕切り体壁面40Aから第1副液室44側(即ち、下方)に離間する。これにより、第2副液室55は第1副液室44に対して開かれ、主液室42内の液体を、可撓性膜部72Bに設けられた貫通穴84から第1副液室44側に供給することができる。なお、第1副液室44から第2副液室55側への液体の流入は第2ダイヤフラム72によって阻止されるので、弁部80は逆止弁として機能する。
【0047】
従って、上記液封入式防振装置10であると、通常使用領域において、車両走行時にシェイク振動のように比較的大振幅で低周波数側の振動が入力した時には、第2ダイヤフラム72での液体のリークを防止しつつ、低周波数側の第1オリフィス流路50を介して液体が主液室42と第1副液室44の間を行き来するので、第1オリフィス流路50を流動する液体の共振作用に基づき、シェイク振動に対して高い減衰性能が発揮される。
【0048】
また、停車したアイドル時のように比較的微振幅で高周波数側の振動が入力した時には、第2ダイヤフラム72が第2副液室55の閉塞状態を維持しつつ微小振幅にて撓み変形する。すなわち、第2副液室55は、第2ダイヤフラム72を介して第1副液室44に面するため、第2副液室55と同圧力状態となる。そのため、第2オリフィス流路68は、主液室42と第1副液室44との圧力差により液体が流れる。従って、高周波数側の振動入力に対して、第2オリフィス流路68で液体の流動が起こり、かかる高周波側の第2オリフィス流路68を通じての液体の共振作用により、アイドル振動に対する優れた防振効果が発揮される。
【0049】
また、かかる通常使用領域において、仕切り体40に設けた弾性メンブレン54が主液室42と第1副液室44間の圧力変動に基づいて撓み変形することにより、主液室42内の圧力を緩和して、例えば、アイドル振動よりも高周波数域であるこもり音領域での動ばね定数を低減することができる。
【0050】
一方、路面の段差を乗り越えるなどして大振幅の入力が生じ、第2オリフィス流路68の流量が所定量以上に達したときには、第2ダイヤフラム72の弁部80が開口68A周りの仕切り体壁面40Aから第1副液室44側に離間するように可撓性膜部72Bが撓み変形する。これにより、第2副液室55が第1副液室44側に開かれ、可撓性膜部72Bに設けられた貫通穴84から第1副液室44側に液体が供給されるので、主液室42内の過度な正圧発生に対する圧力緩和を行うことができる。そのため、弾性メンブレン54の過度な撓み変形を抑制することができる。
【0051】
第2ダイヤフラム72の離間後において、第2オリフィス流路68の流量が所定量以下に達したときには、第2ダイヤフラム72は上記開口68A周りの仕切り体壁面40Aに再び当接するが、その復帰力はゴム弾性によるものであり、復帰に伴う衝撃は小さいので、復帰に伴う異音が発生しにくい。
【0052】
このように本実施形態の防振装置10であると、通常使用領域では第2オリフィス流路68での液体流動を生じさせるダイヤフラムとしての役割を持つ第2ダイヤフラム72を、第2オリフィス流路68の流量が所定量に達したときにおける圧力緩和を行うための弁として利用している。そのため、部品点数の削減や構造の簡略化が図られ、また、弁としての可動部位がゴム状弾性体からなる構造であるので、金属バネを用いる場合のような防錆処理の必要もなく、コスト増加を抑えることができる。
【0053】
また、主液室42の過大な正圧発生を抑えることができるので、弾性メンブレン54については、もはや過大な正圧発生に耐え得る設計を行う必要がなくなる。そのため、耐久性を損なうことなく、弾性メンブレン54の低剛性化が可能となり、低動ばね特性を容易に実現することができる。
【0054】
また、本実施形態であると、弁部80がその内側に第2副液室55を形成する周壁状であるので、第2オリフィス流路68の閉塞時において、弁部80が軸方向Xに弾性変形可能である。そのため、例えば、悪路走行時等の大振幅入力時において第2オリフィス流路68の閉塞後にも弁部80が変形することで、仕切り体40への伝達エネルギーを緩和させることができる。すなわち、この場合、仕切り体40への伝達エネルギーEは、撓み変形する可撓性壁部72Bの運動エネルギーをE1とし、弁部80の変形による消費エネルギーをE2として、E=E1−E2で表されるので、弁部80の変形による消費エネルギーの分だけ、仕切り体40への伝達エネルギーを低減することができ、異音の発生を更に抑えることができる。
【0055】
また、本実施形態であると、可撓性膜部72Bの第1副液室44側に設けた弁部当接力調整突起92を対向壁86との間で圧縮させたことにより、第2ダイヤフラム72の剛性を変化させることができ、弁部80が第2オリフィス流路68の開口68Aから離間するタイミングを容易に調整することができる。
【0056】
詳細には、高周波側の第2オリフィス流路68の特性を向上するためには、第2ダイヤフラム72の剛性を小さくして、変形しやすくすることが求められるが、そのために単にゴム硬度を小さくすると、大振幅入力時に第2ダイヤフラム72が撓み変形しやすくなってオリフィス流路68の開口68Aから早期に離間してしまうので、第1オリフィス流路50による本来の減衰性能が損なわれるおそれがある。これに対し、上記突起92を設けておけば、ゴム硬度を小さくして第2ダイヤフラム72を変形しやすいものとしつつ、弁部80は突起92の圧縮によって剛性を高めて、第2オリフィス流路68の開口68Aから離間するタイミングを遅らせることができる。また、このようにゴム硬度を小さくすることができれば、第2ダイヤフラム72の復帰時における衝撃を抑えることもでき、異音を発生しにくくすることができる。
【0057】
特に本実施形態であると、突起92が弁部80と重なり合う位置に形成され、開口68A周りの仕切り体壁面40Aと対向壁86との間で、突起92と弁部80が圧縮された状態に保持されているので、弁部80の剛性をより効果的に高めて、開口68Aから離間するタイミングをより効果的に制御することができる。特に、弁部80と突起92を上下対称形状とすることにより、上下均等に圧縮保持することができるので、より有利である。なお、本実施形態では突起92を単一の円筒状突起により形成したが、弁部80を圧縮させることで当接力を調整することができるものであれば、例えば、複数の突起を設けてもよい。
【0058】
本実施形態であると、また、弁部80と突起92の内側に補強用のリブ82,94を設けたことにより、これら弁部80と突起92の繰り返しの離間・復帰によるヘタリを改善することができ、異音低減と信頼性を両立することができる。
【0059】
なお、上記実施形態では、固定部材62の対向壁86において、中央貫通穴88とともに、その周りの外周貫通穴90を設けている。これは、突起92が中央貫通穴88の周りに当接して液密にシールする構造であるため、弁部80が開口68Aを閉塞している状態では、中央貫通穴88を介して弁部80の内側の膜部分72Cに第1副液室44の液圧を作用させるとともに、弁部80が開口68Aから離間した状態では、その外周側の貫通穴84を通って対向壁86の外周貫通穴90から第1副液室44に液体を供給するためである。そのため、仮に突起92が中央貫通穴88をシールする構造でなければ、中央貫通穴88と外周貫通穴90の一方を省略することができる。
【0060】
また、上記実施形態では、弾性メンブレン54と第2ダイヤフラム72を一体に成形したが、かかる弾性メンブレンと第2ダイヤフラムはそれぞれ別部材として円形状に形成してもよい。但し、一体成形することにより、部品点数を削減し、組み付け作業性を向上することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、液室として、主液室42とともに、第1副液室44と第2副液室55の2つの副液室を設けた場合について説明したが、3つ以上の副液室を設けてもよい。その場合、第1オリフィス流路を介して主液室と連通される副液室と、第2オリフィス流路を介して第2副液室と連通される副液室とは同一でも異なってもよい。
【0062】
好ましくは、上記実施形態のように、第2ダイヤフラム72を介して第2副液室55と面する第1副液室44が、空気室46に面した第1ダイヤフラム38を室壁の一部とする液室であることである。空気室46に面した第1ダイヤフラム38を室壁の一部とする第1副液室44は、主液室42との間での圧力差が大きく、従って、第1副液室44に面した第2ダイヤフラム72を室壁の一部とする第2副液室55と、主液室42との間では圧力差が大きい。そのため、第2オリフィス流路68の流量が大きくなりやすく、よって、上記第2ダイヤフラム72による圧力緩和効果を高めることができる。なお、第1ダイヤフラム38としては、空気室46の代わりに外気に面したものであってもよい。従って、本発明の好ましい態様としては、第2オリフィス流路により第2副液室と連結された第1副液室が、空気室又は外気との隔壁をなすダイヤフラムが室壁の一部をなしている副液室である例が挙げられる。
【0063】
また、本発明に係る好ましい態様として、前記第1取付具が筒状をなして、該第1取付具の軸心部に前記第2取付具が配される一方、前記第1取付具に取り付けられて当該第1取付具の内側において前記防振基体との間に液体封入室を形成するゴム状弾性膜からなる第1ダイヤフラムが設けられ、前記仕切り体が前記液体封入室を前記防振基体側の主液室と前記第1ダイヤフラム側の第1副液室に仕切り、前記第1オリフィス流路が前記仕切り体の外周部に設けられて前記主液室と第1副液室を連結し、前記弾性メンブレンが前記外周部よりも内側の仕切り体部分において前記主液室と第1副液室との間を仕切り構成し、前記第2オリフィス流路が前記外周部よりも内側の仕切り体部分において前記第1副液室と第2副液室を連結して設けられてもよい。この場合も、第1副液室の室壁の一部をなす第1ダイヤフラムが空気室や外気に面した構成となるので、上記圧力緩和効果を高める上で有利である。
【0064】
上記実施形態では、また、シェイク振動とアイドル振動を対象としたが、これに限らず、周波数の異なる種々の振動に対して適用することができる。その他、一々列挙しないが、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変更が可能である。