(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
身体の管状部内において治療部位で展開するための可撓性ステントグラフトであって、前記ステントグラフトは管状体を含み、前記管状体の少なくとも第1の部分は、グラフト材料とコイル状ステントとを含み、前記コイル状ステントは複数の螺旋巻部を含み、前記巻部の間には間隔が設けられ、前記コイル状ステントは前記第1の部分の前記グラフト材料に取付けられ、前記第1の部分は第1の部分の直径を有し、前記コイル状ステントは前記第1の部分の直径と実質的に同一の螺旋直径を有し、前記コイル状ステントの、螺旋直径に対する螺旋ピッチの比率は、約1:2から約1:20であり、前記螺旋ピッチは前記コイル状ステントの隣接する巻部の間の間隔であり、前記第1の部分の生体適合性グラフト材料は、その長さに沿い交互に設けられた山部および谷部を含む周方向または螺旋状に予めひだが設けられた生体適合性グラフト材料を含み、前記コイル状ステントの前記螺旋巻部を、前記予めひだが設けられた生体適合性グラフト材料の谷部および/または山部で受け、前記コイル状ステントは、その複数の部分を縫合糸またはグラフト材料のループに通すことにより、対向する端部の間の複数の場所において、前記グラフト材料に、摺動する状態で取付けられる、可撓性ステントグラフト。
前記コイル状ステントの前記螺旋巻部は各々、一連の波形部またはジグザグ形状部を含み、前記波形部は、前記コイル状ステントの仮想的な円筒形表面上にある、請求項1に記載の可撓性ステントグラフト。
前記管状体は、前記管状体との間で流体を通すサイドアームを含み、前記サイドアームの少なくとも一部は前記第1の部分を含む、請求項1に記載の可撓性ステントグラフト。
前記管状体との間で流体を通す対をなす管状サイドアームを含み、前記対をなす管状サイドアームは各々グラフト材料から形成され、前記サイドアーム各々の少なくとも一部は前記第1の部分を含む、請求項6に記載の可撓性ステントグラフト。
前記コイル状ステントの前記封止部は、少なくとも2つの完全な螺旋巻部を含み、前記螺旋巻部の間の前記第1の間隔は0.5mm以下である、請求項14に記載の可撓性ステントグラフト。
前記コイル状ステントの前記撓み部は、10から30の螺旋巻部を含み、前記第2の間隔は約5mmから約10mmである、請求項14に記載の可撓性ステントグラフト。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
本明細書の中で、「遠位」という用語は、動脈の血流方向において心臓から最も遠い、内腔内装置の端部または動脈の一部を意味する。「近位」という用語は、心臓により近い、内腔内装置の端部または動脈の一部を意味する。
【0013】
第1の実施例
図1は、動脈瘤の部位において下行胸部大動脈内に展開した構造のステントグラフト100の第1の実施例を示す。ステントグラフト100は、生体適合性グラフト材料で形成された概ね管状の管状体105を含む。概ね管状の管状体105は、近位端と、遠位端と、弛ませた中央部110とを有する。これらの端部の間に内腔が延びる。管状体105の内腔は、血液が動脈瘤を通過して流れる経路となり、かつ、血液から圧力が動脈瘤嚢に加わらないようにする。グラフト材料で形成された管状体105は、1つ以上のステントの骨組によって支持される。
図1に示されるように、この骨組は、概ね管状の管状体105の近位端にある封止機能を有する第1のステント115と、概ね管状の管状体105の中央部110内の撓み機能を有する第2のステント135と、概ね管状の管状体105の遠位端にある封止機能を有する第3のステント160とを含む。
【0014】
ステントグラフトの中央部
ステントグラフト100を展開した構造において、弛ませた中央部110は、緩ませたすなわち弛ませた構造を有する
。中央部110は、ひだ状または波形(蛇腹状)構造を
有する。結果として、管状体105は、必要に応じて、動脈の変化に合わせて、長さまたは曲率が変化し得る。典型的には、管状体105は、伸ばされていない状態で、長さが約100mmから約150mmの範囲であり、さらに5から100mm伸びる余裕がある。この追加可能な長さをグラフト材料の「弛み」と言ってもよい。
【0015】
この弛みは、伸ばされていない長さの割合として表わしてもよい。たとえば、管状体105を、伸ばされていない長さの約5%から100%に相当する量だけ伸張するように構成してもよい。管状体105は、グラフト材料とともに弛ませた状態で動脈に展開すると、自由に伸び縮みする。一般的に、管状体105の直径の平均は約22から約42mmの範囲である。
図25の例に示されるように、腸骨動脈で使用する場合、ステントグラフト100の管状体105の直径は、約10mmから約16mmの範囲でよい。脈管構造の他の部分では、適切な直径は、約8mmから約36mmの範囲であろう。この直径は、管状体105の長さに沿って一定でもよいし変化してもよい。好ましくは、グラフト材料を管状体105の両端において実質的に滑らかで平坦にすることによって、ステントグラフト100を展開したときに動脈の壁と係合し易くしかつ動脈の壁に対して封止し易くする。
【0016】
第2のステント135は、以下で述べるように、グラフト材料の弛ませた中央部110に沿って延在し、第1のステント115の遠位方向側に隣接して展開し、中央部110とともに曲がる、伸びるおよび/または縮むことが可能である。第2のステント135は、その長手方向の軸に沿って伸縮可能であるとともに軸外の動き(たとえば撓むまたは曲がること)が可能である。
【0017】
好ましくは、第2のステント135は、複数の
螺旋巻部を含むコイル状構造を有し、したがって、コイル状ステント140と呼ぶことができる。コイル状ステント140は、ゲージが約0.7mmから約0.8mm(0.014インチから約0.021インチ)のワイヤで形成してもよく、少なくとも5つの螺旋巻部(またはコイル)145を含み、
図1Aに示されるように巻部145の間に間隔150がある。コイル状ステント140は、ある実施例に従うと、10から30の螺旋巻部を含んでもよく、このステントは、15から25の螺旋巻部を含んでもよい。より長いコイル状ステント140は、30から50の螺旋巻部を含んでもよい。
【0018】
ワイヤの各巻部145の間隔150は、コイル状ステントのピッチを表わす。コイル状ステントのピッチは、ステントグラフトの構造および位置に応じて、ステントの長さに沿って一定でもよく変化してもよい。典型的な間隔は、展開した状態で約1mmから約20mm、約2mmから約10mm、または約2mmから約5mmである。別の例では、この間隔(またはピッチ)は、約5mmから約10mmの範囲でもよい。
【0019】
図1および
図1Aを参照して、コイル状ステント140および中央部110は、管状部(たとえば大動脈)の湾曲に近接して並置されるよう、かつ必要に応じて長手方向に収縮および拡張するように構成される。たとえば、大動脈瘤が時間の経過に伴って収縮すると、大動脈弓170の曲率が変化することによって血管の長さに変化が生じることがある。コイル状ステント140が所望の長手方向の動きと撓みの動きとを行なうようにするには、コイル状ステント140の螺旋巻部145の展開した状態での最大の直径d′は、好ましくは血管の最小の直径よりも小さい。コイル状ステント140を、グラフト材料の内側に、ステントの対向する端部にある2つの場所で、たとえばモノフィラメントまたは編組縫合糸材料155によって、固定してもよい。加えて、コイル状ステント140を、グラフト材料に、ステント140の端部間の中央部110に沿うさらに他の場所で、摺動する状態で取付けてもよい。たとえば、コイル状ステント140の一部を、縫合糸またはグラフト材料のループに通してもよく、これらのループは、必要に応じてステント140のコイル145がループの中で摺動できる程度の緩みがある。これに代えて、
図2に例示されたステントグラフト10に示されるように、コイル状ステント140の一部を、たとえば縫合糸25によって、中央部110全体においてグラフト材料の内側または外側に固定してもよい。コイル状ステント140の一部または実質的に全体を、たとえば
図14および
図15に示され以下でさらに説明するように、接着剤によってグラフト材料に固定してもよいことも、想定されている。
【0020】
図2〜
図4は、ある実施例に従う管状体105の弛ませた中央部110の波形またはひだ状構造を示す。これらの図面に示されるように、中央部110は、その長さに沿って交互に設けられた谷部15および山部20を備えた螺旋状ひだ部を含んでもよい。コイル状ステント140の螺旋ワイヤ巻部を、螺旋状にひだが設けられたグラフト材料の谷部15で受けるようにしてもよい。ワイヤ巻部を、モノフィラメントまたは編組縫合糸25を用いて縫うことにより、谷部15で保持してもよい。
【0021】
コイル状ステントを備えたグラフト材料の中央部110の螺旋状の強化は、管状体105が患者の脈管構造に併せて撓んだ際に閉塞しないようにまたは捩じれないように、設計されている。中央部110が波形であることによって、管状体は、
図2および
図4に示されるように、一方側が短くなり他方側が長くなるようにして曲がり、湾曲形状に適合することができる。短い側では波形部分は互いに近づき、長い側では波形部分は離れる。好ましくは、中央部110の直径は管状体105が撓んでも変化しない。ワイヤは、好ましくは、
図3に示されるようにループ30の中央部110の各端部で終端をなし、これにより、確実に、ワイヤの尖った先端による血管の損傷は生じない。
【0022】
図5は、別の実施例に従う例示のステントグラフト50の管状体105の中央部110の波形またはひだ状構造を示す。この図面において、中央部110は、(先の実施例のような螺旋状のひだ状部分と異なり)その長さに沿って谷部55および山部65が交互に設けられた周方向のひだ状部分を含む。コイル状ステント140の螺旋ワイヤ巻部145は、全体的に縫合糸25を用いて縫付けられ、グラフト材料の周方向の波形部分に必ずしも一致しない。それでもやはり、コイル状ステント140によって支えられ、ひだ状のグラフト材料は、撓んでもその直径を維持することができる。
【0023】
図6Aを参照して、この図は
図1のステントグラフト100の一部を示し、管状体105の中央部110は、直径がdであり、ひだ部のピッチp
1および螺旋ワイヤピッチ150を有する波形グラフト材料を含んでもよい。このグラフト材料の大きさは、コイル状ステント140の上でまたはこの中で密着するように定められている。したがって、直径dは実質的にコイル状ステント140の直径d′に等しい。この実施例において、ひだ部のピッチp
1および螺旋ワイヤピッチ150は同一であり、直径dの約10分の1である。したがって、ステントグラフトのこの構造について、直径dに対するワイヤピッチ150の比率は約1:10である。
図6Bにおいて、直径dに対するワイヤピッチ150の比率は約1:20である。
【0024】
好ましくは、コイル状ステント140は、直径dと同等の長さにつき少なくとも2つのワイヤ巻部145を含む。言い換えると、直径に対するピッチの比率は、1:1または1以下である。たとえば、直径dに対する螺旋ワイヤピッチ150の比率は、約1:2(0.5)から約1:20(0.05)、または約1:5(0.2)から約1:10(0.1)の範囲でもよい。管状体110の直径dの範囲は、たとえば、約6mmから約36mmでもよく、コイル状ステント140の螺旋ピッチ長(巻部の間の間隔)は、たとえば先に述べたように約2mmから約10mmでもよい。
【0025】
図7において、ひだ部のピッチp
1は
図6に示したものと同一であり、螺旋ワイヤのピッチ150′は
図6に示したものの約2倍であるため、管状体の直径dに対するワイヤピッチ150′の比率は約1:5である。
【0026】
図8は、さらなる実施例を示し、この実施例においてワイヤピッチ150″は管状体の直径dの約2分の1であるため、直径dに対するワイヤピッチの比率は約1:2である。
【0027】
図9のステントグラフト10′は、ひだ状または波形の中央部110と、これに縫付けられたコイル状ステント140とを含む。この実施例において、コイル状ステント140の螺旋巻部145は、中央部110の螺旋状または周方向のひだ部の内外に縫付けられ、ステントグラフト10′を強化する。
【0028】
図2のステントグラフト10と同様に、
図9に示されたステントグラフト10′の中央部110が撓むと、一方側が収縮し、他方側が伸張して、管状体105を捩じれさせることなく、さもなければ一部または全体を閉塞させることなく、脈管構造に適合する。
図10は、湾曲した構造のステントグラフト10′を示す。
図11は、ステントグラフト10′の一部をさらに詳細に示し、コイル状ステント140の螺旋巻部145が中央部110の波形部分の山部20の内外に縫付けられていることがわかる。これに代えて、コイル状ステント140の螺旋巻部を谷部15を通して縫付けることが可能である。
【0029】
図12および
図13は、ステントグラフト10″の
一例を示し、この実施例において、中央部110′は、波形構造ではなく、管状体105′の長さ全体にわたって連続している。示されているコイル状ステント140は、グラフト材料の内外に縫付けられている。
図13に示されるように、ステントグラフト10″が曲げられると、曲げられた部分の外側ではグラフト材料はそれ以上伸びることができないが、曲げられた部分の内側ではグラフト材料は十分に撓んで管状体105′の流路を捩じれさせるまたは閉塞させることなくひだ状の構成を形成することができる。
【0030】
図14において、コイル状ステント140の螺旋巻部145は、ステントグラフト10の波形中央部110の谷部15の中で、スプレーされたポリマー接着剤2によって保持される。ポリマー接着剤は、クック社(Cook Incorporated)(インディアナ州ブルーミントン(Bloomington, IN))が販売しているソラロン(Thoralon)(商標)といったウレタン接着剤でもよい。代わりに接着剤はペイントされてもよい。
図15において、コイル状ステント140の螺旋巻部145は、波形中央部110の谷部15の中で、長手方向のライン状の接着剤2によって保持される。これらの実施例に従うと、コイル状ステント140の巻部145を、グラフト材料の外側の中央部110の谷部15の中に配置してもよく、接着剤を管状体105上にスプレーまたはペイントしてワイヤ補強部を適所で保持してもよい。これに代えて、コイル状ステント140をグラフト材料の内側に接着してもよい。接着剤2を、中央部110の局所領域に(たとえば長手方向または他の方向のストリップ状に)、または中央部110の実質的に全体に塗布してもよい。
【0031】
図16に示されたステントグラフト10aのコイル状ステント140′は、螺旋巻部145′に沿って波形部またはひだ部を含むことによって、谷部112および山部114を設け、ワイヤの1つの巻部145′当たりおよそ4から6個の谷部および山部がある。この配置は、ステントグラフト10aの中央部110aを圧縮して展開装置の中に適合させるのを助けるであろう。
【0032】
図17のステントグラフト10bの一部でも、コイル状ステント140″が螺旋巻部145″に沿い波形部またはひだ部を含むことによって、谷部112aおよび山部114aを設け、コイル状ステント140″の1つの巻き部全体当たり2つの谷部および2つの山部がある。この実施例において、グラフト材料の中央部110bは、
図16に示したものよりも大きなピッチを有する波形部を含む。この実施例における管状体105bの直径は12mmでもよく、中央部110bのピッチは4mmでもよい。螺旋ワイヤピッチも4mmでもよい。したがって、直径に対するピッチの比率は1:4である。この配置は、ステントグラフト10bを圧縮して展開装置の中に適合させるのを助けるであろう。
【0033】
図16および
図17のステントグラフト10a、10bにおいて、コイル状ステント140′、140″は、螺旋形であるだけでなく波形またはひだ状であり、グラフト材料の中央部110cのひだ部は螺旋形である。
図18のステントグラフト10cにおいて、コイル状ステント140′およびグラフト材料のひだ部は双方ともに波形である。グラフト材料はひだ状であり、螺旋のひだに沿って山部および谷部があるジグザグパターン116を含む。この構成は、コイル状ステント140′の螺旋巻部145′を管状体105cのひだ状部分の中に配置するのに有利である。螺旋形でひだ状のワイヤをグラフト材料の波形の谷部に置き、接着剤をその上にスプレーしワイヤを適所で保持することができる。
【0034】
図19はステントグラフトのためのコイル状または螺旋状のステントのさらなる実施例を示し、
図20は
図19のステント180を組込んだステントグラフト10dを示す。
【0035】
図19のステント180は、ニチノールといった弾性ワイヤ182の連続する螺旋を含む。このワイヤは、既知の技術によって熱硬化させて図示の形状にする。この螺旋形状は、点線186aで示される円筒形の表面によって示される円筒形の表面186を定める。螺旋の各巻部は一連の波部またはジグザグ形状にされ、波部184は円筒形の表面186上に位置するように形成される。この実施例において、各巻部について4つの曲部188があるが、各巻部について2つから8つの巻部が形成されてもよい。波形螺旋は、各端部で、好ましくはステントの各端部の波形でない螺旋巻き部187において終端をなす。先の実施例のように、直径に対する螺旋ワイヤピッチの比率は、1:2から1:20とすることができる。好ましくは、これは1:5から1:10の範囲である。ワイヤ182はループ189中において各端部で終端をなし、確実に、ワイヤの尖った先端が、ワイヤが配置された脈管構造に損傷を与えることができないようにする。ステント180の波形螺旋形状の利点は、先の実施例で示されたような螺旋ステントの高い可撓性を、送達装置への導入を容易にするジグザグのジアンタルコ(Gianturco)型ステントの圧縮の容易さと組合わせる点である。
【0036】
図20は、ダクロン(Dacron)(商標)といった管状で同様にひだ状の生体適合性グラフト材料190に設けられてステントグラフト10dを形成する
図19のステント180を示す。グラフト材料は、成形された型の上に置かれ、熱硬化されている間にひだ形状に拘束されることによって、同様にひだ状にされる。この実施例において、ステントは、ソラロン(Thoralon)(商標)といった生体適合性接着材料によって、グラフト材料に接着されることによって保持される。
【0037】
ステントグラフトの近位端および遠位端
再び
図1を参照して、封止機能を果たす第1のステント115を、管状体105の近位端に設けてもよい。第1のステントは好ましくは一連の湾曲部125を含むジグザグステント120であり、湾曲部の間に支柱部130がある。好ましくは、支柱部130の長さは約3mmから約20mmの範囲であり、より好ましくは約5mmから約15mmの範囲であり、これは、従来のジグザグステントを形成する支柱部の長さよりも小さい。この長さが長すぎると、曲率の大きい領域において支柱部130と大動脈壁の間に隙間が生じ、ステント120が提供する封止に欠陥が生じるかもしれない。したがって、この長さは、好ましくは、支柱部130を湾曲した大動脈壁に実質的に一致させるのに十分短いが、径方向外向きの力を作用させて所望の封止機能を果たすようにするのに十分長い。本明細書に引用により援用する2007年10月23日出願の米国特許出願連続番号第11/975,950号に記載のように、支柱130の長さがジグザグステント120の周囲に対して非対称であり、大動脈弓の曲率により一層適合することが好都合であろう。たとえば、曲率がより大きいこの大動脈弓の下側に位置する支柱130の長さは、曲率がやや小さいこの大動脈弓の上に位置する支柱130より短くてもよい。たとえば大動脈弓の下側に沿う支柱部130の長さは約5mm以下で、大動脈弓の上を通る支柱130の長さはたとえば約10から15mmでもよい。これに代えて、
図2に示されるように、従来の支柱の長さを有するジグザグステント120′を第1のステント115として用いてもよい。このようなステントは、以下でさらに説明するように、たとえば腸骨動脈内での用途に適しているであろう。
【0038】
好ましくは、第1のステント115の展開した状態での最大の直径を、本来の大動脈の直径よりも約10%−20%大きくし、血管壁上に所望の外向きの圧力を加える。典型的には、動脈瘤の場合は約15−20%大きくし、解離の場合は約10−15%大きくする。
【0039】
2つ以上の第1のステント115(たとえばジグザグステント120)を、管状体105の近位端に配置することで、ステントグラフト100の封止機能を改善してもよい。この装置の封止機能および移動抵抗を、組織を貫通して把持するように構成された棘状部を用いることによって、さらに向上させてもよい。この棘状部は、第1のステント115に取付けても、このステントと一体的に形成してもよい。
【0040】
好ましくは、第1のステント115は、たとえばモノフィラメントまたは編組縫合糸材料を用いてグラフト材料の内側に取付けられる。縫合糸155を、ステント115、120に沿う管状構造105の周囲の複数の場所で用いて、第1のステント115をグラフト材料に固定させてもよい。
【0041】
再び
図1を参照して、封止機能を果たす1つ以上の第3のステント160は、好ましくはステントグラフト110の遠位端で第2のステント135(コイル状ステント140)の隣に配置される。第3のステント160は、大動脈の本来の直径よりも大きな直径を有し典型的な長さ(たとえば約21mmから約22mm)の支柱部を有するジグザグステント165でもよい。第3のステント160は、好ましくはグラフト材料の内側に固定される。
【0042】
第2の実施例
図21は、第2の実施例に従い、動脈瘤の部位において下行腹部大動脈に展開した構造のステントグラフト200を示す。ステントグラフト200は、グラフト材料で形成され、近位端と、遠位端と、弛ませた中央部210とを有する、概ね管状の管状体205を含む。これらの端部の間に内腔が延びる。管状体205の内腔は、血液が動脈瘤を通過して流れる経路となり、かつ血液から圧力が動脈瘤嚢に加わらないようにする。グラフト材料で形成された管状体205は、1つ以上のステントの骨組によって支持される。
図21に示されるように、この骨組は、概ね管状の管状体105の近位端から中央部210の中へと延在し、封止機能および撓み機能を有する、コイル状ステント115を含む。この骨組はまた、ステントグラフト200の遠位端においてコイル状ステント215の隣りに配置された少なくとも1つの封止ステント260を含む。この実施例のステントグラフト200の中央部210は、先に述べた特徴
を含む。
【0043】
第2の実施例に従うと、コイル状ステント215は、封止部220および撓み部225を有し、管状体205の近位端から中央部210に沿って延在する。コイル状ステント215の封止部220は、少なくとも1つの螺旋巻部(またはコイル)を含み、ゲージが約0.8mmから約1mm(約0.021インチから約0.025インチ)の範囲であるワイヤで形成されてもよい。好ましくは、封止部220は、少なくとも2つの完全な螺旋巻部230を含む。
【0044】
図21Aに示されるように、封止部220の巻部230は、約0.1mmから約1mmといった巻部の小さな間隔235を含んでもよい。好ましくは、封止部220の巻部230の間の間隔235は、約0.5mm以下である。たとえば、コイル状ステント215の封止部220は、巻部の間の間隔が実質的になくなる最小の長さまで収縮してもよい(すなわち隣接するコイルが直に接触する)。好ましくは、コイル状ステント215の封止部220の、展開した状態での最大の直径d
2は、大動脈本来の直径よりも約10%から約20%大きくされているため、大動脈壁に対して、間隔の小さなコイル230から、所望の外向きの圧力が加わる。封止部の直径は、動脈瘤の場合は約15−20%大きくし、解離の場合は約10−15%大きくする。
【0045】
ステントグラフト200の封止機能および移動抵抗を、組織を貫通し把持するように構成された棘状部を用いることによってさらに向上させてもよい。棘状部は、コイル状ステント215の封止部220に取付けても一体的に形成してもよい。
【0046】
好ましくは、コイル状ステント215の封止部220は、たとえばモノフィラメントまたは編組縫合糸材料を用いて、グラフト材料の内側に装着される。縫合糸240を、ステント215の封止部220に沿う管状構造205の周囲の複数の場所で使用することにより、ステント215の封止部220をグラフト材料に取付けてもよい。これに代えて、封止部220を、たとえば縫合糸または接着剤によって、グラフト材料の外側に固定してもよい。
【0047】
コイル状ステント215の撓み部225は、中央部210とともに、曲がる、伸びるおよび/または縮むことが可能である。撓み部225は、その長手方向の軸に沿って伸縮可能であるとともに軸外の動き(たとえば撓むこと)が可能である
。撓み部225は、複数の
螺旋巻部を含むコイル状構造を有する。撓み部225は、コイル状ステント215の封止部220と一体的に形成してもよく、または、封止部220と別に形成し、溶接、接着または別の装着方法によって封止部220に装着してもよい。したがって、封止部220のように、コイル状ステント215の撓み部225を、ゲージが約0.8mmから約1.0mmの範囲であるワイヤで形成してもよく、または、撓み部225を、より小さなゲージ(たとえば約0.7mmから約0.8mm)のワイヤで形成してステントグラフト200の中央部210の可撓性を向上させてもよい。
【0048】
図21および
図21Bに示されるように、好ましくは、コイル状ステント215の撓み部225は、少なくとも5つの螺旋巻部245を含み、巻部245の間に間隔250が設けられる。たとえば、撓み部225は10から30個の螺旋巻部を含んでもよい。撓み部225はまた、15から25個の螺旋巻部を含んでもよい。より長いコイル状ステント215であれば30から50個の螺旋巻部を含んでもよい。
【0049】
ワイヤの各巻部245の間隔250は、コイル状ステント215の撓み部225のピッチを表わす。螺旋巻部の間隔は、ステントグラフト200の構造および位置に応じて、コイル状ステント215の長さに沿って一定でもよく変化してもよい。典型的な間隔は、展開した状態で約1mmから約20mmである。たとえば、この間隔(またはピッチ)は約2mmから約10mm、または5mmから約10mmの範囲でもよい。
【0050】
先の実施例のコイル状ステント140と同様、コイル状ステント215の撓み部225の直径は、グラフト材料で形成された管状体205の直径と実質的に同一であることにより、グラフト材料が撓み部225の上にまたはその中において密着してもよい。好ましくは、撓み部225は、直径と同等の長さにつき少なくとも2つのワイヤ巻部を含む。言い換えれば、直径に対するピッチの比率は1:1または1以下である。たとえば、直径dに対する螺旋ワイヤピッチ150の比率は、約1:2(0.5)から約1:20(0.05)、または約1:5(0.2)から約1:10(0.1)の範囲でもよい。
【0051】
コイル状ステント215の撓み部225は、管状部(たとえば大動脈)の湾曲に近接して並置されるよう、かつ必要に応じて長手方向に収縮および拡張するように構成される。たとえば、大動脈瘤が時間の経過に伴い収縮すると、大動脈弓の曲率が変化して血管の長さに変化が生じる可能性がある。コイル状ステント215が所望の長手方向の動きと撓みの動きとを行なうようにするために、撓み部225の螺旋巻部230の拡張された際の最大の直径d
3は、好ましくは大動脈本来の直径よりも小さい。
【0052】
コイル状ステント215の撓み部225の対向する端部は、好ましくは、たとえばモノフィラメントまたは編組縫合糸材料によって、グラフト材料の内側に固定される。加えて、コイル状ステント215の撓み部225を、グラフト材料に、撓み部225の端部間のさらに他の場所で、摺動する状態で取付けてもよい。たとえば、コイル状ステント215の一部を、縫合糸またはグラフト材料255のループに通してもよく、これは、必要に応じてステント215のコイルがループの中で摺動できる程度の緩みがある。これに代えて、コイル状ステント215の撓み部225の領域が、たとえば縫合糸または接着剤によって、中央部110全体においてグラフト材料の内側または外側に固定されてもよい。
【0053】
再び
図21を参照して、封止機能を果たす少なくとも1つのステント260は、好ましくは、ステントグラフト200の遠位端においてコイル状ステント215の撓み部225に隣接するように配置される。封止ステント260は、大動脈の直径よりも直径が大きく典型的な長さ(たとえば約21mmから約22mm)の支柱部を有するジグザグステント265でもよい。封止ステント260は好ましくはグラフト材料の内側に取付けられる。
【0054】
第3の実施例
図22は、第3の実施例に従い、動脈瘤の部位において下行胸部大動脈内に展開した構造のステントグラフト300を示す。ステントグラフト300は、グラフト材料で形成され、近位端と、遠位端と、弛ませた中央部310とを有する、概ね管状の管状体305を含む。近位端と遠位端の間に内腔が延びる。管状体305の内腔は、血液が動脈瘤を通過して流れる経路となり、かつ、血液から圧力が動脈瘤嚢に加わらないようにする。管状体305は、1つ以上のステントの骨組によって支持される。
【0055】
図22に示されるように、この骨組は、管状体305の近位端において封止機能を有する第1のコイル状ステント325と、第1のコイル状ステント325に隣接する撓み/伸張機能を有する第2のコイル状ステント320とを有する。第2のコイル状ステント320は、ステントグラフト300の中央部310に沿って延在する。この実施例のステントグラフト300の中央部310は、先に述べた特徴
を含む。封止機能を有する第3のステント360は管状体305の遠位端に配置される。
【0056】
図22Aに示されるように、第1のコイル状ステント315は、ゲージの範囲が約0.8mmから約1.0mmであるワイヤで形成されてもよく、少なくとも1つの完全な螺旋巻部(またはコイル)を有してもよい。好ましくは、第1のコイル状ステント315は少なくとも2つの完全な螺旋巻部325を含む。この第1のコイル状ステント315の巻部325の間隔330は、約0.1mmから約1mmといった小さな間隔である。好ましくは、巻部325間の間隔330は、約0.5mm以下である。たとえば、第1のコイル状ステント315は、コイル325の間に間隔がなくなる最小の長さまで収縮し得る。
【0057】
好ましくは、第1のコイル状ステント315の展開した状態での最大の直径d
0を、大動脈の本来の直径よりも約10%から約20%大きくすることにより、間隔を密にして設けられたコイル325から大動脈壁に対して所望の外向きの圧力を加える。典型的には、動脈瘤の場合は約15−20%大きくし、解離の場合は約10−15%大きくする。
【0058】
ステントグラフト300の封止機能および移動抵抗を、組織を貫通し把持するように構成された棘状部を用いることによってさらに向上させてもよい。この棘状部は、第1のコイル状ステント315に取付けてもよく、このステントと一体的に形成してもよい。
【0059】
第1のコイル状ステント315を、たとえばモノフィラメントまたは編組縫合糸材料を用いて、グラフト材料の内側または外側に取付けてもよい。縫合糸335を、第1のコイル状ステント315に沿い管状構造305の周囲において複数の場所で用いて、ステント315をグラフト材料に装着してもよい。
【0060】
第2のコイル状ステント320は、
図22に示されるように、撓みおよび伸張機能をステントグラフト300に与える。第2のコイル状ステント320は、その長手方向の軸に沿って伸縮可能であるとともに軸外の動き(たとえば撓むこと)が可能である
。第2のコイル状ステント320のコイル状構造は、複数の
螺旋巻部を含む。第1のコイル状ステント315のように、第2のコイル状ステント320は、ゲージが約0.8mmから約1.0mmの範囲であるワイヤで形成してもよい。好ましくは第2のコイル状ステント320を、より小さなゲージ(たとえば約0.7mmから約0.8mm)のワイヤで形成することで、ステントグラフト300の中央部310の可撓性を向上させてもよい。
【0061】
図22および
図22Bに示されるように、好ましくは、第2のコイル状ステント320は、少なくとも5つの螺旋巻部340を含み、螺旋巻部340の間に間隔345が設けられる。たとえば、第2のコイル状ステント320は、間隔が設けられた10から30個の螺旋巻部を含んでもよく、または、間隔が設けられた15から25個の螺旋巻部を含んでもよい。螺旋巻部の間隔345は、第2のコイル状ステント320の長さにわたって一定でもよく変化してもよい。典型的な間隔345は、展開した状態で、約1mmから約20mmである。たとえば、間隔345は、約2mmから約10mmまたは約5mmから約10mmの範囲でもよい。
【0062】
第1の実施例のコイル状ステント140と同様、第2のコイル状ステント320の直径は、グラフト材料で形成された管状体305の直径と実質的に同一であることにより、グラフト材料が第2のコイル状ステント320の上またはその中に密着するようにしてもよい。好ましくは、第2のコイル状ステント320は、直径と同等の長さ当たり少なくとも2つのワイヤ巻部を含む。言い換えれば、直径に対するピッチの比率は、1:1または1以下である。たとえば、直径dに対する螺旋ワイヤピッチ150は、約1:2(0.5)から約1:20(0.05)の範囲、または、約1:5(0.2)から約1:10(0.1)の範囲でもよい。
【0063】
第2のコイル状ステント320は、大動脈の湾曲に近接して並置されるよう、かつ必要に応じて長手方向に収縮および拡張するように構成される。たとえば、大動脈瘤が時間の経過に伴って収縮すると、大動脈弓の曲率が変化して血管の長さに変化が生じることがある。このような変化に対応するために、好ましくは第2のコイル状ステント320は大動脈内で長手方向に自由に移動することができる。したがって、好ましくは、展開した状態における第2のコイル状ステント320の螺旋巻部の最大の直径d
1は、大動脈本来の直径よりも小さい。第2のコイル状ステント320は、好ましくは、たとえばモノフィラメントまたは編組縫合糸材料によって、ステント320の対向する端部における2つの場所でグラフト材料の内側に固定される。加えて、第2のコイル状ステント320を、ステント320の端部の間のさらの他の場所で、摺動する状態でグラフト材料に取付けてもよい。たとえば、第2のコイル状ステント320の一部を、縫合糸またはグラフト材料のループ355に通してもよく、これは、必要に応じてステント320のコイル340が通過出来る程度の緩みがある。これに代えて、第2のコイル状ステント320の一部を、たとえば縫合糸または接着剤を用いて、中央部110全体においてグラフト材料の内側または外側に固定してもよい。
【0064】
再び
図22を参照して、封止機能を果たす少なくとも1つの第3のステント360は、好ましくはステントグラフト300の遠位端において第2のコイル状ステント320に隣接して設けられる。第3のステント360は、大動脈の直径と比較して直径が大きくされることにより大動脈壁に対して径方向外向きの力を加えるジグザグステントでもよい。第3のステント360は、典型的な長さ(たとえば約21mmから約22mm)の支柱部を有してもよい。好ましくは、第3のステント360はグラフト材料の内側に装着される。
【0065】
材料
ある実施例に従い、グラフト材料は、本明細書において説明する管状体を形成するように巻かれる織物または不織布のシートを含んでもよい。グラフト材料は、典型的にはステントの上に広げられ、縫合糸によりまたはグラフト材料のループにより、ステントの構成要素に取付けられる。多くの異なる種類の天然または合成グラフト材料を用いてステントグラフトの管状体を形成すればよい。好ましくは、グラフト材料は生体適合性である。たとえば、グラフト材料全体または一部が、ポリ(エチレンテレフタレート)またはダクロン(Dacron)(登録商標)といった1つ以上のポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)および拡張PTFEといったフッ素化ポリマー、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリアラミド、ポリアクリロニトリル、ナイロン、小腸粘膜下組織(SIS)および/またはセルロースから形成してもよい。SISが好都合な場合がある。なぜなら、この材料は、グラフト材料内における細胞の移動を促進する成長因子を含み、結果としてグラフト材料を構成された組織と置き換えるからである。本質的に生体適合性でないグラフト材料は、たとえば表面改質技術によって生体適合性にされることができるのであればステントグラフトで使用するのに適しているであろう。表面改質技術の例は、材料表面から生体適合性ポリマーをグラフト重合すること、表面を架橋生体適合性ポリマーで被覆すること、生体適合性官能基を用いた化学的改質、ならびに、ヘパリンまたはそれ以外の物質などの相溶化剤の固定を含む。また、動脈瘤の部位で放出するための1つ以上の治療用薬剤をグラフト材料に含浸させるまたはグラフト材料に塗布してもよいことが、想定されている。
【0066】
管状体を支持するステントは、好ましくは、生体適合性金属または金属合金から作られ、その例として、ステンレス鋼、ニッケルチタン(たとえばニチノール)、金、プラチナ、パラジウム、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、またはその合金がある。ステントに適した他の合金は、L−605、MP35N、およびエルギロイ(Elgiloy)(登録商標)などのコバルトクロム合金、合金625などのニッケルクロム合金、およびNb−1%Zrなどのニオビウム合金、ならびにその他を含む。好ましくは、この材料は、MRI適合性を有し、磁気共鳴画像法から得られる画像または走査に人工産物を生じさせない。ステントは、ワイヤ、管状材料、またはシートから、引き抜き、押出、冷間成形、ガン穿孔、レーザ溶接、およびレーザ切断技術といった、当該技術で周知の金属加工および仕上げ技術を用いて、作られてもよい。これに代えて、ステントグラフトのステントのうち1つ以上を、熱可塑性またはそれ以外のポリマーといった非金属材料から作ってもよい。ステントは、バルーン拡張可能または自己拡張可能となるよう設計される。
【0067】
1つ以上のステントが自己拡張可能な実施例に従うと、自己拡張ステントの材料は、好ましくは、以前の形状を「記憶し」回復することを可能にする形状記憶/超弾性特性を有する。ニッケルチタン形状記憶合金の場合、形状回復のもとになるのは、温度変化により(形状記憶効果)、または加えられた応力を除去することにより(超弾性効果)生じさせることができる、低温相(マルテンサイト)と高温相(オーステナイト)との間の相変態である。マルテンサイト相の合金に生じた歪みは、形状変化を引起すが、これは、オーステナイトへの逆の相変態が完了すると実質的に回復し、合金は以前の形状に戻ることができる。約8−10%までの回復可能な歪みは、一般的にニッケルチタン形状記憶合金で実現可能である。ステントグラフトに適した他の形状記憶合金は、たとえばCu−Zn−Al合金およびFe−Ni−Al合金を含み得る。
【0068】
送達、展開および使用
本明細書に記載されるさまざまな実施例に従うステントグラフトは、内腔内送達システムの中に導入するのに適した、薄型で直径が減じられた外形を有する、またはそのような外形に折りたたむことができる。典型的な送達システムの大きさの範囲は、18Frから24Frでもよい。ステントを、送達に適した薄型の外形で製造し、次に大動脈で展開してから初めて大きな直径となるべく拡張させてもよく、または、製造し所望の展開直径に加工した後に所望の折りたたまれた状態に変形してもよい。たとえば、ニッケルチタン自己拡張ステントは、典型的には、製造中に、展開直径で熱硬化処理を受け、したがって一般的には身体への送達のために直径が減じられた構成に変形される。
【0069】
本明細書に記載の代表的なジグザグステントの場合、薄型の外形は、隣接する支柱部間の曲げ部に含まれる角度が最小になったときに得られるであろう。本明細書に記載の代表的なコイル状ステントの場合、薄型の外形は、概略的に
図23Aおよび
図23Bに示されるように、ステントが展開状態よりも伸張しコイルの直径D
1がより小さな直径D
2となったときに得られるであろう。これに代えて、薄型の外形は、概略的に
図23Aおよび
図23Cに示されるように、展開構造と比較して長さは同様であるが直径がより小さく数がより多いコイル形状となるようにステントを形成することによって得られるであろう。グラフト材料の少なくとも一部を、展開状態で蛇腹状または他の弛ませた(緊張していない)構造を有するように製造しているので、かつ、コイル状ステントを、縫合糸または布ループによってグラフト布に摺動可能に装着できるので、グラフトの管状構造は、送達に際して異なるコイル構造またはステント長さに対応することができる。加えて、
図16〜
図20に示され先に述べた実施例は、ステントグラフトを、送達システムに挿入するために、直径が減じられた構成になるよう圧縮することを、容易にするであろう。
【0070】
図24は、腸骨動脈ステントグラフトなどのステントグラフトのサイドアームに対して使用される、この開示のコイル状ステントを示す。ステントグラフト1200は、サイドアーム125を有する管状体123を含み、サイドアームも管状体であり接合部127で本体123の開口内に縫付けられているので、流体を、本体の内腔からサイドアーム125の内腔内へと通すことができる。管状の本体123は、その近位端131において強化リング機構129を有する。管状体123はまた、その長さに沿って多数の外部ジグザグ自己拡張ステント133、134および136を有し、その遠位端137において内部自己拡張ジグザグステント135を有する。
【0071】
「側枝ステントグラフト(Side Branch Stent Graft)」と題された特許協力条約特許出願番号PCT/US2005/033676は、ステントグラフトにおいてサイドアームを管状本体に接続するためのある方法について記載しており、この特許明細書の開示全体を本明細書に引用により援用する。
【0072】
「側枝ステントグラフト(Side Branch Stent Graft)」と題された特許協力条約特許出願PCT/US2006/021258(WO/2006/130755)は、サイドアームを有する腸骨動脈ステントグラフトのさまざまな構成について記載しており、この特許明細書の開示全体を本明細書に引用により援用する。
【0073】
サイドアーム125は、螺旋状または周方向にひだが設けられた生体適合性グラフト材料体と、グラフト材料に取付けられたコイル状ステント143を有する部分141とを含む。この部分の構造は、先の図面のうちいずれかに描かれたものでよい。サイドアーム部141の遠位端145において強化リング147があり、サイドアームの端部に固定された大きさの開口部を設けて、膨張バルーンまたはその中の自己延長ステントが拡張して開口部での封止を可能にしている。
【0074】
図24に示されたステントグラフト1200の管状本体123の直径は、約12mmから約16mmでもよい。ステントグラフト1200のサイドアームの直径は、約6mmから約8mmでもよい。サイドアームの長さは、約12mmから約40mmでもよい。
【0075】
図25は、患者の脈管構造において、特に、大動脈および腸骨動脈に向かって伸びる大動脈分岐において使用される、この開示のステントグラフトを示す。脈管構造は、腎臓大動脈64と大動脈分岐66との間の領域において大動脈60を含む。総腸骨動脈68aおよび68bは、大動脈分岐66から伸びる。総腸骨動脈68a内にはかなりのねじれがある。大動脈60には、腎動脈と腸骨分岐との間に伸びる動脈瘤62がある。
【0076】
この動脈瘤に通すために、分岐大動脈ステントグラフト40を、大動脈60の中に展開している。分岐ステントグラフト70の近位端71を、腎動脈64の遠位側で大動脈の動脈瘤のない部分73の上に係合させる。十分に固定するために、ステントグラフト70は、腎臓部の上に露出したステント75を含み、このステントは、腎動脈64の近位側で大動脈壁と係合する棘状部77を有する。
【0077】
ステントグラフト70は、その遠位端81において分岐79から伸びる短脚部72および長脚部74を有する。長脚部74は、その遠位端において封止面76を有し、これは総腸骨動脈68bの動脈瘤のない部分の中に封止する状態で係合する。
【0078】
図2に示した種類の脚部延長ステントグラフト(「脚部延長部」)10を、腸骨動脈68aの中に展開している。脚部延長部10の近位端14aにおける封止面14は、分岐ステントグラフト70の短脚部72の中にあり、脚部延長部10は腸骨動脈68a内へと伸びる。脚部延長部10の強化されたひだ状中央部110は、腸骨動脈68a内のある程度のひねりを考慮する一方で、脚部延長部10の遠位端14bの封止面14が腸骨動脈68aの中で適切に封止するようにしている。
【0079】
図26は、対をなす高可撓性ステントグラフト側部分岐を組込んだステントグラフトの代替実施例を示す。
図27は、
図26に示した実施例の詳細な正面図であるが、ステントグラフト材料に強化ワイヤを取付ける形態が異なっている。
【0080】
図26および
図27には、対をなす側部分岐を有するステントグラフト150が示されている。この装置は、患者の腸骨動脈領域において使用することが意図され、近位端152は、分岐大動脈または大動脈単一腸骨ステントグラフト装置と接続することが意図され、遠位端153は、直接または腸骨脚部延長部(図示せず)とともに外腸骨動脈に伸びることが意図され、一方のサイドアーム154は、中で展開し内腸骨動脈に伸びる脚部延長部を有することが意図され、他方のサイドアーム156は、中で展開しこの領域の他の血管に伸びる脚部延長部を有することが意図されている。このような必要条件は、たとえば内腸骨動脈から伸びる上殿動脈の起点が内腸骨動脈の起点に近い、または、腸骨動脈ステントグラフトを使用している動脈瘤が内動脈内に伸びる場合にある。脚部延長部は、被覆されたまたは被覆されていないステントとすることができる。
【0081】
図26および
図27において、ステントグラフト150がサイドアーム154および156を有する管状体160を含み、これらサイドアームも各々管状体であり162で本体160の開口の中に縫付けられていることで、本体の内腔からサイドアームの内腔へと流体を通すことができることが、わかるであろう。管状の本体160は、その近位端152において強化リング機構166を有する。管状体160も、その長さに沿って多数の外部ジグザグ自己拡張ステント167、168および169を有し、その近位端153において内部自己拡張ジグザグステント170を有する。
【0082】
サイドアーム154および156各々に、螺旋状または周方向にひだが設けられた生体適合性グラフト材料本体とグラフト材料に取付けられた螺旋強化ワイヤ(またはコイル状ステント)174とを有する部分172がある。この部分の構造は、
図1、
図2、
図6、
図12および
図15〜
図20に示されたもののうちいずれでもよい。
【0083】
サイドアーム154および156各々の遠位端176において強化リング178があり、サイドアームの端部に固定された大きさの開口部を設けて、膨張バルーンまたは自己拡張サイドアーム延長ステントグラフトがその中で拡張して開口部での封止を可能にしている。遠位端の強化リング178は、螺旋ワイヤ強化部とは別のものでもこれと一体化されたものでもよい。
【0084】
図27において特に注目すべき点は、側部分岐の領域に位置するジグザグステント168が、サイドアーム154および156のベース182および184にそれぞれ縫付けられた屈曲部178および180を有することである。他のステントと同様、ステント168は弾力性のある自己拡張ステントであるため、屈曲部178および180は径方向外向きに伸びる傾向があり、これはステントグラフト150の中でサイドアームへの開口が開くのを助け、これによってサイドアームのカテーテル挿入が容易になるであろう。
【0085】
図26および
図27に示されたステントグラフトは通常、管状本体の直径が12mmから16mm、サイドアームの直径が6から8mmである。各サイドアームの長さは12mmから40mmである。
【0086】
図26において、螺旋または周方向にひだが設けられた生体適合性グラフト材料のサイドアーム154および156は、グラフト材料にワイヤ174の上で縫付けられた縫合糸177によってグラフト材料に取付けられた螺旋強化ワイヤ174を有する。
【0087】
図27において、螺旋状または周方向にひだが設けられた生体適合性グラフト材料のサイドアーム154および156は、ソラロン(Thoralon)(登録商標)といったポリウレタン接着剤179によってグラフト材料に取付けられた螺旋強化ワイヤ174を有する。
【0088】
本明細書に記載のステントグラフトを、2005年6月15日に出願され本明細書に引用により援用する「胸部展開装置およびステントグラフト(Thoracic Deployment Device and Stent Graft)」と題された米国特許出願公開第2006/0004433号に記載の導入体を用いて、大動脈といった身体の管状部分に送達し展開してもよい。好ましくは、この導入体は、ステントグラフトの各端部を選択的に解放できるようにするステントグラフト保持解放機構を含む。たとえば、ステントグラフトは、グラフトの周囲に通された一連の直径を減じる結び目または鎖部(たとえば縫合糸材料のループ)などの保持要素によって、導入体上に保持されてもよい。保持要素は、本体の外側に配置されたハンドルの操作によってそれぞれの装置の締付けおよび解放を可能にするトリガワイヤと繋がっていてもよい。適当なトリガワイヤシステムが、2003年5月29日に出願され本明細書に引用により援用する「トリガワイヤシステム(Trigger Wire System)」と題された米国特許出願公開第2003/0233140号に記載されている。ステントグラフトは、ステントグラフトの中央部だけでなく、ステントグラフトの近位端および遠位端において鎖部を含んでいてもよい。また上蓋部が装置の近位端を覆ってもよい。
【0089】
保持要素を所定の順序で解放することによってグラフトを展開することができる。たとえば、ステントグラフトの近位端に配置された鎖部を、好ましくは遠位端の鎖部よりも前に解放することによって、グラフトを完全に展開する前に、動脈瘤または解離におけるステントグラフトの長さおよび位置を調整することができる。このようにして、ステントグラフトを、
図28A〜
図28Cに概略的に示されるように、装置の長さに沿って徐々にかつ制御されたやり方で配置すればよい。
【0090】
代表的な展開の手順は、鎖部が付けられたステントグラフトと、その上にある外側シースと、その下にある内側シースとを含む導入部を、股間の小さな切開部の中に挿入して患者の大腿動脈に至るようにすることを含んでも良い。これに代えて、頚動脈または腕もしくは腹部の動脈などの他の血管を通して大動脈に至るようにしてもよい。次に、ステントグラフトを、X線透視下で腹部大動脈の弱ったまたは損傷を受けた部分へと導く。外側シースを後退させて鎖部が付けられたステントグラフトを露出させる。ステントグラフトの近位(先端)部を所望の位置に誘導し、近位部を固定している鎖部を適切なトリガワイヤを用いて解放することによって、
図28Aに示されるようにグラフト500の近位端500aを展開すればよい。ステントグラフト500の中央部110を固定している鎖部も解放し、
図28Bに示されるように中央部110の全体または一部を拡張させればよい。いくつかの実施例に従い本明細書で述べたようにステントグラフト500の中央部の可撓性および拡張性を活用し、ステントグラフトの中央部110および遠位端110bを、近位端500aを固定したままで、治療部位に適切に配置すればよい。ステントグラフトに対して所望の調整および位置決めを行なった後、残りの保持要素を解放し、
図28Cに示されるようにステントグラフト500の遠位端500bを展開すればよい。
【0091】
本発明のさまざまな実施例について説明してきたが、当業者にはさらに多くの実施例および実現化例が本発明の範囲の中で可能であることが明らかであろう。したがって、本発明は、添付の請求項およびその均等物に照らして限定される以外限定されることはない。