【文献】
REGISTRY(STN)[online],RN: 856436-80-1,データ作成日2005年7月22日(検索日2013年11月15日)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
構造式(I)によって表される
嫌気性硬化促進剤の製造方法であって、
【化18】
(式(I)において、
R
1は、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択され、
Xは、直接結合、−O−、−S−、−NH−、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクリレン、アリーレン、アルカリーレンおよびヘテロアリーレンからなる群から選択され、
Yは、少なくとも2つの隣接する炭素原子を有するアルキレン主鎖を含み、−O−、−S−または−NH−部分によって遮断されていてもよい置換アルキレン基であり、但しYの−O−、−S−または−NH−は、存在する場合、Xの別の−O−、−S−または−NH−基と隣接しておらず、前記アルキレン基は、−OH、−NH
2、−SH、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立に選択される置換基を有しており、またはYの同じ炭素原子上の2つの水素原子は、カルボニルによって置換されており、少なくとも2つの置換基は、それぞれ独立に、−OH、−NH
2および−SHからなる群から選択され、但し−OH、−NH
2または−SHのそれぞれは、Yの同じ炭素原子にも、Yの−O−、−S−もしくは−NH−主鎖部分にも結合していない。)
(a)構造式(II)によって表される化合物の群から選択される少なくとも1つの
ヒドラジン化合物
【化19】
(式(II)において、
R
1は、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される。)
と、
(b)構造式(III)および構造式(IV)によって表される化合物の群から選択される少なくとも1つの
カルボニル化合物
【化20】
(式(III)において、
Xは、直接結合、−O−、−S−、−NH−、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクリレン、アリーレン、アルカリーレンおよびヘテロアリーレンからなる群から選択され、
Yは、少なくとも2つの隣接する炭素原子を有するアルキレン主鎖を含む、−O−、−S−または−NH−部分によって遮断されていてもよい置換アルキレン基であり、但しYの−O−、−S−または−NH−は、存在する場合、Xの別の−O−、−S−または−NH−基と隣接しておらず、前記アルキレン基は、−OH、−NH
2、−SH、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立に選択される置換基を有しており、またはYの同じ炭素原子上の2つの水素原子は、カルボニルによって置換されており、少なくとも2つの置換基は、それぞれ独立に、−OH、−NH
2および−SHからなる群から選択され、但し−OH、−NH
2または−SHのそれぞれは、Yの同じ炭素原子にも、Yの−O−、−S−もしくは−NH−主鎖部分にも結合しておらず、
R
2は、−OR、−NHR、アルキルおよびアリールアルキルからなる群から選択され、但しRは、H、アルキルまたはアリールアルキルである。)
【化21】
(式(IV)において、
ZおよびZ’は、それぞれ独立に、−O−、−S−および−N(R
3)−からなる群から選択され、但しR
3は、Hまたはアルキルであり、
mは、少なくとも1であり、
各R
4は、独立に、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、ヒドロキシ置換シクロアルキル、少なくとも1つの−OH、−NH
2または−SH基を有するアリールアルキルおよび少なくとも1つの−OH、−NH
2または−SH基を有するヘテロアリールアルキルからなる群から選択され、但し、置換可能な環の炭素原子1個に結合しているのは、わずか1個のR
4置換基であり、
pは、1または2である。)
を反応させ、
ヒドラジン−カルボニル付加物を生成するステップを含む方法。
【背景技術】
【0002】
嫌気性接着剤組成物は、一般に周知である。例えば、「Handbook of Adhesive Technology」、29、467〜79頁、A.PizziおよびK.L.Mittal編、Marcel Dekker、Inc.、New York(1994年)のR.D.Rich、「Anaerobic Adhesives」、およびそれに引用されている参考文献を参照のこと。それらの使用は多岐にわたっており、新しい用途の開発が継続されている。
【0003】
従来の嫌気性接着剤は、通常、ラジカル重合可能なアクリレートエステルモノマーを、ペルオキシ開始剤および重合抑制成分と一緒に含む。かかる嫌気性接着剤組成物は、組成物が硬化する速度を増大する促進成分を含有することも多い。
【0004】
硬化を誘発し促進する、望ましい嫌気性硬化誘発性組成物は、サッカリン、N,N−ジエチル−p−トルイジン(「DE−p−T」)およびN,N−ジメチル−o−トルイジン(「DM−o−T」)などのトルイジン、アセチルフェニルヒドラジン(「APH」)、マレイン酸、ならびにナフトキノンおよびアントラキノンなどのキノンの1つまたは複数を含むことができる。例えば、米国特許第3,218,305号(Krieble)、同第4,180,640号(Melody)、同第4,287,330号(Rich)および同第4,321,349号(Rich)を参照のこと。
【0005】
サッカリンおよびAPHは、嫌気性接着剤硬化系の標準的な硬化促進剤成分として使用されている。現在、Henkel Corporationから入手可能なLOCTITEブランドの嫌気性接着剤製品は、その嫌気性接着剤の大部分に、サッカリンのみ、またはサッカリンとAPHの両方を使用している。しかし、これらの成分は、世界の特定の地域では規制監視下にあり、したがって代替としての候補を特定するための研究が行われている。
【0006】
嫌気性接着剤のための他の硬化剤の例には、チオカプロラクタム(例えば、米国特許第5,411,988号参照)およびチオ尿素[例えば、米国特許第3,970,505号(Hauser)(テトラメチルチオ尿素)、ドイツ特許第1 817 989号(アルキルチオ尿素およびN,N’−ジシクロヘキシルチオ尿素)および同第2 806 701号(エチレンチオ尿素)、ならびに特開平07−308,757(アシル、アルキル、アルキリデン、アルキレンおよびアルキルチオ尿素)参照]が含まれ、後者の幾つかは、約20年前まで商業上使用されていた。
【0007】
Loctite(R&D)Ltd.は、嫌気性接着剤組成物の硬化剤として有効な、新しい種類の材料であるトリチアジアザペンタレンを見いだした。驚くべきことに、従来の硬化剤(APHなど)の代替として、これらの材料を嫌気性接着剤に添加することによって、それから形成される反応生成物に少なくとも同程度の硬化速度および物理特性が付与される。米国特許第6,583,289号(McArdle)参照。
【0008】
米国特許第6,835,762号(Klemarczyk)は、(メタ)アクリレート成分と、アセチルフェニルヒドラジンおよびマレイン酸を実質的に含まない嫌気性硬化誘発性組成物と、−C(=O)−NH−NH−結合および同じ分子上に有機酸基を有する嫌気性硬化促進化合物(但し該嫌気性硬化促進化合物は、1−(2−カルボキシアクリロイル)−2−フェニルヒドラジンを含まない)をベースにした嫌気性硬化性組成物を提供している。該嫌気性硬化促進剤は、
【0009】
【化1】
(式中、R
1〜R
7は、それぞれ独立に、水素およびC
1〜4から選択され、Zは、炭素−炭素単結合または炭素−炭素二重結合であり、qは、0または1であり、pは、1〜5の間の整数である。)
によって包含され、その例は、3−カルボキシアクリロイルフェニルヒドラジン、メチル−3−カルボキシアクリロイルフェニルヒドラジン、3−カルボキシプロパノイルフェニルヒドラジンおよびメチレン−3−カルボキシプロパノイルフェニルヒドラジンである。
【0010】
米国特許第6,897,277号(Klemarczyk)は、(メタ)アクリレート成分と、サッカリンを実質的に含まない嫌気性硬化誘発性組成物と、以下の構造
【0011】
【化2】
(式中、Rは、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニル、カルボキシルおよびスルホネートから選択され、R
1は、水素、アルキル、アルケニル、ヒドロキシアルキル、ヒドロキシアルケニルおよびアラルキルから選択される)
の嫌気性硬化促進化合物(その例は、フェニルグリシンおよびN−メチルフェニルグリシンである)をベースにした嫌気性硬化性組成物を提供している。
【0012】
米国特許第6,958,368号(Messana)は、嫌気性硬化性組成物を提供している。この組成物は、(メタ)アクリレート成分と、サッカリンを実質的に含まない以下の構造の嫌気性硬化誘発性組成物をベースにしている。
【0013】
【化3】
(式中、Yは、C
1〜6アルキルもしくはアルコキシ、またはハロ基によって最大5つの位置において場合によって置換されている芳香環であり、Aは、C=O、S=OまたはO=S=Oであり、Xは、NH、OまたはSであり、Zは、C
1〜6アルキルもしくはアルコキシ、またはハロ基によって最大5つの位置において場合によって置換されている芳香環であり、あるいはYおよびZは、一緒になって同じ芳香環または芳香環系に結合することができ、但しXがNHである場合、o−安息香酸スルフィミドは該構造から除外される。)
上記の構造によって包含される嫌気性硬化促進化合物の例には、2−スルホ安息香酸環状無水物および3H−1,2−ベンゾジチオール−3−オン−1,1−ジオキシドが含まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
これらの最先端技術にもかかわらず、既存の製品とは区別され、かつ原料の不足または供給停止の事態においても供給の保証が得られる嫌気性硬化促進剤の代替技術を見出すことが今も求められている。さらに、嫌気性硬化誘発性組成物に使用される原料の幾つかは、多かれ少なかれ、規制監視下に置かなければならないため、代替成分が望まれる。したがって、嫌気性硬化性組成物の硬化において硬化成分として機能する新しい材料を特定することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0015】
幾つかの非限定的実施形態では、本発明は、構造式(I)によって表される化合物の群から選択される化合物を提供する
【0016】
【化4】
(式Iにおいて、R
1は、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択され、Xは、直接結合、−O−、−S−、−NH−、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクリレン、アリーレン、アルカリーレンおよびヘテロアリーレンからなる群から選択され、Yは、少なくとも2つの連続する炭素原子を有するアルキレン主鎖を含む、1つまたは複数の−O−、−S−または−NH−部分によって場合によって遮断されていてもよい置換アルキレン基であり、但しYの各−O−、−S−または−NH−部分は、存在する場合、Xの−O−、−S−または−NH−と隣接しておらず、Yの該アルキレン基は、−OH、−NH
2、−SH、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立に選択される置換基を有しており、またはYの同じ炭素原子上の2つの水素原子は、カルボニルによって置き換えられており、Yの少なくとも2つの置換基は、それぞれ独立に、−OH、−NH
2および−SHからなる群から選択され、但し−OH、−NH
2または−SH基のそれぞれは、Yの同じ炭素原子にも、Yの−O−、−S−もしくは−NH−主鎖部分にも結合していない)。
【0017】
他の実施形態では、本発明は、(a)構造式(II)によって表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物
【0018】
【化5】
(式IIにおいて、R
1は、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される)、ならびに(b)構造式(III)および構造式(IV)によって表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物
【0019】
【化6】
(式IIIにおいて、Xは、直接結合、−O−、−S−、−NH−、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクリレン、アリーレン、アルカリーレンおよびヘテロアリーレンからなる群から選択され、Yは、少なくとも2つの連続する炭素原子を有するアルキレン主鎖を含む、1つまたは複数の−O−、−S−または−NH−部分によって場合によって遮断されていてもよい置換アルキレン基であり、但しYの各−O−、−S−または−NH−部分は、存在する場合、Xの−O−、−S−または−NH−と隣接しておらず、Yの該アルキレン基は、−OH、−NH
2、−SH、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立に選択される置換基を有しており、またはYの同じ炭素原子上の2つの水素原子は、カルボニルによって置き換えられており、Yの少なくとも2つの置換基は、それぞれ独立に、−OH、−NH
2および−SHからなる群から選択され、但し−OH、−NH
2または−SH基のそれぞれは、Yの同じ炭素原子にも、Yの−O−、−S−もしくは−NH−主鎖部分にも結合しておらず、R
2は、−OR、−NHR、アルキルおよびアリールアルキルからなる群から選択され、Rは、H、アルキルまたはアリールアルキルである)
【0020】
【化7】
(式IVにおいて、ZおよびZ’は、それぞれ独立に、−O−、−S−および−N(R
3)−からなる群から選択され、R
3は、Hまたはアルキルであり、mは、少なくとも1であり、各R
4は、独立に、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、ヒドロキシ置換シクロアルキル、少なくとも1つの−OH、−NH
2または−SH基を有するアリールアルキルおよび少なくとも1つの−OH、−NH
2または−SH基を有するヘテロアリールアルキルからなる群から選択され、但し、置換可能な環の炭素原子に結合しているのは、わずか1個のR
4置換基であり、pは、1または2である)
を含む反応物質から調製される反応生成物を提供する。
【0021】
他の実施形態では、本発明は、(a)構造式(V)によって表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物
【0022】
【化8】
(式Vにおいて、R
5は、ヒドロキシアルキルおよびカルボキシアルキルからなる群から選択される)、および(b)構造式(VI)によって表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物
【0023】
【化9】
(式VIにおいて、Z’’は、−O−、−S−および−NH−からなる群から選択され、qは、1〜4であり、R
6は、独立に、ヒドロキシアルキル、アミノアルキルおよびチオアルキルからなる群から選択され、nは、少なくとも1である)
を含む反応物質から調製される反応生成物を提供する。
【0024】
また、上記の化合物および反応生成物を含む組成物が提供される。
【0025】
幾つかの非限定的実施形態では、本発明は、構造式(I)によって表される化合物の群から選択される化合物の製造方法を提供し
【0026】
【化10】
(式Iにおいて、R
1は、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択され、Xは、直接結合、−O−、−S−、−NH−、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクリレン、アリーレン、アルカリーレンおよびヘテロアリーレンからなる群から選択され、Yは、少なくとも2つの連続する炭素原子を有するアルキレン主鎖を含み、−O−、−S−または−NH−部分によって場合によって遮断されていてもよい置換アルキレン基であり、但しYの−O−、−S−または−NH−は、存在する場合、Xの別の−O−、−S−または−NH−基と隣接しておらず、該アルキレン基は、−OH、−NH
2、−SH、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立に選択される置換基を有しており、またはYの同じ炭素原子上の2つの水素原子は、カルボニルによって置き換えられており、少なくとも2つの置換基は、それぞれ独立に、−OH、−NH
2および−SHからなる群から選択され、但し−OH、−NH
2または−SHのそれぞれは、Yの同じ炭素原子にも、Yの−O−、−S−もしくは−NH−主鎖部分にも結合していない)、
該方法は、(a)構造式(II)によって表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物
【0027】
【化11】
(式IIにおいて、R
1は、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される)と、
(b)構造式(III)および構造式(IV)によって表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物
【0028】
【化12】
(式IIIにおいて、Xは、直接結合、−O−、−S−、−NH−、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクリレン、アリーレン、アルカリーレンおよびヘテロアリーレンからなる群から選択され、Yは、少なくとも2つの連続する炭素原子を有するアルキレン主鎖を含む、−O−、−S−または−NH−部分によって場合によって遮断されていてもよい置換アルキレン基であり、但しYの−O−、−S−または−NH−は、存在する場合、Xの別の−O−、−S−または−NH−基と隣接しておらず、該アルキレン基は、−OH、−NH
2、−SH、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立に選択される置換基を有しており、またはYの同じ炭素原子上の2つの水素原子は、カルボニルによって置き換えられており、少なくとも2つの置換基は、それぞれ独立に、−OH、−NH
2および−SHからなる群から選択され、但し−OH、−NH
2または−SHのそれぞれは、Yの同じ炭素原子にも、Yの−O−、−S−もしくは−NH−主鎖部分にも結合しておらず、R
2は、−OR、−NHR、アルキルおよびアリールアルキルからなる群から選択され、Rは、H、アルキルまたはアリールアルキルである)
【0029】
【化13】
(式IVにおいて、ZおよびZ’は、それぞれ独立に、−O−、−S−および−N(R
3)−からなる群から選択され、R
3は、Hまたはアルキルであり、mは、少なくとも1であり、各R
4は、独立に、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、ヒドロキシ置換シクロアルキル、少なくとも1つの−OH、−NH
2または−SH基を有するアリールアルキルおよび少なくとも1つの−OH、−NH
2または−SH基を有するヘテロアリールアルキルからなる群から選択され、但し、置換可能な環の炭素原子に結合しているのは、わずか1個のR
4置換基であり、pは、1または2である)と
を反応させるステップを含む。
【0030】
上記の概要ならびに以下の詳細な説明は、添付の図と併せて読むと、よりよく理解されよう。図は以下の通りである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
実施例以外で、または別段指定されない限り、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、熱条件等を表す全ての数字は、いかなる場合も「約」という用語によって修正されると理解すべきである。したがって、そうでないと示されない限り、以下の明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメータは近似であり、この近似は、本発明によって得られることが求められる所望の特性に応じて変わり得る。それぞれの数値パラメータは、少なくとも特許請求の範囲に相当する原則の適用を制限することなく、少なくとも、報告された有効桁数に照らして、通常の丸めを適用することによって解釈されるべきである。
【0033】
本発明の広範な範囲を示す数値範囲およびパラメータが近似であっても、具体的な実施例に示した数値は、可能な限り正確に報告されている。しかし、いかなる数値も、それらの、それぞれの試験測定に見られる標準偏差からどうしても生じてしまう幾らかの誤差を本質的に含む。さらに、変動範囲の数値範囲が本明細書に示される場合、記載した値を含むこれらの値の任意の組合せを使用できることを企図する。
【0034】
また、本明細書に記載した任意の数値範囲は、本明細書に包含される全てのサブ範囲を含むことを企図することを理解されたい。例えば「1〜10」という範囲は、記載の最小値1および記載の最大値10を含み、それらの間の全てのサブ範囲を含む、即ち最小値1以上および最大値10以下を有することを企図する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、特定量の特定成分を含む製品、ならびに特定量の特定成分の組合せから直接または間接的に得られる任意の製品を包含することを企図する。
【0036】
本明細書で使用される場合、「から形成される」または「から調製される」はオープンな、例えば「含む」というクレーム用語を示す。したがって、記載の成分の一覧「から形成される」または「から調製される」組成物は、少なくともこれらの記載の成分または少なくともこれらの記載の成分の反応生成物を含む組成物であり、その組成物の形成または調製中に、記載されていない他の成分をさらに含み得ることを企図する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「の反応生成物」という句は、記載の成分の化学反応生成物を意味し、部分的な反応生成物ならびに完全に反応した生成物を含み得る。
【0038】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、オリゴマーを包含することを意味し、それに限定されるものではないが、ホモポリマーおよびコポリマーの両方を含む。「プレポリマー」という用語は、ポリマーを調製するために使用される化合物、モノマーまたはオリゴマーを意味し、それに限定されるものではないが、ホモポリマーおよびコポリマーのオリゴマーの両方を含む。「オリゴマー」という用語は、わずか数個のモノマー単位から最大約10個のモノマー単位からなるポリマー、例えば二量体、三量体または四量体を意味する。
【0039】
本明細書で使用される場合、組成物に関連して使用される「硬化する」という用語、例えば「硬化した場合の組成物」または「硬化した組成物」という用語は、組成物の任意の硬化性または架橋性成分が、少なくとも部分的に硬化し、または架橋することを意味する。本発明の幾つかの非限定的な実施形態では、架橋性成分の化学的変換率、即ち架橋度は、完全な架橋の約5%〜約100%の範囲であり、完全な架橋とは、全ての架橋性成分の完全な反応を意味する。他の非限定的な実施形態では、架橋度は、完全な架橋の約15%〜約80%または約50%〜約60%の範囲である。当業者は、架橋の存在および架橋度、即ち架橋密度が、ASTM D4065−01に従って−65°F(−18℃)〜350°F(177℃)の範囲にわたって、TA Instruments DMA 2980DMA分析器を使用して窒素下で実施される動的機械熱分析(DMA)などの様々な方法によって決定され得ることを理解されよう。この方法は、コーティングまたはポリマーの自由膜のガラス転移温度および架橋密度を決定する。硬化材料のこれらの物理特性は、架橋網目構造に関係している。
【0040】
重合可能な組成物の硬化は、それに限定されるものではないが、加熱などの硬化条件に組成物を曝し、それによって組成物の反応基を反応させ、重合および固体重合物を形成することによって得ることができる。重合可能な組成物を硬化条件に曝す場合、重合後、反応基の大部分が反応した後に、残りの未反応の反応基の反応速度は次第に緩慢になる。幾つかの非限定的な実施形態では、重合可能な組成物は、それが少なくとも部分的に硬化するまで硬化条件に曝すことができる。「少なくとも部分的に硬化した」という用語は、重合可能な組成物を、該組成物の反応基の少なくとも一部分の反応が生じる硬化条件に曝して、固体重合体を形成することを意味する。幾つかの非限定的な実施形態では、重合可能な組成物を、実質的に完全な硬化が達成されるような硬化条件に曝すことができるが、硬化条件へのさらなる曝露は、強度または硬度などのポリマー特性にさらなる著しい改善をもたらさない。
【0041】
本発明者らは、嫌気性組成物のための硬化促進剤として有用な化合物を見いだした。驚くべきことに、従来の嫌気性硬化促進剤(トルイジン、アセチルフェニルヒドラジンおよび/またはクメンヒドロペルオキシドなど)の一部または全ての量の代替として、かかる化合物を硬化促進剤として嫌気性接着剤に添加することによって、それらから形成される反応生成物に、従来の嫌気性硬化性組成物から得られるものと比較して、少なくとも同程度の硬化速度および物理特性が付与される。したがって、これらの材料は、それに限定されるものではないが、嫌気性硬化性組成物の臭気および安全性の問題の低減、バイオアベイラビリティの低減、良好な配合安定性および良好な安定性など、嫌気性接着剤組成物に多くの利点を付与する。
【0042】
上記の通り、幾つかの非限定的な実施形態では、本発明は、構造式(I)によって表される化合物の群から選択される化合物
【0044】
式(I)の化合物において、R
1は、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される。
【0045】
本明細書で使用される場合、「アリール」は、約6〜約14個の炭素原子、好ましくは約6〜約10個の炭素原子を含む芳香族単環式または多環式環系を意味する。アリール基は、同じであっても異なっていてもよい本明細書に定義される通りの1つまたは複数の「環系置換基」で場合によって置換されていてもよい。適切なアリール基の非限定的な例には、フェニルおよびナフチルが含まれる。
【0046】
「ヘテロアリール」は、約5〜約14個の環原子、好ましくは約5〜約10個の環原子を含み、この環原子の1つまたは複数が、炭素以外の元素、例えば窒素、酸素または硫黄の単独またはそれらの組合せである芳香族単環式または多環式系を意味する。有用なヘテロアリールの非限定的な例には、約5〜約6個の環原子を含有するものが含まれる。「ヘテロアリール」は、同じであっても異なっていてもよい本明細書で定義の通りの1つまたは複数の「環系置換基」によって場合によって置換されていてもよい。ヘテロアリールという語幹名の前の接頭語アザ、オキサまたはチアは、それぞれ窒素、酸素または硫黄原子の少なくとも1つが環原子として存在することを意味する。ヘテロアリールの窒素原子は、対応するN−オキシドに場合によって酸化することができる。適切なヘテロアリールの非限定的な例には、ピリジル、ピラジニル、フラニル、チエニル、ピリミジニル、ピリドン(N−置換ピリドンを含む)、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、フラザニル、ピロリル、ピラゾリル、トリアゾリル、1,2,4−チアジアゾリル、ピラジニル、ピリダジニル、キノキサリニル、フタラジニル、オキシインドリル、イミダゾ[1,2−a]ピリジニル、イミダゾ[2,1−b]チアゾリル、ベンゾフラザニル、インドリル、アザインドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチエニル、キノリニル、イミダゾリル、チエノピリジル、キナゾリニル、チエノピリミジル、ピローロピリジル、イミダゾピリジル、イソキノリニル、ベンゾアザインドリル、1,2,4−トリアジニル、ベンゾチアゾリル等が含まれる。「ヘテロアリール」という用語はまた、例えば、テトラヒドロイソキノリル、テトラヒドロキノリルなどの部分的に飽和のヘテロアリール部分を指す。
【0047】
「環系置換基」は、例えば環系上の利用可能な水素を置き換えている、芳香環または非芳香環系に結合している置換基を意味する。環系置換基は、同じであっても異なっていてもよく、そのそれぞれは、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルキルアリール、ヘテロアラルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、アルキルヘテロアリール、ヒドロキシ、ヒドロキシアルキル、アルコキシ、アリールオキシ、アラルコキシ、アシル、アロイル、ハロ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルコキシカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、ヘテロアリールスルホニル、アルキルチオ、アリールチオ、ヘテロアリールチオ、アラルキルチオ、ヘテロアラルキルチオ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、−C(=N−CN)−NH
2、−C(=NH)−NH
2、−C(=NH)−NH(アルキル)、Y
1Y
2N−、Y
1Y
2N−アルキル−、Y
1Y
2NC(O)−、Y
1Y
2NSO
2−および−SO
2NY
1Y
2からなる群から独立に選択され、Y
1およびY
2は、同じであっても異なっていてもよく、水素、アルキル、アリール、シクロアルキルおよびアラルキルからなる群から独立に選択される。「環系置換基」はまた、環系上の2つの隣接する炭素原子上の2個の利用可能な水素(各炭素上に1個のH)を同時に置き換える単一部分を意味することができる。
【0048】
「置換されている」という用語は、指定の原子上の1つまたは複数の水素が、示された基から選択されるもので置き換えられていることを意味し、但し、存在する状況では指定の原子の標準的な原子価を超えず、該置換は安定な化合物をもたらすものとする。置換基および/または変数の組合せは、かかる組合せが安定な化合物をもたらす場合にのみ許容される。「安定な化合物」または「安定な構造」は、反応混合物からの有用な純度での単離、および有効な治療剤への配合に耐えるのに十分に強い化合物を意味する。「場合によって置換されている」という句は、特定の基、ラジカルまたは部分による任意選択の置換を意味する。
【0049】
本明細書の文脈、スキーム、実施例および表において、未充足の価数を有する任意の炭素ならびにヘテロ原子が、その価数を充足するのに十分な数の水素原子を有すると想定されることにも留意されたい。
【0050】
任意の変数(例えば、アリール、複素環、R
2等)が、任意の構成成分または式I等において2回以上発生する場合、各発生に対するその定義は、全ての他の発生におけるその定義とは独立である。
【0051】
式(I)の化合物において、Xは、直接結合、−O−、−S−、−NH−、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクリレン、アリーレン、アルカリーレンおよびヘテロアリーレンからなる群から選択される。幾つかの非限定的実施形態では、Xは−O−である。
【0052】
本明細書で使用される場合、「アルキレン」は、以下に定義されるものなどのアルキル基から水素原子を除去することによって得られる二官能基を意味する。アルキレン基の非限定的な例には、メチレン、エチレンおよびプロピレンが含まれる。
【0053】
「アルキル」とは、鎖中に約1〜約20個の炭素原子、鎖中に約1〜約12個の炭素原子、または鎖中に約1〜約6個の炭素原子を含む、直鎖であっても分岐であってもよい脂肪族炭化水素基を意味する。分岐とは、メチル、エチルまたはプロピルなどの1つまたは複数の低級アルキル基が、アルキル直鎖に結合していることを意味する。「低級アルキル」は、直鎖であっても分岐であってもよい鎖中に約1〜約6個の炭素原子を有する基を意味する。アルキル基は、非置換であってよく、あるいは同じであっても異なっていてもよい1つまたは複数の置換基によって場合によって置換されていてもよく、各置換基は、独立に、ハロ、アルキル、アリール、シクロアルキル、シアノ、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルチオ、アミノ、−NH(アルキル)、−NH(シクロアルキル)、−N(アルキル)
2、カルボキシおよび−C(O)O−アルキルからなる群から選択される。適切なアルキル基の非限定的な例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルおよびt−ブチルが含まれる。
【0054】
「ヘテロシクレン」は、以下に定義されるものなどのヘテロシクリル基から水素原子を除去することによって得られる二官能基を意味する。「ヘテロシクリル」は、約3〜約10個の環原子、好ましくは約5〜約10個の環原子を含み、該環系の原子の1つまたは複数は、炭素以外の元素、例えば窒素、酸素または硫黄の単独またはそれらの組合せである非芳香族の飽和単環式または多環式環系を意味する。該環系には、隣接する酸素および/または硫黄原子は存在しない。好ましいヘテロシクリルは、約5〜約6個の環原子を含有する。ヘテロシクリルという語幹名の前の接頭語アザ、オキサまたはチアは、それぞれ少なくとも1つの窒素、酸素または硫黄原子が環原子として存在することを意味する。ヘテロシクリル環の任意の−NHは、例えば−N(Boc)、−N(CBz)、−N(Tos)基などとして、保護されて存在することができ、かかる保護も、本発明の一部であるとみなされる。ヘテロシクリルは、同じであっても異なっていてもよい上記に定義される通りの1つまたは複数の「環系置換基」によって、場合によって置換されていてもよい。ヘテロシクリルの窒素または硫黄原子は、対応するN−オキシド、S−オキシドまたはS,S−ジオキシドに場合によって酸化することができる。適切な単環式ヘテロシクリル環の非限定的な例には、ピペリジル、ピロリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリジニル、1,4−ジオキサニル、テトラヒドロフラニル、テトラヒドロチオフェニル、ラクタム、ラクトン等が含まれる。
【0055】
ヘテロ原子を含有する本発明の環系においては、N、OまたはSに隣接している炭素原子上にヒドロキシル基が存在せず、別のヘテロ原子に隣接している炭素上にNまたはS基が存在しないことに留意されたい。したがって、例えば以下の環
【0056】
【化15】
において、2および5の印を付けた炭素に直接結合している−OHは存在しない。例えば、以下の部分
【0057】
【化16】
などの互変異性体は、本発明の特定の実施形態において等価であるとみなされることにも留意されたい。
【0058】
「アリーレン」は、上記に定義される通りのものなどのアリール基から水素原子を除去することによって得られる二官能基を意味する。
【0059】
「アルカリーレン」は、以下に定義されるものなどのアルカリール基から水素原子を除去することによって得られる二官能基を意味する。「アルカリール」または「アルキルアリール」は、アルキルおよびアリールが上記の通りのアルキル−アリール基を意味する。好ましいアルキルアリールは、低級アルキル基を含む。適切なアルキルアリール基の非限定的な例は、トリルである。親部分との結合は、アリールを介する。
【0060】
「ヘテロアリーレン」は、上記に定義される通りのものなどのヘテロアリール基から水素原子を除去することによって得られる二官能基を意味する。
【0061】
式(I)の化合物において、Yは、少なくとも2つの連続する炭素原子を有するアルキレン主鎖を含む置換アルキレン基である。アルキレン基Yは、場合によって、1つまたは複数の−O−、−S−または−NH−部分によって遮断されていてもよく、但し、Yの各−O−、−S−または−NH−部分は、存在する場合、Xの−O−、−S−または−NH−と隣接していない。Yのアルキレン基は、−OH、−NH
2、−SH、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立に選択される置換基を有し、またはYの同じ炭素原子上の2つの水素原子は、カルボニルによって置き換えられている。本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」は、約3〜約10個の炭素原子、約5〜約10個の炭素原子または約5〜約7個の環原子を含む非芳香族の単環式または多環式環系を意味する。シクロアルキルは、同じであっても異なっていてもよい上記に定義される通りの1つまたは複数の「環系置換基」で場合によって置換されていてもよい。適切な単環式シクロアルキルの非限定的な例には、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル等が含まれる。適切な多環式シクロアルキルの非限定的な例には、1−デカリニル、ノルボルニル、アダマンチル等が含まれる。
【0062】
Yの少なくとも2つの置換基は、それぞれ独立に、−OH、−NH
2および−SHからなる群から選択され、但し−OH、−NH
2または−SH基のそれぞれは、Yの同じ炭素原子にも、Yの−O−、−S−もしくは−NH−主鎖部分にも結合していない。幾つかの非限定的な実施形態では、Yは、2つ、または3つの−OH置換基を含む。
【0063】
幾つかの非限定的な実施形態では、本発明の式(I)の化合物は、以下の構造式I(a)によって表される
【0064】
【化17】
(式中、R
1およびYは、上記の通りである)。
【0065】
他の実施形態では、本発明の式(I)の化合物は、以下に示す構造式I(b)および構造式I(c)によって表される
【0066】
【化18】
(式中、XおよびR
1は、上記の通りである)。
【0067】
一実施形態では、本発明の式(I)の化合物は、構造式(A)によって表される。
【0069】
別の実施形態では、本発明の式(I)の化合物は、構造式(B)によって表される。
【0071】
別の実施形態では、本発明の式(I)の化合物は、構造式(C)によって表される。
【0073】
別の実施形態では、本発明の式(I)の化合物は、構造式(D)によって表される。
【0075】
本発明の化合物は、様々な方法によって生成することができる。幾つかの非限定的実施形態では、本発明は、(1)構造式(II)によって表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物、
【0076】
【化23】
ならびに(2)構造式(III)および構造式(IV)によって表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物
【0077】
【化24】
を含む反応物質から調製される反応生成物を提供する。
【0078】
上記の式IIにおいて、R
1は、アリールおよびヘテロアリールからなる群から選択される。幾つかの非限定的な実施形態では、R
1はフェニルである。適切な式(II)の化合物の非限定的な例は、構造式II(a)によって表されるフェニルヒドラジンである。
【0080】
上記の式IIIにおいて、Xは、直接結合、−O−、−S−、−NH−、アルキレン、シクロアルキレン、ヘテロシクリレン、アリーレン、アルカリーレンおよびヘテロアリーレンからなる群から選択される。幾つかの非限定的な実施形態では、Xは−O−である。
【0081】
式IIIにおいて、Yは、少なくとも2つの連続する炭素原子を有するアルキレン主鎖を含む、1つまたは複数の−O−、−S−または−NH−部分によって場合によって遮断されていてもよい置換アルキレン基であり、但しYの各−O−、−S−または−NH−部分は、存在する場合、Xの−O−、−S−または−NH−と隣接していない。Yのアルキレン基は、−OH、−NH
2、−SH、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールおよびヘテロアリールからなる群から独立に選択される置換基を有しており、またはYの同じ炭素原子上の2つの水素原子は、カルボニルによって置き換えられている。Yの少なくとも2つの置換基は、それぞれ独立に、−OH、−NH
2および−SHからなる群から選択され、但し、−OH、−NH
2または−SH基のそれぞれは、Yの同じ炭素原子にも、Yの−O−、−S−もしくは−NH−主鎖部分にも結合していない。R
2は、−OH、−OR、−NHR、アルキルおよびアリールアルキルからなる群から選択され、Rは、アルキルまたはアリールアルキルである。幾つかの非限定的な実施形態では、Yは、2つまたは3つの−OH置換基を含む。
【0082】
幾つかの非限定的な実施形態では、式(III)の化合物は、式(III(a))、(III(b))または(III(c))によって表すことができる。
【0084】
上記の式IVにおいて、ZおよびZ’は、それぞれ独立に、−O−、−S−および−N(R
3)−からなる群から選択され、R
3は、Hまたはアルキルである。変数mは、少なくとも1である。幾つかの非限定的な実施形態では、mは、1または2である。各R
4は、独立に、ヒドロキシアルキル、アミノアルキル、チオアルキル、ヒドロキシル置換シクロアルキル、アリールアルキルのアルキル基またはアリール基に結合している少なくとも1つの−OH、−NH
2または−SH基を有するアリールアルキル、およびヘテロアリールアルキルのアルキル基またはアリール基に結合している少なくとも1つの−OH、−NH
2または−SH基を有するヘテロアリールアルキルからなる群から選択される。幾つかの非限定的な実施形態では、R
4は、ヒドロキシアルキルである。pは、1または2である。
【0085】
幾つかの非限定的な実施形態では、式(IV)の化合物は、構造式(IV(a))または(IV(b))によって表すことができる。
【0087】
幾つかの非限定的実施形態では、反応生成物は、フェニルヒドラジンならびに式(III(b))、(III(c))および/または(IV(b))の上記の化合物の1つまたは複数から調製される。
【0088】
幾つかの非限定的実施形態では、反応生成物は、以下の反応スキームに示す通り、フェニルヒドラジンおよびグリセロールカーボネートから調製される。
【0090】
幾つかの非限定的実施形態では、最終反応生成物と共に、反応生成物および任意の残存する反応物質の総重量に対して少量の、例えば約5重量パーセント未満または約1重量パーセント未満のフェニルヒドラジンおよびグリセロールカーボネートなどの残存する反応物質が存在することがあり、あるいは残存する反応物質を含まないこともある。
【0091】
別の非限定的な実施形態では、反応生成物は、以下の反応スキームに示す通り、フェニルヒドラジンおよびジメチロールプロピオン酸から調製される。
【0093】
別の非限定的な実施形態では、反応生成物は、以下の反応スキームに示す通り、フェニルヒドラジンおよび酒石酸から調製される。
【0095】
幾つかの非限定的な実施形態では、式(II)の化合物と、式(III)および/または(IV)の化合物のモル比は、約5:1〜約1:5もしくは約3:1〜約1:3の範囲であり、または約1:1であり得る。
【0096】
幾つかの非限定的な実施形態では、反応は、溶媒の存在下で実施される。幾つかの非限定的な実施形態では、式(IV)の化合物を、式(II)の化合物との反応の前に溶媒に溶解する。適切な溶媒の非限定的な例には、それに限定されるものではないが、ミネラルスピリット、メタノール、エタノールまたはブタノールなどのアルコール、キシレンなどの芳香族炭化水素、エチレングリコールモノブチルエーテルなどのグリコールエーテル、エステル、脂肪族および上記のいずれかの混合物が含まれる。幾つかの実施形態では、残留溶媒を、例えば蒸留またはクロマトグラフィーによって反応生成物から抽出する。
【0097】
幾つかの非限定的な実施形態では、反応生成物を精製して、反応副生成物、またはキャリヤーなどの反応物質に伴う不純物などの不純物を除去する。反応生成物は、例えば濾過、抽出またはクロマトグラフィーによって精製することができ、その結果、精製した反応生成物は、実質的に不純物を含まず、または約1重量パーセント未満の不純物を含み、または不純物を含まない。
【0098】
幾つかの非限定的実施形態では、反応生成物は、式(I)の化合物、例えば式(A)または式(B)によって表される化合物であってよく、あるいは代替として、式(I)の化合物の混合物、例えば式(A)によって表される化合物および構造式(B)によって表される化合物の混合物であってよい。
【0099】
他の実施形態では、本発明は、構造式(V)によって表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物
【0100】
【化31】
および構造式(VI)によって表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物
【0101】
【化32】
を含む反応物質から調製される反応生成物を提供する。
【0102】
式Vにおいて、R
5は、ヒドロキシアルキルおよびカルボキシアルキルからなる群から選択される。本発明の一実施形態では、式(V)によって表される反応物質は、
【0103】
【化33】
(「SPH」)であり、これは、無水コハク酸およびフェニルヒドラジンの反応生成物であり、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,835,782号に従って調製することができる。
【0104】
式VIにおいて、Z’’は、−O−、−S−および−NH−からなる群から選択され、qは、1〜4であってよく、R
6は、独立に、ヒドロキシアルキル、アミノアルキルおよびチオアルキルからなる群から選択することができ、nは、少なくとも1である。別の実施形態では、式(VI)によって表される反応物質は、
【0106】
別の非限定的な実施形態では、反応生成物は、以下の反応スキームに示す通り、SPHおよびグリシドールから調製される。
【0108】
幾つかの実施形態では、上記の反応物質SPHおよびグリシドールの反応生成物は、構造式(D1)および/または(D2)によって表すことができる。
【0110】
幾つかの非限定的実施形態では、式(V)の化合物と式(VI)の化合物のモル比は、約5:1〜約1:5もしくは約3:1〜約1:3の範囲であり、または約1:1であり得る。
【0111】
幾つかの非限定的実施形態では、式(V)および(VI)の化合物の反応は、溶媒の存在下で実施される。適切な溶媒および量は、上記に詳細に記載されている。
【0112】
幾つかの非限定的実施形態では、本発明は、式(I)によって表される化合物の群から選択される化合物の製造方法を提供し、
【0113】
【化37】
該方法は、式(II)によって表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物
【0114】
【化38】
と、式(III)および式(IV)によって表される化合物の群から選択される少なくとも1つの化合物
【0115】
【化39】
とを反応させるステップを含む。
【0116】
式(II)の化合物と式(III)および/または式(IV)の化合物の反応は、上記の通り、溶媒の存在下で実施することができる。幾つかの非限定的な実施形態では、式(III)および/または(IV)の化合物は、溶媒に溶解することができる。式(II)の化合物を混合物に添加し、発熱させ、必要に応じて約2時間〜約7日間、約0℃〜約60℃、または約60℃の温度で加熱することができる。溶媒は、所望に応じて、例えば約60℃の温度および100torrの真空で除去し、所望に応じて冷却することができる。
【0117】
嫌気性硬化性組成物は、一般に、(メタ)アクリレート成分と、嫌気性硬化誘発性組成物をベースにする。幾つかの非限定的な実施形態では、本発明の嫌気性硬化性組成物は、(メタ)アクリレート成分と、好ましくは少なくとも低減されたレベルのAPHを有し(従来の嫌気性硬化性組成物に使用されるその重量の約50%以下など)、APHを実質的に含まず(約10重量パーセント未満、約5重量パーセント未満、または約1重量パーセント未満)、またはAPHを含まない嫌気性硬化誘発性組成物をベースにする。APHの一部または全ての代わりに、式Iの化合物または上記の反応生成物などの本発明の硬化促進剤を用いる。
【0118】
本発明の(メタ)アクリレート成分として使用するのに適した(メタ)アクリレートモノマーは、H
2C=CGCO
2R
8(式中、Gは、水素、ハロゲンまたは1〜約4個の炭素原子を有するアルキル基であってよく、R
8は、1〜約16個の炭素原子を有する、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルカリール、アラルキルまたはアリール基から選択することができ、そのいずれもが、シラン、ケイ素、酸素、ハロゲン、カルボニル、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、尿素、ウレタン、カーボネート、アミン、アミド、硫黄、スルホネート、スルホン等で場合によって置換されていてもよく、または遮断されていてもよい)によって表されるものなどの、多種多様な材料から選択することができる。
【0119】
本発明で使用するのに適した追加の(メタ)アクリレートモノマーには、多官能性(メタ)アクリレートモノマー、例えばポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラン(メタ)アクリレートおよびジ(メタ)アクリレートなどの二官能性または三官能性(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(「HPMA」)、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート(「TMPTMA」)、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(「TRIEGMA」)、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ(ペンタメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、テトラエチレンジグリコールジ(メタ)アクリレート、ジグリセロール テトラ(メタ)アクリレート、テトラメチレンジ(メタ)アクリレート、エチレンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ならびにエトキシ化ビスフェノール−A(メタ)アクリレート(「EBIPMA」)などのビスフェノール−Aモノおよびジ(メタ)アクリレート、ならびにエトキシ化ビスフェノール−A(メタ)アクリレートなどのビスフェノール−Fモノおよびジ(メタ)アクリレートが含まれる。
【0120】
本発明で使用することができるさらに他の(メタ)アクリレートモノマーには、参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第5,605,999号(Chu)によって教示され、特許請求されているものなどのシリコーン(メタ)アクリレート部分(「SiMA」)が含まれる。
【0122】
【化40】
によって表されるポリアクリレートエステルが含まれ、式中、R
4は、水素、ハロゲンおよび1〜約4個の炭素原子のアルキルからなる群から選択される基であり、qは、少なくとも1の整数であり、好ましくは1〜約4であり、Xは、少なくとも2つの炭素原子を含有し、q+1の全結合能力を有する有機基である。Xの炭素原子の数の上限に関して、本質的にいかなる値でも機能できるモノマーが存在する。しかし実際、一般的な上限は炭素原子約50個であり、好ましくは30個、最も好ましくは約20個である。
【0124】
【化41】
の有機基であってよく、式中、Y
1およびY
2は、有機基、好ましくは少なくとも2つの炭素原子、好ましくは2〜約10個の炭素原子を含有する炭化水素基であり、Zは、有機基、好ましくは少なくとも1つの炭素原子、好ましくは2〜約10個の炭素原子を含有する炭化水素基である。
【0125】
有用なモノマーの他の種類は、フランス特許第1,581,361号に開示のものなどの、ジ−またはトリ−アルキロールアミン(例えば、エタノールアミンまたはプロパノールアミン)とアクリル酸の反応生成物である。
【0126】
有用なアクリル酸エステルオリゴマーの非限定的な例には、以下の一般式を有するものが含まれる
【0127】
【化42】
(式中、R
5は、水素、1〜約4個の炭素原子の低級アルキル、1〜約4個の炭素原子のヒドロキシアルキルおよび
【0128】
【化43】
からなる群から選択される基を表し、
R
4は、水素、ハロゲンおよび1〜約4個の炭素原子の低級アルキルからなる群から選択される基であり、R
6は、水素、ヒドロキシルおよび
【0129】
【化44】
からなる群から選択される基であり、
mは、少なくとも1に等しい整数、例えば1〜約15以上、好ましくは1〜約8であり、nは、少なくとも1に等しい整数、例えば、1〜約40以上、好ましくは約2〜約10の間であり、pは、0または1である)。
【0130】
上記の一般式に相当するアクリル酸エステルオリゴマーの一般的な例には、ジ−、トリ−およびテトラエチレングリコールジメタクリレート、ジ(ペンタメチレングリコール)ジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(クロロアクリレート)、ジグリセロールジアクリレート、ジグリセロールテトラメタクリレート、ブチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートならびにトリメチロールプロパントリアクリレートが含まれる。
【0131】
ジ−および他のポリアクリレートエステル、特に先の段落に記載のポリアクリレートエステルが望ましいが、単官能性アクリレートエステル(1つのアクリレート基を含有するエステル)を使用することもできる。単官能性アクリレートエステルを用いて処理する場合、比較的極性の高いアルコール部分を有するエステルを使用することがかなり好ましい。かかる材料は、低分子量アルキルエステルよりも揮発しにくく、より重要なことには、極性基は、硬化中および硬化後に分子間引力をもたらす傾向があり、したがって、より望ましい硬化特性ならびにより耐久性のある封止剤または接着剤が得られる。より好ましくは、極性基は、不安定な水素、複素環、ヒドロキシ、アミノ、シアノおよびハロ極性基からなる群から選択される。このカテゴリーの化合物の一般的な例は、シクロヘキシルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、シアノエチルアクリレートおよびクロロエチルメタクリレートである。
【0132】
モノマーの別の有用な種類は、官能性置換基上に活性な水素原子を含有する単官能性置換アルキルまたはアリールアクリレートエステルの反応によって調製される。このアクリレート末端をもつ単官能性材料は、適切な割合で有機ポリイソシアネートと反応して、イソシアネート基の全てをウレタンまたはウレイド基に変換する。単官能性アルキルおよびアリールアクリレートエステルは、好ましくは、その非アクリレート部分上にヒドロキシまたはアミノ官能基を含有するアクリレートおよびメタクリレートである。使用に適したアクリレートエステルは、式
【0133】
【化45】
(式中、Xは、−O−および
【0134】
【化46】
からなる群から選択され、R
9は、水素および1〜7個の炭素原子の低級アルキルからなる群から選択され、R
7は、水素、塩素ならびにメチルおよびエチル基からなる種類から選択され、R
8は、1〜8個の炭素原子の低級アルキレン、フェニレンおよびナフチレンからなる群から選択される2価の有機基である)を有する。これらの基は、ポリイソシアネートと適切に反応すると、以下の一般式のモノマーを生成する
【0135】
【化47】
(式中、nは、2〜約6の整数であり、Bは、置換および非置換両方のアルキル、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、アラルキル、アルカリールおよび複素環式基からなる群から選択される多価有機基であり、R
7、R
8およびXは、上記に示した意味を有する)。
【0136】
上記のモノマー生成物の調製で使用するのに適したヒドロキシおよびアミン含有材料としては、それに限定されるものではないが、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、アミノエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、アミノプロピルメタクリレート、ヒドロキシヘキシルアクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、ヒドロキシオクチルメタクリレートなどの材料が例示される。
【0137】
好ましい有機ポリイソシアネートは、例えば、オクタメチレンジイソシアネート、デュレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネートおよびトルエンジイソシアネートなどの、8個以上の炭素原子、好ましくは8〜約30個の炭素原子を含有する、より高分子のアルケニルジイソシアネート、シクロアルケニルジイソシアネートおよび芳香族ジイソシアネートを含む。
【0138】
反応物質を組み合わせることができる割合は、幾らか変動し得るが、一般に、わずかな過剰までの化学当量の反応物質、例えば1当量過剰のポリイソシアネートを使用することが好ましい。本明細書で使用される場合、「化学当量」という表現は、ヒドロキシまたはアミノ基1個あたり、1個のイソシアネート基を提供するのに必要な量を指す。
【0139】
反応は、希釈剤を用いて、または希釈剤を用いずに達成することができる。好ましくは、脂肪族、脂環式および芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン、シクロヘキサン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素を含む希釈剤が使用されるが、所望に応じて、特に封止系との完全な相溶性が望ましい場合に、メチルイソブチルケトン、ジアミルケトン、イソブチルメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレートおよびシクロヘキシルメタクリレートなどの他の希釈剤を有利に利用することもできる。
【0140】
反応に使用される温度も、広範囲に変わり得る。成分を、およそ化学当量で、またはわずかに過剰のイソシアネート反応物質と組み合わせる場合、有用な温度は、室温以下、例えば10℃〜15℃から、最高100℃〜175℃までの温度で変わり得る。より簡単なイソシアネートを反応させる場合、成分は、好ましくは20℃〜30℃の範囲の温度などの室温、またはそれに近い温度で組み合わされる。過剰のイソシアネートを使用する、高分子量のイソシアネート付加物の調製では、反応物質を室温で組み合わせる、または好ましくは約40℃〜約150℃の範囲の温度で加熱することができる。約90℃〜120℃で実施される反応は、かなりスムーズに進行することが見出されている。
【0141】
当然のことながら、これらの(メタ)アクリレートモノマーの組合せを使用することもできる。
【0142】
(メタ)アクリレート成分は、組成物の総重量に対して約60〜約90重量パーセントなど、組成物の約10〜約90重量パーセントを構成することができる。
【0143】
最近、配合物またはその反応生成物の物理特性を変えるために、追加の成分が、従来の嫌気性接着剤に含まれるようになってきた。例えば、マレイミド成分の1つまたは複数、熱耐性を付与する共反応物質、高温条件で反応する希釈成分、モノ−またはポリ−ヒドロキシアルカン、高分子可塑剤およびキレート剤(参照によって本明細書に組み込まれる米国特許第6,391,993号参照)を、配合物の物理特性および/または硬化プロファイルならびに/あるいは硬化した接着剤の強度または温度耐性を改変するために含むことができる。
【0144】
マレイミド、共反応物質、反応性希釈剤、可塑剤および/またはモノ−もしくはポリ−ヒドロキシアルカンは、使用される場合、組成物の総重量に対して約1重量パーセント〜約30重量パーセントの範囲の量で存在することができる。
【0145】
本発明の組成物は、ラジカル開始剤、ラジカル共促進剤およびラジカル発生の抑制剤ならびに金属触媒などの他の従来の成分を含むこともできる。
【0146】
それに限定されるものではないが、クメンヒドロペルオキシド(「CHP」)、パラ−メンタンヒドロペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド(「TBH」)およびt−ブチル過安息香酸などのヒドロペルオキシドを含む、ラジカル重合の周知の開始剤の幾つかが、一般に本組成物に組み込まれる。他のペルオキシドには、ベンゾイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、1,3−ビス(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジアセチルペルオキシド、ブチル4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)吉草酸、p−クロロベンゾイルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、t−ブチル過安息香酸、ジ−t−ブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルペルオキシヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチル−ペルオキシヘキシ−3−イン、4−メチル−2,2−ジ−t−ブチルペルオキシペンタンおよびそれらの組合せが含まれる。
【0147】
本発明では、かかるペルオキシド化合物は、一般に組成物の総重量に対して約0.1〜約10重量パーセントの範囲で使用されるが、約1〜約5重量パーセントが望ましい。
【0148】
記載した通り、ラジカル重合の従来の促進剤は、過去に使用された量未満で、本発明の嫌気性硬化促進剤と共に使用することもできる。かかる促進剤は、米国特許第4,287,350号(Rich)および米国特許第4,321,349号(Rich)に開示される通り、一般にヒドラジン種(例えばAPH)である。通常、マレイン酸がAPHを含有する嫌気性硬化系に添加される。本発明の1つの利益は、本発明の嫌気性硬化促進剤によって、嫌気性接着剤組成物の調製においてかかる酸が不要になることである。
【0149】
それに限定されるものではないが、安息香酸スルフィミド(サッカリンとしても公知)などの有機アミドおよびイミドを含むラジカル重合の共促進剤を、本発明の組成物に使用することもできる(米国特許第4,324,349号参照)。
【0150】
安定剤および重合抑制剤(ヒドロキノンおよびキノンを含むフェノールなど)を使用して、早期のペルオキシド分解および本発明の組成物の重合を制御し、防止することもでき、キレート剤[エチレンジアミンテトラ酢酸(「EDTA」)のテトラナトリウム塩など]を使用して、それら由来の微量の金属不純物を捕捉することもできる。キレート剤は、使用される場合は、通常、組成物の総重量に対して約0.001重量パーセント〜約0.1重量パーセントの量で組成物に存在することができる。
【0151】
本発明の嫌気性硬化促進剤は、組成物の総重量に対して約1〜約2重量パーセントなど、約0.1〜約5重量パーセントの量で使用することができる。本発明の促進剤は、従来の促進剤と併用される(かかる従来の促進剤よりも低い濃度であるが)場合、組成物の総重量に対して0.02〜2重量パーセントなど、0.01〜5重量パーセントの量で使用されるべきである。
【0152】
金属触媒溶液またはその混合物(プレミックス)は、約0.03〜約0.1重量パーセントの量で使用される。
【0153】
増粘剤、非反応性可塑剤、充填剤、強化剤(エラストマーおよびゴムなど)などの他の添加剤および他の周知の添加剤は、当業者が望ましいと思われる場合に、組み込むことができる。
【0154】
本発明はまた、本発明の嫌気性接着剤組成物ならびに該組成物の反応生成物の調製方法および使用方法を提供する。
【0155】
本発明の組成物は、当業者に周知の従来の方法を使用して調製することができる。例えば、本発明の組成物の成分は、その成分が組成物において発揮するはずの役割および機能と合致する任意の従来の順で混合することができる。公知の装置を使用する従来の混合技術を使用することができる。
【0156】
本発明の組成物を様々な基材に塗布して、本明細書に記載の所望の利益および利点を付与することができる。例えば、適切な基材は、鋼、真鍮、銅、アルミニウム、亜鉛および他の金属ならびに合金、セラミックおよび熱硬化性樹脂から構成され得る。本発明の組成物は、鋼、真鍮、銅および亜鉛に対して特に良好な結合強度を示す。嫌気性硬化性組成物に適したプライマーを、選択した基材の表面に塗布して、硬化速度を高めることができる。あるいは、本発明の嫌気性硬化促進剤をプライマーとして基材の表面に塗布することができる。例えば、米国特許第5,811,473号(Ramos)参照。
【0157】
さらに本発明は、嫌気性硬化性組成物の調製方法を提供し、その一ステップは、(メタ)アクリレート成分、上記の式(I)の嫌気性硬化促進剤化合物を含む嫌気性硬化誘発性組成物または反応生成物を一緒に混合することを含む。
【0158】
本発明はまた、本発明の嫌気性硬化性組成物から反応生成物を調製する方法を提供し、そのステップは、組成物を所望の基材表面に塗布し、組成物を硬化するのに十分な時間、該組成物を嫌気性環境に曝露することを含む。
【0159】
本発明はまた、嫌気性硬化性組成物の硬化促進剤として、上記の式(I)の化合物または反応生成物を使用する方法を提供する。
【0160】
さらに本発明は、(I)嫌気性硬化促進剤化合物を嫌気性硬化性組成物中に混合するステップ、または(II)基材表面上に嫌気性硬化促進剤化合物を塗布し、その上に嫌気性硬化性組成物を塗布するステップを含む、嫌気性硬化促進剤化合物の使用方法を提供する。当然のことながら、本発明はまた、一体にされる基材間に、本発明の組成物によって形成される結合を与える。
【0161】
本発明の上記の説明から、広範な実用的可能性が与えられることが明らかである。以下の実施例は単に例示目的であり、本明細書の教示を制限するように決して解釈されるべきではない。
【実施例】
【0162】
I.フェニルヒドラジン−グリセロールカーボネート(PHGC)反応生成物の合成
例えば接着剤などの嫌気性硬化性組成物におけるAPH硬化促進剤の代替として、フェニルヒドラジン−グリセロールカーボネート反応生成物を評価するために、研究を行った。
【0163】
本発明の嫌気性硬化促進剤を、以下に示した合成スキームに従って調製した。
【0164】
【化48】
【0165】
フェニルヒドラジンおよびグリセロールカーボネートを、表1に示す通り、エタノールの存在下で以下に記載の量および方式で反応させて、PHGC反応生成物(付加物)を形成した。
【0166】
【表1】
【0167】
例A
磁気撹拌器、還流冷却器、圧力平衡添加漏斗、窒素パージおよび熱プローブを備えた500mlの3つ口丸底フラスコに、フェニルヒドラジン(液体1)(50.0g、448.5mmol)を添加し、その後エタノール(50ml)を添加した。この透明溶液に、グリセロールカーボネート(液体2)(59.5g、471.0mmol)および溶媒としてのエタノール(50ml)の溶液を添加した。これを室温(約25℃)で30分かけて添加すると、混合物は最小限の発熱を伴い、透明のままであった。混合物を70℃に温め、終夜撹拌した。翌日、温度を78℃の穏やかな還流温度に上げた。5日後、一定分量をFT−IRによって分析した。IRによって、さらに進行したことが明らかになった。反応を終了した。
【0168】
反応混合物を、真空内で濃縮して(約60℃および100Torr)、薄琥珀色の油を得た。この油を真空内でさらに濃縮して(約60℃および10Torr)、薄琥珀色の粘性の高い油/固体を得た(113.01g、理論的収量の111.3%)。重量が算出収量を超えたことから、このサンプルは、残留エタノールをまだ含有していると思われた。この油を、約10℃の温度の冷蔵庫に入れた。
【0169】
フェニルヒドラジンは、水への溶解度が制限されており(約10重量%)、グリセロールカーボネートは、水に非常に溶けやすいらしいことが観測された。少量の上記の反応生成物(約10g)を、酢酸エチル(100ml)に再溶解し、水(100ml)で洗浄した。有機部分を分離し、無水MgSO
4で乾燥させ、重力式濾過にかけ、次いで真空内で濃縮して油を得た(5.1グラム、51重量%回収)。この油を、約10℃の温度の冷蔵庫に入れた。材料を、真空内で約100mTorrおよび50℃においてさらに乾燥させて、サンプルAを得た。固体をFT−IR、
1H−NMRおよび
13C−NMRによって分析した。Varian 300MHzのGemini分光光度計を使用してプロトン核磁気共鳴分析を実施した。TA Instrument 2920示差走査熱量計で融点を得た。
【0170】
図1は、PHGC反応生成物サンプルAのFT−IR分析結果を示している。結果は、ほぼ全ての無水物が消費したことを明示している。
1H−NMR:(DMSO−d6、300MHz)δ9.0、7.65、7.15、6.6、5.2〜3.35、2.0。
13C−NMR:(DMSO−d6、75MHz)δ157.5、150.0、129.5、119.5、112.5、74.0、67.5および66.5。
【0171】
例B
フェニルヒドラジン(50.0g、0.462mol)を、室温(約25℃)でグリセロールカーボネート(54.6g、0.462mol)と混合した。約5分以内に35℃までの発熱が観測された。FT−IRは、約10分間で1762cm
−1から1778cm
−1のC=O移動を示した。トルエン50mlを添加し、混合物を、活性酸性アルミナ20gと共に終夜撹拌した。濾過した混合物を、75℃および0.3mmHgにおいて2時間抽出して、赤色の粘性の高いシロップ92gを得た。
【0172】
例C
SPH−グリシドール反応生成物の合成
(4−オキソ−4−(2−フェニルヒドラジニル)ブタン酸)(「SPH」)およびグリシドールを、アセトニトリルの存在下で以下に記載の量および方式で反応させて、嫌気性硬化促進剤として使用することができる反応生成物(付加物)を形成した。反応生成物を、以下に図示した合成スキームに従って、表2に示した反応物質から調製した。
【0173】
【化49】
【0174】
【表2】
【0175】
磁気撹拌器、還流冷却器、圧力平衡添加漏斗、窒素パージおよび熱プローブを備えた100mlの3つ口丸底フラスコに、SPH(液体1)(3.00g、14.41mmol)を添加し、その後溶媒であるアセトニトリル(50ml)を添加した。この白色懸濁液を60℃に温め、次いでグリシドールを添加した。この懸濁液を、週末にかけて60℃で撹拌すると透明になった。一定分量を、Perkin Elmer FT−IRを使用して、赤外線(「IR」)スペクトル分析によって分析して、構造を確認した。透明の薄琥珀色の液体を、真空内で40℃において濃縮して、薄褐色固体を得た。固体を、真空内で50℃においてさらに乾燥させた。乾燥したSPH−グリシドール付加物は、薄褐色固体であった(3.98g、理論的収量の97.8%)。固体を、
1H−NMR、
13C−NMRおよびFT−IRによって評価した。SPH−グリシドール反応生成物のFT−IR分析の結果を
図2に示す。
1H−NMR:(DMSO−d6、300MHz)δ9.95、9.65、7.1、6.7、5.1、4.05、3.9、3.7、3.4、2.7、2.6、2.4。
13C−NMR(DMSO−d6、75MHz)δ175.0、172.0、150.0、130.0、119.0、113.0、77.0、69.0、64.0、29.5および29.0。
【0176】
嫌気性硬化性組成物の調製
以下の通り、選択した成分を予め混合した後、嫌気性ベース組成物の残りの成分と混合した。
【0177】
【表3】
【0178】
プレミックスAの成分は、約25℃で従来通り撹拌することによって混合した。
【0179】
【表4】
【0180】
プレミックスBの成分は、約25℃で従来通り撹拌することによって混合した。
【0181】
プレミックスAおよびBを使用して、表3に従って以下の通り配合物を調製した。
【0182】
【表5】
【0183】
テトラエチレングリコールジ(2−エチルヘキソエート)を18.4部だけ使用したことを除き、最初の7種の成分を、表3に列挙した順で混合した。成分を、ステンレス鋼製プロペラ型ミキサーを使用して混合すると、成分が溶解した。成分を混合すると、増粘成分がゆっくりと配合物「に溶解し」、増粘して混合物を形成した。一部の成分は、完全に溶解するために追加の混合時間を必要とした(最短で終夜)。テトラエチレングリコールジ(2−エチルヘキソエート)の残り(10.34部)および残りの成分を混合物に添加し、上記の通り混合した。APH(150.18g/モル)を、追加の促進剤として配合物Aに入れた。例Aのフェニルヒドラジン−グリセロールカーボネート付加物(MW=331.8g/モル)を、追加の促進剤として配合物Bに入れた。配合物Cには促進剤は使用しなかった(対照)。
【0184】
物理特性の評価
本発明のフェニルヒドラジン−グリセロールカーボネート付加物硬化系(配合物B)を、82℃での加速安定性試験および鋼製ナット/ボルトの試験品に対する接着試験によって、従来の硬化成分APHを含有する配合物(配合物A)および対照配合物C(追加の促進剤なし)と比較した。
【0185】
保存安定性
配合物の82℃での安定性は、接着性配合物が82℃で3時間以上液体であり続ける場合に、該配合物が許容される保存安定性を有すると判断される評価に従って決定した。上記の配合物A〜Cのそれぞれの3つの試験品を、82℃で評価した。表4に示す通り、本発明の配合物Bのサンプルは、一般に、82℃で許容される安定性を示した。
【0186】
【表6】
【0187】
固定時間
離脱/プリベリング接着試験を、ASTM D5649に従って実施した。離脱トルクは、固定された(seated)組立体の軸荷重を低減または排除するのに必要な最初のトルクである。締結(bond)の最初の破壊後のプリベリングトルクを、ナットの360°回転中の任意の点で測定する。プリベリングトルクは、通常、ナットの180°回転で測定される。鋼製の3/8×16のナットおよびボルトを、1,1,1−トリクロロエチレンで脱脂し、接着剤をボルトに塗布し、スペーサーとして鋼製カラーを使用して、ナットをボルトにねじ込んだ。
【0188】
20個のナットおよびボルト試験品を、試験するそれぞれの接着性配合物に対して組み立てた。離脱/プリベリング接着試験のために、試験品を、組立後に周囲温度で15分、30分、1時間および24時間維持した(それぞれ5個の試験品)。次いで、離脱およびプリベリングトルク強度(in−lb
f)を、周囲温度(25℃)および45〜50%の相対湿度において、それぞれ15分、30分、1時間および24時間後に、それぞれの接着性配合物の5個の試験品について記録した。トルク強度を、較正済みの自動トルク分析器を使用して測定した。これらの評価に関するデータを、以下の表5および
図3に示す。
【0189】
このデータは、本発明の配合物Bが、基材上に塗布され硬化する場合に、従来の嫌気性(メタ)アクリレート系接着剤と比較して、室温において類似の離脱およびプリベリング特性を示すことを示している。
【0190】
【表7】
【0191】
接着剤 例2
接着性配合物を、以下の表6に示す通り、接着剤 例1と類似の方式で調製した。APH(150.18g/モル)を、追加の促進剤として配合物Aに入れた。上記の例Bのフェニルヒドラジン−グリセロールカーボネート付加物(MW=331.8g/モル)
【0192】
【化50】
を、追加の促進剤として配合物Bに入れた。配合物Cには追加の促進剤は使用しなかった(対照)。
【0193】
【表8】
【0194】
物理特性の評価
本発明のフェニルヒドラジン−グリセロールカーボネート付加物硬化系(配合物B)を、82℃での加速安定性試験および鋼製ナット/ボルトの試験品に対する接着試験によって、従来の硬化成分APHを含有する配合物(配合物A)および対照配合物C(追加の促進剤なし)と比較した。
【0195】
保存安定性
配合物の82℃での安定性は、接着性配合物が82℃で3.5時間以上液体であり続ける場合に、配合物が許容される保存安定性を有すると判断される評価に従って決定した。上記の配合物A〜Cのそれぞれの3つの試験品を、82℃で評価した。表7に示す通り、本発明の配合物Bのサンプルは、一般に、82℃で許容される安定性を示した。
【0196】
【表9】
【0197】
固定時間
離脱/プリベリング接着試験を、ASTM D5649に従って実施した。離脱トルクは、固定された(seated)組立体の軸荷重を低減または排除するのに必要な最初のトルクである。締結(bond)の最初の破壊後のプリベリングトルクを、ナットの360°回転中の任意の点で測定する。プリベリングトルクは、通常、ナットの180°回転で測定される。鋼製の3/8×16のナットおよびボルトを、1,1,1−トリクロロエチレンで脱脂し、接着剤をボルトに塗布し、スペーサーとして鋼製カラーを使用して、ナットをボルトにねじ込んだ。
【0198】
20個のナットおよびボルト試験品を、試験するそれぞれの接着性配合物に対して組み立てた。離脱/プリベリング接着試験のために、試験品を、組立後に周囲温度で15分、30分、1時間および24時間維持した(それぞれ5個の試験品)。次いで、離脱およびプリベリングトルク強度(in−lb
f)を、周囲温度(25℃)および45〜50%の相対湿度において、それぞれ15分、30分、1時間および24時間後に、それぞれの接着性配合物の5個の試験品について記録した。トルク強度を、目盛付き自動トルク分析器を使用して測定した。これらの評価に関するデータを、以下の表8および
図4に示す。
【0199】
このデータは、本発明の配合物Bが、基材上に塗布され硬化する場合に、従来の嫌気性(メタ)アクリレート系接着剤と比較して、室温において類似の離脱およびプリベリング特性を示すことを示している。
【0200】
【表10】