【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度独立行政法人情報通信研究機構「民間基盤技術研究促進制度/日常行動・状況理解に基づく知識共有システムの研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1判定手段は、前記位置検出手段によって検出された前記自動車の現在位置の位置データに基づいて当該自動車が前記危険箇所に近付いたと判断されるときに、リアルタイムで前記第1角速度センサで検出された第1動きデータに基づいてブレーキの構えの動きが行われたか否かを判定する、請求項1記載の危険運転予防意識判定システム。
前記第1判定手段によってブレーキの構えが行われなかったと判定されたとき少なくとも前記自動車の車内の音声の音声データを保存する第1音声データ保存手段をさらに備える、請求項2、9または10記載の危険運転予防意識判定システム。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
第1実施例
図1を参照して、この実施例の危険運転予防意識判定システム(以下、単に「システム」という。)10は、自動車が危険箇所に近付いたときに運転者が左右目視確認やブレーキの構えを行ったか否かを判定して、運転者の危険運転予防意識を判定するためのものであり、コンピュータ12、角速度センサ14および16、位置検出装置18、地図データベース20、警報装置22および運転データ記録装置24を含む。
【0084】
コンピュータ12は、システム10の全体制御を行うためのものであり、パーソナルコンピュータや携帯情報端末等であり、あるいは、自動車の電子制御ユニットのコンピュータであってもよいし、カーナビゲーションシステムのコンピュータであってもよい。
【0085】
コンピュータ12は、図示は省略するが、CPU、ROM、RAMおよび通信装置等を備えている。ROMは制御プログラムおよびデータを予め記憶している。RAMはワークメモリおよびバッファメモリとして使用され、生成したデータや取得したデータ等を一時記憶する。通信装置は、このコンピュータ12に接続される角速度センサ14、16等の
ような各装置とデータを送受信する。
【0086】
この実施例では、運転手の頭部の動きを検出するために角速度センサ14が適用され、また、運転手の右足先の動きを検出するために角速度センサ16が適用される。後述するように、角速度センサ14は運転手の左右の目視確認動作の検出のためのものであり、角速度センサ16は運転手のブレーキの構えの検出のためのものであるから、角速度センサ14および角速度センサ16としては、少なくとも1軸の角速度を検出可能なものが使用されればよい。したがって、1軸角速度センサ、2軸角速度センサまたは3軸角速度センサが使用され得る。また、角速度センサ14および角速度センサ16としては同一のものが使用されてよい。角速度センサ14、16は、所定周期で所定軸回りの角速度を検出する。また、角速度センサ14、16は通信機能を備えており、検出した角速度データをたとえば一定時間ごとにまたは所定タイミングでコンピュータ12に送信する。また、この実施例では、角速度センサ14、16は、たとえばBluetooth(登録商標)のような近距
離無線通信によってコンピュータ12との間でデータを送受信する。なお、他の実施例では、角速度センサ14、16は有線でコンピュータ12に接続されてもよいが、運転者の運転操作を妨げないようにするために無線で接続されるのが望ましい。
【0087】
角速度センサ14は、運転者の目視確認の動作を検出するために、運転者の頭部に装着される。左右への目視確認動作の際には、眼球だけが動くことはなく、一般的には多少なりとも頭部にも動きが生じる。そのため、頭部の動きを計測することで、視線方向の変化を運転者にさほど負荷をかけることなく推測することが可能となる。
【0088】
また、頭部への装着を簡単にするために、この実施例では
図2に示すように帽子26が使用されており、角速度センサ14は帽子26のたとえば鍔の部分に取り付けられる。
図2は帽子26を上から見た場面を示している。この角速度センサ14は、少なくとも鉛直方向軸回りの回転に応じた角速度を検出するように、帽子26に取り付けられる。この角速度センサ14の取り付けられた帽子26を運転者が被れば、運転者の頭部の左右方向への回転(旋回)に応じた角速度データを計測することができ、つまり、運転者の頭部の回転すなわち目視確認動作を検出・計測することができる。この角速度センサ14の鉛直方向軸回りの角速度の検出方向については、
図2で反時計回りが正方向に、時計回りが負方向に設定されている。帽子26を被った運転者が左方向を向けば正の角速度データが検出され、右方向を向けば負の角速度データが検出される。したがって、コンピュータ12では、角速度センサ14の角速度データを解析することによって、運転者が左右に顔を向けたか否か、つまり、左右への目視確認動作を行ったか否かを判定することができる。
【0089】
なお、角速度センサ14は、たとえばヘアバンド,ヘアピン,バンダナ,カチューシャなど他の方法で頭部に装着されてよい。さらに、頭部に直接装着する以外に、ピアス,イヤリング,眼鏡,マスク,鼻輪などの手段を用いて頭部に装着するようにしてもよい。
【0090】
また、角速度センサ16は、運転者のブレーキの構えを検出するために、
図3に示すように、運転者の右足先に装着される。ブレーキの構えは、運転者が危険の予測をしているか否か、万一の場合への備えができているか否かを知るための指標になり得ると考えられるので、角速度センサ16を右足先に装着することによって、この危険運転予防意識の計測を可能にする。
【0091】
角速度センサ16は、たとえばバンド28を用いて運転者の右足先に取り付けられる。なお、角速度センサ16は他の方法で右足先に装着されてもよく、たとえば運転用靴のつま先の部分に角速度センサ16を内蔵させるようにしてもよい。さらに、アンクレット(足首に装着する足輪),靴下,ネイル(付け爪)などの手段を用いて足に装着することも考えられる。
【0092】
また、
図3は、運転者からみた角速度センサ16を示している。角速度センサ16は、少なくとも鉛直方向軸回りの回転に応じた角速度を検出するように、運転者の右足先に取り付けられる。角速度センサ16の鉛直方向軸回りの角速度の検出方向については、この実施例では、
図3で反時計回りが正方向に、時計回りが負方向に設定されている。
【0093】
自動車が走行中には、
図3に示すように、運転者の右足はアクセルペダル30上に置かれる。ブレーキの構えをしたり、減速をしたりする場合、
図4に示すように、運転者の右足はブレーキペダル32側に移動され、その後、速度を維持したり加速をしたりする場合、
図3に示すように、右足はアクセルペダル側30に戻される。このアクセルペダル30とブレーキペダル32間の移動には、左右方向への回転を伴うので、角速度センサ16によって、右足の回転を検出することによって、運転者がブレーキの構えをしているか否かを判定することができる。
【0094】
上述のように、角速度センサ14によって頭の動きつまり運転者の動作を検出し、角速度センサ16によって右足の動きつまり運転者の動作を検出することができる。したがって、これらの角速度センサ14および16は、運転者の動作を検出するための動作検出手段として機能する。そして、角速度センサ14および16からの角速度データが、いわば人間の動作(の状態)を表す動作データということができる。
【0095】
図1に戻って、位置検出装置18は、自動車の現在の位置を検出するためのものである。この実施例では、位置検出装置18はGPS受信機を含み、GPS受信機は、GPS衛星からの信号を受信して、現在地の座標(緯度、経度、高度)を算出し、現在位置の座標を含む位置データをコンピュータ12に出力する。
【0096】
なお、位置検出装置18は、GPS衛星からの信号を受信できない場所での位置推定のために、自動車に搭載された加速度センサ、車速センサ、角速度センサ等を含んでもよい。また、位置検出装置18と後述の地図データベース20として、自動車に搭載されたカーナビゲーションシステムを利用してもよい。
【0097】
地図データベース20は、地図データを予め記憶している。たとえば地図データが記憶された磁気ディスクを含むHDD、地図データが記憶された光ディスクを含む光ディスクドライブ等であってよい。コンピュータ12は、位置検出装置18から取得した位置データと、地図データベース20から取得した地図データとに基づいて、現在位置が危険箇所に近付いたかどうかを判断することができる。
【0098】
地図データベース20に記憶される地図データは、道路に関する情報を示す道路データと、建物に関する情報を示す建物データ等を含む。
図5に道路データの一例を示す。道路データは、交差点に関する情報を示す交差点データおよび交差点間の道(繋がり)に関する情報を示す道データ等を含む。
【0099】
交差点データは、複数の交差点の情報を含み、各交差点の情報は、当該交差点の識別情報(交差点ID)に対応付けて記憶されている。交差点データは、たとえば、交差点の座標、接続された道、信号機の有無、事故多発フラグ等を含む。
【0100】
交差点の座標は、当該交差点の緯度、経度、高度を含む。接続された道としては、当該交差点に接続されている道の道IDが登録される。コンピュータ12では、接続された道の情報に基づいて、当該交差点に接続されている道の方向を特定することができるので、当該交差点が危険箇所である場合には、当該接続された道の方向が目視確認方向として設定される。また、信号機の有無の情報として無しが登録されている場合、つまり、無信号
交差点の場合、当該交差点は危険箇所と判断される。また、事故多発フラグは、過去に事故が頻発している交差点のような危険運転予防意識を必要とする交差点についてオンにされている。したがって、事故多発フラグの情報としてオンを示す情報が登録されている場合、当該交差点は危険箇所と判断される。
【0101】
道データは、複数の道の情報を含み、各道の情報は、当該道の識別情報(道ID)に対応付けて記憶されている。道データは、たとえば、始点の座標、終点の座標、幅員、事故多発箇所の座標等を含む。
【0102】
始点および終点の座標は、当該道の両端点の座標(緯度、経度、高度)である。始点および終点の座標から、当該道の方向を算出できる。また、始点および終点の座標とともに幅員が登録されるので、コンピュータ12では、自動車がどの道上に存在しているかを特定することができ、したがって、当該道の先に危険箇所が存在するかどうかを判断することができる。また、事故多発箇所の座標(緯度、経度、高度)は、当該道上において、過去に事故が頻発している場所のような危険運転予防意識を必要とするような場所がある場合に登録されている。この事故多発箇所も危険箇所として判断される。
【0103】
図1に戻って、警報装置22は、危険箇所に近付いたときに運転者が必要な動作を行わなかったと判断されたときに、運転者に警報(警告)を発するための出力装置である。たとえば、音出力装置、表示装置、振動出力装置等が設けられてよい。なお、警報装置22は、リアルタイムで危険運転予防意識の判定を行って当該判定結果に応じて警報を出すようにシステム10を構成する場合に設けられる。
【0104】
音出力装置の場合、コンピュータ12に予め記憶された音データ、音声データ等に基づいて、警告音、警告音声等をスピーカから出力する。警告音、警告音声等は、運転者によって行われなかった動作に応じて異ならせてよい。たとえば、目視確認動作が行われなかった場合、目視確認の必要な方向(左、右、または左右両方)の目視確認を行うように指示する音声を出力してよいし、ブレーキの構えができていない場合、アクセルから足を離しブレーキの構えをするように指示する音声を出力してよい。
【0105】
表示装置の場合、コンピュータ12に予め記憶された画像データに基づいて、警告画像を表示する。警告画像も、上述の音出力の場合と同様に、運転者によって行われなかった動作に応じて異ならせてよい。
【0106】
なお、音出力装置および表示装置として、自動車に搭載されたカーナビゲーションシステムを利用してもよい。
【0107】
振動出力装置は、振動によって運転者に警告を与えるために、たとえば、座席に内蔵されたり、運転者に装着されたりする。振動出力装置は、振動モータ等を含み、コンピュータ12の指示に応じて振動を出力する。なお、振動パターンや強さ等は、運転者によって行われなかった動作に応じて異ならせてよい。
【0108】
この警報装置22により、自動車が危険箇所に近付いても運転者が危険運転予防のための動作を行わなかったときに警報を発するので、必要な動作を行うように促すことができ、また、運転者の危険運転予防意識を高めることができる。
【0109】
運転データ記録装置24は、運転中に取得された各種のデータを記録するための記憶装置である。たとえば、コンピュータ12に内蔵されるフラッシュメモリ、コンピュータ12の内部または外部のHDD、あるいはコンピュータ12に接続されるメモリカードのような記憶媒体等であってよい。コンピュータ12は、位置検出装置18で検出された位置
データ、角速度センサ14および16で検出された角速度データ等を運転データ記録装置24に記録する。位置データおよび角速度データ等は、たとえば取得された時刻に対応付けて記憶される。あるいは、位置データと角速度データを関連付けて記憶するようにしてもよい。また、リアルタイムで危険運転予防意識の判定を行う場合、さらに危険箇所に対する目視確認とブレーキの構えの判定結果を示すデータ等を運転データ記録装置24に記録するようにしてもよい。
【0110】
発明者等は、角速度センサ14および16により、左右確認動作や、従来計測が困難であった「ブレーキの構え」をどの程度検出できるのかを調査するため、無信号交差点において実車を用いた実験を行った。被験者は5名であった。各被験者は、
図2および
図3に示すように角速度センサ14および16を頭部および右足に装着し、一人5km程度走行した。
図6および
図7は、同乗者およびビデオ確認により安全な運転をしていると判定された運転者と、安全な運転をしていないと判定された運転者が、それぞれ無信号交差点が4箇所連続する区間(両者とも同一の区間)を運転した際の角速度データを示す。
図6および
図7中の横軸は時間(hh:mm:ss、すなわち時:分:秒)、縦軸は角速度(deg/s)で
あり、実線は右足に装着した角速度センサ16,破線は頭部に装着した角速度センサ14の出力を表す。
【0111】
図6の安全な運転をしているとされた被験者の角速度データを見ると、交差点通過時にはかならず右足をブレーキペダル32に移動し(必ずしもペダル32を踏むわけではない)、目視確認も頻繁に行っていることがわかる。この
図6の結果は、ビデオチェックによる左右確認動作/ブレーキの構えの生起時間・回数と概ね一致する。
【0112】
一方、
図7の安全運転をしていないとされた被験者の場合、交差点通過時にまったく足をブレーキペダル32に移動させず(ブレーキの構えをせず)、万一の場合への備えができていないことがわかる。ペダル踏力だけに着目した場合には、ブレーキの構えができているかどうかまではわからないが、角速度センサ16を用いることによって右足のアクセルペダル30およびブレーキペダル32間の移動を検出できるので、ブレーキの構えができているか否かを判定することができる。
【0113】
以上のように、角速度センサ14および16を用いることにより、運転者の左右確認動作、ならびにブレーキの構えを、運転者にさほど負担をかけることなく計測できるようになる。
【0114】
続いて、フロー図を参照しながら、このシステム10の具体的な動作を説明する。
図8は、システム10のコンピュータ12のメイン処理の動作の一例を示す。なお、
図8はリアルタイムで危険運転予防意識の判定を行う場合のフロー図を示す。
【0115】
まず、ステップS1では、現在位置の座標(緯度、経度、高度)を示す位置データを位置検出装置18から取得してRAMに記憶する。次に、ステップS3で、頭部に装着された角速度センサ14で検出された角速度データと、右足先に装着された角速度センサ16で検出された角速度データをそれぞれ取得してRAMに記憶する。
【0116】
そして、ステップS5で、取得した位置データと角速度データを運転データ記録装置24に記録する。なお、コンピュータ12に内蔵される時計回路から取得した現在の時刻情報に対応付けて、位置データおよび角速度データを記憶する。
【0117】
続いて、ステップS7で、危険箇所が前方に存在するか否かを判断する。たとえば、まず、現在位置と地図データの道路データ等に基づいて、現在走行中の道(道ID)を特定する。
図5に示すように、道データには、始点・終点の座標と幅員が登録されるので、各
道の領域を算出することができる。したがって、現在位置の座標がどの道の領域に含まれるかを判断することによって、現在の道を特定できる。さらに、現在位置の変化から自動車の進行方向を算出することができる。したがって、現在の道の進行方向の端点(始点または終点)までに、危険箇所(事故多発箇所の座標)が存在するか否かを判断する。また、現在の道の進行方向の端点(始点または終点)が交差点であれば、当該交差点データを参照して、無信号交差点であるか否かを判断するとともに、事故多発フラグがオンであるか否かを判断する。
【0118】
なお、このステップS7の危険箇所の有無の判断は、たとえば道が変化するごとに実行されるようにしてよい。あるいは、現在の道の端点に一定距離まで近付いたときにその端点に繋がっている道について実行するようにしてもよい。
【0119】
ステップS7で“YES”の場合、つまり、危険箇所が存在する場合、ステップS9で、各危険箇所の動作判定領域を設定する。目視確認動作やブレーキの構えは、自動車が危険箇所に近付いたときに行われる必要があり、したがって、自動車が危険箇所に近付いたと判断されるときに、目視確認動作やブレーキの構えが行われたか否かが判定される。動作判定領域は、自動車が危険箇所に近付いたかどうかを判断するためのものであるとともに、目視確認動作やブレーキの構えが検出されるべき領域でもある。したがって、動作判定領域は、危険箇所の手前に設定される。
【0120】
この実施例では、
図9に示すように、危険箇所の手前の所定の範囲が動作判定領域として設定される。この動作判定領域内で、危険予防または回避動作、たとえば目視確認およびブレーキの構えが行われる必要がある。たとえば、危険箇所が交差点の場合には、交差点で交わっている道の幅員を考慮して、当該交差点の入り口のラインを基準として所定範囲を設定するようにしてよい。一例として、入り口から手前2,3m−7,8mの範囲が設定されてよい。また、危険箇所が交差点ではなく道上に設定されたものである場合には、当該危険箇所を基準とした所定範囲を設定する。なお、動作判定領域を規定する距離の上限値としては、危険箇所に対して目視確認動作やブレーキの構え(危険予防または回避動作)が開始されてよいと判断される適宜な距離が選ばれる。また、動作判定領域を規定する距離の下限値としては、危険箇所に対して目視確認動作やブレーキの構え(危険予防または回避動作)を終えているべきと判断される適宜な距離が選ばれる。
【0121】
また、この動作判定領域としては、自動車の速度に応じて異なる領域が設定されてよい。具体的には、自動車の速度が速いと判断される(所定値以上である)場合には、動作判定領域は、危険箇所の位置からより離れたところに設定されてよく、一方、自動車の速度が遅いと判断される(所定値以下である)場合には、動作判定領域は、危険箇所により近いところに設定されてよい。なお、自動車の速度は、位置検出装置18によって所定時間ごとに検出される位置の座標の変化から算出される。また、位置検出装置18が車速センサを備える場合、当該センサで検出される速度が利用されてよい。
【0122】
続いて、
図8のステップS11では、各危険箇所の目視確認方向を設定する。たとえば、危険箇所が交差点の場合には、当該交差点の左側または右側に道が接続されているかどうかを道路データに基づいて判断し、接続されている道の方向を目視確認方向として設定する。したがって、当該交差点が
図9のような四つ角の場合には、左右両方向が設定される。また、危険箇所が交差点ではなく道上に設定されたものである場合には、たとえば左右両方向を設定してよいし、あるいは当該危険箇所の地形や特徴等に応じて左方向、右方向または左右両方向が設定されるようにしてよい。
【0123】
なお、ステップS7で“NO”の場合、つまり、危険箇所が前方に存在しない場合には、処理はそのままステップS13に進む。
【0124】
ステップS13では、危険予防または回避動作の1つである目視確認をしたかどうかを判定するための処理を実行する。目視確認判定処理の動作の一例が
図10に示される。
図10のステップS41では、現在位置は動作判定領域内であるか否かを判断する。たとえば、上述のように、動作判定領域を危険箇所(または交差点入り口)からの距離で設定する場合には、各危険箇所の座標と現在位置の座標等に基づいて、各危険箇所(または交差点入り口)と現在位置との間の距離を算出し、当該算出された距離が、各動作判定領域を規定する距離の上限値と下限値との間の値であるか否かを判断する。
【0125】
ステップS41で“NO”の場合には、現在位置が動作判定領域内ではないので、そのまま目視確認判定処理を終了し、
図8のステップS15へ戻る。危険箇所に対する目視確認動作は、動作判定領域内で行われる必要があるので、現在位置が動作判定領域内にないときは、頭の角速度データの解析を行わないようにしている。
【0126】
一方、ステップS41で“YES”の場合には、ステップS43で、動作判定領域に入ってから検出された頭の角速度データの解析を行う。
図6に示したように、運転者が目視確認動作を行った場合には、頭部に装着された角速度センサ14によって、当該方向への角速度が検出される。したがって、動作判定領域に入ってからの頭の角速度データを解析して、設定された目視確認方向への回転の検出を試みる。
【0127】
そして、ステップS45で、目視確認方向への回転が検出されたかどうか、つまり、危険予防動作または危険回避動作が実行されたか否かを判断する。たとえば、目視確認方向が左方向である場合には、左方向への所定角度以上の回転が検出されたか否かを判断する。また、目視確認方向が右方向である場合には、右方向への所定角度以上の回転が検出されたか否かを判断する。また、目視確認方向が左右両方向である場合には、左方向への所定角度以上の回転と右方向への所定角度以上の回転の両方が検出されたか否かを判断する。なお、左右両方向への目視確認の場合、最初の方向へ所定角度以上回転された状態から逆方向へ頭部が回転されるので、その後の逆方向への回転としては、最初の方向へ回転した状態から正面へ戻す回転と、さらに正面から逆方向への所定角度以上の回転とが検出される必要がある。
【0128】
ステップS45で“YES”の場合には、必要な目視確認動作(危険回避動作または危険予防動作)が行われたと判断されるので、ステップS47でRAMの所定領域に記憶される目視確認フラグをオンにする。一方、ステップS45で“NO”の場合には、必要な目視確認動作(危険回避動作または危険予防動作)が検出されていないので、この目視確認判定処理を終了し、
図8のステップS15へ戻る。
【0129】
図8のステップS15では、危険回避動作または危険予防動作の他の1つであるブレーキ構え判定処理を実行する。このブレーキ構え判定処理の動作の一例が
図11に示される。ブレーキの構えという動作は、万一の場合にブレーキペダル32を直ぐに踏むことができるように、右足がブレーキペダル32側にあるという状態に相当する。したがって、この実施例では、常時右足の位置がブレーキペダル32側にあるかアクセルペダル30側にあるかを判断するようにする。そして、現在位置が動作判定領域内になったときに、右足の位置がブレーキペダル32側であれば、ブレーキの構えができている、つまり危険回避動作または危険予防動作ができているものと見なすようにしている。
【0130】
図11のステップS61では、直前の一定時間の右足の角速度データを解析する。
図6に示したように、運転者が右足をブレーキペダル32とアクセルペダル30間で移動させた場合には、右足先に装着された角速度センサ16によって、左方向または右方向への角速度が検出される。したがって、直前の一定時間の右足の角速度データを解析して、右方
向または左方向への回転の検出を試みる。
【0131】
そして、ステップS63で、右方向への回転が検出されたか否かを判断する。たとえば、符号が負であり、かつ、絶対値が所定値以上の回転角度が検出されたか否かを判断する。このステップS63で“YES”であれば、運転者が右足をアクセルペダル30側に移動させたと判断できるので、ステップS65で、右足の位置としてアクセルを記憶する。一方、ステップS63で“NO”であれば、処理はそのままステップS67へ進む。
【0132】
ステップS67では、左方向への回転が検出されたか否かを判断する。たとえば、符号が正であり、かつ、絶対値が所定値以上の回転角度が検出されたか否かを判断する。このステップS67で“YES”であれば、運転者が右足をブレーキペダル32側に移動させたと判断できるので、ステップS69で、右足の位置としてブレーキを記憶する。一方、ステップS67で“NO”であれば、処理はそのままステップS71へ進む。
【0133】
ステップS71では、現在位置が動作判定領域内であるか否かを判断する。ステップS71で“NO”の場合、ブレーキの構えを判定する必要がないので、そのままこのブレーキ構え判定処理を終了し、処理は
図8のステップS17に戻る。
【0134】
一方、ステップS71で“YES”の場合、つまり、自動車が危険箇所に近付いたと判断される場合には、ブレーキの構えをしているか否かを判断する。すなわち、ステップS73で、右足の位置がブレーキであるか否か、つまり、危険予防動作または危険回避動作が実行されたか否かを判断する。ステップS73で“YES”であれば、ブレーキの構え(危険予防動作または危険回避動作)ができていると判断できるので、ステップS75で、RAMの所定領域に記憶されるブレーキ構えフラグをオンにする。一方、ステップS73で“NO”の場合には、ブレーキの構えが検出できていないので、そのままブレーキ構え判定処理を終了し、処理は
図8のステップS17に戻る。
【0135】
ステップS17では、現在位置が動作判定領域から出たか否かを判断する。たとえば、当該危険箇所(または交差点入り口)と現在位置との間の距離が、動作判定領域を規定する距離の下限値よりも小さくなったか否かを判断する。つまり、このステップS17では、当該危険箇所に対して必要な動作が行われたか否かを最終的に判定すべきタイミングになったか否かを判断する。ステップS17で“NO”の場合、処理はステップS1に戻る。
【0136】
一方、ステップS17で“YES”の場合、ステップS19で、目視確認フラグがオン、かつ、ブレーキ構えフラグがオンであるか否かを判断する。ステップS19で“NO”の場合、つまり、必要な危険回避または予防動作が行われずに自動車が危険箇所に到達しようとしていると判断される場合には、ステップS21で警報処理を実行する。これによって、警報装置22が、警告音を出力したり、警告画像を表示したり、振動を出力したりする。
【0137】
一方、ステップS19で“YES”の場合、つまり必要な危険回避または予防動作が行われた場合、処理はそのままステップS23へ進む。ステップS23では、当該危険箇所に対する目視確認とブレーキ構えの結果を示すデータを、運転データ記録装置24に記録する。たとえば、危険箇所の座標(または識別情報)に対応付けて、目視確認が行われたか否かを示す情報、ブレーキの構えが行われたか否かを示す情報、および時刻情報等を記録する。ステップS23を終了すると、処理はステップS1に戻る。
【0138】
この実施例によれば、角速度センサ14および16を用いて目視確認動作およびブレーキの構えを検出して、危険回避または予防動作が行われたかどうか判定するようにしたの
で、運転者の危険運転予防意識を逐次チェックすることができ、実時間で警告を発したり、危険運転予防意識の判定結果を記録したりすることができる。また、運転者の危険運転予防意識を定量的に計測することができるので、再教育講習の受講対象者の事前選別に有用である。また、再教育講習の効果持続を評価し、必要に応じて再度講習を受けさせるなど講習効果の薄れへの対策も可能となる。
【0139】
さらに、第1の実施例において、
図8のステップS21およびステップS23のいずれか一方を省略することも考えられる。
【0140】
なお、上述の実施例では、システム10は、警報装置22と運転データ記録装置24の両方を備えたが、他の実施例では、システム10は、警報装置22または運転データ記録装置24の一方のみを備えるようにしてよい。警報装置22のみの場合、システム10は危険運転予防のための動作を行ったかどうかに応じてリアルタイムで警報を発する警報システムとなり、一方、運転データ記録装置24のみの場合、システム10は危険運転予防のための動作を行ったかどうかを記録する記録システムとなる。
【0141】
また、上述の各実施例では、リアルタイムで目視確認動作およびブレーキの構えを判定するようにしたが、他の実施例では、運転中に記録されたデータを事後処理で解析して、危険回避または予防動作たとえば目視確認動作およびブレーキの構えを判定するようにしてもよい。その場合、逐次記録データを読み出して判定を行うように
図8と同様な処理を事後に実行してもよいが、
図12に示すような別の解析処理を実行するようにしてもよい。
第2実施例
この事後の解析処理は、
図1のシステム10のコンピュータ12で実行してよい。あるいは、運転データ記録装置24の記録データ(角速度データおよび位置データ)を取り出して、別のコンピュータに取り込み、当該コンピュータでこの解析処理を実行するようにしてもよい。ただし、このコンピュータは、地図データベース20の地図データ(道路データ)を記憶しておくか、地図データベース20から地図データを取得可能にされている必要がある。
【0142】
処理を開始すると、まず、ステップS101で、記録データをRAMに読み出す。記録データは、運転中に記録された頭の角速度データ、右足先の角速度データおよび自動車の位置データを含む。なお、角速度データおよび位置データは、一定時間ごと検出されるので、それぞれ時系列データとなっている。
【0143】
次に、ステップS103で、移動経路上の危険箇所を抽出する。検出された位置データと道路データとに基づいて移動経路を特定することができ、したがって、当該移動経路上に存在する危険箇所を道路データから抽出できる。
【0144】
続くステップS105で、抽出された危険箇所のうち、経路上の最初の危険箇所を調査対象に設定する。この設定された危険箇所に対して、目視確認動作およびブレーキの構えが行われたかどうか、つまり必要な危険回避動作または危険予防動作が行われたかどうかを判定する。
【0145】
具体的には、ステップS107で、当該危険箇所の動作判定領域を設定する。このステップS107の処理は、上述の
図8のステップS9と同様の処理である。さらに、ステップS109で、当該危険箇所の目視確認方向を設定する。このステップS109の処理は、上述のステップS11と同様の処理である。
【0146】
そして、ステップS111で、当該危険箇所について目視確認判定処理を実行する。こ
の目視確認判定処理は、
図10の目視確認判定処理とほぼ同様の処理であるが、リアルタイム処理ではないので
図10のステップS41の判断が不要である。具体的には、動作判定領域で検出された頭部の角速度データを解析する。なお、角速度データは、時刻情報を用いてまたは直接的に、位置データと関連付けられて記録されているので、動作判定領域で検出された角速度データのみを抽出することができる。解析によって、目視確認方向への回転が検出された場合には、当該方向への目視確認(危険回避または予防動作)が行われたものとみなして、目視確認フラグをオンにする。
【0147】
続くステップS113で、当該危険箇所についてブレーキ構え判定処理を実行する。具体的には、動作判定領域で検出された右足の角速度データを解析する。そして、左方向への所定の回転が検出された場合には、右足の位置がブレーキ側に移動されたもの、つまり危険回避または予防動作が行なわれたものとみなして、ブレーキ構えフラグをオンにする。ただし、動作判定領域内の右足の角速度データを解析しても、左右いずれの方向への回転も検出できない場合には、つまり、動作判定領域で運転者が右足を移動させなかったと判断される場合には、左または右方向への所定の回転が検出されるまで、右足の角速度データをたとえば一定時間分遡って解析する処理を繰り返して、右足の位置を特定する。右足の位置がブレーキ側であると判断された場合には、ブレーキの構えをしているもの、つまり危険回避または予防動作が行なわれたものとみなして、ブレーキ構えフラグをオンにする。
【0148】
そして、ステップS115で、当該危険箇所に対する目視確認とブレーキ構えの判定結果をRAMに記録する。たとえば、危険箇所の座標(または識別情報)に対応付けて、設定された方向への目視確認が行われたか否かを示す情報、ブレーキの構えが行われたか否かを示す情報等を記憶する。
【0149】
続いて、ステップS117で、すべての危険箇所を調査したかいなかを判断し、“NO”であれば、ステップS119で、次の危険箇所を調査対象に設定する。そして、処理はステップS107に戻り、当該危険箇所に対する目視確認動作およびブレーキの構えの判定のための処理を実行する。
【0150】
一方、ステップS117で“YES”の場合には、ステップS121で、結果を出力する。たとえば、全危険箇所に対しての判定結果を含むデータをファイルとして生成して出力したり、当該判定結果を表示装置に表示したりする。また、判定結果に基づいて、当該運転者の危険運転予防意識を評価する処理をさらに実行し、当該評価結果も出力するようにしてよい。ステップS121を終了すると、この解析処理を終了する。
【0151】
また、上述の第1および第2の実施例では、運転者の頭部および右足先の両方に角速度センサ14および16を装着して、両方の角速度データを記録し、目視確認動作およびブレーキ構えの両方を判定するようにしたが、他の実施例では、地図データに危険箇所の属性情報を記憶しておき、危険箇所ごとに、目視確認動作のみを判定するようにしたり、ブレーキの構えのみを判定するようにしたりするなど、必要な動作の種類を変更可能にしてもよい。たとえば、踏切や一時停止標識設置箇所等では、自動車は一時停止しなければならないルールであるから、危険箇所が上記のような場所である場合、ブレーキの構えを判定せず、目視確認動作のみを判定するようにしてもよい。さらに、別の実施例では、運転者には、頭部の角速度センサ14または右足先の角速度センサ16の一方のみを装着するようにして、目視確認動作またはブレーキ構えの一方のみを判定するようにしてもよい。
【0152】
また、上述の第1および第2の実施例では、動作判定領域内で右足の位置がブレーキ側に一度でも移動されていれば、ブレーキ構えフラグがオンにされ、つまり、ブレーキの構えが行われたと判定されるようにしていた(
図11参照)。しかし、他の実施例では、動
作判定領域から出るときの右足の位置がブレーキ側であれば、ブレーキ構えフラグをオンにするようにしてもよい。つまり、動作判定領域から出るときに、運転者がブレーキ側に右足を置いている状態にあることをもって、ブレーキの構えが行われたと判定するようにしてもよい。さらに、これらの判定条件は、たとえば危険箇所の属性(危険度)に応じて使い分けるようにしてもよい。たとえば、危険度の大きい危険箇所に対しては、右足をブレーキ側に移動させた状態で当該危険箇所に入れば、ブレーキの構えをしたものと判定し、一方、危険度の小さい危険箇所に対しては、一度でも右足がブレーキ側に移動されればブレーキの構えをしたものと判定するようにしてもよい。
第3実施例
図13はこの発明の第3実施例に用いられるビデオカメラおよびマイクを車内に設置した状態の一例を示す図解図である。この実施例では、危険回避動作または危険予防動作が実行されなかった場合に、少なくとも危険箇所通過の前後の、車外の状態および車内の状態を撮影した映像を保存する。
【0153】
ただし、保存する映像は、車外の映像だけでもよく、車内の映像だけでもよい。さらに、映像は、実施例では動画像であるが、間欠的に撮影された静止画像または連続する静止画像であってもよい。
【0154】
映像を撮影するために、
図13に示す実施例では、車34の内部の適当な場所、たとえば車内のバックミラー35の上に、ビデオカメラ36aおよび36bを装着する。ビデオカメラ36aは車34の前方に向けられているので、
図14に示すような、車外の映像40を撮影する。ビデオカメラ36bは車34の後方(車内)に向けられているので、
図15に示すような、車内の映像42を撮影する。この車内映像42に写っている運転者は
図2に示すような帽子26を装着している。
【0155】
なお、ビデオカメラ36aおよび36bの画角または視野角は任意に設定されてよいが、実施例では、一例として、車外撮影用カメラ36aとして140度程度の画角のカメラを用い、車内撮影用カメラ36bとして170度程度のカメラを用いる。
【0156】
また、夜間撮影を可能にするために、これらのビデオカメラ36aおよび36bは赤外線カメラであってよく、通常のカメラの機能と赤外線カメラの機能とを切り替えて使用できるカメラを用いるようにしてもよい。
【0157】
これらのビデオカメラ36aおよび36bに付属して、マイク38が設けられる。このマイク38は、主として車内の音を拾って録音するためのものである。車外の音は他の音と聞分けにくいのでこの実施例では車外音用マイクは設けないが、もし必要なら、車外の音を録音するための別のマイク(図示せず)を設けてもよい。
【0158】
ビデオカメラ36aおよび36bならびにマイク38の設置場所は、それらの所期の目的を達成できる場所であれば、任意の場所に設定されてよい。
【0159】
第3の実施例の構成が
図16に示される。
図16に示す構成は、以下の点を除いて、
図1に示す構成と同じである。
【0160】
この実施例では、ビデオカメラ36aおよび36bによって撮影した映像は、図示しない適宜のインタフェースを介して、映像データとしてコンピュータ12に入力される。また、マイク38で取得した音声は、同様にインタフェースを介して、音声データとしてコンピュータ12に入力される。
【0161】
そして、この実施例では、運転データ記録装置24には、特には図示しないが、上述の
映像データおよび音声データを保存するための記憶領域または記録領域が設定されている。
【0162】
図17を参照して、第3の実施例における危険運転予防意識判定動作の最初のステップS0で、コンピュータ12は、図示しないインタフェースを介して、ビデオカメラ36a
および36bならびにマイク38を起動する。したがって、危険運転予防意識判定動作の開始と同時にビデオカメラ36a,36bおよびマイク38が起動され、その時点から、
図14に示す車外映像40のデータおよび
図15に示す車内映像42のデータさらには音声のデータが運転データ記録装置24の第1の所定領域に記録または記憶される。
【0163】
その後、ステップS1に進み、コンピュータ12は位置データを取得する。ただし、この実施例において、
図17のステップS1‐S23は、ステップS22が付加されていることを除き、ステップS13およびS15のサブルーチン(
図10および
図11)を含めて
図8のステップS1‐S23と同じであり、ここでは重複する説明は省略する。
【0164】
先に説明したように、ステップS13で目視確認動作をしたかどうか、つまり、危険回避または予防動作が行なわれたかどうかが判定され、ステップS15でブレーキ構えがあったかどうか、つまり危険運転回避または予防動作が行なわれたかどうかが判定される。目視確認動作がなされていれば目視確認フラグがオンされていて、そうでなければ、目視確認フラグはオフされている。ブレーキ構えがなされていればブレーキ構えフラグがオンされ、そうでなければ、ブレーキ構えフラグはオフされている。
【0165】
図8のステップS19と同様に、
図17のステップS19において、目視確認フラグがオン、かつ、ブレーキ構えフラグがオンであるか否かを判断する。ステップS19で“NO”の場合、つまり、必要な危険回避または予防動作が行われずに自動車が危険箇所に到達しようとしていると判断される場合には、ステップS21で警報処理を実行する。これによって、警報装置22が、警告音を出力したり、警告画像を表示したり、振動を出力したりする。
【0166】
ついで、ステップS22において、コンピュータ12は、ビデオカメラ36aおよび36bの車外映像および車内映像のデータを保存する。その意味で、このステップS22が映像データ保存手段(第1映像データ保存手段や第2映像データ保存手段)、さらには音声データ保存手段(第1音声データ保存手段や第2音声データ保存手段)を構成する。
【0167】
コンピュータ12は、前述のように、ステップS0で起動したビデオカメラ36aおよび36bからの車外映像および車内映像のデータやマイク38からの音声のデータを運転データ記録装置24の第1の所定領域に記録または記憶させている。そして、ステップS7で危険個所が前方に存在することが判ったとき、ステップS9で動作判定領域を設定している。したがって、このステップS22では、たとえば、ステップS9で設定した動作判定領域を当該車両が通過してステップS19で“NO”が判定されるまでのビデオカメラ36aおよび36bからの車外映像および車内映像のデータやマイク38からの音声のデータを、運転データ記録装置24の第2の所定領域に記録する。この第2の所定領域に記録された車外映像のデータ、車内映像のデータおよび音声のデータは、上書き消去できないものであり、したがって、所定の方法で消去しない限り、運転データ記録装置24の第2の所定領域に保存される。
【0168】
つまり、この実施例では、運転者が危険回避動作または危険予防動作をしなかったとき、動作判定領域を通過するまで、ビデオカメラで撮影した映像やマイクで採取した音声をデータとして保存する。したがって、後にそれらの映像データや音声データを再生して当該運転者に見せたり聞かせたりすることによって、危険回避または予防動作をしなかった
ことをその運転者に明確に理解させることができる。
【0169】
ただし、ステップS22で保存する映像データや音声データは、動作判定領域を通過する期間内のデータに限られるものではなく、たとえば、ステップS22を実行する前3分後1分のような、時間で決まる期間内のデータであってもよい。
【0170】
また、このステップS22での映像データや音声データの保存は別の形式でなされてもよい。
【0171】
前述のように、運転データ記録装置24の第1の所定領域にはステップS0から取得した映像データや音声データが間断なく記録されている。そのとき、メタ情報として、たとえば、位置検出装置18から取得した当該車両の位置データが記録されるとともに、図示しない時計回路から取得した時刻データをタイムスタンプとして記録している。このタイムスタンプは、たとえば30秒のような、任意の時間間隔で記録される。
図18にそのようなタイムスタンプ44が例示される。
図18の最上行には時刻データ「20081212100000」が示されるが、それはたとえば、2008年12月12日10時00分00秒を意味していて、次の行には30秒経過したときの時刻データ「20081212100030」が記録されている。そして、最下行には「20081212100730」という時刻データが記録される。
【0172】
上記の「別の形式」はこのようなタイムスタンプの時刻データに
図18に網掛けで示す識別記号46を付加することである。
図18では、「20081212100300」から「20081212100700」までの時刻データに識別記号46が付加されている。したがって、この識別記号46を見れば、危険回避または予防動作をしなかったときの映像データや音声データが記録されている運転データ記録装置24内の記録場所を容易に見つけ出すことができる。そして、運転データ記録装置24に保存されているその間の映像データや音声データを指定して再生すれば、この2つの時刻データが示す時間期間に危険予防ないし回避動作をしない運転状況を運転者に認識させることができる。
【0173】
なお、第3の実施例において、ビデオカメラ36aおよび36bを用いて自動車の車外の映像および車内の映像の両方を保存するようにしたが、保存する映像データは、車外映像および車内映像の少なくとも一方の映像データでよい。
【0174】
また、音声データを映像データと一緒に保存するようにしているが、音声データは保存しなくてもよい。その場合には、当然マイク38が省略できる。
【0175】
さらに、第3の実施例において、
図17のステップS21を省略したり、ステップS23を省略したりすることも考えられる。危険予防または回避動作が行なわれなかったときの映像データを保存するだけでも運転者に危険予防意識を植え付けることはできるからである。
【0176】
第3実施例においては、ステップS19で“NO”が判断されたとき、つまり、各ステップS13およびS15の処理の結果、目視確認フラグおよびブレーキ構えフラグの両方がオフのとき、ステップS22を実行するようにした。しかしながら、第3実施例の変形として、目視確認フラグおよびブレーキ構えフラグの少なくとも1つがオフなら、ステップS21およびS22を実行するようにしてもよい。あるいは、ステップS21は2つのフラグがともにオフのときだけ実行し、ステップS22は2つのフラグの1つがオフでも実行するように変更することも可能である。逆に、ステップS22は2つのフラグがともにオフのときだけ実行し、ステップS21は2つのフラグの1つがオフでも実行するように変更してもよい。
第4実施例
上で説明した第3実施例は、第1実施例において、危険予防動作または危険回避動作を運転者がしなかったと判断したとき、ビデオカメラ36で撮影した車内外の映像やマイク38で採取した車内外の音声のデータを保存して当該運転者のみならず他の運転者の安全運転教育に資することができるようにした実施例である。
【0177】
同じ考えを前述の第2実施例に適用することもでき、そのように構成された実施例を第4実施例とする。第4実施例の構成は
図16と同様であり、その動作は
図12で示すフローチャートに従う。したがって、これらの図面を援用してこの第4実施例を説明する。
【0178】
第2実施例では、
図12の最初のステップS101で記録データを読み出す処理を実行するが、第4実施例では、記録データは、
図16のビデオカメラ36で撮影した車内外の映像のデータやマイク38で採取した車内外の音声のデータを含む。つまり、第4実施例では、
図16の構成を用いて記録データを取得する。したがって、この実施例では運転データ記録装置24の第1の所定領域に記録されている記録データが、角速度データおよび位置データだけでなく、映像データおよび音声データを含む。
【0179】
そして、ステップS111で危険回避または予防動作の1つである目視確認をしたかどうかを判定する、目視確認判定処理を実行し、ステップS113で危険回避または予防動作の1つであるブレーキ構えをしたかどうかを判定する、ブレーキ構え判定処理を実行する。これらのステップS111およびS113は、
図10および
図11に示され、かつ既に説明したとおりである。
【0180】
そして、それらの処理結果を踏まえてステップS115で結果を記録するのであるが、このとき、第3実施例のステップS22(
図17)と同様にして、各ステップS111およびS113の処理の結果、目視確認フラグおよびブレーキ構えフラグの少なくとも1つがオンされなかったときたとえば、ステップS107(
図12)で設定した動作判定領域を当該車両が通過してから各ステップS111およびS113の判定結果が得られるまでのビデオカメラ36aおよび36bからの車外映像および車内映像のデータやマイク38からの音声のデータを、運転データ記録装置24の第2の所定領域に保存し、あるいは、
図18のような識別記号を保存するようにすればよい。
【0181】
なお、上述の各実施例では、運転者の頭部および右足先の動きを検出するために、角速度センサ14および16を使用したが、他の実施例では、別の検出装置が使用されてもよい。たとえば、加速度センサを使用することも可能である。運転者の目視確認動作およびブレーキの構えに応じて加速度が変化するので、動きデータとしての頭部の加速度データおよび右足先の加速度データを解析することによって、目視確認動作およびブレーキの構えが行われたか否かをそれぞれ判定することができる。
【0182】
目視確認動作は頭部の左右方向への動きを伴うので、頭部の加速度センサは、頭部の少なくとも左右方向の加速度を検出するように取り付けられる。頭部の加速度データに基づいて左または右方向への動きが検出された場合には、左または右方向への目視確認動作が行われたものと判断できる。
【0183】
また、ブレーキの構えは、右足先の左右方向への移動を検出することによって判定可能であるから、右足先の加速度センサは、右足先の少なくとも左右方向の加速度を検出するように取り付けられる。右足先の加速度データに基づいて左方向への動きが検出された場合には、右足がブレーキペダル32側に移動されたものと判断でき、つまり、ブレーキの構えをしているものと判断できる。また、右方向への動きが検出された場合には、右足がアクセルペダル30側に移動されたものと判断できる。
【0184】
ただし、加速度センサは一般に重力加速度の影響を受けるため、その出力はセンサ傾きに対応する重力加速度成分と、実際の加速度成分との和になる。たとえば緊急時の急な動きを計測するのであれば、重力加速度成分の影響があったとしても特に問題はないが、ペダル間の足の移動を捉えようとするような場合には、その影響が無視できなくなる。
図19は角速度センサ16の代わりに加速度センサを用いて右足の動きを計測した際の加速度データを示す。横軸は時間、縦軸は加速度(mG)であり、横方向(X軸方向)の加速度を示す。なお、上述の
図6および
図7の実験とは別のコースでの実験結果である。
図19に示すように、足を動かしたことによってセンサ傾きが変化し、それに伴い、X軸方向にかかる重力加速度成分が変化して正弦波のようなノイズとしてデータに混入していることが分かる。アクセルとブレーキ間の移動の際には右足の加速度センサの傾きは変化することになるので、右足先の動きを検出するための加速度センサとしては、2軸加速度センサまたは3軸加速度センサを適用して、センサの傾きによるノイズを除去して右足先の動きを検出するようにするのが望ましい。