(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記エレクトレット誘電体と少なくとも一方の前記電極との間には部分的に互いに接合された接合部が設けられ、少なくとも一部の前記非接合部は、前記エレクトレット誘電体と前記電極と前記接合部とで囲まれて密封されることを特徴とする請求項1記載の振動発電体。
前記スペーサは、平面方向の断面が網目状であり、前記スペーサを介して前記エレクトレット誘電体と前記電極とが接合され、複数の前記非接合部が、前記エレクトレット誘電体と前記電極と前記スペーサとで囲まれて密封された閉空間となることを特徴とする請求項2記載の振動発電体。
前記エレクトレット誘電体と少なくとも一方の前記電極との対向面の内、少なくとも一方の表面には、凸部と凹部とからなる凹凸形状が形成され、前記凸部によって前記スペーサが形成され、少なくとも一部の前記凸部を介して、前記エレクトレット誘電体と前記電極とが接合され、前記凹部が前記非接合部となることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の振動発電体。
前記非接合部において、前記エレクトレット誘電体と前記電極との対向面の内、少なくとも一方の表面には、粗面化処理が施されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の振動発電体。
少なくとも一方の前記電極は、導体層と、前記導体層の一方の面に配置される樹脂層とを具備し、前記導体層が前記エレクトレット誘電体と対向するように配置されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の振動発電体。
少なくとも一方の前記電極の前記樹脂層は、基材層と粘着層とを具備し、前記基材層が前記粘着層を介して前記導体層と接合され、前記粘着層と前記導体層とが剥離可能であることを特徴とする請求項7記載の振動発電体。
前記導体層と前記粘着層との接合力は、前記粘着層と前記基材層との接合力よりも弱く、かつ、前記導体層と前記エレクトレット誘電体との接合力よりも弱いことを特徴とする請求項8記載の振動発電体。
請求項1から請求項9のいずれかに記載の振動発電体が複数層に積層され、積層されるそれぞれの前記振動発電体の電極同士が接続されて積層構造を形成してなることを特徴とする振動発電体。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された振動発電装置は、固定基板の上面に短冊状の複数本のベース電極が平行に配列され、各ベース電極上には、それぞれエレクトレットが形成される。また、可動基板は、固定基板のエレクトレットが配置される側の面に対向し、所定のギャップをあけて平行に配置される。さらに、可動基板の対向面には、ベース電極と対向するように短冊状の対向電極が形成される。振動が付与されると、可動基板は、固定基板との距離を保った状態で、平行に移動する。したがって、エレクトレットと対向電極との相対位置が平行な方向に変化する。この際、各電極に電荷が静電誘導されて発電することができる。
【0007】
また、特許文献2には、音波を電気信号に変換するエレクトレットコンデンサマイクロホンが記載されている。エレクトレットコンデンサマイクロホンは、固定電極であるカップ状背極にエレクトレット誘電体膜が形成され、エレクトレット誘電体膜と対向する側に対向電極である振動膜が形成される。また、エレクトレット誘電体膜と振動膜とのギャップはスペーサで保持される。中心孔から音波が伝播して振動膜が振動すると、振動膜とエレクトレット誘電体膜との相対位置が変化する。この際、各電極に電荷が静電誘導される。このようにして得られた電気信号を信号増幅およびインピーダンス変換して出力することができる。
【0008】
しかしながら、前述した発電方式は、広範囲かつ様々な取り付け部位の形態に対応させることが困難である。例えば、特許文献1、2に記載された装置や、電磁誘導や圧電素子を利用する方式では、各部材が略リジッドに形成されるため、取り付け部位に応じて形状を変える等のフレキシブル性に劣る。
【0009】
また、セラミックス製の圧電素子や高分子系の圧電フィルムは高価であるため、大面積に配置するには不向きである。また、大面積に配置するには、多数の発電体を配置する必要があり、部品点数も多くなりコスト増および重量増を招く。
【0010】
また、特許文献2のようなエレクトレットコンデンサマイクロホンは、入力される音波と出力される電気信号との線形性が重要であるため、得られる電気信号が小さく、かつ、発電部のインピーダンスが高い。このため、発電部で発電された電気は、半導体回路によって増幅され、インピーダンス変換される。したがって、半導体回路を駆動する外部電源が必要であり、そもそも発電した電気エネルギーを有効に利用できるものではない。
【0011】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、様々な形態の設置場所へ適用することが可能であり、発電効率の高い振動発電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した目的を達成するため、第1の発明は、振動発電体であって、表面
と裏面との電位差が200V〜600Vに帯電処理され、電荷を保持したエレクトレット誘電体と、前記エレクトレット誘電体を挟み込むように配置される一対の電極と、を具備し、前記エレクトレット誘電体および前記電極は、いずれも可撓性を有し、前記エレクトレット誘電体と少なくとも一方の前記電極との間には、互いに接合されない非接合部が形成され、前記エレクトレット誘電体と少なくとも一方の前記電極との間には、部分的にスペーサが設けられ、少なくとも一部の前記スペーサを介して、前記エレクトレット誘電体と前記電極とが接合され、前記スペーサを介して接合される部位以外の部位が、前記非接合部となり、前記スペーサの厚みは30μm〜100μmであり、前記非接合部の少なくとも一部において、前記エレクトレット誘電体と前記電極との厚み方向の距離を変化させることが可能であり、前記電極の変形によって、前記エレクトレット誘電体と前記電極とが接触と剥離とを繰り返すことを特徴とする振動発電体である。
【0013】
このような構成とすることで、振動発電体を設置場所の形態に追従させて設置することが可能である。また、エレクトレット誘電体と電極との間に非接合部が形成されるため、エレクトレット誘電体と電極との間の厚み方向の距離を外力によって容易に変化させることができる。したがって、距離変化に応じて電極に電荷が静電誘導され、発電を行うことができる。
また、スペーサの厚み分だけ、エレクトレット誘電体と電極との隙間を保持することが容易となる。したがって、外力に応じて、より確実にエレクトレット誘電体と電極との距離を変化させることができる。
また、振動発電体へ外力を付与した際における非接合部でのエレクトレット誘電体と電極との距離(隙間)を適正にすることができる。すなわち、外力が付与されない状態での非接合部におけるエレクトレット誘電体と電極との距離は、略スペーサの厚み程度に保持されるため、エレクトレット誘電体と電極との距離を略30μm〜100μmの範囲にすることができる。
発明者らは、振動発電体へ外力を付与した際、エレクトレット誘電体と電極との距離の変化量に応じて発電量が大きくなり、電極とエレクトレット誘電体とが接触と剥離を繰り返すとき、すなわち電極とエレクトレット誘電体との距離の変化量が最大となるような振動発電体の変形が生じたときに最大発電量が得られることを見出している。
ここで、例えば、スペーサ厚みを30μm未満とすると、振動発電体への外力付与時にエレクトレット誘電体と電極とが接触するまでの距離の変化量も略30μm未満となるが、この場合の発電量は顕著に低下する。また、スペーサ厚みが100μmを超えると、即ちエレクトレット誘電体と電極とが接触するまでの距離の変化量が100μmを超えると、その変化量の増加に伴う発電量の増加量が小さくなる。また、エレクトレット誘電体と電極とを接触させるまでに必要な外力が大きくなる。さらに、振動発電体の総厚が厚くなる。このようなことから、スペーサの厚みは100μm以下とすることが望ましい。したがって、スペーサの厚みを前述の範囲とすることで、電極とエレクトレット誘電体との距離(隙間)を発電に適した範囲に保持できる。
【0014】
なお、外力とは、機械的に他の物質が振動発電体と接触して、振動発電体を変形させる力には限られない。例えば、取り付け部に生じる構造体自体の振動や、外部からの音波や空気圧変化など、振動発電体に繰り返し付与され、振動発電体を変形させることが可能な外部から振動発電体への力の作用を指すものである。この外力は微小なものであってもよい。また、振動発電体における振動とは、その振幅や周波数などが一定であるようなものに限られず、定期的または不定期に繰り返しの外力(慣性力などを含む)を付与可能であるものを指す。
【0015】
前記エレクトレット誘電体と少なくとも一方の前記電極との間には部分的に互いに接合された接合部が設けられ、少なくとも一部の前記非接合部は、前記エレクトレット誘電体と前記電極と前記接合部とで囲まれて密封されることが望ましい。
【0016】
このように、非接合部を密封することで、外部から、非接合部の内部へ水分が浸入することを防止することができる。すなわち、空隙が存在する非接合部を閉空間とすることで、空隙(非接合部)へ水分が浸入することを防止し、防湿、防水構造とすることができる。したがって、振動発電体の周囲端部を別途シール加工しなくとも、振動発電体のエレクトレット誘電体と電極との非接合部に形成される空隙の大部分に対して、外部から水分が浸入することを防止することができる。
【0019】
前記スペーサは、平面方向の断面が網目状であり、前記スペーサを介して前記エレクトレット誘電体と前記電極とが接合され、複数の前記非接合部が、前記エレクトレット誘電体と前記電極と前記スペーサとで囲まれて密封された閉空間となるようにしてもよい。
【0020】
このようにすることで、スペーサによって、非接合部の空隙を保持し、かつ、スペーサによって、非接合部を閉空間として密封することができる。また、振動発電体を任意の位置で切断した際に、全体の非接合部に対して、振動発電体の端部に位置する密封されない非接合部(外部と連通する非接合部)が占める割合を低減することができる。したがって、切断後の端部周囲をシール加工することなく、内部の非接合部への水分の浸入が防止され、発電に寄与する非接合部の占める割合を増加させることがきる。
【0021】
前記閉空間には、乾燥空気または窒素ガスが封入されてもよい。
【0022】
このようにすることで、閉空間内部での結露の発生を抑制することができる。例えば、使用環境の温度変化があると、エレクトレット誘電体と電極との間の空隙部には、結露が発生する場合がある。結露が生じると、エレクトレット誘電体の表裏面の電位差低下を引き起こす懸念がある。しかし、外部から空隙部への水分の浸入を防止しても、このような結露を防止することはできない。これに対し、非接合部内部に乾燥空気または窒素ガスを封入することで、このような結露の発生を抑制することができる。
【0023】
前記エレクトレット誘電体と少なくとも一方の前記電極との対向面の内、少なくとも一方の面に、凸部と凹部とからなる凹凸形状を形成し、前記凸部によって前記スペーサを形成し、少なくとも一部の前記凸部を介して、前記エレクトレット誘電体と前記電極とを接合し、前記凹部を前記非接合部としてもよい。
【0024】
このようにすると、表面に形成されるエレクトレット誘電体または電極自体の凸部によってスペーサを形成することができるため、スペーサを構成する部材を別途用いる必要がない。したがって、部品点数を削減することができ、スペーサの形成、配置も容易である。また、スペーサがエレクトレット誘電体または電極と一体化しているため、スペーサの一方の面のみを対向する部材に接合すればよい。したがって、振動発電体を組み立てる際の作業工数が削減できる。また、エレクトレット誘電体と電極との接合に、例えば接着剤や粘着剤などを使用する場合には、それらの使用量が削減できる。更には、エレクトレット誘電体と電極との接合箇所を削減できるため、接合部の剥離等による損傷リスクを低減することができる。
【0025】
また、エレクトレット誘電体または電極の表面凹凸によってスペーサを構成するため、スペーサの高さ(厚み)を容易に調整することができる。例えば、スペーサをエレクトレット誘電体または電極の表面に塗布する接着剤や粘着剤自体の厚みによって形成する場合には、使用する接着剤や粘着剤の硬度や粘度などの細かな調整が必要となる。接着剤や粘着剤の硬度が低い場合には、エレクトレット誘電体と電極とを接着する際に、それらに付与される荷重によって接着剤や粘着剤が横方向に広がってしまう恐れがある。このため、スペーサの高さ(厚み)や幅を正確に調整することが困難である。
【0026】
また、例えば、スペーサがスクリーン印刷技術によってエレクトレット誘電体または電極の表面に印刷されるインクやペースト剤で形成される場合には、必要なスペーサの厚み分だけインクやペースト剤を表面に印刷する必要がある。しかし、一般的に、1回のスクリーン印刷で印刷可能なインクやペースト剤の厚さは、5μm〜20μmと言われている。したがって、100μm程度のスペーサをスクリーン印刷で形成するためには、複数回に分けて印刷する必要がある。このため、スペーサを形成するための工数が増大する。また、一度に100μm程度のスペーサを印刷することも可能ではあるが、特殊な印刷技術が必要となる。これに対し、エレクトレット誘電体または電極の表面に形成される凹凸高さは、任意に設定することができる。
【0030】
また、前記非接合部において、前記エレクトレット誘電体と前記電極との対向面の内、少なくとも一方の表面には、粗面化処理が施されていることが望ましい。
【0031】
このようにすることで、エレクトレット誘電体と電極とが接触する際に、双方の接触面積を小さくすることができる。接触面積を小さくすれば、エレクトレット誘電体と電極が接触と剥離とを繰り返した場合に、エレクトレット誘電体と電極との接触部で電荷が移動する現象を抑制することができる。したがって、エレクトレット誘電体と電極とが接触、剥離を繰り返す場合に対して、エレクトレット誘電体の帯電電荷量の変化、すなわちエレクトレット誘電体の表面電位の変化を抑制することができ、振動発電体の発電出力の安定化を図ることができる。
【0032】
また、少なくとも一方の前記電極は、導体層と、前記導体層の一方の面に配置される樹脂層とを具備し、前記導体層が前記エレクトレット誘電体と対向するように配置されることが望ましい。
【0033】
このように構成することで、導体層を薄くしても、樹脂層によって電極の剛性を適正にすることができる。したがって、電極の形状を保持することができ、電極が外力によって変形した場合にも、その剛性によって元の状態に戻すことができる。例えば、電極とエレクトレット誘電体との間に所定の隙間が形成された状態から、所定の外力(押圧)が付与されると、電極は、エレクトレット誘電体と接触するまで変形し、隙間は小さくなる。この状態から外力が消失すると、電極はもとの形状となるように再度変形し、もとの隙間に戻ることができる。したがって、電極を前述のように構成すれば、振動発電体へ付与する外力の変化に対して、エレクトレット誘電体と電極との距離変化(隙間の変化)を効果的に生じさせることができ、発電効率を高めることができる。
【0034】
少なくとも一方の前記電極の前記樹脂層は、基材層と粘着層を具備し、前記基材層が前記粘着層を介して前記導体層と接合され、前記粘着層と前記導体層とが剥離可能であることが望ましい。
【0035】
このように構成することで、振動発電体の電極の樹脂層を容易に剥離することができる。このため、必要な面積(領域)だけ導体層を容易に露出させることができる。したがって、露出させた導体層と外部回路(例えばリード線など)との接続作業を容易とすることができる。
【0036】
この場合、前記導体層と前記粘着層との接合力は、前記粘着層と前記基材層との接合力よりも弱く、かつ、前記導体層と前記エレクトレット誘電体との接合力よりも弱いことが望ましい。
【0037】
このように構成することで、樹脂層を電極の導体層から剥離させる際、導体層とエレクトレット誘電体との接合部で剥離を生じさせることがない。同様に、樹脂層を電極の導体層から剥離させる際、基材層と粘着層との接合部で剥離を生じさせることがない。このため、導体層から樹脂層を剥離させる作業性が優れる。また、導体層に損傷など(切れや皺などの発生)を与えることなく導体層から樹脂層を剥離させることができる。
【0038】
前記振動発電体が複数層に積層され、それぞれの前記振動発電体の電極同士が接続された積層構造を有する振動発電体としてもよい。
【0039】
また、前記振動発電体が互いに重なるように複数回折り曲げられてなる積層構造を有した振動発電体としてもよい。
【0040】
このような構成とすることで、限られた設置領域(面積)に対しても振動発電体の総面積を大きくすることができる。したがって、効率良く発電を行うことができる。
【0041】
前記振動発電体を複数配置し、それぞれの前記振動発電体の電極同士を接続してもよい。
【0042】
このような構成とすることで、振動発電体の設置領域(面積)に対して、振動発電体の製造しやすい大きさや、設置作業性を考慮して振動発電体を設置することができる。
第2の発明は、表面
と裏面との電位差が200V〜600Vに帯電処理され、電荷を保持したエレクトレット誘電体と、前記エレクトレット誘電体を挟み込むように配置される一対の電極と、を具備する振動発電体を用い、前記エレクトレット誘電体および前記電極は、いずれも可撓性を有し、前記エレクトレット誘電体と少なくとも一方の前記電極との間には、互いに接合されない非接合部が形成され、前記エレクトレット誘電体と少なくとも一方の前記電極との間には、部分的にスペーサが設けられ、少なくとも一部の前記スペーサを介して、前記エレクトレット誘電体と前記電極とが接合され、前記スペーサを介して接合される部位以外の部位が、前記非接合部となり、前記スペーサの厚みは30μm〜100μmであり、前記非接合部の少なくとも一部において、前記エレクトレット誘電体と前記電極との厚み方向の距離を変化させることが可能であり、前記電極の変形によって、前記エレクトレット誘電体と前記電極とが接触と剥離とを繰り返して発電することを特徴とする振動発電体による発電方法である。
【0043】
なお、本願において「エレクトレット誘電体」は帯電処理された状態のものを意味するが、説明の都合上、後で帯電処理される基材について「エレクトレット誘電体」という表現を用いることがある。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、様々な形態の設置場所へ適用することが可能であり、発電効率の高い振動発電体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0046】
<実施形態1>
以下、本発明の実施の形態にかかる振動発電体1について説明する。
図1(a)に示すように、振動発電体1は、主にエレクトレット誘電体3、電極5a、5b、スペーサ7等から構成される。
【0047】
エレクトレット誘電体3の両面には、エレクトレット誘電体3と対向するように、それぞれ電極5a、5bが配置される。また、エレクトレット誘電体3と電極5a、5bとの間にはスペーサ7が設けられる。スペーサ7は、エレクトレット誘電体3と電極5a、5bとの空隙6(ギャップ)を保持するためのものである。すなわち、エレクトレット誘電体3と電極5a、5bとは、スペーサ7を介して接合され、スペーサ7で接合されない部位(非接合部9)のエレクトレット誘電体3と電極5a、5bとの互いの間には、スペーサ7の厚さに応じた空隙6(ギャップ)が形成される。
【0048】
スペーサ7としては、例えば導電性、半導電性の材料を使用することも可能であるが、絶縁性の材料で構成されることが望ましい。また、全てのスペーサ7の内、少なくとも一部が、接着性あるいは粘着性部材で構成されることが望ましい。例えば、エレクトレット誘電体3と電極5a、5bとを接合して固定することができる程度に、部分的にスペーサ7を接着性部材等で構成し、他の部位には非接着性のスペーサ7を用いてもよい。なお、スペーサ7については詳細を後述する。
【0049】
本発明では、エレクトレット誘電体3と電極5a、5bとは、いずれも可撓性を有する。例えば、電極5a、5bは、変形が容易な金属箔等、例えば、アルミニウム製や銅製などの可撓性を有する金属箔や、導電性または半導電性の樹脂フィルムまたは樹脂シートで形成できる。導電性または半導電性の樹脂としては、例えば、ポリアセチレン系、ポリチオフィン系、ポリアニリン系、ポリピロール系の導電性高分子材料を使用することができる。また、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレートや、ポリイミド系、ポリアミド系、フッ素系といったプラスチック系の樹脂や、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素系ゴムといったゴム系の樹脂をベース樹脂として、それらベース樹脂に導電性粉末(例えば、カーボンブラックなど)を添加することによって導電性または半導電性を持たせた樹脂を使用することができる。しかし、導電性または半導電性の樹脂の電気抵抗は、一般的に金属の電気抵抗よりも大きいため、振動発電体1から発電出力を取り出す際の電気的な損失を考慮すると、電極5a、5bには金属材質を用いることが望ましい。エレクトレット誘電体3は、後述する樹脂等で構成される。したがって、振動発電体1は、全体として可撓性を有し、様々な形態の設置場所に適した変形が可能である。
【0050】
図2(a)に示すように、エレクトレット誘電体3の両面は、互いに逆の極性の電荷で帯電している。なお、エレクトレット誘電体3は、表裏面での表面電位差がある状態のものであればよい。従って、エレクトレット誘電体3の片面にのみ、いずれか一方の極性の電荷が帯電していても良く、あるいは、エレクトレット誘電体3の両面に、いずれか一方の極性の電荷が帯電していても良い。このようなエレクトレット誘電体3は、例えば絶縁性を有する樹脂シートや樹脂フィルム等の表面に、コロナ放電等によって帯電処理を施すことで形成することができる。
【0051】
すなわち、本発明におけるエレクトレット誘電体3は、絶縁性の部材に対して予め帯電処理が施されて形成されたものであり、振動発電体の完成直後からその両面において所定の表面電位差を有しているものを指す。したがって、振動発電体製造時のいずれの過程でも帯電処理が施されない絶縁性の部材に関しては、エレクトレット誘電体に含まれないものとする。
【0052】
ここで、エレクトレット誘電体3の帯電量(例えばエレクトレット誘電体3の表面と裏面との電位差V
0[V])が大きく、エレクトレット誘電体3の厚みd[m]が薄く、エレクトレット誘電体3の比誘電率ε
rが大きいほど、振動発電体1の発電力は大きくなる傾向がある。これは、真空中の誘電率をε
0(=8.854×10
−12F/m)とし、エレクトレット誘電体3の両表面に帯電する表面電荷密度をそれぞれ+σ[C/m
2]、−σ[C/m
2]とすると、表面の電荷密度は以下の式で表わされ、表面電荷密度σが大きいほど、振動発電体1の発電力が大きくなるためである。
【0054】
エレクトレット誘電体3の材質としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルなどの樹脂を用いることができる。また、使用条件に応じて、例えば高温特性に優れるポリイミド系の樹脂やフッ素系の樹脂(例えばフルオロエチレンプロピレンやポリテトラフルオロエチレン)などを用いることができる。また、ゴム材料として、例えばニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素系ゴムなどを用いることができる。
【0055】
また、エレクトレット誘電体3の表面と裏面との電位差V
0の適正値は、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3とのギャップ長(またはスペーサ7の厚み)に依存する。すなわち、電位差V
0は、当該ギャップでの空気放電による電位差低下が少なくなるように設定されることが望ましい。
【0056】
一般的に、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3との空隙6(ギャップ)における空気放電の発生は、ギャップ長とギャップ間の電位差で決まり、パッシェンの法則におよそ従う。したがって、外力が付与されない時、および外力が付与された時の電極5a、5bとエレクトレット誘電体3とのギャップ長の変化範囲に対して、ギャップ間の電位差を空気放電が発生しない値にするようにエレクトレット誘電体3の表面と裏面との電位差V
0を設定することが望ましい。例えば、外力を付与しない時のギャップ長(またはスペーサ7の厚み)が100μmであるとすると、外力を付与した時のギャップ長の変化範囲は0〜100μmとなる。そのギャップ長の変化範囲に対しては、エレクトレット誘電体3の表面と裏面との電位差V
0を600V程度以上に設定すると空気放電が発生する。一方、空気放電が発生した場合、放電発生後のエレクトレット誘電体3の表面と裏面との電位差V
0は略200〜600V程度となる。したがって、本発明において、ギャップ長が100μmの場合には、V
0が200〜600V程度となるように帯電処理を行うことが望ましい。
【0057】
なお、
図2(b)に示すように、多孔質材からなるエレクトレット誘電体3aを用いることもできる。内部に微細な空孔4が存在する多孔質材の両面に電圧を付与すると、空孔4内において容易にコロナ放電が生じる。このコロナ放電によって空孔壁面および空孔壁面近傍にも帯電したエレクトレット誘電体3aを容易に製造できる。なお、エレクトレット誘電体3aの空孔壁面および空孔壁面近傍の帯電状態は、
図2(b)に示すように、電圧印加方向(この場合にはエレクトレット誘電体3aの厚さ方向)に正電荷と負電荷に帯電した領域が形成される状態になっていると考えられる。また、エレクトレット誘電体3aの内部に空孔4が存在すると、エレクトレット誘電体3a全体として変形が容易となる。このため、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3aとのギャップ長だけでなく、エレクトレット誘電体3aの厚さもより小さな外力で容易に変化させることができる。したがって、電極5a、5b間の距離が変化しやすくなるとともに、その変化量も大きくなるため、双方の電極に静電誘導される電荷量も多くなり、発電効率が向上する。
【0058】
多孔質性のエレクトレット誘電体3aの材質としては、絶縁体であって、エレクトレット誘電体3と同様の材料を多孔質化した多孔質プラスチックまたは多孔質ゴムや、シート状繊維体を用いることができる。なお、多孔質プラスチックには、発泡プラスチックも含まれる。また、多孔質ゴムには、発泡ゴムも含まれる。シート状繊維体としては、不織布やフェルトを用いることができる。中でも不織布は空気清浄機やマスク等においてエレクトレットフィルターとして利用されており、良好なエレクトレットの特性を有する。なお、以下の説明では、空孔4のないエレクトレット誘電体3を用いた例について示す。
【0059】
図1(a)に示すように、スペーサ7以外の部位において、エレクトレット誘電体3と電極5a、5bとの間には非接合部9が形成され、空隙6(ギャップ)が存在する。非接合部9(空隙6)においては、エレクトレット誘電体3と電極5a、5bの少なくとも一方が変形することで、互いの距離(ギャップ長)が容易に変化する。例えば、電極5a、5bの変形によって、電極5a、5bを、エレクトレット誘電体3の表面と接触させることもできる。
【0060】
次に、振動発電体1の発電機構について説明する。
図3は
図1(a)のA部拡大図である。
図3(a)に示すように、例えば定常状態(外力が付与されていない状態。以下同様。)では、電極5bとエレクトレット誘電体3との間には、非接合部9(空隙6)においてスペーサ7の厚みに応じたギャップ長Bが形成される。この状態から、
図3(b)に示すように、外力Cが振動発電体1の厚さ方向に付与されると、電極5b(およびエレクトレット誘電体3)が変形する。この際、ギャップ長Bが短くなる方向へ変化し、電極5bとエレクトレット誘電体3とが接触部11で接触する。
【0061】
すなわち、接触部11に対応する位置においては、電極5bとエレクトレット誘電体3の厚さ方向の距離(ギャップ長B)が0になるまで変化できる。したがって、この距離変化に応じて、電極5a、5bにそれぞれ電荷が静電誘導されて発電する。なお、
図3(b)の状態から
図3(a)の状態に戻る際にも、同様に距離変化に応じた静電誘導による発電が行われる。なお、詳細は後述するが、電極5bとエレクトレット誘電体3との距離変化に伴う発電出力電圧は、電極5bとエレクトレット誘電体3とが変形によって接触する直前および剥離した直後に最も高くなる。
【0062】
このように、
図1(a)の振動発電体1では、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3とを相対的に厚さ方向に変形させて、そのギャップ長Bを変化させることで効率よく発電を行うことができる。なお、
図1(a)の振動発電体1の全体で効率良く発電を行うためには、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3との距離変化の方向(減少する方向あるいは増加する方向)とタイミング(位相)を振動発電体1の各部で一致させることが望ましい。例えば、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3とが接触および剥離を繰り返す場合には、この接触および剥離のタイミングを振動発電体1の各部で一致させることが望ましい。
【0063】
ここで、スペーサ7の材質にもよるが、外力による非接合部9(空隙6)のギャップ長の変化と比較して、スペーサ7を設けた部位では、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3との距離の変化が小さいため、発電には寄与しにくい。したがって、スペーサ7は、できるだけ小さくし、かつ振動発電体1に占めるスペーサ7の総面積をできるだけ小さくすることが望ましい。また、非接合部9(空隙6)においてギャップ長Bを保持することができる程度に、間隔をできるだけあけてスペーサ7を配置することが望ましい。また、前述のように、エレクトレット誘電体3の表裏で電極5a、5bとエレクトレット誘電体3との距離変化の方向とタイミングを一致させるために、エレクトレット誘電体3の表裏におけるスペーサ7の平面配置を一致させることが望ましい。
【0064】
なお、スペーサ7は、エレクトレット誘電体3の表面において、例えば、ドット状、ストライプ状、格子状、網目状などの形状(形態)にて、所定の間隔をあけて配置される。スペーサ7がドット状の場合には、スペーサ7の平面視における形状は、円形、楕円形、正方形、長方形など任意の形状で形成すればよい。この際、各スペーサの振動発電体1に占める面積をできるだけ小さくし、非接合部9(空隙6)が占める面積をできるだけ大きくすることが望ましい。
【0065】
また、スペーサ7が網目状の場合としては、例えば、
図4(a)(
図1(a)のO−O線断面図)に示すように、スペーサ7の平面方向の断面において、非接合部9(空隙6)が略円形となるように、スペーサ7を形成してもよい。図示した例では、複数の円形の非接合部9(空隙6)が繰返し規則的に配列される。スペーサ7に設けられた円形の空孔(スペーサ7の厚みを考慮すると円柱状の穴)の部分では、エレクトレット誘電体3と電極5b(5a)とが接合されず、密封された閉空間となる。このように、スペーサ7に非接合部9(空隙6)となる空孔を設けることにより、振動発電体1の周囲端部近傍に配置される一部の非接合部9(空隙6)を除いては、非接合部9(空隙6)がスペーサ7、エレクトレット誘電体3および電極5b(5a)とで囲まれて密封される。このため、振動発電体1の外部から非接合部9(空隙6)への水分の浸入を防止することができる。
【0066】
なお、振動発電体1の周端部近傍に配置される非接合部9(空隙6)の一部は、外部と連通して密封されない。このため、振動発電体1の外部から周端部近傍に配置される非接合部9(空隙6)への水分の浸入が生じる。しかし、外部と連通する非接合部9の占める割合は全体に対して小さいため、振動発電体1の全体としては、非接合部9(空隙6)への防湿、防水を実現することができる。
【0067】
また、非接合部9(空隙6)の平面方向の断面形状(
図1(a)のO−O線断面)としては、
図4(b)に示すように、長穴形状とすることもできる。図示した例では、複数の長穴形の非接合部9(空隙6)が繰返し規則的に配列される。この場合でも、スペーサ7に設けられた長円形の空孔の部分では、エレクトレット誘電体3と電極5b(5a)とが接合されず、閉空間である非接合部9(空隙6)が形成される。このため、振動発電体1の外部から非接合部9(空隙6)への水分の浸入を防止することができる。
【0068】
また、非接合部9(空隙6)の平面方向の断面形状としては、
図5(a)に示すように、楕円形状とすることもできる。図示した例では、複数の楕円形状の非接合部9(空隙6)が繰返し規則的に配列される。この場合でも、スペーサ7に設けられた楕円形状の空孔の部分では、エレクトレット誘電体3と電極5b(5a)とが接合されず、閉空間である非接合部9(空隙6)が形成される。このため、振動発電体1の外部から非接合部9(空隙6)への水分の浸入を防止することができる。
【0069】
また、非接合部9(空隙6)の平面方向の断面形状としては、
図5(b)に示すように、矩形とすることもできる。図示した例では、複数の矩形の非接合部9(空隙6)が繰返し規則的に格子状に配列される。この場合でも、スペーサ7に設けられた矩形の空孔の部分では、エレクトレット誘電体3と電極5b(5a)とが接合されず、閉空間である非接合部9(空隙6)が形成される。このため、振動発電体1の外部から非接合部9(空隙6)への水分の浸入を防止することができる。
【0070】
また、非接合部9(空隙6)の平面方向の断面形状としては、
図6に示すように、六角形とすることもできる。図示した例では、複数の六角形の非接合部9(空隙6)が繰返し規則的に配列される。この場合でも、スペーサ7に設けられた六角形の空孔の部分では、エレクトレット誘電体3と電極5b(5a)とが接合されず、閉空間である非接合部9(空隙6)が形成される。このため、振動発電体1の外部から非接合部9(空隙6)への水分の浸入を防止することができる。
【0071】
このように、非接合部9(空隙6)の形状や配置パターンは適宜選択することができる。非接合部9(空隙6)の形状は、使用環境に対して非接合部9(空隙6)へ要求される防水、防湿性能や、想定される外力、振動に対するエレクトレット誘電体3と電極5b(5a)との間の距離変化等を考慮して決定することができる。
【0072】
なお、このように非接合部9(空隙6)を密封するためのスペーサ7は、接着剤または粘着剤で構成することができる。具体的には、互いに対向するエレクトレット誘電体3および電極5b(5a)のうちいずれか一方の表面に、スペーサ7として接着剤や粘着剤を所定のパターン(例えば、
図4〜
図6の形態)で塗布し、エレクトレット誘電体3と電極5b(5a)とを貼り合せることでスペーサ7を構成することができる。また、互いに対向するエレクトレット誘電体3および電極5b(5a)のうちいずれか一方の表面に、スクリーン印刷技術を用いてスペーサ7として接着剤や粘着剤を所定のパターン(例えば、
図4〜
図6の形態)に印刷してもよい。また、スペーサ7は、両面粘着テープで形成してもよい。具体的には、あらかじめ両面粘着テープを所定のパターンで打ち抜いて非接合部9(空隙6)となる部分を形成した後、その粘着テープを用いてエレクトレット誘電体3と電極5b(5a)とを貼り合せればよい。なお、使用するスペーサ7の材質としては、防水性、防湿性の高いものが望ましい。
【0073】
また、通常、非接合部9(空隙6)は空気で満たされている。空気中には水蒸気として水分が含まれており、温度低下によって、空気中の水分が液化して結露する場合がある。このように、空隙6内で結露が生じてエレクトレット誘電体3の表面に水(液体)が付着すると、エレクトレット誘電体3の表裏面の電位差が著しく低下する懸念がある。そのため、非接合部9(空隙6)には、水分量が極めて低いか全く含まれない気体(例えば、乾燥空気や窒素ガス)で満たし、封入することで、非接合部9(空隙6)内の結露を防止することができる。
【0074】
なお、振動発電体1が外力により変形し、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3とが接触および剥離を繰り返す際に、例えば前述したように電極5a、5bとエレクトレット誘電体3との間で、空気放電が生じる恐れがある。このような空気放電が生じると、エレクトレット誘電体3の表面と裏面との電位差V
0が低下することが考えられる。また、空気放電が生じない場合でも、後述するようにエレクトレット誘電体3と電極5a、5bとが接触と剥離を繰り返す際に、双方の表面同士が接触する部分において電荷の出入り(移動)が生じる恐れがある。このような電荷の移動によっても、エレクトレット誘電体3の表面と裏面との電位差V
0が低下することが考えられる。これらの現象を考慮すると、振動発電体1は、使用するにつれて発電が行われなくなる懸念がある。しかし、発明者らは、実験を行った結果、このような接触と剥離とが繰り返されても、“エレクトレット誘電体3の表面と裏面との電位差V
0が低下することによって、直ちに発電が行われなくなる現象”は生じないことを見出した。したがって、本発明においては、外力によって、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3とが接触および剥離を繰り返すように変形させることが望ましい。
【0075】
ここで、本発明では、非接合部9(空隙6)におけるエレクトレット誘電体3と電極5a、5bの対向面の少なくとも一方に、粗面化処理を施すこともできる。粗面化処理を行う方法は特に限定されない。例えば、サンドペーパー(例えば600番程度)で表面粗さを増しても良く、エッチングによる表面処理や、表面粗さを有する型による表面プレス加工を施しても良い。なお、粗面化処理により得られる表面粗さは、特に限定されない。
【0076】
このように、非接合部9(空隙6)におけるエレクトレット誘電体3と電極5a、5bの対向面の少なくとも一方に粗面化処理を施すことによって、エレクトレット誘電体3と電極5a、5bとが接触した際のミクロ的な接触面積を小さくすることができる。このように双方のミクロ的な接触面積を小さくすることによって、双方の表面間での電荷の出入り(移動)を抑制することができる。したがって、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3とが接触および剥離を繰り返す際にも、エレクトレット誘電体3の帯電電荷量の変化、すなわちエレクトレット誘電体3の表面電位の変化を抑制することができ、振動発電体1の発電出力の安定化を図ることができる。
【0077】
また、本発明では、
図1(b)に示すように、一方の電極5bとエレクトレット誘電体3との間にのみスペーサ7が設けられた振動発電体1aを用いることもできる。振動発電体1aは、振動発電体1と略同様の構成であるが、電極5aはスペーサ7を介さずに直接エレクトレット誘電体3に全面にわたって接合される。この場合でも、他方の電極5bとエレクトレット誘電体3との間にスペーサ7によって空隙6(ギャップ)が形成される。したがって、振動発電体1と同様の機構によって発電を行うことができる。なお、この場合にも、前述した理由によりエレクトレット誘電体3の表面と裏面との電位差V
0は、200〜600V程度とすることが望ましい。
【0078】
電極5aとエレクトレット誘電体3とは、例えば熱融着や接着で接合される。但し、接着剤や粘着剤を用いる場合には、接着剤層や粘着剤層をできるだけ薄くすることが望ましい。例えば、電極5a、5b間の距離やエレクトレット誘電体3の厚さに対し、十分薄くすることが望ましい。
【0079】
図1(a)の振動発電体1は、電極5a、5bのそれぞれとエレクトレット誘電体3との双方の距離変化で発電を行う。このため、電極5a、5bのそれぞれとエレクトレット誘電体3との双方の距離変化の方向とタイミング(位相)が一致しないと、電極5a、5b間に生じる発電出力電圧が互いに打ち消しあう恐れがある。このため、
図1(a)の振動発電体1においては、電極5a、5bのそれぞれとエレクトレット誘電体3との双方の距離変化の方向とタイミング(位相)を一致させる必要がある。
【0080】
これに対し、
図1(b)の振動発電体1aでは、一方の電極5aがエレクトレット誘電体3と全面にわたって接合されている。このため、他方の電極5bとエレクトレット誘電体3との距離変化のみによって発電が行われる。したがって、
図1(a)の振動発電体1のように、電極5a、5bのそれぞれとエレクトレット誘電体3との双方の距離変化の方向とタイミング(位相)を一致させる必要がない。
また、
図1(b)の振動発電体1aでは、スペーサ7の厚み分だけ、全厚を薄くすることができる。このように、構造を簡易にできることによるコスト減や、薄肉化が可能である点などを考慮すれば、発電量は若干下がるものの、振動発電体1aを用いる利点もある。
【0081】
以上、本実施の形態の振動発電体は、電極5a、5b、エレクトレット誘電体3がいずれも可撓性を有する材質で構成されるため、設置部の形態に応じて、自由に折り曲げて設置することができる。また、電極5a、5bおよびエレクトレット誘電体3が主にシート状の部材で構成されているため、大きな面積の設置場所にも適用が容易である。したがって、設置場所に対する自由度が大きい。また、ハサミやナイフなどの切断工具を用いて振動発電体1、1aを容易に任意の形状に切断して利用することもできる。
【0082】
また、スペーサ7によって、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3との間に、所定のギャップ長を保持することができる。このため、外力による電極5a、5bとエレクトレット誘電体3の変形代(電極5a、5bとエレクトレット誘電体3との距離が変化するような厚み方向の変形代)を確保することができる。また、スペーサ7の厚みを適正化することで、外力に対して電極5a、5bとエレクトレット誘電体3との接触および剥離を繰り返させることもできる。このため、高い発電力を得ることができる。この際、ギャップ長を保持するスペーサ7の厚みを30μm〜100μmとすることで、より効率よく発電を行うことができる。
【0083】
また、スペーサ7によって、非接合部9(空隙6)を閉空間として密封することで、非接合部9(空隙6)に水分が浸入することを防止することができる。特に、振動発電体1、1aを任意の位置で切断した際にも、切断後の端部周囲をシール加工することなく、内部の非接合部9(空隙6)への水分の浸入を防止することがきる。
【0084】
また、閉空間として密封された非接合部9(空隙6)に乾燥空気または窒素ガスを封入することで、温度変化に対する非接合部9(空隙6)内での結露の発生を抑制することができる。
【0085】
<実施形態2>
次に、他の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、振動発電体1と同様の機能を奏する構成については
図1等と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0086】
図7(a)に示す振動発電体20は、振動発電体1と略同様の構成であるが、スペーサ7が用いられない点で異なる。
図7(b)(
図7(a)のD部拡大図)に示すように、電極5bは部分的にエレクトレット誘電体3と接合部21で直接接合される。例えば、接合部21では、溶着などによって電極5bとエレクトレット誘電体3とが直接接合される。なお、接合部21の平面上での配置は、前述したスペーサ7と同様にすればよい。すなわち、接合部21を
図4〜
図6に示すように所望の形状とすることで、非接合部9(空隙6)を密封することもできる。
【0087】
図7(b)に示すように、接合部21以外の部位は、非接合部9(空隙6)となる。非接合部9では、電極5bとエレクトレット誘電体3との間に、微小な空隙6が形成される。なお、非接合部9において、電極5bとエレクトレット誘電体3とが部分的に接触していても良い。
【0088】
図7(b)のE部拡大図を
図8に示すが、電極5b又はエレクトレット誘電体3に厚み方向の外力Fが付与されると、非接合部9(空隙6)での電極5bとエレクトレット誘電体3との境界部における互いの形状が、
図8(a)、
図8(b)に示すように変化する。したがって、部分的に電極5bとエレクトレット誘電体3との距離が変化する。したがって、この変化に応じて電極5a、5bの双方に電荷が静電誘導され、発電を行うことができる。
【0089】
なお、本実施形態においても、一方の電極5bとエレクトレット誘電体3との間にのみ非接合部9(空隙6)を形成し、他方の電極5aとエレクトレット誘電体3とは全面にわたって接合しても良く、あるいは電極5a、5bの両方とエレクトレット誘電体3との間に非接合部9(空隙6)を形成しても良い。このように、外力によって電極5a、5bの少なくとも一方とエレクトレット誘電体3との厚み方向の距離を変化させることができれば、発電を行うことができる。この際、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3とが接触および剥離を繰り返すことができれば、効率よく発電を行うことができる。
【0090】
なお、
図1に示した振動発電体1、1aにおいて、スペーサ7を用いたとしても、非接合部9(空隙6)のギャップ長を一定に保つことができない場合もある。したがって、非接合部9において、外力が付与されない状態でも電極5a、5bとエレクトレット誘電体3とが部分的に接触している場合もある。しかし、前述の通り、外力によって、電極5a、5bとエレクトレット誘電体3との厚み方向の距離が部分的にでも変化可能であれば、発電を行うことができる。
【0091】
このように、振動発電体20を用いても、振動発電体1等と同様の原理で発電することができる。また、スペーサ7が用いられないため、構造が簡易である。
【0092】
<実施形態3>
次に、さらに他の実施の形態について説明する。
図9(a)に示す振動発電体30は、振動発電体1と略同様の構成であるが、電極5a、5bに代えて、電極31a、31bが用いられる点で異なる。電極31a、31bは、導体層33と樹脂層35とが積層された二層構造を有する。それぞれの導体層33がエレクトレット誘電体3と対向するように配置される。
【0093】
このような電極31a、31bは、樹脂シートと金属箔とを接着剤や熱溶着等によって接合したものであってもよく、樹脂シートの表面に金属蒸着や金属めっきを施したものであってもよい。いずれにせよ、シート(フィルム)状の樹脂の上に導体層を形成すればよい。なお、導体としては、アルミニウム、錫、銅あるいはこれらの合金など適宜選択することができる。また、前述した電極5a、5bと同様に、導電性または半導電性の樹脂を用いることもできる。
【0094】
なお、樹脂層35に用いる樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルなどの樹脂を用いることができる。また、使用条件に応じて、例えば高温特性に優れるポリイミド系の樹脂やフッ素系の樹脂(例えばフルオロエチレンプロピレンやポリテトラフルオロエチレン)を用いることができる。また、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素系ゴムなどのゴム材料を用いることもできる。
【0095】
二層構造の電極31a、31bは、振動発電体30の周囲との電気絶縁を確保し、防水性や防湿性を向上させることができる点で望ましい。また、電極31a、31bにおいては、さらに、外力の変化等に対する電極の機械的変形の追従性を向上させることができる点で望ましい。例えば、薄い導体のみでは、外力によって電極が変形した後、外力が除荷された際に電極が元の形状へ戻ろうとする復元力が小さい。しかし、導体のみで剛性を高めようとすると、導体部の厚みを厚くする必要があるため重量増の問題がある。また、これにより、電極の動きが鈍くなる恐れがある。
【0096】
これに対し、本実施形態では、樹脂層35を設けることで、重量増による問題を抑制するとともに、外力の変化に対する電極31a、31bの追従性、すなわち剛性を高めることができる。なお、本実施形態でも、
図9(b)に示す振動発電体30aのように、一方の電極31aを、スペーサ7を用いずに直接エレクトレット誘電体3に全面にわたって接合してもよい。また、
図7に示した振動発電体20のように、スペーサ7を用いなくてもよい。また、スペーサ7(接合部21)を
図4〜
図6に示すように所望の形状とすることで、非接合部9(空隙6)を密封してもよい。
【0097】
<実施形態4>
図9に示した前記実施形態の振動発電体30、30aは、電力を取り出すためのリード線を電極31a、31bのそれぞれの導体層33へ電気的に接続するための処理作業として、導体層33の一部に露出部を形成する作業が難しいという解決すべき課題があった。
図10(a)に示す振動発電体30bは、この課題を解決するものである。この振動発電体30bは、振動発電体30aと略同様の構成であるが、電極32a、32bの樹脂層35が、基材層36と粘着層34とで積層されて構成される。すなわち、基材層36が粘着層34を介して導体層33と接合される。電極32a、32bは、例えば変形が容易な導体層33と、基材層36の片面に粘着剤を塗布して粘着層34を設けて構成される樹脂層35とを貼り合せることで構成される。
【0098】
なお、基材層36を形成する材料には、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系の樹脂や、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系の樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル樹脂、ポリイミド系の樹脂(例えばカプトン(登録商標))、ポリアミド系の樹脂(例えばナイロン6やナイロン66(登録商標))、フッ素系の樹脂(例えばフルオロエチレンプロピレンやポリテトラフルオロエチレン)などのプラスチック系の樹脂を用いることができる。また、例えばニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素系ゴムなどのゴム系の樹脂を用いることができる。また、粘着層34の材質としては、例えばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ウレタン系などの粘着剤を用いることができる。
【0099】
このような樹脂層35としては、例えば携帯機器の表示パネルの表面や、加工部品などの表面をキズなどから保護するための表面保護フィルムを用いることができる。表面保護フィルムは、例えばポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系の樹脂や、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系の樹脂、ポリメチルメタクリレートなどのアクリル樹脂、ポリ塩化ビニルなどのビニル樹脂のフィルムまたはシートを基材として、その片面に粘着剤層を設けた構造を有する。このような表面保護フィルムには、表面保護対象物(被着体)を使用している間は剥離しにくく、表面保護フィルムを表面保護対象物から剥離させる際には、剥離が容易であるという特性(機能)がある。また、表面保護フィルムを表面保護対象物から剥離させる際には、表面保護対象物の表面に粘着剤が残留せず、また表面保護対象物の表面状態を変化させないという特性(機能)がある。したがって、上記のような表面保護フィルムを樹脂層35として用いることは好適である。
【0100】
本実施形態4の振動発電体30bでは、電極32a、32bにおいて、導体層33から剥離可能な粘着層34を有する樹脂層35を設けたので、
図10(b)に示すように、導体層33から、樹脂層35(粘着層34含む)を剥離することができる(図中矢印P)。
【0101】
この際、導体層33表面へ粘着層34の一部が残ることを防止するためには、導体層33と粘着層34との接合力よりも、基材層36と粘着層34との接合力を大きくすることが望ましい。また、樹脂層35の剥離の際、導体層33の損傷を防止するためには、導体層33とエレクトレット誘電体3またはスペーサ7との接合力よりも、導体層33と粘着層34との接合力を小さくすることが望ましい。
【0102】
このような構成とすることで、樹脂層35を剥離させていく際、粘着層34の一部が導体層33の表面に残ることを防止することができるとともに、スムースに樹脂層35を導体層33の表面から剥離させることができる。
仮に、粘着層34(樹脂層35)と導体層33とを剥離させることよりも、導体層33とエレクトレット誘電体3またはスペーサ7とを剥離させることの方が容易であった場合には、樹脂層35と導体層33とを剥離させようとしたとき、導体層33とエレクトレット誘電体3またはスペーサ7とが先に剥離してしまう。すなわち、樹脂層35と導体層33とが一体となって剥離してしまう問題がある。このように一体となって剥離した樹脂層35と導体層33からさらに導体層33を健全な状態で剥離することは、導体層33が薄く、切れやすいため、困難である。
本実施形態4の振動発電体30bのように、粘着層34と導体層33との接合力に対して、導体層33とエレクトレット誘電体3またはスペーサ7との接合力を大きくすることによって、導体層33をエレクトレット誘電体3またはスペーサ7に接合させた状態で、樹脂層35を導体層33の表面から良好に剥離させることができる。
【0103】
また、仮に、粘着層34と基材層36の接合力よりも、導体層33と粘着層34との接合力が大きい場合には、樹脂層35と導体層33とを剥離させようとしたときに、粘着層34が導体層33の表面に残ってしまう問題が生じる。このように導体層33の表面に残った粘着層34を剥離し取り除く作業は手間であり、導体層33を損傷する恐れもある。
本実施形態の振動発電体30bでは、基材層36と粘着層34との接合力を、導体層33と粘着層34との接合力よりも大きくしてあるので、基材層36と粘着層34とが一体となった状態で、樹脂層35を導体層33の表面から剥離できる。
なお、粘着層34と導体層33との接合力は、少なくとも、振動発電体30bに付与される外力、振動に対しては剥離が生じない程度にしておく必要がある。
【0104】
図10(b)に示すように、電極32a、32bのぞれぞれの樹脂層35を剥離させ、不要となった樹脂層35の部分を、例えば切断工具(ハサミやナイフなど)を用いて切除してもよい。そのようにすると、
図11に示すように、必要な領域(面積)だけ導体層33の表面を露出させることができる。
図11に示すように、電極32a、32bのそれぞれ露出させた導体層33の表面には、外部回路と電気的に接続されるリード線39を、例えばハンダ37によって接続する。リード線39と導体層33との接続方法としては、ハンダ付けの他に例えば導電性ペーストを用いることにより接続することができる。なお、リード線39と導体層33との接続方法は、上記の方法に限定されるものではない。
【0105】
また、導体層33とリード線39とのハンダ付けを容易とするために、導体層33として金属箔を用い、金属箔の少なくとも一方のハンダ付けを行う面に金属メッキ処理を施してもよい。例えば、導体層33としてアルミニウム箔を用い、ハンダ付けを行う面に錫メッキ処理を施してもよい。そうすることで、リード線39と導体層33とを容易にハンダ付けすることができる。
【0106】
また、図示は省略するが、リード線39と導体層33とを接続した後に、それらの接続部および導体層33の露出部を保護し、補強するための保護層を設けても良い。例えば、上記の接続部および導体層33の露出部を覆うようにエポキシ系の接着剤やゴム系の接着剤などを塗布し、電気的な絶縁を確保するとともに、外傷などに対する保護や機械的な補強、および防湿、防水処理をすることができる。なお、上記の保護層を設ける方法は特に限定されるものではない。
【0107】
このように、振動発電体30bによれば、樹脂層35を導体層33から容易に剥ぎ取ることができる。このため、電極32a、32bの必要な面積(領域)の導体層33の表面を容易に露出させることができる。このため、振動発電体30bの導体層33と外部回路との電気的な接続を図るための導体層33の露出作業を容易とすることができる。また、樹脂層35を導体層33から剥離させる際、樹脂層35における粘着層34の一部が導体層33の表面に残ることがない。また、樹脂層35を導体層33から剥離させる際、導体層33とエレクトレット誘電体3またはスペーサ7との接合部で剥離を生じさせることがない。このため、樹脂層35を導体層33から剥離させる作業がしやすいとともに、導体層33に損傷など(切れや皺などの発生)を与えることなく良好に剥離させることができる。
【0108】
なお、振動発電体30bは、
図9(b)に示した振動発電体30aの両方の電極31a、31bに対して、粘着層34を設けた例であるが、粘着層34をいずれか一方の電極のみに設けてもよい。また、
図9(a)に示した振動発電体30に対して適用することもできる。また、以下の実施形態においては、粘着層34を有さない電極31a、31bを適用した例を示すが、電極31a、31bに代えて、電極32a、32bを適用することができることは言うまでもない。
【0109】
<実施形態5>
図12(a)に示す振動発電体10は、振動発電体30と略同様の構成であるが、スペーサ7が、エレクトレット誘電体3の表面に形成された凸部12で形成される点で異なる。電極31a、31bのそれぞれと対向するエレクトレット誘電体3の両面には、凸部12と凹部13とが繰り返される凹凸形状が形成される。少なくとも一部の凸部12は、電極31a、31bと接合される。したがって、凸部12がスペーサ7となり、凹部13の位置が、非接合部9となる。
【0110】
振動発電体10は、凸部12の高さ(凹部13と凸部12との高低差)が、スペーサ7の厚みに相当する。なお、凸部12および凹部13の高低差、大きさ、配置、形状などは前述したスペーサ7と同様に設計される。すなわち、凸部12を
図4〜
図6に示すように所望の形状とすることで、凹部13(非接合部9)を密封することもできる。なお、以下の他の実施形態でも同様である。
【0111】
エレクトレット誘電体3の表面に凹凸形状を形成する方法は、特に限定されるものではない。例えば、エレクトレット誘電体3の基材表面を切削する方法により形成しても良く、表面のエッチング処理により形成しても良い。また、凹凸パターンを有する型によるプレス加工やエンボス加工等により凹凸形状を形成してもよい。
【0112】
このように、エレクトレット誘電体3の表面に凹凸形状を設けることで、別途スペーサ7を形成するための部材が不要となる。したがって、部品点数を削減することができ、スペーサの形成や配置も容易となる。また、エレクトレット誘電体3と凸部12(スペーサ7)とが一体化しているため、凸部12(スペーサ7)と対向する電極31a、31bの面とを接合すればよい。このため、接合箇所の低減によって、接合作業工数を削減することができるとともに、接合部の剥離等による損傷リスクを低減することができる。また、凸部12と凹部13の高低差によって、スペーサ厚みが設定されるため、その調整が容易である。
【0113】
なお、
図12(b)に示す振動発電体10aのように、エレクトレット誘電体3の一方の面にのみ凹凸形状を形成することもできる。この振動発電体10aでは、エレクトレット誘電体3の電極31bとの対向面に、凸部12および凹部13が形成されている。すなわち、振動発電体10aは、振動発電体30aのスペーサ7を凸部12で形成したものである。振動発電体10aのエレクトレット誘電体3の他方の面は平面であり、その全面が電極31aと接合されている。振動発電体10aにおいても、エレクトレット誘電体3の表面に凹凸形状を設けることによって、振動発電体10と同様の効果を得ることができる。
【0114】
また、
図13(a)に示す振動発電体10bのように、電極31a、31bの導体層33の表面に凹凸形状を形成してもよい。この振動発電体10bでは、エレクトレット誘電体3と対向する電極31a、31bの導体層33の表面に、凸部12と凹部13が形成される。少なくとも一部の凸部12はエレクトレット誘電体3に接合される。なお、凸部12と凹部13の形成方法等は、振動発電体10と同様である。振動発電体10bにおいても、電極31a、31bの導体層33の表面に凹凸形状を設けることによって、振動発電体10と同様の効果を得ることができる。
【0115】
また、
図13(b)に示す振動発電体10cのように、電極31bの導体層33の表面にのみ凹凸形状を形成してもよい。振動発電体10cでは、電極31bのエレクトレット誘電体3と対向する電極31bの導体層33の表面にのみ、凸部12と凹部13が形成され、少なくとも一部の凸部12はエレクトレット誘電体3と接合される。すなわち、振動発電体10cは、振動発電体30aのスペーサ7を凸部12で形成したものである。一方、振動発電体10cにおける電極31aの導体層33の表面は平面であり、その全面がエレクトレット誘電体3と接合される。なお、凸部12と凹部13の形成方法等は、振動発電体10と同様である。振動発電体10cにおいても、電極31bの導体層33の表面に凹凸形状を設けることによって、振動発電体10と同様の効果を得ることができる。
【0116】
<実施形態6>
次に、さらに他の実施の形態について説明する。なお、以下の例では、
図9(a)の振動発電体30を用いる例を示すが、他の振動発電体を用いてもよい。また、以下の図においては、スペーサ7の図示を省略する。
図14(a)は、振動発電体30が、設置部15と弾性部材17とで挟まれて設置された状態を示す図である。
【0117】
シート状の弾性部材17は、振動発電体30と略全面にわたって接合されている。弾性部材17と振動発電体30との接合方法としては、接着接合、粘着接合、吸着接合などを利用することができるが、特に限定されるものではない。弾性部材17は、外力によって変形を受ける際に、体積が変化せずに形状が変化(等積変化)する性質の材料を使用することが望ましく、ゴム材料が望ましい。ゴム材料は特に限定されないが、例えば、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、クロロプレンゴム、シリコーンゴム、フッ素系ゴム、天然ゴムなどを用いることができる。
【0118】
このように弾性部材17を用いることで、例えば弾性部材17側から押圧の外力が付与された際に、弾性部材17の変形によって、振動発電体30における非接合部9(空隙6)の変形が助長され、エレクトレット誘電体3と電極31a、31bとが接触する方向(ギャップ長が短くなる方向)の変形が起こりやすくなる。また、押圧の外力が解放された(取り除かれた)際には、弾性部材17が元の形状に戻ろうとする復元力が作用する。このため、弾性部材17と接合された振動発電体30の電極31bにも、電極31bが元の形状に戻る方向に弾性部材17による復元力が作用する。したがって、エレクトレット誘電体3と電極31a、31bが剥離する方向(ギャップ長が長くなる方向)の変形が助長され、元(定常状態)の振動発電体の形状へ戻る変形が起こりやすくなる。すなわち、弾性部材17を用いることで、外力に対する振動発電体30での非接合部9(空隙6)のギャップ長の変化を助長、促進させ、振動発電体30の発電効率を向上させることができる。また、振動発電体30が局所的に外力を受けた際に、弾性部材17の存在によって振動発電体30に加わる衝撃を緩和し、振動発電体30の破損等を抑制することができる。
【0119】
なお、
図14(b)に示すように、振動発電体30と設置部15との間にも弾性部材17を配置し、振動発電体30と弾性部材17とを略全面にわたって接合させても良い。すなわち、振動発電体30を一対の弾性部材17によって挟み込んでも良い。このようにしても、上述した効果を得ることができる。
【0120】
<実施形態7>
次に、さらに他の実施の形態について説明する。
図15(a)は、振動発電体30の一方の面にシート状の弾性部材17が略全面にわたって接合され、さらに、一対の剛性板19で挟まれた状態を示す図である。
【0121】
このように剛性板19を用いることで、例えば剛性板19に部分的に押圧の外力が付与された際に、弾性部材17および振動発電体30の全面に略均一に押圧力を加えることができる。したがって、押圧部に対して、広範囲(面積)にわたって弾性部材17及び振動発電体30を変形させることができる。すなわち、広範囲にわたって弾性部材17の変形が生じることにより、振動発電体30での非接合部9(空隙6)の変形が助長され、エレクトレット誘電体3と電極31a、31bとが接触する方向(ギャップ長が短くなる方向)の変形が起こりやすくなる。また、押圧の外力が解放された(取り除かれた)際には、弾性部材17が元の形状に戻ろうとする復元力が作用する。このため、弾性部材17と接合された振動発電体30の電極31bにも、電極31bが元の形状に戻る方向に弾性部材17による復元力が作用する。したがって、エレクトレット誘電体3と電極31a、31bとが剥離する方向(ギャップ長が長くなる方向)の変形が助長され、元(定常状態)の振動発電体30の形状へ戻る変形が起こりやすくなる。すなわち、剛性板19と弾性部材17を用いることで、外力が付与される面積に対して、より広い面積にわたって振動発電体30における非接合部9(空隙6)のギャップ長の変化を助長、促進させ、振動発電体30の発電効率を向上させることができる。
【0122】
なお、
図15(b)に示すように、振動発電体30の両面に一対の弾性部材17を略全面にわたって接合し、さらに一対の剛性板19によって挟み込んでも良い。このようにしても、上述した効果を得ることができる。
【0123】
<実施形態8>
次に、前述した振動発電体を用いた積層構造について説明する。
【0124】
図16に示すように、複数の振動発電体30を積層することで、積層構造40を構成することができる。積層構造40では、厚み方向の外力(押圧)に対し、正電荷が誘起される電極同士が接続され、負電荷が誘起される電極同士が接続される。なお、このような構造を、「並列接続した積層構造」とする。
【0125】
ここで、電極31a、31bとエレクトレット誘電体3との距離が小さくなる方向に変形が進むと、エレクトレット誘電体3の表面に帯電する電荷の極性とは逆の極性の電荷が、電極31a、31bに誘起される。すなわち、エレクトレット誘電体3の正電荷が帯電する側に対向する電極31bには負電荷が誘起され、負電荷が帯電する側に対向する電極31aには正電荷が誘起される。したがって、振動発電体の電極31a、31bの間に外部負荷回路を電気的に接続して振動発電体を電源として用いたとき、電極31b側が陽極(正極)となり、電極31a側が陰極(負極)となる。なお、電極31a、31bとエレクトレット誘電体3との距離が大きくなる方向に変形が進む場合には、上述とは逆の極性となる。
【0126】
したがって、振動発電体30が、外力が付与されることによる変形と、外力が除去されて元の状態に戻る変形とを繰り返すことで、発電出力は、正極および負極の電圧が交互に現れる交流電圧となる。このようなことから、積層された各振動発電体30に対し、例えば押圧されて変形する際に出力される電圧極性が一致するように全ての電極31a、31bを結線すればよい。すなわち、振動発電体30同士の出力電圧の極性を考慮して積層されるそれぞれの振動発電体30の電極同士を並列接続することで、積層構造40全体として一体の振動発電体とすることができる。
【0127】
なお、このような結線を容易にするためには、例えば厚み方向(図中上下方向)の押圧力による変形に対し、積層方向に隣接する振動発電体30同士は誘起される電荷の極性が一致する電極の側が接するように積層配置することが望ましい。すなわち、振動発電体の押圧時に出力される電圧極性の向きが交互になるように振動発電体30が積層されることが望ましい。
【0128】
また、
図17に示すように、複数の振動発電体30を積層することで、積層構造50を構成することもできる。積層構造50では、厚み方向の外力(押圧)に対し、異なる極性の電荷が誘起される電極同士が接続され、最上面と最下面の電極を一対の電極とする。なお、このような構造を、「直列接続した積層構造」とする。
【0129】
積層構造50は、積層構造40に対し、出力電圧を高めたものである。すなわち、積層構造50は、押圧時に出力される電圧極性の向きが揃うように振動発電体30を積層し、積層方向に隣接する振動発電体30の電極同士を直列に結線して、一体の振動発電体としている。これらの積層構造40、50によれば、限られた設置場所でも大きな発電力を得る振動発電体を構成することができる。
【0130】
<実施形態9>
また、本発明では、前述したように、振動発電体30が可撓性を有するため、1枚の振動発電体30を折り曲げて積層構造を構築することもできる。例えば、
図18(a)に示すように、1枚の振動発電体30を同一方向に巻くように折り曲げて積層構造60を構築することができる。また、同様に、
図18(b)に示すように、1枚の振動発電体30を交互に折り畳んで積層構造70を構成することもできる。
【0131】
積層構造60、70は、前述の並列接続した積層構造と同様の効果を得ることができる。このように、1枚の振動発電体30を折り曲げて積層構造を構築することによっても、限られた設置場所において、大きな発電力を得ることができる。
【0132】
また、
図19に示すように、1枚の振動発電体30を取り付け部82等に巻付けることで積層構造80を構成してもよい。なお、取り付け部82の長手方向に対する振動発電体30の巻付け方法としては限定されるものではなく、例えばラップ巻き、ギャップ巻き、突合せ巻き、ロール巻きなどを採用することができる。取り付け部82は、振動体であってもよく、または、他の外力が付与される部位であってもよい。取り付け部82に直接振動発電体30を巻き付けることで、設置自由度も高く、効率よく発電を行うことができる。
【0133】
<実施形態10>
また、本発明では、前述した積層構造同士をさらに複数接続してもよい。例えば、
図20(a)に示すように、積層構造40の各電極同士を直列に接続してもよい。または、
図20(b)に示すように、積層構造40の各電極を並列に接続してもよい。このように複数の積層構造を有する振動発電体の電極同士を接続することで、より大きな発電力(出力電圧・出力電流)を得ることができる。また、複数の積層構造を有する振動発電体を含めた振動発電体の配置に関しては、積層配置したり、隣接配置したり、間隔を空けて配置したりすることができる。これらの様々な配置形態に対する複数の振動発電体の電極同士を並列接続または直接接続することによって、一つの大きな振動発電体を構成することができる。このような振動発電体の配置形態の自由度によって、振動発電体の設置領域(面積)に対して、振動発電体の製造のしやすい大きさや、設置作業性などを考慮して振動発電体を配置することができる。
【0134】
<実施形態11>
次に、本発明にかかる振動発電体から発電された電力を蓄電する方法について説明する。
図21に示すように、蓄電装置は、振動発電体30、整流回路87、蓄電回路89等から構成される。なお、振動発電体30に代えて、他の振動発電体や積層構造を有する振動発電体を適用可能であることは言うまでもない。
【0135】
整流回路87は、4つのダイオード81を組み合わせた全波整流回路が用いられる。整流回路87は、振動発電体30からの出力電圧を整流する。また、蓄電回路89は、コンデンサや充電可能なバッテリーなどの蓄電部83とスイッチ85などから構成される。なお、ダイオード81は、順方向の抵抗が小さく、逆方向の抵抗が大きく、かつ、時間応答速度が速く、ロスの少ないものが望ましい。また、コンデンサあるいはバッテリーは、充電状態での漏れ電流が小さく、充電ロスの小さなものが望ましい。
【0136】
前述の通り、繰り返しの外力が付与された際の振動発電体30の出力電圧は交流となる。したがって、振動発電体30の出力電圧を整流回路87で整流して直流電圧に変換し、整流回路87の出力を蓄電回路89に蓄電することが望ましい。
【0137】
なお、複数の振動発電体30(または他の振動発電体や積層構造等)を用いる場合には、
図22に示すように、それぞれの振動発電体30ごとに整流回路87を設け、それぞれの整流回路87からの電圧出力を極性を揃えて並列接続し、そこで得た電圧出力を蓄電回路89に蓄電することが望ましい。これは、それぞれの振動発電体30の発電出力電圧の極性と位相が同期せず、例えば、出力される交流電圧の極性がそれぞれの振動発電体30でばらつく場合には、互いの出力電圧が打ち消しあってしまうためである。
【0138】
また、仮に、全ての振動発電体30の発電出力電圧の極性と位相が同期している場合であっても、それぞれの振動発電体30で発電される電圧が同じではない場合に、それぞれの振動発電体30同士を並列に接続してしまうと、発電出力電圧の低下を招く場合がある。これは、それぞれの振動発電体30を並列接続した場合に、振動発電体30自体が静電容量性の外部負荷となるためである。
【0139】
したがって、全ての振動発電体30ごとに整流回路87を設け、それぞれの整流回路87を並列接続することで、各整流回路87で整流した電流が、他の振動発電体30に流れ込むことを防止することができる。以上のことから、振動発電体が受ける外力の条件等を考慮し、その発電効率が最も高くなるような振動発電体あるいは振動発電体の積層構造のサイズを最小単位とし、これに整流回路を組み合せ、さらにこれを並列に複数接続することで効率のよい発電装置を得ることができる。
【0140】
なお、振動発電体の発電出力を、整流回路を介してコンデンサに充電する発電装置を考え、コンデンサに充電される電圧によって、振動発電体の平均発電力を評価することができる。振動発電体に外力の変化(例えば、正弦波の振動)を時間t[s]だけ与えた時の静電容量C[F]のコンデンサに充電される電圧をV
c[V]とすると、静電エネルギーE[J]は、以下の式となる。
【0142】
ここで、コンデンサに充電される電圧V
cは、充電開始から暫くは充電時間tに対して増加していくが、時間経過とともに整流しない場合の振動発電体の出力電圧V
outの振幅で決まる電圧値で飽和する。このため、コンデンサに蓄積される静電エネルギーEも飽和する。一方、振動発電体の発電力を時間平均した平均発電力をP
mean[W]とし、発電した電力が全てコンデンサの静電エネルギーEとして蓄積されているとみなせる充電時間tの範囲においては、EとP
meanとは下記の関係となる。
【0144】
したがって、上記式が成立する充電時間tの範囲では、V
cとtとの間に以下の式が成立する。
【0146】
したがって、以下の方法で振動発電体の平均発電力P
meanを求めることができる。まず、振動発電体に外力を繰り返し付与することによって、すなわち振動を付与することによって発電させ、その発電出力を整流回路で整流して静電容量Cのコンデンサに充電し、その際の充電電圧V
cと充電時間tの関係を実測する。次に、充電電圧V
cと充電時間tの平方根との関係をプロットし、充電を開始(t=0)してから充電電圧V
cと充電時間tの平方根との間におよそ比例関係が成立する領域での比例係数Kを求める。そうすると、P
meanは、下式で得ることができる。
【0148】
このように、整流回路および蓄電回路を用いることで、振動発電体の平均発電力を評価することができる。なお、振動発電体の出力電圧波形を測定する場合には、固定抵抗を外部負荷として振動発電体に接続し、その両端に生じる電圧波形をオシロスコープ等で観測すればよく、あるいは振動発電体に直接オシロスコープ等を接続し、オシロスコープ等の測定機器の入力インピーダンスを外部負荷として電圧波形を観測すればよい。
【0149】
<本発明の振動発電体の用途等>
本発明によれば、フレキシブル性や自在加工性に優れ、大面積化も容易な振動発電体を得ることができる。本発明の振動発電体としては、例えば、道路下や橋梁、高速道路等に設置される防音壁、鉄道のレールや枕木などの車両等が通行することで振動する対象物等へ設置することができる。この際、得られた電力によって、振動対象物の周囲の状態(温度、湿度、明るさ、振動加速度、歪、変位、風速、車両の通行速度や重量など)を感知し、計測するセンサを駆動させることができる。また、センサで得られた情報を有線または無線によって送信する情報収集システムや監視システムの電源として使用することができる。
【0150】
また、得られる電力が大きい場合には、道路等の照明や信号機の補助電源や、スマートグリッド構想での分散電源の一つとして使用することもできる。また、道路等において、車両や人が通行した際の振動によって発電させ、これによって車両や人が通過したという情報と周囲の明るさを感知させてもよい。この場合、周囲が暗い場合にのみ、貯蔵していた電力を利用して車両や人の前方の照明や、案内板、誘導灯等を点灯させることもできる。
【0151】
また、本発明の振動発電体は、それ自体が振動等の外力変化を検知するセンサとして用いることもできる。例えば、敷地や通路などに振動発電体を設置し、不審人物が侵入した際の振動で発電させ、不審人物侵入情報を送信するセキュリティシステムに使用することもできる。
【0152】
また、本発明は、車両や航空機、人、動物などのそれ自体が振動する移動体に適用することもできる。例えば、自動車の車体やサスペンション、タイヤ(タイヤのゴム内部あるいはゴム内面、ホイール部など)などに振動発電体を設置し、発電した電力で、各種センサを駆動させることもできる。また、得られる電力が大きい場合には、自動車の二次電池への補助充電用の電源としても使用できる。同様に、鉄道車両の車体、車両内部、車輪、ダンパー部、サスペンションなどに適用し、各種センサを駆動させて車両各部の健全性を監視するシステム用の電源、車内照明、非常灯、広告用表示パネル等の(補助)電源として使用することもできる。
【0153】
また、車両等の座席に振動発電体を設置し、人が着座した際または着座中の振動によって発電させ、人の着座を検知し、運転席や操縦席に情報を知らせるシステムのセンサおよび電源として使用することもできる。
【0154】
また、ビルや工場、住宅等の建築構造物あるいは建築構造物に内包される構造物に振動発電体を適用することもできる。例えば、上述の建築構造物は、地面の振動、風の影響、内部の人の移動、内部に設置された機械装置(例えば、モータなどの回転機や工場内の生産設備、エレベータやエスカレータなどの昇降機、空調ファンなど)が作動する際の振動等を受けて、それ自体が振動する。したがって、このような振動を受けやすい部位に振動発電体を設置して発電させ、非常用電源や各種センサや通信用電源等の駆動電源として使用することもできる。
【0155】
また、本発明の振動発電体を、パソコンや携帯電話、リモコンなどの携帯用電子機器や、タッチパネルやキーボード、プッシュボタンなどの入力装置にも適用することができる。例えば、パソコンや携帯電話などの携帯用電子機器の筐体に振動発電体を設置し、それらの機器の運搬時や使用時の振動によって発電させ、二次電池への補助充電用電源等に用いることもできる。また、入力装置の振動によって発電させ、入力情報を親局等に送信するシステムの電源としても使用することができる。
【実施例】
【0156】
本発明の振動発電体の発電量について評価した。なお、測定は以下の方法で行った。振動発電体としては、
図9(a)に示した構造(振動発電体30)のものを用いた。振動発電体30のサイズは、300mm×300mm×0.5mmとした。また、電極31a、31bは、導体層33として厚さ12μmのアルミニウム箔を用い、樹脂層35として厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用い、それらを熱溶着によって接合したものを用いた。エレクトレット誘電体3としては、PETフィルムを用い、コロナ放電によって均一に帯電処理を行った。なお、エレクトレット誘電体3の両表面間の電位差は約200Vであった。
【0157】
スペーサ7としては、絶縁性の接着剤を用いた。電極31a、31bとエレクトレット誘電体3とを貼り合わせた際のスペーサ7の形状は、直径約2mmの円形とし、縦横に等間隔で配列した。なお、スペーサ7の中心間距離は10mmとし、エレクトレット誘電体3の両面の平面視において同一の位置となるように配置した。また、スペーサ7の厚みは100μmとした。すなわち、エレクトレット誘電体3と電極31a、31bとの間の空隙6のギャップ長はそれぞれ100μmとした。
【0158】
また、同様に、
図12(b)に示した振動発電体10aについて評価した。振動発電体10aのサイズは、300mm×300mm×0.4mmとした。また、電極31a、31bは、導体層33として厚さ12μmのアルミニウム箔を用い、樹脂層35として厚さ100μmのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムを用い、それらを熱溶着によって接合したものを用いた。エレクトレット誘電体3としては、厚さ約150μmのPETフィルムを用いた。エレクトレット誘電体3の一方の面には全面に電極31aを接合した。エレクトレット誘電体3の電極31b側の対向面には、凸部12と凹部13が繰り返さし形成される凹凸パターンを形成した。エレクトレット誘電体3の凸部12と電極31bとは接着剤で接合した。
【0159】
凸部12と接着剤層とによるスペーサの高さは約100μmとした。したがって、凹部13におけるエレクトレット誘電体3の厚みは約50μmである。この際、凹部13(非接合部9)における電極31bとエレクトレット誘電体3との間のギャップ長は、互いの撓みを考慮すると、およそ30μm〜100μmの範囲であった。エレクトレット誘電体3の表面の凹凸パターンとしては、凸部12を略円柱状(断面直径は約2mm)とし、凸部12の中心間距離が約10mmとなるように凸部12を縦横に等間隔で配列した。
【0160】
エレクトレット誘電体3の凹凸パターンは、型を用いた表面プレス加工で形成した。凹凸形状が形成されたPETフィルムに対し、コロナ放電によって均一に帯電処理を行い、エレクトレット誘電体3とした。なお、エレクトレット誘電体3の両表面間の電位差は約200Vであった。
【0161】
図23は、このような振動発電体に外力を付与した際において、非接合部(空隙)での電極とエレクトレット誘電体との距離変化に対する発電出力電圧の変化を示す図であり、横軸が時間、縦軸が発電出力電圧である。なお、
図23は、振動発電体に対し、厚み方向に押圧力を付与し、一定時間保持後にその押圧を取り除いた際の発電出力電圧波形をオシロスコープにて観測したものの一例である。ここで、オシロスコープの入力インピーダンスはDC1MΩとした。また、振動発電体の発電出力電圧としては、エレクトレット誘電体の負電荷が帯電する側に対向する電極の電位を基準電位とし、正電荷が帯電する側に対向する電極の電圧を測定した。
【0162】
まず、定常状態(外力を付与しない状態)において、電極とエレクトレット誘電体との距離に変化が生じない場合には、発電が行われない。この状態から、振動発電体に押圧を加えて、電極とエレクトレット誘電体とが近づくように変形していくと発電出力電圧として正電圧が増加していく。そして、電極がエレクトレット誘電体と接触する直前に発電出力電圧が最大値を示し、その後急激に発電出力電圧が低下する(図中I)。
【0163】
その後、電極がエレクトレット誘電体に接触した状態を保持すると、互いの距離が変化しないため、振動発電体では発電が行われなくなる。その際、それ以前に電極に誘起されていた電荷はオシロスコープの入力インピーダンスを介して流れてしまうため、振動発電体の発電出力電圧は0の状態を保持する(図中II)。
【0164】
この状態から、押圧を開放すると、電極とエレクトレット誘電体とがもとの定常状態の形状に戻るように、電極とエレクトレット誘電体とが離れていく方向に変形していく。この際の発電出力電圧としては、前述とは逆極性である負電圧が発生し、電極とエレクトレット誘電体とが剥離した直後に発電出力電圧が最大となり、その後は負電圧が減少していく。電極とエレクトレット誘電体の形状が定常状態の形状に戻り、電極とエレクトレット誘電体との距離変化がなくなると、発電が行われなくなる。その際、前述したのと同様にそれ以前に電極に誘起されていた電荷がオシロスコープの入力インピーダンスを介して流れてしまうため、振動発電体の発電出力電圧は0となる(図中III)。このような電極とエレクトレット誘電体との距離変化に対する発電出力電圧の変化が示す傾向は、スペーサ7を用いた振動発電体30でも、スペーサ7を凸部12によって形成した振動発電体10aでも同様であった。
【0165】
このように、本発明では、電極とエレクトレット誘電体との接触と剥離を繰り返すことで、高い効率で発電を行うことができる。なお、実際には、外力、振動を振動発電体に付与した際の電極とエレクトレット誘電体との距離変化(すなわち、電極間の距離変化)による発電力(出力電圧と出力電流)は、振動発電体に接続される外部回路のインピーダンスに依存する。例えば、振動発電体に外力が加わっていても、振動発電体の形状に変化がない状態(変形が止まっている状態)では、各電極への静電誘導による電荷の誘起は生じず、発電は行われない。この際、外部回路のインピーダンスが非常に高い場合、仮にインピーダンスが無限大の場合には、外部回路を介して電荷が流れず、それ以前に電極に誘起されていた電荷量は保持される。したがって、振動発電体の出力電圧は、電極に保持される電荷量に応じた電圧となる。一方、振動発電体に接続される外部回路のインピーダンスが低い場合には、外部回路を介して電荷が流れて電荷量がいずれゼロとなるため、振動発電体の出力電圧はゼロとなる。
【0166】
なお、振動発電体における電極とエレクトレット誘電体との距離の時間変化を正弦波で付与した場合でも、すなわち振動発電体に正弦波の振動を付与した場合でも、発電出力電圧波形は、
図23に示すように正弦波とはならず、接触直前および剥離直後に最大電圧となるような歪んだ波形となる。これに対し、電極とエレクトレット誘電体とが接触しないように、十分なギャップ長を形成し、電極とエレクトレット誘電体との距離の時間変化を小さな振幅(ギャップ長に対して十分に小さな振幅)の正弦波となるように振動発電体へ振動を付与すると、発電出力電圧は著しく低下するが、発電出力電圧波形は振動発電体に付与した振動波形に比例した正弦波に近づく。したがって、振動発で単位に付与した振動波形と発電出力電圧波形とを比例させることができる。特許文献2のコンデンサエレクトレットマイクロホンはこのような原理を用いたものである。
【0167】
図24(a)は、振動発電体30(
図9(a))に正弦波状の振動を付与した際における、定常状態での電極とエレクトレット誘電体とのギャップ長と発電力との関係を評価した結果を示す図であり、横軸にギャップ長あるいはスペーサ7の厚さ(または凸部12の高さ。以下同様)(μm)、縦軸に発電力を示す。なお、発電力は、定常状態での各ギャップ長に対して、電極とエレクトレット誘電体とが繰り返し接触及び剥離が生じる正弦波状の振動を振動発電体に付与した際に生じる平均発電力である。
【0168】
図24(a)に示すように、ギャップ長が大きくなるにつれて発電力は増加した。すなわち、電極とエレクトレット誘電体との距離の変化量、すなわち電極間の距離の変化量が大きくなるほど、発電力は大きくなった。
【0169】
定常状態でのギャップ長が30μm以上あれば、ギャップ長100μmの場合と比較しても、70〜80%以上の発電力を維持することができる。したがって、ギャップ長(スペーサ7の厚さ)としては、30μm以上であることが望ましい。また、ギャップ長が100μmを超えると、ギャップ長の増加量に対して発電力の増加量は小さくなる。また、ギャップ長が大きくなると、電極とエレクトレット誘電体とを接触させるために必要な外力あるいは振動も大きくなる。また、ギャップ長を大きくすることで、振動発電体の全厚が厚くなる。したがって、ギャップ長(スペーサの厚み)は100μm以下であることが望ましい。すなわち、ギャップ長は30μm〜100μmの範囲であることが望ましい。
【0170】
また、
図24(b)は、定常状態でそれぞれ異なるギャップ長を有する振動発電体30(
図9(a))に正弦波状の振動を付与した際における、エレクトレット誘電体と電極との距離の変化量(あるいは距離の変化の振幅)と発電力との関係を評価した結果を示す図で、横軸にエレクトレット誘電体−電極間の距離の変化量、縦軸に発電力を示す。ここで、電極とエレクトレット誘電体との距離の変化量とは、振動発電体に繰り返しの外力あるいは振動を付与したときの最大変化量あるいは距離変化の最大値(振幅)を示す。なお、図中のK、L、M、Nの各線は、それぞれ、定常状態でのギャップ長を10、30、50、100μmとしたものである。すなわち、各線の最上点が、電極とエレクトレット誘電体とを接触するまで繰り返し変形させた際(ギャップ長=距離の変化の最大値)の平均発電力となる。
【0171】
図24(b)からも明らかなように、本発明の振動発電体では、電極とエレクトレット誘電体とが接触及び剥離を繰り返す場合に大きな発電力を示した。すなわち、電極とエレクトレット誘電体とが接触と剥離とを繰り返すことで高い発電力を得ることができる。したがって、本発明の振動発電体では、設置される場所や環境を考慮し、付与される外力に応じて、電極とエレクトレット誘電体とが互いに接触および剥離を繰り返すことができるように、振動発電体の構造や構成、すなわち電極、エレクトレット誘電体、スペーサ等の構造や材質を設計することが望ましい。
【0172】
なお、図示を省略するが、このような傾向は、他の形態の振動発電体を用いても同様であった。また、前述の振動発電体30と同様の構成であって、一方の面のみで電極とエレクトレット誘電体との距離の変化を可能とした振動発電体30a(
図9(b))の発電力は、両側の電極でエレクトレット誘電体との距離を変化可能とした振動発電体30(
図9(a))と比較して、ギャップ長30μm〜100μmの範囲においては、およそ80〜90%の発電力を確保可能であった。
【0173】
また、振動発電体に対して外力を付与する面積と、発電力はほぼ比例関係となった。すなわち、振動発電体の変形面積を大きくすることで、より高い発電力を得ることが可能であった。また、前述した各積層構造に対して、同様の評価を行うと、振動発電体の積層数に比例して、発電力が増加することが分かった。すなわち、積層数を増やすことは、振動発電体の変形面積を増やすことと同等の効果を得ることができることが分かった。
【0174】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。