(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更に、エチレン・α−オレフィン共重合体、ポリブテン類、パラフィン類、ワセリン類、ジアルキルスルフィド化合物から選ばれる1種又は2種以上を含む、請求項1記載の漁網防汚塗料組成物。
【発明を実施するための形態】
【0015】
漁網防汚塗料組成物
本発明の漁網防汚塗料組成物は、一般式(1):
【化1】
(式中、R
1は水素又はメチル基、R
2は炭素数10〜22のアルキル基を示す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(a)1〜40質量%と、前記単量体(a)以外のエチレン性不飽和単量体(b)60〜99質量%とを共重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体(A)、シリコーンオイル(B)、及び防汚薬剤(C)を含有する。
【0016】
<(メタ)アクリル酸エステル共重合体A>
本発明の共重合体Aは、一般式(1):
【化1】
(式中、R
1は水素又はメチル基、R
2は炭素数10〜22のアルキル基を示す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体(a)1〜40質量%と、前記単量体(a)以外のエチレン性不飽和単量体(b)60〜99質量%とを共重合して得られる(メタ)アクリル酸エステル共重合体である。
【0017】
前記共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、−50〜50℃程度が好ましく、−35〜35℃程度がより好ましい。Tgが前記範囲内の場合、漁網へ塗布した後の塗膜のタックが大きくなりすぎて塗布作業に支障をきたす問題も生じず、また、塗膜の柔軟性が損なわれてクラックや割れなどを生じたり、防汚効果を落としたりという問題を生じない。前記のTgの値は、示差走査熱量測定装置(例:METTLER TOLEDO社製、DSC1)を用いて、JIS K 7121の測定法を参照し、実測した値をいう。
【0018】
前記共重合体(A)の質量平均分子量(Mw)は、10000〜500000程度であり、好ましくは50000〜350000程度である。Mwが50000〜350000程度の場合、塗膜の強靭性という点で好ましい。Mwの測定方法としては、例えば、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)が挙げられる。GPCによってMwを測定する場合、Mwは、ポリスチレンを標準物質として検量線を作成して測定することにより求めた値(ポリスチレン換算値)として表示される。
【0019】
前記共重合体(A)は、前記単量体(a)及び前記単量体(b)が共重合してなるものである。前記共重合体(A)は、ランダム共重合体、交互共重合体、周期的共重合体、又はブロック共重合体のいずれの共重合体であってもよい。
【0020】
以下、前記単量体(a)、前記単量体(b)、前記共重合体(A)の合成方法等について具体的に説明する。
【0021】
単量体(a)
本発明の単量体(a)は、一般式(1):
【化1】
(式中、R
1は水素又はメチル基、R
2は炭素数10〜22のアルキル基を示す)で表される(メタ)アクリル酸エステル単量体である。
【0022】
R
2は、例えば、デシル、イソデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシル、オクタデシル、ノナデシルなどが挙げられる。R
2の炭素数は、12〜18が好ましい。R
2の炭素数は、具体的には例えば、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0023】
単量体(a)としては、例えば、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル(ラウリル)、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル(ミリスチル)、(メタ)アクリル酸ペンタデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル(パルミチル)、(メタ)アクリル酸ヘプタデシル(マルガリル)、(メタ)アクリル酸オクタデシル(ステアリル)、(メタ)アクリル酸ノナデシル等が挙げられる。前記例示の単量体(a)は前期共重合体(A)のモノマー成分として単独又は二種以上で使用できる。
【0024】
単量体(b)
単量体(b)としては、単量体(a)以外のエチレン性不飽和単量体が挙げられ、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシプロピル、(メタ)アクリル酸4−メトキシブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシ−ジエチレングリコール等の(メタ)アクリル酸エステル;塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリロニトリル、酢酸ビニル、ブチルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル、N−ビニルピロリドン等のビニル化合物;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等の芳香族化合物等が挙げられる。この中でも特に、(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸イソペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシ−ジエチレングリコールがより好ましい。前記例示の単量体(b)は、単独又は二種以上で使用できる。
【0025】
単量体(b)中の(メタ)アクリル酸エステル単量体の含有量が60質量%以上の場合、重合性の点から好ましく、80質量%の場合は更に好ましく、100質量%の場合が最も好ましい。
【0026】
また、(メタ)アクリル酸エステル単量体は、一般式(2):
【化2】
(式中、R
3は水素又はメチル基、R
4は炭素数1〜9のアルキル基、アルコキシ置、又はヒドロキシアルキル基を示す)で表されるものであること好ましい。R
4の炭素数は、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0027】
共重合体(A)の合成
前記共重合体(A)は、前記単量体(a)及び前記単量体(b)との混合物から得られる。
前記混合物中における前記単量体(a)の含有量は1〜40質量%であるが、より好ましくは2〜35質量%、更に好ましくは3〜30質量%である。前記単量体(a)の含有量が前記範囲内にある場合、得られる塗料組成物を用いて形成した塗膜が、薬剤の溶出をコントロールしているシリコーンオイルとの相溶性が向上し、結果適切量の薬剤溶出を可能とする利点を有する。前記単量体(a)の含有量は、具体的には例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0028】
前記共重合体(A)は、前記混合物中の前記単量体(a)及び前記単量体(b)を重合させることにより得られる。前記重合は、例えば、重合開始剤の存在下で行われる。
【0029】
前記重合開始剤としては、例えば、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、2,2'−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、ジメチル−2,2'−アゾビスイソブチレート等のアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物等が挙げられる。これら重合開始剤は、単独又は2種以上を組み合わせて使用できる。前記重合開始剤としては、 特に、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエートが好ましい。前記重合開始剤の使用量を適宜設定することにより、前記共重合体の分子量を調整することができる。
【0030】
重合方法としては、例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等が挙げられる。この中でも特に、簡便に、且つ、精度良く、前記共重合体(A)を合成できる点で、溶液重合が好ましい。
前記重合反応においては、必要に応じて水又は有機溶媒を用いてもよい。有機溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素系溶剤;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸メトキシプロピル等のエステル系溶剤;イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤;ジオキサン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル等のエーテル系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤等が挙げられる。この中でも特に、芳香族炭化水素系溶剤が好ましく、キシレンがより好ましい。これら溶媒については、単独あるいは2種以上を組み合わせて使用できる。
【0031】
重合反応における反応温度は、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよく、通常70〜140℃程度、好ましくは80〜120℃程度である。重合反応における反応時間は、反応温度等に応じて適宜設定すればよく、通常4〜8時間程度である。
重合反応は、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。
前記共重合体Aの含有量は、特に限定されないが、固形分換算で塗料組成物中に3〜50質量%使用され、好ましくは5〜30質量%である。
【0032】
<シリコーンオイルB>
本発明のシリコーンオイルとしては、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、メチルフェニルシロキサン−ジメチルシロキサン共重合体、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性ポリアルキル(メチル)シロキサン、ポリエステル変性ポリジメチルシロキサン、長鎖アルキル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル長鎖アルキルアラルキル変性ジメチルシリコーンオイル、フロロシリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、その他各種官能基による変性シリコーンオイル等が挙げられる。特に、親水親油バランス(HLB値)が0.5〜9のポリエーテル変性シリコーンオイルが好ましく、具体的には0.5〜9のポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエーテル長鎖アルキルアラルキル変性ジメチルシリコーンオイルが望ましい。さらに好ましいものとして、親水親油バランス(HLB値)が1〜5の範囲にあるポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン又はポリエーテル長鎖アルキルアラルキル変性ジメチルシリコーンオイルが挙げられる。HLB値が0.5〜9の範囲内のシリコーンオイルを使用することで、十分な防汚性能を得ることができる。
本発明では、これらのシリコーンオイルを単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
シリコーンオイルの粘度は、塗工性能および塗膜物性の観点から、1000ポイズ以下が好ましく、100ポイズ以下がより好ましい。
シリコーンオイルの含有量は、特に限定されないが、固形分換算で、共重合体A100質量部に対して1〜150質量部であり、好ましくは5〜100質量部であり、さらに好ましくは、10〜50質量部である。
【0034】
<防汚薬剤C>
本発明に使用される防汚薬剤Cとしては、海棲汚損生物に対して殺傷又は忌避作用を有する化合物であればよく、特に限定されない。例えば、以下の有機化合物及び無機化合物が挙げられる。
有機化合物としては、例えば、2−メルカプトピリジンN―オキシド銅、2−メルカプトピリジンN―オキシド亜鉛、ジンクエチレンビスジチオカーバメート、ビス(ジメチルジチオカルバミン酸)亜鉛、ビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメート、ピリジン・トリフェニルボラン、n−オクタデシルアミン・トリフェニルボラン、3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン・トリフェニルボラン、4−イソプロピル−ジフェニルメチル、4−フェニルピリジル−ジフェニルボラン、2,4,6−トリクロロマレイミド、n−(2,6ジエチルフェニル)2,3ジクロロマレイミド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、クロロメチル−n−オクチルジスルフィド、4,5−ジクロロ−2−n−オクチルー3−イソチアゾロン、3,4−ジクロロフェニル−N−N−ジメチルウレア、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、N−ジクロロフルオロメチルチオ−N',N'−ジメチル−N−p−トリルスルファミド、N−ジクロロメチルチオ−N',N'−ジメチル−N−フェニルスルファミド、2−(4−チアゾリル)ベンズイミダゾール、等が挙げられる。
【0035】
上記有機化合物のうち、n−オクタデシルアミン・トリフェニルボラン、テトラエチルチウラムジスルフィド、2−メルカプトピリジンN―オキシド銅、2−メルカプトピリジンN−オキシド亜鉛及びビスジメチルジチオカルバモイルジンクエチレンビスジチオカーバメートが特に好ましく、1種または2種以上併用してもよい。
【0036】
無機化合物としては、例えば、亜酸化銅、1価の銅ガラス、2価の銅ガラス、チオシアン酸銅、キュプロニッケル、銅粉等が挙げられ、亜酸化銅、1価の銅ガラス及び2価の銅ガラスが特に好ましく、1種または2種以上併用してもよい。
【0037】
上記防汚薬剤Cのうち、溶剤又は水に不溶の防汚薬剤については、分散性の問題から平均粒径10μm以下のものが好ましく、特に3μm以下のものが好ましい。これらの平均粒径は、日機装(株)社製粒度分布計、機種マイクロトラックMT3300EXII(測定原理レーザー回析・散乱法)により測定することができる。
【0038】
本発明の塗料組成物における防汚薬剤Cの含有量は限定的ではないが、共重合体A100質量部に対して、通常1〜300質量部であり、好ましくは5〜200質量部である。防汚薬剤の使用量が1質量部未満では防汚性が充分でなく、一方、300質量部超では塗工性能、塗膜物性が劣化する傾向がある。
【0039】
<その他の添加成分>
本発明に用いられる塗料組成物は、他の溶出助剤、分散剤、他の展着樹脂、沈降防止剤、タレ止め剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、染料、顔料、有機溶剤及び水等を、本発明の目的を損なわない範囲内で任意に、任意の配合割合で含有することができる。
【0040】
他の溶出調整剤
(エチレン・α−オレフィン共重合体)
エチレン・α−オレフィン共重合体としては、例えば、一般式(3):
【化3】
【0041】
(式中、R
3は炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル基を示し、x、yおよびpはそれぞれ同一又は異なって1以上の整数を示す)で表されるエチレン・α−オレフィン共重合体が挙げられる。
【0042】
R
3で表される炭素数1〜10の直鎖もしくは分枝鎖状のアルキル基としては、特に、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基等の炭素原子数1〜4のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0043】
一般式(3)で表されるエチレン・α−オレフィン共重合体は、エチレンとα−オレフィンとを共重合させることにより得られる共重合体である。前記エチレン・α−オレフィン共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体又はグラフト共重合体のいずれであってもよい。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体としては市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、ルーカントHC−10、ルーカントHC−20、ルーカントHC−40、ルーカントHC−100、ルーカントHC−150、ルーカントHC−600、ルーカントHC−2000(いずれも登録商標、三井化学株式会社製)等が挙げられる。これらのエチレン・α−オレフィン共重合体は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
前記エチレン・α−オレフィン共重合体の数平均分子量(Mn)は、塗工性能および塗膜物性の観点から、10,000以下が好ましく、1,000〜3,000がより好ましい。前記エチレン・α−オレフィン共重合体は、0℃における粘度が20,000PaS以下のものが好ましく、500PaS以下のものがより好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体の含有量は、特に限定されないが、シリコーンオイル100質量部に対して、固形分換算で、1〜1000質量部であり、好ましくは1〜500質量部であり、さらに好ましくは50〜300質量部である。
【0044】
(ポリブテン類)
ポリブテン類としては、ポリブテン、ポリイソブテン等が挙げられる。ポリブテン類としては、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、ポリブテンLV−7、ポリブテンLV−10、ポリブテンLV−25、ポリブテンLV−50、ポリブテンLV−100、ポリブテンHV−35、ポリブテンHV−100、ポリブテンHV−300、ポリブテンHV−1900(いずれも日本石油化学株式会社製);ポリブテン0H、ポリブテン5H、ポリブテン10H、ポリブテン300H、ポリブテン2000H、ポリブテン0R、ポリブテン15R、ポリブテン35R、ポリブテン100R、ポリブテン350R(いずれも出光石油化学株式会社製);ポリブテン0N、ポリブテン06N、ポリブテン3N、ポリブテン10SH、ポリブテン200N(いずれも日油株式会社製)等が挙げられる。
ポリブテンの含有量は、特に限定されないが、固形分換算で、シリコーンオイル100質量部に対して1〜1000質量部であり、好ましくは1〜500質量部であり、さらに好ましくは50〜300質量部である。
【0045】
(パラフィン類)
パラフィン類としては、例えば、n−パラフィン、固形パラフィン、流動パラフィン、塩素化パラフィン等が挙げられる。
パラフィン類の含有量は、特に限定されないが、固形分換算でシリコーンオイル100質量部に対して1〜1000質量部であり、好ましくは1〜500質量部であり、さらに好ましくは50〜300質量部である。
【0046】
(ワセリン類)
ワセリン類としては、例えば、白色ワセリン、黄色ワセリン等が挙げられる。
ワセリン類の含有量は、特に限定されないが、固形分換算でシリコーンオイル100質量部に対して1〜1000質量部であり、好ましくは1〜500質量部であり、さらに好ましくは50〜300質量部である。
【0047】
(ジアルキルスルフィド化合物)
ジアルキルスルフィド化合物としては、ジ−tert−ブチルデカスルフィド、ジペンチルテトラスルフィド、ジペンチルペンタスルフィド、ジペンチルデカスルフィド、ジオクチルテトラスルフィド、ジオクチルペンタスルフィド、ジノニルテトラスルフィド、ジノニルペンタスルフィド、ジ−tert−ノニルテトラスルフィド、ジ−tert−ノニルペンタスルフィド、ジデシルテトラスルフィド、ジドデシルテトラスルフィド、ジオクタデシルテトラスルフィド、ジノナデシルテトラスルフィド等が挙げられる。
【0048】
ジアルキルスルフィド化合物の含有量は、特に限定されないが、固形分換算でシリコーンオイル100質量部に対して1〜1000質量部であり、好ましくは1〜500質量部であり、さらに好ましくは50〜300質量部である。
【0049】
分散剤
分散剤としては、例えば、ポリアマイド燐酸系分散剤、ポリアマイド系分散剤、不飽和ポリカルボン酸系分散剤、酸化ポリエチレン系分散剤等 が挙げられる。例として、楠本化成(株)製、ディスパロン6900−20X、ディスパロン4200、ディスパロン1860等が挙げられる。これら分散剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0050】
分散剤の含有量は、特に限定されないが、固形分換算で、防汚薬剤100質量部に対して0.01〜50質量部であり、好ましくは0.1〜40質量部であり、さらに好ましくは0.5〜30質量部である。
【0051】
他の展着樹脂
共重合体A以外の他の展着樹脂を本発明の効果を妨げない任意の配合割合で含有させることができる。
前記展着樹脂としては、ビニル樹脂、アルキッド樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、塩素化ポリエチレン等の合成樹脂、ウッドロジン、ガムロジン、変性ロジン等の天然樹脂が挙げられる。
【0052】
その他の公知添加剤
本発明の組成物には、必要に応じて公知の添加剤を含有させてもよい。
公知の添加剤としては、例えば、染料、顔料、可塑剤(例えば、フタル酸エステル、アジピン酸エステル、トリクレジルフォスフェート等)、消泡剤、タレ止め剤、界面活性剤等が挙げられる。
これら添加剤については、本発明の効果を妨げない任意の配合割合で含有させることができる。
【0053】
本発明の組成物は、通常、水又は有機溶剤に溶解又は分散させておく。これにより、塗料として好適に用いることができる。
有機溶剤としては、例えば、キシレン、トルエン、ソルベッソ100、ソルベッソ150(いずれも登録商標、エクソンモービル製)等の芳香族系溶剤;イソブチルメチルケトン(MIBK)、ジイソブチルケトン(DIBK)等のケトン系溶剤;酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸イソペンチル等のエステル系溶剤が使用できる。
【0054】
また、低毒・低臭・低環境負荷を考慮した有機溶剤も使用することができ、例えば、ペガソールAN45、ペガソールAS100(いずれも登録商標、エクソンモービル製)、LAWS、HAWS(いずれもシェルケミカルズ製)等の芳香族・脂環式・脂肪族炭化水素混合溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコール系エステル溶剤;エチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、リカソルブ(登録商標)900(C9芳香族水添体)、リカソルブ(登録商標)1000(C10芳香族水添体)等の脂環式炭化水素系溶剤;シェルゾールD40(登録商標、シェルケミカルズ製)、エクソールD30、エクソールD40(いずれも登録商標、エクソンモービル製)等の脂環式・脂肪族炭化水素混合溶剤;アイソパーG、アイソパーH(いずれも登録商標、エクソンモービル製)等の脂肪族炭化水素混合溶剤なども使用することができる。
これら有機溶剤は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0055】
本発明の組成物は、種々の漁業具、水中構造物等の防汚塗膜の形成に使用できる。特に、本発明の組成物は、漁網用防汚塗料組成物として好適に使用できる。
【0056】
本発明の漁網防汚塗料組成物は、上記A〜C成分、ならびに必要に応じて上記各成分を混合することにより調製できる。混合する際の各成分の添加量については、上記配合量および含有量となるよう適宜調整すればよい。各成分を混合する順序については特に制限されない。混合方法については、撹拌装置を用いて混合する等、公知の方法を採用すればよい。
【0057】
漁網防汚塗膜の形成方法、防汚塗膜、および塗装物
本発明の漁網防汚塗膜の形成方法は、上記漁網防汚塗料組成物を用いて被塗膜形成物の表面に防汚塗膜を形成することを特徴とする。本発明の形成方法により得られる防汚塗膜は、表面から徐々に溶解し塗膜表面が常に更新されることにより、水棲汚損生物の付着防止を図ることができる。また、塗膜を溶解させた後、上記組成物を上塗りすることにより、継続的に防汚効果を発揮することができる。
【0058】
被塗膜形成物としては、例えば、漁業具、水中構造物等が挙げられる。漁業具としては、例えば、養殖用又は定置用の漁網、該漁網に使用される浮き子、ロープ等の漁網付属具等が挙げられる。水中構造物としては、例えば、発電所導水管、橋梁、港湾設備等が挙げられる。
本発明の漁網防汚塗膜は、上記漁網防汚塗料組成物を被塗膜形成物の表面(全体又は一部)に塗布することにより形成できる。
【0059】
塗布方法としては、例えば、ハケ塗り法、スプレー法、ディッピング法、フローコート法、スピンコート法等が挙げられる。これらは、1種又は2種以上を併用して行ってもよい。例えば、本発明の漁網防汚塗料組成物を漁網に塗布する場合、塗布方法としてはディッピング法を採用することが好ましい。
塗布後、乾燥させる。乾燥温度は、室温でよい。乾燥時間は、漁網防汚塗料の付着量に応じて適宜設定すればよい。
【0060】
前記漁網防汚塗料の付着量は、被塗膜形成物の種類等に応じて適宜設定すればよい。例えば、被塗膜形成物が漁網の場合、乾燥塗膜の付着量が漁網100質量部に対し、好ましくは1〜30質量部、さらに好ましくは4〜15質量部である。
【0061】
本発明の塗装物は、前記防汚塗膜を表面に有する。本発明の塗装物は、前記防汚塗膜を表面の全体に有していてもよく、一部に有していてもよい。
【実施例】
【0062】
以下に、実施例等を示し、本発明の特徴とするところをより一層明確にする。ただし、本発明は実施例等に限定されるものではない。
【0063】
<共重合体溶液の製造>
実施例R−1
温度計、冷却器、撹拌装置及び滴下ロートを備えた300mlフラスコに、キシレン40g、メチルメタクリレート60g、ブチルアクリレート35g、ラウリルメタクリレート3g、トリデシルメタクリレート2g、及びt−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート0.06g(初期添加)を仕込み、窒素ガスを導入しながら、90±5℃で1時間攪拌した。その後、同温度にて、キシレンを50g滴下ロートより10分間かけて滴下した。その後同温度にて1時間攪拌の後、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート0.3g(後添加)を1時間毎に4回添加して重合反応を完結した後、キシレン60gを添加し溶解させることにより、共重合体溶液R−1を得た。
【0064】
実施例R−2〜R−7及び比較例CR−1〜4
表1に示す成分を表1に示す割合(質量部)で配合し、実施例1と同様の操作及び反応条件で重合反応を行うことにより、共重合体溶液R−2〜7、CR−1〜4を得た。
【0065】
共重合体溶液R−1〜7及びCR−1〜4の重量平均分子量(Mw)及び加熱残分を以下に示す方法で測定した。得られた値を表1に示す。
【0066】
<分子量分析方法>
重量平均分子量(Mw)は、GPCにより求めた値(ポリスチレン換算値)である。GPCの条件は下記の通りである。
装置・・・ 東ソー株式会社製 HLC−8220GPC
ガードカラム・・・TSKguardcolumn SuperHZ−L(東ソー株式会社製)
カラム・・・ TSKgel SuperHZM−M(東ソー株式会社製)2本直列接続
流量・・・ 0.35 mL/min
検出器・・・ RI
カラム恒温槽温度・・・ 40℃
展開溶媒・・・ THF(和光純薬工業社製;試薬特級)
標準サンプル・・・TSK標準ポリスチレン(東ソー株式会社製)
【0067】
<加熱残分分析方法>
加熱残分は、JIS K5601−1−2(125℃、1時間加熱)により求めた値である。
【0068】
【表1】
【0069】
表1中の各成分の詳細は、以下の通りである。
ラウリルメタクリレート:東京化成(株)製
トリデシルメタクリレート:東京化成(株)製
パルミチルメタクリレート:商品名「メタクリル酸ヘキサデシル」(和光純薬工業(株)製)
ステアリルアクリレート:東京化成(株)製)
ステアリルメタクリレート:東京化成(株)製
メチルメタクリレート:東京化成(株)製
ブチルアクリレート:東京化成(株)製
イソブチルアクリレート:東京化成(株)製
シクロヘキシルメタクリレート:東京化成(株)製
2−ヒドロキシエチルメタクリレート:東京化成(株)製
メトキシメチルメタクリレート:商品名「アクリエステルMT」(三菱レイヨン(株)製)
2−エチルヘキシルメタクリレート:東京化成(株)製)
キシレン:商品名「キシレン」(東永産業(株)製)
【0070】
<漁網防汚塗料組成物の製造>
実施例H−1〜H−7、I−1〜I−7、J−1〜J−7、比較例CH−1〜CH−4、CI−1〜CI−4、CJ−1〜CJ−4
表2〜表4に示す成分を表2〜表4に示す割合(質量部)で配合し、直径1.5〜2.5mmのガラスビーズと混合分散することにより漁網防汚塗料組成物を製造した。実施例H−1〜H−7及び比較例CH−1〜CH−4では、防汚薬剤として亜酸化銅及び銅ピリチオンを使用した。実施例I−1〜I−7及び比較例CI−1〜CI−4では、防汚薬剤としてTOC−3204Fを使用した。実施例J−1〜J−7及び比較例CJ−1〜CJ−4では、防汚薬剤として3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン・トリフェニルボラン等を使用した。
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
【表4】
【0074】
表2〜表4中の各成分の詳細は、以下の通りである。表1と共通するものは省略する。
商品名「X−22−2516」:ポリエーテル長鎖アルキルアラルキル変性ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業(株)製)
商品名「KF−6020」:ポリエーテル変性ジメチルシリコーンオイル(信越化学工業(株)製)
商品名「SF8419」:ポリエーテル長鎖アルキルアラルキル変性ジメチルシリコーンオイル(東レ・ダウコーニング(株)製)
【0075】
商品名「ポリブテン0N」:可塑剤(日本油脂製)
商品名「ルーカントHC−40」:エチレン・α−オレフィン共重合体(三井化学(株)製)
黄色ワセリン:商品名「ワセリン(黄色)」ナカライテスク(株)製
商品名「DAF−1」:ジ−tert−ノニルペンタスルフィド(大日本インキ(株)製)
【0076】
亜酸化銅:商品名「NC−301」(日新ケムコ(株)製)
銅ピリチオン:商品名「Copper Omadine Powder」:ビス(2―スルフィドピリジン−1―オラト)銅(アーチ・ケミカル・ジャパン(株)製)
TOC−3204F:ビス(ジメチルジチオカルバモイル)エチレンビスジチオカルバミン酸亜鉛(ロームアンドハース社製)
3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン・トリフェニルボラン:商品名「OPA」(日東化成(株)製)
n−オクタデシルアミン・トリフェニルボラン:商品名「ODA」(ベニートヤマ(株)製)
テトラエチルチウラムジスルフィド:商品名「ノクセラーTET−G」(大内新興化学工業(株)製)
【0077】
商品名「ディスパロン6900−20X」:ポリアマイド系ワックス(楠本化成(株)製)
商品名「ディスパロン4200−20」:酸化ポリエチレン系ワックス(楠本化成(株)製)
商品名「ディスパロン1860」:長鎖ポリアミノアマイドと高分子ポリエステル酸との塩(楠本化成(株)製)
商品名「ディスパロンFA−62」:アクリル系重合物とシリコーンとの混合物(楠本化成(株)製))
【0078】
<漁網防汚塗料組成物の評価>
得られた防汚塗料組成物について、次の試験を行った。
【0079】
試験例1(動物性汚損生物への防汚効果確認試験)
表2〜表4記載の実施例H−1〜H−7、I−1〜I−7、J−1〜J−7、比較例CH−1〜CH−4、CI−1〜CI−4、CJ−1〜CJ−4の各防汚塗料組成物を、ポリエチレン製の漁網(400デニール、40本、8節、縦15cm・横8cm)に、浸漬塗布し2日間室温で乾燥した。得られた防汚塗料組成物が塗布された漁網を40×75cmのSUSの枠に固定し、海中から水深約2mに垂下浸漬し、その防汚性能を12ヶ月間にわたって定期的に観測した。なお、実施例H−1〜H−7及びJ−1〜J−7、比較例CH−1〜CH−4、CJ−1〜CJ−4の防汚塗料組成物を塗布した漁網に関しては、和歌山県串本沖の筏にて防汚効果確認試験を行い、実施例I−1〜I−7及び比較例CI−1〜CI−4の防汚塗料組成物を塗布した漁網に関しては、北海道根室沖の定置網にて防汚効果確認試験を行った。
結果を表5〜表7に示す。表中の数字は、水棲汚損生物汚損生物の付着面積(%)を表す。
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
【表7】
【0083】
試験例2(防汚薬剤残存量確認試験)
表2〜表4記載の実施例H−1〜H−7、I−1〜I−7、J−1〜J−7、比較例CH−1〜CH−4、CI−1〜CI−4、CJ−1〜CJ−4の各防汚塗料組成物を、ポリエチレン製の漁網(400デニール、40本、8節、縦15cm・横8cm)に、浸漬塗布し2日間室温で乾燥した。防汚塗料組成物が塗布された漁網を40×75cmSUSの枠に固定し、海中から水深約2mに垂下浸漬し、2、4、6,8,12ヵ月の各期間ごとに海水から引き揚げ、水道水で水洗後2日間室温にて乾燥した。その後、漁網に塗布された防汚塗膜中の防汚薬剤の残存率を測定した。測定は、以下の方法で行い、それぞれの防汚薬剤の残存率(%)を確認した。
【0084】
なお、実施例H−1〜H−7及びJ−1〜J−7、比較例CH−1〜CH−4、CJ−1〜CJ−4の防汚塗料組成物を塗布した漁網に関しては、和歌山県串本沖の筏にて確認試験を行い、実施例I−1〜I−7及び比較例CI−1〜CI−4の防汚塗料組成物を塗布した漁網に関しては、北海道根室沖の定置網にて確認試験を行った。
結果を表8〜表10に示す。
【0085】
【表8】
【0086】
【表9】
【0087】
【表10】
【0088】
表8〜表10において、「-」は、生物付着が激しいため、測定不能であることを意味する。
【0089】
防汚薬剤の残存率の残存率は、以下の方法で測定した。
【0090】
(1)2−メルカプトピリジンN−オキシド銅の残存量測定
上記方法で得られたエージング後の乾燥網を100mlマヨネーズ瓶に入れ、ジクロロメタンを加え、超音波洗浄器にて残存塗膜を溶解させた後、アセトニトリルで所定濃度に希釈し、HPLCにて2−メルカプトピリジンN−オキシド銅の残存量を測定し残存率(%)を算出した。
【0091】
(2)亜酸化銅(銅粉)の残存量測定
上記方法で得られたエージング後の乾燥網を100mlマヨネーズ瓶に入れ、乾燥させた各漁網を100mlマヨネーズ瓶に入れ、キシレンを加え超音波洗浄器にて残存塗膜を溶解し、更に35%硝酸を加え湿式分解させた下層部を0.1mol/L硝酸で所定濃度に希釈し原子吸光フレーム分析を行い各漁網当りの全残存銅量を求める。全残存銅量から上記で得られた2−メルカプトピリジンN−オキシド銅の銅量を差し引き、銅量の算出から亜酸化銅残存率(%)を算出した。
【0092】
(3)ビスジメチルジチオカルバモイルエチレンビスジチオカーバメートの残存量測定
上記方法で得られたエージング後の乾燥網を100mlマヨネーズ瓶に入れ、アセトンを加え超音波洗浄器にて残存塗膜を溶解し、更に35%塩酸を加え湿式分解させた後、下層部を1規定塩酸で所定濃度に希釈し原子吸光フレーム分析を行い、全残存亜鉛量を求めた。全残存亜鉛量から上記で得られた2−メルカプトピリジンN−オキシド亜鉛の残存亜鉛量を差し引き、亜鉛量の算出からビスジメチルジチオカルバモイルエチレンビスジチオカーバメートの残存率(%)を算出した。
【0093】
(4)3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン・トリフェニルボラン 、n−オクタデシルアミン・トリフェニルボラン、テトラエチルチウラムジスルフィドの残存量測定
実施例J1〜7および比較例CJ1〜4で得られた各防汚塗料組成物を塗布した各漁網を人工海水中から引き上げ水洗いし、乾燥させた各魚網を密閉式ガラス容器に入れ、そこに一定量のキシレンを添加し超音波洗浄器にて残存塗膜を溶解させた。その溶解液をHPLC移動相で所定濃度に希釈しHPLCにて分析を行い各漁網当りの各薬剤の残存率(%)を算出した。
【0094】
<考察>
表5を参照すると、本発明の実施例では、比較例に比べて、防汚効果の持続期間が長かったことが分かる。また、表8の比較例CH−1及びCH−2を参照すると、2ヶ月目までに30%以上の薬剤が放出されていることから、これらの比較例では、漁網浸漬初期に薬剤が大量に放出されたために、防汚効果の持続期間が短くなってしまったと考えられる。また、表8の比較例CH−3及びCH−4では、漁網浸漬初期の薬剤放出は抑制されているものの、その後に、適度な薬剤放出量が維持されず、比較的短期間で生物付着が始まってしまった。一方、本発明の全ての実施例では、漁網浸漬初期の薬剤放出が抑制され、かつその後に、適度な薬剤放出量が維持されているので、防汚効果の持続期間が長くなったと考えられる。
【0095】
表5及び表8は、使用した防汚薬剤が亜酸化銅及び銅ピリチオンであるが、防汚薬剤としてTOC−3204Fを使用した表6及び表9や、防汚薬剤として3−(2−エチルヘキシルオキシ)プロピルアミン・トリフェニルボラン等を使用した表7及び表10においても、同様の結果となった。