(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5691202
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】スロッシング抑制装置
(51)【国際特許分類】
B65D 90/52 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
B65D90/52
【請求項の数】1
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-53769(P2010-53769)
(22)【出願日】2010年3月10日
(65)【公開番号】特開2011-184087(P2011-184087A)
(43)【公開日】2011年9月22日
【審査請求日】2013年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094617
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 正浩
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 史紀
【審査官】
戸田 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭53−126515(JP,A)
【文献】
特開2007−176595(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3095055(JP,U)
【文献】
登録実用新案第3029018(JP,U)
【文献】
特開2008−213886(JP,A)
【文献】
特開2012−508673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 90/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の液体を収容している固定屋根式の貯蔵タンクにおいて、液体の液面に浮遊する複数の球体相互を、ロープ部材により連結し、複数の球体は液面のほぼ全体を覆うようにほぼ円形となるように隙間なく並設され、球体は球体の半分程度を水没させるバランスウエイトを内蔵し、複数の球体相互を連結するロープ部材は側面視上部に相当する球体の頂点同士を連結し、複数の球体相互を連結するロープ部材は個々のロープ部材が全体として格子状に配置され、複数の球体のいずれかに重りを円形の縁部分に沿うように吊り下げ、
側面視上部に相当する各球体の頂点には所定の連結穴が設けられ、この連結穴に固定ピンの固定脚部が挿入され、この固定脚部に固定ピンの下方から見て十字状となる切り込み部が形成され、この切込み部に交差しているロープ部材が導入されていることを特徴とするスロッシング抑制装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石油等の種々の液体を収容している固定屋根式の貯蔵タンクにおいて、大きな地震を原因として生じる激しいスロッシング現象により、貯蔵タンク内に収容している液体の一部が貯蔵タンクの屋根部分に当たって当該屋根部分を破損してしまうような事態の発生を防止した、スロッシング抑制装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
石油等の種々の液体を収容する貯蔵タンクとしては、例えば、
図8・
図9に示すような、固定屋根式の貯蔵タンクTが存在する。この固定屋根式の貯蔵タンクTは、浮遊屋根式の貯蔵タンクに比較して、小容量の液体を収容するものとして利用されることが多い。
【0003】
この固定屋根式の貯蔵タンクTにおいては、比較的に軽微な地震を原因として生じるスロッシング現象により、貯蔵タンクT内の液体Wに小さな波が発生した場合であっても、発生した波により屋根部分が破損するなどの事態の発生を防ぎ、これに充分に対応するために、液面と屋根部分の間に所定の間隔を保持している。
また、波により屋根部分等が破損する事態の発生を防ぐために、特許文献1乃至4の技術が提案されている。
特許文献1は、自由液面にある内部の液面上にフロートを配置し、スロッシング発生時に内部に一定量の流体を入れたフロートが立ち上がることによってスロッシングの波をくずし急激に波を減衰させることを特徴とする石油貯蔵タンクにおけるスロッシング減衰方法を開示している。
また、特許文献2は、容器と、この容器の側壁近傍に水平方向に拘束して容器内液面に浮かべた複数の浮子とこれらの浮子にばねを介して吊下した重錘とから成り、液体中で前記ばね、重錘等の構成する振動系の固有振動数と、前記容器内液面の液面揺動の一次モード固有振動数とを一致させたことを特徴とする液体貯蔵容器を開示している。
さらに、特許文献3は、軽油を入れた燃料タンク内に耐軽油性に優れ、軽油中で浮タンクの素材に接触しても互いに損傷しない素材、たとえば耐油性スポンジ等からなる多数の球体をおさめる燃料タンクを開示している。
また、特許文献4は、液体を貯蔵するタンク本体と、そのタンク本体内の液面上に浮かべて配置される浮き屋根と、その浮き屋根に設けられてタンク本体内の液体のスロッシングを抑制するスロッシング抑制装置とを備え、前記スロッシング抑制装置は、前記液体の液面に沿う形態で前記浮き屋根の底部に配置される第1抑制材と、前記浮き屋根から液体中に吊り下げる形態で配置される第2抑制材とを含み、前記第1抑制材及び第2抑制材は、前記液体との相対移動によって液体のスロッシング抑制に必要な流体抵抗が生じる多孔材料により形成されていることを特徴とする、浮き屋根式液体貯蔵タンクを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭59−38153号公報
【特許文献2】特開昭60−123388号公報
【特許文献3】特開平4−352691号公報
【特許文献4】特開2008−213886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、固定屋根式の貯蔵タンクTにおいては、比較的に軽微な地震を原因として生じるスロッシング現象には対応できるものの、予想を超えるような大きな地震を原因として生じる激しいスロッシング現象により、屋根部分を破損してしまう事態が発生していた。
【0006】
スロッシング現象は、大量の液体Wを収容している貯蔵タンクTが、地震による地震動を受けると、この地震動に共震して貯蔵タンクT内の液面がうねって揺れ動くような波(液面の上下運動)が発生する現象であるが、予想を超えるような大きな地震が起こると、貯蔵タンクTがこの地震動に共震して、貯蔵タンクT内の液面に著しく大きな波(液面の上下運動)が生じることがある。
【0007】
この様な大きな波(液面の上下運動)が貯蔵タンクTの内壁面に沿って生じると、
図8に示すように、大量の液体Wが貯蔵タンクTの屋根部分に向けて勢い良く押し上げられたような状態となる。
【0008】
そして、上方に押し上げられた大量の液体Wが勢い良く屋根部分に衝突して、屋根部分を破損してしまう事態が発生するのである。
【0009】
この様なスロッシング現象による屋根部分の破損を防止する措置として、例えば、
図9に示すように、屋根部分に近い貯蔵タンクTの上部に、所定の格子機構100を付設する措置がある。格子機構100は、所定の高さを有する横長形状の板部材を格子状に組み付けて、貯蔵タンクTの上部全体の空間を、小区画に分割したものである。
【0010】
この格子機構100は、地震によるスロッシング現象により、貯蔵タンクT内の液面に大きな波(液面の上下運動)が生じようとするときに、貯蔵タンクT内における液面を格子機構100に導き入れて、貯蔵タンクTの屋根部分に勢い良く衝突しようとする液体Wを複数の小区画全体で受け止め、液体W全体の運動エネルギーを小区画毎に分散させることにより、屋根部分に対する液体Wの衝突力を弱める機能を有している。
【0011】
しかし、この様な格子機構100を設ける措置は、新規のプラントのように建設の当初から講じていれば有効であるものの、既設のプラントにおいては、格子機構100を貯蔵タンクTの内部に新たに設置する追加の工事が必要となり、多額の建設費用を要する事になってしまう。
【0012】
また、固定屋根式の貯蔵タンクTにおいては、連絡口(出入り口)としてマンホール程度の小さな孔しか存在していないため、工事に使用する機材を搬入する際に大きな制約となっている。
【0013】
そこで、本発明は如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、固定屋根式の貯蔵タンク内に容易に搬入し、その後、貯蔵タンク内で容易に展開できるスロッシング抑制装置により、予想を超えるような大きな地震を原因として生じる激しいスロッシング現象により貯蔵タンク内の液面に著しく大きな波(液面の上下運動)が生じようとした場合であっても、その発生を抑制して、屋根部分を破損してしまう事態の発生を防止した、スロッシング抑制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るスロッシング抑制装置は、所定の液体を収容している固定屋根式の貯蔵タンクにおいて、液体の液面に浮遊する複数の球体相互を、ロープ部材により連結し、複数の球体は液面のほぼ全体を覆うように
ほぼ円形となるように隙間なく並設され、球体は球体の半分程度を水没させるバランスウエイトを内蔵し、複数の球体相互を連結するロープ部材は
側面視上部に相当する球体の頂点同士を連結し、複数の球体相互を連結するロープ部材は個々のロープ部材が全体として格子状に配置され、複数の球体のいずれかに重りを円形の縁部分に沿うように吊り下げていることで、上述した課題を解決した。
また、側面視上部に相当する各球体の頂点には所定の連結穴が設けられ、この連結穴に固定ピンの固定脚部が挿入され、この固定脚部に固定ピンの下方から見て十字状となる切り込み部が形成され、この切込み部に交差しているロープ部材が導入されていることで、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るスロッシング抑制装置は、所定の液体を収容している固定屋根式の貯蔵タンクにおいて、液体の液面に浮遊する複数の球体相互を、ロープ部材により連結していることから、比較的に簡易な構成によるスロッシング抑制装置を形成することができる。
【0021】
その為、スロッシング抑制装置全体を、安価に構築することができる。また、既設の貯蔵タンクに、大きな地震を原因として生じる激しいスロッシング現象に対応した措置を、事後的に講じることができる。
【0022】
また、複数の球体は、液面のほぼ全体を覆うように隙間なく並設されていることから、液体の液面にスロッシング抑制装置を浮遊させると、貯蔵タンク内に収容している液体の液面全体を、スロッシング抑制装置により覆ったような状態となる。
【0023】
その為、地震によるスロッシング現象により、貯蔵タンク内の液面に大きな波(液面の上下運動)が生じようとするときに、液面の上昇を抑制することができる。
【0024】
この様な大きな波(液面の上下運動)は、貯蔵タンクの内壁面に沿って生じ易いものであるが、液面の全体をスロッシング抑制装置により覆っていることから、大きな波(液面の上下運動)が生じようとしている部分の液面に浮遊している複数の球体が、通常の液面に浮遊している複数の球体に引っ張られるような状態となる。
【0025】
その為、大きな波(液面の上下運動)が生じようとしている部分の液面に浮遊している複数の球体が液面を押さえ付けて、液面の上昇を抑制するのである。
【0026】
そして、複数の球体のいずれかに、重りを吊り下げているときには、この液面の上昇を抑制する効果が、より顕著に発揮されることとなる。
【0027】
この他、複数の球体は、液面のほぼ全体を覆うように隙間なく並設されていることから、液面を小区画に分割したような状態となる。その為、地震によるスロッシング現象により、貯蔵タンク内の液面に大きな波(液面の上下運動)が生じようとするときに、貯蔵タンク内における液面を複数の球体により形成されている複数の小区画に導き入れて、貯蔵タンクの屋根部分に勢い良く衝突しようとする液体を、複数の小区画全体で受け止め、液体全体の運動エネルギーを小区画毎に分散させることにより、屋根部分に対する液体の衝突力を弱めるのである。
【0028】
また、複数の球体は、液面のほぼ全体を覆うように隙間なく並設されており、球体の集合による面状態を維持していることから、液面の大揺動時に球体が分散することがなく、液面の揺動を効率良く抑制できる。
【0029】
さらに、スロッシング抑制装置が複数の球体により構成されているため、予想を超えるような大きな地震を原因として生じる激しいスロッシング現象により、スロッシング抑制装置が勢い良く上方に押し上げられて屋根部分に衝突した場合であっても、その衝突の荷重が分散して、屋根部分に損傷を与えることがない。
【0030】
また、スロッシング抑制装置は、全体として柔軟性を有していることから、スロッシング抑制装置全体を巻き付けることにより、固定屋根式の貯蔵タンクに存在するマンホール程度の孔である連絡口(出入り口)を介して、スロッシング抑制装置を貯蔵タンク内に容易に搬入することができる。
【0031】
加えて、貯蔵タンク内において展開する手順も比較的に容易であることから、貯蔵タンク内にスロッシング抑制装置を設置する時間を短縮できる。
【0032】
また、球体は、球体の半分程度を水没させるバランスウエイトを内蔵していることから、液面の揺動を効率良く抑制できる。
【0033】
さらに、複数の球体相互を連結するロープ部材は、球体の頂点同士を連結していることから、球体同士を若干離したり、また、球体同士を強く当接させる動きを許容して、液体全体の運動エネルギーを分散させることができる。
【0034】
また、複数の球体相互を連結するロープ部材は、個々のロープ部材が、全体として格子状に配置されていることから、このロープ部材を介して、複数の球体を隙間なく、しっかりと並設することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】複数の球体を、ロープ部材を介して隙間なく並設しているスロッシング抑制装置の構成を示す斜視図である。
【
図2】複数の球体を、ロープ部材を介して隙間なく並設して構成しているスロッシング抑制装置を、固定屋根式の貯蔵タンクに収容している液体の液面に浮遊させている状態を示す斜視図である。
【
図3】複数の球体を、ロープ部材を介して隙間なく並設して構成しているスロッシング抑制装置を、固定屋根式の貯蔵タンクに収容している液体の液面に浮遊させている状態を示す平面図である。
【
図4】複数の重りを吊り下げているスロッシング抑制装置の構成を示す斜視図である。
【
図5】スロッシング抑制装置の浮遊状態を示すもので、(a)は球体の半分程度が水没している状態を示す側面図、(b)は重りを吊り下げている球体の浮遊状態を示す側面図である。
【
図6】球体へのロープ部材の固定状態を示すもので、(a)は固定ピンの固定脚部に形成されている切り込み部に、交差しているロープ部材を導入した状態で固定脚部を球体の連結穴に挿入する状態を示す分解斜視図、(b)は球体にロープ部材を固定した状態を示す斜視図である。
【
図7】地震によるスロッシング現象により、貯蔵タンク内の液面に大きな波(液面の上下運動)が生じようとするときに、液面に浮遊しているスロッシング抑制装置が、液面の上昇を抑制している状態を示す概略の説明図である。
【
図8】貯蔵タンクの内壁面において、大量の液体が屋根部分に向けて勢い良く押し上げられている状態を示す概略の説明図である。
【
図9】スロッシング現象による屋根部分の破損を防止する措置として、屋根部分に近い貯蔵タンクの上部に、所定の格子機構を付設している状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0037】
本発明は、固定屋根式の貯蔵タンクT内に容易に搬入し、その後、貯蔵タンクT内で容易に展開できるスロッシング抑制装置1である。
【0038】
このスロッシング抑制装置1は、
図1・
図2に示すように、所定の液体Wを収容している固定屋根式の貯蔵タンクTにおいて、液体Wの液面に浮遊する複数の球体2相互を、ロープ部材3により連結している。
【0039】
複数の球体2は、
図2・
図3に示すように、貯蔵タンクT内に収容している液体Wにおいて、液面のほぼ全体を覆うように隙間なく並設されている。また、複数の球体2は、貯蔵タンクT内の形状に合わせて、全体がほぼ円形となるように並設されている。
【0040】
尚、スロッシング抑制装置1の全体形状は、円形に限定されることはなく、どの様な形状であっても良い。
【0041】
個々の球体2は、例えば、発泡ウレタン等の軟質部材を用いて形成されている。また、球体2は、直径が10センチメートル前後の大きさになるように形成されている。さらに、球体2は、
図5(a)に示すように、バランスウエイト4を内蔵している。このバランスウエイト4は、球体2を半分程度水没させるためのもので、約250グラム程度の重さを有している。
【0042】
複数の球体2相互を連結するロープ部材3は、
図5(a)に示すように、球体2の頂点同士を連結している。
【0043】
また、ロープ部材3は、
図3に示すように、個々のロープ部材3が、全体として格子状に配置されて、複数の球体2相互を連結している。
【0044】
球体2へのロープ部材3の固定は、所定の固定ピン5を用いている。この固定ピン5は、
図6(a)に示すように、円形の頭部6と、頭部6に連設した柱状の固定脚部7により形成されている。また、固定脚部7の全体には、下方から見て十字状となる切り込み部8が設けられている。
【0045】
一方、球体2の頂点部には、所定の連結穴9が設けられている。
【0046】
そして、
図6(a)(b)に示すように、固定ピン5の固定脚部7に形成されている切り込み部8に、交差しているロープ部材3を導入した状態で固定脚部7を球体2の連結穴9に挿入して、球体2にロープ部材3を固定するのである。
【0047】
この様にして、複数の球体2を全体がほぼ円形となるように隙間なく並設した一体的なスロッシング抑制装置1を形成して、
図7に示すように、所定の液体Wを収容している固定屋根式の貯蔵タンクTにおいて、液体Wの液面に載置する。
【0048】
このとき、スロッシング抑制装置1は、複数の球体2により液体Wの液面に浮遊することとなる。具体的には、球体2の下半分程度が水没し、球体2の上半分とロープ部材3が水面より上方に存在している。
【0049】
この様に、液体Wの液面にスロッシング抑制装置1を浮遊させると、貯蔵タンクT内に収容している液体Wの液面全体を、スロッシング抑制装置1により覆ったような状態となる。
【0050】
その為、
図7に示すように、地震によるスロッシング現象により、貯蔵タンクT内の液面に大きな波(液面の上下運動)が生じようとするときに、スロッシング抑制装置1が液面の上昇を抑制するのである。
【0051】
この様な大きな波(液面の上下運動)は、
図8に示すように、貯蔵タンクTの内壁面に沿って生じ易いものであるが、液面の全体をスロッシング抑制装置1により覆っていることから、
図7に示すように、大きな波(液面の上下運動)が生じようとしている部分の液面に浮遊している複数の球体2(
図7の右側に位置している複数の球体2)が、他の液面に浮遊している複数の球体2(
図7の左側に位置している複数の球体2)に引っ張られるような状態となる。
【0052】
その為、大きな波(液面の上下運動)が生じようとしている部分の液面に浮遊している複数の球体2(
図7の右側に位置している複数の球体2)が、液面を押さえ付けて、液面の上昇を抑制するのである。
【0053】
以上のことからすると、例えば、
図4・
図5(b)に示すように、スロッシング抑制装置1に複数の重り10を吊り下げると、液面を押さえ付ける作用が向上して、スロッシング抑制装置1としてより好ましいものとなる。
【0054】
この重り10は、所定の長さの紐部材11により、球体2に吊り下げられている。また、重り10は、
図4に示すように、ほぼ円形となるように隙間なく並設されている球体2において、円形の縁部分に沿うように取り付けられている。
【0055】
この他、スロッシング抑制装置1は、液体Wの液面に浮遊する複数の球体2相互を、ロープ部材3により連結していることから、全体として柔軟性を有している。
【0056】
そのため、スロッシング抑制装置1全体を巻き付けることにより、例えば、スロッシング抑制装置1の全体を縦長の形状にして、固定屋根式の貯蔵タンクに存在するマンホール程度の孔である連絡口(出入り口)を介して、スロッシング抑制装置を貯蔵タンク内に容易に搬入することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係るスロッシング抑制装置は、様々な分野における貯蔵タンクにおいて、大きな地震を原因として生じる激しいスロッシング現象により貯蔵タンク内の液面に著しく大きな波(液面の上下運動)が生じようとした場合であってもその発生を抑制して、屋根部分を破損してしまう事態の発生を防止するものとして、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0058】
T…固定屋根式の貯蔵タンク
W…液体
100…格子機構
1…スロッシング抑制装置
2…球体
3…ロープ部材
4…バランスウエイト
5…固定ピン
6…頭部
7…固定脚部
8…切り込み部
9…連結穴
10…重り
11…紐部材