(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
走行車両の機体後部に圃場内に種子を播く繰出装置(6)を設け、該繰出装置(6)の上部に種子を貯蔵する種子タンク(5)を設け、該繰出装置(6)の内部に種子が入り込む複数の種子溝(19b)を外周面に形成した繰出回転体(19)を設け、該繰出回転体(19)の上部に繰出回転体(19)を覆う支持ケース(50)を設け、該支持ケース(50)に前記繰出回転体(19)の上方の外周近傍に接触する清掃部材(23)を設けた直播機において、
前記支持ケース(50)に清掃部材(23)の基部を取り付ける取付部材(50a)を設け、前記繰出回転体(19)の種子溝(19b)から種子が落下する落下位置よりも下方の外周面に落下調節部材(42)の先端部が達するように、落下調節部材(42)を設け、
前記繰出回転体(19)の外周面に沿って種子溝(19b)を覆う種子落下防止部材(41)を落下調節部材(42)よりも繰出回転体(19)側に設けたことを特徴とする直播機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
エンジンの動力を得て回転する機体後方の左右方向に設置された回転軸に、種子が入り込む複数の種子溝を外周に一定間隔で設けた円筒回転体(繰出回転体)を設置した従来の直播機において、該繰出回転体の該種子溝に入り込んだ種子量を整えるブラシと、該種子溝から種子がこぼれ落ちないようにする種子落下防止部材が、繰出装置内の別々の部位にネジ等で取り付ける構成としているために、メンテナンス時に上記の構成部材の他、繰出回転体を取り外す必要が生じ、メンテナンスが煩雑となる問題があった。
【0005】
本発明の課題は、一定量の種子を一定のタイミングで圃場に落下させると共に、繰出回転体の清掃等におけるメンテナンス性を向上させた種子繰出装置を備えた直播機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は次の解決手段で解決される。
【0007】
請求項1に記載の発明は、走行車両の機体後部に圃場内に種子を播く繰出装置(6)を設け、該繰出装置(6)の上部に種子を貯蔵する種子タンク(5)を設け、該繰出装置(6)の内部に種子が入り込む複数の種子溝(19b)を外周面に形成した繰出回転体(19)を設け、該繰出回転体(19)の上部に繰出回転体(19)を覆う支持ケース(50)を設け、該支持ケース(50)に前記繰出回転体(19)の上方の外周近傍に接触する清掃部材(23)を設けた直播機において、前記
支持ケース(50
)に清掃部材(23)の基部を取り付ける取付部材(50a)
を設け、前記繰出回転体(19)の種子溝(19b)から種子が落下する落下位置よりも下方の外周面
に落下調節部材(4
2)の先端部が達するよう
に、落下
調節部材(42
)を設け、前記繰出回転体(19)の外周面に沿って種子溝(19b)を覆う種子落下防止部材(41)を落下調節部材(42)よりも繰出回転体(19)側に設けたことを特徴とする直播機とした。
【0008】
請求項2に記載の発明は、
前記繰出回転体(19)の種子溝(19b)から種子が落下する落下位置の直前で、且つ種子落下防止部材(41)の先端部よりも繰出回転体(19)の回転方向下手側に落下調節部材(42)の先端部が位置するように、落下調節部材(42)を設けたことを特徴とする請求項1記載の直播機とした。
【0009】
請求項3に記載の発明は、前記繰出回転体(19)の種子溝(19b)の回転方向上手側の外周面にそれぞれ突起体(51)を設け、前記繰出回転体(19)を該突起体(51)
が落下調節部材(4
2)に接触する位置に配置し
、落下調節部材(42)は突起体(51)により押されると繰出回転体(19)から離間する構成であることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の直播機とした。
【0010】
請求項4に記載の発明は、前記
支持ケース(50)に、清掃部材(23)とは別に、空になった種子溝(19b)の内部の汚れを除去する清掃ブラシ(60)を設けたことを特徴とする請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載の直播機とした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の発明によれば、繰出回転体(19)のメンテナンスを行う際に、支持ケース(50)に清掃部材(23)を設けた取付部材(50a)を取り付け、この清掃部材(23)の端部側を繰出回転体(19)の種子溝(19b)に入り込ませて繰出回転体(19)を回転させると、種子溝(19b)に残留する種子や夾雑物を取り除くことができるので、作業者が播種機を分解し、他の部品を取り外して繰出回転体(19)を取り出して掃除する必要がなくなり、作業者の労力が大幅に軽減されると共に、余分な部品を取り外す必要が無く、メンテナンス性が向上する。
【0013】
そして、播種作業時に清掃部材(23)を設けると、清掃部材(23)が繰出回転体(19)の種子溝(19b)内の種子の上部を掻き均して種子溝(19b)内の種子量を一定にするため、圃場に播種される種子の量にバラつきが生じにくく圃場全体の苗の植生密度を略均等にすることができるので、太陽光が均一に当たり生育が安定すると共に、風通しがよくなるので病害虫が発生しにくく、収穫量が安定する。
【0014】
さら
に、落下調節部材(4
2)を設けたことにより、こ
の落下調節部材(4
2)の下端部側に種子溝(19b)から落下した種子を載せておくことができるので、一定量の種子を規則的に繰出回転体(19)の下方に繰り出して、種子を圃場に規則正しく播くことが可能となり、後工程の除草作業や収穫作業の能率が向上する。
【0015】
また、繰出回転体(19)から種子が落下する位置
を落下調節部材(4
2)で調節することにより、種子が落下する際にあちこちに拡散することを防止できるので、一定量の種子を規則的に繰出回転体(19)の下方に繰り出して、種子を圃場に規則正しく播くことが可能となり、後工程の除草作業や収穫作業の能率が向上する。
【0016】
また、種子の落下位置よりも繰出回転体(19)の回転方向上手側から種子が落下することを防止する種子落下防止部材(41)を設けたことにより、種子
は落下調節部材(4
2)で決められた落下位置から圃場に播か
れ、稲が条毎に略直線状に植生するので、後工程の収穫作業除草作業や収穫作業の能率が向上する。
【0017】
請求項2記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加えて、繰出回転体(19)の種子落下位置の直前で、且つ種子落下防止部材(41)の先端部よりも繰出回転体(19)の回転方向下手側に落下調節部材(42)の先端部が位置するように、落下調節部材(42)を設けることで、落下調節部材(42)は種子溝(19b)と種子落下防止部材(41)の間から落下した種子を一時的に受け止める機能を有する。そして、一時的に受け止められた種子は繰出回転体(19)の回転により、落下調節部材(42)と種子溝(19b)との間に生じる間隙から一斉に繰出回転体(19)の下方へ落下する。
従って、この一連の種子の繰出し過程により、種子溝(19b)内の種子が任意のタイミングで繰り出されることなく、また、落下調節部材(42)から落下した種子をスムーズに規則性を維持して圃場に播くことが可能となる。
【0018】
請求項3記載の発明によれば、請求項1
又は請求項2に記載の発明の効果に加えて、繰出回転体(19)の外周面で且つ種子溝(19b)の回転方向上手側に突起体(51)を形成したことにより、繰出回転体(19)が回転して突起体(51)
が落下調節部材(4
2)に接触する
と、落下調節部材(4
2)が突起体(51)に押され、繰出回転体(19)から確実に離間することで種子が下方に落下する間隔部が生じるため、種子溝(19b)内の種子
と落下調節部材(4
2)で受けられた種子とをこの間隔部から一斉に繰出回転体(19)の下方に繰り出すことができるので、一定量の種子を規則的に繰出回転体(19)の下方に繰り出して、種子を圃場に規則正しく播くことが可能となり、後工程の除草作業や収穫作業の能率が向上する。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1
から請求項3のいずれか1項に記載の発明の
効果に加えて、
空になった種子溝(19b)内に付着した粉等の汚れを清掃ブラシ(60)により容易に除去することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。
図1の直播機の側面図に示すように走行車体1は、操舵用の左右の前輪10、10’と推進用の左右の後輪11、11’とを設け、中央のエンジンルーム(エンジンという場合もある)12上に操縦座席13を配置して設け、水田の耕盤上を回転しながら走行できる構成としている。そして、昇降リンク14は、上下一対の平行リンクからなり、前部が前記走行車体1の後部機枠15に枢着連結し、後部に連結用のヒッチ16を取り付け、車体1側の油圧シリンダ17によって昇降する構成としている。そして、前記ヒッチ16には、以下具体的に説明する直播機を取り付けて支持し、上下昇降自由に構成している。
【0022】
本明細書では直播機の前進する方向を前、後退する方向を後といい、前進方向に向かって左側と右側をそれぞれ左右という。本発明に係る繰出装置6は、直播機の後部に設ける構成とする。
【0023】
つぎに、直播機の構成に係る作用について、図面と共に具体的に述べる。まず、繰出装置6は、
図4に示すように、円筒状の外周に多数の種子溝19bを形成した繰出ロール19を種子タンク5の下側に臨ませて伝動可能に水平方向の回転軸19aを支持ケース50に軸架して設け、その下方には種子を搬送する移送管(図示せず)の始端部を臨ませて設けた構成としている。エンジン12からの動力は入力スプロケット(図示せず)に伝達されて繰出ロール19と一体の回転軸19aが回動する。
【0024】
そして、種子タンク5は、
図1および
図2に示すように、走行車体1の後部に連結した直播機の構成部材の一つとして搭載している。つぎに、
図1に示すように、前記繰出装置6の下側の後に円筒形状のエアチャンバ9を横向きに配置して設け、エアチャンバ9の一端に起風翼車8を連結し、他端を蓋で密封して起風された空気を貯留できる構成としている。また、移送管7の搬送始端部を開口して前記エアチャンバ9に連通して設けることで、高圧状態で貯留した空気(送風)が移送管7に送り込まれ、前述のように上方から供給されてくる所定量の種子を空気搬送するように構成している。
【0025】
このようにして、移送管7は、その始端部をエアチャンバ9に連通し、終端部側を圃場面に近い側に向けて延長し、播種位置に設けている播種管2a、2bにそれぞれ連通して構成している。そして、接地面に設けて、迎い角センサ44の検出値に応じてその上下位置が制御され、表土を均しながら滑動するフロート24に播種管2a、2bを取り付け、前進に伴って整地された圃場面に種子を噴出し、播種する構成である。
【0026】
そして、
図3に示すように、前述した播種管2a、2bを設けている播種条の後方に覆土板25をそれぞれ配置している。覆土板25は、圃場が硬い場合は支点軸25aを中心として右方向に回動して播種位置に土を寄せ集め、圃場が軟らかく、泥土の状態の場合は支点軸25aを中心として左側に回動して播種位置に土を寄せないようにし、平面視で左右方向の角度が変更調節できる構成である。なお、圃場の硬度はアーム45を介してヒッチ16に取り付けられた硬軟センサ40が圃場面に接地して回転することで検出できる。
【0027】
このように、覆土板25はワイヤー33の緊張と弛緩によって回動する構成である。例えば操縦座席13に感度調節レバー48を設け、該感度調節レバー48にケーブル33を接続させれば、オペレータが感度調節レバー48を操作することで容易に覆土板25の覆土調整量を変えることができる。
【0028】
また、
図2に示す前記フロート24、24の間の点線部分X、Yの位置に、作溝器(図示せず)を設け、走行車体1の前進に伴って圃場面に排水溝を形成するように構成しても良い。
そして、作溝器と前記播種管2とは左右の後輪11、11’が通過した後に、播種条の側方に沿わせて略平行に排水溝を形成する関係位置に配置すれば良く、取付け位置の前後関係は自由に選択すれば良い。なお、
図1に示すように、肥料は肥料タンク29から肥料移送管30、施肥管31を経て圃場に施肥される。
【0029】
上記のように構成した直播機を、整地作業が終わって湛水状態にした圃場に入れて肥料タンク29に肥料を充填し、種子タンク5には種子を充填して前進させて播種作業を開始する。そして、作業を開始すると、種子タンク5内の種子は
図4に示すように、水平方向に回転軸19aを設け、該回転軸19aの周りを矢印Bに示す方向に回転する円筒形状の繰出ロール19に達し、繰出ロール19の円筒形状部分の外周の種子溝19bにそれぞれ供給されて溜り、回転方向に送られる。そのとき、種子溝19b内の種子は、繰出ロール19の回転上部にあるブラシ23にて表面が均平に均されて定量となり、繰出ロール19の回転に伴って下方の移送管7の搬送始端部に落下する。そのとき、エアチャンバ9には、起風翼車8によって起風された圧縮空気が貯留されており、連通している各移送管7に流入することになる。
【0030】
こうして、種子はエアチャンバ9から吹き込まれてくる圧風によって移送管7内を空気搬送されて先端側の播種管2a、2bに達し、フロート24によって整地された後の圃場に噴出、播種される。そして、覆土板25は、進行方向に対して所定の角度を保ち圃場面の表土を掻き寄せ、種子が播かれている播種溝の上に覆土を行い、播種作業を完了する。直播機は、上記した方法で走行車体1の前進に伴って湛水した圃場面に播種作業を行なう。
【0031】
そして、繰出ロール19の一部表面をブラッシングするためのブラシ23を前記繰出ロール19上部に設ける。ブラシ23は種子溝19b内の種子を掻きならして種子溝19b内の種子量を均一にすると共に繰出ロール19の表面に付着した種子を掃き取る作用を有する。なお、清掃部材23の基部から端部までの長さは、取付部材50aを支持ケース50に取り付けると清掃部材23の端部側が繰出回転体19の種子溝19b内に入り込む長さとしている。
【0032】
図4(a)は、繰出ロール19とブラシ23、種子案内ガイド41、第1シャッタ42、および受網56を設置した繰出装置6の縦断面図を示す。また、
図4(b)は
図4(a)の矢印A方向からの繰出ロール19の矢視図である。
【0033】
本実施例では、繰出ロール19の外周に等間隔に4つの種子溝19bが設けられている。また、種子溝19b内の種子を掻きならすためのブラシ23が、繰出ロール19の上部外周面を繰出ロール19の左右方向に渡ってブラシ面で覆って繰出ロール19の上部の支持ケース50の取付プレート50aに設置されている。
【0034】
さらに、前記支持ケース50の取付プレート50aに第1シャッタ42の基部を吊り下げ、回転軸19aの下方の繰出ロール19の外周近傍で、かつ繰出ロール19の回転により種子溝19bから種子が落下する種子溝19bの位置よりも下方に第1シャッタ42の先端部が達するように位置させる。
【0035】
種子案内ガイド41は、その基部を繰出ロール19の上方のケース取付プレート50aのブラシ2
3の近傍に吊り下げるように固定され、その中間部は繰出ロール19の外周面との間に1mm程度の隙間を設けるように設置され、さらに種子案内ガイド41の先端部を第1シャッタ(落下調節部材)42の先端部の回転方向直前に位置させる。
【0036】
上記構成において、まず、種子タンク5内に貯留されている種子が、回転中の繰出ロール19の一番上側に位置する種子溝19bに入りこむ。その後、繰出ロール19の回転に伴って種子溝19b内の種子は該ブラシ23により掻きならされて、種子溝19b内の種子は掻きならされて、それぞれの種子溝19b内でほぼ均一な量の種子が溜まることになり、繰出ロール19の回転に伴って下方向に送り出される。種子案内ガイド41は、種子溝19bを覆うように、かつ繰出ロール19の外周面との間に1mm程度の隙間を設けるように設置される。このとき、種子案内ガイド41は繰出ロール19の上方のブラシ23の設置されているケース取付プレート50aに設置され、該設置箇所から繰出ロール19の回転軸19aの高さとほぼ同じ高さ位置に至るまでの繰出ロール19の外周面に配置されるので(
図4(a))、搬送の際、種子溝19b内の種子は、種子案内ガイド41によって種子溝19b内に保持され、該溝19bからこぼれ落ちることなく繰出ロール19の回転に伴って種子案内ガイド41の先端部に至るまで搬送される。
【0037】
上述の通り、第1シャッタ42の先端部は種子案内ガイド41の先端部の下方で繰出ロール19の外周面に近接する部位に位置していることから、第1シャッタ42は、種子溝19bと種子案内ガイド41の間から落下した種子を一時的に受け止める機能を有する。種子溝19bから該第1シャッタ42上に落下した種子は、繰出ロール19の回転により、種子溝19bが第1シャッタ42の先端に来た後に、第1シャッタ42と種子溝19bの間に間隙が生じ、その間隙から一斉に繰出ロール19の下方へ落下する。
【0038】
以上の繰出ロール19とその周辺部材による一連の種子の繰出し過程により、本実施例では、種子溝19b内の種子が任意のタイミングで繰り出されることなく、また、第1シャッタ42から落下した種子を繰出ロール19の下方の繰出装置6の壁面に当たることもなくスムーズに規則性を維持して圃場に播くことが可能となる。
【0039】
さらに、上記構成はブラシ23と種子案内ガイド41と第1シャッタ42が支持ケース50に一体に取り付けられていることから、支持ケース50を走行車両から取り外す時に、それらの部材23,41及び42も一体として取り外すことが可能となり、従来のように、播種機6の内部のメンテナンスの際に、繰出ロール19の他、繰出装置6の内部の部材等を1つずつ取り外す煩わしさを解消できる。
【0040】
図4における実施例では、種子を繰り出した後の種子溝19bが繰出ロール19の回転に伴って、繰出ロール19の下方から上方に向かって移動する側における繰出回転軸19aの高さとほぼ同じ高さ位置の繰出ロール19の外周面の位置に、繰出装置6内部の後方の支持ケース50の側壁から繰出ロール19の外周面近傍に至るまでの間で、隙間から種子がこぼれ落ちないように受網56を水平方向に向けて支持ケース50の壁面に基部を支持させて設置した。
【0041】
受網56は、肥料をコーティングした種子を播種に用いた際に、種子から肥料が剥がれ落ちることにより生じる肥料の粉末(カルパ粉)が種子タンク5内に堆積しないようにし、同時に受網56上に肥料の粉末を溜めた後に、受網56上に溜まった肥料の粉末を種子タンク5内から除去するために設置した部材である。従って、受網56の網目の大きさは、カルパ粉は抜け落ちることができるが、種子は抜け出ることがないように、種子よりも小さいサイズのものとする。
【0042】
図5(a)に示す実施例は、繰出装置6内の繰出ロール19の外周面上の種子溝19bの回転方向前方の左右両側外周面にそれぞれ突起体51を設け、繰出ロール19の回転に伴って、種子溝19bにより種子が搬送される側の繰出装置6の支持ケース50内壁に回動自在な支点として設置した第2シャッタ43を固定した繰出装置6の縦断面図である。
【0043】
突起体51は、後述するように第2シャッタ43と繰出ロール19の外周面の間隙から種子を繰出すことを目的として設置されたものであるので、突起体51の大きさは、第2シャッタ43との接触により繰出ロール19の回転が阻害されるほど大きなものではなく、また種子が通り抜けることができないほど小さいものではないものとする。
【0044】
図5(b)は
図5(a)の矢印Aの矢視図である。第2シャッタ43の他端は、前記突起体51と衝突するように、繰出ロール19の回転軸19aの下方に設置する。
図5(b)では、第2シャッタ43の先端部の位置を点線で示した。矢印Bは繰出ロール19の回転方向を示す。
【0045】
本構成において、繰出ロール19の特定の種子溝19bが繰出ロール19の回転により種子タンク5の下方に位置したときに、種子タンク5内に貯留されている種子は前記特定の種子溝19bの内部に入り込む。該種子溝19b内に種子が満杯で入った状態でブラシ23により種子溝19bの山盛りとなった種子の上部が掻きならされて、種子溝19b内部の種子量が一定となった後に、繰出ロール19の回転により繰出ロール19の下方に搬送される。搬送の過程で種子溝19b内から落下した一部の種子は、第2シャッタ43の上部に落下して保留される。
【0046】
繰出ロール19の回転に伴って第2シャッタ43の先端部は、種子溝19bの左右両側に設置された突起51によって押される。第2シャッタ43が押されることにより、繰出ロール19の外周面と第2シャッタ43の間に隙間が生じ、その隙間から種子溝19b内の種子と第2シャッタ43上に保留された種子が繰出ロール19の下方に一斉に繰り出される。
【0047】
上記の一連の動作により、一定量の種子が一定間隔で規則正しく圃場に播種され、後の作物の回収の高効率化を可能とする。
【0048】
なお、本実施例において、繰出回転体51の外周に突起51を設置することなく、繰出ロール19の回転により、第2シャッタ43が該種子溝19bの上側に至った時に、第2シャッタ43と繰出ロール19の外周面との間に生じる隙間から種子を繰出すことで種子溝19bから種子の開放のタイミングをとる構成としてもよい。
【0049】
図6に示す実施例は、繰出装置6において、繰出ロール19の種子溝19bにより搬送される種子が繰出ロール19bの回転に伴って落下する位置の下方近傍に第2シャッタ43が揺動可能に繰出装置6の支持ケース50の側壁に設置される。平板状の第2シャッタ43の設置部位の下方近傍において、繰出ロール19の外周面を対向するケースの側壁面に設置したネジ軸の突出長さを調節できるネジ部材53の先端部を第2シャッタ43の裏面に当接させて支持する。この時、該第2シャッタ43の設置角度はネジ53のネジ軸の長さにより調節可能であり、繰出ロール19の回転速度の変化に応じて変化する種子の落下スピードに対応して、第2シャッタ43の傾斜角度を調節することで、繰出ロール19から落下した種子の飛散する方向を一定方向に定めることができる。
【0050】
図7に示す実施例は、繰出装置6において、支持ケース50側壁で繰出回転軸19aとほぼ同じ高さに回転軸54aを有し、繰出ロール19よりも半径が短い弾性回転体54を、繰出ロール19の外表面と弾性回転体54の外表面が向かい合うように接触させて設置した構成としたものである。
【0051】
本実施例において、弾性回転体54は繰出ロール19の種子溝19bによって種子が搬送される側に設置されており、また弾性回転体54の回転は繰出ロール19と接触していることで、繰出ロール19の回転動力を利用して回転することができる構成である。
【0052】
弾性回転体54を設置することで、種子溝19bで搬送された種子は、繰出ロール19の外周面と接触する位置の上部で種子溝19bからこぼれ落ちても、弾性回転体54の外周面で受け止められ、その後、繰出ロール19の回転により種子溝19bが繰出ロール19と弾性回転体54が接触する位置に移動したときにこぼれ落ちた種子は再び種子溝19bに入り込んで繰出ロール19の下方に繰り出される。
【0053】
本実施例の回転体54を用いる繰出方法によれば、
図4〜
図6に示す第1シャッタ42、第2シャッタ43を用いた繰出方法のように、種子溝19bから落下する種子が前記実施例の第1シャッタ42、第2シャッタ43に衝突することなく、種子に被るストレスを低減することが可能なことから、種子の発芽率が向上するとともに作物の収穫量が向上する。また、繰出ロール19からこぼれ落ちた種子が、繰出ロール19の外周面と弾性回転体54の外周面に挟み込まれたとしても、弾性回転体54は弾性部材で構成されているために、種子が挟み込まれることにより破壊されることはない。
【0054】
図8に示す実施例は、繰出装置6において繰出ロール19の回転により種子溝19bにより繰出ロール19の下方に種子が繰出された後に、空になった種子溝19bの内部の汚れを除去するために、清掃ブラシ60をカバー50の繰出回転軸19aと同程度の高さに設置した構成としたものである。
本実施例において、設置した清掃ブラシ60の毛は、種子溝19bの溝内部の面に届く長さとし、また清掃ブラシ60は、種子を繰りだした後に空となった種子溝19bの清掃に適したカバー50の側壁に設置する。
本実施例の構成によれば、特に空になった溝内に付着したカルパ粉(肥料をコーティングした種子を播種に用いた際に、種子から肥料が剥がれ落ちることにより生じる肥料の粉末)等の汚れを
清掃ブラシ60により容易に除去することが可能となる。
【0055】
図9に示す実施例は、
図8に示す実施例における溝清掃ブラシ60に代えて、繰出ロール19の種子溝19bを掃除する溝掃除用のエアーノズル61を設置した構造としたものである。該エアーノズル61の設置により、種子が繰出ロール19から繰り出された後に、空になった種子溝19bに付着した前記カルパー粉等の汚れをエアー供給源63からのエアーノズル61の風圧により容易に除去することができる。
【0056】
なお、
図8,
図9に示される繰出ロール19の上部に設置したブラシ23は、
図4に示すブラシ23と同様の目的で設置されたものである。すなわち、種子溝19bの種子量を均一にすると共に、繰出ロール19の表面に付着した種子を掃き取る作用を果たすためのブラシである。
【0057】
図10に示す実施例は、繰出装置6において、繰出装置6内の繰出ロール19の上部に、
図8、
図9で説明した清掃用部材60,61に代えて、繰出ロール19の種子溝19bを掃除する溝掃除専用ブラシセット62を繰出ロール19の上部に設置した構造としたものである。該清掃ブラシセット62は、メンテナンス時に繰出装置6清掃の際に種子タンク5を外して設置する。該清掃ブラシセット62を設置した状態で繰出ロール19を回転させると、溝内に付着した前記カルパー粉等の汚れを容易に除去することができる。
【0058】
な
お、図10に示す実施例では
図4〜
図6に示す第1シャッタ42
又は第2シャッタ43を用いない例を図示しているが、
図4〜
図6に示す第1シャッタ42
又は第2シャッタ43を装着することが望ましい。
【0059】
図11は、繰出装置6において、種子タンク5の底面部で、繰出ロール19の近傍の支持ケース50側壁に磁石70を設置することで、鉄コーティングされた種子からはがれ落ちた鉄粉を磁力により寄せ集め、鉄粉を回収し易い構造とし、さらに種子取出口64を設け、繰出装置6内の種子を外から取出すことを可能とした実施例である。
【0060】
ここで「鉄コーティングされた種子」とは、鳥が種子を食べることができないように、種子の周囲に鉄粉をコーティングした鉄コーティング種子のことである。該鉄コーティング種子を従来の直播機で繰り出すと、鉄コーティング種子から剥がれ落ちた鉄粉が強固に機体に固着してしまう問題点があった。
【0061】
そこで、繰出装置6のケース内で、繰出ロール19の近傍に磁石70を設置することにより、種子タンク5で剥がれ落ちた鉄粉が繰出ロール19の種子溝19bに入り込む以前に、磁石70に吸着させて、作業終了後に剥がれ落ちた鉄粉の除去を容易に行えるようにした構成としたものである。