(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
不織布からなる第1長尺シートと、液不透過性材料からなる第2長尺シートとを積層した状態で、前記第1長尺シートと前記第2長尺シートとを、各シートの長手方向に間欠的に接合して、前記第1長尺シートと前記第2長尺シートとが積層された積層シートを得る工程を備え、
前記第1長尺シートと前記第2長尺シートとを前記シートの長手方向に送り出し、且つ、前記第2長尺シートを、前記第1長尺シートよりも、前記第2長尺シートの長手方向に伸張させた状態で、前記第1長尺シートと前記第2長尺シートとを、前記シートの長手方向に直交する方向に間欠的に接合するとともに、前記シートの長手方向にも間欠的に接合することにより、間欠的に接合した接合部分の間にて前記第1長尺シートの表面が間欠的に盛り上がった弛み部を有する吸収性物品用積層シートを製造する吸収性物品用積層シートの製造方法であって、
前記第1長尺シートと前記第2長尺シートとを、前記接合部分の間に形成される前記弛み部が、前記シートの幅方向に整列に配置、又は前記シートの幅方向に千鳥状に配置されるように間欠的に接合するとともに、
前記シートの長手方向に間欠的に接合する接合部分の長さよりも、前記シートの長手方向に直交する方向に間欠的に接合する接合部分の長さを大とし、且つ、前記シートの長手方向に間欠的に接合する際の間隔Pを5〜10mmとし、
前記第1長尺シートと前記第2長尺シートとの接合が熱エンボスによって行われ、前記熱エンボスによる凹凸パターンを、前記第1長尺シートが配置された面側に形成し、且つ、前記第2長尺シートが配置された面側は、平坦面のエンボスロールを用いて、当該第2長尺シートの表面に凹凸が形成されないようにする吸収性物品用積層シートの製造方法。
前記第2長尺シートを、非伸張状態における長さを100%とした場合に、103〜125%となる長さに伸張させた状態で、前記第1長尺シートと間欠的に接合する請求項1に記載の吸収性物品用積層シートの製造方法。
非伸張状態における前記第2長尺シートの送り出し量を100%とした場合に、前記第1長尺シートの送り出し量を、103〜120%とする請求項1又は2に記載の吸収性物品用積層シートの製造方法。
前記第1長尺シートと前記第2長尺シートとを、前記シートの長手方向における接合部分の間隔を、5〜15mmとする請求項1〜3のいずれか一項に記載の吸収性物品用積層シートの製造方法。
吸収体と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、前記吸収体の表面を被覆するように配置されたトップシートと、液不透過性材料からなり、前記吸収体の裏面を被覆するように配置されたバックシートと、を備え、
前記バックシートの少なくとも一部として、請求項5に記載の吸収性物品用積層シートが用いられた吸収性物品。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0024】
[1]吸収性物品用積層シートの製造方法:
本発明の吸収性物品用積層シートの製造方法の一実施形態は、
図1に示すように、不織布からなる第1長尺シート11と、液不透過性材料からなる第2長尺シート12とを積層した状態で、第1長尺シート11と第2長尺シート12とを、各シート11,12の長手方向Xに間欠的に接合して、第1長尺シート11と第2長尺シート12とが積層された積層シート13を得る工程を備えた吸収性物品用積層シートの製造方法である。
【0025】
ここで、
図1は、本発明の吸収性物品用積層シートの製造方法の一の実施形態を模式的に示す説明図であり、
図2は、本発明の吸収性物品用積層シートの製造方法の一の実施形態における二枚のシートを積層する方法を拡大して模式的に示す斜視図である。なお、符号「21」は、第1長尺シート11と第2長尺シート12とを間欠的に接合する接合部を示す。各シート11,12の長手方向を、符号「X」で示し、この各シート11,12の長手方向Xに直交する方向を、符号「Y」(
図2に図示)で示す。
【0026】
本発明の吸収性物品用積層シートの製造方法は、上述した積層シート13を得る工程において、第1長尺シート11と第2長尺シート12とを、それぞれシートの長手方向Xに送り出し、且つ、第2長尺シート12を、第1長尺シート11よりも、第2長尺シートの長手方向Xに弾性的に伸張させた状態(第2長尺シート12a)で、第1長尺シート11と第2長尺シート12aとを間欠的に接合するものである。
【0027】
このように第1長尺シートと第2長尺シートとを間欠的に接合することによって、柔らかな風合いを有し、吸収性物品の外側に配置されるシートとして好適に用いることができる吸収性物品用積層シートを簡便に製造することができる。更に、本発明の吸収性物品用積層シートの製造方法によって得られる吸収性物品用積層シート(以下、単に「積層シート」ともいう)は、
図3に示すように、弾性的に伸張させた状態の第2長尺シート12aが、非伸張状態に収縮することにより、
図4に示すように、間欠的な接合部21の間にて、第1長尺シート11bに弛み(だぶつき)が生じ、第1長尺シート11bの表面側が間欠的に盛り上がった弛み部14を有するものとなる。これにより、本発明の吸収性物品用積層シートの製造方法によって製造される積層シート(即ち、伸張させた状態の第2長尺シート12aが収縮した状態の第2長尺シート12bと、第2長尺シート12bの収縮によって弛み部14を有する第1長尺シート11bとによって構成される積層シート13b)は、上記弛み部14によって極めて柔らかな風合いを有するものとなる。
【0028】
特に、本発明の吸収性物品用積層シートの製造方法においては、弛み部14が形成されるシート(即ち、第1長尺シート)以外のシート(即ち、第2長尺シート)を、長手方向に弾性的に伸張させた状態で間欠的に接合を行うことによって、第2長尺シートの収縮によって、第1長尺シートに対して弛み部14を形成することができ、極めて簡便に、柔らかな風合いを有する吸収性物品用積層シート13bを製造することができる。
【0029】
ここで、
図3は、本発明の吸収性物品用積層シートの製造方法によって得られる吸収性物品用積層シートの長手方向に平行な断面を模式的に示す断面図であり、第2シートが弾性的に伸張した状態を示す。また、
図4は、本発明の吸収性物品用積層シートの製造方法によって得られる吸収性物品用積層シートの長手方向に平行な断面を模式的に示す断面図であり、第2シートが非伸張状態に収縮した状態を示す。
【0030】
なお、本発明の吸収性物品用積層シートを製造する方法は、例えば、
図1及び
図2に示すように、不織布からなる第1長尺シート11を供給する第1供給ロール23と、液不透過性材料からなる第2長尺シート12を供給する第2供給ロール27と、第1長尺シート11と第2長尺シート12とを間欠的に接合する一対の接合用ロール29(上ロール29a及び下ロール29b)と、間欠的に接合された長尺積層シート13を、その長手方向に所定の間隔で切断して、所望の長さの吸収性物品用積層シート13cを得る切断部33と、吸収性物品用積層シート13cを搬送する搬送コンベア35と、を備えた吸収性物品用積層シート製造装置(以下、単に「積層シート製造装置」ということがある)100によって行うことができる。
【0031】
なお、不織布からなる第1長尺シートは、例えば、吸収性物品の外側を構成するシート、例えば、カバーシート等に使用することができる。一方、液不透過性材料からなる第2長尺シートは、排泄物等の液体を、吸収性物品の外部に漏洩してしまうことを防止するシート、例えば、吸収性物品が使い捨ておむつの場合には、液不透過性材料からなるバックシート等に使用することができる。即ち、本発明の吸収性物品用積層シートの製造方法によって得られる積層シートは、吸収性物品のカバーシートが、バックシートと一体となった複合シート(複合カバーシート或いは複合バックシート)等として用いることができる。なお、液不透過性材料からなる第2長尺シートは、弾性的に伸縮するものであることが必要である。
【0032】
カバーシートとは、例えば、使い捨ておむつ等の外側を構成する外装材のことを意味する。不織布の種類についても特に制限はなく、エアスルー(カード熱風)、カードエンボス、スパンボンド等の各種製法によって製造された従来公知の不織布を好適に用いることができる。
【0033】
また、バックシートとは、吸収性物品に用いられる吸収体の裏面(装着時において着用者の肌から遠い側に位置する面)を被覆するように配置されるシートのことを意味する。このバックシートは、着用者の尿が外部に漏洩してしまうことを防止する必要から、液不透過性材料によって構成される。液不透過性材料からなるシート(第2長尺シート)としては、例えば、ポリエチレン等の樹脂からなるシート(フィルム)等を挙げることができ、中でも、微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。この微多孔性ポリエチレンフィルムは、0.1〜数μmの微細な孔が多数形成されており、液不透過性ではあるが透湿性を有するため、吸収性物品内部の蒸れを防止することができるという利点がある。
【0034】
第1長尺シートの厚さ及び第2長尺シートの厚さは、特に制限はなく、得られる積層シートの使用目的、例えば、使用対象となる吸収性物品の種類等に応じて適宜決定することができる。
【0035】
本発明の吸収性物品用積層シートは、
図1に示すように構成された吸収性物品用積層シート製造装置100を用いて製造することができるが、
図1に示す吸収性物品用積層シート製造装置100に限定されることはなく、第1長尺シート11と第2長尺シート12とを、シートの長手方向に送り出し、且つ、少なくとも第2長尺シート12を、第1長尺シート11よりも、上記シートの長手方向Xに伸張させた状態で、第1長尺シート11と第2長尺シート12とを間欠的に接合することが可能なものであればよい。例えば、
図1においては、一対の接合用ロール29によって、第1長尺シート11と第2長尺シート12とを間欠的に接合する場合の例を示しているが、接合方法については、上記接合用ロール29を用いた方法に限定されることはない。第1長尺シートと第2長尺シートとの接合は、例えば、従来公知の吸収性物品の製造方法において、二枚のシートを接合する際に用いられる種々の方法を用いることができる。例えば、熱エンボス、超音波融着、ホットメルト接着剤による接着、及び熱可塑性樹脂による接着からなる群より選択される少なくとも一種の方法により行うことが好ましい。
【0036】
熱エンボスによって第1長尺シートと第2長尺シートとを接合する場合には、フィルム等によって構成される第2長尺シート側を、エンボスのプレーン面とし、不織布等によって構成される第1長尺シート側を、エンボス面とす
る。このように構成することによって、良好な風合いの積層シートを得ることができる。このような熱エンボスによる接合は、第2長尺シートを構成するフィルムの融点以下の温度で行うことが好ましい。
【0037】
また、超音波融着によって第1長尺シートと第2長尺シートとを接合する場合には、不織布等によって構成される第1長尺シート側に、超音波融着のパターンを施すことが好ましい。また、ホットメルト接着剤による接合は、第1長尺シートと第2長尺シートとのうちの少なくとも一方のシートの表面に、パターン塗工(例えば、ホットメルト印刷)することによってホットメルト接着剤を塗布することが好ましい。また、熱可塑性樹脂による接合においては、熱可塑性樹脂をパターン塗工した後、シート同士を加熱接着することによって接合することが好ましい。これらの方法によれば、二枚のシートを良好に接合することができる。また、得られる積層シートの風合いも良好となる。
【0038】
以下、本発明の吸収性物品用積層シートの製造方法を更に詳細に説明する。本発明の吸収性物品用積層シートの製造方法においては、
図1に示すように、不織布からなる第1長尺シート11を供給する第1供給ロール23と、液不透過性材料からなる第2長尺シート12を供給する第2供給ロール27とを、積層シート製造装置100に装着し、各供給ロール23,27からシート11,12を供給する。
【0039】
この際、第1長尺シート11と第2長尺シート12とを、シートの長手方向Xに送り出す。本発明の吸収性物品用積層シートの製造方法においては、それぞれのシートの送り出し量(繰り出し量ともいう)が異なるように各シートを送り出すことが好ましく、第2長尺シート12の送り出し量に対して、第1長尺シート11の送り出し量を多くすることが更に好ましい。
【0040】
なお、シートの「送り出し量」とは、シートを供給する供給ロール等から繰り出されるシートの非伸張状態における長さのことをいう。即ち、
図1に示すような第1供給ロール23及び第2供給ロール27から供給される長尺シートの、非伸張状態における長さを、その長尺シートの送り出し量とする。
【0041】
第2長尺シート12の送り出し量が少なくなる分については、第2長尺シート12を送り出した後、第2長尺シート12を弾性的に伸張させることにより、接合時において各シート(即ち、第1長尺シート11と伸張させた状態の第2長尺シート12a)の長さが同じ長さとなるようにする。
【0042】
第1長尺シートの送り出し量、及び第2長尺シートの送り出し量については、得られる積層シートの弛み部の大きさ(即ち、第1長尺シートに弛みができる量)に応じて適宜決定することができる。即ち、第2長尺シート12の送り出し量が少なくなる分が、積層シートの弛み部となる。例えば、特に限定されることはないが、第2長尺シートの送り出し量を100%とした場合に、非伸張状態における第1長尺シートの送り出し量を、103〜120%とすることが好ましく、105〜120%とすることが更に好ましい。
【0043】
このように構成することによって、第2長尺シートの収縮により、第1長尺シートに弛み部が良好に形成され、柔らかな風合いを有する積層シートを得ることができる。なお、第1長尺シートの送り出し量が120%を超えると、第1長尺シートの弛み部が過剰に大きくなり、逆に積層シートの風合いを損ねてしまうことがある。また、第2長尺シートを過剰に伸張させることとなり、第2長尺シートを傷めてしてしまうことがある。一方、第1長尺シートの送り出し量が105%未満であると、第1長尺シートと第2長尺シートとの送り出し量の差が小さ過ぎて、十分な大きさの弛み部が形成されないことがある。
【0044】
次に、本発明の吸収性物品用積層シートの製造方法においては、
図1及び
図2に示すように、異なる送り出し量の第1長尺シート11と第2長尺シート12とが、積層及び接合時において、それぞれのシートの搬送される長さが同じになるように、少なくとも第2長尺シート12を、第1長尺シート11よりも長手方向Xに弾性的に伸張させる。
【0045】
第1長尺シート11の送り出し量に合わせて、送り出し量の少ない第2長尺シート12を伸張させる際には、例えば、
図1に示すような、一方のシートの張り(即ち、シートに掛かるテンション)を調整することにより、その伸張状態を制御することができる。
【0046】
図1においては、接合用ロール29の前段にニップロール43を配置し、このニップロール43にて第2長尺シート12の送り出し量を調整する場合の例を示している。このニップロール43の更に前段には、シートテンションを検出するダンサーロール41が配置されている。
【0047】
ダンサーロール41は、二つの中間ロール41b,41bと、この中間ロール41b,41b間に上下動自在に設けた変位ロール41aとから構成されており、第2長尺シート12に作用するテンションが変化すると、その変化に応じて、変位ロール41aが上下に変位する。このため、変位ロール41aの上下位置を一定に保つように、第2長尺シート12の送り出し量を調整することにより、第2長尺シート12に作用するテンションを一定に保つことができる。
【0048】
また、
図1においては、第1供給ロール23から供給される第1長尺シート11においても、ダンサーロール42(変位ロール42a、中間ロール42b)を用いて第1長尺シート11のテンションを検出し、この検出信号に基づいて第1長尺シート11の送り出し量を制御するように構成された場合の例を示している。これにより、第2長尺シート12の送り出し量を制御するだけでなく、第1長尺シート11の送り出し量についても制御して、第2長尺シート12を簡単かつ確実に第1長尺シート11よりも伸張させることができる。
【0049】
なお、ダンサーロール41には、変位ロール41aの上下位置を検知するセンサ(図示せず)が備えられており、第2長尺シート12の搬送途中のテンション(即ち、変位ロール41aの上下位置)を、上記センサーにて検出し、このセンサーから送信される検出信号に基づき、第2長尺シート12の送り出し量を調整(コントロール)することができる。即ち、ダンサーロール41が、第2長尺シート12の送り出し量の制御に伴うテンションの変動を検出し、この検出結果に基づき第2長尺シート12の送り出し量(換言すれば、送り出し速度)を制御して、第2長尺シート12の伸張状態を一定に保つことができる。
【0050】
また、第2長尺シートの送り出し量を制御する方法としては、上記したダンサーロールの変位をセンサーにて検出して第2長尺シートのテンションを検知する方法に限定されることはなく、例えば、感圧センサーを用いてダンサーロールに作用する圧力を検出して第2長尺シート12のテンションを検知するようにしてもよい。また、ダンサーロールに代えて、感圧センサーを備えた中間ロールを設け、中間ロールを介して感圧センサーにより第2長尺シートのテンションを検知するようにしてもよい。
【0051】
なお、符号45,46は、各長尺シートを搬送するための駆動ロールを示し、符号47は、第1長尺シート11の送り出し方向をガイドするガイドロールを示す。また、符号48,49は、第1供給ロール23又は第2供給ロール27に対して当接するように配置されたタッチロールを示す。なお、タッチロール48,49は、図示しない駆動用のロールを別途備え、ベルト等を介してタッチロール48,49が回動し、第1供給ロール23又は第2供給ロール27を回転させつつ、各供給ロールから長尺シートを送り出すことができる。
【0052】
また、
図1においては、ニップロール43にて第2長尺シート12を挟持搬送するようにしたが、タッチロール48と協働して第2長尺シート12を弾性的に伸張させることができる構成であればよく、例えば、ニップロール43に代えて、第2長尺シート12が約半周に亘って巻き掛けられる中間ロールを設け、当該中間ロールとタッチロール48との協働作用により第2長尺シート12を弾性的に伸張させるようにしてもよい。この場合にはダンサーロール41の変位量に基づいてタッチロール48による第2長尺シート12の送り出し量が制御される。
【0053】
上記したように第2長尺シート12aを弾性的に伸張させるのは、積層及び接合時において、それぞれのシートの搬送される長さが同じになるようにするためであり、各シートの送り出し量によって、第2長尺シート12aの伸張長さ或いは伸長率が決定される。第1長尺シート11は、その長手方向Xに伸張させてもよいし、伸張させない、即ち、非伸張状態であってもよい。なお、第1長尺シート11を伸張させた場合には、その伸張させた分の長さに応じて、第2長尺シート12aを弾性的に更に伸張させる必要がある。
【0054】
第2長尺シートの伸長率は、上記のように各シートの送り出し量に応じて適宜決定することができるが、本発明の吸収性物品用積層シートの製造方法においては、第2長尺シートを、その非伸張状態における長さを100%とした場合に、103〜120%となる長さに弾性的に伸張させることが好ましい。
【0055】
このように構成することによって、第2長尺シートの収縮により、第1長尺シートに弛み部が良好に形成される。なお、103%未満では、十分な大きさの弛み部が形成されないことがあり、一方、120%を超えると、第1長尺シートの弛み部が過剰に大きくなり、逆に積層シートの風合いを損ねてしまうことがある。また、第2長尺シートを傷めてしてしまうこともある。
【0056】
次に、本発明の吸収性物品用積層シートの製造方法においては、第1長尺シート11と、伸張させた第2長尺シート12aとを、各シート11,12aの長手方向Xに間欠的に接合して、第1長尺シート11と第2長尺シート12aとが積層された積層シート13を得る。第2長尺シート12aの伸張が解除された際に、この間欠的に接合された間隔において、第1シート11bの表面側が盛り上り、弛み部14が形成されることとなる(
図4参照)。
【0057】
シートの接合方法については特に制限はなく、上述したように、例えば、熱エンボス、超音波融着、ホットメルト接着剤による接着、及び熱可塑性樹脂による接着からなる群より選択される少なくとも一種の方法により行うことが好ましい。なお、熱エンボス等の熱融着を行う場合には、シートの融点以下の温度で行うことが好ましい。また、エンボス加工においては、カバーシート等となる第1長尺シート側に、エンボスの凹凸を形成す
る。この際、バックシートとなる第2長尺シート側は、プレー面(平坦面)のロールを用い、凹凸が形成されない
ようにする。このように構成することによって、着用者と接触するバックシート側の面が平坦となり、肌さわりが良好となる。
【0058】
また、シートを接合する際には、少なくともシートの長手方向Xに間欠的に接合を行うものであれば、実際に接合が行われる部分の長さ(シートの長手方向の長さ)や、接合部分の間隔については特に制限はなく、得られる積層シートに形成される弛み部のピッチ(間隔)等を考慮して適宜決定することができる。
【0059】
図3及び
図4に示すように、各シート11,12aの長手方向に間欠的に接合する際の間隔Pとしては
、5〜10mmであ
り、5〜8mmであること
が好ましい。このように構成することによって、極めて柔らかな風合いを有する積層シート13bを得ることができる。なお、上記間隔Pが、5mm未満であると、弛み部14が過剰に形成されてしまい、良好な風合いを実現することができないことがあり、10mmを超えると、弛み部14が積層シート13bの長手方向に広がってしまい、弛み部14が間延びしてしまうことがある。なお、上記接合する際の間隔Pは、第2長尺シート12aが伸張した状態における間隔のことであり、第2長尺シート12aが収縮した際には、その間隔P’は、第2長尺シート12aの収縮量に応じて減少する。
【0060】
各シート11,12aを間欠的に接合する際には、少なくともシートの長手方向において間隔的に接合するものであればよいが、
図2に示すように、シートの長手方向Xに直交する方向(即ち、シートの幅方向Y)にも間欠的に接合してもよい。このように構成することによって、シートの幅方向Yにも弛み部が形成され、風合い豊かな積層シート13を得ることができる。
参考例として、シートの長手方向に間欠的に、且つシートの幅方向には連続的に接合を行ってもよい。この場合には、シートの幅方向に長い弛み部が、シートの長手方向に間欠的に形成されることとなる。
【0061】
シートの幅方向にも間欠的に接合する場合には、
図2に示すように、シートの長手方向Xに間欠的に接合する接合部分の長さQ
1よりも、シートの長手方向に直交する方向(シートの幅方向Y)に間欠的に接合する接合部分の長さQ
2を大とす
る。このように構成することによって、積層シートに弛み部を良好に形成することができるとともに、二枚のシートを良好に接合することができる。例えば、接合部分の長さQ
1としては、0.5〜2.5mmに設定することができ、接合部分の長さQ
2としては、1〜5mmに設定することができる。
【0062】
次に、作製した長尺の積層シート13を、その長手方向における所定の間隔で切断して複数の吸収性物品用積層シート13cを作製する。
【0063】
図1に示す製造装置100は、長尺の積層シート13を、その長手方向Xにおける所定の間隔で切断して吸収性物品用積層シート13cとする切断部33を備えており、この切断部33としては、具体的には、カッターなどを用いることができる。上記「所定の間隔」は、吸収性物品の種類に応じて適宜決定することができる。
【0064】
このように切断された吸収性物品用積層シート13は、弾性的に伸張されていた第2シート(切断された第2長尺シート)が元の長さに収縮し、この収縮に伴い、第1シート(切断された第1長尺シート)に弛みが生じる。即ち、弾性的に伸張されていた第2シートと比較して、第1シートは、非伸張状態における長さが長いため、間欠的に接合された間において、第1シートに弛みが生じ、この弛みが、第1シートの表面側が間欠的に盛り上がった弛み部となる。このようにして、柔らかな風合いを有し、吸収性物品の外側に配置されるシートとして好適に用いることができる吸収性物品用積層シートを簡便に製造することができる。
【0065】
なお、上記製造方法においては、長尺の積層シート13を切断することによって、第2シートの伸張状態が解除され、第2シートが収縮すると説明したが、例えば、第1長尺シートと第2長尺シートとの接合が行われた後、長尺の積層シートの伸張状態(即ち、接合された第2長尺シートの伸張状態)が解除されれば、長尺の積層シートにおいて、第1長尺シートの表面に弛み部が形成される。
【0066】
[2]吸収性物品用積層シート:
次に、本発明の吸収性物品用積層シートの一の実施形態について詳細に説明する。本発明の吸収性物品用積層シートは、これまでに説明した吸収性物品用積層シートの製造方法によって得られた吸収性物品用積層シートである。即ち、
図5に示すように、不織布からなる第1シート51と、液不透過性材料からなる第2シート52とが積層され、且つ、第1シート51と第2シート52とは、少なくとも一の方向に間欠的に接合されてなる吸収性物品用積層シート60であって、間欠的に接合された接合部分55の間に存在する第1シート51の非伸張状態における長さが、接合部分55の間に存在する第2シート52の非伸張状態における長さよりも大であり、この接合部分55の間にて、第1シート51の表面側が間欠的に盛り上がった弛み部54を有している。ここで、
図5は、本発明の吸収性物品用積層シートの一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0067】
なお、
図5においては、弛み部54が、シートの幅方向に整列するように配置された場合の例を示しているが、例えば、
図6に示す吸収性物品用積層シート61のように、弛み部54が、シートの幅方向に千鳥状に配置されたものであってもよい。このように弛み部54を配置することによって、より風合いに優れた積層シートとすることができる。ここで、
図6は、本発明の吸収性物品用積層シートの一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
【0068】
この吸収性物品用積層シートは、吸収性物品を構成するシートとして使用することができ、具体的には、尿パッドや使い捨ておむつの外側面を構成するシートとして用いることができる。より具体的には、吸収性物品用積層シートの第1シートは、使い捨ておむつ等のカバーシートとして用いることができ、第2シートは、使い捨ておむつ等のバックシートとして用いることができる。
【0069】
例えば、使い捨ておむつとしては、吸収体と、この吸収体の表面を被覆するように配置された、少なくとも一部が液透過性材料からなるトップシートと、吸収体の裏面を被覆するように配置された、液不透過性材料からなるバックシートと、バックシートの外側(裏面側)に配置された、不織布等からなるカバーシートとを備えたものがあり、本発明の吸収性物品用積層シートは、上記バックシートとカバーシートとに用いることができる。この際、吸収性物品用積層シートの弛み部が、カバーシートの外側に配置され、使い捨ておむつに柔らかい風合いを与えることができる。また、本発明の吸収性物品用積層シートは、バックシートとカバーシートとの複合シートとしてではなく、単に、バックシート、例えば、バックシートにカバーシート等の機能が付与されたバックシートとして用いることもできる。
【0070】
[3]吸収性物品:
次に、本発明の吸収性物品の一の実施形態について使い捨ておむつを例に説明する。本発明の吸収性物品は、吸収性物品の構成要素の1つであるバックシートに対して、これまでに説明した吸収性物品用積層シートが用いられたものである。ここで、
図7は、本発明の吸収性物品としての使い捨ておむつの一の実施形態をトップシート側から見た状態を模式的に示す一部切り欠き平面図であり、
図8は、本発明の吸収性物品としての使い捨ておむつの一の実施形態をバックシート側から見た状態を模式的に示す平面図である。
【0071】
図7及び
図8に示すように、本発明の吸収性物品としての使い捨ておむつ200は、前身頃102、股下部104及び後身頃106の各部から構成され、吸収体122と、少なくとも一部が液透過性材料からなり、吸収体122の表面を被覆するように配置されたトップシート118と、液不透過性材料からなり、吸収体122の裏面を被覆するように配置されたバックシート120と、を備えたものである。そして、上記したように、おむつのバックシート120の少なくとも一部に、これまでに説明した本発明の吸収性物品用積層シートが用いられている。
【0072】
この使い捨ておむつにおいては、上記吸収性物品用積層シートの弛み部が、おむつの外側に配置されるように使用することによって、使い捨ておむつに柔らかい風合いを与えることができる。
【0073】
なお、
図7及び
図8においては、後身頃106の左右の各側縁106a,106bから延出するように配置され、前身頃102と後身頃106とを固定するための止着テープ110を更に備えたテープ型おむつの場合の例を示しているが、このようなテープ型おむつに限定されることはなく、例えば、パンツ型おむつにも適用可能である。
【0074】
なお、「パンツ型おむつ」とは、おむつの前身頃と後身頃の対応する側縁部同士を接合することによって、一つのウエスト開口部と、一対のレッグ開口部とが形成され、予めパンツ型に構成されたおむつのことである。一方、「テープ型おむつ」とは、
図7に示すように、前身頃102と後身頃106とを固定するための止着テープ110を備え、この止着テープ110を、着用者の脇を経由して、おむつの前身頃102に配設された止着領域113に止め付けることによって着用するように構成されたおむつのことである。
【0075】
また、本明細書において、「前身頃」とは、着用者におむつを装着した際に、着用者の腹側(身体前方)を覆う部分、後身頃」とは、着用者におむつを装着した際に、着用者の背側(身体後方)を覆う部分、「股下部」とは、着用者におむつを装着した際に、着用者の股下を覆う部分、特に、展開した状態の使い捨ておむつにおいて、レッグ開口部を形成するR状の切欠き部が形成された前記前身頃及び前記後身頃を除く部位を意味するものとする。
【0076】
[3−1]吸収体:
「吸収体」は、着用者の尿等を吸収し、保持するための部材であり、吸収性材料によって構成される。吸収体はトップシートとバックシートの間に挟み込まれ、両シートと一体化された状態で用いられる。
【0077】
「吸収性材料」としては、例えば、フラッフパルプ、高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer;以下、「SAP」と記す。)、親水性シート等を挙げることができる。「フラッフパルプ」としては、木材パルプや非木材パルプを綿状に解繊したものを、「SAP」としては、ポリアクリル酸ナトリウムを、「親水性シート」としては、ティシュ、吸収紙、親水化処理を行った不織布等を用いることが好ましい。
【0078】
吸収体は、1種又は2種以上の吸収性材料を単層又は複層のマット状に成形したものを用いることが好ましい。中でも、フラッフパルプ100質量部に対して、10〜500質量部のSAPを併用したものが好ましい。この際、SAPはフラッフパルプのマット中に混在させるか、フラッフパルプのマットの層間に層状に配置して用いればよい。
【0079】
[3−2]トップシート:
トップシートは、吸収体の表面(装着時において着用者の肌側に位置する面)を被覆するように配置されるシートである。トップシートは、着用者の尿等を透過させる必要から、その少なくとも一部(全部又は一部)が液透過性材料により構成される。
【0080】
「液透過性材料」としては、織布、不織布、多孔性フィルム等を挙げることができる。中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、脂肪族ポリアミド等の熱可塑性樹脂からなる不織布に親水化処理を施したものを用いることが好ましい。
【0081】
「不織布」としては、エアスルー(カード熱風)、カードエンボス等の製法によって製造された不織布を好適に用いることができる。「親水化処理」は、界面活性剤を塗布、スプレー、含浸等させることにより行うことができる。
【0082】
トップシートは、「少なくとも一部」、具体的には、トップシートを平面的に見た場合に、少なくとも吸収体の表面近傍は液透過性材料により構成されていることが好ましい。
【0083】
[3−3]バックシート:
バックシートは、吸収体の裏面(装着時において着用者の肌から遠い側に位置する面)を被覆するように配置されるシートである。バックシートは、着用者の尿が外部に漏洩してしまうことを防止する必要から、液不透過性材料によって構成されるものであり、本発明の吸収性物品としての使い捨ておむつにおいては、これまでに説明した吸収性物品用積層シートの第2シート(液不透過性材料からなる第2シート)が、少なくとも吸収体の裏面を被覆するように配置され、実質的なバックシートとして機能する。
【0084】
吸収性物品用積層シートは、
図5に示すように、不織布からなる第1シート51と、液不透過性材料からなる第2シート52とが積層され、且つ、第1シート51と第2シート52とは、少なくとも一の方向に間欠的に接合されてなる吸収性物品用積層シート60であり、この接合部分55の間にて、第1シート51の表面側が間欠的に盛り上がった弛み部54を有している。このような使い捨ておむつにおいては、上記第1シートが、おむつの外側に配置されるようにして用いられることが好ましい。
【0085】
[3−4]その他の構成要素:
本発明の吸収性物品は、バックシートとして、本発明の吸収性物品用積層シートを用いること以外は、従来公知の使い捨ておむつに採用されている種々の構成要素を更に備えたものであってもよい。
【0086】
例えば、本発明の吸収性物品は、着用者の排泄した尿の横漏れを防止するため、立体ギャザーを更に備えていてもよい。立体ギャザーは、着用者の排泄した尿の横漏れを防止するための部材であり、立体的に起立可能なように構成された防漏壁である。このような立体ギャザーを形成することにより、立体ギャザーが防波堤となり、おむつの脚周り開口部等からの漏れ(いわゆる「横漏れ」)を有効に防止することができる。
【0087】
立体ギャザーの構成は、従来の使い捨ておむつに使用されている構成を採用することができる。
図7に示す使い捨ておむつ200は、おむつの長手方向に沿って、股下部104から前身頃102と後身頃106の双方にかけて連続的に、一対の立体ギャザー126(126a,126b)が形成されている例を示している。なお、立体ギャザーは、少なくとも一対形成する必要があるが、二対以上形成してもよい。
【0088】
また、本発明の吸収性物品は、着用者の肌へのフィット性を向上させるために各種伸縮材を配置してもよい。このような伸縮材としては、例えば、
図7に示すように、ウエスト周り伸縮材130や脚周り伸縮材132等を挙げることができる。