(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、車両に装着されたタイヤの空気圧を点検管理することが、タイヤの耐久性向上、耐摩耗性向上、燃費の向上、あるいは、乗り心地の向上、さらには、操縦性能の向上の点で望まれている。このため、タイヤの空気圧を監視するシステムが種々提案されている。このシステムは、一般的に、車輪に装着されたタイヤの空気圧の情報を検出し、その情報を送信する送信装置を各車輪のタイヤ空洞領域に設けるとともに、各タイヤの空気圧の情報を送信装置から取得してタイヤの空気圧を監視する。
【0003】
一方、タイヤがパンクしたときに、タイヤとリムとにより挟まれたタイヤ空洞領域内に注入するパンク修理剤がよく用いられている。このパンク修理剤は液体であるため、パンク修理剤がタイヤ空洞領域に注入されると、タイヤ空洞領域内に面するタイヤ内表面の他、タイヤ空洞領域に設けられた送信装置にもパンク修理剤が付着し、場合によっては固化して送信装置に設けられた開口部を塞ぎ、空気圧の計測に影響を与えるといった問題がある。
【0004】
この問題に対して、検出用の連通部からの異物の侵入を防止して、正常な検出状態を保持することができる車輪状態検出装置が提案されている(特許文献1)。
具体的には、車輪状態検出装置のTPMS(Tire Pressure Monitoring System)バルブには、ケースに設けられた連通孔を開閉する連通部開閉機構が設けられている。パンク修理の際にそのパンク修理剤が連通孔を介して検出空間に侵入するのが規制される。この連通部開閉機構は、蓋体およびねじりコイルばねを含むメカ的機構により構成され、車輪に作用する遠心力により連通孔が自動的に開閉されるようになっている。
【0005】
さらに、パンク修理時、パンク修理剤を使用した場合、その後、タイヤ空気圧が低下する可能性があることを乗員に知らせることができるタイヤ空気圧監視システムおよびタイヤ空気圧センサユニットも提案されている(特許文献2)。
具体的には、タイヤ空気圧監視システムは、車両の各タイヤに設けられ、空気圧センサと送信機を有するセンサユニットと、該センサユニットからの電波を受信する受信機と、各タイヤの空気圧が閾値以下となった場合、警報を出す制御ECUと、を備える。このシステムにおいて、各タイヤのパンクを判定するパンク判定手段と、パンクと判定された後、パンク修理剤を使用してパンクを修理したか否かを判定するパンク修理剤使用判定手段と、を設け、前記制御ECUは、パンクしたタイヤがパンク修理剤を使用して修理したと判定されると、前記空気圧センサからのタイヤ空気圧値が正常値であっても警報を継続する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の装置の連通部開閉機構は、蓋体およびねじりコイルばねを含むメカ的機構により構成されるので、装置自体が複雑になり、コストもかかるといった問題が生じる。
特許文献2に記載のシステムおよびユニットは、パンク修理剤を使用してタイヤを修理した後において計測されたタイヤの空気圧の情報が正しいか否かがわからない。このため、パンク修理後において、タイヤの異常の有無を判定することはできない。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来技術とは異なる新たな方式により、パンク修理剤を用いてタイヤのパンクを修理しても、タイヤの空気圧情報等のタイヤ情報を適切に検出し送信できる送信装置およびタイヤの異常の有無を判定するタイヤ状態監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の送信装置は、タイヤとリムとで囲まれたタイヤ空洞領域に設けられ、前記タイヤの状態に関する情報を送信する送信装置であって、前記タイヤ空洞領域に充填される気体の状態を検出するセンサと、前記センサが検出した気体の状態に基づいて、前記タイヤの状態に関する情報を無線で送信する送信機と、前記センサと前記送信機とを覆う筐体と、を備え、前記筐体には、前記筐体の表面から突出した突出部であって、前記筐体の内部空間と前記タイヤ空洞領域との間を接続する開口部が形成された突出部と、前記筐体の表面からの高さが、前記突出部の高さの70%以上130%以下である保護壁と、が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また、前記突出部から前記保護壁へ向かう方向がタイヤ周方向と一致するように、前記タイヤ空洞領域に取り付け可能であることが好ましい。
【0011】
また、前記筐体の表面からの前記保護壁の高さは、前記送信装置が前記タイヤ空洞領域に取り付けられる際のタイヤ回転軸方向に沿って連続的に変化し、前記タイヤ回転軸方向の内方の前記保護壁の表面が前記筐体の表面に対してなす角度は45度以下であることが好ましい。
【0012】
また、前記保護壁と前記突出部との距離は、4mm以上20mm以下であることが好ましい。
【0013】
また、前記保護壁と前記突出部との間の前記筐体の表面は、撥水処理が施されていることが好ましい。
【0014】
本発明のタイヤ状態監視システムは、タイヤとリムとで囲まれたタイヤ空洞領域に設けられ、前記タイヤの状態に関する情報を送信する送信装置と、前記送信装置から送信された前記タイヤの状態に関する情報を受信する受信装置と、前記受信装置が受信した前記タイヤの状態に関する情報に基づいて、前記タイヤの異常の有無を判定し、判定結果を報知する監視部と、を備えるタイヤ状態監視システムであって、前記送信装置は、前記タイヤ空洞領域に充填される気体の状態を検出するセンサと、前記センサが検出した気体の状態に基づいて、前記タイヤの状態に関する情報を無線で送信する送信機と、前記センサと前記送信機とを覆う筐体と、を備え、前記筐体には、前記筐体の表面から突出した突出部であって、前記筐体の内部空間と前記タイヤ空洞領域との間を接続する開口部が形成された突出部と、前記筐体の表面からの高さが、前記突出部の高さの70%以上130%以下である保護壁と、が設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明の送信装置は、タイヤとリムとで囲まれたタイヤ空洞領域に設けられ、前記タイヤの状態に関する情報を送信する送信装置であって、前記タイヤ空洞領域に充填される気体の状態を検出するセンサと、前記センサが検出した気体の状態に基づいて、前記タイヤの状態に関する情報を無線で送信する送信機と、前記センサと前記送信機とを覆う筐体と、を備え、前記筐体は、前記筐体の一部分が、前記筐体の表面を基準として凹形状となるように形成された凹部を備え、前記凹部には、前記凹部の底から突出した突出部であって、前記筐体の内部空間と前記タイヤ空洞領域との間を接続する開口部が形成された突出部が設けられ、前記凹部の深さは、前記突出部の高さの70%以上130%以下であることを特徴とする。
【0016】
また、前記凹部が形成される方向がタイヤ回転軸方向と一致するように、前記タイヤ空洞領域に取り付け可能であることが好ましい。
【0017】
また、前記凹部の深さは、前記送信装置が前記タイヤ空洞領域に取り付けられる際の前記タイヤ回転軸方向の内方に向かって単調に深くなることが好ましい。
【0018】
本発明のタイヤ状態監視システムは、タイヤとリムとで囲まれたタイヤ空洞領域に設けられ、前記タイヤの状態に関する情報を送信する送信装置と、前記送信装置から送信された前記タイヤの状態に関する情報を受信する受信装置と、前記受信装置が受信した前記タイヤの状態に関する情報に基づいて、前記タイヤの異常の有無を判定し、判定結果を報知する監視部と、を備えるタイヤ状態監視システムであって、前記送信装置は、前記タイヤ空洞領域に充填される気体の状態を検出するセンサと、前記センサが検出した気体の状態に基づいて、前記タイヤの状態に関する情報を無線で送信する送信機と、前記センサと前記送信機とを覆う筐体と、を備え、前記筐体は、前記筐体の一部分が、前記筐体の表面を基準として凹形状となるように形成された凹部を備え、前記凹部には、前記凹部の底から突出した突出部であって、前記筐体の内部空間と前記タイヤ空洞領域との間を接続する開口部が形成された突出部が設けられ、前記凹部の深さは、前記突出部の高さの70%以上130%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の送信装置およびタイヤ状態監視システムによれば、パンク修理剤を用いてタイヤのパンクを修理しても、タイヤの空気圧情報等のタイヤ情報を適切に検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の送信装置およびタイヤ状態監視システムについて詳細に説明する。
<第1の実施形態>
(タイヤ空気圧モニタリングシステムの概要)
まず、
図1を参照して、本実施形態のタイヤ空気圧モニタリングシステムについて説明する。
図1は、本実施形態のタイヤ状態監視システムの一実施形態であるタイヤ空気圧モニタリングシステム10の全体概要を示す図である。
図1に示されるように、タイヤ空気圧モニタリングシステム(以下、システムという)10は、車両12に搭載される。システム10は、車両12の各車輪のタイヤ14a,14b,14c,14dの各タイヤ空洞領域に設けられた空気圧情報送信デバイス(以下、送信デバイスという)16a,16b,16c,16dと、監視装置18と、を有する。以降、タイヤ14a,14b,14c,14dをまとめて説明するとき、タイヤ14a,14b,14c,14dを総称してタイヤ14という。また、送信デバイス16a,16b,16c,16dをまとめて説明するとき、送信デバイス16a,16b,16c,16dを総称して送信デバイス16という。
【0022】
送信デバイス16は、いずれもタイヤとリムで囲まれたタイヤ空洞領域に充填される気体の状態を検出する。また、送信デバイス16は、検出した気体の状態に基づいて、タイヤの状態に関する情報(タイヤ情報)を監視装置18に無線で送信する。
【0023】
(送信デバイスの概略構成)
次に、
図2、
図3、
図4を参照して、送信デバイス16について説明する。
図2は、送信デバイス16がタイヤ空洞領域内に固定された状態の一例を説明する図である。
図3は、
図2に示される送信デバイス16がタイヤバルブ20と一体化したデバイス全体を示す図である。
図4は、
図3に示されるA−A線に沿った送信デバイス16の矢視断面図である。
【0024】
図2に示されるように、送信デバイス16は、タイヤバルブ20の端部に設けられる。タイヤバルブ20がリム19に機械的に固定されることにより、タイヤ空洞領域内に固定される。
【0025】
また、
図4に示されるように、送信デバイス16は、筐体22と、筐体22の内部に設けられた回路24とを有する。回路24は、基板26と、基板26に設けられたセンサユニット28と、送信機30と、処理ユニット32と、電源部34と、アンテナ40(
図5参照)と、を有する。
【0026】
図4に示されるように、筐体22には、筐体22の表面からタイヤ径方向外方(
図4の上方向)に突出した突出部44が設けられている。ここで、タイヤ径方向とは、空気入りタイヤの回転軸と直交する方向であり、タイヤ径方向外方とは、タイヤ径方向において、空気入りタイヤの回転軸から離れる方向である。また、突出部44には、筐体22の内部空間38とタイヤ空洞領域との間を空間的に接続する開口部42が形成されている。筐体22の表面からの突出部44の高さは、例えば、1mm以上5mm以下である。
また、筐体22には、筐体22の表面からの高さが突出部44の高さの70%以上130%以下である保護壁46が設けられている。
突出部44、保護壁46の詳細な構成については後述する。
【0027】
次に、
図5を参照して、送信デバイス16の回路構成を説明する。
図5は、送信デバイス16の回路構成図である。
図5に示されるように、センサユニット28は、空気圧センサ28aとA/D変換器28bを有する。空気圧センサ28aは、タイヤ空洞領域に充填される気体の状態を検出する。具体的には、空気圧センサ28aは、筐体22内の内部空間38の空気圧を感知し、圧力信号を出力する。A/D変換器28bは、空気圧センサ28aから出力された圧力信号をデジタル変換し、圧力データを出力する。
【0028】
処理ユニット32は、中央処理部32aと記憶部32bとを有する。中央処理部32aは、記憶部32bの半導体メモリに格納されているプログラムに基づいて動作する。中央処理部32aは、電力が供給されて駆動すると、センサユニット28から送られてくる圧力データを所定の時間間隔(例えば5分)で、送信機30を介して監視装置18に空気圧の情報である圧力データを送信するように制御する。記憶部32bには送信デバイス16に固有の識別情報が予め記憶されており、中央処理部32aは圧力データと共に識別情報を監視装置18に送信するように制御する。
記憶部32bは、中央処理部32aを動作するプログラムが記録されているROMと、例えばEEPROM等の書き換え可能な不揮発性のメモリとを備える。送信デバイス16の固有の識別情報は、記憶部32bの書き換え不可領域に記憶されている。
【0029】
送信機30は、発振回路30aと、変調回路30bと、増幅回路30cとを有する。
発振回路30aは、搬送波信号、例えば315MHz帯の周波数のRF信号を生成する。
変調回路30bは、中央処理部32aから送られた圧力データと送信デバイス16に固有の識別情報とを用いて、搬送波信号を変調して送信信号を生成する。変調方式は、振幅偏移変調(ASK)、周波数変調(FM)、周波数偏移変調(FSK)、位相変調(PM)、位相偏移変調(PSK)等の方式を用いることができる。
増幅回路30cは、変調回路30bで生成された送信信号を増幅し、アンテナ40を介して、送信信号を監視装置18に無線で送信する。
【0030】
電源部34は、例えば二次バッテリが用いられる。電源部34は、センサユニット28と、送信機30と、処理ユニット32と、に電力を供給する。
【0031】
なお、本実施形態の送信デバイス16は、タイヤ空洞領域内に充填された空気圧を空気の状態として検出するが、検出する空気の状態は、空気圧の他に、タイヤ空洞領域内の空気の温度であってもよい。
また、送信デバイス16をタイヤ空洞領域内に取り付ける方法は、特に限定されるものではない。例えば、送信デバイス16がタイヤバルブ20に固定される他、タイヤ空洞領域に面したタイヤ内表面あるいは、タイヤ空洞領域に面したリム19の表面に直接固定されてもよい。
【0032】
(監視装置の構成)
次に、
図6を参照して、監視装置18について説明する。
図6は、監視装置18の回路構成図である。監視装置18は、例えば車両10の運転席に配置され、ドライバーに空気圧の情報を報知する。
図6に示されるように、監視装置18は、アンテナ52と、受信部54と、受信バッファ56と、中央処理部58と、記憶部60と、操作部62と、スイッチ64と、表示制御部66と、表示部68と、電源部70と、を有する。
【0033】
アンテナ52は、送信デバイス16の送信周波数と同じ周波数に整合され、受信部54に接続されている。
受信部54は、送信デバイス16から送信された所定の周波数の送信信号を受信し、復調処理をして圧力データと識別情報のデータを取り出す。このデータは、受信バッファ56に出力される。
受信バッファ56は、受信部54から出力された圧力データと識別情報のデータを一時的に格納する。格納された圧力データと識別情報のデータは、中央処理部58からの指示にしたがって、中央処理部58に出力される。
【0034】
中央処理部58は、主にCPUで構成され、記憶部60に記憶されているプログラムに基づいて動作する。中央処理部58は、受信した圧力データと識別情報のデータに基づいて、識別情報毎にタイヤ14a〜14dの空気圧を監視する。具体的には、圧力データに基づいて、タイヤの異常の有無を判定し、判定結果を報知する。タイヤの異常の有無を判定するとは、例えば、空気圧が異常に低くなり、あるいは短時間に急激に低下して、タイヤがパンクしているか否かを判定することをいう。
【0035】
中央処理部58は、判定結果を表示制御部66に出力し、表示制御部66を介して判定結果を表示部68に出力させる。
さらに、中央処理部58は、操作部62からの情報やスイッチ64からの情報に応じて、送信デバイス16との間で通信方式等の初期設定を行う。また、操作部62からの情報により、中央処理部58においてタイヤの異常の有無の判定を行うための判定条件を設定することもできる。
【0036】
記憶部60は、中央処理部58のCPUを動作するプログラムが記憶されたROMと、EEPROM等の不揮発性メモリとを有する。この記憶部60には、製造段階で、送信デバイス16との間の通信方式のテーブルが記憶されている。送信デバイス16と監視装置18は、初期段階において、上記通信方式で通信する。通信方式テーブルには、送信デバイス16のそれぞれの固有の識別情報に対応して、通信プロトコル、転送ビットレート、データフォーマット等の情報が含まれている。これらの情報は、操作部62からの入力により自在に設定変更をすることができる。
【0037】
操作部62は、キーボード等の入力デバイスを含み、各種情報や条件を入力するために用いられる。スイッチ64は、初期設定の開始を中央処理部58に指示するために用いられる。
表示制御部66は、中央処理部58からの判定結果に応じて、タイヤの装着位置に対応させてタイヤの空気圧を表示部68に表示させるように制御する。その際、表示制御部66は、タイヤがパンク状態にあるといった判定結果も、表示部68に同時に表示させるように制御する。
電源部70は、車両10に搭載されているバッテリから供給された電力を、監視装置18の各部分に適した電圧に制御して電力を供給する。
このように、送信デバイス16と監視装置18は構成される。
【0038】
(送信デバイスの詳細な構成)
次に、送信デバイス16の構成を詳細に説明する。
図4を参照して説明したように、送信デバイス16の筐体22には、筐体22の表面からタイヤ径方向外方に突出した突出部44が設けられている。また、突出部44には、筐体22の内部空間38とタイヤ空洞領域との間を空間的に接続する開口部42が形成されている。また、筐体22には、筐体22の表面からの高さが突出部44の高さの70%以上130%以下である保護壁46が設けられている。
【0039】
まず、
図7を参照して、突出部44の形状を詳細に説明する。
図7(a)は、突出部44の斜視図であり、
図7(b)は、開口部42の中心を通る平面で突出部44を切断した断面図である。
図7(a)に示されるように、突出部44は、筐体22の表面に対して一定角度で傾斜する傾斜面を持つ円錐台形状を成している。
また、
図7(b)に示されるように、筐体22の表面からの突出部44の高さHは、例えば、1mm以上5mm以下である。また、開口部42の面積は、例えば、0.4mm
2以下である。
【0040】
また、
図7(b)に示される突出部44の断面において、突出部44の基部44aと頂部44bとの間を仮想的に結んだ直線44cは、断面形状における突出部44の傾斜面と一致している。この直線44cが筐体22の表面に対してなす角度θは、45度以上90度未満である。
【0041】
一般に、パンク修理時には、タイヤ空洞領域内に数百ml程度のパンク修理剤が注入される。パンク修理剤をタイヤ空洞領域に注入後、タイヤを回転させながら孔のあいたパンク位置に侵入したパンク修理剤を固化させることで、パンクの孔は補修される。しかし、余分のパンク修理剤の液体は、タイヤ空洞領域内で飛散し、タイヤの回転によってタイヤ内表面および送信デバイスの表面に付着する。
【0042】
本発明の送信デバイス16では、筐体22に突出部44を設けることにより、タイヤ14のパンク時にタイヤ空洞領域内にパンク修理のために注入される液体のパンク修理剤によって、開口部42が閉塞されることを防ぐことができる。特に、筐体22の表面からの突出部44の高さを1mm以上とすることにより、パンク修理剤の液滴が開口部42に付着しにくくすることができる。また、開口部42の面積を0.4mm
2以下とすることにより、開口部42にパンク修理剤が飛散した場合にも、表面張力により、パンク修理剤が開口部42の内部に進入するのを防止することができる。
【0043】
なお、突出部44の高さが高すぎると、タイヤバルブの装着時やタイヤのリム組み時に、突出部44が障害となって、タイヤバルブの装着やタイヤのリム解き作業の支障になる可能性が高くなる。そのため、突出部44の高さは5mm以下であることが好ましい。
【0044】
次に、
図8を参照して、保護壁46の形状を詳細に説明する。
図8は、筐体22に設けられる突出部44と保護壁46とを示す斜視図である。
図8の左右方向は、タイヤ周方向を示す。ここで、タイヤ周方向とは、空気入りタイヤの回転軸を回転の中心として回転する方向である。筐体22の表面からの保護壁46の高さhは、突出部44の高さHの70%以上130%以下である。なお、筐体22の表面からの保護壁46の高さが一定ではない場合、筐体22の表面からの高さが最大となる高さを保護壁46の高さhと定義する。
【0045】
突出部44の近傍に突出部44の高さHの70%以上130%以下の高さの保護壁46を設けることで、タイヤのリム組み時に、ビード部が突出部44に当たることにより突出部44が損傷を受けるのを抑制することができる。
なお、タイヤ周方向におけるビード部の断面形状は円環形状であるため、保護壁46の高さhが突出部44の高さHよりも低い場合であっても、保護壁46の高さhが突出部44の高さHの70%以上であれば、タイヤのリム組み時にビード部が突出部44に当たることにより突出部44が損傷を受けるのを抑制することができる。
【0046】
また、
図8に示される例の保護壁46は、突出部44を基準として、送信デバイス16がタイヤ空洞領域に設けられる際のタイヤ周方向に位置する。突出部44を基準としてタイヤ周方向に保護壁46を設けることで、タイヤのリム組み時にビード部が保護壁46に乗り上げるため、ビード部により突出部44が損傷を受けるのを抑制することができる。
【0047】
また、
図8に示される例では、筐体22の表面からの保護壁46の高さは、送信デバイス16がタイヤ空洞領域に設けられる際のタイヤ回転軸方向に沿って連続的に変化する。このとき、タイヤ回転軸方向の内方の保護壁46の表面が筐体22の表面に対してなす角度αは、45度以下である。保護壁46の高さをタイヤ回転軸方向に沿って連続的に変化させ、タイヤ回転軸方向の内方の保護壁46の表面が筐体22の表面に対してなす角度αを45度以下とすることにより、タイヤのリム組み時にビード部がスムーズに保護壁46を乗り上げることができるため、リム組みを容易に行うことができる。
【0048】
また、
図8に示される例では、保護壁46と突出部44との距離Dは、4mm以上20mm以下である。ここで、保護壁46と突出部44との距離Dとは、突出部44の中心から保護壁46までの距離である。保護壁46と突出部44との距離Dを4mm以上とすることで、保護壁46と突出部44との間にパンク修理剤が溜まるのを防ぎ、突出部44の開口部42にパンク修理剤が入り込むのを抑制することができる。
【0049】
また、保護壁46と突出部44との間の筐体22の表面は、撥水処理が施されていることが好ましい。撥水処理には、例えば、シリコン系樹脂、フッ素系樹脂、あるいは、有機シリル基またはフルオロアルキル基等をグラフトさせた変性樹脂等が材料として用いられる。また、撥水性を発現する微細な凹凸パターンを保護壁46と突出部44との間の筐体22の表面に施してもよい。保護壁46と突出部44との間の筐体22の表面を撥水処理することにより、保護壁46と突出部44との間の筐体22の表面にパンク修理剤が付着する可能性が低くなり、開口部42にパンク修理剤が入り込むのを抑制することができる。
なお、
図8に示される例では、突出部44の両側に保護壁46が設けられる例を説明したが、保護壁46は必ずしも突出部44の両側に設けられる必要はない。例えば、突出部44に対して一方のみに保護壁46が設けられる場合にも、ビード部により突出部44が損傷を受けるのを抑制することができる。
【0050】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態の送信デバイス16について説明する。本実施形態の送信デバイス16は、突出部44の周辺における筐体22の形状が第1の実施形態と異なる。本実施形態のタイヤ空気圧モニタリングシステムのその他の構成は、上述した第1の実施形態と同様である。以下、
図9を参照して、本実施形態の送信デバイス16の突出部44の周辺の形状について説明する。
【0051】
図9は、本実施形態の突出部44の周辺における筐体22の形状の一例を示す斜視図である。
図9に示されるように、本実施形態の筐体22には、筐体22の一部分が筐体22の表面を基準として凹形状となるように形成された凹部48が設けられている。
また、凹部48には突出部44が設けられている。凹部48の底からの突出部44の高さは、1mm以上5mm以下である。突出部44の詳細な形状は、
図7を参照して説明した第1の実施形態と同様である。
また、凹部48の深さhは、突出部44の高さの70%以上130%以下である。
【0052】
本実施形態の送信デバイス16は、筐体22の一部分に凹部48が設けられており、凹部48に突出部44が形成されることで、タイヤのリム組み時に、ビード部が突出部44に当たることにより突出部44が損傷を受けるのを抑制することができる。
なお、タイヤ周方向におけるビード部の断面形状は円環形状であるため、凹部48の深さhが突出部44の高さHよりも小さい場合であっても、凹部48の深さhが突出部44の高さHの70%以上であれば、タイヤのリム組み時にビード部が突出部44に当たることにより突出部44が損傷を受けるのを抑制することができる。
【0053】
また、
図9に示されるように、凹部48は、送信デバイス16がタイヤ空洞領域に設けられる際のタイヤ回転軸方向に沿って形成されることが好ましい。パンク修理時に用いたパンク修理剤はタイヤ回転軸方向に沿って流れるため、タイヤ回転軸方向に沿って凹部48を形成することにより、突出部44の開口部42の周囲にパンク修理剤が溜まるのを抑制することができる。
【0054】
ここで、
図10を参照して、タイヤ回転軸方向に沿った凹部48の深さについて説明する。
図10は、送信デバイス16の断面図である。
図10に示される点線は、凹部48の底、及び、突出部44を示す。
図10に示されるように、本実施形態の凹部48の深さは、タイヤ回転軸方向の内方に向かって単調に深くなる。凹部48の深さをタイヤ回転軸方向の内方に向かって単調に深くすることにより、パンク修理剤がタイヤ回転軸方向の内方に向かって流れるため、突出部44の開口部42の周囲にパンク修理剤が溜まるのを抑制することができる。
【0055】
以上、本発明のタイヤの状態に関する情報を送信する送信装置およびタイヤ状態監視システムについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。また、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。