【実施例】
【0035】
以下に、製造例、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明するが、本発明はそれら実施例の範囲に限定されるものではない。尚、屈折率、透過色、透過率、見栄え評価及びカール試験は以下のように測定した。
【0036】
<屈折率>
(1)錫ドープ酸化インジウム層は、屈折率1.63のPETフィルム〔商品名「A4100」、東洋紡績(株)製〕上に、膜厚20nmとなるようインジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行うことにより屈折率測定用フィルムを作製した。
錫ドープ酸化インジウム層以外の層は、屈折率1.63のPETフィルム〔商品名「A4100」、東洋紡績(株)製〕上に、バーコーターにより、各層用塗液をそれぞれ乾燥硬化後の膜厚で100〜500nmになるように層の厚さを調製して塗布した。乾燥後、紫外線照射装置〔岩崎電気(株)製〕により窒素雰囲気下で120W高圧水銀灯を用いて、400mJの紫外線を照射して硬化し、下記実施例および比較例のそれぞれの条件でアニール処理を施して屈折率測定用フィルムを作製した。
(2)作製したフィルムの裏面をサンドペーパーで荒らし、黒色塗料で塗りつぶしたものを反射分光膜厚計〔「FE-3000」、大塚電子(株)製〕により、反射スペクトルを測定した。
(3)反射スペクトルより読み取った反射率から、下記に示すn-Cauchyの波長分散式(式1)の定数を求め、光の波長400nmにおける屈折率を求めた。
N(λ)=a/λ
4+b/λ
2+c (式1)
a、b、c:波長分散定数
【0037】
<透過色>
色差計〔「SQ−2000」、日本電色工業(株)製〕を用いて透過色のb*を測定した。
【0038】
<透過率>
分光光度計〔「UV−1600PC」(株)島津製作所製〕を用いて透過スペクトルを測定した。透過スペクトルより500〜600nmの透過率を読み取り、その平均値をそれぞれパターン部の透過率、非パターン部の透過率とした。
【0039】
<見栄え評価>
黒い板の上に、透明導電性フィルムを中間層およびITO層が積層された面が上になるように置き、目視によりパターン部と非パターン部の判別ができるか否かを下記基準で評価した。
◎:パターン部と非パターン部の判別が困難。
○:パターン部と非パターン部とをわずかに判別できる。
×:パターン部と非パターン部とをはっきりと判別できる。
【0040】
<カール試験>
縦50mm、横100mmにカットした透明導電性フィルムを150℃の恒温槽に1時間静置してアニール処理(前処理)を行う。この前処理後、
図1に示すように、透明導電性フィルムを平坦面に機能層又はITO層を下にして置き、四隅の反り上がり量(1)、(2)、(3)及び(4)を測定し、それらの平均値(カール平均値)を測定する。機能層を下にした場合に反り上がる場合は+(プラス)表記、ITO層を下にした場合に反り上がる場合は−(マイナス)表記とする。
【0041】
〔ハードコート層用塗液(HC−1)の調製〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート80質量部、トリアクリル酸テトラメチロールメタン20質量部、1,6−ビス(3−アクリロイルオキシー2−ヒドロキシプロピルオキシ)ヘキサン20質量部、および光重合開始剤〔商品名:IRGACURE184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製〕4質量部、イソブチルアルコール100質量部を混合してハードコート層用塗液(HC−1)を調製した。
【0042】
〔ハードコート層用塗液(HC−2)の調製〕
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート50質量部、シリカゲル微粒子分散液〔商品名:XBA−ST、日産化学(株)製〕50質量部、および光重合開始剤〔商品名:IRGACURE184、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製〕4質量部、イソプロピルアルコール100質量部を混合してハードコート層用塗液(HC−2)を調製した。
【0043】
〔中間層用塗液(I−1)の調製〕
平均粒径が0.02〜0.03μmの酸化ジルコニウム微粒子分散液〔商品名「ZRMEK25WT%−F47」、CIKナノテック(株)製〕78質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー〔1分子中にアクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(6官能ウレタンアクリレート)、分子量1400、日本合成化学工業(株)製、紫光UV7600B〕22質量部、および光重合開始剤〔商品名「IRGACURE 184」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製〕5質量部を混合し中間層用塗液(I−1)を調製した。I−1の硬化物の屈折率を上記屈折率の測定方法で測定したところ、1.75であった。
【0044】
〔中間層用塗液(I−2)の調製〕
平均粒径が0.02〜0.03μmの酸化ジルコニウム微粒子分散液〔商品名「ZRMEK25WT%−F47」、CIKナノテック(株)製〕89質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー〔1分子中にアクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(6官能ウレタンアクリレート)、分子量1400、日本合成化学工業(株)製、紫光UV7600B〕11質量部、および光重合開始剤〔商品名「IRGACURE 184」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製〕5質量部を混合し中間層用塗液(I−2)を調製した。I−2の硬化物の屈折率を上記屈折率の測定方法で測定したところ、1.90であった。
【0045】
〔中間層用塗液(I−3)の調製〕
平均粒径が0.02〜0.03μmの酸化ジルコニウム微粒子分散液〔商品名「ZRMEK25WT%−F47」、CIKナノテック(株)製〕66質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー〔1分子中にアクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(6官能ウレタンアクリレート)、分子量1400、日本合成化学工業(株)製、紫光UV7600B〕34質量部、および光重合開始剤〔商品名「IRGACURE 184」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製〕5質量部を混合し中間層用塗液(I−3)を調製した。I−3の硬化物の屈折率を上記屈折率の測定方法で測定したところ、1.65であった。
【0046】
〔中間層用塗液(I−4)の調製〕
平均粒径が0.02〜0.03μmの酸化ジルコニウム微粒子分散液〔商品名「ZRMEK25WT%−F47」、CIKナノテック(株)製〕92質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー〔1分子中にアクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(6官能ウレタンアクリレート)、分子量1400、日本合成化学工業(株)製、紫光UV7600B〕8質量部、および光重合開始剤〔商品名「IRGACURE 184」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製〕5質量部を混合し中間層用塗液(I−4)を調製した。I−4の硬化物の屈折率を上記屈折率の測定方法で測定したところ、1.95であった。
【0047】
〔中間層用塗液(I−5)の調製〕
平均粒径が0.02〜0.03μmの酸化ジルコニウム微粒子分散液〔商品名「ZRMEK25WT%−F47」、CIKナノテック(株)製〕57質量部、ウレタンアクリレートオリゴマー〔1分子中にアクリロイル基を6個有するウレタンアクリレート(6官能ウレタンアクリレート)、分子量1400、日本合成化学工業(株)製、紫光UV7600B〕43質量部、および光重合開始剤〔商品名「IRGACURE 184」、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製〕5質量部を混合し中間層用塗液(I−5)を調製した。I−5の硬化物の屈折率を上記屈折率の測定方法で測定したところ、1.60であった。
【0048】
(実施例1)
ハードコート層用塗液(HC−1)をロールコーターにて、厚さ125μmのPETフィルムの一面上に、乾燥膜厚が4μmになるように塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより、ハードコート処理PETフィルムを作製した。
上記ハードコート層上に、中間層用塗液(I−1)をロールコーターにて乾燥膜厚が90nmとなるよう塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させた。
次に、中間層を積層したハードコート処理PETフィルムの反対面にハードコート層用塗液(HC−1)をロールコーターにて、乾燥膜厚が4μmになるように塗布し、120W高圧水銀灯にて400mJの紫外線を照射して硬化させることにより、透明導電用フィルムを作製した。
続いて、インジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行い、膜厚20nmのITO層を中間層上に形成し、透明導電性フィルムを作製した。この透明導電性フィルムのITO層に、ストライプ状にパターン化されているフォトレジストを塗布し、乾燥硬化した後、25℃、5質量%の塩酸(塩化水素水溶液)に1分間浸漬して透明導電性フィルムのエッチングを行い、更に、ITO層の屈折率が2.1となるように150度30分間アニール処理を施しエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
なお、実施例および比較例の透明導電性フィルムにおいては、中間層およびITO層を積層した面を表面とし、他方の面を裏面とする。
【0049】
(実施例2)
中間層用塗液をI−2とした以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
【0050】
(実施例3)
ハードコート層用塗液をHC−2とし、中間層の乾燥膜厚が65nmとなるよう塗布した以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
【0051】
(実施例4)
ハードコート層用塗液をHC−2とし、中間層用塗液をI−3とした以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
【0052】
(実施例5)
ハードコート層用塗液をHC−2とし、中間層の乾燥膜厚が115nmとなるよう塗布した以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
(実施例6)
アニール処理を150度2時間へと変更し、ITO層の屈折率が1.9となるように調整した以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
(実施例7)
アニール処理を100度1時間へと変更し、ITO層の屈折率が2.3となるように形成した以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
【0053】
(比較例1)
中間層用塗液をI−4とした以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
【0054】
(比較例2)
中間層の乾燥膜厚が55nmとなるよう塗布した以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
【0055】
(比較例3)
中間層用塗液をI−5とした以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
【0056】
(比較例4)
ハードコート液をHC−2とし、中間層の乾燥膜厚が140nmとなるよう塗布した以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
【0057】
(比較例5)
厚さ125μmのPETフィルムに、インジウム:錫=10:1のITOターゲットを用いてスパッタリングを行い、膜厚20nmのITO層を形成し、透明導電性フィルムを作製した。
次いで、透明導電性フィルムのITO層に、ストライプ状にパターン化されているフォトレジストを塗布し、乾燥硬化した後、25℃、5質量%の塩酸(塩化水素水溶液)に、1分間浸漬して、透明導電性フィルムのエッチングを行い、更に、ITO層の屈折率が2.0となるように150度1時間アニール処理を施しエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
(比較例6)
表面のハードコート層を形成しない以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
(比較例7)
表面のハードコート層の乾燥膜厚を12μmとなるように形成した以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
(比較例8)
表面のハードコート層の乾燥膜厚を1.5μmとなるように形成した以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
(比較例9)
ITO層を膜厚60nmとなるように形成した以外は、全て実施例1と同様の条件でエッチング加工された透明導電性フィルムを作製した。
【0058】
以上の実施例1〜7並びに比較例1〜9の透明導電性フィルムについて、透過色、透過率、見栄え評価及びカール試験を行い、それらの結果を表1および2に示した。表1および2における記号は以下の意味を表している。
HC層:ハードコート層
I層:中間層
【表1】
【表2】
【0059】
表1に示した結果より、実施例1〜7では、透過色の着色がほとんどなく、透過率が高く、見栄えに優れ、カール性が十分に抑制された。
その一方、表2に示した結果より、比較例1では、中間層の屈折率が高いことから、透過光が着色し、見栄えが悪化した。
比較例2では、中間層の膜厚が薄いために見栄えが悪化した。比較例3では中間層の屈折率が小さいために見栄えが悪化した。
比較例4では、中間層の膜厚が厚いことから、透過光が着色する結果となった。
比較例5では、透明基材フィルム上にハードコート層および中間層が設けられていないことから、透過光が着色し、更に、見栄えが悪い結果であった。
比較例6では、透明基材フィルムの表面にハードコート層が設けられてないことから、カール性が悪化した。
比較例7では、表面側のハードコート層の膜厚が、裏面のハードコート層より非常に厚いことから、カール性が悪化した。
比較例8では、表面側のハードコート層の膜厚が、裏面のハードコート層より非常に薄いことから、カール性が悪化した。
比較例9では、ITO層の膜厚が厚いことから、透過光が着色する結果となった。