特許第5691291号(P5691291)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5691291
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】電動式ドア制御装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/632 20150101AFI20150312BHJP
   B61D 19/02 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   E05F15/14
   B61D19/02 D
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-183171(P2010-183171)
(22)【出願日】2010年8月18日
(65)【公開番号】特開2012-41715(P2012-41715A)
(43)【公開日】2012年3月1日
【審査請求日】2013年6月14日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用 (1)研究集会名:産業計測制御研究会 (2)主催者名:社団法人電気学会(産業応用部門) (3)開催日:平成22年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091281
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】稲玉 繁樹
【審査官】 佐藤 美紗子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−345765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00−15/20
B61D 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動機により駆動されるドアの位置を検出する位置検出手段と、
ドアの速度を検出する速度検出手段と、
ドアの速度検出値が速度指令値に一致するような通常推力指令値を生成する速度制御手段と、
全閉状態のドアの開動作を阻止する押し付け推力を発生させるための第1の押し付け推力指令値を生成する手段と、
ドアの位置検出値に応じた推力選択指令値により、前記通常推力指令値と前記第1の押し付け推力指令値との何れか一方を選択して出力する推力指令選択手段と、
前記指令選択手段により選択された推力指令値に従って電動機を運転し、ドアを駆動するドア駆動機構と、
を備えた電動式ドア制御装置において、
予め設定された機械定数としての電気ダンパ係数と、前記速度検出値と、を用いて、全閉状態にあるドアが外力により開けられたときに発生するべき抗力に相当する推力指令値を演算し、当該推力指令値を前記第1の押し付け推力指令値に加算して前記第1の押し付け推力指令値よりも大きい第2の押し付け推力指令値を生成する電気ダンパ要素を備え、
前記推力指令選択手段は、
前記推力選択指令値により、通常時は前記通常推力指令値を選択して前記ドア駆動機構に与え、全閉状態にあるドアが外力により開けられたときは前記第2の押し付け推力指令値を選択して前記ドア駆動機構に与えることを特徴とする電動式ドア制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載した電動式ドア制御装置において、
前記推力指令選択手段は、ドアが全閉位置から所定位置に移動するまでの区間だけ、前記推力選択指令値により第2の押し付け推力指令値を選択することを特徴とする電動式ドア制御装置。
【請求項3】
電動機により駆動されるドアの位置を検出する位置検出手段と、
ドアの速度を検出する速度検出手段と、
ドアの速度検出値が速度指令値に一致するような通常推力指令値を生成する速度制御手段と、
ドアの位置検出値に応じた推力選択指令値により、前記通常推力指令値と、全閉状態のドアの開動作を阻止する押し付け推力を発生させるための押し付け推力指令値との何れか一方を選択して出力する推力指令選択手段と、
前記推力指令選択手段により選択された推力指令値に従って電動機を運転し、ドアを駆動するドア駆動機構と、
を備えた電動式ドア制御装置において、
予め設定された機械定数としての電気バネ係数と、ドアの位置検出値と全閉状態におけるドアのオフセット位置との差と、を用いて、全閉状態からのドアの移動距離に比例した押し付け推力を得るための前記押し付け推力指令値を生成する電気バネ要素を備え、
前記推力指令選択手段は、
前記推力選択指令値により、通常時は前記通常推力指令値を選択して前記ドア駆動機構に与え、全閉状態にあるドアが外力により開けられたときは前記押し付け推力指令値を選択して前記ドア駆動機構に与えることを特徴とする電動式ドア制御装置。
【請求項4】
請求項3に記載した電動式ドア制御装置において、
前記推力指令選択手段は、ドアが全閉位置から所定位置に移動するまでの区間だけ、前記推力選択指令値により前記押し付け推力指令値を選択することを特徴とする電動式ドア制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動機によって駆動される電動式ドアの制御装置に関し、詳しくは、全閉状態のドアの無理なこじ開けを電気的なダンパまたはバネの作用により抑制可能とした電動式ドア制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、電車用ドアなどの電動式ドアの開閉動作を示したものである。
従来の電動式ドアにおいては、全開状態にある2枚のドアDが閉まって全閉状態になると(図7(a),図7(b))、2枚のドアD同士を押し付ける方向の推力Fをドア駆動用の電動機により発生させ、逆向きの外力Fr1に対する抗力とするような制御を行っている(図7(c),図7(d))。なお、上記外力Fr1は、例えば無理なこじ開け動作によってドアDに働く力である。
【0003】
ここで、図8は、従来の電動式ドア制御装置の構成を示すブロック図である。
図8において、1は、ドアの開閉指令C及び位置検出値Pが入力され、通常時の開閉動作を行うためのドアの速度指令値Vと、前記押し付け推力Fを発生させるための押し付け推力指令値Tsfと、推力選択指令値Selと、を生成するドア指令発生器、2はドアの速度検出値Vが速度指令値Vに一致するような通常推力指令値Tsbを生成して出力する速度制御器、3は推力選択指令値Selに従って通常推力指令値Tsbまたは押し付け推力指令値Tsfの何れかを選択し、推力指令値Tとして出力する推力指令選択器、4は推力指令値Tに従って駆動される同期モータ等の電動機や動力伝達機構、ドア等を含むドア駆動機構、5はドアの位置を検出する位置検出器、6は位置検出値Pからドアの速度を検出する速度検出器、8は減算器である。
【0004】
従来の制御装置では、ドアDが全閉状態であると、位置検出値Pに基づく推力選択指令値Selにより推力指令選択器3が押し付け推力指令値Tsfを選択してドア駆動機構4に与えるため、ドアDには押し付け推力指令値Tsfに従った押し付け推力Fが働き、外力によって簡単には開かないように配慮されている。しかしながら、理論的には、図7(d)に示したように反対方向の外力Fr1が押し付け推力Fを上回れば、全閉状態のドアDを無理やりこじ開けることが可能である。
【0005】
電車に用いられている電動ドアの場合は、全閉時にドアD同士の突合せ部分に指先が入るような隙間が開くことは安全上、許容されない。そのためには、精密かつ堅牢なロック機構等を設けてドアDが容易に開けられないことを補償する必要があるが、機構部品に精密さが要求され、セッティングの難易度が上がる、コストが増加する等の問題がある。
一方、単純な方法としては、押し付け推力指令Tsfを大きくすればドアDのこじ開けが困難になるが、この場合にはドア全閉時の押し付け推力Fの増加により、電動機の発熱や大型化、電力の浪費等の問題を生じることとなり、無駄が多くて実用的な対策ではない。
【0006】
ここで、特許文献1には、全閉状態にある引戸を永久磁石の磁力によって保持するための戸閉状態保持手段を備えた車両用引戸の戸閉装置が開示されている。
また、特許文献2には、全閉状態から引戸をこじ開けようとすると引戸側ストッパと固定側ストッパとが係合して一定の隙間以上は開放できないようにした、機械的な開放阻止構造を有する戸閉装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4−353070号公報(段落[0010]〜[0017]、図1図3等)
【特許文献2】特開平11−165635号公報(段落[0013]〜[0019]、図1図4等)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1または2に係る従来技術によれば、全閉時の押し付け推力Fを増加させる等の方法によらず、磁気的または機械的なロック手段によって戸閉状態を保持することが一応可能である。
しかしながら、特許文献1における戸閉状態保持手段を構成する永久磁石の構造や、特許文献2の引戸側ストッパ及び固定側ストッパ等の構造は概して複雑であると共に、機構部品の数も多いため、製造、組立、調整に要するコストの面で改善が望まれている。
【0009】
そこで、本発明の解決課題は、複雑な構造や多数の機構部品を不要とし、電気的手段によってドアの全閉状態を堅牢、強固に保持可能とした電動式ドア制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、電動機により駆動されるドアの位置を検出する位置検出手段と、
ドアの速度を検出する速度検出手段と、
ドアの速度検出値が速度指令値に一致するような通常推力指令値を生成する速度制御手段と、
全閉状態のドアの開動作を阻止する押し付け推力を発生させるための第1の押し付け推力指令値を生成する手段と、
ドアの位置検出値に応じた推力選択指令値により、前記通常推力指令値と前記第1の押し付け推力指令値との何れか一方を選択して出力する推力指令選択手段と、
前記指令選択手段により選択された推力指令値に従って電動機を運転し、ドアを駆動するドア駆動機構と、
を備えた電動式ドア制御装置において、
予め設定された機械定数としての電気ダンパ係数と、前記速度検出値と、を用いて、全閉状態にあるドアが外力により開けられたときに発生するべき抗力に相当する推力指令値を演算し、当該推力指令値を前記第1の押し付け推力指令値に加算して前記第1の押し付け推力指令値よりも大きい第2の押し付け推力指令値を生成する電気ダンパ要素を備え、
前記推力指令選択手段は、
前記推力選択指令値により、通常時は前記通常推力指令値を選択して前記ドア駆動機構に与え、全閉状態にあるドアが外力により開けられたときは前記第2の押し付け推力指令値を選択して前記ドア駆動機構に与えるものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載した電動式ドア制御装置において、前記推力指令選択手段は、ドアが全閉位置から所定位置に移動するまでの区間だけ、前記推力選択指令値により第2の押し付け推力指令値を選択するものである。
【0012】
請求項3に係る発明は、電動機により駆動されるドアの位置を検出する位置検出手段と、
ドアの速度を検出する速度検出手段と、
ドアの速度検出値が速度指令値に一致するような通常推力指令値を生成する速度制御手段と、
ドアの位置検出値に応じた推力選択指令値により、前記通常推力指令値と、全閉状態のドアの開動作を阻止する押し付け推力を発生させるための押し付け推力指令値との何れか一方を選択して出力する推力指令選択手段と、
前記推力指令選択手段により選択された推力指令値に従って電動機を運転し、ドアを駆動するドア駆動機構と、
を備えた電動式ドア制御装置において、
予め設定された機械定数としての電気バネ係数と、ドアの位置検出値と全閉状態におけるドアのオフセット位置との差と、を用いて、全閉状態からのドアの移動距離に比例した押し付け推力を得るための前記押し付け推力指令値を生成する電気バネ要素を備え、
前記推力指令選択手段は、
前記推力選択指令値により、通常時は前記通常推力指令値を選択して前記ドア駆動機構に与え、全閉状態にあるドアが外力により開けられたときは前記押し付け推力指令値を選択して前記ドア駆動機構に与えるものである。
【0013】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載した電動式ドア制御装置において、
前記推力指令選択手段は、ドアが全閉位置から所定位置に移動するまでの区間だけ、前記推力選択指令値により前記押し付け推力指令値を選択するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ドア駆動機構に与えるドア全閉時の押し付け推力指令値を電気ダンパ要素または電気バネ要素の作用により生成し、磁気的または機械的なロック手段を用いずにドアの全閉状態を堅牢、強固に保持することができる。
このため、構造の複雑化や機構部品数の増加を防ぎ、製造、組立、調整に要するコストの低減が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1実施形態を概念的に示した電動式ドアの開閉動作の説明図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る電動式ドア制御装置の構成を示すブロック図である。
図3図2における電気ダンパ要素の概念図である。
図4】本発明の第2実施形態を概念的に示した電動式ドアの開閉動作の説明図である。
図5】本発明の第2実施形態に係る電動式ドア制御装置の構成を示すブロック図である。
図6図5における電気バネ要素の概念図である。
図7】電動式ドアの開閉動作を示す図である。
図8】従来の電動式ドア制御装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図に沿って本発明の実施形態を説明する。
まず、図1は本発明の第1実施形態を概念的に示した電動式ドアの開閉動作の説明図である。図1(c)に示すように、全閉状態にある2枚のドアD同士を従来と同様の押し付け推力Fによって押し付けているときに、図1(d)に示すごとくドアDを無理にこじ開けようとすると、押し付け推力Fに加算される抗力を発生させて全体的な押し付け推力(抗力)Fが押し付け推力Fより大きくなるような仮想ダンパ21を制御装置により電気的に実現する。
なお、図1(d)において、Fr2は、本実施形態においてドアDをこじ開けるために必要な反対方向の外力であり、押し付け推力Fを更に上回る大きさの力である。
このように仮想ダンパ21を制御装置によって電気的に実現すれば、全閉状態のドアDを開けにくくするための永久磁石やロック機構、更には機械的なダンパ装置等を設置する必要がなく、構造の簡略化、製造、組立等に要するコストの低減も可能になる。
【0017】
次に、図2は、この実施形態に係る電動式ドア制御装置の構成を示すブロック図であり、図8と同一機能を有する構成要素には図8と同一番号を付して説明を省略し、以下では異なる部分を中心に説明する。
図2において、ドア指令発生器1Aには、ドアの開閉指令C及び位置検出値Pが入力されており、このドア指令発生器1Aは、通常の開閉動作を行うためのドアの速度指令値Vと、図8の押し付け推力指令値Tsfに相当する押し付け推力指令値(便宜的に第1の押し付け推力指令値とする)Tsf1と、電気ダンパ係数Kdmp[N/(m/s)]と、推力選択指令値Selと、を生成するように構成されている。
【0018】
第1の押し付け推力指令値Tsf1と電気ダンパ係数Kdmpとは、速度検出値Vと共に電気ダンパ要素7Aに入力されており、この電気ダンパ要素7Aにより第2の押し付け推力指令値Tsf2が生成されて推力指令選択器3に与えられている。ここで、電気ダンパ要素7Aは、図1に概念的に示した仮想ダンパ21の主要部を構成するものであり、ドアDが全閉状態からこじ開けられるときに押し付け推力Fを発生させるような第2の押し付け推力指令値Tsf2を生成するものである。
【0019】
図2におけるその他の構成は図8と同様であり、推力指令選択器3は、通常推力指令値Tsbまたは第2の押し付け推力指令値Tsf2の何れかを推力選択指令値Selに従って選択し、選択した推力指令値Tをドア駆動機構4に出力する。そして、ドア駆動機構4は推力指令値Tに従って電動機を駆動し、位置検出器5によってドアDの位置Pが、速度検出器6によってドアDの速度Vが、それぞれ検出されることになる。減算器8及び速度制御器2の作用も、図8と同様である。
【0020】
次に、図3は、図2における電気ダンパ要素7Aの概念図である。
電気ダンパ係数Kdmpは機械設計により予め導き出されたパラメータであり、機械定数を用いてドアDの全閉時に必要な抗力を設計する。電気ダンパ要素7Aは、基本的にはドアDの停止指令が発生している時に使用するため、速度検出値Vは、外力によってドアDが無理やり開けられているときのドアDの速度とみなす。電気ダンパ要素7Aでは、この速度検出値Vに電気ダンパ係数Kdmpを乗算することでダンパが発生するべき抗力に相当する推力指令値が演算され、この推力指令値に第1の押し付け推力指令Tsf1を加算することで第2の押し付け推力指令値Tsf2が算出される。
【0021】
この実施形態によれば、ドアDの全閉状態において、外力によってドアDがこじ開けられて速度検出値Vが発生すると、電気ダンパ要素7Aにより第2の押し付け推力指令値Tsf2が演算される。これと同時に、ドアDの位置検出値Pが入力されているドア指令発生器1Aからの推力選択指令値Selにより、推力指令選択器3が第2の押し付け推力指令値Tsf2を選択し、これを推力指令値Tとしてドア駆動機構4に出力する。
【0022】
従って、ドアDが全閉状態であって速度検出値Vが発生していない時は外力によるこじ開け等がないものと判断し、第1の押し付け推力指令値Tsf1を電気ダンパ要素7Aを介してそのまま推力指令値Tとして推力指令選択器3から出力し、ドアDに従来と同様の押し付け推力Fを発生させることができる。そして、ドアDが全閉状態からこじ開けられたときには、第1の押し付け推力指令値Tsf1よりも大きい第2の押し付け推力指令値Tsf2を電気ダンパ要素7Aにより生成し、これを推力指令値Tとして推力指令選択器3から出力することにより、押し付け推力Fよりも大きい押し付け推力Fを発生させてドアDのこじ開けを阻止することができる。
【0023】
既に明らかなように、第2の押し付け推力指令値Tsf2は、速度検出値Vと電気ダンパ係数Kdmpとに依存する。このため、電気ダンパ係数Kdmpを適宜調整すればドアDの開けづらさを調節することが可能であり、機械的なダンパ装置やロック機構と比べて遜色のないドアDの拘束力を得ることができる。
なお、この実施形態において、ドア指令発生器1AにはドアDの位置検出値Pが入力されているので、ドアDが全閉位置から所定位置に移動するまでの区間だけ、推力選択指令値Selにより第2の押し付け推力指令値Tsf2を選択して出力させることも可能である。
【0024】
次に、本発明の第2実施形態を図4図6に沿って説明する。この第2実施形態は、第1実施形態における仮想ダンパ21に代えて、図4(c),(d)に示す仮想バネ22によって全閉状態のドアDの押し付け推力を得るものであり、具体的には、後述する図5の電気バネ要素7Bにより機械的バネの引張力に相当する押し付け推力を発生させるものである。
なお、図4(c),(d)において、F’はドアDの全閉状態の押し付け推力、F’はドアDが全閉状態から外力によってこじ開けられた時の押し付け推力、Fr2はドアDをこじ開けるために必要な反対方向の外力である。
【0025】
図5は、この実施形態に係る電動式ドア制御装置の構成を示すブロック図であり、以下では図2と異なる部分を中心に説明する。
図5において、ドア指令発生器1Bには、ドアの開閉指令C及び位置検出値Pが入力されており、このドア指令発生器1Bは、通常の開閉動作を行うためのドアの速度指令値Vと、電気バネ係数Kspr[N/m]と、仮想バネ22の一端の固定位置に相当する全閉状態におけるドアDのオフセット位置Poffと、推力選択指令値Selと、を生成するように構成されている。
【0026】
電気バネ係数Ksprとオフセット位置Poffとは、位置検出値Pと共に電気バネ要素7Bに入力されており、この電気バネ要素7Bにより押し付け推力指令値Tsfが生成されて推力指令選択器3に与えられている。ここで、電気バネ要素7Bは、図4に概念的に示した仮想バネ22の主要部を構成するものであり、ドアDが全閉状態からこじ開けられるときにドアDに押し付け推力F’を発生させるような押し付け推力指令値Tsfを生成するものである。
図5におけるその他の構成は概ね図2と同様であり、推力指令選択器3は、通常推力指令値Tsbまたは押し付け推力指令値Tsfの何れかを推力選択指令値Selに従って選択し、選択した推力指令値Tをドア駆動機構4に出力するようになっている。
【0027】
図6は、図5における電気バネ要素7Bの概念図である。
電気バネ係数Kdmpは機械設計により予め導き出されたパラメータであり、機械定数を用いて設計される。電気バネ要素7Bでは、ドアDの位置検出値Pとオフセット位置Poffとの差をバネの伸び量相当値とし、この伸び量相当値と電気バネ係数Ksprとを乗算して押し付け推力指令値Tsfを算出する。この押し付け推力指令値Tsfを推力指令選択器3を介してドア駆動機構4に与えることにより、図4(d)に示したようにドアDが全閉状態からこじ開けられるときの押し付け推力F’を発生させ、ドアDのこじ開けを阻止するものである。
【0028】
この実施形態によれば、電気バネ要素7Bにより、全閉状態からのドアDの移動距離に比例した押し付け推力F’を得ることができ、ドアDを開けるに従い抗力を増加させてますます開けにくくなるドアを実現することができる。なお、電気バネ係数Ksprを適宜調整することで、押し付け推力F’を任意に設定できることはいうまでもない。
また、第1実施形態と同様に、ドアDが全閉位置から所定位置に移動するまでの区間だけ、推力選択指令値Selにより押し付け推力指令値Tsfを選択して出力させることも可能である。
【0029】
なお、第1実施形態、第2実施形態では両開きのドアDを想定しているが、本発明は、片開きのドアに対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0030】
D:ドア
1,1A,1B:ドア指令発生器
2:速度制御器
3:推力指令選択器
4:ドア駆動機構
5:位置検出器
6:速度検出器
7A:電気ダンパ要素
7B:電気バネ要素
8:減算器
21:仮想ダンパ
22:仮想バネ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8