特許第5691303号(P5691303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5691303
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】流体搬送用ホースの製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 11/133 20060101AFI20150312BHJP
   F16L 11/08 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   F16L11/12 F
   F16L11/08 A
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-196349(P2010-196349)
(22)【出願日】2010年9月2日
(65)【公開番号】特開2012-52616(P2012-52616A)
(43)【公開日】2012年3月15日
【審査請求日】2013年9月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100066865
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 信一
(74)【代理人】
【識別番号】100066854
【弁理士】
【氏名又は名称】野口 賢照
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100117938
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 謙二
(74)【代理人】
【識別番号】100138287
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 功
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100068685
【弁理士】
【氏名又は名称】斎下 和彦
(72)【発明者】
【氏名】大岡 直行
(72)【発明者】
【氏名】宮川 卓也
(72)【発明者】
【氏名】外崎 義輝
【審査官】 礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−105266(JP,A)
【文献】 特開平11−033982(JP,A)
【文献】 特開平03−143210(JP,A)
【文献】 特開2006−283788(JP,A)
【文献】 特開2010−173110(JP,A)
【文献】 特開2009−119656(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 9/00 − 11/18
F16L 29/00 − 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
未加硫の内面ゴム層を複数層からなる補強層群で被覆し、前記補強層群の外側にスポンジゴムからなる帯状材料を螺旋状に巻き付けて複数積層し、更に未加硫のカバーゴム層で被覆してホース本体を形成し、前記ホース本体を加硫する流体搬送用ホースの製造方法において、
前記帯状材料の巻き付け端部を層間でホース長手方向にずらして階段状にし、前記階段状となった帯状材料の段部に未加硫の発泡ゴムを巻き回した後に、前記カバーゴム層で被覆し、加硫により前記未加硫の発泡ゴムを発泡させて前記帯状材料の巻き付け端部と前記カバーゴム層との間の前記空隙を埋めることを特徴とする流体搬送用ホースの製造方法。
【請求項2】
前記未加硫の発泡ゴムの加硫後における体積が、前記カバーゴム層と前記帯状材料の巻き付け端部との間に形成される空隙の体積と等しくなるようにした請求項1に記載の流体搬送用ホースの製造方法。
【請求項3】
前記発泡ゴムを複数積層するように巻き回した請求項1又は2に記載の流体搬送用ホースの製造方法。
【請求項4】
前記巻き回された発泡ゴムのホース径方向の断面形状が、矩形又は直角三角形である請求項1〜3のいずれかに記載の流体搬送用ホースの製造方法。
【請求項5】
前記未加硫の内面ゴム層を、マンドレルの外周に巻き付けてから前記複数層からなる補強層群で被覆すると共に、前記加硫後のホース本体から前記マンドレルを抜き取るようにした請求項1〜4のいずれかに記載の流体搬送用ホースの製造方法。
【請求項6】
前記マンドレルを接続金具のニップル部に挿入した後に、前記ニップル部と前記マンドレルとの外周に前記未加硫の内面ゴム層を巻き付ける請求項5に記載の流体搬送用ホースの製造方法。
【請求項7】
前記流体搬送用ホースが石油搬送用のフローティングマリンホースである請求項1〜6のいずれかに記載の流体搬送用ホースの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体搬送用ホースの製造方法に関し、更に詳しくは、ホース本体の端部における浮力層のテーパー形状を、適正かつ容易に成形することができる流体搬送用ホースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マリンホースに代表される流体荷役用の大口径のホースには、いわゆるフローティングホースと呼ばれる洋上で使用されるタイプがある。このタイプの流体搬送用ホースは、絶えず洋上に浮遊していることが要求されるため、国際規格で定められた浮力を有することが必要とされている。そのため、図8に示すように、ホース本体1の内部構造として、流体に対する耐侵食性を有する内面ゴム層3の外側に複数層からなる補強層群5、6、7を配置し、それら補強層群5、6、7とカバーゴム層4との間に浮力層8を設けたものが多く用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
ところで、このような流体搬送用ホースにおけるホース本体1の端部は、他の流体搬送用ホースとの接続作業を容易にするために、特に浮力層8の部分を接続金具2に向けてホース外径が次第に小さくなるテーパー形状にする必要がある。一般に浮力層8は、スポンジゴムからなる帯状材料12を螺旋状に巻き付けて複数積層することにより形成するが、現状の製造工程においては、それら帯状材料12の巻き付け端部13を層間でずらして階段状にし(図9)、作業員が段部16を大型ナイフ等で斜めに切断してテーパー形状にする(図10)ことが行われている。
【0004】
しかし、このような作業は、浮力層8の厚さが大きいため作業員にとって重労働になると共に、作業員の熟練度によりテーパー形状がばらついてしまい、流体搬送用ホースの品質を低下させるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−167353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ホース本体の端部における浮力層のテーパー形状を、適正かつ容易に成形することができる流体搬送用ホースの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明の流体搬送用ホースの製造方法は、未加硫の内面ゴム層を複数層からなる補強層群で被覆し、前記補強層群の外側にスポンジゴムからなる帯状材料を螺旋状に巻き付けて複数積層し、更に未加硫のカバーゴム層で被覆してホース本体を形成し、前記ホース本体を加硫する流体搬送用ホースの製造方法において、前記帯状材料の巻き付け端部を層間でホース長手方向にずらして階段状にし、前記階段状となった帯状材料の段部に未加硫の発泡ゴムを巻き回した後に、前記カバーゴム層で被覆し、加硫により前記未加硫の発泡ゴムを発泡させて前記帯状材料の巻き付け端部と前記カバーゴム層との間の前記空隙を埋めることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の流体搬送用ホースの製造方法によれば、浮力層を形成する帯状材料の巻き付け端部を層間でホース長手方向にずらして階段状にし、それら帯状材料の段部に未加硫の発泡ゴムを巻き回した後にカバーゴム層で被覆するようにしたので、加硫により発泡した発泡ゴムが、帯状材料の巻き付け端部とカバーゴム層との間の空隙を埋めるので、浮力層のテーパー形状を適正かつ容易に成形することができる。
【0010】
上記の未加硫の発泡ゴムの加硫後における体積が、カバーゴム層と帯状材料の巻き付け端部との間に形成される空隙の体積と同一になるようにすることが望ましい。
【0011】
そのようにすることで、更にテーパー形状を適正なものとすることができる。
【0012】
発泡ゴムは複数積層するように巻き回すことが望ましい。そのようにすることで、発泡ゴムの量を容易に調整することができる。
【0013】
また、巻き回された発泡ゴムのホース径方向の断面形状が、矩形又は直角三角形となるようにすることが望ましい。そのようにすることで、発泡ゴムを段部の角に設置することができるので、作業性を向上することができる。
【0014】
また、本発明の製造方法により製造された流体搬送用ホース、浮力層を形成する帯状材料の巻き付け端部層間でホース長手方向にずらして階段状にされると共に、その階段状となった帯状材料の段部とカバーゴム層との間に発泡ゴム充填され、充填された発泡ゴムが帯状材料の巻き付け端部とカバーゴム層との間の空隙を埋めるので、浮力層のテーパー形状適正かつ容易に成形される
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の製造方法により製造された流体搬送用ホースの端部における断面図である。
図2図1に示すX部の製造工程を説明する拡大断面図である。
図3図2の次の製造工程を説明する拡大断面図である。
図4図3の次の製造工程を説明する拡大断面図である。
図5図4の次の製造工程を説明する拡大断面図である。
図6図5の次の製造工程を説明する拡大断面図である。
図7】発泡ゴムのホース径方向の断面形状の例を示す断面図であって、(a)は矩形となる場合を、(b)は直角三角となる場合を、それぞれ示す。
図8】流体搬送用ホースの端部の内部構造の例を示す断面図である。
図9図8に示すY部の従来の製造方法を説明する拡大断面図である。
図10図9の次の製造工程を説明する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の製造方法により製造された流体搬送用ホースの端部構造を示す。
【0017】
この流体搬送用ホースは、ホース本体1の端部に液密に接続金具2を取り付けたものであり、ホース本体1の構造は、円筒状の内面ゴム層3とカバーゴム層4との間に、内側カーカス層5、ワイヤ補強層6、外側カーカス層7及び浮力層8を順に積層したものとなっている。
【0018】
接続金具2は、複数本の有限長のホース本体1の端部同士を相互に連結するためのものであり、ホース本体1の端部が外挿される円筒状のニップル部2aと、このニップル部2aの外端に溶接された環状のフランジ部2bとから構成されている。
【0019】
ホース本体1の内面ゴム層3はホース内を流れる流体への耐侵食性に優れた材質から構成されている。内側カーカス層5は、ホース軸方向にバイアスに配列した有機繊維コードからなる補強層を、層間でコードが互いに交差するように複数積層した補強層群として構成されており、それらの補強層の一部が接続金具2の固定リング9の近傍において固定ワイヤ10にてターンバックされている。この内側カーカス層5は、ホース本体1に主として軸方向の強度と適度な可撓性を付与する。
【0020】
ワイヤ補強層6は、金属ワイヤを所定のピッチで内側カーカス層5の外周に螺旋状に巻き回すことにより構成され、ホース本体1に主に周方向の強度を付与すると共に、ホース本体1が湾曲したときにキンクが発生するのを防止し、更に外圧によるホース本体1の潰れを防止する。
【0021】
外側カーカス層7は、内側カーカス層5と同様に、ホース軸方向にバイアスに配列した有機繊維コードからなる補強層を、層間でコードが互いに交差するように複数積層した補強層群として構成されている。
【0022】
浮力層8は、主にスポンジゴムから構成され、ホース本体1に浮力を与えるものである。
【0023】
なお、流体搬送用ホースの用途及び性能により、外側カーカス層7を設けない場合もある。
【0024】
このホース本体1の端部(X部)は接続金具2のフランジ部2bに向けて、ホース外径が小さくなるようなテーパー形状となっている。
【0025】
このようなホース本体1の端部のテーパー形状を成形する製造方法を、図2〜7を基にして以下に説明する。
【0026】
まず、マンドレル11の外周に接続金具2のニップル部2aを外挿し、それらマンドレル11又はニップル部2aの上に未加硫の内面ゴム層3、内側カーカス層5、ワイヤ補強層6及び外側カーカス層7を順に積層する(図2)。
【0027】
次に、加硫後のスポンジゴムからなる帯状部材12を、その巻き付け端部13が層間でホース長手方向へ階段状にずれるようにして複数積層する(図3)。例えば、厚さ30mmの帯状材料を、層間で60〜80mmの範囲でずれるようにして複数積層する。
【0028】
なお、このとき、帯状材料12の巻き付け端部13におけるコーナー部の頂点14を結んだ円錐状の仮想面15が、所望のテーパー形状と一致するように帯状材料12同士をずらすことが好ましい。
【0029】
次に、帯状材料12の巻き付け端部13の段部16に、未加硫の発泡ゴム17を巻き回す(図4)。なお、最下段の段部13の斜め下方の外側カーカス層7表面にも未加硫の発泡ゴム17を巻き回すようにする。
【0030】
そして、仮想面15に沿って未加硫のカバーゴム層4を被覆した(図5)後に、ホース本体1を加硫する。この加硫により、帯状材料12が一体化して浮力層8を形成すると共に、発泡ゴム17が発泡して帯状材料12の巻き付け端部13とカバーゴム層4との間の空隙18を埋めるので、適正なテーパー形状を得ることができる(図6)。なお、図6に示すように、加硫後にマンドレル11は抜き取ることになる。
【0031】
このように流体搬送用ホースを製造するようにしたので、スポンジゴムからなる帯状部材12の巻き付け端部13を斜めに切断する作業が不要となると共に、テーパー形状を確実に規定できるため、ホース本体1の端部における浮力層8のテーパー形状を、適正かつ容易に成形することができる。
【0032】
また、帯状材料12の切断屑の発生がなくなるため、帯状材料12を有効利用して製造コストを低減することが可能となる。
【0033】
発泡ゴム17については、発泡したときにカバーゴム層4と帯状材料12の巻き付け端部13との間の空隙18を丁度埋めることができるように、あらかじめ巻き付ける量を決定しておくことが望ましい。そのような発泡ゴム17の量は、発泡ゴム17の材料特性(発泡倍率など)、流体搬送用ホースの寸法仕様及び加硫条件などから容易に求めることができる。
【0034】
また、発泡ゴム17の形状は特に限定するものではないが、帯状材料12に巻き回したときのホース径方向の断面形状が、矩形(図7(a))や直角三角形(図7(b))となるようにすれば、段部16の角に設置できるので、作業性を向上することができる。また、図4に示すように、発泡ゴム17を複数積層させて巻き回すことで、発泡ゴム17の量を容易に調整することができる。
【0035】
本発明の流体搬送用ホースの製造方法及び流体搬送用ホースの用途は、特に限定されるものではないが、流体荷役用の大口径ホースの製造に好ましく適用され、特に沖合のタンカーと陸部の備蓄タンク等との間の洋上で石油を搬送するフローティングマリンホースに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
1 ホース本体
2 接続金具
3 内面ゴム層
4 カバーゴム層
5 内側カーカス層
6 ワイヤ補強層
7 外側カーカス層
8 浮力層
9 固定リング
10 固定ワイヤ
11 マンドレル
12 帯状部材
13 巻き付け端部
14 頂点
15 仮想面
16 段部
17 発泡ゴム
18 空隙
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10