(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の実施形態
1に係るトルク変動吸収装置では、第1プレート部材(
図1の14に相当)と、前記第1プレート部材に対して回転可能な第2プレート部材(
図1の13に相当)と、前記第1プレート部材と前記第2プレート部材とによって挟持されるとともに、前記第1プレート部材に対してスライド可能に圧接する摩擦材(
図1、
図6の15)と、を備え、前記第2プレート部材は、前記摩擦材と当接する保持面(
図1の13bに相当)を有し、前記摩擦材は、前記保持面側の面(
図6の15a、15bを有する面)が凹凸形状に形成され
、前記第1プレート部材と前記摩擦材との間の摩擦係数は、前記第2プレート部材と前記摩擦材との間の摩擦係数よりも低くなっており、前記保持面と前記凹凸形状とで前記摩擦材と前記第2プレート部材との相対移動を規制している。
【0035】
本発明の実施形態4に係るトルク変動吸収装置では、第1プレート部材(
図8、
図9、
図13の14)と、前記第1プレート部材に対して回転可能な第2プレート部材(
図8、
図9、
図13の13)と、前記第1プレート部材と前記第2プレート部材とによって挟持されるとともに、前記第1プレート部材に対してスライド可能に圧接する摩擦材(
図8、
図9、
図13の15)と、を備え、前記第2プレート部材は、前記摩擦材側の面に係合突起部(
図8、
図9の13j)又は係合爪部(
図13の13m)を有し、前記摩擦材は、
環状をなすとともに、前記第2プレート部材の前記係合突起部又は前記係合爪部と係合す
る係合切欠部(
図13の15f)を有
し、前記係合切欠部は、前記摩擦材の外周面から径方向内側に向かって延びるように切欠かれるとともに、径方向外側に開口する。
【0036】
本発明の実施形態5に係るトルク変動吸収装置では、第1プレート部材(
図12の14)と、前記第1プレート部材に対して回転可能な第2プレート部材(
図12の13)と、前記第1プレート部材と前記第2プレート部材とによって挟持されるとともに、前記第1プレート部材に対してスライド可能に圧接する摩擦材(
図12の15)と、前記第1プレート部材の前記第2プレート部材側の反対側に配されるとともに、前記第1プレート部材に対して回転可能な第3プレート部材(
図12の11)と、前記第1プレート部材と前記第3プレート部材とによって挟持されるとともに、前記第1プレート部材に対してスライド可能に圧接する他の摩擦材(
図12の16)と、を備え、前記第3プレート部材は、穴部(
図12の11a)を有し、前記第2プレート部材は、前記第3プレート部材の前記穴部に相対回転不能かつ軸方向移動可能に挿入される回り止め部(
図12の13a)を有し、前記摩擦材及び前記他の摩擦材は、前記第2プレート部材の前記回り止め部と係合する係合切欠部(
図12の15f、16f)を有する。
【実施例1】
【0037】
本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置の構成を模式的に示した径方向の部分断面図である。
図2は、本発明の実施例1に係るトルク変動吸収装置におけるカバープレート及びプレッシャプレートの保持面の構成を模式的に示した(A)部分平面図、(B)X−X´間の断面図、(C)領域Yの拡大断面図である。
【0038】
図1を参照すると、トルク変動吸収装置1は、例えば、エンジン側回転軸6と変速機側回転軸7との間の動力伝達経路に設けられており、エンジン側回転軸6と変速機側回転軸7の捩れによる変動トルクを吸収(抑制)する装置である。トルク変動吸収装置1は、捩れ緩衝機能を有し、バネ力によって変動トルクを吸収するダンパ部3と、摩擦等によるヒステリシストルクによって変動トルクを吸収(抑制)するヒステリシス部4と、回転軸の捩れがダンパ部3やヒステリシス部4で吸収できなくなったときにすべりを生ずるリミッタ部2と、を有する。リミッタ部2は、動力伝達経路上において、ダンパ部3及びヒステリシス部4と直列に配設されている。ダンパ部3は、動力伝達経路上において、ヒステリシス部4と並列に配設されている。トルク変動吸収装置1は、特に、車両にリミッタ部のないハイブリッド車両に用いることができ、リミッタ部を有する車両でもシステムの小型化に効果的である。
【0039】
トルク変動吸収装置1は、主な構成部材として、サポートプレート10と、カバープレート11と、皿ばね12と、プレッシャプレート13と、ライニングプレート14と、摩擦材15、16と、第1サイドプレート17と、第2サイドプレート18と、リベット19と、コイルスプリング20と、シート部材21と、第1スラスト部材22と、第2スラスト部材23と、皿ばね24と、ハブ部材25と、を有する。
【0040】
サポートプレート10は、フライホイール5とカバープレート11との間に配設された環状の部材であり、リミッタ部2の構成部材である。サポートプレート10は、外周部分にてカバープレート11と合わさってボルト9によってフライホイール5に取付固定されている。サポートプレート10は、内周部分にてカバープレート11と離間している。サポートプレート10は、皿ばね12と圧接している。なお、フライホイール5は、ボルト8によってエンジン側回転軸6と締結されている。
【0041】
カバープレート11は、サポートプレート10のフライホイール5側の反対側(
図1の右側)に配設された環状の部材であり、リミッタ部2の構成部材である。カバープレート11は、外周部分にてサポートプレート10と合わさってボルト9によってフライホイール5に取付固定される。カバープレート11は、内周部分にてサポートプレート10と離間している。カバープレート11は、プレッシャプレート13を相対回転不能かつ軸方向移動可能に支持するための穴部11aを有する。穴部11aには、プレッシャプレート13の回り止め部13aが相対回転不能かつ軸方向移動可能に挿入されている。カバープレート11は、内周部分にて摩擦材16を保持する保持面11bを有する。保持面11bは、摩擦係数を高める処理が行われており、摩擦材16を動きにくくすることで摩擦材16を保持する位置を決定する。保持面11bと摩擦材16の間の摩擦係数は、ライニングプレート14と摩擦材16の間の摩擦係数よりも大きく設定されている。
【0042】
図2を参照すると、保持面11bは、平坦な面の所定の位置に平坦な面よりも凹んだ凹部11cを有し、凹部11cの周縁に平坦な面よりも突出した凸部11dを有する。凹部11c及び凸部11dは、保持面11bに対してプレス金型をパンチすることで形成することができる。プレス金型のパンチ1回当たりの領域(
図2の破線の領域)には、凹部11c(凸部11dを含む)によって所定の模様、パターンが形成されており、凹部11cが4箇所以上(好ましくは10〜30箇所)形成されている。プレス金型でパンチされた箇所は、1箇所当たり直径20mm以下であり、保持面11bにおいて部分的に複数個所(好ましくは6箇所以上)有する。凸部11dの高さは、平坦な面から0.01mm以上であることが好ましい。凹部11cは、底の中心部が最も深まった形状をしており、底の中心部の角度が120°以下であることが好ましい。
【0043】
皿ばね12は、サポートプレート10とプレッシャプレート13との間に配された皿状のばねであり、リミッタ部2の構成部材である。皿ばね12は、プレッシャプレート13を摩擦材15側に付勢する。
【0044】
プレッシャプレート13は、皿ばね12と摩擦材15との間に配された環状の部材であり、リミッタ部2の構成部材である。プレッシャプレート13は、カバープレート11に対して相対回転不能かつ軸方向移動可能に支持されるようにするための回り止め部13aを有する。回り止め部13aは、カバープレート11の穴部11aに相対回転不能かつ軸方向移動可能に挿入されている。プレッシャプレート13は、皿ばね12によって摩擦材15側に付勢されている。プレッシャプレート13は、摩擦材15を保持する保持面13bを有する。保持面13bは、摩擦係数を高める処理が行われており、摩擦材15を動きにくくすることで摩擦材15を保持する位置を決定する。保持面13bと摩擦材15の間の摩擦係数は、ライニングプレート14と摩擦材15の間の摩擦係数よりも大きく設定されている。
【0045】
図2を参照すると、保持面13bは、平坦な面の所定の位置に平坦な面よりも凹んだ凹部13cを有し、凹部13cの周縁に平坦な面よりも突出した凸部13dを有する。凹部13c及び凸部13dは、保持面13bに対してプレス金型をパンチすることで形成することができる。プレス金型のパンチ1回当たりの領域(
図2の破線の領域)には、凹部13cによって所定の模様、パターンが形成されており、凹部13cが4箇所以上(好ましくは10〜30箇所)形成されている。プレス金型でパンチされた箇所は、1箇所当たり直径20mm以下であり、保持面13bにおいて部分的に複数個所(好ましくは6箇所以上)有する。凸部13dの高さは、平坦な面から0.01mm以上であることが好ましい。凹部13cは、底の中心部が最も深まった形状をしており、底の中心部の角度が120°以下であることが好ましい。
【0046】
ライニングプレート14は、カバープレート11とプレッシャプレート13との間における摩擦材15、16間に配された環状の部材であり、リミッタ部2の構成部材である。ライニングプレート14は、内周部分にて、第1サイドプレート17と第2サイドプレート18との間に挟み込まれており、第1サイドプレート17及び第2サイドプレート18とともにリベット19によって固定されている。ライニングプレート14は、外周部分が摩擦材15、16間に延在しており、摩擦材15、16とスライド可能に圧接している。ライニングプレート14は、錆の発生により摩擦材15、16との貼り付きを防止するため、錆の発生しにくい材料(ステンレスなど)からなることが好ましく、摩擦係数μ確保のため、表面処理(メッキなど)又は熱処理若しくは粗面化処理が施されていることが好ましい。なお、粗面化処理には、圧延ローラの凹凸転写、あるいは研磨(ブラシ、ペーパー)等がある。ライニングプレート14と摩擦材16との間の摩擦係数は、カバープレート11の保持面11bと摩擦材16との間の摩擦係数よりも低い。ライニングプレート14と摩擦材15との間の摩擦係数は、プレッシャプレート13の保持面13bと摩擦材15との間の摩擦係数よりも低い。
【0047】
摩擦材15は、リミッタ部2の構成部材であり、ライニングプレート14とプレッシャプレート13との間に配されている。摩擦材15は、環状に構成されており、表面は平坦である。摩擦材15は、プレッシャプレート13の保持面13bに保持されている。摩擦材15は、ライニングプレート14とスライド可能に圧接している。摩擦材15には、ゴム、樹脂、繊維(短繊維、長繊維)、摩擦係数μ調整用の粒子などを含むものを用いることができる。
【0048】
摩擦材16は、リミッタ部2の構成部材であり、ライニングプレート14とカバープレート11との間に配されている。摩擦材16は、環状に構成されており、表面は平坦である。摩擦材16は、カバープレート11の保持面11bに保持されている。摩擦材16は、ライニングプレート14とスライド可能に圧接している。
【0049】
第1サイドプレート17は、ハブ部材25のフランジ部25bのエンジン側(
図1の左側)に配設された環状の部材であり、ダンパ部3及びヒステリシス部4の構成部材である。第1サイドプレート17は、外周端部近傍の部分にて、リベット19によってライニングプレート14及び第2サイドプレート18と一体固定されている。第1サイドプレート17は、中間部分のダンパ部3にて、コイルスプリング20及びシート部材21を収容するための窓部17aを有し、当該窓部17aの周方向端面がシート部材21と接離可能に接している。第1サイドプレート17は、ダンパ部3より内周側のヒステリシス部4にて、第1スラスト部材22とスライド可能に接している。第1サイドプレート17は、内周端部にて、第1スラスト部材22を介してハブ部材25(ハブ部25a)に相対回転可能に支持されている。
【0050】
第2サイドプレート18は、ハブ部材25のフランジ部25bの変速機側(
図1の右側)に配設された環状の部材であり、ダンパ部3及びヒステリシス部4の構成部材である。第2サイドプレート18は、外周端部近傍の部分にて、リベット19によってライニングプレート14及び第1サイドプレート17と一体固定されている。第2サイドプレート18は、中間部分のダンパ部3にて、コイルスプリング20及びシート部材21を収容するための窓部18aを有し、当該窓部18aの周方向端面がシート部材21と接離可能に接している。第2サイドプレート18は、ダンパ部3より内周側のヒステリシス部4にて、皿ばね24を支持する。第2サイドプレート18は、内周端部にて、第2スラスト部材23を介してハブ部材25(ハブ部25a)に相対回転可能に支持されている。
【0051】
リベット19は、ライニングプレート14、第1サイドプレート17、及び第2サイドプレート18を一体固定するための部材である。
【0052】
コイルスプリング20は、ダンパ部3の構成部品であり、サイドプレート17、18及びハブ部材25(フランジ部25b)に形成された窓部17a、18a、25cに収容され、両端に配設されたシート部材21と接している。コイルスプリング20は、サイドプレート17、18とハブ部材25とが相対回転したときに収縮し、サイドプレート17、18とハブ部材25の回転差によるショックを吸収する。コイルスプリング20には、ストレート形状、又はストレート形状のスプリングを曲げて組み付けしたものを用いることができるが、広い捩りを実現するために、周方向に沿って曲ったアークスプリングを用いることができる。
【0053】
シート部材21は、ダンパ部3の構成部品であり、サイドプレート17、18及びハブ部材25(フランジ部25b)に形成された窓部17a、18a、25cに収容され、当該窓部17a、18a、25cの周方向の端面とコイルスプリング20の端部との間に配されている。シート部材21には、コイルスプリング20の摩耗を低減するために、樹脂を用いることができる。
【0054】
第1スラスト部材22は、ヒステリシス部4の構成部品であり、第1サイドプレート17とハブ部材25との間に配された環状の部材である。第1スラスト部材22は、軸方向において、第1サイドプレート17とフランジ部25bとの間に配されており、第1サイドプレート17及びフランジ部25bとスライド可能に圧接している。第1スラスト部材22は、径方向において、第1サイドプレート17とハブ部25aとの間にも介在しており、第1サイドプレート17をハブ部25aに相対回転可能に支持するための滑り軸受(ブッシュ)となる。
【0055】
第2スラスト部材23は、ヒステリシス部4の構成部品であり、第2サイドプレート18とハブ部材25との間に配された環状の部材である。第2スラスト部材23は、軸方向において、皿ばね24とフランジ部25bとの間に配されており、皿ばね24によってフランジ部25b側に付勢されており、フランジ部25bとスライド可能に圧接している。第2スラスト部材23は、径方向において、第2サイドプレート18とハブ部25aとの間にも介在しており、第2サイドプレート18をハブ部25aに相対回転可能に支持するための滑り軸受(ブッシュ)となる。
【0056】
皿ばね24は、ヒステリシス部4の構成部品であり、第2スラスト部材23と第2サイドプレート18との間に配され、第2スラスト部材23をフランジ部25b側に付勢する皿状のばねである。
【0057】
ハブ部材25は、ダンパ部3及びヒステリシス部4からの回転動力を変速機に向けて出力する部材であり、ダンパ部3及びヒステリシス部4の構成部材である。ハブ部材25は、ハブ部25aの外周の所定の部位から延在したフランジ部25bを有する。ハブ部25aは、内周面にて変速機側回転軸7とスプライン係合する。ハブ部25aは、外周にて、第1スラスト部材22を介して第1サイドプレート17を相対回転可能に支持しており、第2スラスト部材23を介して第2サイドプレート18を相対回転可能に支持している。フランジ部25bは、外周のダンパ部3にて、コイルスプリング20、及びシート部材21を収容するための窓部25cを有し、当該窓部25cの周方向端面がシート部材21と接離可能に接している。フランジ部25bは、ダンパ部3より内周側のヒステリシス部4の軸方向の面にて、スラスト部材22、23によってスライド可能に挟持されている。
【0058】
なお、実施例1では、ライニングプレート14と摩擦材15、16との間をすべり面とし、カバープレート11と摩擦材16との間を保持面とし、プレッシャプレート13と摩擦材15との間を保持面としているが、カバープレート11及びプレッシャプレート13に
図2のような凹部11c、13c及び凸部11d、13dを形成するのをやめ、ライニングプレート14に
図2のような凹部11c、13c及び凸部11d、13dを形成して、ライニングプレート14と摩擦材15、16との間を保持面とし、カバープレート11と摩擦材16との間をすべり面とし、プレッシャプレート13と摩擦材15との間をすべり面としてもよい。
【0059】
実施例1によれば、カバープレート11及びプレッシャプレート13に凹部11c、13c及び凸部11d、13dを形成することで、ライニングプレート14と摩擦材15、16との間をすべり面とし、カバープレート11と摩擦材16との間を保持面とし、プレッシャプレート13と摩擦材15との間を保持面とすることができるので、摩擦材を接着によって他の部材に固定する必要がなくなり、低コスト化を図ることができる。また、部品点数の削減により、さらなる低コスト化を図ることができる。また、すべり面が決定し、リミッタ部2の滑りトルクを安定化させることができる。また、保持面においてカバープレート11と摩擦材16との間のガタつきがなく、プレッシャプレート13と摩擦材15との間のガタつきがないので、部材の摩耗を低減させることができる。また、カバープレート11及びプレッシャプレート13に形成された凹部11c、13c及び凸部11d、13dがプレス金型をパンチすることで形成されるので、凸部11d、13dのバラツキを低減させることができる。また、カバープレート11及びプレッシャプレート13に形成された凸部11d、13dが摩擦材15、16を突き刺すのではなく、凸部11d、13dが摩擦材15、16の面を押し凹ませ、かつ、凹部11c、13cに摩擦材15、16の面を押し込ませることで摩擦材15、16を保持しているので、摩擦材15、16に亀裂が発生せず、強度が確保される。
【実施例2】
【0060】
本発明の実施例2に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図3は、本発明の実施例2に係るトルク変動吸収装置におけるカバープレート及びプレッシャプレートの保持面の構成を模式的に示した(A)部分平面図、(B)X−X´間の断面図である。
【0061】
実施例2は、実施例1の変形例であり、カバープレート11及びプレッシャプレート13に断差凸部11e、13e及び段差凹部11f、13fを追加したものである。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0062】
保持面11b、13bは、平坦な面の所定の位置に平坦な面から台状に突出した断差凸部11e、13eを有し、断差凸部11e、13eの所定の位置に断差凸部11e、13eの表面よりも凹んだ凹部11c、13cを有し、凹部11c、13cの周縁に断差凸部11e、13eの表面よりも突出した凸部11d、13dを有する。カバープレート11及びプレッシャプレート13は、保持面11b、13bの裏面において、断差凸部11e、13eと対応する位置に平坦な面よりも凹んだ段差凹部11f、13fを有する。断差凸部11e、13e、凹部11c、13c、凸部11d、13d、及び段差凹部11f、13fは、保持面11b、13bに対して第1のプレス金型をパンチするとともに、保持面11b、13bの裏面に対して第2のプレス金型をパンチすることで形成することができる。断差凸部11e、13eの側壁は、平坦な面に対して垂直な面を有する。断差凸部11e、13eの1つ当たりの領域には、凹部11c、13cによって所定の模様、パターンが形成されており、凹部11c、13cが4箇所以上(好ましくは10〜30箇所)形成されている。断差凸部11e、13eの領域は、1箇所当たり直径20mm以下であり、保持面11b、13bにおいて部分的に複数個所(好ましくは6箇所以上)有する。凸部11d、13dの高さは、断差凸部11e、13eの表面から0.01mm以上であることが好ましい。凹部11c、13cは、底の中心部が最も深まった形状をしており、底の中心部の角度が120°以下であることが好ましい。
【0063】
実施例2によれば、実施例1と同様な効果を奏する。
【実施例3】
【0064】
本発明の実施例3に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図4は、本発明の実施例3に係るトルク変動吸収装置におけるカバープレート及びプレッシャプレートの保持面の構成を模式的に示した(A)部分平面図、(B)X−X´間の断面図である。
【0065】
実施例3は、実施例1の変形例であり、カバープレート11及びプレッシャプレート13の保持面11b、13bの領域に貫通穴部11g、13gを形成し、保持面11b、13bにおける貫通穴部11g、13gの周辺に平坦な面よりも突出した複数の凸部11h、13hを形成したものである。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0066】
凸部11h、13hの平面形状は、貫通穴部11g、13gを中心に放射状に延在しており、貫通穴部11g、13gから離れるにしたがい幅及び高さが小さくなって尖った形状になっている。凸部11h、13hの断面形状は、貫通穴部11g、13gの壁面に沿った部分が平坦な面に対して垂直な面を有し、貫通穴部11g、13gから離れるにしたがい高さが小さくなるような形状になっている。凸部11h、13h及び貫通穴部11g、13gは、保持面11b、13bに対して第1のプレス金型をパンチするとともに、保持面11b、13bの裏面から第2のプレス金型で打ち抜きすることで形成することができる。凸部11h、13hの高さは、平坦な面から0.01mm以上であることが好ましい。
【0067】
実施例3によれば、実施例1と同様な効果を奏する。
【実施例4】
【0068】
本発明の実施例4に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図5は、本発明の実施例4に係るトルク変動吸収装置におけるカバープレート及びプレッシャプレートの保持面の構成を模式的に示した(A)第1の部分平面図、(B)第2の部分平面図、(C)部分断面図である。
【0069】
実施例4は、実施例1の変形例であり、カバープレート11及びプレッシャプレート13の保持面11b、13bにローレット加工面(表面がギザギザに加工した面)を形成したものである。ローレット加工では、
図5(A)のように斜めスジを単方向に入れたシングル型や、
図5(B)のように斜めスジを2方向に入れたクロス型にすることができる。ローレット加工面では、尖った山と谷が交互に形成されたギザギザ形状になっている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0070】
実施例4によれば、実施例1と同様な効果を奏し、クロス型にすればさらに効果的である。
【実施例5】
【0071】
本発明の実施例5に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図6は、本発明の実施例5に係るトルク変動吸収装置における摩擦材の構成を模式的に示した(A)部分平面図、(B)X−X´間の断面図である。
【0072】
実施例5は、実施例1の変形例であり、摩擦材15、16の保持面(
図1の11b、13b)側の面を平坦にするのをやめ、摩擦材15、16の保持面15a、16aに凹凸形状に形成(径方向に複数の溝15b、16bを形成)したものである。摩擦材15、16に穴(図示せず)や凹部(図示せず)を有する場合、強度を確保するため、当該穴や凹部を有する位置には溝15b、16bを形成しないようにし、摩擦材15、16の肉厚を確保する。摩擦材15、16における溝15b、16bが形成された部分の肉厚は、1mm以上であることが好ましい。溝15b、16bの幅は0.5mm以上であり、溝15b、16bの深さは0.1mm以上であり、隣り合う溝15b、16bの側壁面間の距離は20mm以下であることが好ましい。摩擦材15、16の摺動面15c、16cは、平坦である。摩擦材15、16は、結合剤15e、16e(例えば、ゴム)中に繊維状の基材15d、16d(例えば、ガラス繊維)を含むものである。摩擦材15、16は、少なくとも保持面15a、16a(溝15b、16bを含まず)の摩擦係数を高めるために、基材15d、16dの露出率が70%以下であり、好ましくは50%以下である。その他の構成は、実施例1と同様である。なお、実施例5における摩擦材15、16の保持面15a、16aと当接するカバープレート(
図2の11に相当)及びプレッシャプレート(
図2の13に相当)において、実施例1に示す凹部(
図2の11c、13c)及び凸部(
図2の11d、13d)を有さない形態であってもよい。
【0073】
実施例5によれば、実施例1と同様な効果を奏するとともに、摩擦材15、16の保持面15a、16aに溝15b、16bを形成することで、保持面15a、16aにおいて結合材15e、16eが露出する比率が高まり(基材15d、16dの露出率が低下)、摩擦材15、16の保持面15a、16aの摩擦係数を向上させることができる。
【実施例6】
【0074】
本発明の実施例6に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図7は、本発明の実施例6に係るトルク変動吸収装置のリミッタ部の構成を模式的に示した径方向の部分断面図である。
【0075】
実施例6は、実施例1の変形例であり、プレッシャプレート13及びカバープレート11に固着面11i、13iの全周又は部分的に水、塩水、薬品等を組付け前に塗布し、プレッシャプレート13に発生させた錆により摩擦材15を固着面13iに固着(保持)させ、カバープレート11に発生させた錆により摩擦材16をカバープレート11に固着(保持)させたものである。固着面11i、13iでは、錆が摩擦材15、16中の繊維状の基材に浸透して摩擦材15、16が固着される。摩擦材15、16と接するライニングプレート14の表面は摺動面14a、14bとなる。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0076】
実施例6によれば、ライニングプレート14と摩擦材15、16との間をすべり面とし、カバープレート11と摩擦材16との間を固着面(保持面)とし、プレッシャプレート13と摩擦材15との間を固着面(保持面)とすることができるので、摩擦材を接着によって他の部材に固定する必要がなくなり、低コスト化を図ることができる。また、部品点数の削減により、さらなる低コスト化を図ることができる。また、すべり面が決定し、リミッタ部2の滑りトルクを安定化させることができる。また、固着面においてカバープレート11と摩擦材16との間のガタつきがなく、プレッシャプレート13と摩擦材15との間のガタつきがないので、部材の摩耗を低減させることができる。
【実施例7】
【0077】
本発明の実施例7に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図8は、本発明の実施例7に係るトルク変動吸収装置のリミッタ部の構成を模式的に示した径方向の部分断面図である。
図9は、本発明の実施例7に係るトルク変動吸収装置におけるカバープレート及びプレッシャプレートの保持面の構成を模式的に示した(A)部分平面図、(B)X−X´間の断面図、(C)領域Yの拡大断面図である。
【0078】
実施例7は、実施例1の変形例であり、カバープレート11及びプレッシャプレート13の保持面11b、13bに摩擦抵抗を高める凹部(
図2の11c、13c)及び凸部(
図2の11d、13d)を設けないで、その代わりに、摩擦材15、16に貫通穴部15g、16g(有底の凹部でも可)を設け、カバープレート11及びプレッシャプレート13において貫通穴部15g、16gと対応する位置に突起部11j、13j及び段差凹部11f、13fを設け、突起部13j、11jを、対応する貫通穴部15g、16gと係合させることで、摩擦材15がプレッシャプレート13に保持(相対回転不能に保持)され、摩擦材16がカバープレート11に保持(相対回転不能に保持)された構成となっている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0079】
カバープレート11は、保持面11bに摩擦材16の貫通穴部16gと係合する突起部11jを有する。突起部11jは、摩擦材16の貫通穴部16gと係合することで、摩擦材16を相対回転不能に保持する。カバープレート11は、保持面11bの裏面において突起部11jと対応する位置に段差凹部11fを有する。突起部11j及び段差凹部11fは、保持面11bに対して第1のプレス金型をパンチするとともに、保持面11bの裏面に対して第2のプレス金型をパンチすることで形成することができる。突起部11jの側壁は、平坦な面に対して垂直な垂直面11kを有する(
図9参照)。垂直面11kの高さhは、保持面11bの平坦面から突起部11jの全高さHの30%以上に設定することが好ましい。突起部11jの全高さHは、0.5mm以上であることが好ましい。突起部11jの平面形状は、例えば、円形とし、直径2mm以上とすることができる。その他の構成は、実施例1のカバープレート(
図1の11)と同様である。
【0080】
プレッシャプレート13は、保持面13bに摩擦材15の貫通穴部15gと係合する突起部13jを有する。突起部13jは、摩擦材15の貫通穴部15gと係合することで、摩擦材15を相対回転不能に保持する。プレッシャプレート13は、保持面13bの裏面において突起部13jと対応する位置に段差凹部13fを有する。突起部13j及び段差凹部13fは、保持面13bに対して第1のプレス金型をパンチするとともに、保持面13bの裏面に対して第2のプレス金型をパンチすることで形成することができる。突起部13jの側壁は、平坦な面に対して垂直な垂直面13kを有する(
図9参照)。垂直面13kの高さhは、保持面13bの平坦面から突起部13jの全高さHの30%以上に設定することが好ましい。突起部13jの全高さHは、0.5mm以上であることが好ましい。突起部13jの平面形状は、例えば、円形とし、直径2mm以上とすることができる。その他の構成は、実施例2のプレッシャプレート(
図1の13)と同様である。
【0081】
摩擦材15は、プレッシャプレート13の突起部13jと係合するための複数の貫通穴部15gを有する。摩擦材16は、カバープレート11の突起部11jと係合するための複数の貫通穴部16gを有する。その他の構成は、実施例1の摩擦材(
図1の15、16)と同様である。
【0082】
なお、実施例7のような構成は、実施例1〜6と併用することができる。
【0083】
実施例7によれば、カバープレート11及びプレッシャプレート13の突起部11j、13jを、対応する摩擦材16、15の貫通穴部16g、15gと係合させて、摩擦材15がプレッシャプレート13に保持(相対回転不能に保持)され、摩擦材16がカバープレート11に保持(相対回転不能に保持)されることで、ライニングプレート14と摩擦材15、16との間をすべり面とし、カバープレート11と摩擦材16との間を保持面とし、プレッシャプレート13と摩擦材15との間を保持面とすることができるので、摩擦材を接着によって他の部材に固定する必要がなくなり、低コスト化を図ることができる。また、部品点数の削減により、さらなる低コスト化を図ることができる。また、すべり面が決定し、リミッタ部2の滑りトルクを安定化させることができる。また、突起部11j、13jの側壁が平坦な面に対して垂直な垂直面11k、13kを有するので、摩擦材15、16のズレによる垂直面11k、13kへの乗り上げを抑制することができる。
【実施例8】
【0084】
本発明の実施例8に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図10は、本発明の実施例8に係るトルク変動吸収装置のリミッタ部の構成を模式的に示した径方向の部分断面図である。
図11は、本発明の実施例8に係るトルク変動吸収装置におけるカバープレート及びプレッシャプレートの保持面の構成を模式的に示した(A)部分平面図、(B)X−X´間の断面図、(C)領域Yの拡大断面図である。
【0085】
実施例8は、実施例7の変形例であり、カバープレート11及びプレッシャプレート13の保持面11b、13bにおける突起部11j、13jの周縁に溝11l、13lを形成したものである。突起部11j、13j、段差凹部11f、13f及び溝11l、13lは、保持面11b、13bに対して第1のプレス金型をパンチするとともに、保持面11b、13bの裏面に対して第2のプレス金型をパンチすることで形成することができる。突起部11j、11jの側壁は、保持面11b、13bの平坦面に対して垂直な垂直面11kを有する(
図11参照)。垂直面11k、13kの高さh(保持面11b、13bの平坦面からの高さ)は、突起部11j、13jの全高さH(保持面11bの平坦面からの高さ)の30%以上に設定することが好ましい。突起部11j、13jの全高さHは、0.5mm以上であることが好ましい。その他の構成は、実施例7と同様である。
【0086】
実施例8によれば、実施例7と同様な効果を奏する。
【実施例9】
【0087】
本発明の実施例9に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図12は、本発明の実施例9に係るトルク変動吸収装置のリミッタ部の構成を模式的に示した(A)径方向の部分断面図、(B)X−X´間の周方向の部分断面図である。なお、
図12(B)では、サポートプレート10を省略している。
【0088】
実施例9は、実施例1の変形例であり、カバープレート11及びプレッシャプレート13の保持面(
図2の11b、13b)に摩擦抵抗を高める凹部(
図2の11c、13c)及び凸部(
図2の11d、13d)を設けないで、その代わりに、摩擦材15、16を外周側に延在させ、摩擦材15、16において切欠部15f、16f(穴部でも可)を設け、切欠部15f、16fをプレッシャプレート13の回り止め部13aと係合させることで、摩擦材15がプレッシャプレート13に保持(相対回転不能に保持)され、摩擦材16がカバープレート11に保持(相対回転不能に保持)された構成となっている。その他の構成は、実施例1と同様である。
【0089】
なお、実施例9のような構成は、実施例1〜7と併用することができる。
【0090】
実施例9によれば、プレッシャプレート13の回り止め部13aを摩擦材15、16の切欠部15f、16fと係合させて、摩擦材15がプレッシャプレート13に保持(相対回転不能に保持)され、摩擦材16がカバープレート11に保持(相対回転不能に保持)されることで、ライニングプレート14と摩擦材15、16との間をすべり面とし、カバープレート11と摩擦材16との間を保持面とし、プレッシャプレート13と摩擦材15との間を保持面とすることができるので、摩擦材を接着によって他の部材に固定する必要がなくなり、低コスト化を図ることができる。また、部品点数の削減により、さらなる低コスト化を図ることができる。また、すべり面が決定し、リミッタ部2の滑りトルクを安定化させることができる。
【実施例10】
【0091】
本発明の実施例10に係るトルク変動吸収装置について図面を用いて説明する。
図13は、本発明の実施例10に係るトルク変動吸収装置のリミッタ部の構成を模式的に示した(A)径方向の部分断面図、(B)X−X´間の周方向の部分断面図である。なお、
図13(B)では、サポートプレート10を省略している。
【0092】
実施例10は、実施例9の変形例であり、プレッシャプレート13の回り止め部(
図12の13a)を用いて摩擦材15、16をプレッシャプレート13、カバープレート11に保持(相対回転不能に保持)する代わりに、プレッシャプレート13及びカバープレート11においてライニングプレート14側に突出した爪部13m、11mを形成し、爪部13mを摩擦材15の切欠部15fと係合させ、爪部11mを摩擦材16の切欠部16fと係合させて摩擦材15、16をプレッシャプレート13、カバープレート11に保持(相対回転不能に保持)したものである。爪部13m、11mは、
図13のようにプレッシャプレート13及びカバープレート11の一部を切り込んで折り曲げることで形成することができる。プレッシャプレート13及びカバープレート11の一部を切り込んで折り曲げて空いた部分は、窓部11n、13nとなる。なお、爪部13m、11m及び切欠部15f、16fは、
図13では摩擦材15、16の外周近傍に設定されているが、摩擦材15、16の中間付近や内周近傍に設定してもよい。その他の構成は、実施例7と同様である。
【0093】
なお、実施例10のような構成は、実施例1〜7と併用することができる。
【0094】
実施例10によれば、実施例9と同様な効果を奏する。
【0095】
本発明の全開示(請求の範囲を含む)の枠内において、さらにその基本的技術思想に基づいて、実施例ないし実施例の変更・調整が可能である。また、本発明の請求の範囲の枠内において種々の開示要素の多様な組み合わせないし選択が可能である。すなわち、本発明は、請求の範囲を含む全開示、技術的思想にしたがって当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。