(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
物体を上下昇降する複数の昇降空間が中間ビームを挟んで水平方向の左右に並列して設定された内部空間を有する中空構造体内において、付着物の処理をする際に前記中空構造体を仕切る仕切り壁であって、
互いに隣り合う前記昇降空間の間に位置し、上下方向に互いに間隔を隔てて対向するように配置された2つの前記中間ビーム間に設けられた軽量形鋼材と、
前記軽量形鋼材に固定され、前記水平方向の左右に前記中空構造体内を仕切って、前記処理のための作業空間を密閉区画する壁部材と、を備えており、
前記壁部材は、
複数枚の板材が、互いに隣接する当該板材の端部同士が重なるように並べられ、上下に隣り合う前記中間ビームの間に設けられるとともに、前記中空構造体の内周面との間に空隙を備えて配置された壁面材と、
前記中空構造体の内周面に当接されて前記壁面材に固定され、前記空隙を閉塞する複数の中継部材と、を有することを特徴とする仕切り壁。
物体を上下昇降する複数の昇降空間が中間ビームを挟んで水平方向の左右に並列して設定された内部空間を有する中空構造体内において、付着物の処理をする際に前記中空構造体を仕切る仕切り壁の設置方法であって、
前記中間ビームは、上下方向に間隔を隔てて複数設けられており、
上下に対向する一対の前記中間ビームに、複数の軽量形鋼材を、各々の前記軽量形鋼材の上端部と下端部とをそれぞれ固定して立設させる軽量形鋼材立設工程と、
前記一対の中間ビーム間に設けられ、前記水平方向の左右に前記中空構造体内を仕切って、前記処理のための作業空間を密閉区画する壁部材を、立設された前記軽量形鋼材に固定して壁面を形成する壁形成工程と、を有し、
前記壁部材は、前記壁面を形成する複数の板材でなる壁面材と、前記壁面材と前記中空構造体の内周面とを繋ぐ複数の中継部材とを有し、
前記壁形成工程は、
前記複数の板材を、互いに隣接する当該板材の端部同士が重なるように並べ、前記壁面材を上下に位置する前記中間ビームの側面に重ねるとともに、前記中空構造体の内周面との間に空隙を形成して前記壁面を形成する壁面形成工程と、
前記複数の中継部材を、前記中空構造体の内周面に当接させて前記壁面材に固定し、前記空隙を閉塞する閉塞工程と、を有することを特徴とする仕切り壁の設置方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般に、建屋内のアスベストを処理する際には、養生シート等により隔離密閉された作業空間を形成し、その中で処理作業を行うことが義務付けられている。ところが、上述のような多連式のエレベーターの場合にエレベーターシャフト全体を隔離密閉すると、全てのエレベーターが使えなくなってしまい著しく不便となる。このため、少なくとも1台のエレベーターは稼働状態のままで処理作業ができるように昇降空間毎に隔離密閉することが望ましい。
【0007】
しかしながら、多連式のエレベーターの場合に、左右方向に隣接する2つの昇降空間の間隔が狭く、また、それら2つの昇降空間の間に複数の中間ビームが設けられている場合もある。このように隣接する2つの昇降空間の間にてエレベーターシャフト全体を隔離密閉しなければ、隣接する昇降空間の一方にて付着物を処理し、他方にてエレベーターを稼働することができないという課題がある。
【0008】
本発明はかかる従来の課題に鑑みて成されたもので、その目的とするところは、中間ビームが設けられた中空構造体内であっても複数の空間に区分けして密閉することが可能な仕切り壁、この仕切り壁の設置方法、及び、付着物の処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するために本発明の仕切り壁は、物体を上下昇降する複数の昇降空間が中間ビームを挟んで水平方向の左右に並列して設定された内部空間を有する中空構造体内において、付着物の処理をする際に前記中空構造体を仕切る仕切り壁であって、
互いに隣り合う前記昇降空間の間に位置し、上下方向に互いに間隔を隔てて対向するように配置された2つの前記中間ビーム間に設けられた軽量形鋼材と、
前記軽量形鋼材に固定され、前記水平方向の左右に前記中空構造体内を仕切って、前記処理のための作業空間を密閉区画する壁部材と、を備えて
おり、
前記壁部材は、
複数枚の板材が、互いに隣接する当該板材の端部同士が重なるように並べられ、上下に隣り合う前記中間ビームの間に設けられるとともに、前記中空構造体の内周面との間に空隙を備えて配置された壁面材と、
前記中空構造体の内周面に当接されて前記壁面材に固定され、前記空隙を閉塞する複数の中継部材と、を有することを特徴とする仕切り壁である。
【0010】
このような仕切り壁によれば、付着物の処理をする際に中空構造体を仕切る仕切り壁は、互いに隣り合う昇降空間の間に位置し、上下方向に互いに間隔を隔てて対向するように配置された2つの中間ビームの間に設けられた軽量形鋼材に壁部材が固定されて構成されているので、中間ビームの側面に、水平方向におけるいずれかの側から設けられた軽量形鋼材に壁部材が固定される場合より、水平方向において仕切り壁に占有される領域が狭い。このため、互いに隣り合う昇降空間の間が狭い中空構造体内であっても、作業空間を狭めることなく密閉することが可能な仕切り壁を提供することが可能である。また、中間ビームが設けられた中空構造体内であっても複数の空間に区分けして密閉することが可能な仕切り壁を提供することが可能である。
【0011】
また、壁面材を構成し互いに隣接する複数の板材の端部同士が重なるように配置されているので、上下に隣り合う中間ビームの間をより確実に密閉する仕切り壁を提供することが可能である。また、壁面材と中空構造体の内周面との間を繋ぐ中継部材が設けられているので、壁面材と中空構造体の内周面との間もより確実に密閉することが可能である。
【0012】
かかる仕切り壁であって、前記中間ビームは、H型鋼でなり、前記H型鋼が有する2つのフランジが前記左右に位置するように配置されており、前記軽量形鋼材は、上下に隣り合う前記中間ビーム間にて前記左右に位置する前記フランジ間に設けられることが望ましい。
このような仕切り壁によれば、上下に隣り合う前記中間ビーム間にて設けられる軽量形鋼材は、H形鋼でなる中間ビームが有する、左右に位置するように配置された2つのフランジの間に位置しているので、軽量形鋼材を左右方向において中間ビームの幅の内側に納めることが可能である。そして、この軽量形鋼材に壁部材を固定した場合には、中間ビームの幅からの突出量を抑えることが可能である。
【0013】
かかる仕切り壁であって、前記軽量形鋼材が設けられる前記2つの中間ビームのうちの下側の前記中間ビームのウェブ上には、上方に開放されたホルダーが載置されており、上側の前記中間ビームには、下方に開放されたホルダーが固定されており、前記軽量形鋼材は、下端部が前記下側の中間ビームに設けられた前記ホルダーに固定され、上端部が前記上側の中間ビームに固定された前記ホルダーに固定され、前記壁面材は、当該壁面材の端部が、前記中間ビームの前記フランジの外側面に重ねられていることが望ましい。
このような仕切り壁によれば、上下に隣り合う中間ビーム間に設けられる軽量形鋼材は、下端部が下側の中間ビームに設けられたチャンネル材に固定され、上端部が上側の中間ビームに固定されたチャンネル材に固定されているので、高い強度を備えて軽量形鋼材を上下に隣り合う中間ビーム間に設けることが可能である。そして、この軽量形鋼材に固定された壁部材もより高い強度を備えることが可能である。
さらに、軽量形鋼材に固定された壁部材の端部が、中間ビームのフランジの外側面に重ねられているので、上下に隣り合う中間ビームと壁面材との境界部分を確実に密閉することが可能である。このため、上下方向に配置されている複数の中間ビームの間に壁面材により上下方向に隙間なく繋がった壁面を形成することが可能である。
【0014】
かかる仕切り壁であって、前記中空構造体内の前記付着物が付着している箇所は、当該付着物の表面に設けられた飛散防止シートが前記内周面をなしていることが望ましい。
このような仕切り壁によれば、中空構造体内の付着物が付着している箇所は、付着物の表面に飛散防止シートが設けられているので、付着物が付着している箇所に中継部材を設けることによる付着物の飛散を防止することが可能である。
【0015】
かかる仕切り壁であって、前記中継部材と前記内周面との間にシール材が充填されていることが望ましい。
このような仕切り壁によれば、複数設けられた中継部材と内周面との間にシール材が充填されているので、中継部材と内周面との間も確実に密閉することが可能である。
【0016】
また、物体を上下昇降する複数の昇降空間が中間ビームを挟んで水平方向の左右に並列して設定された内部空間を有する中空構造体内において、付着物の処理をする際に前記中空構造体を仕切る仕切り壁であって、
互いに隣り合う前記昇降空間の間に位置し、上下方向に互いに間隔を隔てて対向するように配置された2つの前記中間ビーム間に設けられた軽量形鋼材と、
前記軽量形鋼材に固定され、前記水平方向の左右に前記中空構造体内を仕切って、前記処理のための作業空間を密閉区画する壁部材と、を備えており、
前記壁部材を覆う気密性シートが設けられていることを特徴とする仕切り壁である。
【0017】
かかる仕切り壁であって、前記気密性シートは、前記壁部材の両面にそれぞれ設けられていることが望ましい。
このような仕切り壁によれば、壁部材の両面が気密性シートにて覆われているので、壁部材を構成する壁面材と中継部材との間及び壁面材を構成し隣接する複数の板材間を両面からより確実に密閉することが可能である。また、仕切り壁により仕切られた空間の一方側の処理が終了した後に一方側の気密性シートを取り外しても、仕切り壁の密閉性を維持したままで他方側の処理を行うことが可能である。
【0018】
かかる仕切り壁であって、前記壁面材は、剛板であることが望ましい。
このような仕切り壁によれば、壁面材が剛板なので、より高い剛性を備えた仕切り壁を提供することが可能である。例えば、仕切るべき空間が広く、仕切り壁が大きい場合であっても、壁面材が撓んだり変形することを防止することが可能である。また、例えば、並設された昇降空間にて物体が高速にて昇降して高い風圧が仕切り壁に作用する場合であっても、壁面材が撓んだり変形し難い仕切り壁を提供することが可能である。
【0019】
また、物体を上下昇降する複数の昇降空間が中間ビームを挟んで水平方向の左右に並列して設定された内部空間を有する中空構造体内において、付着物の処理をする際に前記中空構造体を仕切る仕切り壁の設置方法であって、
前記中間ビームは、上下方向に間隔を隔てて複数設けられており、
上下に対向する一対の前記中間ビームに、複数の軽量形鋼材を、各々の前記軽量形鋼材の上端部と下端部とをそれぞれ固定して立設させる軽量形鋼材立設工程と、
前記一対の中間ビーム間に設けられ、前記水平方向の左右に前記中空構造体内を仕切って、前記処理のための作業空間を密閉区画する壁部材を、立設された前記軽量形鋼材に固定して壁面を形成する壁形成工程と、を
有し、
前記壁部材は、前記壁面を形成する複数の板材でなる壁面材と、前記壁面材と前記中空構造体の内周面とを繋ぐ複数の中継部材とを有し、
前記壁形成工程は、
前記複数の板材を、互いに隣接する当該板材の端部同士が重なるように並べ、前記壁面材を上下に位置する前記中間ビームの側面に重ねるとともに、前記中空構造体の内周面との間に空隙を形成して前記壁面を形成する壁面形成工程と、
前記複数の中継部材を、前記中空構造体の内周面に当接させて前記壁面材に固定し、前記空隙を閉塞する閉塞工程と、を有することを特徴とする仕切り壁の設置方法である。
【0020】
このような仕切り壁の設置方法によれば、中空構造体内を仕切る仕切り壁を、上下に対向する一対の中間ビーム間に立設させた複数の軽量形鋼材に壁部材を固定して上下に対向する一対の中間ビーム間に壁面を形成するので、互いに隣り合う昇降空間の間に設けられた中間ビームからの突出量を抑えて、上下方向に繋がった壁面を形成して中空構造体内を仕切ることが可能である。また、互いに隣り合う昇降空間の間に仕切り壁の上下方向に繋がった壁面を形成するので、付着物の処理をするための空間を密閉することが容易である。さらに、壁部材を、上下に対向する一対の中間ビームに、上端部と下端部とがそれぞれ固定された複数の軽量形鋼材に壁部材を固定することにより、隣接する昇降空間にて物体が昇降し風圧が壁面に作用しても撓みにくい剛性を備えることが可能である。
【0021】
また、壁部材の壁面材を構成する複数の板材を互いに隣接する板材の端部同士が重なるように並べ、壁面材を上下に位置する中間ビームの側面に重ねるので、より高い密閉性を備えた仕切り壁を形成することが可能である。また、壁面材と中空構造体の内周面との空隙に合わせて中継部材を取り付けることにより、単に壁面材のみにて壁部材を形成する場合より、調整代を確保することが可能であり、壁面材と中空構造体の内周面との間を中継部材にてより確実に塞ぐことが可能である。
【0022】
かかる仕切り壁の設置方法であって、前記中空構造体内の前記付着物が付着している箇所は、前記中継部材が当接される位置の当該付着物の表面に飛散防止シートを設けて前記内周面を形成することが望ましい。
このような仕切り壁の設置方法によれば、中空構造体内の付着物が付着している箇所は、中継部材が当接される位置の当該付着物の表面に飛散防止シートを設けて内周面とするので、中継部材を設ける際に、中継部材と付着物とが直接接しないので中継部材を取り付けることによる付着物の飛散を防止することが可能である。
【0023】
かかる仕切り壁の設置方法であって、前記壁面形成工程では、前記壁部材を覆うための気密性シートを前記軽量形鋼材と前記壁部材との間に設けることが望ましい。
このような仕切り壁の設置方法によれば、壁部材を覆う気密性シートが軽量形鋼材と壁部材との間に設けられるので、壁部材の軽量形鋼材側の面を気密性シートにて覆い密閉空間を形成することが可能である。
【0024】
かかる仕切り壁の設置方法であって、前記閉塞工程では、前記壁部材の前記気密性シートと反対側の面に、新たな気密性シートを設けることが望ましい。
このような仕切り壁の設置方法によれば、壁部材は両面から気密性シートに覆われるので、さらに高い気密性を確保することが可能である。
【0025】
かかる仕切り壁の設置方法であって、前記中継部材と前記飛散防止シートとの間にシール材を充填することが望ましい。
このような仕切り壁の設置方法によれば、中継部材と飛散防止シートとの間にシール材を充填するので、中継部材と飛散防止シートとの間も隙間なく密閉することが可能である。
【0026】
また、上記仕切り壁を用いた付着物の処理方法であって、前記中空構造体内は、前記壁部材にて、前記付着物が先に処理される先作業空間と、後で処理される後作業空間とに区画され、前記壁部材は、前記後作業空間側に設けられ、前記中継部材は前記壁面材に前記後作業空間側から固定されており、前記先作業空間側にて前記付着物を除去し、除去した部位に飛散防止剤を塗装し、前記飛散防止シートに当接された前記中継部材を取り外した際に、前記先作業空間と前記後作業空間とが連通される部位を覆う覆い部材を前記先作業空間側から前記壁面材に固定し、前記先作業空間側にて前記飛散防止剤が塗装された部位の前記覆い部材より前記先作業空間側に前記付着物と異なる新設付着物を付着させた後に、前記後作業空間側から固定された前記中継部材を取り外して前記後作業空間において前記付着物を除去することを特徴とする付着物の処理方法である。
【0027】
このような付着物の処理方法によれば、壁部材により先作業空間と後作業空間とに密閉区画された後に、先作業空間側の付着物が除去されるので、除去された付着物が外部に飛散することを確実に防止することが可能である。このとき、除去された付着物は後作業空間にも飛散しないので、後作業空間は先作業空間での付着物の除去処理に拘わらず使用することが可能である。また、付着物が除去された部位には飛散防止剤を塗装するので、付着物の飛散をより確実に防止することが可能である。さらに、覆い部材を取り付けてから飛散防止シートに当接されている中継部材を取り外すので、先作業空間内を密閉区画した状態を保ったままで、即ち、先作業空間と後作業空間とが連通されることなく、中継部材を取り外すことが可能である。また、覆い部材を取り付けた後に、覆い部材より先作業空間側に新設付着物を付着させる処理を実行するので、付着物が付着していた部位の覆い部材より先作業空間側を新設付着物で覆うことが可能である。
【0028】
かかる付着物の処理方法であって、前記覆い部材を、前記先作業空間にて前記飛散防止剤が塗装された部位に当接して前記壁面材に固定することが望ましい。
このような付着物の処理方法によれば、覆い部材を先作業空間にて飛散防止剤が塗装された部位に当接するので、付着物が確実に飛散防止処理された領域にて先作業空間側と後作業空間とを区画することが可能である。このため、覆い部材を取り付けた後に中継部材を取り外しても先作業空間側に付着物が残存することを確実に防止することが可能である。
【0029】
かかる付着物の処理方法であって、前記覆い部材は、前記飛散防止剤が塗装された部位と直交する平板状の部位の縁部を当接させることが望ましい。
このような付着物の処理方法によれば、覆い部材を、飛散防止剤が塗装された部位と直交する平板状の部位の縁部にて飛散防止剤が塗装された部位に当接するので、覆い部材の内周面との接触面積を小さくすることが可能であり、より広い領域に新設付着物を付着させることが可能である。
【0030】
かかる付着物の処理方法であって、前記覆い部材は、前記後作業空間にて前記付着物が除去された後に、前記付着物が除去された部位の、前記覆い部材の前記後作業空間側に前記新設付着物を付着させ、その後、前記覆い部材が当接された部位と直交する方向に引き抜かれて取り外されることが望ましい。
このような付着物の処理方法によれば、先作業空間にて飛散防止剤が塗装された部位に当接された覆い部材の後作業空間側にて付着物を除去した後に、飛散防止剤を塗装するので、付着物が付着していた部位の全域に余すことなく飛散防止剤を塗装することが可能である。そして、覆い部材が当接していた部位、すなわち、覆い部材の板厚分を除いた領域に新設付着物を付着させることが可能である。また、覆い部材を当該覆い部材が当接された部位と直交する方向に引き抜いて取り外すので、覆い部材を取り外しても覆い部材の板厚分の隙間が形成されるだけで、新設付着物を剥がすことなく覆い部材を取り外すことが可能である。
【0031】
かかる付着物の処理方法であって、前記覆い部材を引き抜いた部位に、前記新設付着物を充填することが望ましい。
このような付着物の処理方法によれば、覆い部材を引き抜いて形成された隙間にも新設付着物を充填することが可能である。このため、付着物が付着していた部位の全域に新設付着物を充填することが可能である。
【0032】
かかる付着物の処理方法であって、前記中空構造体が並設された3つ以上の作業空間を有する場合には、最も端に位置する最端作業空間を前記先作業空間とし、前記最端作業空間と隣接する前記作業空間側を前記後作業空間として前記先作業空間から前記付着物の処理を実行し、前記先作業空間にて前記処理が終了した後に、隣接する前記作業空間を前記先作業空間として、順次、隣接する前記作業空間へ移動して処理することが望ましい。
このような付着物の処理方法によれば、中空構造体内に作業空間が3つ以上存在する場合には、先作業空間を密閉するために設置した仕切り壁を、後作業空間の仕切り壁として流用できるので、仕切り壁の設置及び取り外し作業を省略できて、効率良く作業を進めることが可能である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、中間ビームが設けられた中空構造体内であっても複数の空間に区分けして密閉することが可能な仕切り壁、この仕切り壁の設置方法、及び、付着物の処理方法を提供することが可能である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本実施形態の仕切り壁、この仕切り壁の設置方法、及び、付着物の処理方法の一例について図を用いて詳細に説明する。
【0036】
本実施形態においては、処理すべき付着物が付着した中空構造体の内部空間の一例として、エレベーターシャフトを例に挙げて説明する。
図1は、本実施形態の仕切り壁が設けられたエレベーターシャフトを説明するためのイメージ図である。
図2は、本実施形態の仕切り壁が設けられる中空構造体を説明するための平断面の概略図である。
【0037】
本実施形態の仕切り壁30は、中空構造体10の内部空間の一例としてのエレベーターシャフトEVS内において、鉄骨梁21aに耐火被覆として既に吹き付けられている付着物としてのアスベストに対し除去等の無害化処理を施し、さらに、アスベスト31と異なる新設付着物としてのロックウールを耐火被覆として鉄骨梁21aに施す耐火被覆処理をする際に用いられるものである。なお、以下の説明では、
図1に示すように、互いに直交する三方向をそれぞれ、エレベーターシャフト内を乗りかごが昇降する方向を上下方向(鉛直方向)、乗りかごに乗り降りするための開口が設けられた壁面に沿う方向を左右方向(水平方向)、及び、乗りかごに対して奥行き方向となる方向を前後方向(水平方向)と言う。
【0038】
===エレベーターEVについて===
エレベーターEVは、
図1に示すように、ビル等の建物の一部に区画されたエレベーターシャフトEVSと、このエレベーターシャフトEVS内を鉛直方向に沿って上下昇降可能に案内された乗りかご13と、エレベーターシャフトEVSの上方の機械室MR内に配置されて、つり合い重りWを備えた吊りロープRを用いて前記乗りかご13を吊り下げつつ上下昇降する巻き上げ機19と、を備えている。このエレベーターEVは所謂3連式のエレベーターEVであり、エレベーターシャフトEVS内には、3つの乗りかご13が左右に並列して設けられており、各乗りかご13は、それぞれに対応して機械室MRに設置された各巻き上げ機19によって、各昇降空間TR(TRL,TRC,TRR)に沿って独立に昇降動作をする。
【0039】
エレベーターシャフトEVSは、鉛直方向に長い直方体形状の空間である。詳しくは、鉄骨梁21aと鉄骨柱21bとが鉛直方向に長い略直方体形状に組まれてエレベーターシャフトEVSの柱梁架構21が構築されている。また、左右に並列して設けられた3つの乗りかご13の各昇降空間TRの間には、各階床間の鉄骨梁21aに前後方向に架け渡して中間ビーム24が設けられている。ここで、鉄骨梁21a、鉄骨柱21b、中間ビーム24は、いずれもH型鋼であるが、中間ビーム24は、鉄骨梁21a、鉄骨柱21bよりも断面形状が小さなH型鋼にて形成されている。このため、鉄骨梁21aはフランジが上下に配置されてウェブが鉛直方向に沿うように配置されているが、中間ビーム24は側方からの風圧に対する剛性を高めるためにフランジが左右に配置されてウェブが水平をなすように配置されている。
【0040】
また、上下に隣り合う鉄骨梁21a同士の間にはALC(気泡コンクリート)版等のコンクリートパネルが配置され、このコンクリートパネルにより、エレベーターシャフトEVSの側壁28が前後左右の四方を囲って形成されている。また、これら四方の側壁28の上端及び下端には、それぞれ、天井面10a及び床面10bが形成されており、これにより、エレベーターシャフトEVS内は、概ね上下前後左右の六方の全てが閉じた略閉空間になっている。
【0041】
なお、四方の側壁28のうちの前方の側壁28には、各乗りかご13及び建物の各階フロアーに対応させてエレベーターEVの乗り場出入口28aが開口形成されているとともに、各乗り場出入口28aには、左右にスライドする開閉扉25が設けられている。よって、乗りかご13の無い状態において前記開閉扉25が開くと、エレベーターシャフトEVS内は、建物側の空間であるエレベーターホールEVHと連通状態になる。
【0042】
ところで、上述からわかるように、一般にエレベーターシャフトEVS内には、柱梁架構21の鉄骨梁21aが部分的に露出している。このような鉄骨露出部位に対しては建築基準法上耐火被覆が必須であり、以前はその素材としてアスベストが使用されていた。このため、現在も既存のエレベーターシャフトEVS内にはアスベストが露出していることがある。
【0043】
このようなアスベストに対しては、例えば、既存エレベーターEVの設備更新工事等に併せて、無害化処理が行われる。無害化処理としては、アスベストを剥がす等の物理的に取り除く除去処理や、薬液塗布等により塗布部位の表面を固めてその場にアスベストを封じ込める封じ込め処理、更には、板材等でアスベストの付着部位を囲って外に露出しないようにする囲い込み処理等が挙げられる。
【0044】
そして、何れの処理を行うにせよ、その処理作業時には、周囲にアスベストが飛散しないように、その作業空間WSを隔離密閉養生することが義務付けられている。
【0045】
しかし、上述したような3連式等の多連式エレベーターEVの場合にエレベーターシャフトEVS全体を隔離密閉養生すると、全てのエレベーターEVが使えなくなり著しく不便となるので、少なくとも1台のエレベーターEVを稼働状態としたままで無害化処理が実施できることが望ましい。
【0046】
このため、エレベーターシャフトEVS内を水平方向の左右に仕切って、前記作業空間WSを乗りかご13単位、つまり昇降空間TR単位(エレベーターEV単位)で密閉区画することが求められている。しかしながら、エレベーターシャフトEVS内の隣接する昇降空間の間は狭く、特に本実施形態のエレベーターシャフトEVSのように中間ビーム24が設けられている場合には、水平方向いおいて中間ビーム24の外側には、昇降空間を密閉区画する、例えば隔壁を設けるスペースを確保することが難しい。
【0047】
そこで、本実施形態の仕切り壁は、中間ビームが設けられた中空構造体内であっても複数の空間に密閉区画することが可能な仕切り壁により前記作業空間WS外の乗りかご13(昇降空間TR、エレベーターEV)の稼働を確保している。
【0048】
==本実施形態に係る仕切り壁、仕切り壁の設置方法、及び、付着物の処理方法===
<<仕切り壁>>
図3は、本実施形態に係る仕切り壁を示す正面図であり、
図4は、本実施形態に係る仕切り壁の縦断面図、
図5は、本実施形態に係る仕切り壁の平断面図である。
図6は、軽量形鋼材の中間ビームへの取り付け方法を説明するための図である。
【0049】
仕切り壁30は、例えば、上下方向に互いに間隔を隔てて対向するように配置された2つの中間ビーム24間に介在されて仕切り壁30の下地となり、鉛直方向に沿って配置された複数本の軽量形鋼材32と、軽量形鋼材32に固定され上下に隣り合う各中間ビーム24間に設けられてエレベーターシャフトEVS内を作業空間と昇降空間とに仕切る壁部材34と、壁部材34を作業空間側及び昇降空間側からそれぞれ覆う気密性シート40と、を有している。
【0050】
軽量形鋼材32は、例えば断面がC字状をなすチャンネル材である。軽量形鋼材32は、各々の軽量形鋼材32に対し、上下に隣り合う2本の中間ビーム24のうち下側に位置する中間ビーム(以下、下中間ビームともいう)24に載置されて固定され、上側に位置する中間ビーム(以下、上中間ビームともいう)24に固定されている。
【0051】
具体的には、上中間ビーム24及び下中間ビーム24は、水平方向における左右に間隔を隔ててフランジ24aが配置され、ウェブ24bが水平方向に沿って配置されている。下中間ビーム24のウェブ24b上には、断面がほぼU字状をなすチャンネル材で成るホルダー33が載置されており、上中間ビーム24には、フランジ24aの下端を繋ぐように覆う、後述する板金部材51を介して、下側と同様のホルダー33が固定されている。ホルダー33は、上下の中間ビーム24に沿って、中間ビーム24のほぼ全幅に渡って設けられている。
【0052】
断面がU字状をなし溝状をなすホルダー33は、溝幅が軽量形鋼材32の幅より僅かに大きく形成されており、溝状をなすホルダー33の開放された部位が上方を向くようにウェブ24b上に載置されている。このとき、ホルダー33の幅は、中間ビーム24のフランジ24aの間隔より狭いため、ホルダー33を中間ビーム24の一方(右側)のフランジ24a側に押しつけてホルダー33の移動を形成する規制金具50が、ホルダー33とともに中間ビーム24のウェブ24b上に左右方向に並べて配置されている。
【0053】
また、上中間ビーム24には、左右方向に間隔を隔てて配置されている2つのフランジ24aの下端を繋ぐように塞ぐ板金部材51が、2つのフランジ24aの上端部に係止されるように取り付けられており、板金部材51により形成された、下中間ビーム24と対向する面にホルダー33が、その開放された部位が下方を向くようにビス止めされている。上中間ビーム24と下中間ビーム24とにそれぞれ設けられたホルダー33は、上下に位置して互いに対向するように設けられている。そして、複数の軽量形鋼材32は、それぞれ上端部が上中間ビーム24に設けられたホルダー33に固定され、下端部が下中間ビーム24に設けられたホルダー33に載置されて、上中間ビーム24と下中間ビーム24との間にて上下方向に沿うように設けられている。
【0054】
壁部材34は、複数枚の板材35aが、各々の端部同士が重ねられて配置されて壁面を構成する壁面材35と、壁面材35の端部とエレベーターシャフトEVSを形成している中空構造体10の内周面との間を繋ぐ複数の中継部材36及び閉塞プレート37と、を有している。ここで、中空構造体10の内周面とは、中空構造体10の前後の側壁28、天井面10a及び床面10bと、各階床間にてエレベーターシャフトEVS内に露出しているスラブ12の端部及び鉄骨梁21aを被覆するアスベスト31の表面が相当するが、中継部材36により壁面材35と繋がれる内周面においては、側壁28、天井面10a、床面10b、スラブ12の端部は同じであるが、アスベスト31の表面ではなく、中継部材36を取り付ける際にアスベスト31が飛散することを防止するためにアスベスト31の表面に貼着された耐火性を有する飛散防止シート38の表面に相当する。
【0055】
板材35aは、例えばW300mm×L3000mmのガルバリウム鋼板であり、1つの辺に沿う複数の溝が等間隔にて溝の方向と直交する方向に平行に形成されている。そして、複数のガルバリウム鋼板は、互いに隣接するガルバリウム鋼板の端部同士が重なるように並べられ、上中間ビーム24と下中間ビーム24との間の空間を仕切るべく設けられて軽量形鋼材32に固定されている。このとき、隣接するガルバリウム鋼板は、互いに有する溝が重なり合って嵌り込むように配置されて、エレベーターシャフトEVS内を左右方向に仕切る1枚の壁面が形成されて壁面材35をなしている。また、壁面材35の周端部のうち、上中間ビーム24及び下中間ビーム24との境界部分では、壁面材35の端部は、上下の中間ビーム24が有するフランジ24aに後作業空間WSA側にて重ねられてテープ材45にて目張りされており、中空構造体10の内周面との境界部分では、僅かに間隔が隔てられて空隙10c(
図8(a)参照)が設けられている。この空隙10cが中継部材36及び閉塞プレート37にて塞がれている。
【0056】
中継部材36は、断面がL字状をなす鋼板であり、L字をなす一方の板部が壁面材35の一方の面に当接されてボルトにて固定される固定板部36bであり、他方の板部が中空構造体10の内周面に当接される当接板部36aをなしている。アスベスト31は鉄骨梁21aの表面に吹き付けられているので、鉄骨梁21aの表面を覆うように湾曲した曲面をなしており、その表面に貼り付けられた飛散防止シート38の表面も湾曲している。即ち、飛散防止シート38の表面は、側壁28等とは相違して平坦ではなく、また、鉄骨梁21aをなすH型鋼のフランジが突き出しているので、L字状の鋼板でなる中継部材36は、可及的に飛散防止シート38の表面に沿って当接板部36aが当接されるように、鉄骨梁21aの周りに配置される。このため、飛散防止シート38に当接される中継部材36は幅が狭く形成されており、複数の中継部材36にて鉄骨梁21aの周囲を覆うように壁面材35に取り付けられる。そして、複数の中継部材36の隣接する中継部材36と飛散防止シート38との間には、それらの隙間を埋めるようにシール材39が充填されている。
【0057】
閉塞プレート37は、鉄骨梁21aを被覆しているアスベスト31の表面に貼り付けられた飛散防止シート38の輪郭にほぼ沿う形状に形成された突き当て部を有する平板状の板金であり、壁面材35の端部に固定されて飛散防止シート38と壁面材35の端部間を繋ぐように配置される。この閉塞プレート37は、例えば、断面が1cm角の正方形状をなす角柱状の複数の木片が、同一方向に沿わされるとともに、長手方向に各々独立してスライド可能にガイドされつつ重ねられた治具により飛散防止シート38の表面形状、即ち輪郭が型取りされた形状に基づいて形成される。具体的には、治具が有する複数の木片が中空構造体10内に露出しているアスベスト31の上下方向の幅より広く重ねられており、各木片の先端部分が揃った状態にて、アスベスト31の表面に設けられた飛散防止シート38に正面、即ち、中間ビーム24に沿う方向から当接させることにより、各木片を飛散防止シート38の表面の形状に沿ってスライドさせる。そして、上下端側の木片が側壁28に当接した後に、各木片がずれないように治具を飛散防止シート38から引き離し、そのまま、板金材料の上に各木片が平らに並ぶように配置する。その後、板金材料に各木片の先端の輪郭を写し、写した輪郭に沿って板金材料を切断して閉塞プレート37が形成される。
【0058】
気密性シート40は、例えば、ポリエチレンシートやPETシート等であり、壁部材34の両面に設けられ、壁面材35の全面と周端部に固定された複数の中継部材36の固定板部36bに架け渡すように貼り付けられている。具体的には、気密性シート40は粘着テープ等により面接触状態に貼り付けられている。
【0059】
<<仕切り壁の設置方法及びアスベストの処理方法>>
本実施形態では、3つの乗りかご13が左右に並列して設けられた3連式のエレベーターEVのエレベーターシャフトEVS内にて、最も左側の昇降空間TRLからアスベスト31の処理を行うこととして説明する。ここでアスベスト31の処理には、既存のアスベスト31を除去する除去処理と、アスベスト31を除去した部位に新たな耐火被覆としてロックウール46を施す耐火被覆処理とが含まれる。
【0060】
エレベーターシャフトEVSの最も左側の昇降空間TRL(最端昇降空間)にてアスベスト31の除去処理を行う場合には、まず、最も左側の昇降空間TRLと中央の昇降空間TRCとの間に仕切り壁30を設置する。仕切り壁30は、最も左側の昇降空間TRLと中央の昇降空間TRCとの間にて各階床間に設けられた鉄骨梁21a間に掛け渡されている複数の中間ビーム24を利用して設置する。以下の説明では、仕切り壁の設置方法を明確にすべく鉄骨梁21aの周辺を主に説明する。また、左側の昇降空間TRLを先に処理を行う先作業空間WSBといい、中央側の昇降空間TRCを先作業空間WSBより後に処理を行う後作業空間WSAという。
【0061】
仕切り壁30を設置する際には、まず、処理対象の昇降空間TR(ここでは先作業空間WSB)に位置する乗りかご13や吊りロープR等を取り外す。そして、
図1に示すように中空構造体10の天井面10aから、処理対象の昇降空間TR内に吊りワイヤー73を垂下する。また、エレベーターシャフトEVSの床面10b上に、作業ゴンドラ71を搬入するとともに、吊りワイヤー73の下端を作業ゴンドラ71の巻き上げ機75にセットする。そして、これにより、作業ゴンドラ71は、処理対象のエレベーターEVの昇降空間TRにおいて使用可能状態となる。作業者はこの作業ゴンドラ71を移動させつつアスベスト31の除去処理及び耐火被覆処理を実行する。また、エレベーターシャフトEVS内には作業空間内を換気すべく作業空間内の空気を吸い込む集塵機を備えておく。
【0062】
図7は、アスベストの表面に貼り付けられた飛散防止シートを示す図であり、
図7(a)は正面図、
図7(b)は縦断面図、
図7(c)は平断面図を示している。仕切り壁30を設置する際には、まず、
図7に示すように、仕切り壁30を形成する壁部材34が固定されたときの位置を想定し、壁部材34の周縁部に位置する中継部材36及び閉塞プレート37が当接される位置、即ち、エレベーターシャフトEVSに露出する、鉄骨梁21aを被覆しているアスベスト31の表面に飛散防止シート38を貼着する。この作業は、飛散防止シート38が貼着される箇所に、HEPAフィルター付きの掃除機の吸引口を向けて吸引しつつ作業を進める。このとき貼着する飛散防止シート38の幅は、中継部材36の当接板部36aの左右方向の幅より広くしておく。また、飛散防止シート38は、形成される壁面材35の左側面より左側(先作業空間WSB側)にはみ出さないように貼着する。
【0063】
図8は中間ビーム間に設けられた軽量形鋼材と軽量形鋼材に取り付けられた気密性シート及び壁面材を示す図であり、
図8(a)は正面図、
図8(b)は縦断面図、
図8(c)は平断面図を示している。
【0064】
次に、
図8に示すように、上下方向に間隔を隔てて配置されている複数の中間ビーム24の各々に、ウェブ上にホルダー33を載置するとともに、中間ビーム24の下側を覆うように板金部材51を取り付ける。具体的には、
図6に示すように、各中間ビーム24のウェブ上の右側の領域にホルダー33を載置するとともに左側の領域に、ホルダー33の規制金具50を載置して、ホルダー33と規制金具50とを先作業空間側からビス止めする。また、各中間ビーム24の2つのフランジの下端間を塞ぐように板金部材51を配置し、板金部材51の端部を2つのフランジの上端部に係止する。そして、ホルダー33を開放された側を下方に向けて板金部材51に当接させ下方からビスにて板金部材に固定する。このとき、上下に隣り合う中間ビーム24の、上中間ビーム24に設けられた下側のホルダー33と、下中間ビーム24のウェブ上に載置されたホルダー33とが上下に対向する位置に各ホルダー33を配置する。
【0065】
そして、上下方向に互いに間隔を隔てて対向するように配置された2つの中間ビーム24に設けられた下側のホルダー33に軽量形鋼材32の下端部を載置してビスにて固定し、上端部を上側のホルダー33にビスにて固定し、複数の軽量形鋼材32を中間ビーム24間に配置する(軽量形鋼材立設工程)。
【0066】
本実施形態では、軽量形鋼材32が中間ビーム24に固定されると、軽量形鋼材32は中間ビーム24のフランジ間における右側に配置されており、軽量形鋼材32の右側面は、右側のフランジの右外面より、中間ビーム24のフランジの肉厚とホルダー33の肉厚分だけ左側に位置している。
【0067】
また、このとき、前後方向において中間ビーム24に固定する軽量形鋼材32の数及び間隔は、後作業空間WSAを昇降する乗りかご13により生じる風圧に応じて適宜設定される。具体的には、後作業空間WSAを昇降する乗りかご13の昇降速度が速い場合には大きな風圧が仕切り壁30に作用するので、前後方向に隣り合う軽量形鋼材32の間隔が狭く、使用する軽量形鋼材32の数は多く設定する。一方、後作業空間WSAを昇降する乗りかご13の昇降速度が遅い場合には仕切り壁30に作用する風圧は小さいので、前後方向に隣り合う軽量形鋼材32の間隔が広く、使用する軽量形鋼材32の数は少なく設定する。
【0068】
次に、中間ビーム24間に設けられた軽量形鋼材32の後作業空間WSAに臨む面、及び中間ビーム24の後作業空間WSA側のフランジの後作業空間WSAに臨む面に、形成される仕切り壁30の全面を覆うように気密性シート40を貼り付ける。このとき、気密性シート40は、軽量形鋼材32と中間ビーム24との境界部分を跨ぐように設けられている。そして、貼り付けられた気密性シート40の後作業空間WSA側からガルバリウム鋼板でなる板材35aを当接させてビスにて固定する(壁面形成工程)。このとき、1枚の板材35aは、上下に隣り合う中間ビーム24間の領域より狭いため、隣接する板材35aの端部同士が互いに重なり合うように配置しつつビスにて固定していく。
【0069】
具体的には、隣接する各板材35aの端部側の溝状の凹部同士が重なり合って嵌り込むように重ね合わせた状態にてビスにて固定して壁面をなす壁面材35を形成する。形成された壁面材35の上縁は、上側に位置する中間ビーム24のフランジの下縁と、壁面材35の下縁は下側に位置する中間ビーム24のフランジの上縁と、気密性シート40を介して突き合わされており、壁面材35の前後方向の端部は、中空構造体10の内周面、即ち、側壁28の内面やスラブ12の端部と、鉄骨梁21aを被覆しエレベーターシャフトEVS側に露出するアスベスト31に貼り付けられた飛散防止シート38の表面との間に間隔が隔てられて空隙10cが設けられている。また、最も上に位置する壁面材35の上縁は、エレベーターシャフトEVSの天井面10aと、最も下に位置する壁面材35の下縁は、エレベーターシャフトEVSの床面10bとの間に間隔が隔てられて空隙10cが設けられている。
【0070】
図9は閉塞プレートを説明するための図であり、
図9(a)は正面図、
図9(b)は縦断面図、
図9(c)は平断面図を示している。
【0071】
次に、
図9に示すように、飛散防止シート38と壁面材35との間を塞ぐ閉塞プレート37を後作業空間WSA側から固定する。この閉塞プレート37は、アスベスト31上に貼着された飛散防止シート38の表面の輪郭にほぼ沿った縁部が、飛散防止シート38の表面に当接されて壁面材35に固定する。このとき、閉塞プレート37は、中間ビーム24を挟み上下に位置する2つの壁面材35間に跨るように固定される。
【0072】
図10は中継部材を説明するための図であり、
図10(a)は正面図、
図10(b)は縦断面図、
図10(c)は平断面図を示している。
【0073】
次に、
図10に示すように、中空構造体10の内周面に中継部材36の当接板部36aを当接させ、固定板部36bを壁面材35の周端部に後作業空間WSA側から重ねるとともにビスにて固定する(閉塞工程)。このとき、閉塞プレート37が設けられている部位においては、壁面材35との間に閉塞プレート37を挟んで中継部材36を固定する。また、上下に隣り合う鉄骨梁21a間に設けられた側壁28の内面、エレベーターシャフトEVSの天井面10a及び床面10bは平坦なので、上下方向または水平方向に沿わせた各々1本の中継部材36の当接板部36aを側壁28の内面、エレベーターシャフトEVSの天井面10a及び床面10bに当接させた状態にて中継部材36の固定板部36bを壁面材35に後作業空間WSA側から固定する。ここで、上下に隣り合う鉄骨梁21a間の側壁28の内面、エレベーターシャフトEVSの天井面10a及び床面10bに当接させる中継部材36は1本に限るものではないが、1本であれば継ぎ目が発生しないので気密状態が確保し易い。また、各階床を形成するスラブ12の端部は、スラブ12の上面における側壁28より内側及びスラブ12の端面においてアスベスト31に覆われていない部位がエレベーターシャフトEVS内に露出しているが、スラブ12の上面にて露出している左右方向の幅及びスラブ12の端面にて露出している上下方向の幅に渡るとともに、隣接する中継部材36同士が重なるようなサイズに形成された中継部材36をそれぞれスラブ12の上面及びスラブ12の端面に当接させて壁面材35に後作業空間WSA側から固定する。ここで、壁面形成工程と閉塞工程とが壁形成工程に含まれる。
【0074】
図11は、飛散防止シートを囲むように取り付けられる中継部材の配置を説明するための図である。
【0075】
飛散防止シート38は鉄骨梁21aを被覆しているアスベスト31上に貼り付けられているので、表面は、平坦ではなく曲面をなしている。このため、飛散防止シート38と壁面材35の周縁部との間に設ける中継部材36は、まず、飛散防止シート38の曲面に拘わらず、中継部材36の当接板部36aが鉛直または水平に沿う状態にて飛散防止シート38に当接させる。即ち、当接板部36aを側壁28の内面と対向する方向及び上方、下方に向けて飛散防止シート38に当接させて固定板部36bを壁面材35に後作業空間WSA側から固定する。この状態では、飛散防止シート38の曲面部分に、互いに隣り合っている中継部材36間に、繋がらない部位が形成されてしまう。このため、この時点で互いに隣り合っている中継部材36の当接板部36a間にて間隔が空いている部分を覆うように、さらに中継部材36を壁面材35に後作業空間WSA側から固定する。具体的には、当接板部36aが側壁28の内面と対向する方向及び当接板部36aが上方、下方に向けられた中継部材36が鉛直または水平に配置される複数の中継部材36のうち、互いに隣り合う中継部材36の当接板部36aの各縁部に、さらに設ける中継部材36cの当接板部36aの縁部が接触するように中継部材36cを配置して壁面材35に後作業空間WSA側から固定する。
図9の例では、隣接する中継部材36間を塞ぐために設けられる中継部材36cは、当接板部36aが、鉛直及び水平方向とほぼ45度をなすように配置されている。
【0076】
アスベスト31上に貼り付けられた飛散防止シート38と、隣接する中継部材36間を塞ぐために設けられた中継部材36cとの間には空隙が生じているので、
図11に示すように、飛散防止シート38と、隣接する中継部材36間を塞ぐために設けられた中継部材36cの当接板部36aとの間にシール材39を充填する。そして、シール材39を充填した後に、後作業空間WSA側から壁面材35及び中継部材36の固定板部36bに渡る範囲に、壁面材35の先作業空間WSB側と同様に覆う気密性シート40を貼り付ける。この状態にて、先作業空間WSBと後作業空間WSAとを仕切り密閉区画する仕切り壁30が完成する。ここで、シール材39の充填、及び、先作業空間WSB側から壁部材34を覆う気密性シート40の貼着も壁形成工程に含まれる。
【0077】
仕切り壁30により先作業空間WSBと後作業空間WSAとが密閉状態に仕切られた後に、後作業空間WSAでは乗りかご13を昇降させてエレベーターEVを稼働させつつ先作業空間WSBにてドライアイスブラスト工法によりアスベスト31の除去処理を実行する。
【0078】
アスベスト31の除去処理は、以下の手順にて行われる。
図12は、先作業空間のアスベスト除去処理及び飛散防止剤の塗装処理を説明するための図であり、
図12(a)は縦断面図、
図12(b)は平断面図を示している。
【0079】
まず、先作業空間WSBに対する乗り場出入口28a等の隙間をポリエチレンシート等で密閉養生する。また、床面10bには、その全面に亘り養生シートを敷いて覆っておく。
次に、集塵機を稼働させ、作業空間WS内を負圧状態にする。
作業者は、作業ゴンドラ71に乗りながら先作業空間WSB内を上下昇降することにより鉄骨梁21aを被覆しているアスベスト31の付着部位へと接近し、飛散防止シート38より先作業空間WSB側のアスベスト31をけれん棒等により掻き落とし、残ったアスベスト31を、ドライアイスブラスト装置を用いて除去していく。このとき、
図11に示すように、アスベスト31の表面に貼り付けた飛散防止シート38の際までアスベスト31を除去しておく。ここで、ドライアイスブラスト装置から噴射したドライアイス粒は、アスベストに衝突後に昇華して二酸化炭素ガスとなり作業空間WS中の下部に溜まるが、溜まった二酸化炭素ガスは、集塵機の吸気口から吸い込まれて速やかに外部空間に排気される。
【0080】
そして、アスベスト31が除去されて露出した部位に液体状の飛散防止剤42を吹き付ける。このとき、除去により床面10bの養生シート上に落下等したアスベスト31は掃除機等で吸い込んで先作業空間WSB内から排出しておく。
【0081】
図13は、突当部材を取り付けた状態を示す図であり、
図13(a)は正面図、
図13(b)は縦断面図、
図13(c)は平断面図を示している。
【0082】
飛散防止剤42を吹き付けた後に、
図12に示すように、仕切り壁30と内周面との取り合いの部位にて、アスベスト31にて被覆されていた部位よりも上下方向において広い範囲に対し突き当てられる覆い部材としての突当部材44を先作業空間WSB側から壁面材35に取り付ける。突当部材44は、中間ビーム24の上側に位置する側壁28の下端側、スラブ12の端部、鉄骨梁21a、中間ビーム24の下側に位置する側壁28の上端側、の輪郭に沿うように形成された平板状の部材である。この突当部材44が突き当てられる部位は既にアスベスト31が除去されて表面の輪郭に曲線が含まれないので、中空構造体10の内周面に沿うように直線的に切断されて形成されている。また、突当部材44は、先作業空間WSB側から壁面材35に固定されるとともに、上側の側壁28の内面及び下側の側壁28の内面に当接されて壁面材35に固定されている中継部材36にも先作業空間WSB側から固定されている。このため、突当部材44を取り付けた後には、突当部材44と対向する中継部材36、36c及び閉塞プレート37を取り外しても先作業空間WSBと後作業空間WSAとが連通しないように構成されている。
【0083】
突当部材44は、壁面材35に固定されると、壁面材35の先作業空間WSB側に位置し、飛散防止シート38より左側(後作業空間WSA側)にて飛散防止剤42が吹き付けられた鉄骨梁21aとその上下の部位に渡って突き当てられた状態にて、壁面材35と平行に突き当てられる。即ち、突当部材44は当接面に対しほぼ直交するように、飛散防止シート38より左側にて壁面材35に突き当てられる。
【0084】
図14は、先作業空間側にて鉄骨梁にロックウールの被覆を施す処理を説明するための図であり、
図14(a)は縦断面図、
図14(b)は平断面図を示している。
【0085】
突当部材44を取り付けた後に、
図13に示すように、先作業空間WSBの飛散防止剤42が吹き付けられた部位に、新たな耐火被覆材としてロックウール46を吹き付けて先作業空間WSBでのアスベスト除去処理が完了する。
【0086】
次に、後作業空間WSA側のアスベスト除去処理を実行する。このとき、本実施形態は、3連式のエレベーターEVなので、後作業空間WSA側には、右側の昇降空間TRRと中央の昇降空間TRCとがあるが、次にアスベスト31の除去処理は中央の昇降空間TRCにて行う。
【0087】
まず、左側の昇降空間TRLの場合と同様に中央の昇降空間TRCの乗りかご13や吊りロープR等を取り外す。そして、既にアスベスト31の除去処理が完了した左側の昇降空間TRLから吊りワイヤー73、作業ゴンドラ71、作業ゴンドラ71の巻き上げ機75、集塵機等を取り外して中央の昇降空間TRCにセットする。また、左側の昇降空間TRLには、乗りかご13や吊りロープR等をセットして、エレベーターEVを稼働させる。
【0088】
中央の昇降空間TRCと右側の昇降空間TRRとの間には、前述した仕切り壁30を設置する。中央の昇降空間TRCと右側の昇降空間TRRとの間に仕切り壁30が設置され、中央の昇降空間TRCに対する乗り場出入口28a等の隙間をポリエチレンシート等で密閉養生すると、中央の昇降空間TRCが密閉された作業空間WSとなる。また、床面10bには、その全面に亘り養生シートを敷いて覆い、集塵機を稼働させ、作業空間WS内を負圧状態にする。
【0089】
図15は、後作業空間のアスベスト除去処理及び飛散防止剤の塗装処理を説明するための図であり、
図15(a)は縦断面図、
図15(b)は平断面図を示している。
【0090】
後作業空間WSAのアスベスト除去処理は、まず、
図15に示すように、突当部材44が取り付けられた部位を先作業空間WSB側から覆っている中継部材36及び閉塞プレート37を先作業空間WSB側から撤去する。突当部材44と対向する位置に設けられた中継部材36を取り外した状態であっても後作業空間WSAの密閉状態は維持されている。
【0091】
図15に示すように、中継部材36が当接されていた飛散防止シート38を撤去し、後作業空間WSA内のアスベスト31の除去処理を実行する。アスベスト31の除去処理は、左側の昇降空間TRLの場合と同様であるが、アスベスト31は突当部材44側の飛散防止シート38を撤去した部位から、右側の昇降空間TRRとの間に設けられた飛散防止シート38の際まで除去する。
【0092】
図16は、後作業空間側にて鉄骨梁にロックウールの被覆を施す処理を説明するための図であり、
図16(a)は縦断面図、
図16(b)は平断面図を示している。
【0093】
後作業空間WSAにてアスベスト31の除去が終了したら、
図16に示すように、アスベスト31が除去されて露出した部位に液体状の飛散防止剤42を吹き付け、飛散防止剤42が吹き付けられた部位に、新たな耐火被覆材としてロックウール46を吹き付ける。
【0094】
図17は、突当部材を取り外した後に形成されるロックウールの隙間を示す図であり、
図17(a)は正面図、
図17(b)は縦断面図、
図17(c)は平断面図を示している。
【0095】
ロックウール46の吹き付けが終了した後、壁面材35、側壁28、天井面10a、床面10bに当接されている気密性シート40、軽量形鋼材32、ホルダー33、規制金具50、突当部材44、即ち、仕切り壁30を撤去する。このとき突当部材44は、先作業空間WSBにて吹き付けたロックウール46と、後作業空間WSAにて吹き付けたロックウール46との間から引き抜くように撤去する。突当部材44を撤去した後には、
図17に示すように、先作業空間WSBにて吹き付けたロックウール46と、後作業空間WSAにて吹き付けたロックウール46との間に突当部材44の厚み分の隙間46aが生じるので、この隙間46aにロックウール46を充填して補修する。ロックウール46の補修が完了すると、左側の昇降空間TRLと、中央の昇降空間TRCにおけるアスベスト31の除去処理が完了する。その後、中央の昇降空間TRCと、右側の昇降空間TRRとの間に設置した仕切り壁30にて右側の昇降空間TRRを密閉し、左側及び中央の昇降空間TRと同様にアスベスト除去処理を実行する。
【0096】
本実施形態の仕切り壁30によれば、アスベスト31の処理をする際に中空構造体10を仕切る仕切り壁30は、互いに隣り合う昇降空間TRの間に位置し、上下方向に互いに間隔を隔てて対向するように配置された2つの中間ビーム24の間に設けられた軽量形鋼材32に壁部材34が固定されて構成されているので、中間ビーム24の側面に、水平方向におけるいずれかの側から設けられた軽量形鋼材32に壁部材34が固定される場合より、水平方向において仕切り壁30に占有される領域が狭い。このため、互いに隣り合う昇降空間の間が狭い中空構造体10内であっても、作業空間WSを密閉することが可能な仕切り壁30を提供することが可能である。また、中間ビーム24が設けられた中空構造体10内であっても複数の空間に区分けして密閉することが可能な仕切り壁30を提供することが可能である。
【0097】
また、壁面材35を構成し互いに隣接する複数の板材35aの端部同士が重なるように配置されているので、上下に隣り合う中間ビーム24の間をより確実に密閉する仕切り壁30を提供することが可能である。また、壁面材35と中空構造体10の内周面との間を繋ぐ中継部材36が設けられているので、壁面材35と中空構造体10の内周面との間もより確実に密閉することが可能である。
【0098】
また、ウェブ24bが水平をなすように配置されたH型鋼でなる、上下に隣り合う中間ビーム24のフランジ24a間にフランジ24aに沿って設けられた壁面材35の端部が、中間ビーム24のフランジ24aの外側面と重ねられているので、上下に隣り合う中間ビーム24と壁面材35との境界部分を確実に密閉することが可能である。このため、上下方向に配置されている複数の中間ビーム24の間に壁面材35により上下方向に隙間なく繋がった壁面を形成することが可能である。
【0099】
また、上下に隣り合う中間ビーム24間に設けられる軽量形鋼材32は、下端部が下側の中間ビーム24に設けられ、チャンネル材でなるホルダー33に固定され、上端部が上側の中間ビーム24に固定されたチャンネル材でなるホルダー33に固定されているので、高い強度を備えて軽量形鋼材32を上下に隣り合う中間ビーム24間に設けることが可能である。そして、この軽量型鋼材32に固定された壁部材34もより高い強度を備えることが可能である。
【0100】
また、中空構造体10内のアスベスト31が付着している箇所は、アスベスト31の表面に飛散防止シート38が設けられているので、アスベスト31が付着している箇所に中継部材36、36cを設けることによるアスベスト31の飛散を防止することが可能である。
【0101】
また、複数設けられた中継部材36、36cと内周面との間にシール材39が充填されているので、中継部材36,36cと内周面との間も確実に密閉することが可能である。
【0102】
また、壁部材34が気密性シート40にて覆われているので、壁部材34を構成する壁面材35と中継部材36、36cとの間及び壁面材35を構成し隣接する複数の板材35a間をより確実に密閉することが可能である。
【0103】
また、壁部材34の両面が気密性シート40にて覆われているので、壁部材34を構成する壁面材35と中継部材36、36cとの間及び壁面材35を構成し隣接する複数の板材35a間を両面からより確実に密閉することが可能である。また、仕切り壁30により仕切られた空間の一方側の処理が終了した後に一方側の気密性シート40を取り外しても、仕切り壁30の密閉性を維持したままで他方側の処理を行うことが可能である。
【0104】
本実施形態の仕切り壁30の設置方法によれば、中空構造体10内を仕切る仕切り壁30を、上下に対向する一対の中間ビーム24間に立設させた複数の軽量形鋼材32に壁部材34を固定して上下に対向する一対の中間ビーム24間に壁面を形成するので、互いに隣り合う昇降空間TRの間に設けられた中間ビーム24からの突出量を抑えて、上下方向に繋がった壁面を形成して中空構造体10内を仕切ることが可能である。また、互いに隣り合う昇降空間TRの間に仕切り壁30の上下方向に繋がった壁面を形成するので、アスベスト31の処理をするための空間を密閉することが容易である。さらに、壁部材34を、上下に対向する一対の中間ビーム24に、上端部と下端部とがそれぞれビス止めされた複数の軽量形鋼材32に壁部材34を固定することにより、隣接する昇降空間TRにて物体が昇降し風圧が壁面に作用しても撓みにくい剛性を備えることが可能である。
【0105】
また、壁部材34の壁面材35を構成する複数の板材35aを互いに隣接する板材35aの端部同士が重なるように並べ、壁面材35を上下に位置する中間ビーム24の側面、即ちフランジ24aに重ねるので、より高い密閉性を備えた仕切り壁30を形成することが可能である。また、壁面材35と中空構造体10の内周面との空隙10cに合わせて中継部材36、36cを取り付けることにより、単に壁面材35のみにて壁部材34を形成する場合より、調整代を確保することが可能であり、壁面材35と中空構造体10の内周面との間を中継部材36、36cにてより確実に塞ぐことが可能である。
【0106】
また、中空構造体10内のアスベスト31が付着している箇所は、中継部材36、36cが当接される位置の当該アスベスト31の表面に飛散防止シート38を設けて内周面とするので、中継部材36、36cを設ける際に、中継部材36、36cとアスベスト31とが直接接しないので中継部材36、36cを取り付けることによるアスベスト31の飛散を防止することが可能である。
【0107】
また、壁部材34を覆う気密性シート40が軽量形鋼材32と壁部材34との間に設けられるので、壁面材35の軽量形鋼材32側の面を気密性シート40にて覆い密閉空間を形成することが可能である。
【0108】
また、壁部材34は両面から気密性シート40に覆われるので、さらに高い気密性を確保することが可能である。
【0109】
また、中継部材36、36cと飛散防止シート38との間にシール材39を充填するので、中継部材36、36cと飛散防止シート38との間も隙間なく密閉することが可能である。
【0110】
また、上記仕切り壁30を用いたアスベスト31の処理方法によれば、壁部材34により先作業空間WSBと後作業空間WSAとに密閉区画された後に、先作業空間WSB側のアスベスト31が除去されるので、除去されアスベスト31が外部に飛散することを確実に防止することが可能である。このとき、除去されたアスベスト31は後作業空間WSAにも飛散しないので、後作業空間は先作業空間WSBでのアスベスト31の除去処理に拘わらず使用することが可能である。また、アスベスト31が除去された部位には飛散防止剤42を塗装するので、アスベスト31の飛散をより確実に防止することが可能である。さらに、突当部材44を取り付けてから飛散防止シート38に当接されている中継部材36、36cを取り外すので、先作業空間WSB内を密閉区画した状態を保ったままで、即ち、先作業空間WSBと後作業空間WSAとが連通されることなく、中継部材36、36cを取り外すことが可能である。また、突当部材44を取り付けた後に、突当部材44より先作業空間WSB側にロックウール46を付着させる処理を実行するので、アスベスト31が付着していた部位の突当部材44より先作業空間WSB側をロックウール46で覆うことが可能である。
【0111】
また、突当部材44を先作業空間WSBにて飛散防止剤42が塗装された部位に当接するので、アスベスト31が確実に飛散防止処理された領域にて先作業空間WSB側と後作業空間WSAとを区画することが可能である。このため、突当部材44を取り付けた後に中継部材36、36cを取り外しても先作業空間WSB側にアスベスト31が残存することを確実に防止することが可能である。
【0112】
また、突当部材44を、飛散防止剤42が塗装された部位と直交する平板状の部位の縁部にて飛散防止剤42が塗装された部位に当接するので、突当部材44の内周面との接触面積を小さくすることが可能であり、より広い領域にロックウール46を付着させることが可能である。
【0113】
また、先作業空間WSBにて飛散防止剤42が塗装された部位に当接された突当部材44の後作業空間WSA側にてアスベスト31を除去した後に、飛散防止剤42を塗装するので、アスベスト31が付着していた部位の全域に余すことなく飛散防止剤42を塗装することが可能である。そして、突当部材44が当接していた部位、すなわち、突当部材44の板厚分を除いた領域にロックウール46を付着させることが可能である。また、突当部材44を当該突当部材44が当接された部位と直交する方向に引き抜いて取り外すので、突当部材44を取り外しても突当部材44の板厚分の隙間が形成されるだけで、ロックウール46を剥がすことなく突当部材44を取り外すことが可能である。
【0114】
また、突当部材44を引き抜いて形成された隙間46aにもロックウール46を充填することが可能である。このため、アスベスト31が付着していた部位の全域にロックウール46を充填することが可能である。
【0115】
また、中空構造体10内に作業空間が3つ以上存在する場合には、先作業空間WSBを密閉するために設置した仕切り壁30を、後作業空間WSAの仕切り壁30として流用できるので、仕切り壁30の設置及び取り外し作業を省略できて、効率良く作業を進めることが可能である。
【0116】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で以下に示すような変形が可能である。
【0117】
上述の実施形態では、中空構造体10の内部空間の一例としてエレベーターシャフトEVSを示したが、何等これに限るものではなく、多連式のタワーパーキング(立体駐車場とも言い、タワー状構造物の内部空間に、複数の自動車を上下昇降するための無端の周回軌道を設けたもの)を中空構造体として、これに適用しても良い。すなわち、タワーパーキングの内部空間には、複数の周回軌道が水平方向の左右に並列に設けられており、各周回軌道は、それぞれ独立に周回運動可能である。
【0118】
上記実施形態においては、中間ビーム24をH形鋼としたが、これに限るものではなく、例えば、断面形状がC形をなすチャンネル材他その他の鋼材であっても構わない。
【0119】
上述の実施形態では、気密性シート40は一枚ものであるように説明したが、これに限らず、気密性シート40を適宜なサイズの複数のシートから構成し、これらを粘着テープ等によって繋ぎ合わせて上記の仕切り壁30の大きさまで大きくしても良い。また、壁部材を重ね合わせただけで十分な密閉空間が形成できれば、気密性シートは必ずしも設けなくてもよい。また、重ね合わせた壁部材の継ぎ目にシール材を充填しても良い。
【0120】
上記実施形態においては、アスベスト31の表面に貼着する飛散防止シートを耐火性を有するシートとしたが、必ずしも耐火性を有していなくても良い。
【0121】
上記実施形態においては、壁面材35をガルバリウム鋼板としたが、これに限るものではなく、設置するエレベーターシャフトEVSに合わせた板材であれば構わない。例えば、隣接する昇降空間にて乗りかごが高速にて昇降するエレベーターの場合には、仕切り壁が高い風圧を受けるので、壁面材として剛性の高い板材を用いることが望ましい。また、軽量形鋼材32を断面がC字状をなすチャンネル材としたが、これに限るものではなく、設置するエレベーターシャフトEVSに合わせた鋼材であれば構わない。この場合にも、隣接する昇降空間にて乗りかごが高速にて昇降するエレベーターの場合には、仕切り壁が高い風圧を受けるので、下地材として剛性の高い鋼材を用いることが望ましい。
【0122】
上述の実施形態では、エレベーターシャフトEVS内に乗りかご13が無い状態でアスベスト処理を行う場合を例示したが、エレベーターシャフトEVS内に乗りかご13が在る状態でアスベスト処理を行っても良い。なお、この場合には、乗りかご13は、アスベストの処理作業の邪魔にならないように、エレベーターシャフトEVSの上端又は下端へ移動されており、上端又は下端の無害化処理をする際には、乗りかご13は処理済みの位置へ移動されるのは言うまでもない。
【0123】
上述の実施形態では、エレベーターシャフトEVS内に作業ゴンドラ71を持ち込んでアスベストの処理作業を行っていたが、各エレベーターEV(昇降空間TR)が具備する乗りかご13を作業ゴンドラ71の代わりに使用しても良い。すなわち、乗りかご13の屋根面に作業者が乗って処理作業を行っても良い。
【0124】
上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。