特許第5691463号(P5691463)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5691463
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20150312BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20150312BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08L1/02
   B60C1/00
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-274815(P2010-274815)
(22)【出願日】2010年12月9日
(65)【公開番号】特開2012-122019(P2012-122019A)
(43)【公開日】2012年6月28日
【審査請求日】2013年12月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006714
【氏名又は名称】横浜ゴム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080159
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 望稔
(74)【代理人】
【識別番号】100090217
【弁理士】
【氏名又は名称】三和 晴子
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】鹿久保 隆志
(72)【発明者】
【氏名】古行 真梨子
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−078437(JP,A)
【文献】 特開平11−222012(JP,A)
【文献】 特開平11−334323(JP,A)
【文献】 特開平11−099806(JP,A)
【文献】 特開2000−038480(JP,A)
【文献】 特開2002−363347(JP,A)
【文献】 特開2009−084564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均繊維長L:1〜3mm、平均繊維径D:70〜800nmのセルロース短繊維とジエン系ゴムとを含有し、前記平均繊維長L/前記平均繊維径Dが1,000〜40,000である、タイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記セルロース短繊維の配合量が前記ジエン系ゴム100重量部に対して0.1〜20重量部である請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
反列理方向の100%モジュラスに対する列理方向の100%モジュラスの比の値が1.20以上の加硫ゴムとなる請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて形成される空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はタイヤ用ゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ用ゴム組成物にはDRY路面での走行性の向上や低発熱化が要求されている。硬度やモジュラスを高めるにはゴム組成物中のフィラーや硫黄を増量するが、このような場合発熱性が悪化することがある。
一方、ゴム成分中にセルロース等の繊維を含むゴム組成物が提案されている(特許文献1、2)。また本願出願人は以前にセルロース等の短繊維を配合するゴム組成物を提案している(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−191198号公報
【特許文献2】特開2005−60495号公報
【特許文献3】特開2006−206864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら本願発明者らは平均繊維長が1mm未満であり平均繊維径が70nm未満のような短くて細いセルロース短繊維を配合するゴム組成物は硬度、モジュラス、異方性に改善の余地があることを見出した。また、平均繊維長が1〜3mmであり平均繊維径1μmを超えるような長くて太いセルロース短繊維を配合するゴム組成物は、硬度、モジュラスに改善の余地があり発熱が抑制されないことを見出した。
そこで本発明は低発熱性を維持しながら硬度、モジュラスが高く異方性に優れるタイヤ用ゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願発明者らは上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、ジエン系ゴムに対して平均繊維長L:1〜3mm、平均繊維径D:70nm〜800nmで、前記平均繊維長L/前記平均繊維径Dが1,000〜40,000である、セルロース短繊維を配合することによって発熱(60℃tanδ)の増加を抑制しつつ、硬度、モジュラスを増加させ異方性に優れるタイヤ用ゴム組成物が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち、本発明は、下記1〜5を提供する。
1. 平均繊維長L:1〜3mm、平均繊維径D:70nm〜800nmで、前記平均繊維長L/前記平均繊維径Dが1,000〜40,000である、セルロース短繊維とジエン系ゴムとを含有する、タイヤ用ゴム組成物。
2. 前記セルロース短繊維の配合量が前記ジエン系ゴム100重量部に対して0.1〜20重量部である上記1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
3. 反列理方向の100%モジュラスに対する列理方向の100%モジュラスの比の値が1.20以上の加硫ゴムとなる上記1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
4. 上記1〜3のいずれか1に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いて形成される空気入りタイヤ。
【発明の効果】
【0007】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は低発熱性を維持しながら硬度、モジュラスが高く異方性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明について以下詳細に説明する。
本発明のタイヤ用ゴム組成物(本発明のゴム組成物)は、平均繊維長L:1〜3mm、平均繊維径D:70nm〜1μmのセルロース短繊維とジエン系ゴムとを含有する、タイヤ用のゴム組成物である。
【0009】
ジエン系ゴムについて以下に説明する。本発明のゴム組成物に含有されるジエン系ゴムは特に制限されない。例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、ポリブタジエンゴム(BR、1,2−ポリブタジエン重合体からなる結晶繊維を含むポリブタジエンゴムであってもよい。)、スチレン−ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン共重合体ゴム、イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴムが挙げられる。ジエン系ゴムはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、SBR、BR、NRが好ましい。SBRとしては、例えば、乳化重合SBR(E−SBR)、溶液重合SBR(S−SBR)が挙げられる。
NRとBRおよび/またはSBRとを併用する場合、NRの量と、BRおよび/またはSBRの量(以下これをBR等の量という。)は硬度、モジュラスがより高くなり低発熱性、異方性により優れるという観点から、NR90重量部:BR等の量10重量部〜NR40重量部:BR等の量60重量部であるのが好ましく、NR80重量部:BR等の量20重量部〜NR50重量部:BR等の量50重量部であるのがより好ましい。
ジエン系ゴムがNRである場合NRとしてラテックス、および/またはラテックスを乾燥させたもの(ラテックス乾燥NR)を使用することができる。NRラテックスを乾燥したものを使用する場合、ラテックス乾燥NRの量は、硬度、モジュラスがより高くなり低発熱性、異方性により優れるという観点から、ジエン系ゴム全体の50重量%以下とするのが好ましい。NRラテックスは例えば、50〜150℃に加熱することによって、または天然ゴムラテックスを精製して凝固した後に乾燥することによって、ラテックス乾燥NRとすることができる。ラテックスの乾燥方法としては、例えば加熱乾燥法、スプレードライ法、減圧乾燥法等を組合せて実施することができる。上記と同様の理由からNRはラテックス乾燥NRであるのが好ましい。
【0010】
セルロース短繊維について以下に説明する。本発明のゴム組成物に含有されるセルロース短繊維は、平均繊維長Lが1〜3mmであり、平均繊維径Dが70nm〜1μmである、セルロースの繊維である。本発明のゴム組成物はセルロース短繊維を含有することによって硬度、モジュラスが増加し、発熱が抑制される傾向となる。
セルロース短繊維は、硬度、モジュラスがより高くなり低発熱性、異方性により優れるという観点から、その平均繊維長Lが1〜2mmであるのが好ましい。同様の理由からその平均繊維径Dは100nm〜800nmであるのが好ましい。
また、セルロース短繊維は、硬度、モジュラスがより高くなり低発熱性、異方性により優れるという観点から、平均繊維長L/平均繊維径D(L/D)が1,000〜40,000であるのが好ましく、1,200〜20,000であるのがより好ましい。
【0011】
セルロース短繊維として親水性、疎水性のいずれか、または天然物、合成物のいずれかのものを使用することができる。セルロース短繊維は水に溶解および/または分散した状態のものを使用することができる。セルロース短繊維はその製造について特に制限されない。
セルロース短繊維として、例えばセルロース短繊維を疎水化するために表面処理をしたものを使用することができる。表面処理の方法は特に制限されない。例えば、セルロース短繊維のアルコール(ヒドロキシ基)と酢酸のような脂肪酸とを20〜80℃の条件下で反応させエステル化することによってセルロース短繊維を疎水化することができる。
【0012】
セルロース短繊維の市販品としては、例えば、平均繊維径70nm−1μm、平均繊維長1mm−3mmで、L/D=1,000〜40,000のセルロース短繊維(天然木材を解繊して得られるもの。疎水化処理はされていない。天然品)、平均繊維径70nm−1μm、平均繊維長1mm−3mmで、L/D=1,000〜40,000のセルロース短繊維(天然木材を解繊しそれを疎水化処理したもの。)が挙げられる。上記製品はいずれもWeyerhaeuser社製である。セルロース短繊維はそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0013】
セルロース短繊維の配合量は硬度、モジュラスがより高くなり低発熱性、異方性により優れるという観点から、ジエン系ゴム100重量部に対して0.1〜20重量部であるのが好ましく、0.1〜5重量部であるのがより好ましい。
【0014】
本発明のゴム組成物はさらにカーボンブラックを含有することができる。カーボンブラックは特に制限されない。例えば、FEF、SRF、HAF、ISAF、SAFグレードのもの等が挙げられる。カーボンブラックは、補強性、耐摩耗性に優れるという観点から、HAF、ISAF、SAFグレードのものが好ましい。カーボンブラックはそれぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
カーボンブラックの量は、モジュラスがより高くなり、混合加工性に優れ、破断強度が高いという観点から、ジエン系ゴム100重量部に対して、5〜80重量部であるのが好ましい。
【0015】
本発明のゴム組成物は、前記した成分のほかに、さらに、カーボンブラック以外の補強剤[フィラー(例えばシリカ、炭酸カルシウム)]、硫黄のような加硫又は架橋剤、ジフェニルグアニジンのような加硫又は架橋促進剤、亜鉛華(酸化亜鉛)、ステアリン酸、各種オイル、老化防止剤、可塑剤などの添加剤を必要量配合することができる。
【0016】
本発明のゴム組成物はその製造について特に制限されない。例えば、セルロース短繊維の水分散液とラテックス状ジエン系ゴムとを攪拌して混合し、得られた混合液から水分を除去してゴム/セルロース短繊維のマスターバッチを製造し、得られたマスターバッチに必要に応じてジエン系ゴムを投入し(ここで投入されるジエン系ゴムはその一部または全部が乾燥されたものでもよい。またここでジエン系ゴムを使用しなくてもよい。)、さらに必要に応じて使用することができる、カーボンブラック、添加剤を加えて常法に従ってこれらを混練すればよい。また例えば、上記のようにして得られたマスターバッチと、加硫剤もしくは架橋剤および/または加硫促進剤もしくは架橋促進剤(以下これらを加硫剤等という。)を除く配合剤と、ゴム成分とを混練し(このときの混練温度は、好ましくは50〜160℃であり、その混練時間は、好ましくは2分〜10分である。)その後得られた混練物に加硫剤等を混合して目的の組成物を得ることができる。混練物と加硫剤等との混合は、通常120℃以下とすることができる。
【0017】
本発明のゴム組成物において、セルロース短繊維をゴム組成物中で配向させることによって発熱性をより低下させることができ、モジュラスがより高く、低発熱性と高いモジュラスとを両立させることができ、加工性に優れ、加硫速度が向上し、硬度を適切な範囲で維持することができる。セルロース短繊維をゴム組成物中で配向させるため、未加硫状態の本発明のゴム組成物を押出し(押出し加工)またはせん断処理をして用いるのが好ましい。ゴム組成物に加硫剤等をあらかじめ配合してもよい。
ゴム組成物の押出しまたはせん断処理は例えば未加硫ゴム押出機またはロールミルを用いて行うことができる。押出しまたはせん断処理の温度は、50〜140℃であるのが好ましい。
【0018】
本発明のゴム組成物(未加硫ゴム)を加硫または架橋する方法は特に限定されない。例えば金型中に未加硫のゴム組成物のシートを充填して加熱し、加圧することによって加硫または架橋することができる。加硫温度は好ましくは140〜180℃である。加硫時間は通常5〜15分とすることができる。
【0019】
本発明のゴム組成物(加硫ゴム)は、異方性に優れるという観点から、異方性の指標として反列理方向の100%モジュラスに対する列理方向の100%モジュラスの比の値(M100%列理方向/M100%反列理方向)が1.20以上の加硫ゴムとなるのが好ましく、1.20〜2であるのがより好ましく、1.24〜1.6であるのがさらに好ましい。本発明において上記の異方性評価には、本発明のゴム組成物をロールでシート状としこれを160℃の条件下で15分間加硫して得られた加硫ゴムシート(厚さ2mm)が使用された。列理方向は押出しまたはせん断処理の際の圧延方向であり、反列理方向は列理方向に対して垂直の方向である。
【0020】
本発明のゴム組成物はその用途としてはタイヤ(空気入りタイヤ)が挙げられる。具体的には例えば、空気入りタイヤのトレッド部(キャップトレッド部、ベーストレッド部)、アンダートレッド、サイド部、ベルト部、カーカス、サイドウォール、ビードに使用することができる。本発明のゴム組成物は空気入りタイヤ以外に、例えば、防振ゴム、ベルト、ホース、その他の工業製品等に使用することができる。
【0021】
本発明の空気入りタイヤについて以下に説明する。
本発明の空気入りタイヤは、本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いて形成される空気入りタイヤである。
本発明の空気入りタイヤを形成する際に使用されるゴム組成物は本発明のゴム組成物であれば特に制限されない。本発明のゴム組成物を使用して例えば、空気入りタイヤのトレッド部、サイド部、ベルト部を形成することができる。
なお、本発明の空気入りタイヤは、本発明のゴム組成物を空気入りタイヤに用いる以外特に制限はなく、例えば従来公知の方法に従って製造することができる。また、タイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例】
【0022】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし本発明はこれらに限定されない。
<セルロース短繊維>
・親水性セルロース短繊維の水分散液
木材を洗浄、漂白した後、1〜3mmに切断し、水中で高圧処理して解繊して製造された、親水性セルロース短繊維の水分散液を使用した(分散液中の親水性セルロース短繊維の平均繊維長は2mm、平均繊維径は200nm、L/Dは10,000である。水分散液中の親水性セルロースの濃度は1.0質量%である。Weyerhaeuser社製)
・疎水性セルロース短繊維の水分散液
上記のようにして得られた親水性セルロース短繊維の繊維表面のアルコールを無水酢酸でメチルエステル化(親水性セルロース短繊維の分散液と無水酢酸と微量の硫酸を50℃の条件下で10分間加熱。無水酢酸の量は親水性セルロース短繊維100質量部(正味の量)に対して2質量部であった。)することによって疎水化され製造された、疎水性セルロース短繊維の水分散液を使用した(水分散液中の疎水性セルロース短繊維の平均繊維長は2mm、平均繊維径は200nm、L/Dは10,000である。水分散液中の親水性セルロースの濃度は1.0質量%である。Weyerhaeuser社製)
【0023】
<マスターバッチの製造>
[親水性短繊維マスターバッチ1]NRラテックス(60重量%濃縮天然ゴムラテックス)中のゴム分が100重量部となるように用意し、当該NRラテックスと上記のようにして得られた親水性セルロース短繊維の水分散液(親水性セルロース短繊維の乾燥重量:10重量部となるように使用。)とを水系混合した後、100℃以下で水を蒸発させて乾燥させ、親水性短繊維マスターバッチ1(親水性短繊維MB1)を製造した。
[親水性短繊維マスターバッチ2]親水性セルロース短繊維を乾燥重量で1重量部に代えたほかは親水性短繊維マスターバッチ1と同様にして親水性短繊維マスターバッチ2(親水性短繊維MB2)を製造した。
[疎水性短繊維マスターバッチ1]親水性セルロース短繊維の水分散液を上記のようにして得られた疎水性セルロース短繊維の水分散液に代えたほかは親水性短繊維マスターバッチ1と同様にして疎水性短繊維マスターバッチ1(疎水性短繊維MB1)を製造した。
[セルロース短繊維マスターバッチ1]親水性セルロース短繊維の水分散液をセルロース短繊維[商品名:セリッシュFD−100F(ダイセル化学工業(株)製のミクロフィブリル化セルロース、平均繊維長400μm、平均繊維径0.05μm、L/D=8,000)]に代えたほかは親水性短繊維マスターバッチ1と同様にしてセルロース短繊維マスターバッチ1(セルロース短繊維MB1)を製造した。
【0024】
<評価>
下記のようにして得られたゴム組成物をロールでシート状としこれを160℃の条件下で15分間加硫した。得られた加硫ゴムシート(厚さ2mm)を用いて、以下の方法で引張試験、異方性(M100異方性)、粘弾性を評価した。結果を第1表、第2表に示す。
・硬度(リュブケJIS硬度)
硬度(リュプケJIS硬度)についてはJIS K 6255に従い厚さ12.5mm,直径29mmの円柱状の加硫ゴムサンプルを作製して評価した。得られた加硫ゴムサンプルを用いてJISK6253に準じて20℃の条件下でリュブケJIS硬度を測定した。リュブケJIS硬度が50〜90の場合、空気入りタイヤ用として適切な範囲であるものとする。
・引張試験
上記のようにして得られた加硫ゴムシートからJIS3号ダンベル状の試験片を打ち抜き、引張速度500mm/分での引張試験をJIS K6251に準拠して行い、100%モジュラス(M100)[MPa]、300%モジュラス(M300)[MPa]を室温にて測定した。
【0025】
・異方性(M100異方性)
(列理方向100%モジュラス)
上記のようにして得られた厚さ2mmの加硫ゴムシートからJIS3号形ダンベルにて列理方向(加硫前の未加硫ゴムシートを製造する際のロール回転方向。)に打抜き、JISK6251に準じて500mm/分の引張速度の条件下で列理方向に伸び100%時の引張応力(M100:伸び100%時の引張応力)を測定した。
(反列理方向100%モジュラス)
上記のようにして得られた厚さ2mmの加硫ゴムシートからJIS3号形ダンベルにて反列理方向(加硫前の未加硫ゴムシートを製造する際のロール回転方向から垂直方向。)に打抜き、JISK6251に準じて500mm/分の引張速度の条件下で反列理方向に伸び100%時の引張応力(M100:伸び100%時の引張応力)を測定した。
(異方性の評価)
M100異方性は上記のようにして得られた、反列理方向100%モジュラスに対する列理方向100%モジュラスの比の値(列理方向100%モジュラス/反列理方向100%モジュラス)として求められる。M100異方性が大きいほど異方性に優れる。本発明においてM100異方性は1.20以上であるのが好ましい。
【0026】
・粘弾性
上記のようにして得られた加硫ゴムシートについて、東洋精機製作所製粘弾性スペクトロメータを用い、歪10±2%、周波数20Hz、雰囲気温度60℃の条件下で列理方向に沿ってE1、tanδの値を測定した。tanδの数字は、第1表では比較例1の結果を100とする指数、第2表では比較例3の結果を100とする指数である。tanδの指数が小さいほど60℃でのtanδが低く発熱が抑制されていることを意味する。
【0027】
<ゴム組成物の製造>
下記第1表、第2表に示す成分を同表に示す量(単位:重量部)で用いてこれらをオープンロールで混練しゴム組成物を得た。
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
第1表、第2表に示されている各成分の詳細は以下のとおりである。
・NR:SMR−L(ラテックスグレード):天然ゴムラテックスを精製して凝固し、スモーク乾燥しないで乾燥した天然ゴム
・ラテックス乾燥NR:60重量%濃縮天然ゴムラテックスを100℃以下で加熱して乾燥させることによって得られる天然ゴム
・BR1220:ブタジエンゴム、日本ゼオン製NIPOL BR 1220
・親水性短繊維MB1、2、疎水性短繊維MB1、セルロース短繊維MB1:それぞれ上述のとおり製造したもの。
・セルロース短繊維2:フレキシス社製天然セルロース繊維「サントウエブD」、長さ1.5mm、太さ8μm〜16μm、L/D=100〜200
・CB HAF:カーボンブラック、ショウブラックN330、キャボットジャパン社製
・亜鉛華:正同化学工業(株)製酸化亜鉛3種
・ステアリン酸:日本油脂(株)製ビーズステアリン酸
・オイル:昭和シェル製、エキストラクト4号S
・硫黄:細井化学工業製油処理硫黄
・促進剤NS:加硫促進剤、大内新興化学工業(株)製ノクセラーNS−P
【0030】
第1表、第2表に示す結果から明らかなよう、基準となる比較例1と比較して、平均繊維長L:1mm未満、平均繊維径D:70nm未満のセルロース短繊維(セルロース短繊維は短くて細い。)を含有する比較例2はモジュラス、異方性に改善は見られなかった。平均繊維径D:1μmを越えるセルロース短繊維(セルロース短繊維は長くて太い。)を含有する比較例4は基準となる比較例3と比較して発熱を抑制することができなかった。
これに対して、実施例1〜7は基準となる比較例1と比較して、低発熱性を維持しながら硬度、モジュラスが高く異方性に優れる。また、実施例1〜7は比較例2よりもモジュラスが高く異方性に優れる。
実施例8〜9は基準となる比較例3、比較例4と比較して、低発熱性を維持しながら硬度、モジュラスが高く異方性に優れる。特にNRラテックスを加熱乾燥させたものを含有する実施例8は発熱性が低い。