(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5691480
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】ダイキャストのオーバーフロー部形状
(51)【国際特許分類】
B22D 17/22 20060101AFI20150312BHJP
B22C 9/06 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
B22D17/22 F
B22D17/22 T
B22C9/06 M
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2010-280235(P2010-280235)
(22)【出願日】2010年12月16日
(65)【公開番号】特開2012-125816(P2012-125816A)
(43)【公開日】2012年7月5日
【審査請求日】2013年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】カルソニックカンセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】野口 政行
(72)【発明者】
【氏名】篠原 健二
【審査官】
川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】
特開平02−041737(JP,A)
【文献】
実開平04−134257(JP,U)
【文献】
特開昭62−240138(JP,A)
【文献】
特開平06−154986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22C 9/00− 9/30
B22D 17/00−17/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイキャスト製品(1)の成形時にダイキャスト製品(1)の筒状本体(12)の円形端面(2)から連続して立ち上がり成形されるオーバーフロー部(3)の形状であって、
前記オーバーフロー部(3)は、前記ダイキャスト製品(1)の前記円形端面(2)の外周部形状に倣って湾曲し、該外周部形状部分と連続して形成される外周連続面(4)と、円形端面(2)から立ち上がる内周連続面(5)とを有する連続部(6)を有し、前記内周連続面(5)は平面部(7)が設けられた形状に形成されていることを特徴とするダイキャストのオーバーフロー部(3)形状。
【請求項2】
請求項1記載のダイキャストのオーバーフロー部(3)形状であって、
前記内周連続面(5)は、連続部(6)の周方向の中間部に平面状の平面部(7)が設けられ該平面部(7)の両側と外周連続面(4)とが曲面状の側部連続面(9)で形成されていることを特徴とするダイキャストのオーバーフロー部(3)形状。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載のダイキャストのオーバーフロー部(3)形状であって、
前記内周連続面(5)と前記円形端面(2)との連続部(6)は曲面で形成されていることを特徴とするダイキャストのオーバーフロー部(3)形状。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイキャスト製品に関し、特にダイキャスト製品の成型時にダイキャスト製品と一体に形成されるオーバーフロー部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3及び特許文献1に示すように従来のダイキャスト製品100では、製品を製造する際に、キャビティ(製品成型部)に残ったガスをキャビティ外に排出して製品内にガスが残ることを防止するためのオーバーフロー部101がダイキャスト製品100の端末に形成される。
【0003】
図3に示すように、筒状に形成され中心に中空部102が形成されたダイキャスト製品100のオーバーフロー部101は製品成型後、ダイキャスト製品100からオーバーフロー部101を取り除く必要があり、ダイキャスト製品100からオーバーフロー部101を取り除く際に作業者が木槌で叩くことによりダイキャスト製品100からオーバーフロー部101を取り除いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−154986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら作業者が木槌で叩いて取り除く際にオーバーフロー部101が製品に残ってしまったり、ダイキャスト製品100の一部と一緒にオーバーフロー部101を取り除いてしまうという問題があった。
【0006】
また、オーバーフロー部101をダイキャスト製品100から取り除くめに特許文献1のようにオーバーフロー部101に切欠きを設けることが提案されているが、オーバーフロー部101に切欠きを設けることで、オーバーフロー部101の強度が非常に弱くなりオーバーフロー部101を取り除く以前の工程でオーバーフロー部101がダイキャスト製品100から取り出され、取り除かれたオーバーフロー部101がダイキャストマシンに入り込みダイキャストマシンの故障を引き起こす等の問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、強度を有しつつダイキャスト製品からオーバーフロー部のみを取り除くことができるダイキャスト製品のオーバーフロー部を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、ダイキャスト製品1の成形時にダイキャスト製品1
の筒状本体12の円形端面2から連続して立ち上がり成形されるオーバーフロー部3の形状であって、前記オーバーフロー部3は、前記ダイキャスト製品1
の前記円形端面2の外周部形状に倣って湾曲
し、該外周部形状部分と連続して形成される外周連続面4と、円形端面2から立ち上がる内周連続面5とを有する連続部6を有し、前記内周連続面5は平面部7が設けられ
た形状に形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載のダイキャストのオーバーフロー部3形状であって、前記内周連続面5は、連続部6の周方向の中間部に平面状の平面部7が設けられ該平面部7の両側と外周連続面4とが曲面状の側部連続面9で形成されていることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のダイキャストのオーバーフロー部3形状であって、前記内周連続面5と前記円形端面2との連続部6は曲面で形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、オーバーフロー部3に、ダイキャスト製品1の内周連続面5に平面部7が設けられた易破断形状に形成されていることにより、オーバーフロー部3のみをダイキャスト製品から取り除くことができる。
【0012】
また、内周連続面5が連続部6の周方向の中間部に平面状の平面部7が設けられ該平面部7の両側と外周連続面4とが曲面状の側部連続面9で形成されているので、オーバーフロー部3の強度を保つことができ、オーバーフロー部3を取り除く以前の工程でオーバーフロー部3がダイキャスト製品1から欠落することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】(a)ダイキャスト製品の上面図、(b)(a)のA矢視図、(c)(a)の断面B−B断面矢視図。
【
図3】(a)従来のダイキャスト製品の上面図、(b)(a)のA矢視図、(c)(a)のB−B断面矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、
図1,2を用いて詳細に説明する。
【実施例1】
【0015】
図1に示すように、ダイキャスト製品1は、上方X方向にスライドする金型C1及び左右Y、Z方向に開く金型C2、C3によって形成されるダイキャスト製品1製造部分にアルミの溶湯を流し込むことで成型される。
【0016】
図1及び
図2に示すように、本実施形態のダイキャスト製品1は、中心に中空部11が形成された筒状本体12と、この筒状本体の一側を閉塞するように形成された筒状本体支持部13とで形成され、筒状本体12の円形端面2から連続して立ち上がり、筒状本体12と一体にオーバーフロー部3が形成されている。
【0017】
オーバーフロー部3は、ダイキャスト製品1の円形端面2から突出するオーバーフロー部本体14とオーバーフロー部本体14とダイキャスト製品1とを連結する曲面で形成された連続部6とから構成されており、この連続部6は、オーバーフロー部3がダイキャスト製品1から意図しない工程で欠落することを防止するための強度を確保している。
【0018】
この連続部6は、ダイキャスト製品1の円形端面2の外周形状に倣って同芯円状に湾曲して形成される外周連続面4とダイキャスト製品1の円形端面2から曲面を経て立ち上がる内周連続面5とから構成されている。連続部6が曲面によって形成されているため、オーバーフロー部3は強度を保つことができる。
【0019】
内周連続面5は、連続部6の周方向の中間部に平面状に形成された平面部7と平面部7の両端側と外周連続面4とを結ぶ曲面状の側部連続面9とから構成されている。
【0020】
本実施例によれば、内周連続面5に平面部7を設けることにより、作業者が容易にダイキャスト製品1からオーバーフロー部3を取り除くことができ、かつ、意図しない工程でオーバーフロー部3がダイキャスト製品1から欠落することを防止することができる。また、円形端面2と内周連続面5との間に連続して設けられた連続部6によって、オーバーフロー部3の強度をより補強することができる。
【0021】
また、内周連続面5に平面部7を設け、従来のオーバーフロー部3の断面積を変えることなくオーバーフロー部3を形成することで作業者が容易にオーバーフロー部3を取り除くことができるので、オーバーフロー部3の一部と一緒にダイキャスト製品1を取り除くことなく、確実にオーバーフロー部3のみを取り除くことができる。
【0022】
さらに、内周連続面5に平面部7を設けたことにより、内周連続面5と外周連続面4のどちらを木槌で叩いても容易にオーバーフロー部3のみを取り除くことができる。
【0023】
なお、本実施例では、オーバーフロー部3は、ダイキャスト製品1の円形端面2に2箇所設けられているが、3箇所以上であっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、ダイキャスト製品のオーバーフロー部、特に、円形端面から突出するオーバーフロー部に有効に利用することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 ダイキャスト製品
2 円形端面
3 オーバーフロー部
4 外周連続面
5 内周連続面
6 連続部
7 平面部