特許第5691488号(P5691488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5691488
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】エレベータ装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20150312BHJP
【FI】
   B66B5/02 F
   B66B5/02 C
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-284337(P2010-284337)
(22)【出願日】2010年12月21日
(65)【公開番号】特開2012-131599(P2012-131599A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2013年7月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(72)【発明者】
【氏名】陸野 洋行
【審査官】 藤村 聖子
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−258078(JP,A)
【文献】 特開平10−087209(JP,A)
【文献】 特開2008−037564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/02
B66B 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方が昇降路側に取り付けられ、他方がエレベータかごに取り付けられたトラベリングケーブルと、前記かごに設けられ前記トラベリングケーブルの動きを検出する検出装置とを備えたエレベータにおいて、
前記トラベリングケーブルに所定以上の下方向の張力が作用したときにこれを検出する第1の装置と、前記トラベリングケーブルに所定以上の上方向の張力が作用したときにこれを検出する第2の装置とを備えたことを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】
前記第1の装置は、前記トラベリングケーブルが巻き掛けられる第1支持具と前記第1支持具の所定以上の下方向への変位を検出する第1検出装置とを有しており、
前記第2の装置は、前記トラベリングケーブルが巻き掛けられる第2支持具と前記第2支持具の所定以上の上方向への変位を検出する第2検出装置とを有しており、
前記トラベリングケーブルは前記昇降路側から前記第1支持具の上部及び第2支持具の下部を経由して前記かごへ至るように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項3】
前記第1の装置は、前記トラベリングケーブルが巻き掛けられる第1支持具と前記第1支持具に掛かるトラベリングケーブルの荷重の変化を検出する第1検出装置とを有しており、
前記第2の装置は、前記トラベリングケーブルが巻き掛けられる第2支持具と前記第2支持具に掛かるトラベリングケーブルの荷重の変化を検出する第2検出装置とを有しており、
前記トラベリングケーブルは前記昇降路側から前記第1支持具の上部及び第2支持具の下部を経由して前記かごへ至るように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のエレベータ装置。
【請求項4】
前記かごが中間階に停止したとき、前記かごを低速で少し上昇させた場合に前記第1検出装置と第2検出装置の両方が作動するとき、又は前記かごを低速で少し下降させた場合に前記第1検出装置と第2検出装置の両方が作動しないときに、前記かごを低速で最寄階の戸開閉可能ゾーンまで下降運転する構成であることを特徴とする請求項2又は3に記載のエレベータ装置。
【請求項5】
前記かごが中間階に停止したとき、前記かごを低速で少し上昇させた場合に前記第1検出装置と第2検出装置との両方が作動しないとき、又は前記かごを低速で少し下降させた場合に第2検出装置だけが作動するときに、前記かごを低速で最寄階の戸開閉可能ゾーンまで上昇運転する構成であることを特徴とする請求項2又は3に記載のエレベータ装置。
【請求項6】
前記かごが中間階に停止したとき、前記かごを低速で少し上昇させた場合に前記第1検出装置と第2検出装置との両方が作動する状態を上限とし、前記かごを低速で少し下降させた場合に前記第2検出装置だけが作動する状態を下限とする範囲内で前記かごを昇降可能とした構成であることを特徴とする請求項2又は3に記載のエレベータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震等により発生するエレベータのトラベリングケーブルの昇降路内機器などへの引っ掛かりを検出する装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図6は、一般的なエレベータの概要を示す図であり、乗客や荷物を積載するかご1とカウンターウェイト2とを主ロープ3で連結し、巻上機4により駆動してかご1とカウンターウェイト2とを、昇降路11内を昇降させている。5は巻上機4の制御装置(図示省略)とかご1との間で、電気信号の授受や電力供給を行うためのトラベリングケーブルで、一方は昇降路11内の中間部又は前記制御装置(昇降路側)に取り付けられ、他方はかご1に取り付けられている。
【0003】
トラベリングケーブル5は中間部が吊り下げられているため、地震や強風等によって揺れると、昇降路11内の機器に引っ掛かる場合がある。この状態でかご1が昇降すると、トラベリングケーブル5が切断される虞がある。そうすると、かご1が緊急停止してかご1内に乗客が閉じ込められるとともに、エレベータの復旧にも多大な時間を要することになる。
【0004】
そこで、トラベリングケーブル5の引っ掛かりを検出するために、図7に示すような装置が設けられている。
図において、6はかご1に固定されたアーム、7はトラベリングケーブル5に固定された引止め具、8はばね座、9はアーム6とばね座8の間に設けた圧縮ばね、10はばね座8の下降により動作する検出装置(リミットスイッチ)である。
これにより、トラベリングケーブル5が引っ掛かった場合には、ばね9が圧縮されてばね座8が検出装置10を動作させ、巻上機4の駆動を停止させて、かご1を緊急停止させる等の制御を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−161883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記従来技術では、トラベリングケーブルの引っ掛かりを検出してかごを緊急停止させたとき、偶々かごが階床ゾーン内に停止したときにはドアを開けばかご内乗客はかご外に出ることができるが、かごが階床と階床との中間でドアを開けないゾーン(中間階)に停止した場合には、かご内乗客は救助員が来るまでかご内に閉じ込められることになる。そのため、地震によってトラベリングケーブルが引っ掛かった場合には、広範囲にわたってエレベータが停止していることが多いため、乗客の救出までに長時間を要することもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一方が昇降路側に取り付けられ、他方がエレベータかごに取り付けられたトラベリングケーブルと、前記かごに設けられ前記トラベリングケーブルの動きを検出する検出装置とを備えたエレベータにおいて、前記トラベリングケーブルに所定以上の下方向の張力が作用したときにこれを検出する第1の装置と、前記トラベリングケーブルに所定以上の上方向の張力が作用したときにこれを検出する第2の装置とを備えたものである。
【0008】
また本発明は、前記第1の装置は、前記トラベリングケーブルが巻き掛けられる第1支持具と前記第1支持具の所定以上の下方向への変位を検出する第1検出装置とを有しており、前記第2の装置は、前記トラベリングケーブルが巻き掛けられる第2支持具と前記第2支持具の所定以上の上方向への変位を検出する第2検出装置とを有しており、前記トラベリングケーブルは前記昇降路側から前記第1支持具の上部及び第2支持具の下部を経由して前記かごへ至るように配置されているものである。
【0009】
また本発明は、前記第1の装置は、前記トラベリングケーブルが巻き掛けられる第1支持具と前記第1支持具に掛かるトラベリングケーブルの荷重の変化を検出する第1検出装置とを有しており、前記第2の装置は、前記トラベリングケーブルが巻き掛けられる第2支持具と前記第2支持具に掛かるトラベリングケーブルの荷重の変化を検出する第2検出装置とを有しており、前記トラベリングケーブルは前記昇降路側から前記第1支持具の上部及び第2支持具の下部を経由して前記かごへ至るように配置されているものである。
【0010】
また本発明は、前記かごが中間階に停止したとき、前記かごを低速で少し上昇させた場合に前記第1検出装置と第2検出装置の両方が作動するとき、又は前記かごを低速で少し下降させた場合に前記第1検出装置と第2検出装置の両方が作動しないときに、前記かごを低速で最寄階の戸開閉可能ゾーンまで下降運転するものである。
【0011】
また本発明は、前記かごが中間階に停止したとき、前記かごを低速で少し上昇させた場合に前記第1検出装置と第2検出装置との両方が作動しないとき、又は前記かごを低速で少し下降させた場合に第2検出装置だけが作動するときに、前記かごを低速で最寄階の戸開閉可能ゾーンまで上昇運転するものである。
【0012】
また本発明は、前記かごが中間階に停止したとき、前記かごを低速で少し上昇させた場合に前記第1検出装置と第2検出装置との両方が作動する状態を上限とし、前記かごを低速で少し下降させた場合に前記第2検出装置だけが作動する状態を下限とする範囲内で前記かごを昇降可能としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、トラベリングケーブルを損傷することなく、早期にかご内乗客を救出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態を示す図であり、エレベータの概要を示す図である。
図2図1の第1支持具の詳細を示す説明図である。
図3図1の第2支持具の詳細を示す説明図である。
図4】本実施の形態の動作を示す図である。
図5】本実施の形態の動作を示す図である。
図6】一般的なエレベータの概要を示す図である。
図7図6の要部の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態を図1図5により説明する。図1はエレベータの概要を示す図、図2,3はその要部の説明図であり、図6,7と同一符号は同一のものを示している。
【0016】
図において、20は第1支持具であり、図2に示すように、引張ばね21,21によってかご1に連結された軸22に枢着されている。23はかご1に設けられた第1検出装置(スイッチ)であり、第1支持具20が所定以上下降すると動作するものである。
30は第2支持具であり、図3に示すように、引張ばね31,31によってかご1のアーム6に連結された軸32に枢着されている。33はアーム6に設けられた第2検出装置(スイッチ)であり、第2支持具30が所定以上上昇すると動作するものである。
【0017】
トラベリングケーブル5は、一方は昇降路11内の中間部又は巻上機の制御装置(図示省略)に取り付けられ、他方は第1支持具20,第2支持具30を経由してかご1に取り付けられている。
【0018】
次に、地震や強風等によってトラベリングケーブル5が揺れ、昇降路11内の機器に引っ掛かかった場合について説明する。
トラベリングケーブル5が昇降路11内の機器に引っ掛かる状況としては図4図5の場合が考えられる。図4,5において×印がトラベリングケーブル5が引っ掛かった箇所である。
かご1が上昇中にトラベリングケーブル5が引っ掛かって、かご1が停止した場合や、かご1が下降中にトラベリングケーブル5が引っ掛かかり、その直後にかご1が停止した場合、又は、かご1が停止中にトラベリングケーブル5が揺れて引っ掛かった場合には、図4の状態になる。
また、かご1が下降中にトラベリングケーブル5が引っ掛かり、その少し後でかご1が停止すると図5の状態になる。また大地震などでトラベリングケーブル5が上下に揺れた場合などには図5の状態になることもあり得る。
【0019】
つまり、図4の状態であるか図5の状態であるかは一義的には決められないため、無闇にかご1を動かすとトラベリングケーブル5を切断してしまう可能性がある。そこで従来はトラベリングケーブル5が引っ掛かると、救助員が来るまでかご1を停止させておくのが普通であった。
そのため、大地震などによって広範囲にわたってエレベータが停止しているような場合には、乗客の救出までに長時間を要するという問題があった。
【0020】
本実施の形態は、トラベリングケーブル5が図4の状態か図5の状態かを判別することにより、かご1を正しい方向に昇降させ、かご1内乗客を早期に救出するものである。又はかご1を昇降させなくても、トラベリングケーブル5の状態を表示・報知することにより、救助作業が速やかに行えるようにしたものである。
【0021】
トラベリングケーブル5が図4の状態にある場合、かご1を低速で少し上昇(トラベリングケーブル5が損傷しない程度)させると、トラベリングケーブル5に引っ張られて第1支持具20は下降し、第2支持具30は上昇する。これにより第1検出装置23,第2検出装置33の両方が作動する。
またトラベリングケーブル5が図5の状態にある場合は、同様にかご1を低速で少し上昇させると、トラベリングケーブル5の張力が緩むので、第1支持具20は上昇し、第2支持具30は下降する。従って第1検出装置23,第2検出装置33は両方とも作動しない。
【0022】
このように、かご1を低速で少し上昇させるだけで、トラベリングケーブル5が図4の状態であるか、図5の状態であるかを判別することができる。
これにより、図4の状態にあることがわかれば、かご1を低速で、直下の階床まで下降させてドアを開き、かご1内の乗客を救出することができる。
逆に、図5の状態にあれば、かご1を低速で直上の階床まで上昇させてドアを開き、かご1内の乗客を救出することができる。
従って、救助員が来る前でも、自動的にかご1を制御して、トラベリングケーブル5の状態を判別し、かご1内乗客を救出することができる。
【0023】
前記の実施の形態では、かご1を低速で上昇させてトラベリングケーブル5の引っ掛かり状態を判別しているが、逆にかご1を下降させて判別することもできる。
トラベリングケーブル5が図4の状態にある場合、かご1を低速で少し下降させると、トラベリングケーブル5の張力が緩み、第1支持具20は上昇し、第2支持具30は下降する。これにより第1検出装置23,第2検出装置33の両方とも作動しない。
またトラベリングケーブル5が図5の状態にある場合は、同様にかご1を低速で少し下降させると、第1支持具20は上昇し、第2支持具30も上昇する。従って第1検出装置23は作動せず、第2検出装置33だけが作動する。
【0024】
前記の実施の形態において、かご1内の乗客救出時にかご1を昇降させる場合、トラベリングケーブル5の引っ掛かりの位置(×印)が第1支持具20に近い位置である場合、かご1の移動量が多いとトラベリングケーブル5が引っ張られる可能性もある。その場合は第1検出装置23又は第2検出装置33の一方又は両方が作動してかご1が停止するため、トラベリングケーブル5が切断することはないが、かご1内の乗客を救出することはできない。
そこで、かご1の移動量を少しでも少なくするために、かご1を直上又は直下の階床までではなく、直上又は直下の階床のドア開閉ゾーンまで移動させてドアを開くようにしてもよい。
この場合、かご1と乗場戸の間に段差ができるが、段差分だけかご1の移動量を少なくすることができる。
【0025】
またトラベリングケーブル5の切断のリスクを更に減少させるために、トラベリングケーブル5の引っ掛かり状態が図4図5かのいずれの状態であるかを判別したら、その旨を表示・報知するのみにしてかご1を運転しないことも可能である。この場合、かと1内乗客の救助は遅れるが、かご1内乗客に状況を知らせることができ、また救助員に正確な情報を知らせることにより、より早く適切な救助が行えるという効果がある。
【0026】
前記の実施の形態では、トラベリングケーブル5の引っ掛かりの位置(×印)が第1支持具20に近い位置である場合について述べたが、逆にトラベリングケーブル5の引っ掛かりの位置(×印)が第1支持具20から遠い位置であることもあり得る。
前記の説明で、トラベリングケーブル5が図4の状態であることが検出できれば、かご1は下降運転可能であるということになる。また、図5の状態であることが検出できれば、かご1は上昇運転可能であるということになる。
【0027】
つまり、トラベリングケーブル5が引っ掛かったとしても、図4のようにかご1を少し上昇させて、第1検出装置23と第2検出装置33の両方が作動する状態を上限とし、図5のようにかご1を少し下降させて、第1検出装置23は作動せず、第2検出装置33だけが作動する状態を下限とする範囲内でかご1を昇降させることは可能ということになる。この場合かご1がこの上限又は下限に達すると第2検出装置33が作動してかご1を停止させるので、トラベリングケーブル5が損傷することはない。
【0028】
トラベリングケーブル5が引っ掛かった状態でかご1を昇降運転させるケースは少ないと思われるが、そのような必要性のある場合にもこの実施の形態は対応することができる。
【0029】
また前記の実施の形態では、第1支持具20を引張ばね21によってかご1に連結されているが、圧縮ばねによってアーム6に連結してもよい、また第2支持具30も引張ばね31によってアーム6に連結されているが、圧縮ばねによってかご1に連結してもよい。
従って、第1支持具20に引張ばね21、第2支持具30に圧縮ばねを使用すれば、第1支持具20,第2支持具30の両方をかご1に連結できるため、アーム6を省略することができる。
更にまた、図5のかご1の角部に、トラベリングケーブル5の保護用のローラや低摩擦材を配置することも可能である。
【0030】
また前記の実施の形態では、ばね21,31と検出装置(スイッチ)23,33によって第1支持具20,第2支持具30の上下動を検出しているが、代わりにロードセルを使用して、トラベリングケーブル5の張力の変化を各支持具20,30に掛かるトラベリングケーブル5の荷重の変化として測定することも可能である。
【0031】
更に前記の実施の形態を敷衍すれば、本発明はトラベリングケーブル5に所定以上の下方向の張力が作用したときにこれを検出する第1の装置(第1支持具20等)と、トラベリングケーブル5に所定以上の上方向又は下方向の張力が作用したときにこれを検出する第2の装置(第2支持具30等)を備えたものである。
【符号の説明】
【0032】
1 かご
5 トラベリングケーブル
6 アーム
11 昇降路
20 第1支持具
21,31 引張ばね
22,32 軸
23 第1検出装置
30 第2支持具
33 第2検出装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7