(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0031】
図4は本発明の実施の形態における車両の概念図である。
【0032】
図において、11は車両の本体であるボディ、12は駆動源としてのエンジン、WLF、WRF、WLB、WRBは、前記ボディ11に対して回転自在に配設された左前方、右前方、左後方及び右後方の車輪である。なお、車輪WLF、WRFによって駆動輪、かつ、前輪が、車輪WLB、WRBによって従動輪、かつ、後輪が構成される。また、車輪WLFによって左前輪が、車輪WRFによって右前輪が、車輪WLBによって左後輪が、車輪WRBによって右後輪が構成される。
【0033】
前記車両は前輪駆動方式の構造を有し、エンジン12と車輪WLF、WRFとが伝動軸としての図示されないドライブシャフトによって連結される。そして、エンジン12を駆動することによって発生させられた回転は、車輪WLF、WRFに伝達され、該車輪WLF、WRFが回転させられる。
【0034】
本実施の形態において、前記車両は、前輪駆動方式の構造を有するようになっているが、車輪WLB、WRBが駆動輪として機能する後輪駆動方式、車輪WLF、WRF、WLB、WRBが駆動輪として機能する四輪駆動方式等の構造を有するようにすることもできる。また、車輪WLF、WRF、WLB、WRBに駆動源としての走行用のホイールモータを配設し、該ホイールモータを駆動して車輪WLF、WRF、WLB、WRBを回転させることができる。
【0035】
また、13は車両の操舵を行うための操作部としての、かつ、操舵部材としてのステアリングホイール、14は車両を加速させるための操作部としての、かつ、加速操作部材としてのアクセルペダル、15は車両を制動するための操作部としての、かつ、制動操作部材としてのブレーキペダルである。
【0036】
本実施の形態において、車両は、走行安定性及び旋回安定性を高くするためのキャンバシステムを備え、該キャンバシステムにおいては、ボディ11と車輪WLB、WRBとの間にキャンバ可変機構としてのアクチュエータ31、32が配設され、該アクチュエータ31、32は、それぞれ、車輪WLB、WRBにキャンバを付与したり、キャンバの付与を解除したりする。なお、本実施の形態においては、ボディ11と車輪WLB、WRBとの間にアクチュエータ31、32がそれぞれ配設されるようになっているが、ボディ11と車輪WLF、WRFとの間にアクチュエータを配設したり、ボディ11と車輪WLF、WRF、WLB、WRBとの間にアクチュエータを配設したりすることができる。
【0037】
ところで、前記車輪WLF、WRF、WLB、WRBは、アルミニウム合金等によって形成された図示されないホイール、及び該ホイールの外周に嵌(かん)合させて配設されたタイヤ36を備える。そして、該タイヤ36として、後述される損失正接を小さくすることにより、タイヤ36のトレッドの変形によって発生する転がり抵抗が小さくされた低転がり抵抗タイヤが使用される。本実施の形態においては、転がり抵抗を小さくするためにタイヤ36の幅が通常のタイヤより小さくされるが、トレッドの溝のパターンであるトレッドパターンを、転がり抵抗が小さくなるような形状にしたり、少なくともトレッドの部分の材料を、転がり抵抗が小さいものにしたりすることができる。
【0038】
なお、前記損失正接は、トレッドが変形する際のエネルギーの吸収の度合いを表し、貯蔵剪(せん)断弾性率に対する損失剪断弾性率の比で表すことができる。損失正接が小さいほどトレッドによるエネルギーの吸収が少なくなるので、タイヤ36の路面を掴(つか)む力、すなわち、グリップ力が小さくなるが、タイヤ36に発生する転がり抵抗が小さくなり、タイヤ36に発生する摩耗が少なくなる。これに対して、損失正接が大きいほどトレッドによるエネルギーの吸収が多くなるので、グリップ力が大きくなるが、タイヤ36に発生する転がり抵抗が大きくなり、タイヤ36に発生する摩耗が多くなる。
【0039】
前記構成の車両においては、タイヤ36の転がり抵抗が小さくされるので、燃費を良くすることができる。
【0040】
次に、車輪WLB、WRBにキャンバを付与したり、キャンバの付与を解除したりするためのキャンバシステムについて説明する。この場合、キャンバシステムにおいて、アクチュエータ31、32の構造は同じであるので、車輪WRB及びアクチュエータ32についてだけ説明する。
【0041】
図5は本発明の実施の形態におけるキャンバシステムの斜視図、
図6は本発明の実施の形態におけるキャンバシステムの正面図、
図7は本発明の実施の形態におけるキャンバシステムの要部を示す平面図である。なお、
図5及び7において矢印Aは車両の前方を表す。
【0042】
図において、WRBは車輪、21はホイール、30は懸架装置、32はアクチュエータ、36はタイヤ、38は車輪WRBを保持するためのハブ、39は制動要素としてのディスクブレーキ、43は前記車輪WRB、前記ハブ38及びディスクブレーキ39を回転自在に支持し、揺動させられる可動部材としての、かつ、揺動部材としての可動プレート(ハブ支持部材)である。
【0043】
前記懸架装置30は、前記ボディ11に配設された第1、第2のサスペンションメンバ101、102、該第1、第2のサスペンションメンバ101、102間に取り付けられたユニット支持部材としてのブラケット103、第1の連結部材としてのアッパアーム104、第2の連結部材としての第1のロワアーム105、第3の連結部材としての第2のロワアーム106、付勢部材としてのスプリング107、ショックアブソーバ108、トレーリングアーム109等を備える。
【0044】
また、前記アクチュエータ32は、前記ブラケット103に固定されたモータ41、前記ブラケット103に対して揺動自在に配設された前記可動プレート43、前記モータ41の回転を減速させるための減速機44、該減速機44と連結され、減速機44によって減速された回転を受けて回転させられる回転体としてのクランク機構45、該クランク機構45と可動プレート43とを連結し、クランク機構45の回転運動を可動プレート43の揺動運動に変換する運動方向変換部としての前記アッパアーム104、前記クランク機構45のクランクシャフト45a(
図7において二つに分割して示される。)を回転させたときの回転位置を表す角度、すなわち、回転角度としてのクランク角を検出する角度センサ77等を備える。
【0045】
前記減速機44はプラネタリギヤ機構によって形成され、前記ブラケット103に取り付けられたケース44a、該ケース44aの内周面に取り付けられたリングギヤ44R、前記モータ41の出力軸41aに取り付けられた第1のサンギヤ44Sa、前記リングギヤ44R及び第1のサンギヤ44Saと噛(し)合させられ、第1のサンギヤ44Saの周囲を移動して回転させられる第1のピニオン44Pa、該第1のピニオン44Paを回転自在に支持する第1のピニオンシャフト44b、該第1のピニオンシャフト44bを支持し、前記第1のピニオン44Paが前記第1のサンギヤ44Saの周囲を移動するのに伴って回転させられるキャリヤ44CR、該キャリヤ44CRの回転中心に取り付けられた第2のサンギヤ44Sb、前記リングギヤ44R及び第2のサンギヤ44Sbと噛合させられ、第2のサンギヤ44Sbの周囲を移動して回転させられる第2のピニオン44Pb、該第2のピニオン44Pbを回転自在に支持する第2のピニオンシャフト44c、並びに該第2のピニオンシャフト44cを支持し、前記第2のピニオン44Pbが第2のサンギヤ44Sbの周囲を移動するのに伴って回転させられる出力部材44dを備える。
【0046】
前記モータ41を駆動すると、出力軸41aに出力された回転は減速されてキャリヤ44CRに伝達され、キャリヤ44CRの回転が更に減速されて出力部材44dに伝達される。
【0047】
また、前記クランク機構45は、モータ41の出力軸41aと同一軸上において前記出力部材44dに取り付けられ、前記ブラケット103によって回転自在に支持された前記クランクシャフト45a、及び該クランクシャフト45aに対して偏心させられ、クランクシャフト45aを中心に回転させられるクランクピン45bを備え、該クランクピン45bと前記アッパアーム104とが回転自在に連結される。
【0048】
したがって、モータ41を駆動すると、出力部材44dが回転させられ、それに伴ってクランクシャフト45aが所定の角度の範囲内で回転させられ、アッパアーム104が進退させられ、可動プレート43が揺動させられる。その結果、可動プレート43が傾けられた角度と等しいキャンバ角のキャンバが車輪WRBに付与される。前記クランク機構45及びアッパアーム104によって、てこクランク機構が構成される。
【0049】
また、前記第1のロワアーム105は、水平方向における一方側、本実施の形態においては、ボディ11の中心側の端部の所定の部分に配設された図示されない連結軸によって、第1のサスペンションメンバ101に対して回転自在に連結され、水平方向における他方側、本実施の形態においては、ボディ11の車輪WRB側の端部の所定の部分に配設された連結軸sh1(キャンバ軸)によって、可動プレート43に対して回転自在に連結される。
【0050】
そして、前記可動プレート43は、鉛直方向における一方側、本実施の形態においては、下端の所定の部分において、前記連結軸sh1によって第1のロワアーム105に対して回転自在に連結され、鉛直方向における他方側、本実施の形態においては、上端の所定の部分に配設された連結軸sh2によって、アッパアーム104に対して回転自在に連結される。したがって、可動プレート43は、ボディ11に対して、また、ブラケット103に対して揺動自在に支持される。
【0051】
また、スプリング107は、上端において第1のスプリング受け107aを介してボディ11に連結され、下端において図示されない第2のスプリング受けを介して第1のロワアーム105に連結される。
【0052】
そして、前記ショックアブソーバ108は、上端においてボディ11に、下端において第1のロワアーム105に連結される。
【0053】
さらに、第2のロワアーム106は、水平方向における一方側、本実施の形態においては、ボディ11の中心側の端部の所定の部分に配設された連結軸sh3によって、第1のサスペンションメンバ101に対して回転自在に連結され、水平方向における他方側、本実施の形態においては、ボディ11の車輪WRB側の端部の所定の部分に配設された連結軸sh4によって、可動プレート43に対して回転自在に連結される。なお、第2のロワアーム106は、アライメント時のトウ角を調整するトウコントロールリンクとして機能する。
【0054】
なお、前記クランク機構45において、クランクピン45bが第1のクランク位置としての、かつ、初期位置としての第1の死点に置かれたときのクランクシャフト45aの位置が、キャンバの付与を開始する位置、すなわち、キャンバ付与開始位置として、かつ、キャンバの付与の解除を終了する位置、すなわち、キャンバ解除終了位置として設定され、クランクピン45bが第2のクランク位置としての第2の死点に置かれたときのクランクシャフト45aの位置が、キャンバの付与を終了する位置、すなわち、キャンバ付与終了位置として、かつ、キャンバの付与の解除を開始する位置、すなわち、キャンバ解除開始位置として設定される。
【0055】
前記キャンバ付与開始位置及びキャンバ解除終了位置によって第1のキャンバ位置が、前記キャンバ付与終了位置及びキャンバ解除開始位置によって第2のキャンバ位置が構成される。
【0056】
なお、本実施の形態においては、第1のクランク位置として、かつ、初期位置として、第1の死点が、第2のクランク位置として第2の死点が選択されるようになっているが、第1のクランク位置として、かつ、初期位置として、第1の死点以外の他の位置を、第2のクランク位置として、第2の死点以外の他の位置を選択することができる。
【0057】
次に、前記構成の車両の制御装置について説明する。
【0058】
図8は本発明の実施の形態における車両の制御ブロック図、
図9は本発明の実施の形態におけるクランク角とキャンバ角との関係図である。なお、
図9において、横軸にクランク角CLを、縦軸にキャンバ角θを採ってある。
【0059】
図において、16はキャンバの付与及び付与の解除の制御を行い、コンピュータとして機能し、各種のデータに基づいて各種の演算及び処理を行う制御装置としての制御部、31、32はアクチュエータ、40はアクチュエータ31に配設されたモータ(ML)、41はアクチュエータ32に配設された前記モータ(MR)、61は第1の記憶部としてのROM、62は第2の記憶部としてのRAMである。前記モータ40、41はDCモータから成り、正方向及び逆方向に駆動可能にされ、モータ40、41を駆動することによって、車輪WLB、WRBにキャンバを付与したり、キャンバの付与を解除したりすることができる。そして、前記モータ40、41によって第1、第2の駆動部が構成される。
【0060】
また、63は車速を検出する車速検出部としての車速センサ、64は前記ステアリングホイール13(
図4)のステアリング角度を検出する操舵検出部としてのステアリングセンサ、65は車両のヨーレートを検出するヨーレート検出部としてのヨーレートセンサ、66は横加速度(横G)を検出する第1の加速度検出部としての横加速度センサ、67は前後加速度(前後G)を検出する第2の加速度検出部としての前後加速度センサ、71は操作者である運転者によるアクセルペダル14の踏込量、すなわち、アクセルストロークを検出する加速操作量検出部としてのアクセルストロークセンサ、72は運転者によるブレーキペダル15の踏込量、すなわち、ブレーキストロークを検出する制動操作量検出部としてのブレーキストロークセンサである。
【0061】
そして、74はモータ40を駆動するための駆動回路、75は前記アクチュエータ31におけるクランクシャフト45a(
図7)のクランク角CLを検出する角度センサ、76はモータ41を駆動するための駆動回路、77は前記アクチュエータ32におけるクランクシャフト45aのクランク角CLを検出する角度センサである。なお、角度センサ75によって第1の角度検出部が、角度センサ77によって第2の角度検出部が構成され、本実施の形態においては、角度センサ75、77として磁気式非接触型のセンサが使用される。
【0062】
この場合、前記クランクシャフト45aをキャンバ付与開始位置(キャンバ解除開始位置)とキャンバ付与終了位置(キャンバ解除終了位置)との間で回転させたときに、角度センサ75、77の回転検出要素としての図示されないコアが回転させられる範囲が、角度センサ75、77の稼動範囲とされる。
【0063】
前記ボディ11、制御部16、アクチュエータ31、32、車輪WLB、WRB等によってキャンバシステム及びキャンバ制御装置が構成される。
【0064】
そして、モータ40、41をそれぞれ正方向及び逆方向に駆動して、クランクシャフト45aをキャンバ付与開始位置からキャンバ付与終了位置まで回転させると、車輪WLB、WRBにキャンバを付与することができる。この間、
図9に示されるように、クランク角CLは0〔°〕から180〔°〕に向けて大きくなり、それに伴って、車輪WLB、WRBに付与されるキャンバのキャンバ角θも大きくなる。該キャンバ角θの変化率δθは、クランク角CLが0〔°〕から中間位置である90〔°〕になるまでは、徐々に大きくされ、クランク角CLが90〔°〕から180〔°〕になるまでは、徐々に小さくされる。
【0065】
また、モータ40、41をそれぞれ逆方向及び正方向に駆動して、クランクシャフト45aをキャンバ解除開始位置からキャンバ解除終了位置まで回転させると、車輪WLB、WRBに付与されたキャンバを解除することができる。この間、クランク角CLは180〔°〕から0〔°〕に向けて小さくなり、それに伴って、車輪WLB、WRBに付与されるキャンバのキャンバ角θも小さくなる。該キャンバ角θの変化率δθは、クランク角CLが180〔°〕から90〔°〕になるまでは、徐々に大きくされ、クランク角CLが90〔°〕から0〔°〕になるまでは、徐々に小さくされる。
【0066】
なお、クランク角CL及びキャンバ角θは、互いに対応させてROM61にあらかじめ角度マップとして記録され、前記制御部16の図示されないキャンバ角算出(検出)処理手段は、キャンバ角算出(検出)処理を行い、前記角度マップを参照して、クランク角CLに対応するキャンバ角θを読み出す(検出する。)。本実施の形態においては、キャンバ角θをクランク角CLに基づいて算出するようになっているが、キャンバ角検出部として所定のセンサを配設し、該センサによってキャンバ角θを直接検出することができる。
【0067】
前記構成の車両において、前記制御部16の図示されないキャンバ制御処理手段は、キャンバ制御処理を行い、運転者によるアクセルペダル14、ブレーキペダル15、ステアリングホイール13等の操作量、すなわち、アクセルストロークセンサ71によって検出されたアクセルストローク、ブレーキストロークセンサ72によって検出されたブレーキストローク、ステアリングセンサ64によって検出されたステアリング角度等の車両の操作状態を第1の判定指標として、車速センサ63によって検出された車速、横加速度センサ66によって検出された横加速度、前後加速度センサ67によって検出された前後加速度、ヨーレートセンサ65によって検出されたヨーレート等の車両の走行状態を第2の判定指標として読み込み、第1、第2の判定指標のうちの所定の判定指標が一定の条件を満たす場合に、キャンバ付与条件が成立したと判断し、車輪WLB、WRBに負の(ネガティブ)キャンバ角θのキャンバを付与し、車両の走行安定性及び旋回安定性を高くする。
【0068】
そして、所定の判定指標が他の一定の条件を満たす場合に、キャンバ制御処理手段はキャンバ解除条件が成立したと判断し、車輪WLB、WRBにおけるキャンバの付与を解除する。
【0069】
なお、車輪WLB、WRBに付与されるキャンバのキャンバ角θは、車両ごとにあらかじめ設定された、定常状態におけるキャンバ角をαとすると、
−5〔°〕≦θ<α〔°〕
にされる。
【0070】
このとき、車輪WLB、WRBにキャンバθが付与されるのに伴って、車輪WLB、WRBのタイヤ36に互いに対向する方向にキャンバスラストが発生する。したがって、車両の復元力が大きくなるので、タイヤ36として低転がり抵抗タイヤが使用されても、車両の走行安定性を高くすることができる。
【0071】
また、車両を左方向に旋回させる場合は、車両に遠心力が発生するので、外周側の車輪WRB(外輪)の接地荷重が大きくなり、車輪WRBのタイヤ36に発生するキャンバスラストが内周側の車輪WLB(内輪)のタイヤ36に発生するキャンバスラストより大きくなる。そして、車両を右方向に旋回させる場合は、外周側の車輪WLB(外輪)の接地荷重が大きくなり、車輪WLBのタイヤ36に発生するキャンバスラストが内周側の車輪WRB(内輪)のタイヤ36に発生するキャンバスラストより大きくなる。したがって、車両に十分な求心力を発生させることができるので、タイヤ36として低転がり抵抗タイヤが使用されても、車両の旋回安定性を高くすることができる。
【0072】
次に、前記角度センサ75、77の動作について説明する。
【0073】
図10は本発明の実施の形態における左後方の車輪にキャンバを付与するためのアクチュエータの平面図、
図11は本発明の実施の形態における右後方の車輪にキャンバを付与するためのアクチュエータの平面図である。
【0074】
図において、40、41はモータ、44は減速機、44aはケース、45はクランク機構、75、77は角度センサ、103はブラケット、104はアッパアームである。なお、矢印Aは車両の前方を表す。
【0075】
前記角度センサ75、77は、ケース75a、77a、前記クランクシャフト45a(
図7)と連結され、前記ケース75a、77aに対して回転自在に配設された前記コア、該コアに取り付けられた一対の図示されないマグネット、前記ケース75a、77aに取り付けられた固定検出要素としての図示されないホール素子、前記マグネットを挟んで前記ホール素子と対向させられる図示されないヨーク等を備え、クランクシャフト45aの回転に伴ってコアが回転させられると、コアの位置を表す絶対角度(センサ角度)に比例してホール素子の出力電圧が直線的に変化する。したがって、該出力電圧を読み取ることによって、クランク角CLを検出することができる。
【0076】
車輪WLBにキャンバを付与する場合、前記モータ40は正方向(車両の後方から見て時計回りの方向)に駆動され、角度センサ75のコアは逆方向CCW(車両の前方から見て反時計回りの方向)に回転させられ、車輪WLBに付与されたキャンバを解除する場合、前記モータ40は逆方向(車両の後方から見て反時計回りの方向)に駆動され、角度センサ75のコアは正方向CW(車両の前方から見て時計回りの方向)に回転させられる。また、車輪WRBにキャンバを付与する場合、前記モータ41は逆方向(車両の後方から見て反時計回りの方向)に駆動され、角度センサ77のコアは正方向CW(車両の前方から見て時計回りの方向)に回転させられ、車輪WRBに付与されたキャンバを解除する場合、前記モータ41は正方向(車両の後方から見て時計回りの方向)に駆動され、角度センサ77のコアは逆方向CCW(車両の前方から見て反時計回りの方向)に回転させられる。なお、角度センサ75、77はクランクシャフト45aと対向する面に、クランクシャフト45aの軸心部を差し込むための差込口を備え、クランクシャフト45aと対向する面側から回転が入力されるようになっているので、コアの回転方向は車両の前方から見たものとされる。
【0077】
ところで、キャンバシステムの製造時に、例えば、前記角度センサ75、77におけるクランク角CLの検出可能範囲が絶対角度で0〔°〕〜360〔°〕に設定されている場合、前記キャンバ付与開始位置(キャンバ解除開始位置)からキャンバ付与終了位置(キャンバ解除終了位置)までの角度センサ75、77の稼動範囲が検出可能範囲内に収まるように、クランク機構45に角度センサ75、77を取り付けようとすると、そのための作業が煩わしい。
【0078】
そこで、本実施の形態においては、角度センサ75、77におけるクランク角CLの検出可能範囲が設定されず、角度センサ75、77の稼動範囲を絶対角度の0〔°〕及び360〔°〕を跨(また)いで設定することができるようになっている。
【0079】
次に、角度センサ75、77の稼動範囲について説明する。この場合、角度センサ77の稼動範囲を設定する場合の制御部16の動作について説明する。
【0080】
図1は本発明の実施の形態における角度センサの稼動範囲の例を示す図である。なお、図において、横軸に角度センサ77の絶対角度Kを、縦軸に角度センサ77の出力電圧vを採ってある。
【0081】
図において、Psはキャンバ付与開始位置であり、かつ、キャンバ解除終了位置、Peはキャンバ付与終了位置であり、かつ、キャンバ解除開始位置である。
【0082】
角度センサ77においては、コアを回転させたときの出力電圧vが最小値vaになるコアの位置が絶対角度Kで0〔°〕に、出力電圧vが最大値vbになるコアの位置が絶対角度Kで360〔°〕にされ、コアの位置を変化させると、コアの位置の絶対角度Kに比例して出力電圧vが変化する。
【0083】
そして、前記クランクピン45bが第1の死点に置かれたクランク機構45に対して、回転方向における任意の取付位置で角度センサ77が取り付けられ、角度センサ77の稼動範囲が設定される。
【0084】
そのために、まず、クランク機構45に対して角度センサ77が取り付けられると、キャンバ付与開始位置Psでモータ41の駆動を開始するためのコアの位置が角度センサ77によって検出され、初期角として読み込まれ、初期値Ksとして設定される。
【0085】
続いて、キャンバ付与終了位置Peでモータ41の駆動を停止させるためのコアの位置が、前記初期値Ksに、前記稼動範囲を設定するための所定の角度、すなわち、稼動範囲設定角度(加算値)、本実施の形態においては、180〔°〕加算することによって、目標達成角Keとして算出される。なお、前記稼動範囲設定角度はあらかじめRAM62に記録される。
【0086】
例えば、
図1に示されるように、前記初期値Ksが絶対角度Kで225〔°〕である場合、目標達成角Keは、225〔°〕に180〔°〕加算することによって算出することができるが、算出される値、すなわち、暫定目標達成角Ke’は、
Ke’=225+180
=405〔°〕
になる。この場合、暫定目標達成角Ke’は360〔°〕より大きいので、暫定目標達成角Ke’が補正され、目標達成角Keは、
Ke=405−360
=45〔°〕
になる。なお、暫定目標達成角Ke’が360〔°〕以下である場合、暫定目標達成角Ke’が目標達成角Keになる。
【0087】
そして、前記初期値Ksが、角度センサ77に対するクランクシャフト45aの相対角度Krで0〔°〕に設定され、目標達成角Keが相対角度Krで180〔°〕に設定され、キャンバ付与開始位置Psとキャンバ付与終了位置Peとの間に角度センサ77の稼動範囲が設定される。この場合、暫定目標達成角Ke’は360〔°〕より大きいので、角度センサ77の稼動範囲は絶対角度Kの0〔°〕及び360〔°〕を跨いで設定される。
【0088】
したがって、角度センサ77によって、相対角度Krが、
0〔°〕≦Kr≦180〔°〕
の値を採る稼動範囲でクランク角CLを検出することができる。
【0089】
なお、前記初期値Ksは車輪WRBへのキャンバの付与を開始するための角度であり、前記目標達成角Keは車輪WRBへのキャンバの付与を終了するための角度である。また、本実施の形態においては、現在角Kpが初期値Ksとして設定されるようになっているが、現在角Kpに所定の角度(調整値)を加算したり、現在角Kpから所定の角度(調整値)を減算したりすることによって初期値Ksを設定することができる。
【0090】
ところで、本実施の形態においては、前記車輪WRBにキャンバを付与する場合、モータ41が逆方向に駆動され、クランクシャフト45aがキャンバ付与開始位置Psからキャンバ付与終了位置Peまで逆方向に回転させられ、車輪WRBに付与されたキャンバを解除する場合、モータ41が正方向に駆動され、クランクシャフト45aが前記キャンバ付与終了位置Peからキャンバ付与開始位置Psまで正方向に回転させられるようになっているが、前記車輪WRBにキャンバを付与する場合、モータ41を正方向に駆動し、クランクシャフト45aを正方向に回転させ、車輪WRBに付与されたキャンバを解除する場合に、モータ41を逆方向に駆動し、クランクシャフト45aを逆方向に回転させることもできる。
【0091】
すなわち、本実施の形態においては、前記設定された稼動範囲外においても、クランク角CLを検出することができるようになっている。そのために、前記稼動範囲外において、前記初期値Ksと目標達成角Keとの間の所定の位置、本実施の形態においては、中間の位置を表す中間角度Km
Km=90〔°〕
が設定され、RAM62に記録され、前記中間角度Kmに基づいて、相対角度Krにおける正負の境界となる符号境界角Kcが設定される。
【0092】
この場合、目標達成角Ke及び中間角度Kmに基づいて暫定符号境界角Kc’
Kc’=Ke+Km
=Ks+Km+180〔°〕
が算出されるが、暫定符号境界角Kc’が360〔°〕より大きい場合、暫定符号境界角Kcが補正され、符号境界角Kcは、
Kc=Kc’−360〔°〕
になる。なお、暫定符号境界角Kc’が360〔°〕以下である場合、暫定符号境界角Kc’が符号境界角Kcになる。
【0093】
ところで、前記稼動範囲外において、前記初期値Ksより負の方向に90〔°〕離れた位置、及び目標達成角Keより正の方向に270〔°〕離れた位置に、符号境界角Kc
Kc=−90、270〔°〕
を設定すると、符号境界角Kcが重複して形成されることになる。
【0094】
そこで、−90、270〔°〕のうちの一方、本実施の形態においては、−90〔°〕を角度センサ77の分解能に応じて異ならせ、符号境界角Kc
Kc=−89、270〔°〕
を設定するようにしている。
【0095】
したがって、角度センサ77によって、相対角度Krが、
−89〔°〕≦Kr<0〔°〕
の負の値、及び
180〔°〕<Kr≦270〔°〕
の正の値を採る角度センサ77の稼動範囲外において、クランク角CLを検出することができる。この場合、角度センサ77によって検出される絶対角度Kの分解能に応じて符号境界角Kc
Kc=−90、269〔°〕
を設定することもできる。
【0096】
次に、角度センサ77の稼動範囲を設定し、前記稼動範囲内及び稼動範囲外において、角度センサ77によって検出された現在角Kpに基づいて、クランク角CLを相対角度Krで検出する方法について説明する。
【0097】
図12は本発明の実施の形態における角度センサの稼動範囲を説明するための第1の図、
図13は本発明の実施の形態における角度センサの稼動範囲を説明するための第2の図、
図14は本発明の実施の形態における角度センサの稼動範囲を説明するための第3の図、
図15は本発明の実施の形態における角度センサの稼動範囲を説明するための第4の図、
図16は本発明の実施の形態における角度センサの稼動範囲を説明するための第5の図、
図17は本発明の実施の形態における角度センサの稼動範囲を説明するための第6の図である。
【0098】
図12は、モータ41が逆方向に駆動され、角度センサ77のコアが正方向CWに回転させられ、センサ検出方向が正方向であるときに、角度センサ77によって検出された現在角Kpが絶対角度Kで225〔°〕である例を表す。この場合、初期値Ksが絶対角度Kで225〔°〕になり、目標達成角Keが45〔°〕になり、角度センサ77の稼動範囲が360〔°〕を跨ぐことになる。そして、符号境界角Kcは絶対角度Kで135〔°〕になり、360〔°〕を超える。
【0099】
この場合、表1に示されるように、現在角Kpが、
0〔°〕≦Kp≦Kc
の条件を満たす第1の領域AR1において、現在角Kpを相対角度Krで表すと、相対角度Krは、
Kr=Kp+(360〔°〕−Ks)
になり、現在角Kpが、
Ks≦Kp≦360〔°〕
の条件を満たす第2の領域AR2において、現在角Kpを相対角度Krで表すと、相対角度Krは、
Kr=Kp−Ks
になり、現在角Kpが、
Kc<Kp<Ks
の条件を満たす第3の領域AR3において、現在角Kpを相対角度Krで表すと、相対角度Krは、
Kr=Kp−Ks
になる。
【0101】
図13は、センサ検出方向が正方向であるときに、角度センサ77によって検出された現在角Kpが絶対角度Kで45〔°〕である例を表す。この場合、初期値Ksが絶対角度Kで45〔°〕になり、目標達成角Keが225〔°〕になり、角度センサ77の稼動範囲が360〔°〕を跨がない。そして、符号境界角Kcは絶対角度Kで315〔°〕になり、360〔°〕を超えない。
【0102】
この場合、表2に示されるように、現在角Kpが、
0〔°〕≦Kp≦Ks
の条件を満たす第1の領域AR1において、現在角Kpを相対角度Krで表すと、相対角度Krは、
Kr=Kp−Ks
になり、現在角Kpが、
Kc≦Kp≦360〔°〕
の条件を満たす第2の領域AR2において、現在角Kpを相対角度Krで表すと、相対角度Krは、
Kr=(Kp−360〔°〕)−Ks
になり、現在角Kpが、
Ks<Kp<Kc
の条件を満たす第3の領域AR3において、現在角Kpを相対角度Krで表すと、相対角度Krは、
Kr=Kp−Ks
になる。
【0104】
図14は、センサ検出方向が正方向であるときに、角度センサ77によって検出された現在角Kpが絶対角度Kで135〔°〕である例を表す。この場合、初期値Ksが絶対角度Kで135〔°〕になり、目標達成角Keが315〔°〕になり、角度センサ77の稼動範囲は360〔°〕を跨がない。そして、符号境界角Kcは絶対角度Kで45〔°〕になり、360〔°〕を超える。
【0105】
この場合、表3に示されるように、現在角Kpが、
Ks≦Kp≦360〔°〕
の条件を満たす第1の領域AR1において、現在角Kpを相対角度Krで表すと、相対角度Krは、
Kr=Kp−Ks
になり、現在角Kpが、
0〔°〕≦Kp≦Kc
の条件を満たす第2の領域AR2において、現在角Kpを相対角度Krで表すと、相対角度Krは、
Kr=Kp+(360〔°〕−Ks)
になり、現在角Kpが、
Kc<Kp<Ks
の条件を満たす第3の領域AR3において、現在角Kpを相対角度Krで表すと、相対角度Krは、
Kr=Kp−Ks
になる。
【0107】
図15は、モータ41が正方向に駆動され、角度センサ77のコアが逆方向CCWに回転させられ、センサ検出方向が逆方向であるときに、角度センサ77によって検出された現在角Kpが絶対角度Kで45〔°〕である例を表す。この場合、初期値Ksが絶対角度Kで45〔°〕になり、目標達成角Keが225〔°〕になり、角度センサ77の稼動範囲が360〔°〕を跨ぐ。そして、符号境界角Kcは絶対角度Kで135〔°〕になり、0〔°〕を超えない。
【0108】
この場合、表4に示されるように、現在角Kpが、
0〔°〕≦Kp≦Ks
の条件を満たす第1の領域AR1において、現在角Kpを相対角度Krで表すと、相対角度Krは、
Kr=Ks−Kp
になり、現在角Kpが、
Kc≦Kp≦360〔°〕
の条件を満たす第2の領域AR2において、現在角Kpを相対角度Krで表すと、相対角度Krは、
Kr=Ks+(360〔°〕−Kp)
になり、現在角Kpが、
Ks<Kp<Kc
の条件を満たす第3の領域AR3において、現在角Kpを相対角度Krで表すと、相対角度Krは、
Kr=Ks−Kp
になる。
【0110】
図16は、センサ検出方向が逆方向であるときに、角度センサ77によって検出された現在角Kpが絶対角度Kで315〔°〕である例を表す。この場合、初期値Ksが絶対角度Kで315〔°〕になり、目標達成角Keが135〔°〕になり、角度センサ77の稼動範囲は360〔°〕を跨がない。そして、符号境界角Kcは絶対角度Kで45〔°〕になり、0〔°〕を超えない。
【0111】
この場合、表5に示されるように、現在角Kpが、
Ks≦Kp≦360〔°〕
の条件を満たす第1の領域AR1において、現在角Kpを相対角度Krで表すと、相対角度Krは、
Kr=Ks−Kp
になり、現在角Kpが、
0〔°〕≦Kp≦Kc
の条件を満たす第2の領域AR2において、現在角Kpを相対角度Krで表すと、相対角度Krは、
Kr=(Ks−360〔°〕)−Kp
になり、現在角Kpが、
Kc<Kp<Ks
の条件を満たす第3の領域AR3において、現在角Kpを相対角度Krで表すと、相対角度Krは、
Kr=Ks−Kp
になる。
【0113】
図17は、センサ検出方向が逆方向であるときに、角度センサ77によって検出された現在角Kpが絶対角度Kで225〔°〕である例を表す。この場合、初期値Ksが絶対角度Kで225〔°〕になり、目標達成角Keが45〔°〕になり、角度センサ77の稼動範囲は360〔°〕を跨がない。そして、符号境界角Kcは絶対角度Kで315〔°〕になり、0〔°〕を超える。
【0114】
この場合、表6に示されるように、現在角Kpが、
0〔°〕≦Kp≦Ks
の条件を満たす第1の領域AR1において、現在角Kpを相対角度Krで表すと、相対角度Krは、
Kr=Ks−Kp
になり、現在角Kpが、
Kc≦Kp≦360〔°〕
の条件を満たす第2の領域AR2において、現在角Kpを相対角度Krで表すと、相対角度Krは、
Kr=Ks+(360〔°〕−Kp)
になり、現在角Kpが、
Ks<Kp<Kc
の条件を満たす第3の領域AR3において、現在角Kpを相対角度Krで表すと、相対角度Krは、
Kr=Ks−Kp
になる。
【0116】
次に、角度センサ77によって検出された現在角Kpに基づいて、クランク角CLを相対角度Krで検出する際の制御部16の動作について説明する。
【0117】
図18は本発明の実施の形態における制御部の動作を示すメインフローチャートである。
【0118】
まず、制御部16の図示されない稼動範囲設定処理手段は、稼動範囲設定処理を行い、角度センサ77の稼動範囲を設定する(ステップS1)。そのために、前記稼動範囲設定処理手段の初期角取得処理手段は、初期角取得処理を行い、クランクピン45b(
図7)が第1の死点に置かれた状態で、角度センサ77によって検出された絶対角度Kを初期角として読み込む(取得する。)。
【0119】
続いて、前記稼動範囲設定処理手段の初期値設定処理手段は、初期値設定処理を行い、前記初期角を初期値Ksとして設定し、RAM62に記録する。
【0120】
そして、前記稼動範囲設定処理手段の目標達成角算出処理手段は、目標達成角算出処理を行い、RAM62から初期値Ks及び稼動範囲設定角度を読み出し、初期値Ks及び稼動範囲設定角度に基づいて目標達成角Keを算出し、設定する。該目標達成角Keは、センサ検出方向が正方向である場合、
Ke=Ks+180〔°〕
になり、センサ検出方向が逆方向である場合、
Ke=Ks−180〔°〕
になる。なお、前記暫定目標達成角Ke’が360〔°〕より大きい場合、又は0〔°〕より小さい場合、前記目標達成角算出処理手段は、暫定目標達成角Ke’を補正し、目標達成角Keを算出する。
【0121】
また、前記初期値設定処理手段及び目標達成角算出処理手段によって角度設定処理手段が構成され、該角度設定処理手段は、角度設定処理を行い、初期値Ks及び目標達成角Keを設定する。
【0122】
次に、前記制御部16の図示されない符号境界角設定処理手段は、符号境界角設定処理を行い、RAM62から目標達成角Ke及び中間角度Kmを読み出し、符号境界角Kc
Kc=−89、270〔°〕
を設定する(ステップS2)。
【0123】
続いて、前記制御部16の図示されない駆動開始処理手段は、駆動開始処理を行い、モータ41の駆動を開始し、クランクシャフト45aを回転させる。
【0124】
そして、前記制御部16の図示されないの現在角取得処理手段は、現在角取得処理を行い、回転させられているクランクシャフト45aのクランク角CLを角度センサ77によって現在角Kpとして検出し、取得し、RAM62に記録する(ステップS3)。
【0125】
この場合、角度センサ77によって検出された現在角Kpが0〔°〕である場合、360〔°〕と区別がつかないので、前記現在角取得処理手段の境界判断処理手段は、境界判断処理を行い、現在角Kpが絶対角度Kで0〔°〕側であるか、又は360〔°〕側であるかどうかを判断する。そのために、前記境界判断処理手段は、コアの回転に伴って、絶対角度Kが0〔°〕又は360〔°〕に近づき、所定の範囲内に入ると、複数の現在角Kpを読み込み、0〔°〕側の現在角Kpのデータ数と360〔°〕側の現在角Kpのデータ数とを比較し、データ数の大きい方を採用する。
【0126】
続いて、制御部16の図示されないセンサ検出方向判断処理手段は、センサ検出方向判断処理を行い、センサ検出方向が正方向であるかどうかを判断し(ステップS4)、センサ検出方向が正方向である場合、制御部16の図示されない正方向相対角度算出処理手段は、正方向相対角度算出処理を行い、センサ検出方向が正方向である場合の相対角度Krを算出し(ステップS5)、センサ検出方向が正方向でない場合、センサ検出方向が逆方向であるかどうかを判断し(ステップS6)、センサ検出方向が逆方向である場合、制御部16の図示されない逆方向相対角度算出処理手段は、逆方向相対角度算出処理を行い、センサ検出方向が逆方向である場合の相対角度Krを算出し(ステップS7)、センサ検出方向が逆方向でない場合は、処理を終了する。
【0127】
続いて、前記符号境界角設定処理手段の動作について説明する。
【0128】
図19は本発明の実施の形態における符号境界角設定処理のサブルーチンを示す第1の図、
図20は本発明の実施の形態における符号境界角設定処理のサブルーチンを示す第2の図である。
【0129】
まず、前記符号境界角設定処理手段の中間角度設定処理手段は、中間角度設定処理を行い、中間角度Km
Km=90〔°〕
を設定する(ステップS2−1)。
【0130】
続いて、前記符号境界角設定処理手段のセンサ検出方向判断処理手段は、センサ検出方向判断処理を行い、センサ検出方向が正方向であるかどうかを判断し(ステップS2−2)、センサ検出方向が正方向である場合、前記符号境界角設定処理手段の暫定符号境界角算出処理手段は、暫定符号境界角算出処理を行い、初期値Ks及び中間角度Kmに基づいて暫定符号境界角Kc’
Kc’=Ks+Km+180〔°〕
を算出し(ステップS2−3)、前記符号境界角設定処理手段の暫定符号境界角判断処理手段は、暫定符号境界角判断処理を行い、暫定符号境界角Kc’が360〔°〕より大きいかどうかを判断する(ステップS2−4)。
【0131】
暫定符号境界角Kc’が360〔°〕より大きい場合、前記符号境界角設定処理手段の符号境界角決定処理手段は、符号境界角決定処理を行い、暫定符号境界角Kc’を補正し、符号境界角Kcを
Kc=Kc’−360〔°〕
に決定し(ステップS2−5)、RAM62に記録するとともに、境界オーバーフラグをオンにし(ステップS2−6)、暫定符号境界角Kc’が360〔°〕以下である場合、符号境界角決定処理手段は、暫定符号境界角Kc’を符号境界角Kcとし(ステップS2−7)、RAM62に記録するとともに、境界オーバーフラグをオフにする(ステップS2−8)。
【0132】
なお、境界オーバーフラグは符号境界角Kcが360〔°〕を超えるかどうかを表し、符号境界角Kcが360〔°〕を超える場合、オンに、超えない場合、オフにされる。
【0133】
前記センサ検出方向判断処理において、センサ検出方向が正方向で正方向でないと判断された場合、前記センサ検出方向判断処理手段は、センサ検出方向が逆方向であるかどうかを判断し(ステップS2−9)、センサ検出方向が逆方向である場合、前記暫定符号境界角算出処理手段は、初期値Ks及び中間角度Kmに基づいて暫定符号境界角Kc’
Kc’=Ks−Km−180〔°〕
を算出し(ステップS2−10)、前記暫定符号境界角判断処理手段は、暫定符号境界角Kc’が0〔°〕より小さいかどうかを判断する(ステップS2−11)。
【0134】
暫定符号境界角Kc’が0〔°〕より小さい場合、前記符号境界角決定処理手段は、暫定符号境界角Kc’を補正し、符号境界角Kcを
Kc=Kc’+360〔°〕
に決定し(ステップS2−12)、境界オーバーフラグをオンにし(ステップS2−13)、暫定符号境界角Kc’が0〔°〕以上である場合、符号境界角決定処理手段は、暫定符号境界角Kc’を符号境界角Kcとし(ステップS2−14)、境界オーバーフラグをオフにする(ステップS2−15)。
【0135】
次に、前記正方向相対角度算出処理について説明する。
【0136】
図21は本発明の実施の形態における正方向相対角度算出処理のサブルーチンを示す第1の図、
図22は本発明の実施の形態における正方向相対角度算出処理のサブルーチンを示す第2の図、
図23は本発明の実施の形態における正方向相対角度算出処理のサブルーチンを示す第3の図である。
【0137】
まず、正方向相対角度算出処理手段の角度取得処理手段は、角度取得処理を行い、RAM62から現在角Kp、初期値Ks、目標達成角Ke及び符号境界角Kcを読み出し、取得する(ステップS5−1)。
【0138】
続いて、前記正方向相対角度算出処理手段の跨ぎ判断処理手段は、跨ぎ判断処理を行い、目標達成角Keが360〔°〕より大きいかどうかによって、角度センサ77の稼動範囲が360〔°〕を跨ぐかどうかを判断し(ステップS5−2)、目標達成角度Keが360〔°〕より大きく、角度センサ77の稼動範囲が360〔°〕を跨ぐ場合、前記正方向相対角度算出処理手段の領域判断処理手段は、領域判断処理を行い、現在角Kpが、
0〔°〕≦Kp≦Kc
の条件を満たす
図12における第1の領域AR1内に存在するかどうかを判断し(ステップS5−3)、現在角Kpが第1の領域AR1内に存在する場合、前記正方向相対角度算出処理手段の回転角度算出処理手段としての相対角度算出処理手段は、回転角度算出処理としての相対角度算出処理を行い、現在角Kpに基づいて、クランク角CLの稼動範囲に対する相対角度Kr
Kr=Kp+(360〔°〕−Ks)
を算出する(ステップS5−4)。
【0139】
また、現在角Kpが第1の領域AR1内に存在しない場合、前記領域判断処理手段は、現在角Kpが、
Ks≦Kp≦360〔°〕
の条件を満たす
図12における第2の領域AR2内に存在するかどうかを判断し(ステップS5−5)、現在角Kpが第2の領域AR2内に存在する場合、前記相対角度算出処理手段は、相対角度Kr
Kr=Kp−Ks
を算出する(ステップS5−6)。
【0140】
そして、現在角Kpが前記第2の領域AR2内に存在せず、
Kc<Kp<Ks
の条件を満たす
図12における第3の領域AR3内に存在する場合、前記相対角度算出処理手段は、相対角度Kr
Kr=Kp−Ks
を算出する(ステップS5−7)。
【0141】
また、前記跨ぎ判断処理において、目標達成角度Keが360〔°〕以下であり、角度センサ77の稼動範囲が360〔°〕を跨がないと判断された場合、前記正方向相対角度算出処理手段の境界オーバーフラグ判断処理手段は、境界オーバーフラグ判断処理を行い、境界オーバーフラグがオフであるかどうかによって、符号境界角Kcが360〔°〕を超えないかどうかを判断し(ステップS5−8)、境界オーバーフラグがオフであり、符号境界角Kcが360〔°〕を超えない場合、前記領域判断処理手段は、現在角Kpが、
0〔°〕≦Kp≦Ks
の条件を満たす
図13の第1の領域AR1内に存在するかどうかを判断し(ステップS5−9)、現在角Kpが第1の領域AR1内に存在する場合、前記相対角度算出処理手段は、相対角度Kr
Kr=Kp−Ks
を算出する(ステップS5−10)。
【0142】
そして、現在角Kpが前記第1の領域AR1内に存在しない場合、前記領域判断処理手段は、現在角Kpが、
Kc≦Kp≦360〔°〕
の条件を満たす
図13の第2の領域AR2内に存在するかどうかを判断し(ステップS5−11)、現在角Kpが前記第2の領域AR2内に存在する場合、前記相対角度算出処理手段は、相対角度Kr
Kr=(Kp−360〔°〕)−Ks
を算出する(ステップS5−12)。
【0143】
そして、現在角Kpが前記第2の領域AR2内に存在せず、
Ks<Kp<Kc
の条件を満たす
図13の第3の領域AR3内に存在する場合、前記相対角度算出処理手段は、相対角度Kr
Kr=Kp−Ks
を算出する(ステップS5−13)。
【0144】
また、前記境界オーバーフラグ判断処理において、境界オーバーフラグがオンであり、符号境界角Kcが360〔°〕を超えると判断された場合、前記領域判断処理手段は、現在角Kpが、
Ks≦Kp≦360〔°〕
の条件を満たす
図14の第1の領域AR1内に存在するかどうかを判断し(ステップS5−14)、現在角Kpが第1の領域AR1内に存在する場合、前記相対角度算出処理手段は、相対角度Kr
Kr=Kp−Ks
を算出する(ステップS5−15)。
【0145】
そして、現在角Kpが第1の領域AR1内に存在しない場合、前記領域判断処理手段は、現在角Kpが、
0〔°〕≦Kp≦Kc
の条件を満たす
図14の第2の領域AR2内に存在するかどうかを判断し(ステップS5−16)、現在角Kpが第2の領域AR2内に存在する場合、前記相対角度算出処理手段は、相対角度Kr
Kr=Kp+(360〔°〕−Ks)
を算出する(ステップS5−17)。
【0146】
また、現在角Kpが前記第2の領域AR2内に存在せず、
Kc<Kp<Ks
の条件を満たす
図14の第3の領域AR3内に存在する場合、前記相対角度算出処理手段は、相対角度Kr
Kr=Kp−Ks
を算出する(ステップS5−18)。
【0147】
次に、前記逆方向相対角度算出処理について説明する。
【0148】
図24は本発明の実施の形態における逆方向相対角度算出処理のサブルーチンを示す第1の図、
図25は本発明の実施の形態における逆方向相対角度算出処理のサブルーチンを示す第2の図、
図26は本発明の実施の形態における逆方向相対角度算出処理のサブルーチンを示す第3の図である。
【0149】
まず、逆方向相対角度算出処理手段の角度取得処理手段は、角度取得処理を行い、RAM62から現在角Kp、初期値Ks、目標達成角Ke及び符号境界角Kcを読み出し、取得する(ステップS7−1)。
【0150】
続いて、前記逆方向相対角度算出処理手段の跨ぎ判断処理手段は、跨ぎ判断処理を行い、目標達成角Keが0〔°〕より小さいかどうかによって、角度センサ77の稼動範囲が0〔°〕を跨ぐかどうかを判断し(ステップS7−2)、目標達成角度Keが0〔°〕より小さく、角度センサ77の稼動範囲が0〔°〕を跨ぐ場合、前記逆方向相対角度算出処理手段の領域判断処理手段は、領域判断処理を行い、現在角Kpが、
0〔°〕≦Kp≦Ks
の条件を満たす
図15の第1の領域AR1内に存在するかどうかを判断し(ステップS7−3)、現在角Kpが第1の領域AR1内に存在する場合、前記逆方向相対角度算出処理手段の回転角度算出処理手段としての相対角度算出処理手段は、回転角度算出処理としての相対角度算出処理を行い、相対角度Kr
Kr=Ks−Kp
を算出する(ステップS7−4)。
【0151】
そして、現在角Kpが第1の領域AR1内に存在しない場合、前記領域判断処理手段は、現在角Kpが、
Kc≦Kp≦360〔°〕
の条件を満たす
図15の第2の領域AR2内に存在するかどうかを判断し(ステップS7−5)、現在角Kpが第2の領域AR2内に存在する場合、前記相対角度算出処理手段は、相対角度Kr
Kr=Ks+(360〔°〕−Kp)
を算出する(ステップS7−6)。
【0152】
また、現在角Kpが前記第2の領域AR2内に存在せず、
Ks<Kp<Kc
の条件を満たす
図15の第3の領域AR3内に存在する場合、前記相対角度算出処理手段は、相対角度Kr
Kr=Ks−Kp
を算出する(ステップS7−7)。
【0153】
次に、前記跨ぎ判断処理において、目標達成角度Keが0〔°〕以上であり、角度センサ77の稼動範囲が0〔°〕を跨がないと判断された場合、前記逆方向相対角度算出処理手段の境界オーバーフラグ判断処理手段は、境界オーバーフラグ判断処理を行い、境界オーバーフラグがオフであるかどうかによって、符号境界角Kcが0〔°〕を超えないかどうかを判断し(ステップS7−8)、境界オーバーフラグがオフであり、符号境界角Kcが0〔°〕を超えない場合、前記領域判断処理手段は、現在角Kpが、
Ks≦Kp≦360〔°〕
の条件を満たす
図16の第1の領域AR1内に存在するかどうかを判断し(ステップS7−9)、現在角Kpが第1の領域AR1内に存在する場合、前記相対角度算出処理手段は、相対角度Kr
Kr=Ks−Kp
を算出する(ステップS7−10)。
【0154】
そして、現在角Kpが第1の領域AR1内に存在しない場合、前記領域判断処理手段は、現在角Kpが、
0〔°〕≦Kp≦Kc
の条件を満たす
図16の第2の領域AR2内に存在するかどうかを判断し(ステップS7−11)、現在角Kpが第2の領域AR2内に存在する場合、前記相対角度算出処理手段は、相対角度Kr
Kr=(Ks−360〔°〕)−Kp
を算出する(ステップS7−12)。
【0155】
また、現在角Kpが前記第2の領域AR2内に存在せず、
Kc<Kp<Ks
の条件を満たす
図16の第3の領域AR3内に存在する場合、前記相対角度算出処理手段は、相対角度Kr
Kr=Ks−Kp
を算出する(ステップS7−13)。
【0156】
そして、前記境界オーバーフラグ判断処理において、境界オーバーフラグがオンであり、符号境界角Kcが0〔°〕を超えると判断された場合、前記領域判断処理手段は、現在角Kpが、
0〔°〕≦Kp≦Ks
の条件を満たす
図17の第1の領域AR1内に存在するかどうかを判断し(ステップS7−14)、現在角Kpが第1の領域AR1内に存在する場合、前記相対角度算出処理手段は、相対角度Kr
Kr=Ks−Kp
を算出する(ステップS7−15)。
【0157】
また、現在角Kpが第1の領域AR1内に存在しない場合、前記領域判断処理手段は、現在角Kpが、
Kc≦Kp≦360〔°〕
の条件を満たす
図17の第2の領域AR2内に存在するかどうかを判断し(ステップS7−16)、現在角Kpが第2の領域AR2内に存在する場合、前記相対角度算出処理手段は、相対角度Kr
Kr=Ks+(360〔°〕−Kp)
を算出する(ステップS7−17)。
【0158】
そして、現在角Kpが前記第2の領域AR2内に存在せず、
Ks<Kp<Kc
の条件を満たす
図17の第3の領域AR3内に存在する場合、前記相対角度算出処理手段は、相対角度Kr
Kr=Ks−Kp
を算出する(ステップS7−18)。
【0159】
このように、本実施の形態においては、角度センサ77によって検出された現在角Kpに基づいて初期値Ks及び目標達成角Keが設定され、初期値Ks及び目標達成角Keに基づいて、角度センサ77の稼動範囲が設定され、現在角Kpに基づいて、クランク機構45のクランク角CLが角度センサ77の稼動範囲に対する相対角度Krで算出されるので、角度センサ77が、回転方向における任意の取付位置でクランク機構45に取り付けられても、クランク機構45のクランク角CLを相対角度Krで確実に検出することができる。したがって、クランク機構45に角度センサ77を取り付けるための作業を簡素化することができる。
【0160】
前記実施の形態においては、角度センサ77の稼動範囲を設定する場合の制御部16の動作について説明したが、角度センサ75の稼動範囲についても同様に設定される。その場合、モータ40の駆動方向はモータ41の駆動方向と反対になり、角度センサ75におけるコアの回転方向は角度センサ77におけるコアの回転方向と反対になる。
【0161】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。