【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2に記された粘弾性樹脂成形品の成形方法では、多数の筒状型を同時に搬送する複数のゾーンを設ける必要があるため、仮に各ゾーンを環状に連続配置した場合でも、製造ラインが大きな占有面積を必要とする傾向があった。しかも、製造ラインの製造能力を高めるためには、筒状型の数を増す必要があるため、個々のゾーンも大型化する必要があった。また、外径または長さなど形状の異なる複数種類の粘弾性樹脂成形品を製造するためには、互いに形状の異なる多数の筒状型を別途用意しておく必要があるという問題も見られた。さらに、基本的に各ゾーンには粘弾性樹脂を処理中の複数の筒状型が存在するため、粘弾性樹脂成形品の形状変更が必要な場合には、全ての筒状型が入れ替わるまでには、最初の圧入ゾーンにあった筒状型が順次移動して最後の脱型ゾーンで処理を受けるまでの長い時間が必要であった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術による粘弾性樹脂成形品の連続成形方法が与える課題に鑑み、製造ラインの占有面積が比較的小さくて済み、製造ラインの製造能力を高める際にも、占有面積を余り大型化する必要のない粘弾性樹脂成形品の成形装置および成形方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、形状の異なる複数種類の粘弾性樹脂成形品を製造する場合に新たに必要となる設備が比較的少なくて済む粘弾性樹脂成形品の成形装置および成形方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、粘弾性樹脂成形品の形状変更が、比較的短い時間で完了する粘弾性樹脂成形品の連続成形装置および粘弾性樹脂成形品の連続成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による粘弾性樹脂成形品の連続成形装置の特徴構成は、
スチレン系エラストマとパラフィン系プロセスオイルとを含む粘弾性樹脂材料を所定の断面形状に押出し成形するダイス部と、
装入された
前記粘弾性樹脂材料を前記ダイス部に向けて一定の速度で送り出す定量搬送装置と、
前記定量搬送装置によって送り出された
前記粘弾性樹脂材料を温度調整しつつ密閉状態で前記ダイス部に搬送する温調搬送部と、を備え、
前記温調搬送部は、前記温調搬送部の内部で搬送される
前記粘弾性樹脂材料の外周面を前記温調搬送部の外周に配置された加熱手段によって加熱する加熱温調部と、前記加熱温調部によって加熱された
前記粘弾性樹脂材料を放冷するべく前記加熱温調部の下流側に配置された放冷温調部とを有
し、
前記加熱手段は、前記加熱温調部内における外周部位の前記粘弾性樹脂材料の温度を、前記ダイス部から排出された成形品が前記ダイス部の内面に層状に付着しない範囲で最も低い離型性下限温度よりも高くなるように設定し、
前記放冷温調部は、前記ダイス部の出口の外周に位置する前記粘弾性樹脂材料が前記離型性下限温度よりも高い温度となり、前記ダイス部の出口の径方向に関する中心側に位置する前記粘弾性樹脂材料が、前記成形品の断面形状を保持可能な範囲で最も高い保形性上限温度よりも低い温度となるように構成され、
前記ダイス部の下流側には、前記ダイス部から押出された前記粘弾性樹脂材料を所定の長さで切断するカッター装置を備えた点にある。
【0010】
上記の特徴構成による粘弾性樹脂成形品の連続成形装置では、定量搬送装置とダイス部の間に密閉状の温調搬送部を設け、同温調搬送部を、内部で搬送される粘弾性樹脂材料を外周に配置された加熱手段によって加熱する加熱温調部と、加熱された粘弾性樹脂材料を放冷する放冷温調部とで構成したことで、ダイスなどの内面に特殊なコーティング処理などを施すことなく粘弾性樹脂成形品をダイスから円滑に排出させること、及び、排出直後にも十分な保形性を有する粘弾性樹脂成形品とすることを同時に実現可能になったため、連続的な押出し成形が可能となった。したがって、多数の筒状型を同時に搬送する複数のゾーンを設ける必要がないため、製造ラインの占有面積が小さくて済み、製造ラインの製造能力を高める際にも、占有面積を大型化する必要性が減った。
【0011】
また、上記の特徴構成による粘弾性樹脂成形品の連続成形装置では、形状の異なる複数種類の粘弾性樹脂成形品を製造したい場合にも、内面の寸法や形状の異なるダイスに変更するだけで粘弾性樹脂成形品の形状を変更できるので、従来のように、形状の異なる多数の筒状型などの新たに必要となる設備が少なくて済む。
【0012】
さらに、上記の特徴構成による粘弾性樹脂成形品の連続成形装置では、形状の異なる複数種類の粘弾性樹脂成形品を製造したい場合に、内面の寸法や形状の異なるダイスに変更するだけでよいので、粘弾性樹脂成形品の形状変更が短い時間で完了する。
【0013】
【0014】
特にベッドやソファの中に設置するクッション材として適切な性状の粘弾性樹脂材料は、一般に、高温になるほど粘性が低下する特性に基づいて、ダイス部から排出された成形品がダイス部の断面形状を保持可能な範囲で最も高い保形性上限温度、及び、成形品がダイス部の内面に層状に付着しない範囲で最も低い離型性下限温度を有する。しかし、本構成であれば、所定の能力の加熱手段を備えた加熱温調部、及び、ダイス部の出口の外周に位置する粘弾性樹脂材料が離型性下限温度よりも高い温度とし、ダイス部の出口の径方向に関する中心側に位置する粘弾性樹脂材料が保形性上限温度よりも低い温度とする放冷温調部を設けることで、ダイスから円滑に排出され、カッターによって目的の長さに切断する時にも断面形状が崩れ難く、しかも、排出直後にも十分な保形性を有する粘弾性樹脂成形品を十分に安定した状態で製造することが可能となった。
【0015】
本発明の他の特徴構成は、
原料となる
前記粘弾性樹脂材料を装入するためのホッパと、前記ホッパに装入された
前記粘弾性樹脂材料を前記定量搬送装置へ搬送する押出機とが設けられており、
前記押出機による搬送速度は、前記定量搬送装置の上流側で
前記粘弾性樹脂材料が受ける圧力が、前記定量搬送装置の下流側で
前記粘弾性樹脂材料が受ける圧力を超えるように設定されている点にある。
【0016】
本構成であれば、定量搬送装置と押出機との間に位置する粘弾性樹脂材料が一定の高圧条件下で搬送されることで、粘弾性樹脂材料に含まれる気泡どうしが一体化しながら上流側に移動し、最終的にホッパから機外に放出されるため、定量搬送装置よりも下流側の粘弾性樹脂材料は気泡の少ない高密度の状態となり、ダイス部からは物性の安定した粘弾性樹脂成形品が排出される。
【0017】
本発明による粘弾性樹脂成形品の連続成形方法の特徴構成は、
上述した連続成形装置を用いて、
前記粘弾性樹脂材料を前記所定の断面形状を備えた樹脂成形品として連続的に押出し成形する点にある。
【0018】
上記の特徴構成による粘弾性樹脂成形品の連続成形方法では、
定量搬送装置とダイス部の間に密閉状の温調搬送部を設け、同温調搬送部を、外周に配置された加熱手段によって内部の粘弾性樹脂材料を加熱する加熱温調部と、加熱された粘弾性樹脂材料を放冷する放冷温調部とで構成したことで、粘弾性樹脂成形品をダイスから円滑に排出させること、及び、排出直後にも十分な保形性を有する粘弾性樹脂成形品とすることを同時に実現可能になったため、連続的な押出し成形が可能となった。したがって、多数の筒状型を同時に搬送する複数のゾーンを設ける必要がないため、製造ラインの占有面積が小さくて済み、製造ラインの製造能力を高める際にも、占有面積を余り大型化する必要がなくなった。同様に、形状の異なる複数種類の粘弾性樹脂成形品を製造したい場合にも、形状の異なる多数の筒状型などの新たに必要となる設備が少なくて済む、粘弾性樹脂成形品の形状変更が短い時間で完了する、などの利点も得られる。