特許第5691491号(P5691491)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5691491粘弾性樹脂成形品の連続成形装置および連続成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5691491
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】粘弾性樹脂成形品の連続成形装置および連続成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 47/78 20060101AFI20150312BHJP
   B29C 47/92 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
   B29C47/78
   B29C47/92
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-286193(P2010-286193)
(22)【出願日】2010年12月22日
(65)【公開番号】特開2012-131162(P2012-131162A)
(43)【公開日】2012年7月12日
【審査請求日】2013年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100114959
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 徹也
(72)【発明者】
【氏名】石川 克朗
(72)【発明者】
【氏名】鬼頭 武史
(72)【発明者】
【氏名】畔柳 憲二
(72)【発明者】
【氏名】佐橋 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 明
【審査官】 中山 基志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−289089(JP,A)
【文献】 特開昭58−038128(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C47/00−47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系エラストマとパラフィン系プロセスオイルとを含む粘弾性樹脂材料を所定の断面形状に押出し成形するダイス部と、
装入された前記粘弾性樹脂材料を前記ダイス部に向けて一定の速度で送り出す定量搬送装置と、
前記定量搬送装置によって送り出された前記粘弾性樹脂材料を温度調整しつつ密閉状態で前記ダイス部に搬送する温調搬送部と、を備え、
前記温調搬送部は、前記温調搬送部の内部で搬送される前記粘弾性樹脂材料の外周面を前記温調搬送部の外周に配置された加熱手段によって加熱する加熱温調部と、前記加熱温調部によって加熱された前記粘弾性樹脂材料を放冷するべく前記加熱温調部の下流側に配置された放冷温調部とを有し、
前記加熱手段は、前記加熱温調部内における外周部位の前記粘弾性樹脂材料の温度を、前記ダイス部から排出された成形品が前記ダイス部の内面に層状に付着しない範囲で最も低い離型性下限温度よりも高くなるように設定し、
前記放冷温調部は、前記ダイス部の出口の外周に位置する前記粘弾性樹脂材料が前記離型性下限温度よりも高い温度となり、前記ダイス部の出口の径方向に関する中心側に位置する前記粘弾性樹脂材料が、前記成形品の断面形状を保持可能な範囲で最も高い保形性上限温度よりも低い温度となるように構成され、
前記ダイス部の下流側には、前記ダイス部から押出された前記粘弾性樹脂材料を所定の長さで切断するカッター装置を備えた粘弾性樹脂成形品の連続成形装置。
【請求項2】
原料となる前記粘弾性樹脂材料を装入するためのホッパと、前記ホッパに装入された前記粘弾性樹脂材料を前記定量搬送装置へ搬送する押出機とが設けられており、
前記押出機による搬送速度は、前記定量搬送装置の上流側で前記粘弾性樹脂材料が受ける圧力が、前記定量搬送装置の下流側で前記粘弾性樹脂材料が受ける圧力を超えるように設定されている請求項1記載の粘弾性樹脂成形品の連続成形装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の樹脂成形品の連続成形装置を用いて、前記粘弾性樹脂材料を前記所定の断面形状を備えた樹脂成形品として連続的に押出し成形する粘弾性樹脂成形品の連続成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スチレン系エラストマなどを代表とする粘弾性樹脂成形品の成形装置および粘弾性樹脂成形品の成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の粘弾性樹脂成形品の成形技術に関連する先行技術文献情報として下記に示す特許文献1がある。
特許文献1では、ベッドやソファの中に設置するクッション材としてゼラチン状などの粘弾性エラストマなどの樹脂成形体を使用することで、従来の金属製スプリングなどで見られた圧力集中を除去し、より広い表面にクッション効能を分配させたりして心地良さを達成し得ることが記載されている。
【0003】
また、この種の粘弾性樹脂成形品の成形技術に関連する別の先行技術文献情報として下記に示す特許文献2がある。特許文献2では、特許文献1に記述されている類の粘弾性エラストマが著しく軟質で変形し易く、且つ、粘着性を有するために、従来の突き出しピンなどでは脱型が困難である点を解決するための一つの方法が提案されている。この方法では、製造ラインを、混練機から約120℃の粘弾性樹脂材料を筒状型に圧入するゾーンと、粘弾性樹脂材料を筒状型に入ったままで200℃以下の高温に保持するゾーンと、粘弾性樹脂材料を筒状型に入ったままで約100℃まで空冷するゾーンと、最後に粘弾性樹脂材料を筒状型から脱型するゾーンとで構成し、これらの各ゾーンに沿って多数の筒状型をコンベアによって順次移動させている。尚、このように冷却後に脱型が行われるのは、高温のまま粘弾性樹脂を脱型すると保形性が不足して所望の形状の粘弾性樹脂成形品が得られないためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001−514912(12頁3−20行、図3図6
【特許文献2】特開2005−096239号公報(0039段落、図1図7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2に記された粘弾性樹脂成形品の成形方法では、多数の筒状型を同時に搬送する複数のゾーンを設ける必要があるため、仮に各ゾーンを環状に連続配置した場合でも、製造ラインが大きな占有面積を必要とする傾向があった。しかも、製造ラインの製造能力を高めるためには、筒状型の数を増す必要があるため、個々のゾーンも大型化する必要があった。また、外径または長さなど形状の異なる複数種類の粘弾性樹脂成形品を製造するためには、互いに形状の異なる多数の筒状型を別途用意しておく必要があるという問題も見られた。さらに、基本的に各ゾーンには粘弾性樹脂を処理中の複数の筒状型が存在するため、粘弾性樹脂成形品の形状変更が必要な場合には、全ての筒状型が入れ替わるまでには、最初の圧入ゾーンにあった筒状型が順次移動して最後の脱型ゾーンで処理を受けるまでの長い時間が必要であった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上に例示した従来技術による粘弾性樹脂成形品の連続成形方法が与える課題に鑑み、製造ラインの占有面積が比較的小さくて済み、製造ラインの製造能力を高める際にも、占有面積を余り大型化する必要のない粘弾性樹脂成形品の成形装置および成形方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、形状の異なる複数種類の粘弾性樹脂成形品を製造する場合に新たに必要となる設備が比較的少なくて済む粘弾性樹脂成形品の成形装置および成形方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、粘弾性樹脂成形品の形状変更が、比較的短い時間で完了する粘弾性樹脂成形品の連続成形装置および粘弾性樹脂成形品の連続成形方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による粘弾性樹脂成形品の連続成形装置の特徴構成は、
スチレン系エラストマとパラフィン系プロセスオイルとを含む粘弾性樹脂材料を所定の断面形状に押出し成形するダイス部と、
装入された前記粘弾性樹脂材料を前記ダイス部に向けて一定の速度で送り出す定量搬送装置と、
前記定量搬送装置によって送り出された前記粘弾性樹脂材料を温度調整しつつ密閉状態で前記ダイス部に搬送する温調搬送部と、を備え、
前記温調搬送部は、前記温調搬送部の内部で搬送される前記粘弾性樹脂材料の外周面を前記温調搬送部の外周に配置された加熱手段によって加熱する加熱温調部と、前記加熱温調部によって加熱された前記粘弾性樹脂材料を放冷するべく前記加熱温調部の下流側に配置された放冷温調部とを有し、
前記加熱手段は、前記加熱温調部内における外周部位の前記粘弾性樹脂材料の温度を、前記ダイス部から排出された成形品が前記ダイス部の内面に層状に付着しない範囲で最も低い離型性下限温度よりも高くなるように設定し、
前記放冷温調部は、前記ダイス部の出口の外周に位置する前記粘弾性樹脂材料が前記離型性下限温度よりも高い温度となり、前記ダイス部の出口の径方向に関する中心側に位置する前記粘弾性樹脂材料が、前記成形品の断面形状を保持可能な範囲で最も高い保形性上限温度よりも低い温度となるように構成され、
前記ダイス部の下流側には、前記ダイス部から押出された前記粘弾性樹脂材料を所定の長さで切断するカッター装置を備えた点にある。
【0010】
上記の特徴構成による粘弾性樹脂成形品の連続成形装置では、定量搬送装置とダイス部の間に密閉状の温調搬送部を設け、同温調搬送部を、内部で搬送される粘弾性樹脂材料を外周に配置された加熱手段によって加熱する加熱温調部と、加熱された粘弾性樹脂材料を放冷する放冷温調部とで構成したことで、ダイスなどの内面に特殊なコーティング処理などを施すことなく粘弾性樹脂成形品をダイスから円滑に排出させること、及び、排出直後にも十分な保形性を有する粘弾性樹脂成形品とすることを同時に実現可能になったため、連続的な押出し成形が可能となった。したがって、多数の筒状型を同時に搬送する複数のゾーンを設ける必要がないため、製造ラインの占有面積が小さくて済み、製造ラインの製造能力を高める際にも、占有面積を大型化する必要性が減った。
【0011】
また、上記の特徴構成による粘弾性樹脂成形品の連続成形装置では、形状の異なる複数種類の粘弾性樹脂成形品を製造したい場合にも、内面の寸法や形状の異なるダイスに変更するだけで粘弾性樹脂成形品の形状を変更できるので、従来のように、形状の異なる多数の筒状型などの新たに必要となる設備が少なくて済む。
【0012】
さらに、上記の特徴構成による粘弾性樹脂成形品の連続成形装置では、形状の異なる複数種類の粘弾性樹脂成形品を製造したい場合に、内面の寸法や形状の異なるダイスに変更するだけでよいので、粘弾性樹脂成形品の形状変更が短い時間で完了する。
【0013】
【0014】
特にベッドやソファの中に設置するクッション材として適切な性状の粘弾性樹脂材料は、一般に、高温になるほど粘性が低下する特性に基づいて、ダイス部から排出された成形品がダイス部の断面形状を保持可能な範囲で最も高い保形性上限温度、及び、成形品がダイス部の内面に層状に付着しない範囲で最も低い離型性下限温度を有する。しかし、本構成であれば、所定の能力の加熱手段を備えた加熱温調部、及び、ダイス部の出口の外周に位置する粘弾性樹脂材料が離型性下限温度よりも高い温度とし、ダイス部の出口の径方向に関する中心側に位置する粘弾性樹脂材料が保形性上限温度よりも低い温度とする放冷温調部を設けることで、ダイスから円滑に排出され、カッターによって目的の長さに切断する時にも断面形状が崩れ難く、しかも、排出直後にも十分な保形性を有する粘弾性樹脂成形品を十分に安定した状態で製造することが可能となった。
【0015】
本発明の他の特徴構成は、
原料となる前記粘弾性樹脂材料を装入するためのホッパと、前記ホッパに装入された前記粘弾性樹脂材料を前記定量搬送装置へ搬送する押出機とが設けられており、
前記押出機による搬送速度は、前記定量搬送装置の上流側で前記粘弾性樹脂材料が受ける圧力が、前記定量搬送装置の下流側で前記粘弾性樹脂材料が受ける圧力を超えるように設定されている点にある。
【0016】
本構成であれば、定量搬送装置と押出機との間に位置する粘弾性樹脂材料が一定の高圧条件下で搬送されることで、粘弾性樹脂材料に含まれる気泡どうしが一体化しながら上流側に移動し、最終的にホッパから機外に放出されるため、定量搬送装置よりも下流側の粘弾性樹脂材料は気泡の少ない高密度の状態となり、ダイス部からは物性の安定した粘弾性樹脂成形品が排出される。
【0017】
本発明による粘弾性樹脂成形品の連続成形方法の特徴構成は、
上述した連続成形装置を用いて、前記粘弾性樹脂材料を前記所定の断面形状を備えた樹脂成形品として連続的に押出し成形する点にある。
【0018】
上記の特徴構成による粘弾性樹脂成形品の連続成形方法では、量搬送装置とダイス部の間に密閉状の温調搬送部を設け、同温調搬送部を、外周に配置された加熱手段によって内部の粘弾性樹脂材料を加熱する加熱温調部と、加熱された粘弾性樹脂材料を放冷する放冷温調部とで構成したことで、粘弾性樹脂成形品をダイスから円滑に排出させること、及び、排出直後にも十分な保形性を有する粘弾性樹脂成形品とすることを同時に実現可能になったため、連続的な押出し成形が可能となった。したがって、多数の筒状型を同時に搬送する複数のゾーンを設ける必要がないため、製造ラインの占有面積が小さくて済み、製造ラインの製造能力を高める際にも、占有面積を余り大型化する必要がなくなった。同様に、形状の異なる複数種類の粘弾性樹脂成形品を製造したい場合にも、形状の異なる多数の筒状型などの新たに必要となる設備が少なくて済む、粘弾性樹脂成形品の形状変更が短い時間で完了する、などの利点も得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係る粘弾性樹脂成形品の連続成形装置を示す破断側面図である。
図2】連続成形装置の温調搬送部とダイス部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。
(連続成形装置の概略構成)
図1に示す粘弾性樹脂成形品の連続成形装置1は、主に、装入された粘弾性樹脂材料Aを軸心方向に沿って押出す押出機3と、押出機3によって送り出された粘弾性樹脂材料Aを更に下流側に一定の速度で送り出すギヤポンプ5(定量搬送装置の一例)と、ギヤポンプ5によって送り出された粘弾性樹脂材料Aを温度調整しつつ密閉状態で下流側に搬送する温調搬送部6と、温調搬送部6を経て送られた粘弾性樹脂材料を所定の断面形状に押出し成形するためのダイス部7とが概して水平姿勢で直列状に接続された構造を備える。
【0021】
ダイス部7の下流側には、ダイス部7から押出されてきた粘弾性樹脂成形体Bを所定の長さで切断して粘弾性樹脂成形品B′とするためのカッター装置8と、切断して得られた粘弾性樹脂成形品B′をダイス部7から更に下流側に離間させるためのベルトコンベア9とが配置されている。カッター装置8としては、横向きに張架された1本の鋼線8AをモータM3とクランク装置(不図示)によって上下方向に移動させる鋼線式カッターなどが用いられる。
【0022】
(粘弾性樹脂材料の構成)
粘弾性樹脂材料Aとしては、スチレン系エラストマとパラフィン系プロセスオイルとを混練したものを用い、他に適量の老化防止剤や増量剤が添加される。スチレン系エラストマとパラフィン系プロセスオイルとの使用割合は特に限定されないが、ここでは、ダイス部7から排出される粘弾性樹脂成形体Bをベッドなどのクッション材として使用することを想定して、パラフィン系プロセスオイルの割合を70%以上とする。
【0023】
この粘弾性樹脂材料Aは、基本的に著しく軟質で変形し易く、粘着性を有し、且つ、高温になるほど粘性が低下する特性を備える。その結果、仮にダイス部7から排出される粘弾性樹脂成形体の外周面付近の温度が約120℃以下であれば、ダイス部7の内面に層状に付着する傾向が現れて、外周面に鱗状の凹凸部が形成されるため、外観が滑らかな円柱状の製品が獲得できない傾向が見られる。逆に、仮にダイス部7から排出される粘弾性樹脂成形体の中心付近の温度が約160℃以上であれば、ダイス部7から排出された成形品が十分な保形性を示し得ず、自重で崩れるために、所望の外径を備えた正規の円柱状の製品が獲得できない傾向が見られる。
【0024】
ここでは、ダイス部7から排出される成形体の外周部位がダイス部7の内面に層状に付着しない範囲で最も低い粘弾性樹脂材料Aの温度(離型性下限温度)を約125℃としておく。
また、ダイス部7から排出された成形品が十分な保形性を示し、所望の外径を備えた正規の円柱状の製品が獲得できる範囲で最も高い粘弾性樹脂材料Aの温度(保形性上限温度)を約155℃としておく。
【0025】
(押出機からギヤポンプまでの構成)
原料となる粘弾性樹脂材料Aを押出機3のホッパ3Cに装入するための方法は特に限定されないが、図1に例示するように、連続成形装置1と隣接する位置に、粘弾性樹脂材料Aを加熱混練し、順次バッチ式でホッパ3Cに供給するための樹脂材料供給装置20を配設してもよい。ここでは、概して室温と同温度の粘弾性樹脂材料Aがホッパ3Cに供給される。
【0026】
押出機3は、円筒状のケース3A内にモータM1及び減速機2により回転駆動される単軸スクリュ3Bが内設された構成を備える。ケース3Aの上流側端部の付近に形成された開口部には、粘弾性樹脂材料Aを装入するためのホッパ3Cが連結されている。ケース3Aは同開口部を除いて密閉された構造を備える。尚、押出機3を二軸スクリュ式にする等の変更は適宜行うことができる。
【0027】
ケース3Aの外周には内部の粘弾性樹脂材料Aを外周から加熱するための複数の第1面状ヒータ12が適宜取り付けられている。また、少なくともケース3Aの下流側端部には内部の粘弾性樹脂材料Aの温度を検出する第1温度センサTC1が配置されており、後述する制御装置30は、第1温度センサTC1の検出値が約150℃に保持されるように第1面状ヒータ12を駆動する。
【0028】
ギヤポンプ5は互いに常に噛み合った上下一対のギヤの一方がモータM2によって回転駆動される片軸駆動型を用いているため、仮にギヤポンプ5を停止した状態で押出機3を運転すると、粘弾性樹脂材料Aは実質的にギヤポンプ5を越えて下流側に移動することはできない。ギヤポンプ5を駆動すると、粘弾性樹脂材料Aは上下一対のギヤによって一旦小さな断片状に分断され、ギヤポンプ5の出口側の小径部で再び一体化され、その後は、ダイス部7まで概して層流状態で搬送されるものと推定される。
【0029】
押出機3とギヤポンプ5の間には、密閉された筒状の調圧部4が介装されており、この調圧部4の内壁面の一部には、調圧部4の内部に充填されている粘弾性樹脂材料Aの圧力を検出するための圧力センサPSが設置されている。調圧部4の外周にも内部の粘弾性樹脂材料Aを外周から加熱するための第1面状ヒータ12が適宜取り付けられている。
【0030】
(制御装置とその作用)
連続成形装置1には、各部の運転状態を制御するための制御装置30が設けられている。実際の連続成形装置1の運転では、先ず、ダイス部7からの粘弾性樹脂成形体Bの目標排出速度が設定され、この目標排出速度に基づいて概して一義的に決定されるギヤポンプ5の回転速度が手動で制御装置30に入力される。
【0031】
制御装置30は、その時のギヤポンプ5の回転速度条件において、調圧部4の圧力センサPSの検出値が0.8〜1.2MPaの範囲内になるように、押出機3のモータM1の回転速度制御を行う。その後、ダイス部7から排出されてくる粘弾性樹脂成形体Bの状態が好適となるように、ギヤポンプ5の回転速度及び圧力センサPSの検出目標値を適宜設定変更することができる。
【0032】
尚、前述したように、調圧部4の圧力センサPSの検出値が常に0.8MPa以上となるように、押出機3のモータM1の回転速度制御を行うことで、粘弾性樹脂材料Aに含まれる気泡を上流側に移動させ、ホッパ3Cから機外に追い出すことができ、その結果、十分に高密度で且つ物性の安定した粘弾性樹脂成形品B′を得ることができる。
【0033】
尚、ダイス部7から排出される粘弾性樹脂成形体Bの目標サイズは、外径が約50mm、長さが約15mm〜50mmの円柱状である。これに対応するように、ダイス部7の内径は約54mmであるが、押出機3及び調圧部4の内径は一貫して約65mm、ギヤポンプ5の出口側の内径は約42mm、温調搬送部6の内径は一貫して約50mmとされている。
【0034】
(温調搬送部の構成と作用)
図2に例示するように、温調搬送部6は、断面が円形の平滑な内面を有する筒状のケース6Cを備えている。ケース6Cの形状は外面も内面も全長に亘って概して一定であるが、ケース6Cは粘弾性樹脂材料Aの搬送方向に沿って、前半の加熱温調部6Aと後半の放冷温調部6Bとに便宜的に区分される。前半の加熱温調部6Aの外周には、内部の粘弾性樹脂材料Aを再加熱するための第2面状ヒータ14(加熱手段の一例)が配置されている。後半の放冷温調部6Bは、ヒータなどの加熱手段は備えておらず、加熱温調部6Aで加熱された粘弾性樹脂材料Aを所定の方法で放冷する役割を持つ。
【0035】
より具体的には、当該実施形態では、温調搬送部6のケース6Cの外周の断面形状は、一辺の長さが約100mmの正方形を呈し、この正方形の中心に前述した内径が約60mmの円状の内面が形成されている。ケース6Cの材質としては、その熱伝導率の高さからアルミニウムが選択されている。加熱温調部6Aでは、このように断面が正方形のケース6Cの4面の全てに正方形の第2面状ヒータ14が貼り付けられている。前半の加熱温調部6Aと後半の放冷温調部6Bとの間には、外周付近を移動する粘弾性樹脂材料Aの温度を検出する第2温度センサTC2が配置されている。
【0036】
加熱温調部6Aの上流側端部(第2面状ヒータ14よりも上流側のX点など)に位置する粘弾性樹脂材料Aは、加熱温調部6Aの内部の外周側と中心部とに関わらず、前述した押出機3及び調圧部4の第1面状ヒータ12によって約140℃に保持されている。
X点に位置する粘弾性樹脂材料Aは、後述するように、加熱温調部6Aの第2面状ヒータ14によって再加熱されながら下流側の放冷温調部6Bに移動する。
【0037】
特に、外周付近の粘弾性樹脂材料Aは第2面状ヒータ14によって一旦約160℃に加熱され、その後、放冷温調部6Bで次第に放冷されながら、最終的に離型性下限温度(125℃)よりも十分に高い約150℃でダイス部7から排出されるため、ダイス部7の内面に層状に付着する傾向が抑えられ、外観が滑らかな円柱状の製品が獲得できる。制御装置30は、第2温度センサTC2の検出値に基づいて、第2面状ヒータ14を駆動する。
【0038】
また、径方向に関する中心付近の粘弾性樹脂材料Aは第2面状ヒータ14によって一旦約130〜160℃に加熱されるが、その後、放冷温調部6Bで次第に放冷されながら、最終的に保形性上限温度(155℃)よりも十分に低い約130〜140℃でダイス部7から排出されるため、ダイス部7から排出された成形品が十分な保形性を示し、自重で崩れることなく、所望の外径を備えた正規の円柱状の製品を獲得できる。
【0039】
尚、温調搬送部6のケース6Aやダイス部7の内面は単なる平滑性の高いアルミニウムの面で構成されており、粘弾性樹脂材料Aとの離型性を高めるための特別なコーティング加工などは何も施されていない。
【0040】
仮に、外周付近と中心付近を含めた全体が均一に130℃となる条件で粘弾性樹脂成形体Bをダイス部7から排出することができれば、離型性下限温度(125℃)よりも高いという条件と、保形性上限温度(155℃)よりも低いという条件を同時に僅かながらクリアできる。しかし、実際には、層流状態で移動する粘弾性樹脂成形体Bでは、ケース6Aの外周を中心に生じる熱拡散のために、外周付近の粘弾性樹脂材料Aが中心付近の粘弾性樹脂材料Aよりも低温になり易いため、温度を外周付近と中心付近とで均一にすることは困難である。また、離型性下限温度(125℃)よりも高いという条件と、保形性上限温度(155℃)よりも低いという条件を十分にはクリアできないため、得られる粘弾性樹脂成形品B′の品質が不安定となり易い。
【0041】
因みに、第2面状ヒータ14を温調搬送部6の後半部も含めた全面に配置する、或いは、温調搬送部6の後半部のみに配置し、ダイス部7における外周付近の粘弾性樹脂材料Aが離型性下限温度(125℃)を十分に超える約160℃となるように制御する方法では、中心側に熱がこもって中心付近の粘弾性樹脂材料Aの温度が高くなり、同箇所の粘弾性樹脂材料Aを保形性上限温度(155℃)よりも十分に低い温度に制御することが困難である。
【0042】
ダイス部7から排出される粘弾性樹脂成形体B′が有する粘弾性その他のレオロジー的特性や製造装置内面への付着性は、粘弾性樹脂材料Aの組成、押出機3や調圧部4内で粘弾性樹脂材料Aが受ける圧力、粘弾性樹脂材料Aが調圧部4内に留まる滞留時間、ダイス部7の内径、ギヤポンプ5による送り出し速度、等を含む多数のパラメータによって左右される。したがって、上述した離型性下限温度及び保形性上限温度の具体的な値は単なる一例に過ぎず、これらの温度値も上記各パラメータによって変動することが推測される。
【0043】
ダイス部7から排出される粘弾性樹脂成形体Bの断面形状は、ダイス部7の開口部の形状を変更することで、適宜変更することが可能であり、ダイス部7に複数の開口部を設けることで同時に複数本の粘弾性樹脂成形体Bを排出させることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0044】
著しく軟質で変形し易く、且つ、粘着性を有する粘弾性樹脂材料を、ベッドやソファの中に設置するクッション材として適した形状の成形品に連続成形するための技術として利用可能である。
【符号の説明】
【0045】
A 粘弾性樹脂材料
B 粘弾性樹脂成形体
B′ 粘弾性樹脂成形品
PS 圧力センサ
TC1 第1温度センサ
TC2 第2温度センサ
1 連続成形装置
3 押出機
3C ホッパ
4 調圧部
5 ギヤポンプ(定量搬送装置)
6 温調搬送部
6A 加熱温調部
6B 放冷温調部
6C ケース
7 ダイス部
12 第1面状ヒータ
14 第2面状ヒータ(加熱手段)
20 樹脂材料供給装置
30 制御装置
図1
図2