(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5691507
(24)【登録日】2015年2月13日
(45)【発行日】2015年4月1日
(54)【発明の名称】鋼管杭と基礎との接合構造及び方法
(51)【国際特許分類】
E02D 27/12 20060101AFI20150312BHJP
E02D 27/34 20060101ALI20150312BHJP
【FI】
E02D27/12 Z
E02D27/34 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-290532(P2010-290532)
(22)【出願日】2010年12月27日
(65)【公開番号】特開2012-136880(P2012-136880A)
(43)【公開日】2012年7月19日
【審査請求日】2013年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】米澤 健次
【審査官】
富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−159142(JP,A)
【文献】
特開2000−282484(JP,A)
【文献】
特開2000−027197(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 27/12
E02D 27/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管杭の少なくとも頭部の内側に中詰めコンクリートが打設され、
平面視で前記鋼管杭の内径側に収まるように設けられて前記中詰めコンクリートと基礎とを接合する、前記鋼管杭の内径より小径で、前記中詰めコンクリートよりも強度が高い小径部と、
前記鋼管杭と前記中詰めコンクリートとのずれを抑制するずれ抑制手段と、
を備え、
前記小径部は、その上部が前記基礎に埋め込まれ、その下部が前記中詰めコンクリートに埋め込まれ、外周面に凸部が存しない鋼管を備え、
前記ずれ抑制手段は、前記鋼管の下端よりも深層側のみに深さ方向に間隔を空けて配され、それぞれ円環状に湾曲されて前記鋼管杭の内周面に接合された複数のフラットバーである鋼管杭と基礎との接合構造。
【請求項2】
2又は3の前記フラットバーが、前記鋼管の下端よりも深層側のみに配されている請求項1に記載の鋼管杭と基礎との接合構造。
【請求項3】
前記中詰めコンクリート内の前記小径部と前記フラットバーとの間には、補強鉄筋が配筋されている請求項1又は請求項2に記載の鋼管杭と基礎との接合構造。
【請求項4】
少なくとも頭部の内側に中詰めコンクリートを打設する鋼管杭と基礎との接合方法であって、
平面視で前記鋼管杭の内径側に収まるように、前記鋼管杭の内径より小径で前記中詰めコンクリートよりも強度が高い小径部を、外周面に凸部が存しない鋼管をその上部を前記基礎に埋め込みその下部を前記中詰めコンクリートに埋め込み、該鋼管の内側にコンクリートを充填することにより設けて、当該小径部で前記中詰めコンクリートと前記基礎とを接合し、
円環状に湾曲させた複数のフラットバーを、前記鋼管の下端よりも深層側のみに深さ方向に間隔を空けて前記鋼管杭の内周面に接合することにより、前記鋼管杭と前記中詰めコンクリートとのずれを抑制するずれ抑制手段を設ける鋼管杭と基礎との接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼管杭と基礎との接合構造及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート製の杭と躯体(基礎)との接合構造として、杭と躯体とを、杭頭部よりも小径で、杭本体よりも強度が高いコンクリート部材(以下、小径部という)を介して接合したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この接合構造によれば、躯体が地震時の水平力を受けた場合に杭と躯体との接合部に生じる曲げモーメントを緩和することが可能となり、これにより、杭と躯体との接合部における躯体断面や鉄筋を減らす等して、コストを削減することができる。また、小径部の鉛直荷重及びせん断荷重の伝達性能を確保することが可能となり、杭の支持力を有効に発揮させることができる。
【0003】
また、鋼管杭と上部構造物(基礎)との接合構造として、杭頭部を上部構造物に埋め込むと共に、接合鉄筋を杭頭部の中詰めコンクリートに配筋したものが知られている(例えば、特許文献2参照)。この接合構造では、鋼管杭の内周面にずれ止めのための段差部が設けられている。この接合構造によれば、上部構造物が地震時の水平力を受けた場合に杭と上部構造物との接合部に生じる曲げモーメントに対する耐力を高めることができる。また、中詰めコンクリートには地震時に引張力が作用するところ、鋼管杭の内周面に段差部が設けられていることにより、引張力によって生じる中詰めコンクリートと鋼管杭との相対的な滑り(ずれ)が抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009―293350号公報
【特許文献2】特開2003−113615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載の鋼管杭と上部構造物との接合構造では、接合部に生じる曲げモーメントに対する耐力は高められているものの、杭頭部の太さが均一であることから、接合部に生じる曲げモーメントを緩和することができない。そこで、特許文献1に記載の接合構造のように杭頭部に小径部を形成するべく、鋼管杭の上端を上部構造物から離間させ、中詰めコンクリートと上部構造物との接合部を小径部とすることが考えられる。この場合、上部構造物から小径部及び中詰めコンクリートに圧縮荷重が作用するところ、その荷重が、小径部及び中詰めコンクリートから鋼管杭に伝達されることで、杭の支持力が有効に発揮される。そのためには、小径部及び中詰めコンクリートの強度を確保すると共に、圧縮力によって生じる中詰めコンクリートと鋼管杭との相対的な滑り(ずれ)を抑制することを要する。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、地震発生時に鋼管杭の中詰めコンクリートと基礎との接合部に生じる曲げモーメントを緩和させると共に、杭の支持力を有効に発揮させることができる、鋼管杭と基礎との接合構造及び方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係る鋼管杭と基礎との接合構造は、鋼管杭の少なくとも頭部の内側に中詰めコンクリートが打設され、平面視で前記鋼管杭の内径側に収まるように設けられて前記中詰めコンクリート
と基礎とを接合する、前記鋼管杭の内径より小径で、前記中詰めコンクリートよりも強度が高い小径部と、前記鋼管杭と前記中詰めコンクリートとのずれを抑制するずれ抑制手段と、を備え
、前記小径部は、その上部が前記基礎に埋め込まれ、その下部が前記中詰めコンクリートに埋め込まれ、外周面に凸部が存しない鋼管を備え、前記ずれ抑制手段は、前記鋼管の下端よりも深層側のみに深さ方向に間隔を空けて配され、それぞれ円環状に湾曲されて前記鋼管杭の内周面に接合された複数のフラットバーである。
【0008】
上記鋼管杭と基礎との接合構造において、
2又は3の前記フラットバーが、前記鋼管の下端よりも深層側のみに配されていてもよい。
【0009】
上記鋼管杭と基礎との接合構造において
、前記中詰めコンクリート内の前記小径部と前記
フラットバーとの間には、補強鉄筋が配筋されていてもよい。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明に係る鋼管杭と基礎とを接合する施工方法は、少なくとも頭部の内側に中詰めコンクリートを打設する鋼管杭と基礎との接合方法であって、平面視で前記鋼管杭の内径側に収まるように、前記鋼管杭の内径より小径で前記中詰めコンクリートよりも強度が高い小径部を
、外周面に凸部が存しない鋼管をその上部を前記基礎に埋め込みその下部を前記中詰めコンクリートに埋め込み、該鋼管の内側にコンクリートを充填することにより設けて、当該小径部で前記中詰めコンクリートと前記基礎とを接合し、
円環状に湾曲させた複数のフラットバーを、前記鋼管の下端よりも深層側のみに深さ方向に間隔を空けて前記鋼管杭の内周面に接合することにより、前記鋼管杭と前記中詰めコンクリートとのずれを抑制するずれ抑制手段を設ける。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、地震発生時に鋼管杭の中詰めコンクリートと基礎との接合部に生じる曲げモーメントを緩和させると共に、杭の支持力を有効に発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態に係る鋼管杭と基礎との接合構造を示す鉛直断面図である。
【
図3】本実施形態に係る接合構造の実用性を確認するための実験に用いる鋼管杭の試験体を示す鉛直断面図である。
【
図4】(A)〜(C)は、試験体の諸元を示す表である。
【
図7】試験体に載荷する圧縮荷重と、中詰めコンクリートと鋼管杭との軸方向への相対変位量との関係を示すグラフである。
【
図8】他の実施形態に係る接合構造を示す鉛直断面図である。
【
図9】実験を行った結果、試験体の中詰めコンクリートが破壊した状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、一実施形態に係る鋼管杭20と基礎1との接合構造10を示す鉛直断面図である。この図に示すように、接合構造10は、鋼管杭20と基礎1との接合部に設けられた小径部30を備えている。鋼管杭20は、円筒状の鋼製の杭であり、その内部には天端面から所定深さまで中詰めコンクリート24が打設されている。
【0014】
小径部30は、鋼管32とその内側に充填された中詰めコンクリート34とからなる鋼管コンクリートである。鋼管32は、その外径が鋼管杭20の内径よりも小径であり、鋼管杭20と同軸に、平面視で鋼管杭20の内径側に収まるように配されている。ここで、鋼管32の下端は、鋼管杭20の上端より下側に配されており、鋼管32の下部は、中詰めコンクリート24に埋め込まれている。また、中詰めコンクリート34は、鋼管32の上端まで打設されている。なお、中詰めコンクリート24と中詰めコンクリート34との材料特性は同一である。
【0015】
また、基礎1は、鉄筋コンクリート製であり、基礎1の下端と鋼管杭20の上端とは離間されている。ここで、鋼管32の上端は、基礎1の下端より上側に配されており、鋼管32の上部は、基礎1に埋め込まれている。
【0016】
図2は、鋼管杭20を示す斜視図である。この図に示すように、鋼管杭20の内周面には、複数の凸部22が設けられている。各凸部22は、円環状に湾曲されたフラットバーが鋼管杭20の内周面に溶接されてなる。複数の凸部22は、深さ方向に配されており、中詰めコンクリート24に埋め込まれている。また、各凸部22の底側には、複数のストッパー26が周方向に所定間隔おきに配されている。各ストッパー26は、鋼管杭20の内周面に溶接された板片であり、各凸部22は、その下から突出する複数のストッパー26と一体的に構成されている。
【0017】
このような接合構造10は、以下のようにして構築される。まず、複数の凸部22及びストッパー26が一体化された鋼管杭20を、打ち込み工法等の杭打設工法により地盤に打設する。次に、鋼管杭20の内側の所定深さまで土砂を埋め戻す。その後、鋼管杭20の内側の所定深さから上端まで中詰めコンクリート24を打設し、中詰めコンクリート24が硬化する前に、鋼管32を、その下部が中詰めコンクリート24に埋め込まれるように設置する。その後、中詰めコンクリート34を鋼管32の内側に充填する。
【0018】
そして、中詰めコンクリート24、34が硬化した後、基礎1の下面の高さまで土砂を埋め戻す。次に、基礎1の鉄筋を配筋して基礎1を構成するコンクリートを打設して硬化させる。なお、鋼管杭20の内側の所定深さまで土砂を埋め戻す工程は必須ではなく、鋼管杭20の内側の所定深さの位置に底蓋を設置し、該底蓋から鋼管杭20の上端まで中詰めコンクリート24を打設してもよい。
【0019】
以上のようにして構築された接合構造10では、鋼管杭20と基礎1とが、互いに離間されて、鋼管杭20より小径の鋼管32及びその内側に充填された中詰めコンクリート34とからなる小径部30により接合されている。これにより、鋼管杭20と基礎1との接合部の回転拘束を減らすことができ、基礎1及びその上の建物が地震時の水平力を受けた場合に鋼管杭20と基礎1との接合部の曲げ変形性能を確保し、当該接合部に生じる曲げモーメントを緩和することができる。
【0020】
また、本実施形態に係る接合構造10では、小径部30が、鋼管32内に中詰めコンクリート34が充填されてなる鋼管コンクリートであり、鋼管杭20内の中詰めコンクリート24よりもせん断強度や圧縮強度が高くなるように構成されている。これにより、鋼管杭20の頭部と基礎1との接合部を小径部とすることによる、当該接合部のせん断強度や圧縮強度の低下、即ち鋼管杭20の支持力の低下を抑制できる。また、鋼管杭20の内周面に内周側へ突出する環状の凸部22を設けており、この凸部22を、中詰めコンクリート24と鋼管杭20とのずれを抑制するずれ抑制部として機能させている。これにより、基礎1から小径部30及び中詰めコンクリート24に作用する圧縮荷重を、鋼管杭20に伝達させることができる。従って、鋼管杭20の支持力を有効に発揮させることができる。
【0021】
また、本実施形態に係る接合構造10では、鋼管32の上部が基礎1に埋め込まれ、鋼管32の下部が中詰めコンクリート24に埋め込まれていることから、鋼管32、基礎1及び中詰めコンクリート24によるダボ効果により、当該接合部のせん断強度をより一層向上させることができる。
【0022】
図3は、本実施形態に係る接合構造10の実用性を確認するための実験に用いる鋼管杭の試験体A、B、C、D(以下、A〜Dという)を示す鉛直断面図である。また、
図4(A)〜(C)は、試験体A〜Dの諸元を示す表である。これらの図に示すように、試験体A〜Dの鋼管杭20は、φ508mmの一般構造用圧延鋼材(SS400)であり、試験体A〜Dの鋼管32は、φ318.5mm、厚さt=6mm(実際の計測値は5.71mm)の一般構造用圧延鋼材(SS400)であり、試験体A〜Dの中詰めコンクリート24、34は、設計基準強度Fc24のコンクリートである。また、凸部22を構成するフラットバーは、厚さが9mm、幅が25mmの鋼材である。
【0023】
また、試験体Aの鋼管杭20の厚さは、従来から一般的に用いられている鋼管杭の厚さでt=6.4mm(実際の計測値は6.12mm)であり、試験体B、C、Dの鋼管杭20の厚さは、実験時に小径部30より先に降伏しないようにするためにt=12.7mm(実際の計測値は12mm)である。また、試験体A、B、Cの鋼管杭20の長さは1200mmであり、試験体Dの鋼管杭20の長さは1700mmである。また、試験体A、Bでは、凸部22を2段設け、試験体C、Dでは、凸部22を3段設けている。
【0024】
また、試験体Aの鋼管杭20は、弾性係数が203000N/mm
2、降伏強度が337N/mm
2の鋼管であり、試験体B、C、Dは、弾性係数が202000Nmm
2、降伏強度が345Nmm
2の鋼管である。また、全ての試験体A〜Dの鋼管32は、弾性係数が205000N/mm
2、降伏強度が277N/mm
2の鋼管である。さらに、凸部22を構成するフラットバーは、弾性係数が206000N/mm
2、降伏強度が303N/mm
2の鋼板である。
【0025】
また、試験体A、B、Cの中詰めコンクリート24の打設深さは600mmであり、試験体Dの中詰めコンクリート24の打設深さは1100mmである。さらに、中詰めコンクリート24、34は、ヤング係数が28867N/mm
2、圧縮強度が30.5N/mm
2、割裂強度が2.8N/mm
2のコンクリートである。
【0026】
図5は、試験体A〜Dに対して圧縮荷重を載荷するための載荷装置50を示す立面図である。この図に示すように、載荷装置50は、試験体A〜Dの下端が固定される固定台52と、固定台52の上方に設置されたジャッキ架台54と、ジャッキ架台54に支持された油圧ジャッキ56とを備える。試験体A〜Dは、固定台52と油圧ジャッキ56との間にこれらに上下に挟まれるように設置され、油圧ジャッキ56から軸方向の圧縮荷重を受ける。なお、油圧ジャッキ56の定格出力は、圧縮で20000kNである。
【0027】
本実験では、上記載荷装置50を用いて、試験体A〜Dの圧縮軸耐力を測定したところ、その結果は、
図6の表、
図7のグラフに示すようになった。ここで、
図7のグラフは、試験体A〜Dに載荷する圧縮荷重と、中詰めコンクリート24と鋼管杭20との軸方向の相対変位量との関係を示している。
【0028】
ここで、試験体A〜Dに与えた圧縮荷重の最大値が、試験体A〜Dの圧縮軸耐力に相当するところ、試験体A〜Dの圧縮軸耐力はそれぞれ、2100kN、2248kN、4200kN、4104kNとなった。なお、試験体A〜Dに与えた最大の圧縮荷重を与えたときの中詰めコンクリート24と鋼管杭20との軸方向の相対変位量はそれぞれ、1.46mm、1.86mm、3.55mm、3.22mmとなった。
【0029】
図6の表に示すように、試験体C、Dは、中詰めコンクリート24の打設深さを除いて条件が共通であるが、試験体Cよりも打設深さが浅い試験体Dの圧縮軸耐力が、試験体Cの圧縮軸耐力よりも大きくなっていることを考えると、中詰めコンクリート24の打設深さは試験体の圧縮軸耐力に影響しないことが解る。
【0030】
一方、試験体B、Cは、凸部22の段数を除いて条件が共通であるが、試験体Bよりも凸部22の段数が多い試験体Cの圧縮軸耐力が、試験体Bの圧縮軸耐力よりも格段に大きくなっていることを考えると、凸部22の段数が試験体の圧縮軸耐力に与える影響は大きく、凸部22の段数を多くするほど、試験体の圧縮軸耐力が大きくなることが解る。
【0031】
ここで、φ508mm、t=6.4mmの鋼管の設計上の圧縮軸耐力Pdは下記(1)式で示すように、2370kNであるのに対し、試験体C、Dの圧縮軸耐力は4000kN以上と約1.7倍である。
Pd=At・F=(π/4)・(D
02−D
i2)・F
=(π/4)・(508
2−495.2
2)・235=2370(kN)・・・(1)
なお、Atは鋼管の断面積、Fは鋼材の圧縮耐力、D
0は鋼管の外径、D
iは鋼管の内径である。
【0032】
以上、本実験により、本実施形態に係る接合構造10によれば実用上の十分な圧縮軸耐力を確保できることが確認できた。
【0033】
図8は、他の実施形態に係る接合構造100を示す鉛直断面図である。この図に示すように、接合構造100では、中詰めコンクリート24に円環状又はスパイラル状に形成されたフープ筋102が埋設されている。このフープ筋102は、小径部30の底部近傍から鋼管杭20の深さ方向へ、鋼管杭20の軸心周りに旋回する環状部が並ぶように配筋されている。また、フープ筋102の内周側には鋼管杭20の軸方向に沿って縦筋104が配筋されている。
【0034】
ここで、フープ筋102の直径は、小径部30の直径よりも大きく設定されており、フープ筋102と縦筋104とは、小径部30の鋼管32より外径側に配筋されている。即ち、フープ筋102と縦筋104とは、小径部30の鋼管32の底端外周縁部と凸部22との間に配筋されている。
【0035】
図9は、上述の実験を行った結果、試験体A〜Dの中詰めコンクリート24が破壊した状況を示している。この図に示すように、試験体A〜Dの中詰めコンクリート24が圧縮軸耐力程度の圧縮荷重を受けて破壊した場合には、小径部30の鋼管32の底端外周縁部から凸部22に向かって亀裂が生じることが、上述の実験を行ったことにより解った。
【0036】
そこで、本実施形態に係る接合構造100では、小径部30の鋼管32の底端外周縁部と凸部22との間の部位に、フープ筋102及び縦筋104を配筋して、中詰めコンクリート24の当該部位を補強している。これにより、中詰めコンクリート24の圧縮強度を高め、以って、接合構造100の圧縮軸耐力をより大きくすることができる。
【0037】
なお、上述の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明はその趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。例えば、上述の各実施形態では、小径部30を、鋼管32の内側に中詰めコンクリート34を充填した鋼管コンクリートとしたが、小径部30の構成は適宜変更してもよい。例えば、鋼管32を設けることは必須ではなく、中詰めコンクリート34のみで小径部30を構成してもよい。この場合、プレキャストコンクリート製のブロック体にしてもよい。ここで、該ブロック体を製作するためのコンクリートとしては、中詰めコンクリート34よりも強度が高いコンクリートであることを要する。また、小径部30をコンクリートで構成することは必須ではなく、鋼材等の圧縮力が高い部材であれば採用できる。さらに、鋼管32は、FRP等の高強度の管材に替えてもよい。
【0038】
また、上述の各実施形態では、鋼管杭20と中詰めコンクリート24との「ずれ抑制手段」を、フラットバーを湾曲させて鋼管杭20の内周面に溶接してなる凸部22とした。しかし、これに替えて、異形鉄筋や定着プレート等を、鋼管杭20に固定して中詰めコンクリート24に埋設してもよい。この場合、異形鉄筋や定着プレート等がアンカーとして機能することにより、鋼管杭20と中詰めコンクリート24との相対的な軸方向の滑りが抑制される。
【0039】
また、上述の各実施形態では、中詰めコンクリート24と基礎1との接合部に鉄筋を配筋していないが、鋼管32を貫通して上下両端が中詰めコンクリート24と基礎1とに埋設されるように鉄筋を配筋してもよい。この場合、地震時に鋼管杭20に作用する引抜力に鉄筋が抵抗することになり、基礎1の浮上りを抑制することができる。
【0040】
また、鋼管杭20と基礎1とを接合する方法における施工手順は、上述したものは一例であり、適宜変更してもよい。例えば、小径部30の鋼管32を中詰めコンクリート24の打設後に鋼管杭20の上端に設置することは必須ではなく、鋼管32を予め鋼管杭20と一体化しておいてもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 基礎、10 接合構造、20 鋼管杭、22 凸部(ずれ抑制手段)、24 中詰めコンクリート、26 ストッパー、30 小径部、32 鋼管、34 中詰めコンクリート、100 接合構造、102 フープ筋(補強鉄筋)、104 縦筋(補強鉄筋)