【実施例】
【0034】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
(実験1:各種プロポリス組成物の調製)
表1〜7に示した各種原料の配合、及び処置に基づいて、対照品1、2、および試験品1〜5を得た。なお、加熱にはオートクレーブを用い、凍結乾燥には凍結乾燥装置(東京理化製)を用いた。
次に、得られた粉末状のプロポリス組成物を全て水により200mLにメスアップし、室温でホモミキサーにて十分に溶解あるいは懸濁させた。続いて、得られた溶解あるいは懸濁液を100ml、砂糖600g、水飴533gの配合でそれぞれの飴を公知の製造方法に準じて作製した。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
【表6】
【0042】
【表7】
【0043】
(実験2:各種プロポリス組成物の臭い分析)
実験1で得られた各々の飴(表8中に「対照品1由来試料」〜「試験品5由来試料」と表記した)を粉砕し各1gを得て、臭い分析に供した。
臭い成分の分析は、GC−MSを用いた一般的な分析方法で行った。使用機器は、「Inter−cap WAX」(0.25mmid×30m、膜厚0.25μm、GLサイエンス社製)、「SPMEファイバー」(50/30μm, DVB/CAR/PDMS、スペルコ社製)、GC−MSは、JMS−Q1000GC K9(日本電子社製)を用いた。SPMEファイバーの条件は、前加熱(65℃、3分)、吸着時間(30分)、脱着時間(5分)、注入口温度(250℃)で行った。また、GCの条件は、温度条件(40℃で5分→230℃まで5℃/分→230℃で5分)、スプリット(比:5.6)、キャリアガス(ヘリウム)で行った。
プロポリス臭の評価は、プロポリス臭の代表的な臭い主成分の一つであり、且つインスタントコーヒー中には含有されない臭い成分であるフェニルプロピオン酸エチルの検出量(面積値)を比較することによって行った。
得られた結果を表8に示す。
その結果、試験品1由来試料が、特にフェニルプロピオン酸エチルの検出量が少なく、すなわち試験品1は、顕著にプロポリス臭が低減されていることが明らかになった。また、この効果は、インスタントコーヒーが必要なこと、且つ加熱処理が必要なこと、且つシクロデキストリンが必要なこと、且つ乾燥工程が必要なことを示していた。特に、試験品1由来試料と試験品2由来試料の結果を比較し考えると、シクロデキストリン処置を施していても、コーヒーが添加されてなければフェニルプロピオン酸エチルはほとんど減少しないことから、コーヒーを使用する必要性が強く示唆された。
すなわち、プロポリスエキスとコーヒーを混合した後にこれを加熱し、さらにシクロデキストリンを混合した後に乾燥させることで、プロポリス臭は顕著に低減されることが明らかとなった。
【0044】
【表8】
【0045】
(実験3:シクロデキストリンのタイプ別評価)
次に、シクロデキストリンとしてα、βおよびγのタイプ別の効果を検討した。αおよびβ−シクロデキストリンの場合も、実験1と同様にプロポリス組成物を作製した(組成を表9、10に示す)。
【0046】
【表9】
【0047】
【表10】
【0048】
次に、実験1で得たγタイプと、ここで得られたαおよびβタイプを用いて得られたプロポリス組成物をそれぞれ0.2g採取し、実験2と同様の方法で臭い分析を実施した。
その結果を表11に示した。これらのタイプの中では、β−シクロデキストリンが最も効果的にフェニルプロピオン酸エチルの臭いを低減させていることがわかった。
【0049】
【表11】
【0050】
さらに、試験品1、2、4、6、7について、成人男女各30名に試食してもらい、臭気及び刺激性について評価してもらった。その結果を平均化し、官能評価の結果として表12に示した。
その結果、プロポリスエキスの臭気及び刺激性のマスキングには、コーヒー及びシクロデキストリンの両方が必要であることがわかった(試験品1、6、7)。また、すべてのタイプのシクロデキストリンにおいて臭気及び刺激性のマスキング効果が確認され、さらにβ−シクロデキストリンにおいてはより高いマスキング効果がみられた(試験品1、6、7)。
【0051】
【表12】
【0052】
(実施例1)
固形分13重量%のエタノール抽出プロポリスエキス(アピ株式会社製)40重量部にインスタントコーヒーとして「CAFELIA ベトナムソリュブルコーヒー」(商品名、ネスレ社製)3重量部、及び水40重量部を混合し、オートクレーブを用い、130度で20分間加熱し、プロポリス・コーヒー加熱物を得た。得られたプロポリス・コーヒー加熱物にβ−シクロデキストリン(三共ライフテック社製)6重量部を混合し、凍結乾燥装置(東京理化製)を用いて凍結乾燥し、粉末状のプロポリス組成物を得た。このようにして得られたプロポリス組成物は、食した際に、プロポリス特有の臭気及び刺激性が十分にマスキングされ、風味良好なものとなっていた。また、このプロポリス組成物は、疎水性成分が分離しない粉末状であり、さまざまな食品に幅広く用いることが可能であった。表13に組成と製造条件を示す。
【0053】
(実施例2)
実施例1において、プロポリスと混合するインスタントコーヒーの代わりにレギュラーコーヒーとして「MAXIM」(商品名、味の素ゼネラルフーズ社製)に変更し、それ以外は実施例1と同様にして、粉末状のプロポリス組成物を得た。実施例2で得られたプロポリス組成物は、臭気及び刺激性が十分にマスキングされ、風味良好な粉末状のものであった。
【0054】
(実施例3、4)
実施例1において、プロポリスエキスに混合するインスタントコーヒーの重量部を表13に示すように変更し、それ以外は実施例1と同様にして、粉末状のプロポリス組成物を得た。実施例3で得られたプロポリス組成物は、プロポリスの臭気が十分にマスキングされ、刺激性のマスキングは実施例1と比べると若干弱いものの、風味良好な粉末状のものであった。実施例4で得られたプロポリス組成物は、臭気及び刺激性が十分にマスキングされ、風味良好な粉末状のものであった。
【0055】
(実施例5、6)
実施例1において、プロポリスエキスとコーヒーを混合した後の加熱温度を表13に示すように変更し、それ以外は実施例1と同様にして、粉末状のプロポリス組成物を得た。実施例5で得られたプロポリス組成物は、プロポリスの刺激性が十分にマスキングされ、臭気のマスキングは実施例1と比べると若干弱いものの、風味良好な粉末状のものであった。実施例6で得られたプロポリス組成物は、臭気及び刺激性が十分にマスキングされ、風味良好な粉末状のものであった。
【0056】
(実施例7、8)
実施例1において、プロポリス・コーヒー加熱物に混合するβ−シクロデキストリンの重量部を表13に示すように変更し、それ以外は実施例1と同様にして、粉末状のプロポリス組成物を得た。実施例7で得られたプロポリス組成物は、プロポリスの刺激性が十分にマスキングされ、臭気のマスキングは実施例1と比べると若干弱いものの、風味良好な粉末状のものであった。実施例8で得られたプロポリス組成物は、臭気及び刺激性が十分にマスキングされ、風味良好な粉末状のものであった。
【0057】
(比較例1、2)
実施例1において、プロポリスエキスに混合するコーヒーの重量部を表14に示すように変更し、それ以外は実施例1と同様にして、粉末状のプロポリス組成物を得た。比較例1で得られたプロポリス組成物は、臭気のマスキングには効果があったが、刺激性のマスキングが不十分であり、食べにくいものであった。また、疎水性成分の分離が見られ、扱いにくいものであった。比較例2で得られたプロポリス組成物は、臭気及び刺激性のマスキングに効果があったが、コーヒーの風味が前面に出てしまい、食品への汎用性を欠くものであった。
【0058】
(比較例3、4)
実施例1において、プロポリスエキスとコーヒーを混合した後の加熱温度を表14に示すように変更し、それ以外は実施例1と同様にして、粉末状のプロポリス組成物を得た。比較例3で得られたプロポリス組成物は、刺激性のマスキングには効果があったが、臭気のマスキングは不十分であり、食べにくいものであった。比較例4で得られたプロポリス組成物は、臭気及び刺激性のマスキングに効果があったが、高温で加熱されたためこげ臭が発生し食べにくいものであった。
【0059】
(比較例5)
実施例1において、プロポリスエキスとコーヒーを混合した後の加熱時間を表14に示すように変更し、それ以外は実施例1と同様にして、粉末状のプロポリス組成物を得た。比較例5で得られたプロポリス組成物は、刺激性のマスキングには効果があったが、臭気のマスキングは不十分であり、食べにくいものであった。
【0060】
(比較例6)
実施例1において、プロポリス・コーヒー加熱物に混合するβ−シクロデキストリンの重量部を表14に示すように変更し、それ以外は実施例1と同様にして、粉末状のプロポリス組成物を得た。比較例6で得られたプロポリス組成物は、刺激性のマスキングには効果があったが、臭気のマスキングが不十分であり、食べにくいものであった。また、疎水性成分の分離が見られ、扱いにくいものであった。
【0061】
実施例1〜8及び比較例1〜6で得られたプロポリス組成物の評価を表13、14に示す。官能評価は、成人男女各30名に試食してもらい、得られた臭気及び刺激性についての評価を平均化し、官能評価の結果とした。また、各原料の数字は重量部を表す。表13、14の結果より、実施例1〜8で得られたプロポリス組成物は、いずれも臭気及び刺激性のマスキング、粉末化による汎用性に優れたものであることが分かる。
【0062】
なお、表13、14における評価基準は以下のとおり。
(プロポリスの臭気のマスキングの官能評価)
「◎」プロポリスの臭気を十分マスキングしている。
「○」プロポリスの臭気をマスキングしている。
「×」プロポリスの臭気をマスキングしきれていない。
(刺激性のマスキングの官能評価)
「◎」プロポリスの刺激性を十分マスキングしている。
「○」プロポリスの刺激性をマスキングしている。
「×」プロポリスの刺激性をマスキングしきれていない。
(粉末化の評価)
「◎」十分に粉末化され、疎水性成分の分離が起こらない。
「○」粉末化され、疎水性成分の分離が起こらない。
「×」粉末化が不十分で、疎水性成分の分離が生じる。
【0063】
【表13】
【0064】
【表14】
【0065】
以下に本発明の粉末状のプロポリス組成物を用いた食品、飲料の応用例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。またこれまでと同様の官能評価法を用いて製品サンプルを評価した。
【0066】
(製造例1:キャンディ)
実施例1の条件で得られたプロポリス組成物20部、砂糖600部、水飴533部、はちみつ30部を水に混合溶解し、真空釜にて濃縮した。前記濃縮物100部に対し、はちみつフレーバーを添加した後、スタンピング成型を行い、はちみつプロポリスキャンディ(キャンディ1)を作製した。またキャンディ中のプロポリス組成物が比較例1であるキャンディ(キャンディ2)についても作製した。官能評価において、キャンディ1は臭気、刺激性ともにマスキングされ、非常に食べやすいと評価された。一方、キャンディ2は、臭気はマスキングされているが、刺激性は保持されており、舐め続けるには支障を感じられると評価された。
【0067】
(製造例2:プロポリス組成物によってコートされたキャンディ)
前記同様、公知の製造方法によって作製されたキャンディ100部を回転ドラムにて回転させ、砂糖1000部、水500部、ゼラチン1部からなるコーティング液1部を回転ドラムに添加し、その後実施例1の条件で得られたプロポリス組成物1部を添加することによって、表面にプロポリスをコートしたキャンディ(キャンディ3)を作製した。またコーティング中のプロポリス組成物が比較例1または比較例5であるキャンディ(キャンディ4、5)についても作製した。キャンディ3は臭気、刺激性ともにマスキングされ、また舐め心地も良く、非常に食べやすいと評価された。一方、キャンディ4は、臭気はマスキングされているが、刺激性は保持されており、舐め始めに痛みが感じられた。また分離した疎水性成分が口内に付着し、口当たりが悪く、異物感が感じられると評価された。一方、キャンディ5は、刺激性および口当たりは良好であったが、食べにくい香りがあると評価された。
【0068】
(製造例3:ゼリー)
ゼラチン5部に水50部を加え、湯せんにてゼラチンを溶解させた後、その溶解液に実施例1の条件で得られたプロポリス組成物1部を含むレモン果汁250部を加え、混合した。前記混合物を型取り用の容器に流し込み、冷水(氷水)にて冷却してプロポリス入りレモンゼリー(ゼリー1)を作製した。またゼリー中のプロポリス組成物が比較例1であるゼリー(ゼリー2)についても作製した。ゼリー1は臭気、刺激性ともにマスキングされ、非常に食べやすいと評価された。一方、ゼリー2は、臭気はマスキングされているが、刺激性は保持され、口当たりも悪く、食べにくいと評価された。
【0069】
(製造例4:タブレット)
実施例1の条件で得られたプロポリス組成物5部、乳糖25部、澱粉20部、はちみつパウダー30部、ローヤルゼリー1部、ヒドロキシプロピルセルロース4部、ハーブ抽出パウダー15部からなる粉体を打錠し、タブレット(タブレット1)を作製した。また比較例1で得られるプロポリス組成物に置き換え、タブレット2を作製した。タブレット1は、臭気、刺激性ともにマスキングされ、非常に食べやすいと評価された。一方、タブレット2は、臭気はマスキングされているが、刺激性は保持されており、また分離した疎水性成分が口内に付着し、口当たりが悪く、異物感が感じられると評価された。
【0070】
(製造例5:飲料)
実施例1の条件で得られたプロポリス組成物3部、はちみつ10部、果糖ブトウ糖液糖5部、クエン酸0.1部、リンゴ酸0.1部、レモン香料少々、精製水を用いて100部の飲料(飲料1)を作製した。また、比較例1で得られるプロポリス組成物に置き換え、飲料2を作製した。飲料1は臭気及び刺激性ともにマスキングされ、非常に飲みやすいと評価された。一方、飲料2は、臭気はマスキングされているが、刺激性は保持されており、分離した疎水性成分が口内に付着し、口当たりが悪く、異物感が感じられると評価された。また、分離した疎水性成分は容器にも付着し、プロポリスの有効成分の利用率が下がり、容器の洗浄にコストがかかるなどの問題が生じた。
【0071】
以上の応用例より、本発明のプロポリス組成物は、様々な食品に容易に使用することができ、且つ、プロポリスが持つ臭気及び刺激性が十分にマスキングされ、美味しくて食べやすいプロポリス含有食品を提供できることがわかった。